ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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第157話「終ノ輝」

 

サイラオーグの激励を受けて、ほんの少しばかり気持ちが前向きになったリアスたちを連れた木場裕斗は、人間界の駒王町から8駅ほど離れた市街に足を運んだ。そこにポツンとたたずむ廃棄ビルは、彼らがここに来た目的となる人物が運営している『ゲーム』のロビーでもある。

 

プレイヤーらしき人間に携帯で写されるのを怪訝に思いながらもスタッフに案内された彼らを待ち受けていたのは。

 

〈BGM:一騎打ち(遊戯王ゼアル)〉

 

『ふんッ!!』

 

六本の腕のうち、魔剣を握る四本の腕を振るうジーク。その動作の寸前で駆けだす木場。一秒後に彼が立っていた場所に生まれたのは荒削りの氷柱と全てを削り取る渦巻状のオーラ、さらに床がえぐれて次元の裂け目すら生じていた。

 

そのままジークへ猛進する木場だが、戦いの中で育まれた感覚が危険を察知し咄嗟に聖剣の禁手である龍騎士団を一体出現させる。

 

「ふ!」

 

それを踏み台に木場は空中へ躍り出る。その次の瞬間に極大の赤黒いオーラが龍騎士団を瞬く間に飲み込んだ。塵すら食らいつくすような獰猛なオーラの前に龍騎士団は一秒として存在をこの世にとどめることはできなかった。

 

その増大した恐ろしいオーラに驚く木場はその技を放ったジークを一瞥する。

 

普段とはかけはなれた異形とかしたシルエット。阿修羅のような姿と化す禁手の腕は膨れ上がってより筋肉隆々とし、剣と一体化している。同じく大本となるジークの体も筋肉が膨れ上がり、英雄派の制服の端々を破り怪物じみた肉体をあらわにしている。

 

信長が使用したものと同じ力、旧魔王派の血を神器にドーピングするアイテム『魔人化《カオス・ブレイク》』により変貌した姿、『業魔人《カオス・ドライブ》』だ。信長の時と違い、禁手を発動したことでより異形の変貌を遂げたのだ。

 

 

 

 

 

そう、ビルの屋上にて木場たちは魔王アジュカ・ベルゼブブと出会うが同じく旧魔王派を引き連れたジークフリートも現れ、なんと木場たちの目もはばからずアジュカに同盟を持ち掛けてきたのだ。

 

アジュカが技術的な話やサーゼクスと対立していること、サーゼクスに対抗しうる『超越者』の力と政治的影響力を理由にし研究資料の提供を見返りに協力を求めるジークだったがアジュカはそれを一蹴した。

 

『あいつとは長い付き合いでね、唯一の友と呼べる存在なのだよ。俺はあいつを誰よりも理解し、あいつも俺を誰よりも理解している。あいつが魔王になったから俺も魔王になった。俺たちの関係はそういうものだ。故に俺は君たちの話を拒否しよう』

 

勧誘を蹴ったアジュカにいよいよ激昂した旧魔王派の構成員だったが、あらゆる事象を計算し操るアジュカの能力『覇軍の方程式《カンカラー・フォーミュラ》』で返り討ちにしてしまう。

 

ジークも交渉に失敗し、おめおめと逃げ出せば仲間に笑われると魔王を前にしても戦う意思を見せるが、相手に名乗り出たのは木場だった。

 

友を手にかけたのは既に死んだシャルバといえど、そのきっかけを作ることになった英雄派は彼にとって度し難いものだったからだ。

 

 

 

 

「やはりこの状態ならグラムを解放できる…!素晴らしい魔剣だよ、魔帝剣グラム!」

 

攻撃を放ったグラムを歓喜の表情で舐めるように見るジーク。

 

ジークの得物である魔帝剣グラムはデュランダルに匹敵する絶大な破壊力と、龍王ファーブニルを一度は屠ったこともあるほどの強烈な龍殺しを特徴としている。それがグラムを魔剣の中の帝王たらしめる所以である。

 

しかし残念なことにジークはそのグラムを十全に活かすことができないでいた。何故ならジークの神器は龍の力を宿す『龍の手《トゥワイス・クリティカル》』。禁手を発動し、神器の力を引き出せば引き出すほど龍殺しで自らの身にダメージを追ってしまうからだ。禁手を使いその他の魔剣と同時併用する場合、グラムの攻撃的なオーラを完全に殺してしまわなければならず、まさしく宝の持ち腐れと化してしまうのだ。

