ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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今年最後の更新です。原作と比べて戦闘シーンましましです。

就活で大きく更新が滞ってしまいましたが、今年も無事エタらずに続けることができました。拙作を読んでいただきありがとうございました。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
23.コロンブス


第142話「無限の消失」

〈BGM:THOUSAND DESTRUCTION(C)ザイア・エンタープライズ(仮面ライダーゼロワン)〉

 

〔ムサシ!エジソン!ロビンフッド!ベンケイ!ヒミコ!ノブナガ!ヒーローズ・ドライブ!〕

 

荒ぶる怒りのままに曹操へと馳せながら、俺はヒーローズ・リインフォースメントを発動させて仲間たちに英雄パーカーゴーストとその力を付与する。力の出し惜しみはしない、最初から全力だ。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

裂ぱくの叫びを迸らせながら、俺はひた走る。野郎、目の前でゼノヴィアをやりやがった…!そのツケ、命をもって償え!!

 

「アーシア!急いで回復して!」

 

「ゼノヴィアさん!!死なないでください!!」

 

後方ではノブナガのパーカーを着た部長さんの指示で、ロビンフッドのパーカーを纏ったアーシアさんが涙をボロボロ流しながらも懸命にゼノヴィアを治療している。英雄の力で神器も強化されているので最悪の事態は避けられるはずだ。

 

「絶対に許さん!!」

 

「曹操ォォォォ!!」

 

「よくもッ!!」

 

ムサシのパーカーを着た木場、兵藤、そして俺。グレモリーの三勇士が一斉に曹操へ攻撃を仕掛ける。兵藤が鋭い拳のラッシュを繰り出し、その隙をカバーするように俺の鎌と木場の聖魔剣の剣技が唸る。

 

木場の二振りの聖魔剣の連撃は平時と違い苛烈な様相を呈していた。それだけ木場も仲間をやられて頭に来ているのだ。

 

「いいぞ、もっとだ!」

 

あらゆる敵を勢いのままに圧殺してしまいそうな、息もつかせぬ怒涛のラッシュを前にしながらも曹操は狂喜の笑みを浮かべて一歩も退かない。次から次へと俺たちの攻撃を聖槍で弾き、あるいは身のこなしでいなす。

 

「ぬん!」

 

「ふっ」

 

俺が横薙ぎに振るった鎌が聖槍の柄で受け止められる。

 

「喰らえ!!」

 

そこを兵藤が拳を振りかぶるが、曹操は聖槍を軸に飛び上がってすれすれで躱した。

 

「まだだ!」

 

宙に跳びあがり無防備を晒す曹操。そこに追撃を仕掛ける木場だったが、曹操はそれすら計算の内だと剣戟を繰り出す手首に蹴りを入れて聖魔剣を叩き落とした。

 

なんて技術だ、俺たちの攻撃が全く当たらない。三人がかりで挑んでいるのに全く引けを取らないとんでもない戦闘センスと身体能力だ。あいつ、本当に人間なのか!?

 

攻防のさなか、曹操の背を浮遊する球体の一つがギュンと後方の部長さんたちのもとへ飛来する。またゼノヴィアの時のように攻撃をするかと思いきや、予想外の能力が発動した。

 

「第二の七宝、女宝《イッティラタナ》」

 

「!」

 

エジソンのパーカーを着こなす朱乃さんとノブナガのパーカーを身にまとう部長さんが反応して魔力攻撃で球体を撃墜するよりも早く、球体が光を発した。あえなくその光に呑まれるが、二人にダメージは全くない。

 

しかし彼女たちは確かにその凶悪な能力の餌食となっていた。

 

「魔力が…!?」

 

「どういうことなの…?」

 

二人は球体を撃墜せんと魔力を放つべく手を突き出すが、何も出る様子はない。それを何度も繰り返すが、同じ結果が起こるだけだった。

 

「女宝は女性の異能を一定時間完全に封じる。これも相当な強者でなければ抗えない能力さ」

 

おいおい、うちの今いる戦力の大半は女性だぞ!特にアーシアさんの神器を封じられたらゼノヴィアが…死ぬ!

