ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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今章の外伝は前々から話していた初見の方向けの総集編みたいな回にしようと思います。

デモンズの変身者が変わってしまったけどオルテカも中々かっこいいですね。デモンズドライバーが届くのがより待ち遠しいし、このまま悪に振り切ってほしい。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
23.コロンブス


第145話「脱出への大航海」

負傷した面々も休息を取ったことである程度復調し、その間に先生たちが今後の行動について話し合ったことでいよいよ脱出に向けての作戦が始まろうとしていた。

 

部屋の中央でルフェイが様々なアイテムを組み合わせて魔方陣を描いており、転移に向けての準備を整えている。兵藤や塔城さん以外のメンバーは部屋の窓際でこれから始まる作戦に向けて緊張の糸を張っていた。

 

窓際から少しでも外を覗けば、漆黒のローブを纏った死神たちが大挙してこちらの結界を破壊するべく鎌を振るっているのがわかる。他の部屋の窓やこの階の非常階段付近も同じようだ。

 

「みんなと共に戦わず、先に脱出するのは歯がゆい気分だよ」

 

「気にするな、ここは俺たちに任せろ」

 

その中で一人浮かない表情をしているのはゼノヴィアだ。いつもオフェンスを務める彼女に与えられたこれまでとは異なる役割。作戦上仕方なく重要とわかってはいても逃げるような真似をすることは気高い彼女のプライドが許せるものではないのだ。

 

「護衛も立派な任務だ。頼んだぞ」

 

「わかっている。必ずミカエル様たちに危機を伝えるさ」

 

「…ヴァーリたちはともかく、アーシアさんは大丈夫なのか?」

 

「はい。まだまだ頑張ります!」

 

「あなただけに負荷を押し付けてしまっていつも悪いわ、もう少しだけ頑張って頂戴」

 

アーシアさんは俺たちに心配をかけさせまいと元気よく答える。前線で戦う人数が多い分、負傷者は多くなりそれを治療するアーシアさんの負担も大きくなってしまう。

 

彼女の負担を少しでも軽減するために、アルギスや英雄派が新たに作り出した眼魂の中に回復系の能力を持った眼魂があればそれを是非奪いたいところだが。

 

今回ゲオルクによって作られた結界を脱出する方法は一般的に3つある。

 

一つは術者が結界を解除すること。二つは強引に出入りすること。これは京都の玉龍がいい例だが神滅具によって生み出された結界でそれができる実力者はごく限られる。

 

そして3つ目は術者を倒すか、結界を維持している術式あるいはそれを支える装置を破壊すること。当然、術者や装置を守るために死神たちやジーク達が待ち構えているだろうがそこは突破するしかない。

 

そしてその装置がどこにあるか、術者たるゲオルクの所在はルフェイと黒歌たちが魔法と仙術を使って把握していた。場所は三か所、駐車場、ホテルの屋上、そして二階のホール会場に一つずつ。どうやら尾を口にくわえたウロボロスの像らしい。見た目からしてその装置がオーフィス対策であることは理解できる。

 

ゲオルクは駐車場にいるようだが、死神たちも俺たちがホテルに逃げ込み作戦を練る間に増えたらしく、今や駐車場は死神の数に加えジークと信長といった英雄派においても屈指の実力者が揃うことで最も守備が手厚い箇所となっていた。

 

よって、まずは二手に分かれて屋上とホール会場の装置を破壊してから合流し、駐車場の装置を叩くと言った作戦が取られるかと思いきや部長さんは兵藤を驚かせるような作戦を思いついたらしい。俺もそれを聞かされた時にはそんなことができるのかと肝を抜かされた。

 

そしてこれから始まる作戦の要となる兵藤は廊下で待機していた。塔城さんは仙術を使ってホテルにある二つの装置の正確な位置を特定している。そろそろ作業も終わったようで、今は二人で何やら話をしているようだが…。

 

「私、先輩のこと…大好きです。部長やアーシア先輩たちが先にいても必ず追いかけます。もっと強くなります。だから…」

 

一拍置いて彼女の口から飛び出したセリフが、緊張によって静まり返った空気という沈黙の水面に大きな波紋を起こす。

 

「おっきくなったらお嫁さんにしてください」

 

「!!?」

 

「「「「そこで逆プロポーズ!!?」」」」

 

廊下から小さいながらも聞こえてきたセリフにヴァーリチームやオーフィス以外のメンツが大声を上げて驚愕する。黒歌に関しては驚くというよりは面白おかしそうに笑っていた。

 

こっちが緊張しているところになんて会話をしているんだこの二人は!!というかこのタイミングで言う!?

