ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
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2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
23.コロンブス
31.ライト
41.シグルド
42.ユキムラ
44.ハンゾウ


第155話「大王とスペクター」

冥界の首都リリスへ向かう道中。暗雲漂いより不気味さを増していく薄紫の空を悠々と航行するのは空飛ぶ怪舟キャプテンゴーストだ。グレモリー城への移動にも使ったが、今度は飛行による体力温存のためにサイラオーグさんを始めとするバアル眷属も乗せて行くことになった。

 

「…で、今に至ると」

 

「ふむ…なるほど」

 

「あなたも大変な人生を歩んできたのね」

 

彼らは人間の俺がどういう経緯で自分たちを打ち負かしたグレモリー眷属と行動を共にしているのか興味津々で、根掘り葉掘り聞いてきたのだ。流石に転生がらみの事情は伏せたが。

 

「助平ではないにせよ、お前も俺や兵藤一誠と同類だな」

 

「俺が、ですか?」

 

サイラオーグさんの意見に俺はふと首をかしげる。俺はあの二人のように筋肉粒々ではないしあそこまでの殴り合いはできないが。

 

「ああ。お前もここに来るまで一途に修練を積み重ねてきたのだろう?譲れないもののために戦ってきたのなら、俺たちと何が違う」

 

「…言われてみればそうですね」

 

夢のために戦うサイラオーグさん、主の夢のために戦う兵藤、妹を救うという目的と仲間のために戦う俺。俺たちは非力からスタートし、険しい修練と戦いを乗り越えてここまでの力を得た。

 

そう表現すれば俺たち三人は同じ人生、似た人生を歩んできたと言える。俺のこれまでを聞いたサイラオーグさんが自身の境遇と重ねたのも無理はないだろう。なにせ気絶しても戦おうとするほどこの人は譲れない夢に対する思いが強いのだから。他者が胸に抱く譲れないものに対して人一倍に敏感なことに何ら不思議はない。

 

「類は友を呼ぶ、という人間界の言葉があるそうですよ」

 

「なるほど、まさしくそれだ」

 

博識な『女王』のクイーシャさんのコメントにそうだとポンと手を打つサイラオーグさん。

 

類は友を呼ぶか。どちらかというとサイラオーグさんは尊敬に値する人という位置づけなのだが…まさか、いつかはサイラオーグさんを友と呼ぶ日が…?

 

「…そういえば皆さんの中は元七十二柱の出身で、中には人間と悪魔のハーフの方もいるんですよね」

 

バアル眷属はクイーシャさんを除いて元七十二柱のお家の悪魔で構成されている。クイーシャさんのアバドン家だけは現政府から距離を置いている番外の悪魔《エキストラ・デーモン》で、レーティングゲーム三位を輩出した実績もある七十二柱に負けず劣らず強力な悪魔の一族だ。

 

「そうね、ミスティータとリーバンと…あとはラードラね」

 

コリアナさんが名前を口にした三人に視線を走らせる。

 

ミスティータさんとリーバンさんの二人は神器所有者であり、その強力な能力でゼノヴィアやロスヴァイセ先生を苦しめたものだった。ラードラさんはドラゴンに変化してギャスパー君を手ひどく痛めつけたが…あれは試合だし仕方ない。

 

『試合とはいえ、君の仲間に酷いことをしてしまった。すまない』

 

船に乗るなり一番最初に話しかけてきたのはラードラさんだった。あの戦いを見ていていい気分ではなかったが、試合であることと本人の謝罪もあって俺は水に流すことにした。すぐに謝罪してきたあたり本人も気にしていたんだろう。真面目な人だということが良く伝わった。

 

「皆さんも類は友を呼ぶって言葉の通りなんですか?」

 

「うん。未だ純血主義の根強い元七十二柱のお家では、僕たちのようなハーフに居場所はなかった」

 

「半端者の悪魔、元七十二柱に相応しくないと蔑まれてきたが…そんな我々でもサイラオーグ様は必要だとしてくれたのだ」

 

「だから俺たちはサイラオーグ様を全身全霊で支えたいんだ。生まれに関係なく、実力があればのし上がっていける冥界を実現したいんだよ」

 

そう語るリーバンさんたちの双眸には主と彼が掲げる夢への熱い信頼と切望があった。苦しい境遇を生きてきた彼らにとってサイラオーグさんはまさしく彼らを救ってくれた希望の光であり、未来への可能性そのものだ。

 

