ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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久しぶりに真D×D4巻を読み返したけど、E×Eのインフレ極まった戦力を前に悠河がビビってリバイス中盤~終盤の大二ムーブかましたら面白そう。多分燃えるからやらないけど。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
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6.ベートーベン
7.ベンケイ
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10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
23.コロンブス
31.ライト
41.シグルド
42.ユキムラ
44.ハンゾウ


第159話「魂の再起」

上位神滅具の一つ『魔獣創造』によって生み出された見上げるほど巨大な豪獣、豪獣鬼。無数の魔獣を生み出しながらグレモリー領の都市へ進撃を続けるそれを悪魔を中心に各勢力から派遣された混成軍が迎え撃っていた。

 

魔法、剣、魔力、光力。あらゆる手を尽くして魔獣を止めるべく激しい攻撃を仕掛ける。豪獣鬼によって生み出された等身大サイズの魔獣は各勢力の強者の攻撃を受けて千々に砕け散るが、その親たる豪獣鬼には通用しない。

 

通用しないというのは障壁が張られていて全く攻撃を寄せ付けないという意味ではない。攻撃が直撃して皮膚が弾け飛ぼうが、焼かれようが、たちどころに再生し何もなかったかのように元通りになってしまうのだ。

 

攻撃以外にも迎撃軍は魔獣を止めるための様々な策を用意した。氷漬け、巨大な落とし穴、強制転移など。しかしそのどれもが失敗に終わっている。空間や時間にかかわる魔法が通用しない呪法がかけられているらしい。

 

「ふん!」

 

奮闘する混成軍に加わり最前線で戦う男、フェニックス家次期当主のルヴァル・フェニックスは突き出した両手から不死鳥を象った業火を豪獣鬼目掛けて羽ばたかせる。

 

魔獣どもを焼き、蹴散らしながら向かう不死鳥が豪獣鬼の脚に直撃し、爆炎を上げる。レーティングゲームの上位ランカーにも入る上級悪魔の一撃だ。生半可な相手が喰らえばひとたまりもない威力を秘めている。

 

『GOAHHHHHHHHHHH!!』

 

それでも業火に焼かれた魔獣の皮膚はただちに再生し、豪獣鬼はルヴァルの一撃を嘲笑うかのように咆哮を上げた。この結果にゲームで冷静な判断力を培ってきたルヴァルも険しい顔を浮かべるしかない。

 

「それなりに攻撃には自信がある方なのだが…ここまで効き目が薄いと折れそうだな」

 

「くそ!こんな時、あいつがいたら…!」

 

ルヴァルの傍らで弟たるライザーも炎を繰り出して魔獣を焼き尽くす。この危機的状況でライザーの脳裏に浮かぶのはかつて己を打ち破った転生悪魔の男。

 

赤龍帝という偉大な力を宿しながらも浅い経験値と才能のなさから侮ったが、それをひっくり返すほどの熱い思いと機転でライザーは敗北を喫し、人生初の大きな挫折を味わうこととなった。

 

挫折してる間にもその男は彼以上の強敵と相まみえ、撃退し力を手にしてきた。そして今、彼は若手ナンバーワンの男を下し、冥界の希望の名をほしいままにしている。

 

因縁の男であり、誰よりも認めた男。その男が今この場にいてくれたらどれほど心強いことだろうかと思う。

 

その思いが届いたか、冥界の淀んだ空に赤色の光が瞬いた気がした。

 

「…なんだあれは」

 

夜でもないのに星が瞬いている。いや、星ではない。

 

赤い光が、高速で空から飛来してくる。悪魔でも天使でも、ヴァルキリーでもドラゴンでもない気配。そもそもそれは生物ですらない大きな何かだ。

 

「!!」

 

そして間もなく、魔獣を踏みつぶして大地に着地する。その質量によって大量の土煙を巻き上げ、着地の余波が周囲の魔獣を吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

「何が起こった!?」

 

「俺もわからん!」

 

突然の事態に戦場で巻き起こる混乱。悪魔も天使も堕天使も、ギリシャ神話の戦士もヴァルキリーも、墜落してきた物体が起こした余波にこらえる。

 

30秒ほど続いた余波、次第に砂煙が収まり、突如として飛来したその物体の姿を明らかにする。

 