 

しかし、その欠点を解消したのが『業魔人』の力。今ジークフリートは己が持つ魔剣すべての力を十全に引き出し振るうことができるまさしく阿修羅そのものと化している。

 

だが木場が屈することはない。彼のうちに燃え盛る英雄派への敵意の猛火…親友を失う一因となった彼らへの憎しみは簡単に揺らぐものではない。

 

驚きを即座に噛み殺し、翼を羽ばたかせて急降下して木場はジークに攻撃を仕掛ける。横薙ぐ木場の斬撃をジークは龍の手と一体化した魔剣で軽々と受け止める。

 

「ッ!!」

 

攻撃の手を緩めず、怒涛の剣戟の嵐を繰り出す木場。魔剣と聖魔剣の一秒たりとも途切れることのない激突は彼らの命のぶつかり合いでもある。

 

息継ぐ間もなく振るわれる剣技にジークはそれに難なく対応して見せた。体が大きくなったことで動きも多少は鈍くなったかと木場は予想していたが、見事に予想は外れ平時以上の速度をジークは発揮している。

 

残像を生み出すほどの神速で動き攻撃を仕掛けるが、6本の腕と剣を持つジークの動きに寸分の隙もない。

 

ドリル状のオーラを纏った突きを躱し、氷柱の奇襲を飛翔することで逃れる。それに追随する形で跳びあがったジークが時空を切り裂く斬撃を叩き込む。

 

瞬時に聖剣に切り替え、騎士団を生み出して身代わりにすることでやり過ごす木場だったが逃すまいとするジークはグラムで攻撃を仕掛けた。

 

「く!」

 

絶大なオーラを纏うグラムの一撃をすんでのところで見事躱す木場だが、魔剣の王とされるグラムの力は凄まじく攻撃的なオーラの余波だけで彼の体にダメージを負わせた。もし回避ではなく剣で防御する選択をしていたなら、今頃彼の体はオーラに押しつぶされ致命傷は免れなかっただろう。

 

そして木場に直撃しなかったグラムの迸るオーラは地を抉りながら走り、屋上庭園の端まで突き抜けていった。隣のビルまで達せず、彼らの激闘でビルが崩壊しないのは魔王アジュカが強力な結界を張っているからだ。彼がいなければ今頃周辺のビルの多くが瓦礫の山へ様変わりしていたであろう。

 

木場は強大な力を秘めた魔剣を己が聖魔剣一本で打ち合いながらもその隙を窺う。今のジークの予測を超え、剣の均衡を破る一手を。

 

しかしそれは剣術によるものではない。靴の爪先に龍殺しの聖魔剣を生み出し、それを蹴りのモーションと共にジークの腹に突き立てた。

 

本来ならジークの腹に深々と突き刺さり、内部から龍殺しの効果で大ダメージを与えるであろうその攻撃は、バキンという粉砕音と共に脆くも崩れ去った。

 

「残念、業魔人は英雄化以上の硬度を肉体にもたらしたようだね」

 

「!」

 

龍殺しの刃はジークの硬い表皮を突破するには至らなかった。振り上げたままの木場の足を剛腕でがしっと掴んだジーク。それを勢いよく振り上げ、地面に叩きつけた。

 

「がはっ!!」

 

「まだまだぁ!」

 

次いでジークは降下しつつその勢いを乗せてディルヴィングを叩き込んだ。クレーターを生むほどの破壊力を持つパワーをぶつけられ、木場は大量の血反吐を吐き散らした。

 

「ッ…!!!」

 

全身、骨の髄まで響くような鈍重な衝撃に木場の体は悲鳴を上げる。骨は何本も折れ、臓器もやられている。意識も今に飛びそうだ。それでも命惜しさに逃げ出す選択肢は彼にない。

 

衝撃の余韻でふらつく足、朦朧とする意識で剣を杖代わりによろよろと立ち上がり一度距離を取ろうと足を動かすが。

 

「無様だね」

 

ノートゥングの一閃が杖代わりになっている聖魔剣の刃を空間ごと断ち、支えを失った木場は前のめりに倒れようとするもダインスレイブから迸る冷気がそれを許さないと木場の足を氷漬けにした。

 

「しまった!」

 

「終わりだ」

 