「それはハーフでない我々も同じこと。その夢に向かうのがサイラオーグ様だからこそ忠を尽くすのだ。だろう、レグルス?」

 

青ざめた馬を撫でるベルーガさんに話を振られ、こくりと頷く仮面の兵士レグルス。

 

「主を失った神器である私も、サイラオーグ様の心に真っすぐな強き意志を信じここに身を置いている」

 

「…試合では負けたけど、私たちの歩みが止まったわけじゃない。私たちはこれからもサイラオーグ様と共に研鑽を重ね、あなたの仲間に打ち勝って見せるわ。サイラオーグ様、そうですよね?」

 

「お前たち…」

 

レグルスさんやクイーシャさんたち仲間からの熱い信頼の言葉にいよいよサイラオーグさんも珍しいことに照れ恥ずかしくなってきたらしく、顔を仄かに赤くして背けた。

 

俺達グレモリー組もだが、バアルも相当仲間同士の信頼関係が築けているチームという印象だ。以前はサイラオーグさん以外は俺達と戦うライバル…あるいは敵というイメージだったが、やはり互いの腹を割って会話を交わすことでそのイメージは変わった。

 

彼らも彼らなりのバックボーンがあり、胸に秘めた信念のために戦っているのだ。そして信念を持った相手は例外なく強い。バアルも、英雄派も。能力だけでなく、その信念あればこそ彼らはここまで這いあがったこれたのだろう。

 

ごぉぉぉぉ…。

 

会話の最中、どこからともなく響いてくる不躾な獣の咆哮が水を差す。

 

その音で即座に警戒の色に表情を染め上げたサイラオーグさんたちが周囲を見回し、あるいは船の縁に身を乗り出して地上に索敵の目を躍らせる。

 

「サイラオーグ様、あちらを!」

 

慌てたようにベルーガさんが地上を指さす。その方向にあるのは冥界には珍しくない村といえるような町だ。そこに、平穏とは似つかわしくない凶悪なモノが流れつこうとしている。

 

「なぜ魔獣があそこにいる?『豪獣鬼』や『超獣鬼』」の進行ルートからは外れているはずだが…」

 

今、冥界を大いに騒がせる13体の大型魔獣。奴らが生み出した小型の魔獣の群れが集落に雪崩れ込んでいるのだ。空から見ると、黒い塊のように見える。

 

だが近くに彼らの親となる豪獣鬼はいない。政府の公表した情報によれば魔獣は親から離れずに共に行動しているはずだが。

 

怪訝に魔獣の進撃を思う俺達。その中で一人、ミスティータさんが突然血相を変える。

 

「…待ってください、まだあの集落には人がいます!」

 

「えっ!?」

 

「なんだと!?」

 

動揺が走る船上。目につく生物の一切合切を食らいつくす魔獣の凶暴性は重々承知している。このままだと甚大な犠牲が出ることは間違いない。

 

となれば、やることは一つだ。

 

「サイラオーグさん」

 

「わかっている。あれを放っておくわけにはいくまい、行くぞ!」

 

「はっ!」

 

決断は早く、サイラオーグさん率いるバアル眷属が次々に翼を広げて眼下の集落に飛び出していく。

 

「よし、俺も…」

 

意気揚々と彼らに続かんと眼魂を取り出そうとするが、そこで気づいてしまう。

 

「飛べる眼魂は今持ってないんだった…」

 

現在、飛行能力のあるフーディーニ眼魂はアルギスに奪われたままだ。このまま彼らと同じように飛び出せばそのまま地面に体を打ち付け、大惨事は免れない。

 

「あ、そういえば」

 

ふと思いつく。つい先日の英雄派との戦闘で奪った4つの眼魂。どれも奴らが新しく生み出したもので全くその能力については未知のそれがあるではないか。

 

その中の一つに、かの有名なライト兄弟の眼魂がある。その名誉の所以を考えればその能力は…。

 

「試し撃ちもしてないぶっつけ本番だが…!」

 

ごちゃごちゃ考える暇はないと、早速薄琥珀色のライト眼魂を差し込んだ。

 

〔アーイ!バッチリミロー!〕

 

ドライバーから出現したのは、彼らの発明した昔ながらのプロペラ付き飛行機がそのままパーカーと融合したかのようなシルエットの大型のパーカーゴーストだ。音もなく浮遊するこれまでのパーカーゴーストと違い、プロペラの回転音を盛んに立てながら空を悠々と舞う。