20mはある巨体。全身の随所に散りばめられた赤いコアに、紺色の鋼鉄でできた無機質なボディ。両肩背部にマウントされた二振りのバスターソード。背部から絶えず放出される青白い光の粒子。コアと同じ色をした横長のアイカメラが不気味に輝いた。

 

現れた巨大な鉄人に、この場に居合わせたものは全員声を揃えて叫んだ。

 

「「「「ロボット!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「イレギュラーXが一機、崩刃裁機ブライトロン…まさか妾が搭乗することになろうとはのう」

 

鉄人の胸部に備え付けられたコクピット。華奢なボディラインをくっきり浮かび上がらせるスーツを纏うポラリスは複雑な表情で操縦桿を握る細い手を見下ろす。

 

自分が元居た世界で敵対し、辛酸を舐めさせられたこともある機体。『革命』後は自身の勢力の管轄になり、スキエンティアにも設計データが残っていた。

 

かつてGNドライブと自身の世界の技術の融合のサンプルとして建造したのだが、中々実践に投入する機会もなく格納庫で眠りについていたブライトロン。しかしポラリスはいざという時の備えを怠らず、定期的に最新の技術を用いたアップグレードを施していたのだ。

 

元々ここでブライトロンの投入と豪獣鬼との戦闘は計画にはなかった。だがイレギュラーである悠河の存在がそれを変えさせた。

 

「ここで頑張っておかねば、見殺しにしたことがばれたとき非常に立場が危うくなるのでな」

 

ディンギルを討つためにも悠河との関係を良好にし、しっかり手綱を握っておかなければならない。兵藤一誠が一度は命は落としたこの事件で何も動かなかったとなれば、それこそ信頼は失墜する。ここで何かしらの成果を上げておかねば今後の関係に響いてしまうことは間違いない。そうならないための成果として、冥界を脅かす豪獣鬼をいくつか沈める。そのために彼女は前線に出張って来た。

 

コクピットで操作されたブライトロンが、緩慢な動作でバスターソードを一振り掴み勇敢に構える。その外で、少年の心を持つ迎撃軍の一部から興奮と歓喜の声が上がったことをポラリスは知らない。

 

「その首、妾の計画の礎にしてやろう」

 

 

 

 

 

 

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〈挿入歌:Ready Go!(仮面ライダービルド)〉

 

「…イッセー君、一緒に行こう。君となら、どんな相手だって切り刻める!」

 

一誠の駒が変化して生まれた聖剣アスカロン。それを手にした木場に恐れはなく、痛みと失血による足の震えはもうない。

 

体の底から湧きあがる力に任せ、正面から木場はジークに斬りかかった。光り輝く鮮烈な剣をグラムで受け止めるジークの目には驚愕の感情がちらついている。

 

「バカな…まだ立つというのか。ディルヴィングの一撃は君にとって十分致命傷になったはずだ!」

 

「それでも…彼が行けっていうんだ。だったら、行かなきゃかっこつかないじゃないか!」

 

木場の燦然と輝く太陽のような決意に応えるようにアスカロンが眩い光のオーラを放つ。それは悪魔にとって猛毒になる光ではない。

 

「アスカロンの龍殺しのオーラ…!データによればここまでの力はないはずだ!」

 

それを浴びるジークの体からしゅうしゅうと煙が上がり、苦痛に顔を歪める。龍殺しの聖魔剣では通用しなかった龍殺しの力が今のジークには効いているのだ。

 

さらにジークを驚かせる現象は立て続けに起こった。アスカロンのオーラに連続し、今度はジークが握る魔帝剣グラムが発光し始めたのだ。

 

「なんだ…!?こんな現象は今まで…」

 

グラムの変化に戸惑うジーク。木場も警戒し、距離を置こうとするが動きを止めた。その光が自分に向けられ、攻撃のオーラではなかったからだ。まるで自分を求めるかのような優しいオーラだ。

 

「グラムが木場祐斗に呼応しているのか!?これも業魔人の…」

 

それに気づいたジークはいよいよ仰天する。もはやこれまでの戦いで見せていた余裕を崩さない狂戦士の姿はどこにもない。

 

対する木場は毅然と叫ぶ。

 

「…いいだろう、来い!グラム!」

 

その言葉にグラムは輝きを深め、自身を握るジークの手を龍殺しの力で焼く。痛みにたまらず放したジークの手から宙に躍り出ると回転し、そのまま木場の足元の地面に突き刺さった。

