ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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大変長らくお待たせいたしました。信長戦をどう書こうかと悩んでいたりゲームをしていたら随分と遅くなってしまい申し訳ございません。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
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9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
23.コロンブス


第146話「英雄化」

それは一誠が駐車場に降りて死神やジークと交戦する5分前の出来事だった。

 

「そこ!」

 

リアスの手のひらから放出した滅びのオーラが反応の遅れた死神に食らいつく。しかし一人減った死神の穴を埋めるように今度は二人の死神が迫ってくる。死神の行軍は一向に止まる気配がない。

 

このままでは埒が明かないと判断し、無数の死神たちと上空で激闘を繰り広げる一誠にリアスが声を飛ばす。

 

「イッセー!私と朱乃に譲渡、お願いできる!?」

 

「もちろん!」

 

〔Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!〕

 

「一気に片付けてしまいましょう!」

 

赤い鎧に覆われた腕を振りかぶって死神を殴り飛ばした一誠は神器の能力で力を高めながら竜の翼を羽ばたかせてリアスと朱乃に合流し、華奢な二人の肩に手を置いた。

 

〔Transfer!〕

 

その音声と同時に赤龍帝の膨大な力が二人に流れ込み、リアスと朱乃のオーラは大きく膨れ上がる。溢れ出る力は二人の体から目に見える形で現出する。

 

そして二人は惜しむことなく手を掲げ、高まったオーラを一気に解き放った。

 

「お仕置きの時間ですわ!!」

 

「全員纏めて消し飛びなさいッ!!」

 

雷光と滅び。二つの絶大な力の奔流が轟音とともに空を駆け巡り、あまねく死神たちを瞬く間に飲み込み殲滅していく。逃れようのなく、防ぎようのない二人の悪魔の一撃は空全体を覆いつくすほどだった。ゲオルクの神器によって生み出された疑似空間の夜空に滅びの紅色と雷光の光が渦巻いた。

 

「すげえ…」

 

「よし、これで大体片付いたな!」

 

攻撃を見届けた一誠は二人の絶大な力に感嘆の息をこぼす。アザゼルも二人の攻撃で死神たちが一掃された空を見渡し、地上に降りようとするが。

 

『それはどうでしょうか』

 

アザゼルの足を冷たい手で掴むように、どこからともなく声が聞こえた。不意に感じたオーラ。その出所をアザゼルは視線を向けると、空間がぐにゃりと歪んでその死神は現れた。

 

アザゼルたちが戦ってきた死神と比較して装飾の施された黒いローブ。鎌の刃はリアスたちがこれまで戦っていた死神たちの鎌と違い、光を吸い込むかのような漆黒だ。

 

被った道化師の不気味な仮面と段違いのオーラにリアスたちは瞬時にその危険性を悟った。

 

『初めまして、私はハーデス様にお仕えする最上級死神が一人…プルートと申します』

 

一瞬にして場の空気を支配した死神、プルートは挨拶がてら丁寧なお辞儀を見せる。その名に最も驚いたのはアザゼルだった。

 

「最上級死神のプルートだと…!!ハーデスの野郎、いよいよ本気を出してきたってところか!!」

 

『あなた方はオーフィスと結託し、勢力間の連携を陰から乱し世界のバランスを崩壊させようとしました。まさか誰よりも和平を訴えていたあなたがこのような愚行に走ろうとは』

 

「はぁ!?」

 

でたらめを言うなとプルートに食って掛かろうとする一誠をアザゼルは手で制す。

 

「奴らはそういう理由をでっちあげて俺たちを消す腹積もりなんだよ。ったく、世界のバランスを崩壊させようとしてるのはどっちだってんだ!!」

 

『あなた方にどのような言い分があろうと関係ありません。偽物のオーフィスは我々が回収し…目障りな堕天使と悪魔にはここで消えていただきます』

 

「ちっ、結局は悪魔と堕天使が嫌いなだけかよ…!!」

 

『そういうことです』

 

ガキン!