手元に複数の聖魔剣を重ね合わせ、盾を形成する。だがその盾も次の瞬間にはグラムの凶暴な剣閃の前に脆く崩れ、木場の左腕ごと斬り落としてしまう。

 

「ッ…!!!」

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:牙を剥く紋章獣(遊戯王ゼアル)〉

 

猛々しい馬の嘶き。信長を背に乗せた美しくも雄々しい馬が猛スピードで駆ける。

 

「六天魔装、伍ノ輝!」

 

次に信長の手に生成されたのは柄の長い薙刀。宝石特有の見る者を魅了するような眩い輝きを、命を絶つ凶刃が宿す。

 

馬にまたがり、甲冑に身を包んで薙刀を携えて突撃する信長の姿はまさしく戦国時代を戦い抜いた雄のようだ。

 

「ッ!」

 

勇猛果敢な馬の突撃、勢いよく振るわれる薙刀をすんでのところで横っ飛びして躱す。単調な攻撃だが速度が速く、油断はできない。

 

「まだまだぁ!」

 

馬を旋回させ、再び信長が猛進してくる。今度は馬の進行を止めるべくガンガンハンド 銃モードを召喚しすかさず銃撃を浴びせる。

 

しかし馬もまた信長の鎧と同じく神器で生み出されたものであるため、信長本体はもちろん馬も霊力の弾丸がかすり傷一つ付けることすら敵わない。

 

「馬をどうにかすれば…!」

 

銃弾の雨をものともせず進み続ける信長、いよいよ距離も狭まり薙刀を片腕で横薙ぎに振るう。すれ違いざまに放たれた鋭い刃をガンガンハンドで防ぐも、その勢いに押されてガキンと金属音を響かせながら俺の手元からこぼれた。

 

弾かれたガンガンハンドを追うように視線を流すと、なんと地に落ちたガンガンハンドが信長の神器と同じ結晶に包まれ地面にくっついてしまっているではないか。

 

「ガンガンハンドが…!?」

 

「伍ノ輝の刃は傷つけたものを結晶化する!今度は外さねえ!」

 

またしても馬を切り返し、勇猛果敢にこちらに向かってくる。あの薙刀の攻撃を俺自身が喰らえばひとたまりもないだろう。

 

あの走りを妨害する手立ては…足を攻撃するくらいか。だが馬も信長と同等の防御力を持っている。攻撃以外に止める方法はないか。

 

〔エジソン!リョウマ!〕

 

一手をひねり出すべく力を借りたのは二人の英雄。エジソンのひらめきとリョウマの大胆な発想で策を練り上げる。

 

すぐに浮かんだのは二つの策。

 

一つはベンケイのパワーで馬の突撃を真正面から受け止めるというもの。だがそれは同時に信長との距離もゼロになることを意味し、薙刀の格好の餌食になってしまう。

 

だがもう一つの策なら…!

 

〔ベートーベン!〕

 

「ピアニッシモ!」

 

迸る霊力が長い五線譜へと返事、宙を蛇行しながら低空飛行で地を這うように馬へ向かう。

 

「はん、そんな技に捕まるか!」

 

信長は馬を操り、五線譜を華麗に飛び越えて躱すが。

 

「そうすると思った!」

 

俺がくいと指を跳ね上げると、その動作に連動するように躱された五線譜も空へと進行方向を変え、宙に跳ねた馬の脚にするりと巻き付く。

 

「何!?」

 

するとピアニッシモの効果により馬の運動能力が低下し鈍くなる。この手の技は効かないなんてことはないらしい。あくまで属性攻撃や直接攻撃は効かないが、それに分類できないような特殊な攻撃は効くと見た。

 

おまけに細脚が雁字搦めになったまま落下を始めたため、着地に備えることができずにものの見事に着地の衝撃で態勢を崩し、地面との接吻を果たす。

 

「おわ!?」

 

当然馬を駆っていた信長もバランスを崩して落馬、無様にも美しい鎧を土で汚しながら激しく横転する。

 

「いってぇ…」

 

落馬の痛みは鎧をまとっていても堪えたようで、地に両手両膝を突いて信長が呻いている。この隙を逃すまいと距離を詰めるが。

 

「六天魔装、参ノ輝」

 

「!」

 

こちらを一瞥することもなく、新たに火縄銃を生み出した奴は美しい銃口を俺の腹にそっと押し当てた。

 

「ばん」

 