 

驚愕の能力が明らかとなって戦慄する俺たちを他所に曹操は高笑いする。

 

「ふふふ、派手な攻撃は繊細さを要するサマエルの操作に悪影響を及ぼす。信長がゲオルクを守ってくれると言っても攻撃の余波で影響が出ないとは限らないからね。よって、君たち全員をこの限られた空間で、最小限の攻撃で、たった一人で倒す!なんて最高難度の戦いだよ…!」

 

俺たち三人を同時に相手取りながらも奴の闘志はより過熱していく。

 

「だがそれを乗り越えてこそ、英雄という高みに近づく!」

 

「勝手に盛り上がってろにゃん!」

 

曹操の高揚など知ったことかと吐き捨てんばかりに黒歌とルフェイが魔法攻撃を加えようと手を向ける。対する曹操の対応は早く、またも球体を一つ二人のもとへ差し向けた。

 

「『馬宝《アッサラタナ》』、相手を転移させる能力だ」

 

奴の宣言と同時に二人の姿が消える。彼女たちが転移した先は、なんとアーシアさんの眼の前だった。魔法の光を蓄えた両手は、初撃で倒れたゼノヴィアの回復の真っ最中のアーシアさんに向けられている。

 

「嘘!?」

 

「避けてください!!もう止められません!!」

 

黒歌とルフェイは突然の転移に驚き、自分たちの攻撃がアーシアさんに向けられたことに顔を真っ青にした。

 

「アーシアさん!!」

 

「余所見している場合かな!?」

 

「くっ!」

 

今すぐフォローに回りたいが、禁手状態の曹操が許してくれない。俺と木場が、飛来する武器破壊の球体をムサシの見切りですれすれで躱す。あの能力の都合上、武器ではじき返すことはできない。

 

「ふざけんな!!『龍星の騎士《ウェルシュ・ソニック・ブースト・ナイト》』!!」

 

〔Change Star Sonic!〕

 

曹操が俺たちを攻撃する間に奴のやり口に怒る兵藤が動いた。兵藤の装甲がはじけ飛んで身軽になり、背部のブースターが通常時以上の激しいオーラを吐き出しながら猛スピードでアーシアさんのもとへ向かった。

 

黒歌とルフェイの手元から魔法が炸裂したのと、兵藤がアーシアさんのもとに到着して壁になったのは同時だった。曹操にぶつけるためにと加減なしに練られた魔法の数々が一斉に兵藤へ殺到し、突き刺さる。

 

「かはっ!!」

 

「イッセーさん!」

 

〈BGM終了〉

 

苛烈な魔法が兵藤の全身をくまなく破壊していく。運の悪いことに、兵藤はアーシアさんのもとへたどり着くために鎧の防御が薄くなる『騎士』の駒を使っていた。防御に優れた『戦車』の駒に切り替える間もなく、一通りの攻撃からアーシアさんを守り切った兵藤はどさりとその場に崩れ落ちる。

 

二人の攻撃で、元々パージしたために薄くなっていた鎧は完膚なきまでに破壊されてしまった。

 

「君ならきっとそうすると思っていたよ。戦闘において彼女はグレモリーチームの要だからね」

 

「てめぇ…!!」

 

ボロボロになって血を垂れ流し、蹲る兵藤が痛みをこらえながら曹操を睨みつける。さっきの七宝を俺と木場だけに差し向けたのはこれを狙ってのことか!

 

「赤龍帝、もう君の新しい力は知っているし、弱点も見えている。トリアイナのコンボは内の駒を変更する瞬間に僅かなタイムラグがある。そこをつけば簡単に君を倒せるよ」

 

「どこまでも馬鹿にしてくれるな…!!」

 

「許さないよ!!」

 

「おっと、怒りは視野を狭めてしまうよ」

 

怒りに震える俺たち、苛烈化する攻撃に曹操が不敵に笑う。次の瞬間、俺は背中に鋭い剣戟を受けた。

 

「なっ…?」

 

全く意識の向かない箇所からの攻撃に俺は驚く。振り返ると、そこで俺と同様に表情が驚愕の色に染まった木場が剣を振り下ろしたところだった。

 

どうして木場が…俺を切った?