 

「えっと…もっと背とおっぱいを大きくしてくれると嬉しい!」

 

「煩悩丸出しか」

 

そんなプロポーズの返事があっていいのか。もっと真剣に返事をするべきなんじゃないのか!?

 

「…わかりました。これからは牛乳たくさん飲みます。必ず部長や姉さまを超える大きな乳になってみせます」

 

塔城さんはプロポーズに対しても煩悩丸出しな返事をする兵藤に対し、普段なら鋭い突っ込みを入れるところが今回は違って微笑んで前向きに受け入れるのだった。

 

いやそこ了承すんのかい!というか今のタイミングでそういうやり取りをするのやめろ!あまり考えたくないけど死亡フラグになったらどうするんだ!?

 

「…完成しました」

 

そんな二人のやり取りの間にルフェイが脱出用の魔方陣の準備を終えた。この魔方陣で脱出できるのは術者のルフェイ合わせて三人のみだ。必ず結界を破壊して俺たちもその後に続く。

 

「イッセー、やって頂戴」

 

「よし、『龍牙の僧侶』に昇格だ!」

 

部長さんの合図を受けて廊下の兵藤が行動を開始する。背中に赤いオーラが集まると弾けて、瞬時に大きな2つのキャノン砲付きのバックパックを生成した。

 

〔Change Fang Blast!〕

 

そしてなんと、如何にも強力そうなキャノン砲の砲口をそれぞれ上下に向けた。それらが低い唸りを上げながら赤いオーラを蓄えていく。

 

これを思いついたのは部長さんだった。最初はまさかと思っていたので実際にできたのを見て驚いた。使用者の心に感応する神器の特性を生かした案だ。

 

砲口が向けられた先、今兵藤がいる位置の丁度真上に当たる場所には屋上の結界維持装置が、真下の二階ホール会場にも同様に装置が設置されている。

 

残る駐車場の装置の破壊を行うため三手に分かれて行動するよりもこうして同時に装置を狙った方が手っ取り早い。どうせ装置の周りには死神たちが守護するべく集まっているはずだろうし、それらを一網打尽にしつつ装置も破壊する。

 

チャージから数秒、その時を待っていたと言わんばかりに兵藤が叫ぶ。

 

「さあ、行くぜドライグ!!ドラゴンブラスタァァァァッ!!」

 

砲口から赤いオーラの砲撃が迸り、ずどんと天井と床に穴を開ける。今回は範囲を絞る分貫通力と威力を大幅に高めている。今頃紙を破るようにがんがん砲撃が上下階のフロアに穴を開けていることだろう。

 

そして無事着弾したらしく、爆音が聞こえた後にホテルが砲撃の余波で大きく揺れた。魔法を通して、瞑目してフロアの様子を探っていたルフェイが開眼する。

 

〈BGM:仮面ライダーバルカン&バルキリー(仮面ライダーゼロワン)〉

 

「屋上とホールの結界装置が同時に破壊されました!周囲の死神も巻き添えです!」

 

「よし!ゼノヴィア、イリナ、行け!」

 

「はい!必ず天界と魔王様に伝えてくるわ!」

 

「死ぬなよ!」

 

こくりと頷く二人がルフェイと一緒に転移魔方陣の光に呑まれ、その姿を消した。

 

「あとは英雄派と死神をぶっ倒して装置を破壊すれば俺たちの勝ちだ!お前ら張り切っていくぞ!」

 

「「「「「はい!」」」」

 

先生がその手に生み出した光の槍で薙ぎ払い、窓ガラスを粉々に割る。そこから続々とオフェンスを務めるメンバーが翼を広げて、死神たちの跋扈する駐車場へ羽ばたいていった。

 

死神たちもすぐに異変に気付き、迫る前衛組を迎撃するべくローブを風ではためかせながら飛んでいく。彼らが持つ死神の鎌が血に飢えた獣の牙のようにぎらりと輝いた。

 

そして交戦はすぐに始まった。兵藤、木場、部長さん、朱乃さん、先生。彼らが絶え間なく生み出す強烈な魔力や剣閃が死神たちを討ち、空に無数の光芒を描いていく。

 

「よし、俺も行くか」

 

そんな彼らの戦列に加わらんと俺も一歩進み出て飛行能力を持つフーディーニ眼魂を取り出そうとするが。

 

「…あれ?」

 

探せども探せども見つからない。おかしい、どうしたことだ。まさかこの階に来るまでのドタバタの中でうっかり落としてしまったのか?

