ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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大変遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年最初の更新になります。

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第167話「極限なる白銀」

〈BGM:ゼロワン、それが俺の名だ!(仮面ライダーゼロワン)〉

 

プルートの参戦により状況が一変しようとした最中、ついに現れたあいつは現れた。

 

俺たちの中でも最高戦力になる我らが『兵士』、兵藤一誠。誰もがその男の登場を待ちわびていた。

 

あいつは翼を羽ばたかせて颯爽と地上に降りてくると、鎧の兜を消してその素顔を晒す。

 

「兵藤一誠、ただいま帰還しました!おっぱい!」

 

間違えようのない、忘れようのない友の顔だ。太陽のように明るい朗らかな表情に不安を吹き飛ばすような元気なはきはきとした一言で。

 

「イッセー!」

 

「イッセーさん!」

 

「イッセーくん!」

 

「イッセーくん!」

 

「イッセー先輩」

 

「イッセー!」

 

「イッセーくん!」

 

「イッセー君ですか…!」

 

「兵藤!」

 

どっと喜びが爆発して俺も含めた皆一斉にあいつのもとに駆け寄る。死んだ男が突然現れたのに、誰も偽物だなんて微塵も疑わない。何せ再会の言葉でおっぱいなんてあほなことを言う男なんてこいつしかいないだろう。

 

「兵藤君!」

 

「お前、生きてたのかよ!?」

 

「やはり帰って来たな!兵藤一誠!」

 

会長さんたちや匙、サイラオーグさんもあいつの帰還に表情をほころばせている。あいつの帰還を待ちわびていたのは俺達だけではないのだ。

 

「お帰りなさい、先輩…良かったぁ」

 

「イッセーさん!本当に…イッセーさんだ…」

 

「もうどこにも行かないで…あなたのいない世界なんて耐えられないわ」

 

塔城さんやアーシアさん、朱乃さんに至っては兵藤にぎゅっと抱き着いて涙を流して喜んでいる。特に二人のショックの具合ときたら相当なものだった。それだけに彼女らの喜びもひとしおだ。

 

…中々朱乃さんの言葉がヘビーだなと思ったがあえて口には出さないでおこう。

 

そして一人、紅髪を揺らして兵藤にその身を寄せた。

 

「本当に、よく帰って来たわね」

 

「はい、ここが俺の居場所ですから」

 

部長さんが涙ながらの笑顔で兵藤を迎える。そんな彼女の手を優しく取った兵藤も安心したように優しく微笑んだ。

 

帰ってきて早々に見せつけやがって。ま、今回は事情が事情だ。好きにやるといい。

 

「私たちが不在の間に大変なことになったと聞いていましたが、やはり戻ってきましたね」

 

「これで全員揃ったな!…どうしたイリナ、泣いているのか?」

 

「何よ!泣いて悪いの!?ホント…嬉しいんだもん!」

 

後からオカ研に入り、例の戦いに最後まで加われなかった組のロスヴァイセ先生やゼノヴィアたちも破顔して輪に加わる。

 

全く、こんなに大勢の人間を泣かせるなんて罪な男だよ。しかもこんな絶体絶命の瞬間にやっと来やがるもんだ。

 

「お前、ほんとヒーロー気質だな」

 

「ずっと信じていたよ。君ならどんな状況でも来てくれるって」

 

皆を立ち上がらせるため奮闘してきた俺と木場、男子組もほっと胸をなでおろしていたところ、また一人、匙が真っすぐ兵藤にばたばたと向かうと。

 

バチンと快音を鳴らして兵藤の頭をぶっ叩いた。

 

「いたぁっ」

 

「お前ぇぇぇぇぇ!!死んだって聞いてマジで泣いたんだぞこのやろぉぉぉぉぉぉ!!でもよかったぁぁ…」

 

「わ、わかったよ…心配かけて悪かったな」

 

嬉しいのか怒っているのかわからない感情を振りまきながら、ついには兵藤に縋りつくように泣き始めた。

グレモリーの城で会ってからずっと張っていた緊張の糸がほどけたんだ。会長さんに諫められる程にどこか危うさを感じるほどの緊張。

 

にしても反動で崩れすぎじゃないか?

