ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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エボル族のトさんじゃなかった。
もしエボルドライバーに他のベストマッチのボトルを挿したらどんな姿になるんでしょうね?

Count the eyecon!
現在、スペクターが使える眼魂は…
S.スペクター
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ





第13話 「決戦前」

2日目の日が昇りかける早朝、俺は別荘周辺でランニングをしていた。

これもグレモリー先輩から言い渡されたトレーニングメニューの一つである。

 

昨日の夜は本当に大変だった。

 

夜になると悪魔は身体能力がさらに向上するらしく、トレーニングの量が昼と比べて倍以上になった。俺は神器の使用許可がもらえたのでなんとかそれでついていけたのだが。

 

木場のスピードも上がるわ、塔城さんのパワーも上がるわ。

一日目から山場が来たのかと思った。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「あら紀伊国君、お疲れ様ですわ」

 

「あ、姫島先輩」

 

背後からの声に止まり、振り向くとそこにはジャージ姿の姫島先輩がいた。

その手には水の入ったボトルが握られている。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

ボトルを手渡され、早速水分補給にとあおる。

 

「紀伊国君」

 

「はい?」

 

「実はリアスから紀伊国君の新しいトレーニングメニューに付き合うよう頼まれたの」

 

「新しいトレーニングメニュー?」

 

合宿が始まったのはつい昨日だというのに、なにか修正すべき点でもあったのだろうか。

 

「ええ」

 

出し抜けに姫島先輩が背に悪魔の翼を展開し、飛ぶ。

 

そして、指を天に向けると雷を帯び始める。

そうする先輩の表情は心底楽しそうだ。

 

「うふふふっ」

 

突如として雷が落ち、俺のすぐ隣の地面を焼く。

 

「うぇっ?あの、先輩!?」

 

「私が落とす雷から逃げながらのランニングですわ」

 

今度は目前に雷が落ちた。

そうしてようやく状況を理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げねば。

 

「ぎゃああああああっ!!」

 

「さあ、鬼ごっこのはじまりですわ!!」

 

わき目も降らず一目散に先輩に背を向けて走る。

 

ドゴン、ドゴン!と次々に降る雷が森に轟音を轟かす。

雷が響かせる轟音に混じって先輩の楽しそうな笑い声が聞こえる。

 

そういえば合宿に出発する前に兵藤が言ってたな。

 

『朱乃さんはああ見えてドSなんだ』

 

その時はまさかなと軽い気持ちで聞いていたが、まさかこんなところでその一面に出くわすとは。

 

もしかして先輩のガス抜きも兼ねてのトレーニングか?

 

「動きが少し鈍いですわよ!」

 

「ヒィィ!」

 

雷が俺のすぐ背後を焼く。

若干ジャージの背面が熱く、やや焦げ臭いにおいがする。

 

「ご勘弁をぉぉぉぉっ!!」

 

絶叫と轟音と笑い声が、森にこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「今日はイッセーとアーシアに悪魔について教えるわ、折角だし紀伊国君も聞いていきなさい」

 

ランニング(地獄の逃走)を終えて別荘に戻ってきた俺は勉強会に参加することになった。疲れたので休憩になるだろうと思い参加した次第である。

 

既にリビングには全員集まり、椅子に腰かけていた。そこに俺も加わる。

 

「まず、私たちが属する神話体系は大きく3つの勢力に別れているわ」

 

ホワイトボードにそれぞれ色が異なる3つの大きな丸が書き込まれる。赤、黒、そして青。

 

「赤が悪魔、黒が堕天使、青が天使ね。これら3つを三大勢力と言うわ。私達悪魔は人間と契約し、欲深い人間の願いを叶え、その代価を貰うわ」

 

やっぱり天使もいるのな。

赤丸の中にさらに4つの赤丸を書き込む。

 

「悪魔は4人の強力な悪魔、四大魔王を頂点にした貴族社会を形成しているわ。他にも私のような七十二柱という家の悪魔も存在するわ」

 

四大魔王、七十二柱か。

いよいよファンタジーっぽくなってきたな。

 