 

〔カイガン!ライト!飛ぼうぜ!プロペラ!回ってら!〕

 

レバーを引くことで解き放った霊力をその身にまとう変身と共にパーカーゴーストもばさりと覆い被さる。

 

顔面に浮かび上がるはプロペラを連想させる模様『フェイスフライヤー』。仮面ライダースペクター ライト魂、といったところか。

 

世界で初の有人動力飛行を成功させたライト兄弟に由来する力を持ったこのフォーム。察しの通り、その能力は。

 

「行くか」

 

〈BGM:乱戦エクストリーム(仮面ライダーw)〉

 

両肩のグライダー型のアーマー後方に取り付けられたプロペラが高速回転を始めて唸りを上げる。霊力を動力源にするそれが風と浮力を同時に発生させ、俺の体を空中へ誘う。

 

そして思うがままに俺は空中へ身を躍らせ、魔獣たちの跋扈する地上向けて飛び立った。

 

空を踊るように舞い、風を切り、魔獣たちとの距離が縮んて行く中で俺は感じた。

 

速い。飛行速度で言えばフーディーニより上だ。ただ、向こうはチェーンを使った攻撃があり地上戦も対応できるので飛行能力しかないこのライト魂は完全な上位互換とは言えないだろう。正直なところ、パーカーゴーストの重量もありこのフォームで地上戦はかなりキツイ。

 

だが今は飛行できる種族が多い異形を相手にする中で飛行能力があるというだけでありがたい。英雄派の連中から奪えて本当に良かったとつくづく思う。

 

「!」

 

何匹かの翼を持った魔獣がこちらの存在に気付いた。獰猛な唸り声を上げてこちらに向かってくる。

 

すかさずこちらはガンガンハンドを召喚し、銃撃を放って応戦。光弾の雨を浴び、胴や翼を撃ち抜かれた魔獣たちはあえなく墜落していく。

 

それでも向かってくる魔獣たちを迎撃するべくコブラケータイを合体、鎌モードに移行させる。

 

「GAAA!!」

 

恐ろしい金切り声を発して魔獣が鋭利な爪を振り下ろしてくる。その軌道をガンガンハンドをぶつけて逸らし、返す刃で両断。

 

「ふ」

 

返り血を振って落とすとプロペラの回転をさらに上げ、高速飛行を開始する。

 

飛行機と一体化したようなこの姿と絶えず耳に流れ込むプロペラの駆動音を聞きながらの飛行はまるで自分が飛行機そのものになったかのような錯覚をもたらす。

 

「来れるものなら来てみろ!」

 

当然、魔獣どもが追随する。しかしこちらのスピードが勝っているため一向に追いつくことはできず、奴らは俺の自由自在な機動に翻弄されるばかりだ。

 

とどめの一撃を放つべく、ドライバーのレバーを引く。

 

〔ダイカイガン!ライト!オメガドライブ!〕

 

「はぁっ!」

 

「GAAA!?」

 

ドライバーから溢れ出した霊力が一気にガンガンハンドの刃に収束。急旋回し、俺を追いかけていた魔獣たちをすれ違いざまに切り裂く。

 

「ピリオドだ!」

 

一度気合の一声と共に振るえば霊力の乗った斬撃はたちまち高速回転するプロペラの形へと変わり、縦横無尽に空を飛び回っては薄琥珀色の閃光の尾を引きながら魔獣たちを切り刻んだ。

 

そして最後にガンガンハンドのトリガーを引くと同時、エネルギーが弾けて拡散し残った魔獣を千々に切り裂いて殲滅した。

 

「空にいる奴はこれで全部か」

 

ざっと見渡すが、飛行タイプの魔獣はどこにも見当たらない。そう判断するや否や、さっそく高度を下げてバアル眷属が向かった地上へ向かう。

 

「グォォォ!!」

 

地上に降り立つと、魔獣の攻撃を受け破壊されようとしている集落の街並みの中で先行していたバアル眷属の面々が奮闘していた。

 

『戦車』のラードラ・ブネが試合の時と同様にドラゴン化し、魔獣を踏みつぶしたり摘まみ上げては引きちぎって確実に一体ずつとどめを刺している。

 

「ぬぅん!!」

 

『戦車』のガンドラ・バラムさんがうなり声を上げながら自分より二回りは大きい魔獣を持ち上げ、宙に放り投げる。

 

「馳せるぞ、アルトブラウ!」

 

