ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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大変遅くなってしまいました。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
23.コロンブス
31.ライト
40.ジャンヌ
41.シグルド
42.ユキムラ
43.ゲオルク
44.ハンゾウ


第169話「カーディナル・クリムゾン・ストライク」

「兵藤一誠、あれが冥界のヒーローか」

 

ガルドラボークがぽつりと呟く。初めてこの目で直接見る一誠の戦いを彼は注意深く、観察するように見ている。

 

彼の内心は穏やかなものではなかった。ウリエルから聞かされた情報と違い、英雄化というイレギュラーを手にした曹操が、兵藤一誠とイレギュラーそのものである深海悠河と戦っている。

 

特異点とイレギュラー、そしてイレギュラーな力を手にした特異点。

 

この先どう転ぶか分からない状況で、いざとなれば介入も辞さない覚悟で彼はこの一戦を見届けていた。

 

「ええ、彼が私たちの…冥界のヒーローよ」

 

悠河と一誠、そして曹操。三人の戦いをリアスたちも固唾をのんで見守る。神滅具を操る一誠と数多の英雄の力を束ねる悠河は紛れもなくグレモリーチーム内でもトップクラスの戦力だ。

 

そんな彼ら二人係でも曹操は互角以上の戦いを見せている。ともすれば、二人をこのまま翻弄して勝利をもぎ取ってしまうのではと不安になるくらいだ。

 

「イッセーさんは絶対に負けません」

 

「悔しいがあいつは俺より強ぇ。だからこそ、あいつが勝つって信じられる」

 

「そうですわ、今まで二人のコンビで勝てなかった相手はいませんわ」

 

「先輩たちが一緒に戦えば、どんな敵にだって負けません」

 

「あの男は負けん。いかなる状況だろうと必ず立ち上がり、勝利をもぎ取りに行く。俺の時がそうだったようにな」

 

しかし皆は口をそろえて二人の勝利を信じてやまない。過去の経験、信頼、彼らと一誠、悠河をつなぐ強い絆があらゆる不安を取り除いている。

 

「…評判に聞く煩悩ばかりの男ではないとよくわかった。だがまだまだ足りないな」

 

「足りない?」

 

「経験も、非情な覚悟も、何もかもだ。今のままでは冥界のヒーローにはなれても世界を救うことはできん」

 

瞑目するガルドラボークは冷たく断ずる。彼らは間違いなく理想とする強さの域に近づきつつある。しかし、その精神性はまだ彼の理想とするものとは程遠い。

 

彼が求めるものは大多数を救う大義のために必要とあらば如何なるものも切り捨てる非情さと、それを発揮する覚悟。そしてあらゆる状況を乗り越えていける判断力を培うための経験。それがまるで足りていない。

 

経験は嫌でも身につくが、非情さは必要とされる状況に追い込まれなければ身に着けることはできない。

リアスたちはその非情さを身に着けることができるかもしれない状況…兵藤一誠の死に直面したが、結果として一誠は帰還した。

 

今回の経験は彼女らの気構えに大きな変化をもたらすだろう。だがそれは、完全なる不可逆の変化とは言えない。

 

徹底した揺るぎない覚悟、あらゆる物を捨ててでも目的を果たす非情。それをガルドラボークは彼女らに要求する。

 

「それは兵藤一誠だけではない。グレモリーの君たちにも言えることだ。このままでは君たちの誰かが、君たちが身に着けられない非情さを担うことになる。いや、この先否が応でも担わなければならなくなる。木場裕斗、君は惜しいところまで行ったのだがね」

 

「僕だって?」

 

「ああ、君は過去に復讐の激情に身をゆだねたことがあるだろう?あらゆるもの…仲間も立場も、自分の命すら捨てて復讐というエゴに満ちた大義のために戦った。それはまさしく俺の思う『非情さ』だよ」

 