 

「…ってオーフィスも一緒か」

 

兵藤の傍らに佇むゴスロリの幼女、龍神オーフィス。皆の視線が集まっていることに気づいたオーフィスはやはり何食わぬ顔のままピースをして。

 

「我、イッセーと一緒に帰って来た」

 

「…そうか」

 

彼女の言葉とどこか柔らかな表情でその心境の変化を察した。

 

次元の狭間を故郷とし、そこへの帰還を切に願うオーフィスがここに”帰って来た”と言った。それはつまり、俺たちがいるこの世界…ひいては兵藤達を新しい場所と定めたということだ。

 

まったく、次元の狭間でどんなやり取りをしたかは知らんが相も変わらずのお人好しが炸裂したんだろう。

元世界最強の龍神まで懐柔してしまうなんて、器の深さが底なしのお人好しだ。

 

しかしこれからどういう扱いになるんだ?

 

諸事情で天界陣営から悪魔側に下ったゼノヴィアと違いオーフィスの場合は立場が立場だ。全ての罪状をチャラというわけにはいかない。本人にその気がなかったとはいえ、一介の組織の首領であった以上は英雄派や旧魔王派といった派閥の起こした事件の責任を問われることになるだろう。サーゼクスさんやアザゼル先生も今後の処遇で頭を悩ませるに違いない。

 

…ま、それを考えるタイミングは今ではないか。少なくともハーデスや曹操の手に渡るよりはマシだと言えよう。

 

「遅くなったけど、ちゃんと有言実行したぜ」

 

「大馬鹿野郎を越えて超大馬鹿野郎だよお前は」

 

ぐっとサムズアップして笑うこいつには半ば呆れた笑いが出た。

 

オーフィスをシャルバから救って、次元の狭間から戻って来る。最期の台詞をまさかこんな形で実行してくるなんてな。

 

友の帰還に喜ぶ俺だが、同時に疑問もある。

 

こいつ、どうやってサマエルの毒から助かったんだ?

 

〈BGM終了〉

 

「兵藤…一誠」

 

歓喜に震える俺達とは真逆に、曹操は開いた口が塞がらないといった様子で兵藤を見ている。こいつもまたこれまでに兵藤が起こした奇跡の数々を知っているはずなのに、まさか今回は起こらないとでも思っていたのか?

 

「バカな…サマエルの毒を喰らって無事なはずがない。万が一にも助かる可能性はない。どうやって生き残った!?」

 

「無事じゃ無かったさ。間違いなく一回死んだ。でも歴代の先輩たちやオーフィスの助けもあって、グレートレッドの体の一部で体を再生させたんだ。たまたま通りすがったみたいでな。ついでにシャルバが呼び出したデカい魔獣もいたから、グレートレッドと合体して倒してきた」

 

えっ。

 

「はぁ!?」

 

「えぇ!?」

 

「!!?」

 

「グレートレッド!?」

 

「うっそぉ!?」

 

こいつ今なんて言った?とんでもないことを羅列して生き返って倒したとか言ってなかったか?今まではおっぱいとかいうふざけたベクトルの奇跡だったけど、今度のスケールデカすぎない?

 

また違った意味でのふざけたベクトルに言葉も出ない。理解が追い付かず、一瞬思考が停止するほどの衝撃、ふざけ具合。常識を遥かに超えている。

 

なんでこいつ息をするように奇跡を起こすの?いや一回死んでるから息止まってるけど。

 

「生存の可能性は知っていましたが、まさかこんな常識と予想を遥かに超えた方法で助かっていたとは…」

 

年長で理知的なロスヴァイセ先生ですらにわかに信じがたい理由を聞いて頭を抱えてすらいる。

 

オーフィスとグレートレッド、歴代の助力、グレートレッドの体の一部、グレートレッドと合体。そして驚くべきはこいつの復活だけではない。

 

「さっき感じた凄まじいオーラの奔流のあと、超獣鬼の禍々しいオーラが消えたわ。イッセーが倒したのね…!」

 

あれは確かルシファー眷属が出撃するほどの脅威だったはずだ。それを復活に際して、もののついでのようにオーラで消し飛ばしたというのか。こいつ、とんでもないパワーアップを果たして帰って来たぞ。

 

「たまたま、だと…?信じられない、あのドラゴンと遭遇できる確率なんて偶然のレベルではないんだぞ!その上、自力で次元の狭間から戻って来るなんて…!!」

 

曹操もいよいよ信じがたいものを見る目で衝撃のあまりに声が震えている。あまりにも常識破り過ぎて異質なこいつに恐怖すら感じ始めているのか。

 