 

「『馬宝』で木場裕斗を君の背後に転移させた。怒りで七宝への注意が薄れたおかげですんなり決まったよ」

 

狼狽する俺に曹操は聖槍の石突で鋭い突きを入れ、背後の木場もろともビリヤードのように後方へ吹っ飛ばした。

 

「がは!」

 

「ぐっ!?」

 

二人そろってロビーの壁に強く叩きつけられ、衝撃で肺から空気が血と一緒に吐き出される。

 

「がっ…深海君…ごめんよ」

 

「気にするな…まだやれるか?」

 

「もちろんだよ…!」

 

壁に叩きつけられると同時に俺に押しつぶされるような形になってしまった木場に肩を貸しながら立ち上がる。

 

曹操の奴が聖槍の刃の方で突いてこなくてよかった。刃を向けて突きを繰り出していれば俺と木場は串刺しになり、悪魔である木場は聖なる力でたちまちに消滅していただろう。

 

俺と木場はまだ大丈夫だが問題は…。

 

視線を兵藤に向けると、あいつはダメージが深刻なのか血を垂れ流して肩で息をしていた。曹操め、性格の悪い戦いをしやがる。

 

「イッセーさん!」

 

「ダメだアーシア!ゼノヴィアの回復を優先してくれ…!!俺のことはいい…!!」

 

「…!!」

 

吐血する兵藤を見て、ゼノヴィアの治療を中断してまでアーシアさんは兵藤へ駆け寄ろうとするが当人はそれを拒絶する。

 

「さて、三人纏めて…ッ」

 

一か所に集まったゼノヴィアと兵藤、アーシアさんを一気に消し飛ばすつもりか聖槍の穂先を向ける曹操へ、痺れる電撃と銃撃が殺到する。

 

「おっと」

 

相も変わらずの体術さばきで回避する曹操。攻撃を加えたのはガンガンハンド 銃モードを向ける部長さんとガンガンセイバー ガンモードを構える朱乃さんだった。

 

「女性じゃない英雄の能力は使えるみたいね。覚悟しなさい!!」

 

そうか、その手があったか!ノブナガとエジソンは女性じゃないから女宝の影響を受けないのか!

 

意図せず奴の凶悪な能力の対策ができたことに内心ガッツポーズをした。

 

「おや、それは盲点だったね。新しい気付きの礼にこれを差し上げよう」

 

二人の攻撃に驚く様子はあまりなく、代わりに七宝の球体を二人へ向けて飛ばす。迫る球体に二人はそれぞれの銃を持って迎撃のための射撃を繰り出す。

 

「させない!」

 

エジソンの能力によりガンガンセイバーから無数に枝分かれするような電撃が放たれる。それをスルスルと滑るように突破する球体。そこにノブナガの能力で増殖した銃口から放たれる銃弾の驟雨が降り注ぐ。

 

臆せず進む球体にいくつかは命中するが、破壊するには至らない。そのまま直進して距離を詰める球体が二人の得物を粉々に破壊してしまった。

 

「そんな…!?」

 

「『輪宝』だ。デュランダル使いが見切れなかった技を近接戦闘に向かない君たちが見切れる道理はないだろう?」

 

そうだ、奴の能力は女宝だけではない。能力を一つ攻略してもまだ奴の能力は6つも残っている。あいつ、完全に能力を使いこなしてやがる…!

 

〈BGM:バリアンズ・フォース(遊戯王ZEXAL)〉

 

「ヴァーリ、久しぶりの共闘だ!俺に合わせろ!」

 

「俺は単独でやり合いたいところなんだが…!」

 

矢継ぎ早に同時に仕掛けたのはアザゼルとヴァーリだった。白き龍皇と黄金の龍王の鎧を纏った二人が曹操に勇猛果敢に襲い掛かる。

 

「いいぞ!白龍皇に堕天使総督の競演!君たちはどこまでも俺を昂らせ、高みへと導いてくれるなッ!!」

 

ヴァーリが繰り出す拳打の嵐、さらに先生の空を切る光の槍の連撃に曹操は臆することなく立ち向かう。巧みな槍術と体術を駆使して、曹操は息継ぐ間もなくよせ来る全ての攻撃を躱し、あるいは弾いてのけていく。あまりに卓越した技術に未来が見えているのではないかと思えてくる。

 

「鎧装着型の禁手は他の禁手と比べても驚異的なパワーアップを果たせるが、力が過剰すぎてオーラの流れが読みやすい!得物や拳、脚にオーラが集中するからどこから攻撃が来るかもすぐにわかる!」

 

「そんな弱点があるのかよ…!」

 

俺も例に漏れず鎧装着型に分類されるだろう。なら、さっきの戦いもすべてあいつは俺の霊力の流れを見て攻撃を予測していたというのか…!