彼は内心木場を評価している。剣の腕もポテンシャルも勿論だが、エクスカリバーの事件を通じて周囲に見せたリアスたちとは一線を画した精神性に彼は大いに期待を寄せているのだ。

 

兵藤一誠と並び立つ逸材になるのも頷けるというもの。一誠を失って精神的に壊滅させられたグレモリー眷属の中で唯一立ち上がったことも大きく彼の評価を上げていた。

 

「…でも僕はあなたの言う非情さとは別の道を選んだ。イッセー君たちに支えられ、支えながら戦っていく道だ。僕は微塵も後悔していないし、この道を歩んでいることを誇りに思っている」

 

だが迷いのない目で裕斗は否を突き付ける。

 

一度は歩もうとした復讐の道。身を焦がし、やがては滅ぼす業火に身を焼かれる中で彼は一誠に手を差し伸べられ、その手を取り今を手にした。

 

そこに微塵も後悔があるはずがない。例え甘くなったと嗤われようとも彼は道を逸れる気はない。これからも変わらず自分を助けてくれたかけがえのない者たちと同じ道を歩んでいくと決めたのだ。

 

「だろうな。だが…彼はどうかな」

 

見上げる視線の先にあるのは、プライムスペクターへと身を変え戦う悠河。曹操の七宝を生かした巧妙な戦法に屈することなく、赤龍帝と共に何度も立ち向かっていく。

 

「…どういうことなの」

 

「一般人である彼が命を削りあう戦いに身を投じる覚悟はできた。それも一種の非情さだ。だがそれだけでは足りない。彼はいつか決断を迫られるだろう。極限の精神状況下で非情さを手に入れるか、それとも甘えを捨てきれずに壊れるか…どうなるだろうな。非情さを手にさえすれば彼は…完璧だと、俺は思うがね」

 

ガルドラボークと悠河はあまり仲が良くない。それは初対面の際に凛の処遇でもめたことが大いに起因しており、以降も何度かそのスタンスの違いで対立を起こしている。

 

だがガルドラボークは彼を心底嫌ってはいるわけではない。妹へのこだわりに対して不快感を覚えているのは事実だが、寧ろその実力と強敵を打ち破る爆発力を評価しており今後を大いに期待している。

 

だからこそ、その発展と彼ら自身の計画の妨げとなりかねない甘さを捨て、真に覚悟を決めてほしいと切に願っているのだ。

 

それ故に彼は何度も悠河と対立する。訪れるかもしれない『いつか』の可能性を意識させ続け、然るべき時に然るべき選択を取らせるために。例え追い詰められていると周囲から糾弾されようとも、彼の意志は揺るがない。

 

「悠河は貴様の思い通りにはならない。いや、私たちがさせない」

 

冷たいガルドラボークの笑みに対し、ゼノヴィアが剣のように鋭い眼差しで拒絶の意を示す。

 

「さてな、これからどうなるかは誰にもわからんよ。運命を司る神ですらな」

 

それに皮肉気に笑うガルドラボーク。彼は予感している。抗いようのない不可逆の選択。その刻の到来を。

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:ゼロワンの攻撃!(仮面ライダーゼロワン)〉

 

残る七宝はあと4つ。

 

飛行、転移、受け流し、そして女性の異能封じ。何としてでも対処しなければならないのは転移と受け流しだ。この二つがある限り俺たちの攻め手は限られ、戦いは容易に奴のペースに持っていける。

 

おかげでこちらの攻撃はただの一度も当たることなく、じりじりと奴のずば抜けたパワーに圧倒されるばかりだ。遠距離攻撃は受け流しでそのまま返され、距離を詰めても転移で躱されて死角から反撃の一撃を貰う。

 

だが俺たちもただ奴に翻弄されるばかりではない。戦いの中で七宝の発動を何度も目撃し、その能力についていくつか気づきを得た。

 

飛行を除く3つの七宝は奴の背で浮遊している。必要に応じて飛び出し、効果を発揮すると言った具合だ。

恐らく、一定範囲内に対象物を収めないと効果を適用できないのだろう。

 