それにしても何でもかんでも自慢のセンスで攻撃を知っているかのように見切って飄々としているこいつの虚を突かれてとんでもなく動揺しているその表情。

 

ぶつぶつとあれやこれやと独り言を言い始めた曹操を他所に、兵藤はふと部長さんに正面から向かい合った。

 

「リアス、もう一度あなたの眷属にしてください」

 

と、真剣に改まった表情であいつは言う。

 

そういえば今のこいつは悪魔の駒を失って新しい体になっているから、転生悪魔じゃないんだった。つまり、今はただの人型ドラゴンで部長さんの眷属ではない。また転生しなおす必要があるのか。

 

「…ええっ、私と共に生きなさい…!!」

 

当然断るはずもなく、その願いに満面の笑みで彼女は応えた。

 

「はい。最強の『兵士』になる夢を叶えるために、共に生きます!」

 

それに兵藤も笑顔で頷き返す。肉体が変わろうとも魂までは変わらず、だな。

 

それならば返さねばなるまい。借りたものを、あるべき場所へと。

 

「この駒は返します」

 

部長さんに俺は兵士の駒の一つを差し出す。出発前に一つ手にし、信長との戦いでは奇跡の触媒となった物。返すとしたらこれ以上のタイミングはない。

 

部長さんの掌に再び赤い兵士の駒が8つ揃った。駒は発光し、あるべき場所に変えるように兵藤の中に入っていく。

 

駒と兵藤が一つになるように、さらに抱き寄せると二人は互いに唇を重ねあう。引き離されて久しい二人の愛に見ていて湧きあがる気持ちがある。

 

「熱いな」

 

「同感だよ、私たちもするか?」

 

「いや、今はあいつらの番だ。気持ちはやまやまだがそれは野暮になってしまう」

 

ここはやっと再会できた二人を立ててやらなくちゃな。じゃないとかわいそうと言うものだ。

 

「…もう馴染んだ!この感覚がなくっちゃな!」

 

転生するや否や兵藤はぴょんぴょんと鎧の重さを感じさせない軽快さで体を動かす。これでグレモリー眷属が全員そろった。あとは…。

 

喜びに水を差すがごとく、激しい爆音が聞こえた。

 

「くっ、流石に力を抑えつつ最上級死神を止めるのは厳しいか…!!」

 

「やはり六華閃の当主ですね。侮りがたい」

 

魔法とオーラの応酬を繰り広げつつ、互いに距離を取るガルドラボークさんとプルート。プルートは容赦ない攻撃を加えるが、ガルドラボークさんは周囲の物的被害を抑えるために全力の攻撃をせず、出力抑え目の魔法を打ちながら建物が破壊されないよう防御に回っているようだった。

 

「って、そういえばプルートもいるんだった!」

 

「ええ、あなたと同行している搾りかすの気配を感じましてね。必ず仲間がいるこちらに向かってくるであろうと思いまして」

 

搾りかすが何を指すのかはすぐに理解できた。サマエルの力で無限でなくなり力を奪われたオーフィスだ。有限になった今でも恐るべき力を有する彼女は決して無視できるものではない。

 

鎌の寒気のするような冷たい光を纏った刃と道化の仮面の底にある眼光がオーフィスに向けられた。

 

「ハーデス様の命令です。そこの搾りかすは何が何でも奪取させていただきます」

 

「まだ狙ってやがんのか…!」

 

ハーデスめ、この期に及んでまだ暗躍しようってのか。だが頭数ならこちらが上だ。おまけに神滅具も2つに加え実力者も多数。そう易々と目論見通りにはさせない。

 

「貴様の相手は俺がしよう、プルート」

 

緊迫した状況に横やりを入れるような傲岸不遜な男の声。どこからともなく現れたのは銀髪の魔王子。

 

「やはり帰って来たな」

 

「ヴァーリ…!」

 

白龍皇ヴァーリ・ルシファーの登場だった。帰って来たライバルの姿にヴァーリは微笑みを浮かべる。

 

ヴァーリまでもお出ましか。プルートに曹操、ガルドラボークさんに二天龍、元七十二柱に聖剣や魔剣使いと異形界隈の高名な実力者が一堂に会しているとんでもない状況だ。だがこいつは確か、冥府で死神相手に暴れていると聞いていたが…。

 

