ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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第161話「六根清浄」

〈BGM:貫く信念(遊戯王ゼアル)〉

 

「随分大層な姿じゃないですか」

 

俺からノブナガ眼魂を受け取り、ついに念願の英雄化を果たした信長。全身から放つ眩い光にアルギスが臆することはなかった。

 

「しかし、今更パワーアップしたところでもう遅い!」

 

アルギスも負けじと英雄眼魂から三体のンマイザーを召喚し、けしかける。フーディーニ眼魂から生まれた金属質なボディを持つ銀色の磁力の化身、ガンマイザー・マグネティック。更には荒々しい気象の化身、ガンマイザー・クライメットも並び立つ。アルギス自身は人型ではなく大きなライフル状の姿をしたガンマイザー・ライフルを手にする。このガンマイザーは人型ではなく、他のガンマイザーに武器として装備されることで強化する役目を持つタイプの一体だ。

 

「やれ」

 

アルギスの合図一つでマグネティックとクライメットが互いの力を共鳴させ、強大な磁力の吹雪を巻き起こす。全てを凍てつかせる強烈な風は勿論のこと強い磁力を帯びたそれは辺りに散らばった金属片なども引き寄せて、過ぎ去った後に生物の一つすら残さぬ凶悪な自然の猛威だ。

 

「肆ノ輝、伍ノ輝」

 

それを前にして冷静を崩さない信長は薙刀を作り出し、馬を生み出す。颯爽と馬に跨る信長はなんと、吹雪の中に単身突撃していく。

 

迷いもなく、言葉もなく、ただ真っすぐに虹色の粒子を放ちながら突き進むその姿が遠ざかり、吹雪の中に消えた。

 

ズバン!

 

その直後、吹雪が内側から放たれた眩い斬撃により切り刻まれあっという間に霧散する。ただの一太刀だが、強烈なオーラを纏った斬撃だろう。ガンマイザーの攻撃が弱かったわけではない。だが、英雄化を果たしジーク以上の親和性に至った今の信長の敵ではない。

 

「!!」

 

「壱ノ輝!」

 

宝刀を生み出した信長が馬から跳びあがり、変身前から愛用している刀との二刀流を見せる。着地して踏み込み、ガンマイザーたちを間合いに収めた信長。

 

冴えわたる剣技、鎧の輝きと相まって閃光と化した剣技が瞬く間にガンマイザーたちを切り刻み、撃破して見せた。

 

「まだだ!」

 

そこにアルギスがガンマイザーで砲撃を仕掛けた。ライフルの銃口から茶色の霊力の光弾が連射され、信長に殺到する。それを信長は対応するそぶりも見せず、ただ攻撃を受ける。鎧に着弾すると、次々に爆発が起こった。分厚い炎と煙の幕が、信長の姿を覆い隠した。

 

「…そんなもんか」

 

またしても斬撃。一太刀で幕は切り裂かれ、全く持って無傷の信長がその姿を現した。鎧の硬度も元に戻ったようだ。

 

「弐ノ輝、陸ノ輝、参ノ輝!」

 

信長の技はそれだけで終わらない。六天魔装を次々に展開し、追撃を開始する。

 

英雄化の影響で形が変わった軍配を振るい、竜巻を巻き起こしてアルギスを空へ飛ばす。煌めく千刃を乗せた風はあらゆるものを切り刻む。

 

「おぉぉぉぉ…!!」

 

猛烈な風にスーツを削り取られながら、自由を奪われたアルギス。かつての仲間に一切の慈悲をかけることなく、信長は魔装の矢をつがえ、弓を構える。彼の周囲には魔装の火縄銃が大量に出現し、その銃口の一切は宙を舞うアルギスへ向けられている。

 

あれはノブナガ眼魂の能力だ。武装をコピーし量産する能力で魔装を増やしている。一つ一つが恐ろしい力を秘めた魔装を増やして攻撃するとは…これまで眼魂を奪われずに済んで本当に良かった。もし眼魂を奪われ、禁手と英雄化を併用した状態であの時戦っていれば全滅していただろう。

 

魂を込めるように強く引き絞った矢を信長は射る。それを合図に周囲の火縄銃も一斉に火を…いや、炎よりも熱い圧縮された光線を放った。

 

