ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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色々お披露目です。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
14.グリム
23.コロンブス
31.ライト
41.シグルド
42.ユキムラ
44.ハンゾウ


第165話「御旗掲げし聖女」

〈BGM:闇の戦(仮面ライダーダブル)〉

 

「堕ちろ、雷光!」

 

堕天使の翼を生やす朱乃が、細い指先を天に向ける。それに呼応するがごとく稲光が煌めき、光の力を帯びた一条の轟雷が降る。

 

「ふふん♪」

 

それを軽快に鼻歌を歌うジャンヌの聖剣龍は身を翻して回避運動を取る。そこに雷光の眩しい光で隠れながらも接近していたゼノヴィアとイリナが迫る。

 

「はっ!」

 

ゼノヴィアが持つエクスデュランダルの厚い刃が切り上げる。アーサーが所有していた支配の聖剣も天界で統合することで、7本のエクスカリバー全てを揃えた彼女の剣は大きく力を増していた。

 

ジャンヌは大振りな一太刀を真正面から受けるのではなく、巧みにいなすことでやり過ごす。あの刃に込められた破壊の力をそのまま受け止めるのはまずいと判断したからだ。

 

「アーメン!」

 

そしてエクスデュランダルの一太刀の隙を埋めるようにイリナが片手剣を薙ぐ。迷いのない流麗な剣閃をジャンヌの聖剣が受け止めた。これまでの戦いとは違うイリナの得物にジャンヌは目を見張る。

 

「聖魔剣…!天使でも扱えるのね」

 

「かーなーりカスタマイズされた試作品よ!!」

 

三大勢力の和平を機に悪魔側から天界へ提供された木場祐斗の聖魔剣。聖書の神の死で発生したイレギュラーの代表格ともされるその剣の研究を重ねることにより、将来的な量産も見据え一振りが作られることとなった。

 

無論、祐斗の使うオリジナルの聖魔剣と比べれば質は落ちるが、強力な武器であることには変わりない。

 

「はぁぁぁ!!」

 

「やぁぁぁ!!」

 

息もつかせぬ二人の猛攻。教会時代から続く彼女らの息の合ったコンビネーションに寸分の隙も無い。剣に次ぐ剣に次ぐ剣。並の相手なら押し寄せる剣技の数々に手も足も出ずに聖剣の錆にされていることだろう。

 

だがジャンヌはそれを易々といなし、躱していく。余裕の色を寸分も乱すことなく、全ての刃がジャンヌを傷つけること能わず。

 

まるで全ての攻撃がいつ、どこから、どのように来るかわかっているかのようだ。

 

「無駄無駄!」

 

攻撃を躱す動作の中でジャンヌが一振りの旗を出現させ、左手に握る。ジャンヌ眼魂の紋章が刺繍されたその旗を振るうと、聖なる波動が風のように迸って二人を襲う。

 

「イリナ、私の後ろに!」

 

ゼノヴィアの呼びかけにイリナはすぐに行動し、彼女の後ろへ回る。ゼノヴィアはエクスデュランダルを盾にして聖なるオーラを発することで聖なる力を受け止め、相殺した。

 

「あらら、残念」

 

「どういうことだ、さっきから全く攻撃が当たらないぞ」

 

「私たちの攻撃が全部読まれてるわ」

 

二人は既にこの状況に違和感を覚えていた。歴戦の戦士は戦う相手の呼吸やオーラから次の動きを察知できるという。だがイリナが京都で戦った時点ではジャンヌはそこまでの熟練度ではなかった。眼魂を使用してのパワーアップだけでそこまでの領域に踏み込めるはずがない。

 

だがもし、それを実現できるとするなら。

 

「可能性があるとするなら、恐らく彼女の眼魂の能力ですわね」

 

チームをまとめる女王として朱乃は前衛を二人に任せて後衛から雷光を放つ傍らで冷静に敵の動きを分析していた。聖なるオーラを放つ旗だけが彼女の眼魂の能力なはずがない。ジークは怪力や透明化などもっと多彩な能力を使っていたと聞いている。同列の幹部が果たしてそれだけの眼魂を使うだろうか。