「ホテルの件では酷い目に遭わされたな。おかげで溜まったフラストレーションをどう晴らそうかと悩み冥府まで行ったが、やはり俺を満たす相手がいない」

 

「…」

 

冥府という言葉にプルートの眼光が揺れた。ヴァーリは知ってか知らずか、ため息交じりに言葉を続ける。

 

「英雄派の幹部はグレモリー眷属が片付けた。もうお前しかぶつけがいのある相手がいないんだよ、プルート」

 

「私をストレス発散のサンドバッグ扱いとは傲慢が過ぎますね」

 

「傲慢だろう?ルシファーだからな」

 

挑発と不快。両者の言葉が交錯し、静かに戦いの機運を生み出す。もっと強い使い手と戦いたいから離脱してきたって、ほんとこいつはぶれないな。しかしまさか、プルートと一人でやりあうつもりなのか…?

 

「ハーデス様の元にフェンリルを送り込んだようですね。神にも届く凶悪無比の牙…忌々しい牽制です」

 

「いずれは神仏を正面から相手にするつもりなんだ。それくらいの札はなければな」

 

「やはりあなたは危険ですね。だが白龍皇の力を持ち、真なるルシファーの血を継ぐあなたと戦えば私の魂は至上の領域に達するでしょう。我が研鑽のためにも、世界の危険因子を排除するためにもここであなたは消すべきです」

 

「神話に名を残す死神とやりあえるなら是非もない。貴様は俺が消そう」

 

それ以上の会話は不要だった。

 

プルートが再び戦いの構えを取った。油断も隙も無ければ、音もたてずに動いてくる。冷たい虚無を体現するかのような動作だ。

 

対するヴァーリは背に光翼を展開すると、静かに翼を輝かせ、鎧をまとった。

 

ドン!

 

爆音と共にすさまじい光を辺り一面に放出し始める。滲み出るオーラは可視化できるほどに濃く、眩い。神器の力が高まっているのだ。

 

「歴代の魂を説き伏せた兵藤一誠とは違う…力でねじ伏せ、意識を完全に封じた覇龍のもう一つの姿を見せてやろう」

 

「なに…!?」

 

覇龍のもう一つの姿…!?こいつもパワーアップしていたのか!悪魔の駒の力を得て進化を遂げて覇を否定した兵藤とは違う、覇を正面から乗り越えた新たな力…一体どれほどのものなのか。

 

そして神々しい光を放つ鎧に埋め込まれた青い宝玉が点滅する。

 

「我、目覚めるは律の絶対を闇に堕とす白龍皇なり―――」

 

『天龍の高みを極め、白龍の覇道を往かんッ!』

 

『無限を制し、夢幻を喰らうッ!』

 

覇龍と似ているが違う、新しい詠唱。宝玉から発せられる歴代所有者のものであろう声は話に聞くような怨念ではなく、闘志に満ち溢れている。

 

「無限の破滅と黎明の夢を穿ちて覇道を往く。我、無垢なる龍の皇帝と成りて―――」

 

詠唱が進むにつれ、ヴァーリの鎧が変化していく。そして最後の一節を唱える時、奴の顔は昂る闘志に満ち満ちた笑みを浮かべていた。

 

「汝を白銀の幻想と魔道の極致へと従えよう―――ッ!!」

 

〔Juggernaut Over Drive!!!〕

 

瞬間、白光が爆ぜた。

 

〈BGM:漸次滅相神圏《弥果》(Abyss Code)〉

 

ガゴン!バゴン!ガシャン!

 

光がやんだ後、そこにいたのは新たな白銀の鎧を纏うヴァーリの姿。どこか覇龍を思わせるその姿が放つ力は、ただそこにあるだけで周囲の物体が潰れていくほどだ。べこべこにへこんだ乗用車、あらぬ方向に折れ曲がった街頭。その光景だけでこの存在の桁違いな力が理解できる。

 

この力は間違いなく、紅の鎧やプライムスペクターを越えている。悔しいがそう確信せざるを得ないほどの圧倒的なパワーをこの五感で感じた。

 

「なんてパワーなの…!?」

 

「イッセー君が暴走した時の覇龍以上ですわ…」

 

「『白銀の極覇龍《エンピレオ・ジャガーノート・オーバードライブ》』。覇龍とは違う俺だけの進化だ。真紅の鎧すら超えるその威光、とくと味わえ!」

 