 

「どうしました?」

 

レイヴェルさんも俺の異変に気付き、声をかけてくる。同時に俺はフーディーニ眼魂の行方を思い出した。

 

「あっ。フーディーニの眼魂、アルギスに奪われたままだった!これじゃあ飛べねえ!」

 

「ええっ!!?」

 

愕然とするオーフィス以外の後衛組。ここに来て俺が飛べないと言い出すとは夢にも思わなかったのだろう。

 

「お前、飛行も眼魂の能力だったのか」

 

「意外にゃん」

 

ヴァーリと黒歌は意外そうな反応を見せる。お前らは自前の羽で飛べるからいいんだろうけどこっちは人間だから頼らざるを得ないんだよ。

 

「はぁ…後方支援に回るか…」

 

〔アーイ!バッチリミロー!カイガン!ロビンフッド!ハロー!アロー!森で会おう!〕

 

ないものねだりをしても仕方ない。今の手持ちでやれることをやるだけだと長距離射撃に優れたロビンフッド眼魂を用いて、ロビン魂に変身する。

 

召喚したガンガンセイバーの先端にコンドルデンワ―が合体して、翼が弓となるアローモードへと変形を遂げる。そしてすぐさま前衛を援護すべく、まさしく矢継ぎ早に霊力の矢を射る。

 

不気味な黒いローブにその中から覗くしゃれこうべ、そして命を刈り取る大鎌とまさしく一般に想像されるイメージと寸分違わぬ姿をした死神たちがこちらの射撃に気付き回避運動を取る。しかし数名の死神は反応が遅れてしまい、翡翠の光の尾を引いて空をかける矢に射貫かれてふらふらと地上へ落下していった。

 

「ケガは私が!」

 

後衛からの援護は俺だけではない。アーシアさんも同じくオーラで弓を生み出し、癒しのオーラを矢の形状に変化させて打ち出していた。命中の精度は中々のものだ。日々の鍛錬ももちろんだが、ロビンフッドのヒーローズ・リインフォースメントを受けたことがきっかけになりコツを掴めたようだ。おかげで練習を始めた当初とは比較にならないほど命中率は上がっている。

 

敵に命中しそうになった場合はオートで霧散し敵の回復をしないような仕様になっている。所有者の優しさゆえに敵すらも癒してしまう神器だがうまいこと制御しているようだ。

 

そして黒歌は一人、防御魔方陣の維持に専念していた。非常階段口や他の部屋からの死神の侵入を防ぐためにも結界は必要だ。

 

まだ万全ではない彼女の体を支えていたのは塔城さんとレイヴェルさんだった。

 

「あら、白音だけじゃなくお嬢ちゃんも助けてくれるの?」

 

「べ、別になんとなくですわ!」

 

「さっきの借りを返すだけです。防御に集中してください」

 

黒歌がからかうように話しかけると素直ではない反応をするレイヴェルさんと冷静に返す塔城さん。二人の対応の差は性格の違いか、こういった相手との付き合いの慣れか。

 

「…まだ姉さまのことは嫌いです。姉さまのせいで辛い目に遭ってきたことを忘れたわけではありません。…でも今だけは、信じます」

 

「そう…白音、仙術だけじゃなくて猫又の妖術も教えてほしい?嫌ならいいけどねん」

 

「教えてください。少しでも強くなるためなら姉さまにも頼ります」

 

そんな塔城さんの言葉を聞いて何を思ったのか、黒歌は思いがけない提案をする。本人も断られるであろうと考えているような口ぶりだったが、意外にも是非と言わんばかりの即答で塔城さんは提案を受け入れた。

 

二人の関係にも変化が現れてきたようだ。一筋縄ではいかないこの姉妹の関係がどうなっていくのか、俺も見届けたい。

 

「禁手でなくとも…」

 

後衛組に参加しているヴァーリも負けじと手から強大な白い魔力の球を放って死神たちを攻撃する。呪いを受けて弱っていても流石ルシファー。一発で数人の死神を同時に倒せるほどの威力を発揮していた。

 

「我も手伝う」

 

さらにオーフィスも攻撃に参加する。すっと彼方の死神たちへ手を向けて光らせた瞬間。

 

ドゴォォォォォォォォン!!!