 

次の瞬間には音もなくアザゼルの眼前に現れたプルートが鎌を振るっていた。命を刈り取る一閃をアザゼルは人工神器の槍で防御する。

 

「さっきの戦いで回復しきっていないがやむを得ないな…!もう少し踏ん張ってくれよ、ファーブニル!!」

 

槍に封じられた龍王の名を呼ぶことでその力は解き放たれる。槍から発せられた黄金の光を浴びたアザゼルは黄金の龍王の鎧を装着し、プルートを激しい剣戟を浴びせつつ一誠たちから離れるように上空へ昇っていく。

 

「俺たちも先生に加勢して…」

 

「いえ、奴はアザゼルに任せましょう。仮にも堕天使総督。恐らくあの最上級死神と正面切って戦えるのは彼だけだわ。彼もそのつもりで私たちから距離を置いたはずよ」

 

先生だけでは心配だとアザゼルを追おうとする一誠をリアスは冷静に引き止める。

 

「そうね…それに今は結界の破壊が最優先。駐車場に降りてゲオルクたちを倒しましょう!」

 

「…了解!」

 

朱乃も納得したことで一誠もアザゼルにプルートを任せることにした。かくして、一誠たちは英雄派の猛者が待ち構える駐車場に降り立ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:一騎打ち(遊戯王ゼアル)〉

 

シグルド眼魂をその身に取り込み、かつての英雄の力を文字通りその身に宿したジークフリート。英雄化を完了すると同時にジークは猛烈な勢いで一誠に迫り、切りかかる。

 

「!」

 

危険を察知した一誠は半ば反射で大きく横っ飛びして回避する。獲物を見失い空振ったグラムはそのまま地面に叩きつけられると軽いクレーターを作り上げた。

 

「やべえな…」

 

そのクレーターを一目見て一誠は強化されたジークのパワーを悟る。それに戦慄するよりも早くジークは一誠へ振り向いて6本の剣を携えた阿修羅のごとき様相で追い打ちをかける。

 

「どうした、逃げるだけかい!赤龍帝!」

 

5本の魔剣、そして光剣が絶えず振るわれ一誠をじりじりと追い詰めていく。歯向かう隙すら与えてくれない剣戟の嵐を前に一誠はただ後退しつつ回避に徹するしかなかった。避けても魔剣に込められたオーラと剣圧が赤い鎧にかすり傷や小さな亀裂を生んだ。

 

「くそ、速ぇ!」

 

どうにかジークの剣戟をまともに受けずに済んでいるのは日頃から木場との訓練を兼ねた勝負に興じていたからであった。その甲斐あって彼は動きの速い剣士との戦いに慣れており、もしそうでなければ初撃で彼はグラムの錆にされていた。

 

しかし今のジークは木場以上のスピードかつ鋭い剣捌きだ。苛烈なジークの攻撃に回避に専念するしかないが、このままではジークも自身の動きを見切り致命的な一撃を繰り出してくるだろう。

 

だから一誠は状況を打破するべく動いた。回避運動の中で籠手に収納していたアスカロンを召喚して袈裟切りを繰り出すジークのダインスレイブを弾いた。

 

「アスカロンか、付け焼刃の聖剣で僕に挑もうなんてね!」

 

だが一本の聖剣だけで状況が一転することはない。どうということはないとジークは身を捻り、鋭いハイキックを一誠の腹に叩きこんだ。

 

「がっ!」

 

「タルンカッペを知っているかい?シグルドが手に入れた魔法の隠れ蓑だ」

 

ジークがばさりとパーカーを翻すと、一瞬にしてジークの姿は辺りの背景に全く溶け込むようにその場から消え失せた。

 

「消えた…?」

 

素早く立ち上がると警戒を緩めず、辺りを見回す一誠。しかしどこにもジークの気配を感じ取ることはできない。

 

「!」

 

突如として目と鼻の先に感じる気配、続けて襲ったのは腹に強烈な殴打を受けた感覚。当然、防護していたはずの赤い鎧はバキバキといともたやすく砕け散る。

 

「ぐぁ!」

 

とてつもない怪力に木っ端のごとく吹き飛び一誠は地面を何度もバウンドして横転した。そして先ほどまで一誠が経っていた場所の空間が不意に歪み、滲み出るようにジークが再び姿を現した。

 

「その力は使用者の姿を消し、さらには力を12倍にする。速さだけが僕の攻め手じゃないんだよ」

 

「マジかよ…」

 

大きなダメージを負った一誠に自身の内に宿るドライグが語り掛ける。

 

『相棒、今の奴は脅威だが特にあの黒い剣は絶対に喰らうな。サマエルほどではないが嫌なオーラが強くなっている』

 

「ドラゴンキラーか…!」

 

「そう、元々グラムは龍殺しの力を秘めているけどシグルドはその魔帝剣グラム、バルムンク、ノートゥングを所持した英雄さ。彼の力を手にした今の僕とグラムとの相性はかつてないほどに良い!」

 