言葉もなくプルートは即座に飛び出した。言葉を発する余裕すらないのか。それだけ奴もヴァーリの力を危険視しているようだ。

 

そして次の瞬間には、奴の鎌が砕け散った。

 

「ッ!!」

 

プルートは絶句している。ヴァーリはただ拳を突き出しているだけ。

 

何が起こったのか、全く見えなかった。恐らくプルートの鎌の攻撃を拳の一撃で砕いたのだろう。瞬きの間の短さの攻防。間違いなくヴァーリのスペックはかの最上級死神の域に達している。いや、それどころか…。

 

「一撃で!?」

 

「ごぬっ!!?」

 

さらにヴァーリは握った拳を振り上げ、プルートの顎に叩き込む。今度は道化師の仮面が砕ける音が響き、鋭いアッパーがプルートの体を風に吹かれるティッシュのように軽々と打ち上げた。

 

肉弾戦でも完全にプルートを圧倒している!ヴァーリの動きに対応できていない!

 

追い打ちをかけるようにヴァーリが掌を上空のプルートに向けた。そしてぎゅっと握りしめると。

 

「圧縮しろ」

 

〔Compression Divider!!!〕

 

発動したのは新たなる力。全身の宝玉が輝いて。

 

〔Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!〕

 

何度も何度も、繰り返し半減の発動を告げる音声が流れる。そのたびにプルートの周囲の空間が凄まじい力で圧縮し、プルート自身もそれに押しつぶされるように小さくなっていく。

 

あれはハーフディメンションの進化系か?通常の禁手時点でも強力な技だったが、あの出力で放たれるとこんなにも早いスピードで、強烈な力で半減していくのか。

 

みるみるうちに縮んでいくプルートも抵抗するすべもなく、声を漏らす。

 

「体が…圧縮され…こんなことが…!!」

 

「仕舞いだ」

 

最期にズンと大気が震える。それっきり、能力が発動することはなかった。

 

まさか、プルートを圧殺したのか…?

 

〈BGM終了〉

 

「くっ…」

 

ぱっと光が弾けると、ヴァーリの鎧が解除されぐらっとふらついた。顔は汗だくで、肩で息をしている。余程消耗が激しいらしい。あれだけの力ならこの消耗具合も頷ける。むしろそうでなければ困る。

 

「プルートが一撃…!」

 

「すげえ」

 

あまりにもあっけない最上級死神の最期とヴァーリの恐るべき新たな力に、皆呆然としていた。

 

とんでもないパワーだ。アザゼル先生とタイマンで全く引けを取らなかったあのプルートが手も足も出ずに一方的に消された。フェンリルを使わずとも神にも勝てるレベルなんじゃないか?

 

一連の戦いを見届けた曹操が、感嘆とも畏怖ともつかない表情で乾いた笑いを放つ。

 

「はは…あの空間で君に覇龍を使わせなかったのは正解だったね。なんて恐ろしいパワーだ」

 

「極覇龍は覇龍の破壊力をそのままに暴走と命への危険を可能な限り省いた力だ。おまけにまだ伸びしろもある。あの時俺にとどめを刺さなかったことを今に後悔するぞ」

 

「ふふ…やはり君は侮れないな」

 

あのパワーでまだ伸びしろがあるのか。今のままでも十分すぎるほどとんでもパワーだと思うが…少なくとも同時期に発現した兵藤の紅の鎧よりは強いだろう。だが、今の戦いを見る限り持続力はかなり劣っている。

 

その分パワーにリソースを割り振っているという見方もできるが、伸びしろがあるなら継続時間になるだろうな。

 

戦慄で滲んだ額の汗をふと拭う曹操は。

 

「兵藤一誠、君は何者だ」

 

と、いきなり哲学チックな問いかけを投げかけてきた。

 

「凡庸な存在ながらもリアス・グレモリーと赤龍帝に選ばれ、覇龍を克服して新たな力を手にした。そして今はグレートレッドとオーフィスの力すら得た。もはや奇跡そのものと言ってもいい巡り合わせの連続でできた道を今歩いている。天龍とも真龍、龍神の枠にすら収まらないだろう。俺にはわからないんだ、だからこそ知りたい」

 

神滅具最強と謳われる聖槍の使い手にもあると色々と考えることってあるのかね。英雄になろうとしていたり、普通ではない力を持つと普通の考え、普通の人生ではいられない。だからその時分に並ぼうとする存在が何者なのか知りたいのだろうか。