 

「君たちに邪眼《イーヴィルアイ》というレアものを見せてあげよう。赤龍帝にやられた右目の代わりに移植してね!」

 

交戦の中で曹操がちらりと先生の足元に視線を向けると、たちまちのうちに先生の足が色褪せて石化していく。

 

「メデューサの眼…!!」

 

メデューサは俺でも知っている。ペルセウス座の神話に登場する髪が蛇になっている女性の怪物だ。そんなものまで用意したのか、あいつ!

 

驚愕と石化で動きが鈍くなった先生の腹を、曹操が躊躇いなく聖槍で一刺しする。聖槍の前には龍王の鎧

も無意味で、簡単に突破されてしまった。

 

「ぐぁッ…!なんて奴だ…くそったれ…!!」

 

「アザゼル総督、あなたは確かに強い。それだけにファーブニルの鎧をあなたの力に合わせて最適化できていないのが残念でなりませんよ」

 

「そこまで見抜いてやがったのか…」

 

ごぼっと大量に吐血してそのまま先生の体がどさりと崩れ落ちた。堕天使で最上の実力を誇る先生すら曹操に敵わないなんて…。驚愕すると同時に一勢力の首脳陣を一人屠れるほどの力を秘めた奴の脅威を再認識した。

 

「曹操…!!許さんぞッ!!」

 

倒れ行く先生の姿を目にして、ヴァーリが肩を震わせて怒る。

 

「ハハハ!らしくないな!両親に化け物と恐れられ、捨てられた君にとってアザゼルは命の恩人であり育ての親だったね!?」

 

「黙れ!!」

 

曹操の煽りがいよいよヴァーリの憤怒の炎に油を注ぎ、激しくする。激昂したヴァーリは手のひらに魔力を一気に集中させて強大な光弾を生み出し、撃ちだす。

 

しかしその間に突如として割り込んだ球体が黒い渦を生成し、ヴァーリの眩い魔力攻撃をあれよあれよと飲み込んでいく。

 

あの能力は将軍宝でも、輪宝でも、馬宝でも、ましてや女宝でもない…四つ目の新たな七宝か!

 

「『珠宝《マニラタナ》』。敵の攻撃を他人に受け流す能力。君の魔力は絶大だ、防御は難しいし、当たれば死ぬが…受け流すことならできる」

 

解説が終わると同時に、塔城さんの前に同じ渦がぎゅるぎゅると音を立てて発生する。そこから先ほど能力で吸い込まれたばかりのヴァーリの魔力が勢いよく吐き出される。

 

「…!」

 

「白音!避けなさい!!」

 

〈BGM終了〉

 

突然の事態に呆気にとられ、塔城さんの反応が遅れる。そんな彼女を突き飛ばして代わりに受けたのはなんと黒歌だった。

 

すぐさま彼女の体にヴァーリの怒りが込められた強烈な魔力が炸裂し、派手な爆発を起こす。

 

めらめらと燃える爆炎の中から彼女の体が投げ出された。全身から血を流す彼女はロビーの床をそのままボロボロになった妖艶な着物を乱しながら横転して、地に血に伏した。

 

黒歌のやつ、塔城さんを守ったのか…?絶縁を宣言され、敵対関係となってなお、彼女には妹への情が残っていたというのか。

 

…俺がそうであるように、やはり兄弟姉妹の繋がりは断ち切れないものらしい。

 

「姉さま…どうして…?」

 

受け流された攻撃、それをかばった黒歌。次々に押し寄せる怒涛の展開に塔城さんは茫然と立ち尽くす。その頬にきらりと一筋の涙が流れた。

 

その一方で、ヴァーリはさらに怒りに燃えていた。今まで戦いへの喜びに震える姿はよく見てきたが、それ以外の感情をここまで強く発するあいつの姿は初めてだ。

 

「アザゼルに飽き足らず黒歌まで…よくもやってくれたな曹操ッ!!」

 

「さっきからどうしたんだい、君はそんなに仲間思いだったか?まるでそこの赤龍帝のようだ」

 

「我、目覚めるは…」

 