信長が引き金を引いた次の瞬間に突き抜けた強い衝撃。腹部に猛烈な痛みと熱さを感じた。

 

「がぁっ!!」

 

〈BGM終了〉

 

意識が飛んでしまいそうな耐え切れない痛みに襲われた俺はその場に頽れる。

 

だが奇妙なことに火縄銃で撃たれたというのに、なぜだか銃に撃たれたというよりは熱で焼かれた感覚のほうが近い。

 

「…!」

 

攻撃を受けた個所に視線を落とし、その傷に俺は目を見開く。なんと頑丈なはずのスーツが溶けて露になった地肌も傷口共々黒焦げてしまっているのではないか。まるで高温の火で焼かれた様に。

 

「内部で光を乱反射、一点に集中させて超高温の光を照射する技だ」

 

倒れた俺とは対照的にゆっくりと信長が立ち上がり、痛みに蹲る俺を見下ろした。

 

「ああっ…ぐ…うぅ…」

 

背中にまで感じるあたり、完全に貫通している。まるでレーザービームのようだ。形こそ火縄銃だが完全にそれを逸脱している。

 

「くそ…が!」

 

焼けつくような意識の中、それでも俺は歯を食いしばって立ち上がると信長目掛けて殴りかかる。しかし奴の鉄壁の鎧の前にダメージを負ったのは自分だった。

 

「いった!」

 

衝撃が拳を突き抜け、痛覚となって脳へ走る。お返しに信長の拳が顔面に飛び、のけぞった。

 

「がっ!」

 

「懲りねえな。俺の鎧を突破できねえってのにどう勝とうってんだ?」

 

「そんなものは…今から考えるだけだ…!」

 

血の味でいっぱいになった唾を飲み込み、闘志に満ち満ちた目をマスク越しに奴に向ける。

 

「お前をぶちのめして…聞きたいことがあるからな…!!皆のために…負けられないんだよ!!」

 

眼魂を生み出す方法を聞き出し、あいつの魂を取り戻す。そしてあいつを失った悲しみで途方に暮れている部長さんたちを再起させるのだと、木場と約束した。

 

男と男の約束だ。絶対に果たすのが男として、友として筋というもの。命にかけてもそれだけは譲れない。

 

だがそれを奴は呆れたように笑う。

 

「皆、ね。そうか、さては赤龍帝絡みのことか。どうせ奴の魂を眼魂にしたいからその作り方を聞きたいといったところか?」

 

「!!」

 

「図星か、やはりあの人の慧眼には敵わねえな」

 

俺の反応を見てやはり奴は苦笑する。奴の言葉に俺は引っかかるものを覚えた。

 

「あの人だと?」

 

信長は英雄派の幹部だが、リーダーである曹操を「あの人」と敬意を込めた呼び方はしていない。上司であっても奴は戦友のような態度で曹操とつるみ、曹操もまたジークやゲオルクのように対等であるかのような接し方を信長にしていたはず。

 

となると信長より立場が上の人物が曹操以外に存在する…?

 

「そうだ、お前にとっても大事な、あの人だよ。お前をどうしても潰しておきたいと釘を念入りに打たれてるもんでな」

 

信長は隠すこともせず、大きなヒントを俺に与えながらも愉快気な感情を声に乗せる。

 

俺にとって大事な人でありながら、俺を潰しにかかっている人物といえば俺の思い当たる限り一人しかいない。様々な感情を湧きあがらせるその人物の名を、震える声で絞り出す。

 

「…まさか、アルルか」

 

「そうとも。俺はアルル様の命で英雄派に忍び込んで色々工作してんだよ。曹操をアルル様と引き合わせたり、英雄化を編み出すよう仕向けてな」

 

「なんだと…!」

 

はぐらかすこともせず堂々と自身の正体を明かした信長に驚きのあまり、戦意を忘れて目を見開く。

 

こいつがアルルの手下だとは予想だにしなかった。曹操が京都の件でネクロム眼魂を持っていたことで裏で結託しているとは知っていたのだが、まさか幹部の一人が息のかかったスパイだとはだれも思うまい。いたとしても下級の構成員が情報を流す程度だと大抵の人間は考えるだろう。

 

「俺は知っているぜ、てめえのことすべてな。アルル様の依り代になった人間同様、別世界の人間だ。てめえの力は存在そのものがアルル様達の脅威になるイレギュラーだ、煩わしくて敵わねえ、だから消せ、だとよ」