空を切る矢は竜巻の中に突っ込んでもなお標的を見逃さない。風の流れに従い、真っすぐにアルギスの腹に刺さった。

 

「がはぁ!!」

 

痛みに苦しむよりも前に、光線の雨が下から降り注ぐ。アルギスの全身をくまなく貫き、焼く。その一撃一つ一つの威力は受けた俺がよく知っている。それを何度も浴びせる信長の今の力に、ひやりとしたものが俺の背筋を駆けた。

 

やがて竜巻に巻き上げられたアルギスが、地面に勢いよく叩きつけられた。

 

「がはぁ!…どうしてだ…裏切者に…私が押されるとは」

 

「そりゃあお前、こっちは命がけの覚悟決めてノリがいいからな。戦いはノリのいい方が勝つ…らしいぞ」

 

突然信長がぐらりと体勢を崩した。

 

「ごはっ」

 

突如として吐血する信長。相当な力を発揮している分、体の負担が大きいのか。ただでさえ深刻なダメージを受けている状態でこれ以上戦えば…。

 

しかし信長は戦いをやめることはない。どうにか態勢を気合で持ち直し、宝刀ではない、日本刀を高く天に掲げた。

 

「これが俺の最期の一撃だ!六天魔装、終焉ノ輝!」

 

六天魔装すべての輝きを一つにした刀が、天に立ち昇るほどの極太の神々しい光を放つ。上級悪魔なら浴びただけで焼けるような光量だ。もしかしたらそれは最上級悪魔…下手をすれば魔王クラスにも届きうるかもしれない。

 

信長の命の輝き。迷いに迷い、ようやく心を得て道を定めた男は全身全霊でその奥義の名を叫んだ。

 

「六天清浄無双!」

 

〔ダイカイガン!ダークライダー!オメガドライブ!〕

 

すかさずダークゴーストもオメガドライブを発動。ガンマイザーの銃口に込められたエネルギーに霊力が加わり、膨大なエネルギーが蓄えられた。

 

「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」」

 

そして炸裂は同時だった。光の極大の柱が振り下ろされ、ガンマイザーの砲撃が迸る。すぐに両者のオーラは衝突を起こし、飛び散ったオーラが辺り一面を削り取らんとばかりに大きな破壊の跡を残していく。

 

しかし、拮抗する間もなく信長の光が押していく。アルギスの砲撃を両断し、ゆっくりと極太の光がアルギス目掛けて叩きつけられた。それもそのはず、この一撃は信長の魂の一撃だ。生半可な力が、意志が敵うはずもない。

 

「信長ァァァァァァァ!!!」

 

光の爆発。周囲一帯を飲み込む光と轟音がその破壊力のすさまじさを物語る。ただ一人、光の奔流にのまれた男の断末魔の悲鳴すら、光の中に消えた。

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

鎧が光となって弾け、眼魂が零れ落ちた。信長の息がこれまで以上に荒い。体が痙攣し、前のめりに倒れこんだ。全身から血を吹き出し、今すぐにでも手当てをしなければ危険な状態なのは見て取れた。

 

「逃げやがった…だが手ごたえはあった」

 

「!」

 

アルギスがさっきまで立っていた場所を弾かれた様に見れば、そこには眼魂がいくつか落ちているだけだった。これだけの一撃でも、届かないのか…。

 

「クッソ…親父に…会いに行かなきゃ…ならねえのか」

 

「信長!」

 

慌てて俺は信長に駆け寄る。少しでもその症状を抑えようとフェニックスの涙を取り出すが、信長はその手を振り払った。

 

「フェニックスの涙は…毒には効かねえ。敵に塩を…涙を送るやつがいるかよ」

 

「!」

 

言われて気づいた。俺の頬に涙が伝っていることに。あれだけ命を懸けて殺し合いをしてきたこいつのために、俺は今泣いている。

 

「お前…」

 

「へ…俺に勝ったんだ…お前も…曹操たちも…英雄にならなきゃ…承知しねえぞ」

 

信長の虚ろな目が、空に移る。恐らく何も見えていないその目は、空のはるか先まで見据えていた。

 

「どうだった…俺は…最後に英雄に、なれたか…」

 

「…ああ、最高にかっこよかったぞ」

 

「そうか…」

 