 

「奴のことだ、恐らく眼魂はジャンヌダルクだろう。…ジャンヌダルクは主のお告げを聴き、百年戦争を勝利に導いたとされる聖人だったな。奴が眼魂を使うなら、それしかないと思うが」

 

カトリック教会で聖人に認定されたジャンヌダルクをゼノヴィアはよく知っている。同じ女性信徒で勇敢にも戦場に赴いたかの聖人を彼女は尊敬もしていた。

 

英雄派が習得した眼魂を創造する技法。それにより彼らは眼魂をその身に取り込むことでパワーアップを果たす英雄化という技法をも開発した。祐斗と一誠がシグルド眼魂を手にしたジークフリートと交戦し、曹操も自身の名の由来となった曹操の眼魂を持っていることから、幹部は自身の名と同じ英雄の眼魂を持っていることは容易に見当がついた。

 

もし、ジャンヌがジャンヌ眼魂を使い、その能力でこちらの攻撃を呼んでいるのだとしたら。能力の正体は。

 

「…まさか!」

 

「あら、気づいちゃった?」

 

〈BGM:残響DEARLESS(黄昏メアレス)〉

 

答えにたどり着き、顔を青ざめる朱乃にジャンヌは艶やかな口に三日月型の笑みを浮かべた。

 

「神託よ。ジャンヌ眼魂の力で私は神託を受け取ることができるの。あなた達が何をするか、何が起こるか、全部声が教えてくれる!全ての運命を見通す神の声がね!」

 

「…!」

 

ジャンヌは隠しもせず高らかに能力の種を明かした。あえて能力を大々的に明かしたのはそれがわかったところで特定の部位を破壊すれば止められるような対処の仕様もないし、3人の行動を「読まれている」と思わせることで委縮させることにある。心理的な面ではある種、油断ともいえるが。

 

「当ててあげるわ、ミカエルのAちゃん、私に光輪を投げて拘束しようとしているでしょ?」

 

「嘘!?」

 

図星を突かれたとイリナはわかりやすく驚きの表情を見せた。これ以上は無駄だと、手元に出現させた光輪を彼女は霧散させた。

 

「ジークまではいかないけど、私もジャンヌ眼魂とかなりのシンクロ率を叩き出しているの。本来のスペック以上の力を引き出し、能力もフルに使えるわ!」

 

誇らしげに笑うジャンヌ。その台詞はゼノヴィアの耳に痛いものだった。

 

「…悠のように、エクスカリバーの能力を使いこなせればよかったのにな」

 

エクスデュランダルは7本のエクスカリバーの能力を兼ね備えている。

 

『破壊』は問題なく使用でき、スピードを底上げする『天閃』と『透明』も『破壊』ほどではないがそれなりに使える。『擬態』は元使い手のイリナの助言もあり多少は形になっているがまだ心もとない。魔術の知識を要求するテクニカルな『夢幻』と信仰に深く関わり特殊な技能を要する『祝福』は苦手。

最後にルフェイを通じてアーサーから渡された『支配』はそもそも組み込んでからぶっつけ本番で戦っているので未知数だ。

 

恐らくこれも『夢幻』同様にテクニックが必要になる能力と見込んでおり、今後苦手になる能力の一つになるだろうと彼女は思っている。

 

多彩な能力を扱えるエクスデュランダルを握っているとどうしても頭によぎるのは誰よりも認めた男の姿。彼はそれ以上の数の能力を同時に発動し、戦術に組み込んでいる。自他共に認めるパワーバカで、今後もそのスタイルを変えるつもりはないがそれでもエクスデュランダルを得た今、彼の凄さを思い知らされる。

 

彼のようにエクスカリバーの能力を使いこなしていればこの苦境もなかったのだろうか。

 

「ゼノヴィア、あなたの性格は戦ってよーくわかったわ。騎士のスピードも活かせず、折角の7本のエクスカリバーの能力もまともに使えるテクニックもない、愚直なパワーバカ。能力をフルに使いこなしている私はただのパワーのごり押しで勝てる相手じゃないわよ?わかってる?」