 

そうか、奴はそこまで信長に話していたか。そんなに俺のことが怖いのか。

 

笑いがこみ上げてきた。大っぴらに自分がスパイであると明かすこいつにではない。

更なる幸運が舞い込んできた自分にだ。

 

「…はっ、そうか。むしろこれでもっと都合がよくなった」

 

「あ?」

 

「眼魂のことだけじゃない。お前を潰して、アルルの居場所も聞き出せるからな!」

 

こいつが英雄派であり、アルルの手下でもあるなら猶更好都合だ。眼魂の生成法、アルルの居場所、俺が今知りたくて仕方ないこの二つの情報を一気に引き出せる。一石二鳥とはまさにこのことだ。

 

兵藤のため、凛のため、こいつには絶対に負けられない。

 

〈BGM:怒りの反撃:後半パート(遊戯王ゼアル)〉

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

〔ベンケイ!ツタンカーメン!ノブナガ!〕

 

新たに召喚したガンガンハンド 鎌モードをベンケイの渾身のパワーで薙ぎ払う。それに追随するようにノブナガの能力で生み出された実態ある幻影も同時に襲い掛かる。

 

「無駄だ!壱ノ輝!」

 

それを刀で受け止める信長。しかし傷はつけられないとは言っても昂る感情で増幅した俺のパワーに押され気味なようで、じりじりと交差する鍔迫り合いもだんだん信長へと押しやられていく。

 

「ふぅぅ!!」

 

「は!冷静をなくし、いよいよ戦士の顔になったじゃねえか!」

 

〔ムサシ!〕

 

そこに剣豪の技術が加わり、緻密さとパワー、そして同時に攻撃する幻影を兼ね備えた鎌で俺は全力で信長と打ち合う。

 

激しく火花を散らし、戦意と意地を刃に乗せて幾度となく刃を交わらせた。奴は俺のスピード、剛力に押され気味なようで奴の剣を越え、何度も奴の体に刃をぶつけた。

 

だが一歩、届かない。奴の技量も木場ほどではないにせよあるが、幹部というだけあって神器以外の戦闘技術も磨いているらしい。

 

「必死だな、そんなに身内のことが大事か!?」

 

「当たり前だ!お前に兵藤の、凛の何がわかる!」

 

「知らねえな!だがお前のことで一つだけわかってることがあるぜ!」

 

ガキン!

 

耳をつんざく金属音が響き渡ると同時、互いのオーラが乗った剣圧であたりの建物に大きなヒビが走った。

 

「失ったものにすがり続ける過去の亡霊。兵藤一誠と深海凛の死に囚われ取り戻そうとするばかりのお前には今と過去しか見えてねえ」

 

「なんだと…?」

 

「だが俺には英雄になるという夢がある。今と未来を見ている俺が!夢のために前に進む意志のある俺が!」

 

信長が喋りながら胸部のアーマーをいきなり掴み寄せ、鋭い頭突きを俺の顔面に決めた。強烈な痛みで視界に星が散ったようだ。

 

「ぐっ」

 

「後ろばかり向いてるお前に負けるわけねえだろ!!」

 

「!!」

 

拳と共に放たれた信長の魂の叫び。所有者の思いにこたえるようにその力を増すという全ての神器に共通する特性からか、増大したパワーに俺の体は宙を舞った。

 

「六天魔装、終ノ輝!!」

 

その間信長は自身の鎧の光を増大させていく。それに伴い周囲に大きな馬、刀、弓、軍配、火縄銃、そして薙刀が彼を取り囲むように生成される。一つ一つの光を信長は元々の獲物だった刀に束ね上げた。

 

軽々と跳躍し、馬に乗り込む信長が神々しい輝きを放つ刀を携えてこちらに猛進してくる。

 

眩しい。奴の輝きの眩しさに直視できず目がくらみ、足が止まる。その隙が運命を決めてしまった。

 

太陽のない冥界で、燦燦と照り輝く太陽の光そのものと見まがうような鮮烈な光を放つ刀を力強く振り下ろす。

 

「六天終撃覇!」

 

視界全てを塗りつぶす暴力的な光。俺を飲み込んだ。

 

〈BGM終了〉




六天魔装、ほんとは薙刀じゃなくて槍にするつもりだったけど曹操と被るので薙刀になりました。

次回、「希望は赤い蛍火のよう」
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