そして宙に放り出された魔獣に追いつくほどのスピードで愛馬のアルトブラウと共に『騎士』のベルーガ・フールカスさんが一瞬で距離を詰める。

 

瞬く一閃。繰り出される流星のごとき突きの嵐。

 

巨獣はあっという間に血しぶきを噴き上げて絶命する。ベルーガの進撃はなおも止まらず、高速移動による無数の残像を伴いながら地上の魔獣目掛けて急降下、そのまま攻撃を仕掛け始めた。

 

すれ違いざまに突きを入れ、あるいは切り裂いて次々に魔獣を仕留めていく。鮮やかな武器裁きの前に数秒と呼吸を保っていられる魔獣などいない・

 

「堕ちなさい!」

 

そこに『僧侶』のコリアナ・アンドレアルフスとミスティータ・サブノックの魔法による援護も加わる。驚くほどのスピードで魔獣は数を減らしていき、全滅へとその歩みを進めていく。

 

「はっ!」

 

そして大地を揺るがす轟音を生み出すパンチ。一撃で魔獣を沈める拳打の主こそサイラオーグさん。

 

魔獣の嚙みつきを軌道をそらすためのパンチで討ち沈め、一発魔獣の腹にパンチを入れて吹き飛ばせば大勢の魔獣を巻き込んでそのまま倒してしまう。

 

「サイラオーグ様、住民の避難誘導が完了しました!」

 

「よくやった!」

 

住民の避難に徹していたらしい『騎士』のリーバンさんと『女王』のクイーシャさんに言葉を返しながらも、魔獣の鋭利な爪をはやした抜き手を躱しざまにカウンターの拳を打ち込んだサイラオーグさん。

 

〔カイガン!ニュートン!リンゴが落下!引き寄せまっか!〕

 

こちらも負けじと魔獣と交戦を開始。ニュートン魂に変化し引力フィールドを使って魔獣と一か所にかき集める。

 

「キャプテンゴースト!」

 

合図の声を上げると、とどめと言わんばかりに上空のキャプテンゴーストが船首からセイリングキャノンを発射。俺が引力で集めた魔獣の塊に間もなく閃光が炸裂して、爆発とともに跡形もなく消し飛ばした。

 

「GOAAAAAH!!」

 

息つく間もなく突如として響く轟音。今まで戦った魔獣よりも二回りも大きな四本の腕で瓦礫をはねのけながら這いまわる魔獣が現れた。刺々しい牙を蓄え、すぐにでも食らいつかんと口を大きく開けて吼え散らかしている。

 

知性も理性もなく本能のままに暴れるだけの怪物。だが俺たちが臆することはない。

 

「共に行くぞ、紀伊国悠ッ!」

 

「はい!」

 

俺とサイラオーグさんは微塵の恐怖もなく踏み込み前進。

 

〔ダイカイガン!ニュートン!オメガドライブ!〕

 

「おぉぉぉ…」

 

俺はオメガドライブを発動させて左拳に霊力を集中させる。サイラオーグさんも呼吸を整え、右拳に猛々しい純粋なパワーを込める。

 

「GYAAAAAAAA!!」

 

間合いに入る。魔獣は剛腕を振るって俺たちを捕まえようとするがそれを見事にかわしてのける。サイラオーグさんに至っては拳をぶつけてその軌道をそらしていた。

 

そして魔獣との距離がゼロになった瞬間。

 

「「はぁっ!!」」

 

二人同時に振りぬいた拳、魔獣の腹にめり込むや否や込められた霊力とただ研鑽を重ねに重ねた拳により魔獣の体は耐え切れず無残にも四散した。

 

〈BGM終了〉

 

「見事です、サイラオーグ様」

 

四散する魔獣の断末魔の悲鳴を最後に戦いの音がやむ。戦いを終えたらしく眷属の面々も集まって来た。

 

「…これで魔獣は片付いたか」

 

凶暴な魔獣の気配が消え、息を吐いて辺りを見渡す。戦いの余波で建物のいくつかが崩壊して瓦礫の山を築いているが、幸いにもケガした住民の姿や住民の死体は一つもない。

 

「住民の中にケガをしたものは?」

 

「一人もいませんでした」

 

「そうか…しかし、何故ここに魔獣が」

 

「サイラオーグ様!」

 

突然のラードラさんの叫び。サイラオーグさんの背後から飛んできた煌めく鋭利な石礫に俺も気づいた。

 

「ッ!」

 