「四大魔王はルシファー様、ベルゼブブ様、レヴィアタン様、アスモデウス様のことよ。これだけは絶対覚えておきなさい」

 

どれも聞いたことのある名前だ。

 

兵藤とアルジェントさんは持参してきたノートに先輩が話したことを必死に書いている。先輩は次に黒丸を棒で指す。

 

「次に堕天使。彼らは元々天使だったのだけれど欲を抱いたがために堕天してしまったの。悪魔を天使よりも敵視する彼らは神の子を見張る者《グリゴリ》という組織を作り、神器を研究してその所有者を監視しているの」

 

欲を抱いた天使か。

 

脳裏にレイナーレの姿が思い浮かぶ。ああいう奴なら堕天しても仕方ない。

あのドーナシークという天使も何かしらの欲があったのだろうか。

 

「グリゴリは総督のアザゼルをリーダーに多数の幹部とその部下の堕天使達で構成されてるわ」

 

幹部の多いと来たら冥府神やホロスコープスを思い出す。あれは両方とも12人だった。

 

「主な幹部の名前は副総督シェムハザ、コカビエル、バラキエル、サハリエル、アルマロス、ベネムエよ」

 

多いし名前も元は天使なのに○○エルじゃないのもいるな。

今度は青丸を指した。

 

「そして最後に天使ね。聖書に記されし神に仕える者達。彼らはキリスト教を通じて世界中に信仰を広めているわ。そして悪魔祓い《エクソシスト》に光の力を与えているの」

 

「悪魔祓い……フリードの野郎か!」

 

「フリードって誰だ?」

 

突然兵藤の口から出た聞き覚えの無い名前について訊ねる。

 

「ん?そっか、あの時はお前いなかったもんな。レイナーレの手下だった銀髪のイカれたエクソシストだよ」

 

「イカれたエクソシストとか絶対会いたくねえな」

 

そして大きな青丸の中に4つの青丸が書きこまれる。

 

「そんな彼らを率いるのが熾天使《セラフ》。そしてそのうちの4人の強大な天使は四大セラフと呼ばれているわ」

 

四大セラフ。

まあ一時期中二病をこじらせた時期のあった俺も聞いたことがある。

 

「四大セラフとは天使長ミカエル、ガブリエル、ウリエル、ラファエルのことよ」

 

アルジェントさんと兵藤がノートに書きこむ。

 

「この三大勢力は過去二度の大戦を起こし、疲弊する結果になったわ」

 

二度の大戦か。第一次、二次世界大戦みたいな感じか?

 

「でも一度目の大戦については全く記録が残っていないの。学者の中にはそもそも二度も大戦は起きていなかったなんて言う人もいるくらいだわ」

 

記録に残らない戦争か。それぞれの勢力にとって隠さなければならない事実でもあるのか?

 

「そして二度目の大戦。この大戦が三大勢力の疲弊を決定的なものにしたの。四大魔王は全滅、四大セラフもうち二名が戦死、堕天使は幹部の多くを失いながら真っ先に戦いから引いていった」

 

赤丸の中の赤丸4つと、青丸野中の青丸2つにバツ印をつけた。

 

「疲弊した三大勢力は休戦し、勢力の回復に努めているけど各地で今も小規模の小競り合いは起こっているの」

 

小競り合い。先月の堕天使との一件のようなものか。

実際はあれよりもっと大人数で血生臭いものになるんだろうな。

 

「以上が軽い悪魔史ね。」

 

ホワイトボードに書かれた図を消していく。

すると今度はアルジェントさんに視線を向ける。

 

「次はアーシア、あなたのエクソシストの知識について教えて頂戴」

 

「はい」

 

皆の視線を集めながらアルジェントさんが席を立ち、前に出る。

 

「それでは私、アーシア・アルジェントが悪魔祓い、エクソシストについてお教えします」

 

パチパチと皆が拍手を鳴らす。緊張しているのかアルジェントさんの動きが硬い。

 

「えっと、エクソシストには二つあって一つはテレビや映画でもあるように神父様が聖書と聖水で人の体に入り込んだ悪魔を追い払うものです」

 