 

「…わかっているさ、だからこうする!」

 

エクスデュランダルからかしゅっと二本の柄がせり出し、そのまま後方のイリナと朱乃のもとへ飛来する。それをがしりと二人はつかみ取った。

 

「朱乃副部長、イリナ、頼んだぞ!」

 

「ええ!」

 

「任されたわ!」

 

エクスデュランダル所有者の許可。これにより二人…特に朱乃は聖剣使いの因子がなくとも短時間エクスカリバーの行使が可能となった。自分が能力を使いこなせないのなら、仲間に使いこなしてもらえればいい。

 

「夢幻なる雷光よ!」

 

聖剣を天高く掲げた朱乃が雄々しく宣言し、今度は無数の雷光が同時に降り注いだ。

 

「夢幻の聖剣で雷光を増やしたのね」

 

圧倒されるような光景を前にしてもジャンヌは余裕を崩さない。そして、そのまま動かない。雷光が何度も体を突き抜けるが、体には痛みも痺れも熱さもない。夢幻の聖剣はあくまで夢や幻を司る力。如何に雷が増えているように見えようと、本物は一つだけ。

 

「これね」

 

そしてここぞとばかりに聖剣龍が自身の体を形作る聖剣の聖なる力を圧縮したブレスを放つ。並の上級悪魔なら一撃で塵と化す密度の光が雷光と衝突し、派手は爆発を起こして相殺した。

 

「!」

 

「わかってないわね、私は常に神の啓示を受けられるのよ?どれが正解か不正解かなんて分かるにきまってるじゃない」

 

悠然たるジャンヌの元に、鞭のようにしなる刃が伸びる。聖剣で弾くジャンヌだが弾いた刃からさらに刃が枝分かれするように伸び、彼女に襲い掛かった。

 

「おっと!」

 

刃の鋭い突きを次々にいなす。その攻撃を放ったのは擬態の聖剣を使用するイリナだった。聖魔剣の聖なる力を共鳴させることで、剣の力は増していた。

 

「卑怯だなんて言わないでよね!」

 

「言わないわ、だって今の私にとってはそんなの卑怯でもなんでもないもの」

 

「だったら!」

 

天閃の聖剣と『騎士』の特性を同時に発動、超高速で飛翔するゼノヴィアがフェイントを交えつつ接近する。小手先の技が通用しないなら、真っ向正面からスピードとパワーで勝負するまで、そう彼女は判断した。

 

「速いわ。その動き、私では見切れないわね」

 

ジャンヌも聖剣龍を操り、挑む彼女に応じるがごとく突撃する。あっという間に距離が縮まり、剣が交わるその時。彼女の姿が忽然として消失した。『透明の聖剣』の能力だ。

 

だがその力も、今の彼女の前では種の見え透いた三流マジシャンのマジックでしかない。

 

「後ろね」

 

振り向きざまにジャンヌが聖なる一閃を繰り出す。

 

ズバン!!

 

穢れなき聖なる力を帯びた刃が、背後にいたゼノヴィアの横腹を切り裂いた。鮮血が舞い、彼女の端正な顔が痛みで歪んだ。

 

「ぐぁっ!!」

 

「動きは目に追えないわ。でもどこから来るかわかってるから結局無駄よ」

 

「ゼノヴィア!」

 

「ゼノヴィアちゃん!!」

 

悪魔にとって聖なる力は天敵。それは例え聖剣使いの転生悪魔だろうと例外ではない。傷口から聖なる力が染み込み、斬撃のダメージに上乗せされて彼女の全身に毒のように駆け巡る。体の力が抜け、ふらふらと地上に落下し体を強く打ち付けた。

 

「うぁぁぁっ!!」

 

想像を絶する痛みだ。しゅうしゅうと煙が上がり出血する傷口を手で押さえて耐え切れない痛みに叫んだ。

 

ジャンヌは空から惨めにも地を這って呻くゼノヴィアを見下ろし快哉を叫んだ。

 