「だったらさっきの攻撃でなんでグラムを叩きこまなかった…?」

 

「せっかく手に入れた念願の力だ。すぐに戦いを終わらせたら面白くないだろう?」

 

「ヴァーリと言いほんとにおめえらは…!」

 

ずきずき痛む上半身を起こし、呆れと苛立ちを交えて吐く一誠。戦いを楽しみたいからあえて終わらせないという狂人の発想など一斉には到底理解できるものではなかった。今のジークは調子に乗っていても仕方ないくらいに優位であり、強い。

 

「でも長く遊んでいると曹操に小言を言われそうだ。今度こそ、このグラムで龍殺しをさせてもらおうかッ!!」

 

今度こそとどめを刺さんとばかりに振るわれる魔剣。しかし颯爽と割って入った影が剣戟を受け止め、甲高い金属音が鳴り響いた。

 

「!」

 

〈BGM終了〉

 

その男の登場にジークは一瞬驚くが、すぐに昂る戦意に口の端を吊り上げた。その男の登場を待っていたと言わんばかりに。

 

「木場祐斗か…!」

 

「京都でのリベンジを果たさせてもらう!」

 

〈BGM:仮面ライダーブレイズのテーマ(仮面ライダーセイバー)〉

 

一誠のピンチに駆け付けた木場。聖魔剣を振るい、ジークも負けじと名のある魔剣たちがぶつかり合う。高速の打ち合いで生まれた剣戟の音と閃光が夜空に瞬く星のように弾じけては消えた。

 

「やるようになったじゃないか!速度も技量も増している!」

 

「あの戦い以来、赤龍帝相手に修行を重ねたからね!」

 

「なら魔剣のフルコースで応じよう!ダインスレイヴ!」

 

「!」

 

その剣の名を叫んだ瞬間。ジークが手にする魔剣のオーラが膨れ上がり、木場の足元に太い氷の柱が次々に生まれる。すぐさま翼を羽ばたかせてその範囲から逃れるが。

 

「バルムンク!ディルヴィング!」

 

矢継ぎ早に残る魔剣の力が炸裂する。地を蹴って跳びあがり、木場に追いつくジークはドリル状のオーラを纏うバルムンクで突きのラッシュを繰り出す。それを木場は聖魔剣で防御せず、体捌きでやり過ごす。

 

「ノートゥング!」

 

さらにジークが横薙ぎに虚空を切り裂くと空間にぽっかりと黒々とした裂け目が生まれた。そこから放たれた吸引力に体勢を崩し、思わず木場は怯むと好機を逃すまいとジークが動く。

 

「!」

 

「遅い!」

 

振りかぶった光の剣を振り下ろし、一太刀を浴びせんと光の切っ先が剣光を走らせる。しかし木場は吸引力を逆に利用し、聖魔剣を振るって光剣にぶつけることでどうにか軌道をそらすことに成功した。

 

「くっ!」

 

それでも光の剣先が右腕にかすめて切り傷を作った。悪魔にとって光は毒。僅かな傷とはいえ感じる痛みと不快感に木場は眉をひそめた。

 

「今のをかすり傷で済ませるなんて流石だね。でも次は外さない!」

 

「木場、離れろ!」

 

再びバルムンクでドリルのように回転するオーラを纏った突きを放つも、意気揚々と割って入ったのは一誠の声。反応したジークと木場が振り向いた先には両肩に赤い光を蓄えたキャノン砲を構えた一誠がいた。

 

そこからの木場の行動は早かった。一瞬のスキを逃すまいと手にした聖魔剣をなんとジークに投擲。怯んだジークが咄嗟に弾く間に木場は後退していく。

 

そしてその隙に一誠が吼えた。

 

「ドラゴンブラスターァァァ!!」

 

「!」

 

二門の砲口から赤いオーラが迸り、間もなくジークに着弾。瞬く間に彼を飲み込むだけでなくその先にいた死神たちも巻き添えにして体を震わせる大爆発を起こす。砲撃から退避した木場が一誠の隣に着地すると爆風が二人に吹き付け、木場の金髪をなびかせた。

 

「どうだ、完全に当たったぞ!」

 

確かに感じた手ごたえに拳を握って一誠はガッツポーズを見せる。この攻撃を真正面から受けて無傷はまずないだろうという自負があった。

 

しかし彼らの歓喜を打ち破るように煙の中からドンとオーラが弾け、煙幕を一息で吹き飛ばす。そして姿を見せたのは全く無傷のジークだった。

 