大体エクソシストと言えばそのイメージが強い。いわば表としてのイメージか。

 

「そしてもう一つが天使様の力を借りて悪魔を狩るというものです」

 

そして裏のイメージ。さっきのフリードとか言うのはこの後者に属すると言うわけか。

 

「次に聖書と聖水についてお教えします」

 

アルジェントさんがバッグから水の入った瓶と古めかしい本を取りだす。皆微妙にだが顔をしかめてそれらを見る。俺にはただの水の入った瓶と本にしか見えないが。

 

瓶を手に持ち解説を始める。

 

「まずは聖水ですが、悪魔が触れると大変なことになるので皆さん注意してくださいね」

 

ふと感じた疑問を投げてみる。

 

「それって元シスターのアルジェントさんでも触れないの?」

 

「あっ」

 

悲しげな表情で瓶を見つめ始める。

 

「そうでした……もう聖水に触れません……うぅ……」

 

瓶をテーブルにおき今度は聖書を手に持つ。

 

「んんっ、では気を取り直して、次は聖書です。悪魔になってからは読むだけで頭痛がします……」

 

元シスターであっても悪魔になるとダメになってしまうのか。

 

その後勉強会は午前中ずっと続いた。どうやらアルジェントさんのスイッチが入ったらしく楽しそうに解説してくれた。元々好きなものというのもあるだろう。

 

 

 

「朱乃と紀伊国君は残って頂戴。作戦会議をしたいの」

 

「はい部長」

 

「わかりました」

 

勉強会の終わった後、俺と姫島先輩はそのままリビングに残り作戦会議に突入した。

 

「紀伊国君、おさきに」

 

「待ってるぜ!」

 

「後でたっぷりしごきます」

 

その他のメンバーは各自のトレーニングへと外に出ていった。

もう少しで木場に一撃入れられそうなのに、早く勝負したいと歯噛みする思いだ。

 

「それじゃ、作戦会議を始めるわ」

 

 

 

 

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「はぁ、やっと終わった…」

 

別荘裏の森を眼魂を宙に投げてはキャッチしながら歩く。

 

2時間かけて先輩達との作戦会議が終わり、レーティングゲームで借りることになった4つの眼魂を試してみることにした。

 

改めて借りた4つの眼魂を確認する。

緑色のロビン眼魂、青色のニュートン眼魂、茶色のビリーザキッド眼魂、白色のベンケイ眼魂。

 

ロビンとビリーはオカルト研究部が拾い、ニュートンとベンケイはレイナーレ達が使っていた教会で回収した物だという。

 

「ここら辺でいいかな」

 

森の開けたところで止まり、

腰にゴーストドライバーを出現させ、眼魂を挿入する。

 

〔バッチリミロー!バッチリミロー!]

 

「変身」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塔城さんとの組手、木場との模擬戦、姫島先輩との地獄のランニング。

 

兵藤は新技を完成させ、俺は作戦に備えて各英雄眼魂を使いこなせるようにしていった。

 

こうして修行は順調に進み、10日間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

 

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深夜のもうすぐ日をまたぐ時刻。

俺はオカルト研究部の部室でゲームに備えて待機していた。

それぞれが優雅に紅茶を飲んだり、読書しながら時間を潰している。

 

アルジェントさん以外は皆いつもの学生服を着ていた。

アルジェントさんは初めて会った時に着ていたシスター服だ。

本人曰く、これが一番落ち着くとのこと。

 

木場も塔城さんも、戦闘に備えて脛あてなどを装備している。

ちなみに俺は特に装備しているものはない。

なぜならゲーム中はずっと変身しっぱなしになるからだ。

 

 

 

 

 

ふと二日目の作戦会議を思い出す。

 

『以上が今ゲームの作戦ね、他に意見はないかしら』

 

俺と姫島先輩が首を横に振り、否定の意を示す。

 

この作戦会議で俺はスペクターと英雄眼魂のスペック、能力のすべてを明かした。

びっしりと戦術が書き込まれたノートを片付けながらグレモリー先輩が言う。

 

『紀伊国君、最後にこれだけは言っておくわ』

 

凛とした瞳が俺を捉える。

 