詠唱の始まりと共に、ヴァーリのオーラが膨れ上がり大気が震え始める。あいつ、この場で覇龍を使うつもりか!それなら奴を倒せるかもしれないが…。

 

「それはいただけないな。ゲオルク!止めろ!」

 

「やれ、サマエル!」

 

「オオオオオオオオ…」

 

曹操の対応は迅速だった。ゲオルクが魔方陣を介してサマエルを操作し、奴の右手の拘束具が解除される。解き放たれたサマエルの右手がヴァーリに向けられると、即座にオーラを高める奴の体をオーフィスと同じような黒い塊が包み込んだ。

 

その時間、5秒。黒い塊が弾け、ヴァーリが解放される。それと同時に白い鎧もバキバキに弾け飛んで、鎧の破片と一緒に鮮血が辺りに飛び散った。

 

「かっ…」

 

「ヴァーリ!嘘だろ…!」

 

あのヴァーリが見るも無残に倒れ行く姿に、驚愕の念を禁じ得ない。これが究極のドラゴンスレイヤーか…!

 

「どうだい、神の毒の味は?流石にここで『覇龍』を使われては空間は壊れてサマエルの制御が難しくなるからね。ルシファーの血のおかげで死なずには済んだが、それでも苦しいだろう?しばらくそこで休んでいるといい。弱点攻撃しかできなくて悪いな、ヴァーリ」

 

「そう…そ…う…!」

 

倒れ伏すヴァーリを愉快気に見下ろす曹操。ヴァーリは最後の抵抗だと言わんばかりに強烈な敵意を込めて曹操を睨む。

 

「さてと、これまでに倒したのは二天龍とアザゼル、グレモリーの『王』と『女王』、黒歌、デュランダル使いか。あとは英雄使いや聖魔剣とミカエルのA、『戦車』とルフェイぐらいかな」

 

聖槍をくるくると回し、ポンポンと肩を叩いて残った面々をざっと見渡す曹操。

 

「よくもイッセー君たちを…」

 

「ダメよイリナ!迂闊に動けば殺されるわ!」

 

冷静さを失い、仲間を目の前で倒された怒りの感情に流されるままに突撃しようとする紫藤さんを部長さんが肩を掴んで制止する。

 

俺たちが三人がかりで挑んでも届かなかった相手だ。一人で向かったところで軽くあしらわれるように倒されるだけ。

 

「これまでに判明した能力は5つ。衝撃を発する玉、女性の異能を無効化する玉、武器破壊し、形状変化する玉、任意の相手を転移させる玉、そして相手の攻撃を受け流す玉。厄介なことに球体の判別は不可能、能力が発動するまでどの球かわからない…恐ろしいほど私たちを研究している強敵よ」

 

「私の魔法も、黒歌様がやられたときのように受け流されるだけでしょうか…」

 

ヴァーリチームに属するルフェイの魔法は強力だが、奴の受け流しの七宝がある限りは簡単に利用されてしまうだろう。

 

「戦うなら近接戦しかないわね…」

 

「どうにか隙を作るしかありません」

 

紫藤さんと塔城さんは奴の判明した能力を踏まえたうえでそう結論付ける。奴のセンスと転移の能力は脅威だが、少しでも可能性がある方を選ぶしか今の俺たちには選択肢がない。

 

「そうだね…その役目なら僕がうってつけだ。僕が奴の気を引き付ける」

 

〈BGM:闘志果てしなく(遊戯王ZEXAL)〉

 

その言葉と同時に進み出た木場の聖魔剣から魔のオーラが失せ、聖剣一色の聖なるオーラに変わる。

 

ガシャン!ガシャン!

 

木場に並び立つように現れたのは聖剣と同様の輝かしいオーラを纏う鎧の騎士団だった。木場がバアル戦で披露した『聖剣創造』の亜種禁手だ。

 

「行け!騎士団よ!」

 

号令と共に、ガシャガシャと勇猛果敢に騎士団が突撃を開始し曹操へ切りかかる。あいつのとっておきとも呼べる騎士団を陽動に使うなんて思い切りがいい。

 

「おお、ジャンヌの龍とは違う亜種禁手か!いいデータになる、戦わせてもらおう!」

 

木場の新しい力を目にして喜ぶ曹操は球体を一つ、騎士団へぶつけ、躍らせる。縦横無尽に動き回る球体が次々に騎士団を破壊していく。あれはおそらく、武器破壊の球だ。

 

「みんな、行くぞ!」

 

奴の球が一つ、騎士団を相手取ってる間に俺たちは曹操へ猛進する。

 

「来い、もっと楽しませてくれ!」

 

ここまで追いつめられても諦めない俺たち球体が一つ飛んでくる。どんな能力かは知らないが!