「あはは!神託通り!まずは一人ね!」

 

「よくも…!!」

 

すかさず怒りに震える朱乃の雷光が飛んでくる。それを難なく龍を旋回させて躱すが、それを狙うかのようにイリナが仕掛けてきた。

 

「よくもゼノヴィアを!!」

 

大事な親友を目の前で切られ、イリナは平静を保たずにはいられない。聖魔剣と擬態の聖剣の二刀流で猛攻を仕掛ける。激しく切り結び、剣を打ち合うがジャンヌには届かない。

 

「慣れない二刀流で私に敵うとでも!?」

 

再びジャンヌが旗を振るう。旗が眩い光を放って。

 

「それ!」

 

「きゃっ!!」

 

至近距離で聖なるオーラを受けたイリナは木端のごとく吹き飛びビルに叩きつけられた。外壁にひびが入り破壊すると、そのままビルの屋内に転がり込んでいった。

 

「イリナちゃん!」

 

「さあ、次はお姉さんを落としてあげるわ!堕天使らしく地に堕ちなさい!」

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

地面が冷たい。体の血の気も引いていき冷たくなるようだが、傷口だけが熱い。

 

「うっ」

 

体が痛む。血が流れ、体の中から聖なる力が暴れまわり破壊しようとしている。傷口からしゅうしゅうと煙が上がり、少しずつだが塵と化している。このままいけば消滅するのだろう。

 

聖剣使いが聖剣で敗れる。信徒でありながら悪魔に転生した自分にはなんと皮肉な結末だろうと彼女は思った。聖剣を振るいながらも、悪魔の身には聖剣の力は必殺となってしまう。

 

これまで彼女は教会の戦士として何人もの悪魔を葬って来た。エクスカリバーやデュランダルを使い、その剣に内包された聖なる力で悪しき者を塵を化し消滅させた。回りまわって来た因果。これから自分も同じ運命をたどるのだろうか。

 

「ジャンヌ…」

 

あの女は運命を見通す神の声が聞こえるといった。ならばこの皮肉めいた結末は運命によって定められた通りのものなのだろうか。自分の敗北も、あるいは頼れる仲間である一誠の死すらも。

 

「…いや…こんな、ところで…!」

 

終われるはずがない。あれだけ懸命に戦い抜いてきた信頼できる仲間の死を、自分の敗北を不条理にも運命で定められたものだというなら。そんな運命など断じて認められない。認めてなるものか。

 

そんな最悪な運命など、この刃で断ち切ってやる。道とは自分で切り開くものだとかつて悠河の家で読んだ漫画にも描かれていた。ならば、自分の運命は自分で切り開く。誰かに決められたものではなく、自分自身の意志で決める。

 

運命を覆さんとする彼女の決意は、新たな運命の扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上で倒れていたゼノヴィアが起き上がるのを視界の端に認識したジャンヌ。

 

「…あれ、今のでまだ立てるの?」

 

「…当たり前だ」

 

出血が止まらない。聖なる力が体を焼く。それでも立ち上がる。

 

「この痛みを…何度も、受けて…それでも立ち上がった男たちを…私は知っている…!!」

 

〈BGM:仮面ライダーバルカン・バルキリー(仮面ライダーゼロワン)〉

 

惚れた男は幾度となく傷ついてきた。それこそいつか本当に死ぬのではと心配になるほどだ。それでも男は諦めずに難敵に立ち向かい、傷だらけの体で勝利を収めてきた。彼の横に並び立つと決めたなら、どうして傷の痛みに呻いて地に這いつくばったままでいられるだろうか。ここで諦めては剣士として、一人の女として恥もいいところだ。

 

痛み以上に身を焦がすのは諦めない戦意の炎。それを滾らせ、エクスデュランダルを強く握った。

 

「…お前の言う通り私はパワーバカだ。…だが!」

 

翼を広げて飛び立つ。天閃の能力で加速し、ただただ一直線に狙ったものへと突き進む。迷いもなく策もない。だからこそ、それらの重みを取っ払った今の彼女はこれまで以上の加速を見せていた。

 

「!?」

 

ガシャン!