 

兵藤は数秒考えるように「うーん」と唸り。

 

「だったらおっぱいドラゴンでいいじゃねえか」

 

と、難しい問いかけに反する単純な答えを返すのだった。

 

…確かにどの枠組みにも収まってないが、お前それでいいのか。ドライグも泣くんじゃないのか?いや、もう今更か。

 

「…なるほど、シンプルだがこれ以上にない答えだ」

 

曹操も妙に納得がいったように頷いている。それでいいのか、お前も。これ以上ない答えって意見にはわりかし同感だが。

 

「さて、全員を相手にするつもりだったが二天龍が加わった。神滅具三つはさすがに厳しいな…なら」

 

曹操が今相対しているのはグレモリー眷属フルメンバーにシトリー眷属、サイラオーグと消耗したヴァーリ、六華閃のガルドラボーク。結界の中で戦った時以上の錚々たるメンツだ。如何にあいつが禁手の七宝をフルに使おうとも太刀打ちできる相手ではない。

 

だとすれば使ってくるか?魔王の血を加工した神器のドーピング剤『業魔人』、あるいは…。

 

いつでも戦える俺たちをざっと見渡して、奴が取り出したのは。

 

「使うしかないな」

 

「!」

 

不敵に微笑むと赤銅色の眼魂を起動させると胸に押し当てる。刹那、曹操の体からどっと溢れ出した赤銅色の光が瞬時に赤銅の鎧のようなパーカーの形を形成していく。

 

金色の差し色が入った鎧と左肩の勇ましい馬を思わせる意匠の装甲。ローブのようなパーカーが乾いた風になびく。

 

その立ち姿はまさしく中国の戦国乱世の時代に登場する無双の武人そのもの。聖槍の神々しさも相まって、圧倒的な気高さを放っている。

 

〈BGM:闘志果てしなく(遊戯王ゼアル)〉

 

「あれが曹操の英雄化…!!」

 

その存在感に誰もが圧倒され、息をのむ。奴は自身の姿を誇らしげに見せ、槍を携える。

 

「三国志最強の武将、呂布の力だ。曹操の魂を継ぐ俺が、敵対していた呂布を使うのは意外かな?」

 

「呂布ですって…!?」

 

あいつ、よりによって呂布の眼魂で英雄化したのかよ…!!なんてチョイスだ!

 

「リアス、呂布って確か三国志にも登場する…?」

 

「ええ、裏切りを繰り返しその武勇で成り上がった一騎当千の武将よ。でも最後は部下に裏切られて曹操に捕まって縛り首にされたわ」

 

「曹操にやられたんですか!?」

 

あまり詳しくなさそうな兵藤が部長さんに解説され驚く。

 

裏切りの三国志の武将。オーフィスを裏切り、反旗を翻したこいつに相応しいだろう。

 

「呂布は生前、歩兵の指揮を曹操に、騎兵の指揮を呂布が執れば天下平定は容易いと言ったそうだ。そして今、呂布とこの俺、曹操の力が一つになった。かつて実現しなかった天下無敵の力を俺は手にしたんだ。君たち全員を相手にしても引けを取らないパワーを感じるよ」

 

自信もたっぷりに曹操は俺たちを見回す。誰からでもかかってこいと言わんばかりだ。当然、迂闊に飛び込めば聖槍に刺し貫かれること間違いなしだろう。

 

そこに一人、進んで一歩踏み出す男がいた。

 

「…俺が行く」

 

「イッセー!」

 

〈BGM終了〉

 

進もうとする兵藤の肩を部長さんが引き留めた。その潤んだまなざしが訴える。行かないでくれと。

 

今回は奇跡の積み重ねで無事生還を果たしたが、また目の前で自分を置いて一人で強敵と戦おうとする彼が心配なのだ。また、いや今度こそ帰らぬ人になるのではないのかと。

 

俺だって本当は心穏やかじゃない。どうにか生き返ってやっとの思いで帰って来たんだ。ここしばらくは戦いを控えてほしいくらいだ。あんな思いはもうこりごりだからな。

 

「皆戦いで疲れてるのはわかってます。だから俺が行きます」

 

だがそれで止まるような男ではない。振り返る兵藤が両手だけ鎧を解除して、部長さんの華奢な手を取った。

 

あいつは人のためなら命を懸けられる男だ。あの時のように、自分を危機に晒し、犠牲にしてでも救いたいと思った人を救おうとする意志の力がある。

 