 

〔ニュートン!〕

 

左手を突き出して斥力を放ち、球体をホームランボールのように彼方へ吹き飛ばした。いくら七宝だろうと斥力には逆らえないと思っていたが、読みが当たった。

 

「その手があったか!」

 

「ナイス!」

 

仲間たちの驚き、感心する声が俺の背をさらに押す。

 

「ほう」

 

対策法を見出した俺に感嘆の声を上げる曹操へ、一斉に攻撃を仕掛ける。

 

正面切って曹操と拳と剣をぶつけあう俺たち。それを相変わらずのセンスで軽々と捌いてのける曹操。天使の翼を広げた紫藤さんが、果敢に奴の頭上から切りかかる。

 

「女宝」

 

紫藤さんの眼前に出現した球体が光を放つより早く。

 

〔ニュートン!〕

 

斥力であらぬ方向へ吹っ飛ばす。光力で生成され、ヒミコの聖なる炎を帯びた剣が振り下ろされるもその寸前で曹操の姿が消え、そのまま紫藤さんは曹操がさっきまでいた場所に着地する。

 

「っ…!」

 

慌てて俺たちは曹操がいなくなって紫藤さんへと振り下ろされようとした得物と拳を引き止める。まさか、転移の七宝を自分に使ったのか?

 

「そこです!」

 

仙術で感覚が研ぎ澄まされている塔城さんがいち早く俺たちの背後に出現した曹操に気付き、殴りかかる。

 

「きゃ!」

 

しかしまたしても七宝により塔城さんが転移し、突き出した拳が紫藤さんに突き刺さった。戦車の怪力によって振るわれた拳で木っ端のごとく吹き飛ぶ紫藤さん。奴の七宝の発動が速すぎてニュートンの斥力が追い付かない。

 

「そんな、うぐ!」

 

驚く塔城さんに聖槍が打ち据えられ、天上へずがんと力強く叩きつけられる。

 

「これで二人」

 

「曹操ォ!!」

 

塔城さんも紫藤さんもやられた。怒りのあまりに涙すらこぼれながらも俺は激情に任せて曹操へ鎌を振るうも。

 

「がはっ」

 

腹に鋭い痛み。曹操の聖槍が強化スーツを貫通して、確かに俺の生身の腹部を貫いていた。

 

「俺の取柄が七宝だけと思われては困るな」

 

〔オヤスミー〕

 

ずぶりと聖槍が引き抜かれると同時に変身が解ける。血を噴出しながら脱力してその場に前のめりになって倒れこんだ。くそ、俺でもダメなのか…!!

 

「君たちは仲間を思いやりすぎる。だからすぐに隙が生まれるんだ。仲間の数が増えれば猶更だ」

 

奴の禁手の力の前に敗れた俺たちを見下ろし、嘲笑をかけてくる。

 

「そして英雄使い、君の能力は俺と同じだ。複数の能力を同時に発動し操る能力。君自身もよく己の能力を理解し使いこなしている。七宝の対策も可能とは思わなかったが、君自身の戦闘力はまだまだのようだね」

 

横になった俺の頬を曹操が石突で軽くたたく。

 

俺の長所は複数の英雄の能力を使いこなす点だ。それらを組み合わせることで幅広い戦況に対応できる。しかし裏を返せば、能力に依存しているということに他ならない。

 

つまり今の俺は能力の数でこそ曹操に勝るが、それ以外は戦闘センス抜群の曹操の下位互換だ。鎧装着型のパワーアップといい、アザゼル先生の鎧といいさっきから悔しいことばかり言ってくれる…!