中でも転移と受け流し。この二つは戦闘の中で何となく効果の範囲がわかって来た。範囲外から攻撃を仕掛ければいいのだが、そのための遠距離攻撃はすべて受け流しで無駄に終わってしまう。近接戦を仕掛けようものなら攻撃のタイミングで転移させられ、危うく同士討ちさせられそうになる。

 

一件無敵の能力に思えるが、転移できるものとできないものがある。それは…。

 

「面白い能力だが、遊び飽きたな」

 

曹操の槍の一閃の下に、グリムの能力で作った大鷲が霧散する。そこにすかさずガンガンセイバーとバットクロックの二丁拳銃による射撃を撃ちこむが。

 

「無駄無駄」

 

やはり受け流しの七宝を発動し、全ての銃弾を兵藤に流してきた。

 

「ぐあっ!!」

 

鎧に着弾し爆発を起こしていく。鎧に傷はついたが幸いにも生身へのダメージはなさそうだ。

攻撃を受けてよろめいた兵藤に、転移で一瞬にして距離を詰めた曹操の槍が牙を剥く。

 

「させるかよ!」

 

すぐさま俺はフーディーニの鎖を伸ばして奴の聖槍に巻き付けた。強く引っ張り、兵藤に攻撃を加えまいとする。

 

悪魔の兵藤にとって聖槍の攻撃は絶対に避けなくてはならない。生身にかすめるだけでもかなりのダメージになってしまう。

 

「これは…」

 

〔エジソン!〕

 

おまけに電流を流して奴の体の自由を奪う。動きを止めた奴のすぐそばで兵藤が拳を握りしめていた。

今こそ奴に一撃をぶちかます絶好のチャンスだ。

 

「今だ!!」

 

「おらぁ!」

 

〔Solid impact booster!!〕

 

一気呵成にここぞと拳を振りかぶる兵藤。極太の拳があと1㎜でヒットする。ようやく待ち焦がれた瞬間が訪れようとしたその時。曹操の姿はかき消える。

 

「今のは危なかったね」

 

「ごぁ!」

 

不意に後ろに感じた気配。振り返ると同時に裏拳が背中に撃ち込まれ、木端のように吹き飛ばされてビルの屋内へ転がっていく。

 

「いっつ…」

 

眼魂一つでなんて馬鹿力だ。恐らく眼魂と曹操との相性がいいのだろう。同じ三国志系か、それとも裏切り繋がりかは知らんがそうでなければ説明がつかない。

 

「だが…」

 

〔ニュートン!〕

 

ばっと手を伸ばし、引力のフィールドの射程圏に曹操を捉えた。

 

「ちぃ」

 

聖槍を盾に構えるが、それで防ぐことなどできやしない。足に力を込めて踏ん張るが、じりじりと引き寄せられて距離が縮まっていく。

 

そうだ、お前がこの攻撃から逃れる術は一つしかない。この攻撃は受け流しで対処できるものではない。だとしたら…!

 

その瞬間、忽然と奴の姿が消えた。予想通り転移の七宝だけを残して。

 

「やはりな!」

 

転移の七宝は所有者を含めたあらゆる対象を一定の範囲内に自在に転移させることができる厄介な能力だ。だが、転移の七宝自身を転移させることはできない。自身を守る術を持たないのだ。曹操自身を転移させる際、必ずこいつだけ置き去りになってしまう。

 

つまり、今が絶好のチャンスだ。

 

〔ロビンフッド!〕

 

〔ダイカイガン!ハイパー・オメガ・ストライク!〕

 

すかさずガンガンセイバー アローモードを召喚して強烈な霊力の一矢を放つ。転移の七宝も即座に反応して周囲の瓦礫を転移させ壁にするが、その程度で俺の攻撃は止められない。

 