咄嗟に斥力フィールドを発生。明らかにサイラオーグさんを狙ったそれをすべて彼方に弾いた。

 

戦いが終わって落ち着き油断したタイミングを狙うなんて随分こすいことをしてくれる。しかしこの攻撃は…。

 

「やっぱりその能力強すぎだろ。真っ先にその眼魂を奪わなきゃならねえな」

 

その想像通りに、つい先日激闘を繰り広げた男の声が建物の残骸の物陰より、悠然とした歩みでやって来る。

 

「貴様は…」

 

「信長!」

 

「よお、英雄使い。バアル。残念だがここから先は通行止めだ」

 

またしても現れた英雄派の幹部、信長が豪胆な笑みを浮かべて俺たちの前に立ちはだかった。

 

いつもなら最悪のタイミング、というところだが今回に限っては最高のタイミングだ。ここで出てくるなんて鴨が葱を背負って来るとはまさにこのことだ。この男に俺は会いたかった。

 

「サイラオーグさん、ここは俺一人で食い止めます。先にリリスに向かって防衛に加わってください」

 

「なに?」

 

「あなたほどの戦力を足止めされるのはまずい。それにこいつとは因縁も聞き出したいこともある。だから俺が残ります」

 

「…わかった。リーバン!」

 

「はっ!」

 

これ以上は野暮だと感じたか、意見せず静かに答えたサイラオーグさんは騎士の名を呼ぶ。それだけですべてを理解した彼は妖しい輝きで目を光らせる。

 

「!」

 

刹那、信長の動きが一瞬ぐらっとよろめき崩れた。彼の持つ神器、『魔眼の生む枷』の力で重力をかけられて動きを鈍らせているのだ。

 

「去り際に手傷の一つでも!」

 

この隙を逃すまいと眷属の何人かが信長目掛けて馳せるが。

 

「ほぉ…が、このまま隙を晒すわけにはいかないな?」

 

だが信長もそのままではいない。周囲に宝石のドームを生成し、こちらが動けない信長を攻撃できないように防御態勢を敷いてきたのだ。

 

「深追いはするな、行くぞ!お前たち!」

 

動いた眷属の面々はサイラオーグさんの指示で瞬時に動きを攻撃から突破へと切り替える。走る速度を落とさぬままドームを踏み台にして空へと飛び立ったのだ。

 

「ご武運を!」

 

「後で必ず来るのだぞ!」

 

このタイミングを逃すまいとサイラオーグさんたちバアル眷属が一斉に翼を広げてリリスの方角へと空へ羽ばたいた。眷属の面々には去り際に言葉をかけられた。

 

彼らが飛び立って10秒後か、ドームが崩れて煌びやかな粒子になって消滅した。そして重力の枷から解放された信長が再びその姿を現した。

 

「追わないのか?」

 

「今のはハッタリさ。…ま、元々お前とタイマンやる予定だったしな」

 

特に慌てる様子もなく、冷静そのものの信長。

 

「そろそろ後がなくてな。約束通り見せてやるぜ。俺の全力、禁手《バランスブレイク》だ」

 

「!」

 

その言葉にばっと身構える。正直、禁手前ですら奴の能力を攻略できたとは言い難い。一体どれほど驚異的な能力に変化するのか…。

 

拳を握る信長、構えを取ってずんと大地を踏みしめ、力強く吼えた。

 

「禁手!!」

 

気合の一声と同時に全身から信長の全身から光と煌めく粒子が溢れ出す。それらが次々に鎧へと変じて奴の全身に次々に装着されていく。

 

派手かつ無骨な戦国武将の甲冑とシンプルな西洋の鎧が融合したかのような形状、マントのように輝く粒子を絶えず放出する背部、光の加減に応じて薄く七色に輝くオパールのような表面。もはやそれ自体が芸術といっても過言ではない鎧に全身を包んだ奴は最後、腰に帯刀していた刀を抜刀した。

 

「『砕かれざる綺羅星の宝鎧《アンブレイカブル・ブリリアント・ジェネラルメイル》』。察しの通り亜種だ。てめえと決戦をするにはこれ以上にない能力で相手してやるよ!!」




ライト魂は完全空中戦特化型のフォームです。

ついにお披露目となった信長の禁手。イメージは織田信長が実際に着ていたとされる南蛮胴です。もっとわかりやすく言うなら鎧武の極アームズですね。

次回、「六天に瞬く綺羅星」
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