 

魔帝剣グラムが待っている。新たな主の手に握られ、己の力が解き放たれる時を今か今かと待つように光っていた。

 

「…」

 

折角手に入れたグラムだが、片腕を失った状況では握れそうにない。そう思った矢先、アーシアと小猫、レイヴェルが木場の近くに歩み寄って来た。

 

切り落とされた腕を拾った小猫が腕を切断口に当て、アーシアが神器の淡い緑の光を当てる。治療を受ける木場の体をレイヴェルが支えた。三人の目にはとめどない涙が流れていた。だがその面持ちに浮かぶのは悲しみではない。

 

「イッセーさんが『アーシアも戦ってくれ』って、背を押してくれたような気がしたんです」

 

「『俺のダチを助けてくれ』って言ってくれました」

 

「私にも聞こえましたわ。『小猫さんや皆を支えてくれ』と…まだ皆様と比べて関係の長くない私にまで…優しすぎますわ」

 

アーシアも、小猫も、レイヴェルも涙ながらに微笑んでいる。光の中から聞こえた一誠の言葉が彼女らの曇った心を前へ突き動かしたのだ。アーシアの癒しのオーラと小猫の仙術が傷ついた木場の体を癒し、次第に切断された腕を接合していく。

 

「『皆と一緒に戦ってください』…そうよね、彼ならきっとそう言うわ。おかげで目が覚めた」

 

涙を流しながらも、気高く前進するリアス。思い人の駒を手に握り、その双眸を真っすぐ、眼前の敵に据える。

 

「さあ、私のかわいい下僕たち!グレモリー眷属の復活よ、目の前の敵を消し飛ばしてやるわよ!」

 

グレモリーの『王』は紅髪を揺らし、凛然と宣言した。最愛の人の死で歩みを止めたリアス・グレモリーの復活である。

 

主の帰還に心震える木場は完全に繋がった左腕の感触を確かめるように軽く腕を回すと、足元に突き刺さったグラムを掴み引き抜いた。

 

握る感触、赤黒い刃に満ちる気を感じて悟る。秘められた凶悪なまでの破壊力、そして龍王を殺すほどの龍殺しの効力を。

 

これならいける。聖剣と魔剣、相反する存在でありながら共通して龍殺しの力を持つアスカロンとグラムの二刀流で木場は馳せた。今までの戦いとは違い、一人ではない。

 

木場の後方から赤い滅びのオーラが宙を馳せ、木場と共にジークへ向かった。

 

「まだだ…僕にはまだ四本の魔剣がある!英雄の子孫として、負けるわけには…!!」

 

その言葉を遮るように、天から眩く極太の雷がジークに荒々しく降り付けた。

 

木場が宙を見上げると、夜空に6枚の翼を雄々しく広げる堕天使がいた。光力を帯びた雷を放てる者などこの場において朱乃一人しかいない。

 

「私の奥の手、『堕天使化』ですわ。父とアザゼルに協力してもらって、私の中に流れる『雷光』の血を高めたわ」

 

雷光を放った朱乃の両手首には金色に輝く魔術文字が光るブレスレットが嵌められていた。

 

「『いつもの笑顔を皆に見せて』…私はあなたの思いまで殺そうとしてしまったのね…ゴメンなさい。でももう大丈夫ですわ。その思いだけで、私は戦えます!」

 

決意の双眸を輝かせる朱乃。以前まで一誠の死と共に心を失い呆然とするだけの朱乃の姿はどこにもない。

 

雷光をまともに浴びたジークの体は黒焦げ、ぷすぷすと煙を上げている。聖魔剣の龍殺しを受け付けなかったジークの体にダメージを与えるほど、朱乃の雷光は進化したのだ。

 

更に飛び出した滅びのオーラが、魔剣と一体になった腕のことごとくを瞬時に消し飛ばした。がらんがらんと金属音を立て、魔剣が転がっていく。

 

そして木場が、ジークの間合いに踏み込んだ。

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

裂帛の叫びを上げながらアスカロンとグラム、龍殺しの刃を深々とジークの体に突き立てる。龍殺しの力は龍の力を帯びたジークの体中を駆け巡り、暴れまわり、そのすべてを破壊しつくす。

 