矢は瓦礫を容易く貫通し、七宝の中心を見事に打ちぬいて風穴を空け、そのまま爆散せしめた。

その光景を見届け、自然と息がこぼれた。

 

「はぁ…やっとか」

 

やっと転移の七宝を潰せた。これでかなり戦いやすくなる。ここまで来るのに本当に苦労した。残りは3つだ。

 

「ほう、これで4つも俺の七宝を潰したか。流石だね」

 

いつの間にか飛行の円盤に乗って高みの見物を決めていた曹操が感心の言葉を投げかける。散々俺たちを苦しめた本人にそんな言葉を貰ったところで嬉しくもないが。

 

「まだまだァ!」

 

攻勢は勢い緩めぬまま続く。屋内から外へと駆けだして更なる英雄の力を発動させる。

 

〔ロビンフッド!〕

 

〔ビリーザキッド!〕

 

〔ノブナガ!〕

 

生み出した分身は二人。ただでさえ消耗が激しい能力なのだからこれ以上の数は避けたいし、今はこれで十分。

 

分身たちはそれぞれガンガンハンド、ガンガンセイバー ガンモードとバットクロックの二丁拳銃で曹操へ銃撃の嵐を放つ。色とりどりの霊力の弾丸が高速で空を切って放たれた。

 

「馬鹿の一つ覚えだ!」

 

受け流しの七宝が前方に動き発動。黒い穴に全ての弾丸を吸い込んで、そっくりそのまま返してくる。

無慈悲にすべてを撃ち抜く銃弾の豪雨が降り注ぐところを。

 

〔ニュートン〕

 

〔ツタンカーメン!〕

 

〔ダイカイガン!ハイパー・オメガファング!〕

 

ガンガンハンド 鎌モードによる斬撃がピラミッド状のエネルギーの塊を生み出す。その中心にぽっかりと空いた穴がニュートンの引力と組み合わさることで強烈な吸引力を放ち、弾丸の軌道をあまねく捻じ曲げて吸い込んでいく。

 

そしてそれを受け流した七宝でさえも。

 

引力の下に舐められた七宝が、無力にもオメガファングの中にじりじりと引きずり込まれていこうとする。

 

「なるほどそう来るか!でもそんなものは聖槍の前には…!」

 

すっと聖槍の穂先をオメガファングに向けた曹操。穂先に聖なる光が収束していく。聖槍の出力に物を言わせて、七宝が飲み込まれる前に引力の大本となるオメガファングを破壊するつもりのようだ。

 

だが、兵藤はそれを見過ごさない。

 

「邪魔はさせねえ!」

 

「!」

 

高速で突貫した兵藤が蹴りかかり、聖槍からオーラを放出せんとする曹操の動きを妨害する。円盤を翻して回避し、収束したオーラをすれ違う兵藤に向けて放つ。

 

それをすかさずドラゴンショットで相殺、巻き起こった爆炎が風と煙と共に両者の視界を塞いだ。

 

その間にもオメガファングは七宝を完全に穴の中に呑みこみ封印を完了する。

 

「これで最後だ」

 

ぱちんと指を鳴らせば、オメガファングはかっと眩しい光を放って大爆発を起こす。七宝諸共消し飛ばしてやった。

 

転移、受け流し、武器破壊、分身、衝撃波。これで厄介な能力を持つ七宝はすべて潰した。ようやくまともに戦えそうだ。

 

〈BGM終了〉

 

「よっし、あとはてめえ本体を叩けば終わりだ、曹操!!」

 

「…七宝をここまで潰されたのは初めてだ。ならばここからは」

 

七宝の大半を失ったが、曹操はむしろ余裕を失うどころか昂っているようだ。笑みを深くして、石突で強く足場にしている円盤を叩いた。

 

「純粋な力と技巧がモノを言う戦いになる」

 

「望むところだ…!」

 

〈挿入歌:Just the beginning(仮面ライダーウィザード)〉

 