 

凄まじい爆音と光を伴う爆発が駐車場で巻き起こった。完全に発動までに要する時間とアクションが見合っていない一撃は、多くの死神を消し飛ばしこちらの味方も巻き込んだように見えたが爆炎の中から部長さんたちが飛び出してくるのが見えた。

 

「!!?」

 

「オーフィス強ぇ…」

 

俺もその威力を目の当たりにしてあんぐりと開けた口が戻らない。

 

これが元世界最強の攻撃。力を失った状態でこの威力なのだ。もしサマエルに力を奪われないままだったなら今の一撃でこの結界は消し飛んでいたのだろうか。

 

しかしそれを為したオーフィスの反応は意外なものだった。

 

「…おかしい、加減できない」

 

オーフィスは自分の手のひらを眺め、戸惑うようなセリフをぽつりと吐く。加減していないならそれはあんな威力になるのもうなずける。

 

「オーフィス!お前は戦うな!恐らくサマエルの影響で力のコントロールができなくなっているんだろう!さっきの攻撃を連発されたら俺たちも全滅しかねないからそこで見学してくれ!」

 

〈BGM終了〉

 

遠方から声を飛ばす先生の指示にこくりと頷いて、その場にへたりと座り込んだ。あの一発でも十分やってくれた。

 

しかし死神たちも数が多い。このまま後衛から援護するだけというのもそろそろじれったいが、飛行する手段がない以上はどうしようもない。

 

「ねぇねぇ、私の魔法で一時的に飛べるようにしてあげようか?」

 

「なに、そんなことができるのか!?それならなぜ早く言わなかった!」

 

そんなことを考えていると、黒歌が結界を維持する傍らで思いもよらぬ提案を投げかけてきた。

 

「よくわかんにゃいけど困ってるところが面白かったから♪」

 

「…!」

 

この状況でもマイペース…!ゴーイングマイウェイ…!

 

内心の怒りを抑えながら、努めて冷静に俺は返す。

 

「…できるなら頼みたいが、結界はいいのか?」

 

「結界の維持は問題ないにゃ。うちには飛べない人間のアーサーがいるからルフェイに教えてもらったの。ちょちょいと仕込むからこっちよ」

 

勧められたので銃を下ろして黒歌のもとへ近づく。さっと屈みこんだ黒歌が片手に小さな魔方陣を出現させて強化スーツに覆われた俺の足にかざす。

 

すると両足首に同じ魔方陣が足輪のようにぶうんと展開した。しかし両足を締め付けるような感覚の一切はなく、むしろ心なしか足が軽いような心地がする。

 

「はい、これで完成。イメージは空中を蹴る感じね。さ、行ってくるにゃ!」

 

「うおぉ!?」

 

雑な説明と一緒に黒歌にどんと押し出され、心の準備もできてないまま俺の体はホテルの窓の外へ投げ出される。瞬く間に俺の体は重力に囚われ、風に吹かれながらも地面目掛けて落下を始める。

 

「もっと言うことあるだろぉ!?」

 

30階ほどもあるホテルという高所から叩き落とされれば当然大パニックに陥る。如何に強化スーツを纏っていようとも流石にこの高所から落ちれば全身の骨がバキバキになりかねないし、何より強化スーツの力をもってしてもこの恐怖感は消すことはできない。

 

「イメージは空中を蹴る感じだったか!?」

 

黒歌の言葉を思い出し、藁にも縋る思いで水中でドルフィンキックを決めるように虚空を蹴り上げると、まるで地面を蹴りつけたような感覚と同時に俺の体は上空へと跳び上がった。

 

「うわっ!?」

 

予期せぬ自分の動きに完全に志向が追い付かないながらもそこからさらに後ろを蹴り、俺はたまたま視界に入った死神の一人へ突撃をかける。突っ込んでくる俺に気付いた死神が鎌を振りかかるもそれを咄嗟に射撃で弾き飛ばし、間合いに入るや否やローブに覆われた腹に一発弾丸のようなパンチをお見舞いしてやった。

 

「できたのか…?」

 

もしやと思い、軽く地面を踏むような感じで空を蹴りそれを繰り返す。するとホッピングのようにリズミカルに跳ねることができた。これで滞空ができるわけだ。

 

「案外どうにかなるな」

 