その効果は絶大ですぐに表面化する。ごぼっと吐血したジークの体中にひびが入り始めたのだ。もはや血ではなく灰が流れる体は崩壊を始めていく。

 

「グラムに…この僕が、やられる?」

 

助けを、力を求めるようにジークはグラムの刃に手を触れるが、もはや元の主を見切った魔帝剣はジークの手を拒絶するように焦がすだけだった。

 

「僕たちの勝ちだよ、イッセー君」

 

木場は二振りの剣を引き抜くと、ジークの体が力なくよろよろと跪いた。

 

「はは…僕は負けたのか。兵藤一誠という…男に…あれだけシャルバを嘲笑ったというのに…二の舞を」

 

ジークは乾いた笑いを浮かべた。笑みを浮かべた顔がぴしっとひび割れ、灰を零していく。誰がどう見ても死を免れないのは理解できた。

 

だが、これだけのダメージを負っても「それ」を使わない理由を木場は問う。

 

「フェニックスの涙を使わないのかい?独自のルートで入手していると言ったじゃないか」

 

「…理由はわからないが、この状態になると涙の回復効果を受け付けなくなってしまう…パワーアップには犠牲がつきものなのさ」

 

首を振るジークの体の崩壊は更に加速する。次第に腕が無くなり、脚が消え、そして。

 

「僕も…フリードも…あの戦士育成機関で育った戦士は、まともな生き方も…死に方もしないんだね」

 

英雄を目指すも、運命に抗いきれなかった男は無念だけを残し、この世から消えた。

 

〈挿入歌終了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈挿入歌:Evolvin' Storm(仮面ライダーフォーゼ)〉

 

この両腕に宿った奇跡の力に信長は不敵に笑った。

 

「驚いたぜ、赤龍帝がそういう奇跡を起こすってのは知っていたが、まさかてめえにも同じような…いやそれ以上の奇跡が起きるとはな」

 

てめえにも同じような、という言い方に引っかかるものを覚えた。もしや人間界に向かった木場のほうでも何かが起きているのか?

 

「だが、赤龍帝の力だろうと俺の守りを崩せやしねえ!」

 

起こった奇跡を前にしてなお、信長は堂々たる余裕を崩さない。想定外の出来事に直面してなお微塵も揺らがぬ自信、それこそがあの堅牢な防御の源なのだろう。

 

「さて、どうかな…試してみるか」

 

対するこちらも不敵な笑みで返す。

 

力が漲る。勇気があふれる。死んでも友は俺に力を貸し、一緒に行こうというのだ。これほど心強いことなどありはしない。どんな強敵が相手でも、今なら戦える気がする。

 

そして動き出したのは同時だった。

 

「おおおおおお!!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

俺も信長も、両者共に昂る闘志の叫びを上げながら地を蹴って走る。距離が次第に縮まり、互いの間合いに踏み込んだ瞬間に殴りかかる。拳が交差し、互いの顔面を真っすぐ打ち据えた。

 

「ぐっ!」

 

「!!?」

 

殴打の衝撃に頭がぐらついて互いに一歩後ずさる。だが引かない。このまま追撃の加えるべく一歩踏み出して再び距離を詰めて、信長の腹に拳打を叩き込む。

 

「ぐは!」

 

今までどれだけ攻撃しても全く通じていないかのようにぴんぴんしていたが、今回は苦しそうに息を吐いた信長。俺のパンチの衝撃が鎧の中の生身に届いているのか?

 

もしかして、赤龍帝の力を得た今なら…!

 

友の後押しで沸き立つ勇気が、勝利への可能性へと導く。

 

「…は、ちょっと重いパンチを打てたぐらいで図に乗るなよ!!」

 

立て直す信長が再び拳打を繰り出す。真っすぐ、俺の芯を狙った渾身のパンチだ。だが俺はそれをぱしっと手で握って止める。衝撃が突き抜けるが、籠手で厚くなった五指で奴の拳をがっちり掴んで離さない。

 

「なんだそのパンチは…」

 

受け止めた手を力任せにねじる。

 

「こんな軽いパンチで俺たちの輝きを砕けると思ってんのか…!?」

 

こんなパンチは模擬戦で感じた兵藤の拳に届きはしない。あいつの拳はもっと真っすぐで、熱かった。信念は感じる。だが今は、俺たち二人の思いが勝る。

 