『あなたが勝利のカギよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(責任重大だなぁ)

 

ソファに座り、相棒ことコブラケータイを撫でながら思う。

相棒は俺の緊張をつゆ知らず嬉しそうにのどを鳴らす。

 

俺の生存に勝利がかかっている。

兵藤の思いに応えるためにも何としてでも作戦を成功させる。

 

決意を固めていると、部屋に描かれた魔方陣が輝き、銀髪のメイドさんが現れる。

グレモリー先輩と同じ様に凛とした雰囲気を放っている。

 

「開始十分前になりました。準備はよろしいですか?」

 

俺も含めて皆が頷く。

するとメイドさんは今度は俺の方を見た。

 

「あなたが助っ人の紀伊国悠さんですね?」

 

「え、あ、はい」

 

歩み寄り、その手に小型の魔方陣を展開した。

 

「これはレーティングゲームでリタイヤ時に発動する転移魔方陣です。これがあれば正式な眷属でなくともゲームに参加できリタイヤ時には医務室に転移されます」

 

俺の手に重ねると、手のひらに吸い込まれるように消えた。

メイドさんは再び皆に向き直った。

 

「時間になると転移魔方陣からゲーム専用のフィールドに転移されます。異空間に作られた使い捨ての戦闘用の空間なので派手に暴れても構いません」

 

空間を作れるのか!?と内心驚く。

悪魔の技術、恐るべしだな。

 

「またフェニックス、グレモリー両家の皆様、さらには魔王ルシファー様も別の場所から中継でゲームをご覧になります」

 

それって俺の顔が悪魔社会に晒されるということだよね?そう思うとより緊張感が増してきた。

ん?ルシファー!?

 

「ちょちょっと待ってください!?俺とんでもないゲームに参加しようとしてるの!?」

 

「まあそうなるわね」

 

グレモリー家ってことは多分グレモリー先輩の両親はもちろんのことさらには伝説の魔王ルシファーまでもが観戦するゲームに出るってのか!?俺聞いてない!

 

「ちなみに部長のお兄さんが魔王ルシファー様だよ」

 

「「はぁぁぁぁぁぁっ!?」」

 

木場ァ!ただでさえ狼狽えてるってときにニコニコ顔でさらに衝撃の事実をカミングアウトするな!てか兵藤も知らなかったのかよ!

 

「ってあれ?先輩のお兄さんがルシファーってことは先輩の本名はリアス・ルシファー・グレモリー?つまりグレモリー家=ルシファー?あれ?」

 

だんだん自分の頭から煙が上がり始める。

兵藤に至っては頭がパンクしたのかもう目を回している。

 

「はぁ…部長のお兄さん、サーゼクス・ルシファー様は亡くなられた四大魔王の役職を継いだ4人の悪魔の一人なんです」

 

ため息を混じりに塔城さんが説明してくれた。

それを聞いてようやく俺と兵藤の頭から上がる煙が消えていった。

 

「「ああ、そういうことか…」」

 

「イッセーさんと紀伊国さんは本当に仲が良いんですね」

 

アルジェントさんが微笑みながら感想を述べる。

 

確かに俺と兵藤の仲はいい。だが俺はバカではない。多分な。

 

その時、「んんっ!」とメイドさんが咳払いする。

 

「時間です、魔方陣に移動してください」

 

気持ちを入れ換え、皆と共にあらかじめ床に描かれた魔方陣に足を踏み入れる。

 

「それでは皆様の健闘を祈ります」

 

その言葉と同時に魔方陣が輝き始める。一瞬宙に浮くようなフワッとした感覚が襲った。

 

ついにここまで来た。

今までの特訓の成果を存分に生かし、必ずオカルト研究部を勝利に導く。それが今の俺が、全力ですべきこと。

 

「───っ」

 

視界が閃光に飲まれる。

いよいよゲームが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




謎の少女、死んだ四大セラフ、二度の大戦。続々と謎を増やしていくスタイル。今後に向けての伏線も増やしていきます。

アンケートもまだまだやってますので覗いてみてくださいね。

次回、いよいよレーティングゲーム開戦。








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