「ふん」

 

ジークはパーカーに付着した埃をぱんぱんと手で払うとにやりとした笑みを二人に向けた。

 

「効かないね」

 

「嘘だろ…無傷かよ!!」

 

全くダメージが通っていない彼の姿に一誠たちの開いた口が塞がらない。真紅の鎧ではないにせよ彼の技の中ではトップクラスの一撃だ。それが全く通用しないレベルにまでパワーアップしているとは思いもしなかった。

 

「英雄シグルドは屠った龍の血を浴び、強靭な肉体を手に入れた!半端な攻撃が通じるとは思わないことだね!」

 

「剣は多いし、攻撃は強いし、速いし、硬いし…こいつ無敵か!?」

 

眼魂一つでここまでの進化を遂げたジークに一誠は戦慄を禁じ得なかった。同じく眼魂の力で戦う悠河でもたった一つの眼魂によってここまでのパワーアップを果たすことはできなかった。ジークは一つの眼魂の力を悠河以上に、最大限引き出している。

 

「いや…英雄シグルドの伝説に由来する能力なら、きっと伝説の中に攻略のヒントがある!」

 

だが木場は諦めていなかった。少しでも眼魂の能力の由来となった人物の情報から突破口を見つけようと冷静に頭をフル稼働させて考える。前回の戦いで敗北を喫したこともあり、木場は普段の鍛錬に一層注力するのみならず、彼に由来する英雄シグルドの伝承も調べ上げていた。

 

「へえ…その通りだよ。どうせ有名だし言っておくけどこの強靭な肉体の弱点は背中さ。龍の血を浴びた時、シグルドの背に菩提樹の葉が張り付いていたせいで背中だけその恩恵にあずかれなかった」

 

今の自身と相対してなお戦意を失わない木場に感心する声をジークは上げる。もしここで木場が折れていたらジークは心底失望したところだった。

 

彼の言う通り、シグルド眼魂のパーカーゴーストの背部には小さな菩提樹の葉の紋様が刻まれている。まるで一叙事詩の英雄という絶大な力の代償と言わんばかりにその弱点は一目瞭然の目印になっていた。

 

「でもその弱点すら、僕の禁手の腕でカバーできる!無敵なんだよ、僕は!君たちに勝ち目はない!」

 

しかしジークの禁手によって増えた四本の腕は死角からの攻撃を防ぐ。力と魂を受け継いだ英雄と同じへまは踏まないという確固たる自信が彼にはある。勝ち誇ったように深い笑みを相対する二人に向けた。

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

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駐車場に降りて英雄派の幹部、信長との戦闘を開始した俺はプライムスペクターへと変身し様々な英雄の力を組み合わせて応戦していた。

 

しかし幹部を名乗るだけあり奴の実力はかなりのもので、禁手を使わずともプライムスペクターの力に負けずとも劣らずの戦闘力を発揮している。互いが互いの攻撃を防ぐかいなすを繰り返し、戦況は現在拮抗状態にあった。

 

〈BGM:MASURAO(機動戦士ガンダムOO)〉

 

「そらどうしたぁ!」

 

こちらを挑発しつつ己を鼓舞するように信長が笑う。ノブナガ眼魂の力で増幅させたガンガンセイバー ガンモードの銃撃を放つもことごとくを宝石の障壁で阻まれてしまう。

 

「プライムスペクターの攻撃も弾くのか!!」

 

「言ったろ、俺の防御は全ての攻撃を弾く!」

 

そして入れ替わるように信長は宝石で形成された無数の矢の雨を俺に向けて降らせた。だがその技はすでに見切っている。その対策法も。

 

〔ニュートン!〕

 

慌てることなく咄嗟にニュートン魂の能力を発動。斥力フィールドを周囲に発生させて降り注ぐ矢の雨を再び天に返した。

 

「な!」

 

「お前の遠距離攻撃は全て跳ね返せるぞ。防御ばかりで攻撃はイマイチだな」

 

「だったら近接戦に持ち込むだけだ!」

 

敵の動揺は一瞬だけで、信長は即座に腰に帯刀した日本刀を鞘から抜き放ち俺目掛けて馳せた。

 

「うらぁ!」

 

対するこちらもガンガンセイバーを素早くブレードモードに変形し、それを迎え撃つ。接近し、裂ぱくの叫びを上げながら繰り出された信長の剣戟を受け止める。

 

「遠距離戦だけしかできねえなら早雲を倒せるわけねえだろ!」

 