早速牽制がてら鎌をそのまま曹操目掛け投げ飛ばす。霊力を帯びて高速回転する刃を奴は巧みに弾き飛ばし、その間に俺は一気に飛翔、接近して近接戦を仕掛ける。

 

拳、そして蹴り。その一発一発に英雄たちの力を込めて打ち合う。エジソンの電気を利用して全身を活性化させ、ムサシの見切りで奴の挙動を察知しつつ、ベートーベンの震動を乗せた攻撃をベンケイの力でパワーを底上げして繰り出す。

 

拳と拳がぶつかり合う。それだけで大気が轟音を立てて激しく揺れ、ビルの窓ガラスが割れる。戦いの中で高まる闘志がさらに俺の身体能力を引き上げていく。それに難なく曹操は追いついていき、互角以上の戦いをしてくる。

 

打ち合いの中、奴の眼が妖しく輝いた。その瞬間、右手が拳を握ったまま石化してしまう。おまけにその効果は関節部まで及んでいた。

 

「右腕が!」

 

「メデューサの眼を忘れてもらっては困るな。七宝を封じれば終わりと思ったか?」

 

「くそ!」

 

こいつ、フィジカルもバケモノだが能力が多すぎるんだよ!全部を覚えて余さず対処しきれない!俺が言えた義理じゃないが!

 

そして聖槍の柄を叩きつけられ、痛みに歯をかみしめながら一気に俺と奴との距離が遠ざかっていく。

 

「俺が相手だ!」

 

入れ替わるように兵藤が突撃。曹操に息をつかせる間も与えまいと、鋭く重い拳を振るう。肉弾戦は兵藤の十八番だ。倍化の能力で威力を増した拳を真正面から喰らってなお食い下がれる相手はなかなかいない。

 

だが奴はその一挙一動全てを理解しているように軽やかにかわして見せ、時折聖槍で弾いた。

 

「前にも言っただろう?鎧装着型の禁手はオーラの流れで動きが読めると!」

 

こいつそんなことも言っていたな!腹立つくらいに俺たちの動きを読んで対処してくるのはそれが理由か!

 

「んなこと知るか!」

 

「知っておかねば俺は勝てる相手じゃないよ」

 

拳をいなし、一歩力強く踏み込んで腹に真っすぐ拳打を叩き込んだ。

 

「がはっ」

 

そしてハイキック。的確な一撃が追い打つように腹に刺さり、軽々と吹っ飛ばした。

 

「兵藤!」

 

〔ノブナガ!〕

 

庇う様に前に出て、ノブナガの能力を付与したガンガンハンドの一斉射撃を行う。

 

「ふん」

 

それを奴は聖槍の一振りで消し飛ばし、そのまま聖槍で十字型の斬撃を繰り出してきた。地面をごりごりと削りながら向かってくる斬撃を構成するのは莫大なオーラ。生半可な攻撃では打ち消せないこれほどまでのオーラを容易く放ってくるとは。

 

〔ダイカイガン!ハイパー・オメガスラッシュ!〕

 

「もう何度目かわからねえドラゴンショット!」

 

俺達はそれを互いのオーラ、あるいは霊力を乗せた斬撃と砲撃で迎え撃つ。互いのオーラが衝突して激しい爆発を巻き起こした。

 

兵藤はそこから更なる攻撃に出る。

 

「これならどうだ!?」

 

〔Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!〕

 

何度も倍加を発動させ、高めた力をそのままに兵藤が深く息を吸い込んだ。そして吸った息を何倍にして業火と共に吐き出した。分厚く、広範囲に燃え盛る炎の塊が空を焦がす。

 

「面の攻撃も無駄さ」

 

聖槍を突き出し、かしゃっと開いた先端から莫大な聖なるオーラを放出した。豪炎と光波。眩い二つは互いを喰らいあうが、神滅具の純粋な力から放たれるそれに龍の炎が敵うはずもなくすぐに押し出していく。

 