どうにかこの魔法の使い方を理解し、ほっと一息つく。それでも高所にいることには変わりないので下はあまり見たくない。

 

しかし前線に出る以上は遠距離型のロビン魂は不向きだ。

 

〔カイガン!リョウマ!目覚めよ日本!夜明けぜよ!〕

 

〈BGM:仮面ライダースペクター 攻勢(仮面ライダーゴースト)〉

 

藍色のパーカーが美しいリョウマ魂にゴーストチェンジ。コンドルデンワ―がバタバタと羽ばたいて分離したガンガンセイバーをブレードモードに変形させ、死神のもとへと空を蹴って向かう。

 

死神たちは弾丸のように向かってくる俺に気付くや否や、鎌を携えて迎撃の構えを見せた。

 

「はぁ!」

 

奴らを間合いに収めるや否や、凶刃の雨を潜り抜けて剣戟を浴びせる。ふわりと音もなく背後に回り込んできた死神は身を捻って回転斬りで対処、少数の死神の一団を斬り伏せた。それを見て脅威に感じたかさらなる死神たちが仲間のかたき討ちに燃えるかの如く猛進してくる。

 

「次はこれだ」

 

取り出したのはツタンカーメン眼魂。向かってくる死神たちをガンガンセイバー ガンモードの銃撃で牽制をかけながらもドライバーを操作する。

 

〔カイガン!ツタンカーメン!ピラミッドは三角!王家の資格!〕

 

続けてツタンカーメン魂にチェンジ。ドライバーから回転しながら飛び出したガンガンハンド 鎌モードが弾幕を抜けていち早く迫った死神の振り下ろした凶刃を甲高い鉄の音とともに弾き俺の手に収まる。

 

そして手にした鎌で斬閃、ローブもろとも切り裂かれた死神が力なく崩れ落ちていく。

 

「死神の鎌とツタンカーメンの鎌、どっちが強いか勝負と行こうか!」

 

どんと力を込めて空を蹴り、死神たちへ突撃をかける。もとより向こうからも向かってきていたためすぐに衝突の時は訪れた。

 

猛進する勢いを殺さないまま死神の鎌を紙一重で回避して、勢いのまますれ違いざまに刈り取るように死神を斬り伏せる。そこからさらに振り向きざまに鎌を横薙ぎに振るい、残る死神たちを切り裂いた。

 

だが当然それだけでは終わらない。倒れ行く死神たちの間を抜けて飛び出してきた死神が藪から蛇が飛び足したかのように襲い掛かってくる。

 

「おわっ!」

 

襲い来る凶刃の嵐。ぶんぶんと空を裂いて振るわれる鎌を後退しながら弾き、躱してどうにかやり過ごす。そして攻撃の最中に見えたわずかな隙に蹴りを押し込み、鎌を一閃。あえなく死神の体がふらふらと地上に落下していった。

 

しかし敵は俺に一息つく間も与えてくれなかった。先ほど倒して落下する死神と入れ替わるように下から猛然と鎌を携えて空を駆けあがってくる死神が見えた。

 

「おわっ!」

 

足元を蹴り、高く飛びあがって大きく距離を取って躱す。一太刀でも喰らえば寿命を失う恐ろしい一撃だ、何としても躱さなくてはならない。

 

〔ダイカイガン!オメガファング!〕

 

さらに武器をドライバーにかざして霊力を増幅させるダイカイガンを発動。刃に眩い霊力のきらめきが宿る。そこから体を捻って回転を加えた鮮やかな光の斬撃を飛ばし、ブーメランのように空を縦横無尽に駆け巡り死神たちを殲滅させていった。

 

「雷光よ!」

 

「吹き飛びなさい!」

 

離れたところで朱乃さんと部長さんも十八番の攻撃で死神たちの群れを蹴散らしているのが見えた。数々の実戦の中で鍛え上げられた上級悪魔の魔力を止められる者は誰もいなかった。

 

「派手に暴れてるな。なら…」

 

〈BGM終了〉

 

ひとしきり死神たちを蹴散らしたところで、いよいよ駐車場に降り立つ。駐車場はオーフィスの攻撃や兵藤が何度かドラゴンブラスターを放っていたことから舗装はボロボロになりヒビだらけになっている。

 

それに攻撃の余波で発生した粉塵が充満していて視界が悪い。早いところ装置を見つけて破壊しなくては。

 

「!」

 