〔Boost!Boost!Boost!〕

 

「何!?」

 

籠手から発せられた聞き馴染んだ音声に信長が驚愕の声を上げる。どうやら神器の能力まで使えるとは思っていなかったらしい。

 

「パンチの打ち方は」

 

空いた右拳を握りしめ、引く。まるで矢を放つ際に引き絞るように。

 

「!」

 

「こうだろ!!」

 

〔Explosion!〕

 

そして赤龍帝の倍加の力を乗せて真っすぐ穿つ。信長の顔面を捉えた渾身の右ストレートが炸裂。がしゃんという音を散らしながら、あまりの衝撃に信長も思いっきりのけぞった。

 

ふらふらと信長が後ろに下っていく、ついには片膝を地に突いた。よく見ると、どれだけ攻撃しても傷一つ付けられなかった鎧に大きなヒビが入っているではないか。それだけじゃない、左の眼もと辺りは完全に砕け、その右目を外界に晒している。

 

それを確かめるように奴は砕けた個所を恐る恐る触り、信じられないとばかりに目を見開く。

 

「馬鹿な…俺の鎧を殴って、ヒビを入れた…だと。いや、それだけじゃねえ…赤龍帝の能力まで」

 

恐らく過去にこんな状況に直面したことがなかったのだろう。神滅具が継承されたわけでもないのにその能力を使用でき、しかも自分の自信の大いなる根源が真正面から文字通り力任せに砕かれた。これで平常心を保てと言われるのが無理というものだ。

 

「どうした、自慢の鎧を壊されて怖くなったのか?」

 

「…ほざけ!六天魔装、陸ノ輝!」

 

しかし奴は腐っても幹部クラスの強者。戸惑いを振り払うようにかぶりをぶんぶんと振ると即座に体勢を立て直し、距離を取ると最後の六天魔装を発動。煌めく弓矢を生み出した信長が流れる動作で一矢を射る。

 

「この矢は狙った相手を追尾する!」

 

なるほど、躱しても無駄だと。なら、躱す必要はない。

 

〔ムサシ!〕

 

高速で飛来する矢をムサシの見切りで瞬時に軌道を読んで体を逸らし、そして素早く手刀を振り下ろした。

 

ガシャンという破砕音。

 

信長の鎧と同等の硬度を持つ矢が手刀を叩き込まれ真っ二つに割れて叩き落された。

 

「飛んでくる矢を…叩き折るだと」

 

これにはいよいよ言葉をなくしたようで、ぽかんと口を開けている。俺も矢を叩き落すなんて芸当は初めてだ。だが、ムサシの見切りと兵藤が貸してくれた今の力があれば不可能ではない。

 

「弐ノ…」

 

「はぁッ!」

 

六天魔装が発動するよりも早く、一息で距離を詰めて信長を殴り飛ばす。豪快に顔面を殴られ、やはり砕けた鎧のかけらを零して錐もみ回転をしながら転んでいく信長。

 

「ぐほぁッ!!!」

 

転がる信長が何かを落とした。小綺麗な装飾に飾られたその小瓶をおもむろに拾い上げる。

 

「フェニックスの涙…防御に自信があるくせに回復アイテムを持ってたのか」

 

こいつは後でおいしくいただくとしよう。全身火傷まみれ、傷まみれで戦いの後で会う人に怖がられてしまうからな。

 

「馬鹿な…」

 

地面に蹲る信長が、完全に兜を破壊されて晒された素顔を上げる。殴打の衝撃で口が切れたようで、口の端から血が流れていた。

 

「なんでだ…どうして俺の鎧を殴って壊せる!?さっきまでどれだけ吼えても砕けなかったはずだ!」

 

信長は今の自分の身に起きていることを認められないと言わんばかりに叫び散らしている。正直なところ、俺も驚いている。だが前世で耳にしたこの言葉を思い返せば自然と納得がいくのだ。

 

「知らないのか?」

 

「なんだと…!?」

 

「戦いってのは、ノリのいい方が勝つんだよ。神器使いならなおさらな」

 

所有者の魂に直結し、精神に感応する神器の性質を考えればこの台詞は決して間違いではない。より強い思いを抱き、神器の力を引き出したものが勝つのだ。

 

「っ…フザケルなァ!!!」

 