「大丈夫、俺は負けません。まだ夢を叶えてませんから」

 

「…!」

 

笑って語り掛ける兵藤に部長さんは次の句を失う。やがて彼女は呆れたような笑いを零した。こうなったら兵藤を止めることはできないと、何より彼女自身がわかっている。

 

「…わかったわ。今度こそ、決着をつけてきなさい!」

 

「はい!」

 

愛する人に送り出され、戦士は宿敵に向かい合う。

 

「ほう、やはり俺の相手は君か」

 

進み出た兵藤を前に曹操の口角が吊り上がる。この世で最も強い二龍の力を得たこいつと戦いたくて仕方ないらしい。

 

だがこの戦いはタイマンではない。

 

「その戦い、俺も混ざろう」

 

〈BGM:燃えるデュエリスト魂(遊戯王ゼアル)〉

 

俺も進み、兵藤の隣に並んだ。こいつと因縁があるのは俺も同じだ。それに、どうしても言わなければならないこともある。

 

「紀伊国悠…以前とは少し面構えが違うな」

 

「ああ。俺なりの答えを見いだせたからな。英雄とは何者か」

 

「聞こう」

 

曹操はどこか答えを楽しみに待つかのように、話を促した。

 

「英雄の力を使いながらも、俺は英雄という確たる定義を見出さず、ただの力として認識していなかった。だがお前に問いかけられて悩み、考え、信長がその生き様を持って俺に示した」

 

京都で初めて会ったとき、俺はこいつに問いかけられた。君にとって英雄とは何かと。

 

その時の俺は奴の問いに確たる答えを示すことができなかった。それもそのはず、定義を考え抜いたあいつらと違い俺はそんなことを真剣に考えたことなどなかったからだ。

 

そこから俺の自問自答が始まった。過去の英雄と呼ばれるような偉人を調べた、子供たちのヒーローと呼ばれる兵藤の試合を見た。そうして色んな英雄、偉人、ヒーローの形があると知った。ピンポイントに絞り切った定義では古今東西の英雄を説明することなどできない。

 

そんな中で俺は信長と戦う。奴は敵だった。迷いに迷い、それでも足掻きながら信念を定めそれに殉じた。そんなあいつから俺は学んだ。

 

「俺にとっての英雄とは、信念を抱いて今を生き信念を為し、未来に繋ぐ者だ」

 

「…ほう」

 

「英雄眼魂に選ばれた英雄たちは誰も彼も偉業を為した。それは生半可な信念では果たすことのできないことばかりだ。だがそれが必ずしも後世に名を遺す偉業である必要はない。信念の込められた行動は周囲の人間に影響を与える。死してなおその遺志は受け継がれ、生きる原動力となり、その行動を変えていく」

 

俺の知っている英雄や偉人は皆、信念を持って生き、何かを成し遂げた。

例え成し遂げた信念が後世に名を残すような偉業でなくとも、それが他者の心を動化した時、きっとその人にとっての英雄になる。

 

だが目指して簡単になれるものじゃない。大事はもちろん為すべきと思ったことを成し遂げるにはそれ相応の努力と困難をくじいてやり遂げる意志が必要になる。でも最初から英雄になりたいと思ったっていい。そのために前進する意志を持ったなら、それは信念になるのだから。

 

「だが全ての英雄が善の一面だけを持っているわけではない。栄光の裏には必ず後ろめたい闇がある。それでも君はその者を英雄と呼べるか?」

 

「呼べるさ。たとえそれが誰かにとっての悪だとしても、誰かの英雄になれるんだよ。最初から万人にとっての英雄なんてどこにもいやしない」

 

どこかの国の偉人がまた別の国では悪鬼のごとく嫌われることなんてざらにある。どんなに人気なコンテンツでもそれに合わず、嫌う人間がいるのと同じだ。判断基準も性格も環境も、世界中全ての人間が一致することなどあり得ない。

 

信長は英雄派でありアルルの配下だ。多くの人を傷つけるテロリストの一味であり、世間から見れば悪だ。

それは否定しようのない事実。だが、あの時俺を守ろうとした行動だけは否定しない。その点であいつは俺にとっての英雄だと言える。

 

そしてそれは信長だけではない。

 

「…だから、お前も『英雄』だよ。曹操」

 

「なに?」

 

「!?」

 