 

〈BGM終了〉

 

「さて、残ったのは木場裕斗とルフェイだけか。…いや」

 

曹操の言葉を否定するようにむくりと起き上がったのは塔城さんだった。ベンケイのパーカーは強化を維持していた俺が変身解除してしまったのですでになくなり、見慣れた制服姿に戻っていた。

 

「…まだ戦えます」

 

「英雄の力か。なるほど、英雄の能力と元来『戦車』の駒を有する君との相性がいいようだ。だが君一人増えたところで戦況はひっくり返らないさ」

 

塔城さんは口内を切ったか血が口の端から流れているが、大したダメージを受けた様子はない。攻撃を食らったタイミングでベンケイの能力で防御力が向上していたのが役立ったか。

 

残った三人と戦うかと思いきや、奴はふと聖槍を下ろして、戦闘の構えを解いた。

 

「…ここまでにしよう。木場裕斗、恐らく戦闘スタイルを考慮して俺と一番無難に戦えるのは君だ。ただ、俺と戦うにはまだレベルが足りないな」

 

「…!」

 

「それに聖剣の禁手もまだまだ練度が低い。速度は上々、しかし技術が反映できていない。もっと鍛え上げてくれよ」

 

「く…!!」

 

もはや相手にするまでもないと断じられ、剣士としてのプライドを傷つけられた木場は悔しさに目いっぱい顔を歪める。覚悟を決めて、傷ついた仲間たちを守るために立つ木場にとってどれほど奴の行動と言葉が侮辱になったことか。

 

それにあいつ、俺たちを単騎で相手取って全滅間近まで追い込んでまだ分析をする余裕があるのか…。しかもこれでもまだサマエルのこと気にして全力を出していない状態ときた。本気を出していれば今頃全員あの世行きだったに違いない。

 

後方でサマエルを制御するゲオルクたちへ振り向く。

 

「ここまで追いつめたが…ゲオルク、進捗はどうだ?」

 

「四分の三強ほどだ。これ以上は召喚を維持できそうにない」

 

「十分だ、よくやってくれたよ」

 

その言葉が引き金になり、バシュンとオーフィスを包み込んでいた黒い塊が四散する。それを繋いでいた触手…いや、サマエルの舌も口に戻るとゆっくりと魔方陣へと沈んでいく。

 

「オオオオオオオオ…」

 

最後まで不気味な叫び声を上げながら、サマエルの姿が消え失せる。同時に奴が放っていた怖気のするようなプレッシャーもなくなった。

 

もう二度とあんなに恐ろしいものは見たくはない。再会の時が来ないことを強く願う。

 

サマエルが消えてようやく解放されたオーフィス。5秒とサマエルの攻撃を受けただけで戦闘不能になる程の重傷を負ったヴァーリと違い、またしても外傷を負ったり毒に侵された様子もない。

 

もしかして、究極のドラゴンスレイヤーでも全くダメージを与えられなかったのか?そう思った俺の予想を反する言葉を、オーフィスはぽつりと発した。

 

「我の力、奪われた」

 

オーフィスの力を奪っただと…?つまり、奴はどんなに削ろうとも削れない無限を奪ったとでもいうのか?

 

「そうだ。我々はあなたを思いのままにして力を利用したかったが、如何に虚無とは言え言いなりにするのは困難だとわかった。だからやり方を大きく変えたんだ」

 

実験の結果に予想通りだと満足げな笑みを浮かべる曹操は、拳を握り大胆不敵に宣言する。

 

「あなたから奪った力で、俺たちは新たな『ウロボロス』を作る」

 

新しいウロボロス…オーフィスを作るだと!さっきの今のあなたは不要というセリフはそういう意味だったのか…!

 

「そのために…わざわざサマエルを使ってオーフィスの力を奪ったのか…!」

 

「その通りですよ。それにグレートレッドにはあまり興味がなかったし、オーフィスのご機嫌取りにもうんざりだったのでね。異形への挑戦をテーマにした我々の理念を実現することもできた。しかしオーフィスの力はプロパガンダとして優秀だし、力を集めるのに必要だ。事実、あれだけの規模の組織を作れた」

 

「…実に人間らしい考えだ」

 

「お褒めに預かり光栄です。アザゼル総督。これでも人間ですよ、俺は」

 

忌々し気な先生の言葉に恭しく笑む曹操。これだけのことをやってのけてまだ人間かよ。人間の前に超の感じが付いているだろ。

 

「曹操、今なら奴らを始末できるが?」

 