 

破壊の一閃が、聖剣龍の片翼を粉々に砕いた。聖剣の破片が、傷ついてなお戦うことをやめない勇敢な聖剣使いを祝福するがごとく煌めきで彩った。

 

「このまま負けてやるほど馬鹿ではない!!」

 

「ちょっと、どういう…」

 

驚くジャンヌに構いもせず、旋回し切り返したゼノヴィアはもう片翼にも破壊の一撃を叩き込んだ。破壊力抜群の剣は容易く翼を先ほどと同様に破壊して見せた。

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

さらに龍の懐に飛び込んだゼノヴィア、何度も何度も、がむしゃらに破壊の力を乗せた剣戟を放ち続ける。

割れる、砕ける、砕け散る。龍を構成する聖剣がエクスデュランダルの一撃の前になすすべもなく破壊されていく。

 

やがて破壊の余波は全身を駆け巡り、ヒビ入れる。一撃のたびにヒビは広まりやがて全身にくまなく回り、ついには聖剣龍そのものを木端微塵に砕いた。

 

「私の禁手が…!!?」

 

飛行手段を失ったジャンヌは落下の最中にも驚きを隠せないでいた。まさかこんな力技で禁手を攻略するとは思わなかったからだ。

 

いや、それよりももっと驚くべきことがある。

 

「なんで読みと違う攻撃が!?」

 

立ち上がってからのゼノヴィアの動きが神託で読めない。こんなことは過去にたった一人を除いてなかった。彼女らと同じ幹部とリーダー、信長と曹操以外は誰にも。

 

「雷光よ!」

 

落下で自由に身動きの取れない隙を狙い、朱乃が雷光を繰り出す。稲光が轟き、荒々しい大自然の力が彼女を喰らいつくさんと迫って来る。咄嗟に聖剣を盾のように何十にも重ねて盾を作り、雷光を受け止めた。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

伝わる熱に肌がやられ、隙間越しに見える光が目を貫く。この攻撃はしっかり神託で読めた。英雄化の不調が原因ではない。

 

「!!」

 

その刹那、神の声が聞こえた。気づいた時にはすでに背後から飛んできた光輪がジャンヌの両腕を拘束していた。

 

「嘘!?」

 

両腕の自由が利かない。力づくで破ろうにも彼女にはサイラオーグのような突き抜けたパワーもない。何よりこの状態では剣で光輪を切断することもできない。

 

「神託通りだったでしょ…?」

 

攻撃を繰り出したのは先ほどビルへ吹っ飛んだイリナだった。してやったりと彼女はゼノヴィアへサムズアップをした。頼もしい戦友にゼノヴィアはふっと微笑み返すと、毅然とした表情をジャンヌへ向けた。

 

「聖人の名と力を騙る悪しき剣士よ、我がエクスデュランダルで…」

 

飛翔するゼノヴィアは、ジャンヌを負うように切り返し急降下を始める。己を導く声は聞こえない、体は動かない。しかし刻一刻と迫る刃。その時、全身の血の気が引いていくのをジャンヌは感じた。

 

「断罪してくれるッ!!!」

 

高く掲げた聖なる剣。渾身の一撃が今度こそ彼女に直撃した。落下の勢いは爆発的に加速し、地面に激突した瞬間凄まじい爆音を立てて地面を割り、大きなクレーターを一瞬にして作り上げた。

 

「がはっ」

 

頭から血を流し、大量の血を吐血するジャンヌ。過度のダメージを受けたことで眼魂は自然に体内から排出されて英雄化が解除される。纏っていたオレンジ色のプレートアーマーも、体の骨も落下の衝撃で粉々に砕け散っていた。

 

「ど、うして…」

 

沈みゆく意識の中で自然にそんな問いの一言が出た。だがゼノヴィアは。

 

「私にもわからん。きっと、私のパワーがお前の神託を破壊したんだろう」

 

「な、わけ…」

 