激昂した信長が自身の周囲に六天魔装を展開する。どうやら再び大技を放つつもりのようだ。

ならばこちらも。

 

〔Boost!Boost!Boost!〕

 

赤龍帝の籠手の能力を使い、一気にオーラと霊力を倍増させる。

 

凄まじい力だ、一度の発動だけでも大幅なパワーアップになる。これが神も恐れた天龍の力の片鱗か。これだけの力をあいつは使いこなしていたのか。

 

本人は魔力をうまく使えず才能がないなんて言っていたが、今になって思い知らされた。あいつは神滅具の力を引き出せていた凄い奴だったってことに。

 

「はぁッ!!」

 

左の掌に高めた霊力と意識を一点集中。すると小さな青と赤の入り混じった光球が生まれる。浮かべるイメージはあいつの得意技。込める思いは昂る闘志。

 

「六天魔装、終ノ輝!!」

 

「迸れッ!!」

 

「六天終撃覇ァ!!」

 

「オメガ・ドラゴンショットォ!!」

 

宝刀から迸る全てを焼く光と籠手から繰り出された赤き龍帝のオーラの奔流。同時に放たれたそれらがぶつかると周囲一帯を飲み込む凄まじい光と轟音を散らす。エネルギーの衝突で溢れ出すエネルギーが辺りに飛び散り、容赦なく地を焼き、建物を破壊する。

 

しかし拮抗は一瞬。赤龍帝の力で強化された俺の霊力は次第に信長の光を押し出し、容赦なく暴力的なオーラの波動を信長に浴びせた。

 

「ぐぁぁぁぁっ!!うっ!!」

 

赤きオーラの照射が終わると、がくりと信長が膝をついた。あれだけの攻撃で完全な消し炭にならなかった辺りやはり神器の防御力は相当なものだ。しかし鎧の至る箇所がひび割れ、必殺技を支えていた六天魔装の数々は無残に砕け散っていた。

 

「がはっ、俺の六天魔装を…すべて」

 

この結果に吐血する信長は言葉を失い、唖然とする。信長の自信の拠所を破壊され、目を丸くして地面に散らばる砕けた破片を見下ろしていた。

 

「信長。お前の言う通り…俺は過去に囚われているかもしれない」

 

兵藤の死、凛の死。俺の心にはそれらの過去が拭えないものとなって強くこびりついている。それは否定しようのない事実だ。ある種、呪いといってもいいかもしれない。

 

「だが過去があればこそ…俺はこうして戦える!あいつと過ごした日々が…凛と過ごした過去が、今を生きる俺の原動力だ!たとえそれが過去を取り戻す行為だとしても…全てを取り戻し、未来へ進む!未来で皆と生きていたい!!それが俺の戦う理由だ!!」

 

「…!!」

 

過去に縛られた亡霊で結構。それで願いのために戦えるなら、誓いのために戦えるなら俺は構わない。この呪いを背負って、俺は前に進む。

 

「一緒に決めるぞ、兵藤!」

 

〔Boost!Boost!Boost!Boost!Boost〕

 

〔プライムチャージ!ダイカイガン!〕

 

ドライバーを操作すると、平時の倍はある霊力とドラゴンの力がドライバーと籠手から溢れ出す。赤龍帝の倍加の力も合わさり、寒気がするような膨大な霊力とオーラが右脚に宿った。

 

「渾身のピリオドを喰らえェ!!」

 

腰を落として構えを取ってから、大地を力強く蹴り出し飛び立つ。そして放つは渾身の飛び蹴り。

 

〔プライムスペクター!ハイパーオメガドライブ!〕

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

赤と金色のオーラの奔流を身にまといながら繰り出した蹴りが信長の胸に突き刺さる。その威力たるや、瞬く間に信長の鎧の全てを粉砕し、その勢いのまま一気に押し出していく。

 

「がぁぁぁぁッ!!」

 

こらえがたいダメージに信長が絶叫を上げる。迸るオーラを推進力に爆進、最後に建物の壁に衝突し、その壁に一つ目と龍の文様が合わさったエンブレム型のクレーターを刻むのだった。

 

〈挿入歌終了〉

 




イレギュラーXのXはローマ字の10なんですけど、環境依存文字なので人によっては見れないのではと思ってアルファベットのXで表記しています。

次回、「永久に砕かれざる綺羅星」
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