不意に煙の中に揺らめく影。そこからすぐに煙のとばりを破って続々と現れた死神たちが向かってきた。

 

「せっかくなら初の実戦投入だ」

 

そう思い取り出したのは水色の眼魂、アルギスから奪ったコロンブス眼魂だ。敵が作り出したので何か細工されてないか心配だったが先生に調べてもらい特に問題なしと判断された。

 

そうなれば、使用をためらう理由はない。

 

〔アーイ!バッチリミロー!バッチリミロー!〕

 

それをベルトに装填すると現れたのはエメラルドグリーンのパーカーゴースト。両脇に舵輪が取り付けられており、そのパーカー部分には銀色の錨が輝き目を引く。宙を漂うパーカーゴーストが迫る死神たちを牽制するように飛んだ。

 

〔カイガン!コロンブス!さぁ行こうかい!大航海!〕

 

ドライバーのレバーを引いてそれを纏い変身を遂げたのは仮面ライダースペクター コロンブス魂。奴隷商人としても名をはせたクリストファー・コロンブスに由来するフォームだ。顔面には方位指針の紋様『フェイスコンパス』が浮かび上がっていた。

 

〈挿入歌:Giant Step(仮面ライダーフォーゼ)〉

 

「ふん!」

 

振り下ろされる鎌をガンガンハンドでいなし、お返しに回し蹴りを見舞い、銃撃を浴びせる。続けて向かってきた敵は逆に距離を詰めて殴り飛ばす。

 

左右に敵の気配。二人の死神が挟撃をかけんと迫る。彼らに舵輪の形状をしたエネルギーを放つと、左右の死神たちに巻き付いて硬く拘束し、動きを封じた。

 

「っ!」

 

視界がふと薄暗くなる。見上げると死神たちが真上から奇襲をかけんと襲い掛かろうとしていた。ばっと突き出した左手から高圧水流が唸りを上げて迸り、射線上の死神たちを巻き込んで吹き飛ばす。乱戦状態の今、どこから敵が襲い掛かってきてもおかしくはない。

 

「水系の能力か…今までの眼魂にはなかった特性だな」

 

15の眼魂の中にこういった属性攻撃ができるのは聖なる力を持つヒミコとサンゾウ、雷のエジソンぐらいのものだった。今後も敵から眼魂を奪えばさらに戦いの幅は広がるだろう。戦闘で能力に頼りすぎだと自分でも思う反面、奴らの眼魂で俺の能力の幅が広がるのは複雑な気分だが。

 

〔ダイカイガン!コロンブス!オメガドライブ!〕

 

眼魂の真骨頂たるオメガドライブを発動させ、コロンブス眼魂の霊力を解き放つ。すると地面からどこからともなく大量の水が噴きだして周囲に満ち満ちていき、やがてそれは一定範囲内に波が荒れ狂う海のフィールドを形成する。巻き込まれた死神たちは戸惑いあえなく荒ぶる海に呑まれていき、その自由を奪われる。

 

フィールド内の潮の流れすら意のままに動き、多くの死神たちを潮流を使って一か所に集める。

 

〔ダイカイガン!ガンガンミロー!ガンガンミロー!〕

 

敵は一か所に集まっておりかつ自由に動けない。格好の的となった死神たちを銃口に霊力の光宿したガンガンハンド 銃モードで狙う。

 

〔オメガスパーク!〕

 

迷わず引き金を引くと荒ぶる波のように霊力の飛沫を上げて大きな光弾がどんと発射し、逃げようのない死神たちに命中すると派手に爆散させた。

 

死神たちのせん滅と同時に波のフィールドもざあざあと音を立てながら引いていき、辺りは元の様相を取り戻していく。

 

「ふぅ…」

 

「面白い眼魂使ってるじゃねえか」

 

「!」

 

〈挿入歌終了〉

 

死神たちを倒し一息ついたところに、俺の戦いぶりを見て楽しむような声が聞こえた。それからすぐにざんと煙の帳を切り裂いて悠然と歩んでくるのは甲冑姿の影。

 

英雄派の幹部、信長だ。好戦的な笑みを浮かべて、既に抜刀された刀の切っ先をこちらに向けた。

 

「信長か…!」

 

「渡月橋の時は本気の姿でやり合ってくれなかったからな、続きをやろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、悠河と同じく駐車場に降り立っていた一誠も死神たちを倒したのちにある男と遭遇していた。

 

「やあ、久しぶりだね。赤龍帝」

 