これ以上ない誉め言葉を受け取ったと信長が目を細める。最後の六天清浄無双、英雄を目指した男の輝きは永久に俺の中に刻まれた。これから先も、忘れることなく俺が未来へと伝えていく。

 

「お前の…おかげで…最後にや…りたいことを、叶えられた…ありがとう」

 

…敵に礼を言うやつがいるか。そう言いたかったが、それを言えば俺の中の何かが崩れそうだった。

 

「イレギュラーの、お前なら…きっと…俺を…越えて…未来へ…行…け」

 

小さい微笑みを浮かべ、以降の言葉は絶えた。

 

その死に顔は、これまでに見たどんな人間よりも満足そうに微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

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「…なんだ、もう逝ってたのか」

 

「ふ、まるで僕が負けることがわかっているかのような言い方だね」

 

「二天龍に絡むとろくなことにならねえからな」

 

「そうだね…最後の最期で身をもって学ぶことになるとはね」

 

「…ジーク、お前に話したいことが沢山あるんだ」

 

「へえ、最期まで戦った君の武勇伝か…それとも禁手を使ってなお紀伊国悠に負けた君の醜態かな?」

 

「…全部見てたのか」

 

「ああ。仲間なんて言葉、温いと思っていたけど…君ほどの男にそう認めてもらえるなら悪い気はしないよ」

 

「そうかよ」

 

「君の天峰家に関する境遇は知っていたけど、今の今までずっと苦しんでいたとはね」

 

「…スパイとして、俺はお前たちをアルルのために利用した。すまなかった」

 

「自分からスパイを白状するなんて、全く君はとんでもないうつけものだよ」

 

「ぐっ」

 

「本当なら裏切者はグラムの錆にするところだったんだけど…生憎グラムは木場祐斗に奪われたし、僕も君も死んでいるからね。殺さないでおくさ」

 

「―――」

 

「…ほら、君と話をしたいって人がもう一人いるみたいだよ」

 

「わかってる。俺もそのつもりだったからな…色々あったが、死んだ今なら親父とゆっくり話せる気がする」

 

「僕たちの英雄への道は終わった。でも、曹操たちはまだ突き進もうとしている」

 

「俺達で見守ろうか、深海悠河の…曹操たちの行く末を」

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…」

 

既に冷たくなった彼の亡骸を見下ろす。

 

この男…英雄派幹部・信長は同じ幹部たちと共に幾度となく俺たちの前に立ちはだかった因縁の敵だ。

こいつらの計画で俺たちの修学旅行は台無しにされ、あげく兵藤も直接手を下されたわけではないにせよ間接的に死に関わることとなった。俺たち以外で言うなら、こいつらの禁手使いを増やす無茶な計画とテロでどれだけの犠牲が出てきたことか。

 

だが、最後の最後でようやく自分が進むべき道を定め、為すべきと思ったことを命がけで成し遂げた。その一点において、この男の生き様は見事だった。

 

「…敵ながら、天晴だった」

 

届かぬ言葉を捧げ、俺は立ち上がる。

 

「お前のおかげで見つけたぞ。俺の『英雄』を」

 

曹操に提起され、考え続けてきた『英雄』の定義。それをようやく見つけることができた。英雄派とも違う、兵藤が体現する像とも違う、俺だけの定義。

 

眼魂やアジトの情報だけじゃない、こいつはもっと大事なことも俺に教えてくれた。こいつの雄姿が俺なりの英雄の答えを見せてくれたのだ。

 

敵であろうと俺につないでくれた信長の最期の言葉を蔑ろにしないためにも、俺は進まなければ。

 

しかし、俺の決意の前に冷たい現実が立ちはだかる。

 

「くっ…」

 

視界がぼやける。体に力が入らず、前に出した一歩すら満足に踏み込めない。消耗した体がいよいよ限界を迎えたらしい。

 

それでも前進しようと体を動かせば、そのまま前のめりに倒れこんでしまう。

 

「意識が…」

 

失血と疲労が否応なしに俺の意識を虚無に引っ張る。抗う力もなく、俺の意識は闇に落ちるのだった。

 

 




信長は毒が回る前に英雄化の反動で力尽きました。アルギスの毒で死んでやるまいという意地です。

信長についてはヒーローズ編が終わった後に裏話を活動報告に載せたいと思います。

次回、「見えた可能性」
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