「将来的にはそうした方がいいんだろうが…正直、俺はこいつらの進化をもっと見てみたい。戦ってみたいのもあるし、データとして貴重というのもある。今代の二天龍の異質な成長…アザゼル、あなたが彼らを見守りたいと思う気持ちがよくわかりますよ」

 

ゲオルクに提案されるも曹操は難しそうな表情でかぶりを振った。奴自身がオーフィスについて語ったように、いつでも殺せるから殺さないという余裕すら感じる。

 

「…ゲオルク、信長、やめだ。俺は一足先に帰るよ」

 

いよいよ興味を無くして禁手を解いて、俺たちに背を向けてゲオルクの方へ歩みだす曹操にヴァーリが息も絶え絶えに問いかける。

 

「待て…どうして俺たちを、殺さない…?七宝でアーシア・アルジェントの能力を封じれば…それで俺たちを全滅させられたはずだ…!!」

 

「先ほどの戦いの俺の縛りはこうだ。この限られた空間で、サマエルの操作の邪魔になる派手な攻撃をせず、君たち全員を、たった一人で、殺さずに倒す。そのついでに禁手の長所と短所を分析するデータ取りも兼ねていたのさ」

 

「どこまでも舐めてくれる…!!」

 

「ははっ、お互い様だよ。さて…二天龍の諸君。此度はここでお別れだ。次に会う時はもっと強くなっていることを願っているよ。今度は全力でやり合おうじゃないか。いつだって、英雄が戦うのは魔王やドラゴンなのだから」

 

「上等だ…!」

 

「英雄使い。君の成長にも期待しているよ。英雄とは何者か…まだ君自身の答えを聞けていないからね」

 

「くそ…ったれ…」

 

血が流れ痛む腹を抑えながらも、奴の力に魂だけは屈するものかと胸中に渦巻く様々な激しい感情を言葉に乗せて投げつけた。

 

曹操に敗れ、オーフィスの力は奪われた。この戦いは完全に俺たちの敗北だ。

 

「ゲオルク、予定通り死神たちをお呼びしてくれ。ハーデスは搾りかすのオーフィスをご所望だからな。それと、ヴァーリチームがやった入れ替え転移で俺とジークを入れ替えできるか?」

 

「一度見ただけだからうまくいくかはわからんが、試してみよう。それとさっき入ってきた情報だが…」

 

「…はっ、恩を仇で返すのが彼らの流儀か。わかってはいたさ、十分に協力してもらったしいいだろう」

 

「俺の神器で特注の銃弾まで作ったのに、恩知らずな奴らだ。旧魔王派め」

 

と、不穏なやり取りを始める英雄派の三人。ヴァーリチームの次は旧魔王派とも仲間割れか…?とことん統制がなっていない組織だったんだな、禍の団は。

 

それに曹操と入れ替わりで魔剣使いのジークフリートが来るのか。ついさっき禁手で俺たちをボコボコにした曹操と比較すればまだかわいく思えるが奴も腕利きだ、油断はできない。

 

ゲオルクが魔方陣を展開し、いよいよ入れ替え転移の準備を始める。彼らを止められる者はこの場に誰一人としていなかった。

 

「ああ…そうだ。せっかくなら一つ脱出ゲームをしようじゃないか」

 

唐突に思いついたように曹操が言う。

 

「ゲームだと…」

 

「直にハーデスの命令を受けてオーフィスを回収するために死神たちが到着する。俺と入れ替わりでジークフリートも来る。君たちはオーフィスを奪われないようにここから脱出しなければならない。是非、乗り越えてくれよ。今度は全力の禁手でやり合いたいからね」

 

最後まで不敵な態度を崩すことなく、遠ざかるやつの姿を見届けるしかなかった。




書いてて思ったけど曹操の七宝が強すぎる。

今回のヒーローズ・リインフォースメントは以下の通りです。

ムサシ:木場
エジソン:朱乃
ロビンフッド:アーシア
ベンケイ:小猫
ヒミコ:イリナ
ノブナガ:リアス

実はアザゼルにも使えますが元々アザゼル自身が強い上に強化する人数が増えれば増えるほど悠の負担が大きくなるので発動が見送られました。

来年はウィザード編を目指して頑張りたいと思います。ウロボロス編後半、ヒーローズ編、オリジナル編、そしてウィザード編の4つです。では、よいお年を!

次回、「テロリスト→ニート」
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