「!」

 

果敢に攻める奴の剣のセンスは木場やジークほどではないにせよ、それでも決して侮れない鋭い剣裁きだ。日本刀はこういったチャンバラをするには西洋の両刃剣と違い向いていないと聞いているが、その特徴を感じさせない躊躇のない苛烈な剣裁きで奴は攻め立ててくる。もしかすると自身の神器の能力を応用して強度を底上げしているのかもしれない。

 

「早雲…六華閃の天峰のことか!どうしてあんなことを!!」

 

袈裟切りを二振りの刃で弾き、剣と共に言葉を交わす。サイン家に続き天峰の前当主の殺害は英雄派の凶行として大きなニュースになっていた。特にレジスタンスには六華閃の協力者が二人もいるため今回の事件は

 

「どうしても何も、俺らとの取引を蹴ったからに決まってるだろ!テロリストとは組まないなんてほざいて粋がりやがって、スダルシャナも早雲も己のプライドに殺されたんだよ!」

 

「お前…早雲は実の父親なんだろう!」

 

「父親なんて呼ぶに値しねえよあんな奴!俺にあんな仕打ちをしておいて今わの際に父親面だぁ?だったら最初からんなことしてんじゃねえ!迷ってるから弱いんだよ!!」

 

奴の剣に怒りが乗ったらしく、繰り出される数々の剣戟がより苛烈なものになっていく。

 

「早雲のクソオヤジよりスダルシャナの方がよほど強かったぜ?俺たち全員で禁手しても互角に立ち回って来たんだからな!ゲオルクが奴の娘を人質に取らなければほんとに危ないところだったぜ!」

 

「そんな卑怯な真似まで…だから俺はお前らテロリストが嫌いなんだよ!」

 

自身の要求を押し通すためなら他者への迷惑などお構いなしに暴力を振るい蹂躙する。いや、むしろこいつらの場合は目的と手段が入れ替わっているのだろう。要求を吞ませるために戦うことが、戦うために要求を押し通そうとしている。そもそも最初から交渉が決裂しようがしまいがどちらでもよかったのかもしれない。

 

今わかった。こいつら…少なくともこの男は英雄になりたいのではない。ただ強者との戦いに身を投じ、己の力を振るいたいだけだ。

 

「お前らは自分のルーツを過去の英雄に見出し、その偉大さと己の力に酔っているだけだ!お前らの行いに過去の英雄のような偉大さはどこにもない!」

 

滾る怒りを霊力に変えて双剣にヒミコの火炎を纏わせ、斬撃に乗せて分厚い炎の幕を広げる。

 

「おっと!」

 

それを奴は甲冑の重さを感じさせない軽い身のこなしでステップを踏んで火炎の範囲から逃れた。こいつ、戦闘を強力な神器に依存しているだけかと思っていたがそうでもないらしい。剣技を磨き、体も相当に鍛え上げられている。

 

〈BGM終了〉

 

「ん」

 

少し離れたところで赤いオーラが着弾し大きな音を立てながら爆ぜるのが視界の隅に映った。見覚えのないパーカーゴーストらしきものを纏ったジークフリートが現れ、兵藤や木場と交戦している。

 

俺の視線に気づいた信長もその方角をちらりと見るとにやりと笑んだ。

 

「ジークの奴、やってるな」

 

「なんだあれは…?」

 

「英雄化《ヒロイック・ブレイク》。俺たちが神器研究と眼魂研究によって生み出した技法だ。一定数の親和率を超えた眼魂をその身に取り込むことで眼魂の能力を発揮し肉体を強化できる!」

 

「なんだと…!?」

 

奴ら、眼魂をそんな風に使う術を作りやがったのか!眼魂をまるでガイアメモリのように使いやがって!

 

「しかもあいつとシグルド眼魂のシンクロ率は俺たちの中でトップだ。アレを発動したあいつはもうだれにも止められねえ。神器の強化率で言えばアレには劣るが、それでも強力な力だ」

 

「お前は使わないのか?」

 

「使うさ、お前のノブナガ眼魂を手に入れてな!!」

 

突然、俺たちの戦いに割って入るように天から信長目掛け雷が降る。しかし奴はそれをまるで傘のように頭上に障壁を張ることで事なきを得た。

 

「!」

 

「幹部相手なら」

 

「お供しますわ!」

 

何事かと思い空を見上げる。空から降って来た声の主は我らが部長さんと朱乃さん。大火力にものを言わせて死神たちを一気に始末した彼女らの参戦はありがたいところだ。

 