敵という立場を感じさせない気安い調子で話しかけるのは複数の魔剣を帯刀するジークフリート。信長と同じく英雄派の幹部だ。

 

「よー、ジークフリートだっけ。お前が俺の相手をするのか?」

 

「そうだね、正直今の君には中級クラスの死神も太刀打ちできないと分かった以上は僕が相手になるしかない」

 

「中級クラス?」

 

記憶にないと胡乱な声を上げる一誠。

 

「気づかなかったのかい?駐車場に降りてから何人かローブや鎌が他の死神と違う死神と戦っただろう?」

 

「あー、そういえばいたな…」

 

下級の死神ですら下手な中級悪魔と比較すればかなり強い。それ以上の実力を持つ中級の死神と何度か交戦してきたがジークに指摘されて初めて気づくほど、中級の死神たちは一誠の記憶に残る相手ではなかった。

 

「君にとってはその程度の力しかなかったと…新たな力を使わずともそこまで戦えるなんてやはり君は強くなっているよ」

 

「褒めても手加減しねえぞ?」

 

「わかっているよ。むしろこれからの僕相手に手加減する余地なんてないと思うけどね」

 

ずんと重々しいオーラを宿す魔帝剣グラムを抜き放つジーク。さらに彼の背に四本の腕がずりゅと生えてジークが所有する名のある魔剣たちを握る。阿修羅のようなそのシルエットに一誠は戦慄する。

 

「初っ端から禁手かよ…!」

 

「それだけじゃないさ」

 

不敵に笑んで、ジークが懐から何かを取り出す。丸いボールのような形状をしたそのアイテムは一誠の仲間が使っているものと色を除いて全く同じものだった。

 

「それは…!」

 

「英雄シグルドの魂が宿るシグルド眼魂。これを手にしたときどれほど心躍ったか…!」

 

ジークが手に握っているのは、銀色の眼魂。高揚する感情のままにそれを自分の胸に押し当てたジークの体に変化が起きる。

 

「く…うぅ…っ!!」

 

苦悶の声を上げて端正な顔を歪めるジークの全身からくるめく銀色のオーラが迸る。ばちばちと迸るエネルギーがスパークを起こし、やがてオーラは物質化してパーカーとなりジークに被さる。

 

「…!」

 

パーカーはさながら勇ましい騎士の鎧と竜の鱗が融合したかのような形状をしており、フード部分は龍の角がパーカーを身にまとい、グラムをはじめとする魔剣を携えるその威風堂々たる立ち姿は阿修羅のようでもあり、伝承に登場する勇者のようでもあった。

 

「眼魂を我が身に取り込み、その力を顕現させる『英雄化《ヒロイック・ブレイク》』…!英雄シグルドの力、存分に見せてあげるよ…!」

 

その手に握る魔剣のように戦意にぎらついた瞳が、一誠を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「脱出に向けての戦いが始まったか」

 

一誠たちが飛び出したホテルの屋上。ゲオルクが結界を維持する装置の場所に選んだそこは一誠の砲撃によって守護していた死神たち諸共破壊され、オーラを浴びた死神たちが死屍累々と横たわっていた。

 

そこに優雅な足取りで訪れた女性が一人。銀髪の謎めいた女、ポラリスである。

 

「ガルドラボークやレーヴァテイン、ドレイクも外で叶えし者たちと交戦しているか…やはり動いてきたな。前もって待機させておいて正解だったのう」

 

呟く彼女の後方でのらりくらりと立ち上がる死神が一人。ポラリスの姿を認めるや否や鎌を振り上げ切りかかるも、即座に彼の首から上と胴体が切断され、永遠の別れを告げることとなった。

 

ぼとりと落ちた死神の亡骸に目もくれずにポラリスは眼下に広がる戦場を眺めてほくそ笑む。

 

「さて、これから誰にも邪魔されるわけにはいかぬのでな。妾直々に監視させてもらおう」




はい、というわけでまさかのシグルド眼魂です。ゴースト原作のルールから逸脱したD×D世界ならではの眼魂。その恐るべき能力は次回明らかに。

そして当初の15個以外の英雄フォームはコロンブス魂でした。以前のアンケートで意見を頂いていたので、数年越しにはなりましたが無事にリクエストを実現できてこちらとしてもうれしい限りです。そのうち新企画も活動報告でやろうかなと考えているので参加していただけると喜びます。

次回、「英雄化」
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