余りにも呆れ果てるような返答だったので一周回って笑えてしまったジャンヌは、その場で気を失うのだった。

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:バリアンズフォース(遊戯王ゼアル)〉

 

ゼノヴィアたちがジャンヌを討伐した頃、リアスたちはゲオルクと熾烈な攻防を繰り広げていた。多彩な魔法と消滅の魔力、魔剣の波動が飛び交い息もつかせぬ激闘が続いていた。

 

ヘラクレスを打ち負かしたサイラオーグは一旦下がり、ソーナや匙の治療を終えたアーシアの治療を受けている。禁手を使わず、すべての攻撃を耐えきったとはいえ体のダメージは深い。それでも顔色一つ変えずに堂々とヘラクレスを打ち破ったのは彼の強靭な精神力がなせる業だ。

 

「吹き飛べ!」

 

リアスの掌から紅い滅びの魔力が放たれる。ジークの四本腕を消し飛ばすほどの威力を持つ一撃だが、それらすべてがゲオルクに届く前に霧に呑まれて消失してしまう。

 

「自在に霧を操っている!」

 

「無駄だ。魔法だろうと、消滅の魔力だろうと我が霧は全てを呑みこむ」

 

ゲオルクの神器は神滅具の一つに数えられる『絶霧』。英雄化による強化も加わり、その能力は更なる高みへと昇りつめようとしている。平常時よりも自在に霧を操れるようになったためにジャンヌとはまた違った理由で、リアスたちはゲオルクに傷の一つも負わせられないでいた。

 

「ちなみにこんなこともできる」

 

ポケットから取り出したナイフで、ゲオルクは自身の指に切り傷を入れる。血が流れだす指で流れるように地面に魔法陣を素早く描いた。

 

「我が召喚に応えよ!万象の理、全てを見通し、我に呪われし祝福を与えん!」

 

魔法陣から這い出て、ゲオルクの背後にそれは出現した。筋肉質な赤い体にタトゥーのように全身に刻まれた黒い紋様。血に濡れた鋭利な両手のかぎ爪。頭部からせり出したヤギのような角。そして獣のように獰猛で凶悪な牙を生やした口。

 

上半身だけが魔法陣から出ているその異形が、リアスたちに向けておぞましい咆哮を上げた。その異形を一言で言い表すならまさしく。

 

「悪魔!?」

 

「無論、君たちと同じ悪魔ではない。能力で作られた霊力の塊でしかない…だが!」

 

悪魔の目が妖しく光る。その直後、ゲオルクの全身に文字のような紋様が浮かび、彼は苦痛に呻いた。

 

「ぐぅぅぅぅ…!!」

 

「何が起きているんだ…!?」

 

苦しむゲオルクの体から白い靄が発せられると、それを悪魔は掃除機のように吸い上げる。まるで腹を満たしたかのような満足感を恐ろしい顔に浮かべ、雄たけびを上げた。

 

「…あの白いものは生命エネルギーです。命を削って一体何を…?」

 

生命力を操る仙術の使い手である小猫はゲオルクが悪魔に吸われたものの正体を即座に見抜いた。

 

あれは間違いなくゲオルク眼魂の能力。元となったゲオルク・ファウスト博士は番外の悪魔に数えられるメフィストフェレスという悪魔と契約したとされている。それになぞらえるなら、この現象は。

 

「…悪魔の契約、なのね」

 

答えにたどり着いたリアスは恐る恐る口にする。

 

「ご名答…代償を払うことで私の力を劇的に倍増させる!霧で異空間に送るより、魔法でねじ伏せ確実にお前たちを葬ってやろう!」

 

ゲオルクが払ったのは寿命5年分。代償は寿命のほかにも記憶や四肢、臓器、財宝など様々だがそれが使用者本人にとって価値の高いものであればあるほど、高いリターンを得られる。

 

パワーアップしたゲオルクは早速魔法陣を一気に展開する。空中に所狭しと並ぶ魔法陣の数は明らかに強化前と比べ倍増している。その光景に圧倒され、戦慄するリアスたち。そこに椿姫が加わる。