「…!ありがとうございます!」

 

〔ムサシ!エジソン!ノブナガ!ヒーローズ・ドライブ!〕

 

手を貸してくれる頼もしい先輩たちの登場に安堵しつつもドライバーと合体したプライムトリガーを操作し、本日二度目のヒーローズ・リインフォースメントを発動。ドライバーから出でたノブナガゴーストとエジソンゴーストがそれぞれ部長さんたちのもとへ飛び立ち、覆いかぶさった。

 

ムサシだけはジークと交戦中の木場のもとに向かっていった。これでジーク攻略の力になってくれたらいいのだが。

 

曹操戦の負担を誤魔化したうえでの二度目の発動。正直後が怖いが出し惜しみはしていられない。ここで負ければその後すらないのだから。

 

「…俺の前でそれを使うたぁ見せつけてくれるじゃないか」

 

「あなたもそろそろ禁手を使う頃かしらね?」

 

翼を広げて空から信長を睨みつける、ノブナガのパーカーゴーストを纏った部長さん。それを見上げる信長の視線が交錯する。

 

「いや、手札はまだ他にもあるぜ」

 

おもむろに奴が取り出したのはピストル型の注射器。「なんだそれは」というよりも速くそれを首元に打ち込んだ信長の体に変化が起こる。

 

「うっ…おぉぉぉぉぉ…!!」

 

むくむくと体が膨れ上がり、ぶちっと服を破いて背中から黒と茶が入り混じった鳥の翼が出現する。さらには脚部も骨が折れるような痛々しい音を立てながらも逆関節へ変形し、足もさながら猛禽類を思わせるような鋭利な爪を生やした形状になった。

 

「ぐぁぁぁぁっ…!!」

 

体は鳥のような羽毛に覆われ、随所に宝玉のように煌めく棘が突き出る。まだ羽毛に覆われはしたものの劇的な形状変化はなかった両腕には神器で生成したであろう装甲と爪が装備された。その驚異の変化は俺たちを唖然とさせ、動きを止めるには十分すぎた。

 

そうした変化の果て、額に2本の雄々しい角と羽飾りを生やした信長が凶悪な人相で笑う。

 

「これが俺の業魔化《カオス・ドライブ》…!俺たちが編み出した技法は英雄化だけじゃねえ!」

 

「なんなの…これ…」

 

「四大魔王の血族の血液を加工したものを神器にドーピングしたのさ。魔王と聖書の神、相反する二つの存在の力が交わりし時何が起こるか…いくつもの実験と犠牲の果てに俺たちはこの境地に辿り着いた!」

 

同じ神器研究を行う先生でも立場もあって、そのような危険極まりないやり方は考えもつかなかっただろう。

 

「裕斗の聖魔剣とはまた違う聖魔の融合ということね」

 

「でも見た感じ何かしらのリスクがありそうですわ」

 

朱乃さんの言う通りだ。ここまで大きな肉体変化を伴うパワーアップは体への負担も大きいに違いないし、恐らく元に戻れるかも怪しいだろう。

 

「それに禁手ではなくこっちを使ったということは…」

 

「どうにもこいつと俺の禁手はかみ合わせが悪いらしくてな、だが貴様らを狩るには十分だ。まずは…」

 

信長の漆黒に染まった眼が俺の右隣に立つ部長さんをじろりと捉えた。

 

「司令塔のお前からだ!!」

 

吼える信長がばさりと翼を羽ばたかせ、凄まじいスピードで迫る。

 

「危ない!!」

 

咄嗟に隣の部長さんへ走って押し飛ばすも、代わりに俺が奴の両足にがしりと捕まってしまう。まるで隼が小動物を狩るようにあえなく猛スピードで攫われたのだった。

 




信長の業魔人のイメージはドラクエ8のドルマゲスと最近登場したばかりのデモンズ アノマロカリスゲノムです。織田信長は鷹狩を好んでいたのもあって鷹もモチーフに加えています。禁手のお披露目はまだ取っておきたかったのでせっかくなら原作で業魔人の影が薄いので出してみようということで登場しました。

業魔人と英雄化の違いとして、業魔人は神器持ちのみが使用できますが英雄化は神器もちでなくても使えます。ただ、英雄化の出力は業魔人以上に眼魂との相性に左右されるため安定性で言えば業魔人が勝ります。しかし相性次第で最大火力は英雄化の方に軍配が上がるといったところです。

次回、「シグルドの背中」
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