「どういうつもりなの!?」

 

曹操は胡乱気な声を上げ、部長さんたちは何を言っているのかと驚愕の声を上げる。当然の反応だ。こいつは悪の親玉。それをほめるような発言は憚られて然るべき。

 

「お前が率いた英雄派のメンバーはお前に救われ、お前の志に惹かれて付いて行ったんだろう?俺の定義で言うならお前も立派な英雄だよ。救われた連中にとってのな」

 

兵藤が二条城の決戦前に交戦したという英雄派の影使いはそのようなことを言っていたと聞いている。あいつらは神器を持つがゆえに人生を狂わされた連中の集まりだ。そしてそんな彼らが曹操の信念のもとに集い、結成したのが英雄派だ。

 

少なくとも、信長はこいつの志に触れてアルルに忠を尽くすだけだった心が変わった。そして同じ志のもとで英雄になりたいと願った。信長は曹操に救われたんだ。それもまた、変わりようのない事実。

 

「お前はそいつらにとっての英雄だ。だが俺はお前の行いを肯定するわけにはいかない。俺にも譲れないものがある。だからお前はここで倒す!」

 

しかし英雄と認めるかとその相手が敵か味方かは別問題だ。先も言ったように誰かにとっての英雄は誰かにとっての破壊者。このまま各勢力に危害を加えんとするこいつを野放しにしておくわけにはいかない。

 

俺は俺の信念のもと、こいつを打倒さなければならない。

 

強い決意のこもった俺の表情に曹操はいよいよ興奮を抑えられぬと言わんばかりに高笑う。

 

「…そうだ!今の君と俺は戦いたかった。過去にない最高の戦いができそうだ!だが、俺には俺の信念と定義がある。俺は俺の定義の元で英雄を目指す!」

 

「俺もだよ、あの時は英雄とは何ぞやと考えなくて悪かった。だが今の俺ならお前と気兼ねなく堂々と戦える」

 

「心が躍るな…兵藤一誠、あの時はトリアイナの弱点を突いたが、今度は全力の君と戦いたい。…成れ、紅の鎧に」

 

「そうさせてもらうぜ!二人…いや、三人で行くぜ!」

 

『応!相手は最強の神滅具、これに勝てずして気高き赤龍帝は名乗れんぞッ!!』

 

「俺達でピリオドを穿つ!」

 

〈BGM終了〉

 

ドライバーを出現させ、プライムトリガーとスペクター眼魂を握り、兵藤は拳を天に掲げる。

 

「我、目覚めるは王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり!」

 

〔ソウル・レゾナンス!〕

 

眼魂とトリガーのスイッチを押し、ドライバーに差し込む。詠唱を口ずさむ兵藤の体から滲み出る赤い光が真紅に変わろうとしている。

 

〔無限の希望と不滅の夢を抱いて、王道を往く!我、紅き龍の帝王と成りて――〕

 

〔アーイ!ヒーローズ・ライジング!〕

 

ドライバーを操作する一方で隣から肌を刺すような紅の光が刺さる。その光を中心に、出現した13体のパーカーゴーストが空を舞う。

 

「汝を真紅に光り輝く天道へ導こう―――!!」

 

「変身!」

 

互いの最後を決める言葉は同時に発せられた。

 

〔Cardinal Crimson Full Drive!!!〕

 

〔カイガン!プライムスペクター!英雄!裂空!勇壮!激闘!ブレイヴ・イグニッション!〕

 

赤龍帝の鎧は形を変えて真紅の鎧に進化し、金色の霊力が俺の身にまとわりつき銀色の鎧と化し、英雄たちと一体となる。

 

悪魔の駒の力を取り込み更なる進化を果たした赤龍の姿、真紅の赫龍帝《カーディナル・クリムゾン・プロモーション》と13の英雄の力を纏いし仮面ライダープライムスペクター。

 

「さあ、始めようか」

 

それらを前に昂りを抑えきれぬ曹操はより笑みを深める。

 

英雄派の首魁との最後の戦いが幕を開ける。

 




曹操の定義:己の限界を試して超えるために困難に挑戦し、偉業を成し遂げた者
悠河の定義:信念を抱いて今を生き信念を為し、未来に繋ぐ者

どこか似ているようで違う結論に辿り着きました。違う点を強いて言うなら自己完結するかしないかといったところでしょうか。

いよいよ最終決戦です。

次回、「英雄決戦」
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