 

「私がカウンターします」

 

椿姫の神器は『追憶の鏡《ミラー・アリス》』。鏡を出現させ、それが攻撃で割れた時の衝撃を相手に返すカウンター系神器だ。

 

「いえ、あの物量じゃ恐らくキャパシティを超えるわ。だからカウンターできるレベルまで私たちで削る。ロスヴァイセ、祐斗、やるわよ!」

 

「はい!」

 

「魔法なら私の出番です!」

 

椿姫の前にリアス、祐斗、ロスヴァイセの三人が並ぶと同時に魔法が怒涛の勢いで一斉に炸裂した。炎や吹雪、風、雷など森羅万象あらゆる属性を詰め込んだ魔法の嵐が降り注ぐ。

 

それを迎撃するため、リアスたちは一気に攻撃を放つ。消滅の魔力が魔法を呑みこんで消滅させ、グラムの凶悪な波動が魔法を破壊し、ロスヴァイセの全属性フルバーストの魔法が同じ属性を持つ魔法を相殺していく。

 

「今です!」

 

勢いを落とした魔法が、椿姫の出現させた鏡に突き刺さって鏡面が粉々に砕けた。瞬間、凄まじい波動がゲオルクに押し寄せた。

 

それが直撃する瞬間。彼の体が霞と共に消える。ゲオルクという得物を失った波動は地面に衝突し、土煙を巻き上げた。

 

〈BGM終了〉

 

そしてその破壊の跡の傍らにどこからともなく霧が発生すると、数秒前に消した男の姿を再び現世に戻した。

 

〈BGM:強敵(仮面ライダーダブル)〉

 

「…グレモリーやヴリトラばかりに気を取られていたが、案外シトリー眷属も侮れんやもしれんな」

 

くいと眼鏡の位置を調整するゲオルクは冷静に椿姫の能力を評する。

 

「絶霧で瞬間移動を…!」

 

驚くロスヴァイセを他所に、祐斗がグラムを構えて躍り出る。神速の一撃を叩き込むその瞬間、やはりゲオルクの姿は霧に呑まれて消える。

 

そしてまた、少し離れた場所に霧と共に姿を現した。

 

「如何に強化された身とはいえ、君と近接戦で真正面からはやりあいたくないのでな。そしてそこには罠を設置済みだ」

 

「!」

 

気づいた時にはもう遅い。祐斗の足元がばちっと痺れると、魔法陣が開いて凄まじい高圧電流が祐斗の体に流れ込んだ。

 

「うぁぁぁぁ!!」

 

「魔法のダメージだけじゃない。グラムを行使したことでその反動も来ているはずだ。呪いがどれほど強力なものかはジークフリートを通じてよく知っている。グラムを得たばかりの君に耐えられるか?」

 

「ぐっ…!」

 

ゲオルクの言う通りだった。ジーク戦や先ほどゲオルクの攻撃を迎え撃つためにグラムを解放したことでその反動が彼の全身に回っていた。電流を浴びる前には既に体が震えだしており、そのため反応が遅れてしまったのだ。

 

脚を封じられて逃げることもできない祐斗は10秒間電流を浴び続けてしまう。やがて全身から煙を上げてその場に膝を突いて倒れた。

 

「祐斗!」

 

「祐斗先輩!」

 

「そんな…!!」

 

あっけなく無力化されてしまった無残な祐斗の姿、リアスたちは容易には信じられなかった。ジークとの戦いの消耗も残っているとはいえ、こうも簡単にやられるとは思わなかった。

 

「さて…ハーフヴァンパイア」

 

グレモリーの戦力でも上位に入る彼に大ダメージを負わせたゲオルクの鋭い目が、ギャスパーを捉えた。

 

「君がグリゴリで禁手に目覚めるための特訓をしてきたのは知っている。その成果、今見せてみろ」

 

「…!」

 

〈BGM終了〉

 




まさかの勝利です。どうしてゼノヴィアがジャンヌに勝てたのか。それは…。

次回、「邪眼の鼓動」
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