絶大な光の波動は龍の炎を圧倒し、そのまま俺たちを呑みこむ勢いだ。

 

「くそ!」

 

慌てて回避運動を取ろうとする兵藤。しかし俺の脳内には一つの考えがよぎり、それが足を止めた。

 

…あれを使うならここしかない。思考は一瞬、行動に移す決断もまた一瞬だった。

 

「兵藤、光の中へ突っ込め!」

 

「はぁ!?」

 

「考えがある!そのままあいつに一発ぶちかますためのな!」

 

この能力なら曹操の想像を超え、虚をつくことができる。このジリ貧極まれりな状況を打破する一手だ。

 

「…OK!」

 

兵藤はくるりと方向転換し、光の方へと向き直る。流石俺の親友だ。お前なら信じてくれると思った!

 

「怯むな!!全力で突っ切れ!!」

 

〔ベンケイ!〕

 

〔Star sonic booster!!〕

 

それぞれの能力を発動し、行動を実行する。

俺の一言に全幅の信頼を寄せたか、迷いもなく『騎士』の速度で突っ込んでいった。

 

そして間もなく、光の中へ兵藤が消える。否、拳を突き出して光を突き破りながら前進していく。

当然、光は邪なる悪魔の存在を無慈悲に消し去る…はずだった。

 

「くっ」

 

その全てを、俺はベンケイの能力で兵藤の代わりに受ける。ベンケイの力で兵藤は今、特殊なエネルギーフィールドを纏っている。それが兵藤の身に襲い掛かるあらゆるダメージや衝撃を俺に転送しているのだ。

 

衝撃が全身を震わせるが、ベンケイの能力で耐え忍ぶ。もう一方の光のダメージは悪魔でない俺にはない。せいぜい体がちょっと焼けるように熱い程度だ。とはいえ、能力を経由してではなく直に喰らえばただでは済まないだろうがな。

 

だがこんなものは信長の終ノ型に比べればなんてことはない熱さだ。いくらでも耐えてやる。勝つためなら。

 

高速で光を貫く兵藤はついに、光を放つ曹操の元へ達した。

 

「やっと!!」

 

光の幕を破り、勢いよく曹操の眼前に躍り出た。

 

〔Solid impact booster!!〕

 

「!!」

 

「てめえに一発噛ませる!!!」

 

完全に虚を突かれたようで、反応が遅れた曹操の顔面に重い拳をついに打ちぬいた。ドゴンと一撃の命中を証明する重い音が辺りに響いた。

 

まるで風に吹かれたティッシュのように軽く曹操の体は弾かれ、地面へ一直線に叩きつけられる。ずどんという重い衝撃が駆け抜け、地面を砕いて派手に土煙を巻き上げた。

 

「ついに入ったぞ!」

 

「やりましたわ…!」

 

後ろで戦いを見守る皆がこの光景に声を上げて喜んでいる。皆も曹操と戦って手も足も出なかったから、そのリベンジを託しているのもあるのだろうな。

 

「やっと一発入った…!」

 

「ここまで来て一発…どれだけ今のあいつは強いんだよ」

 

〈挿入歌終了〉

 

着地した兵藤の隣で俺はふうと一息を吐いた。

 

今の拳は獅子の鎧を着たサイラオーグさんにも届く一撃だ。それが顔面に入った。脳震盪も確実だろう。眼魂一つのパワーアップだけではひとたまりもあるまい。

 

…だが、あいつはこれで終わる男ではない。

 

そう確信があった。悔しいがあいつの闘志も実力も生まれ持った力の全てがその確信の根拠だ。あれだけ戦いに対してぎらついたものを見せていたあの男がそう簡単に沈むものか。

 

「…はは」

 

その予感に肯定を示すがごとく、土煙の中から愉快気な笑い声が聞こえた。

 

晴れ往く茶色の土の幕が薄れゆき。ゆっくりと上体を起こそうとする曹操の姿があった。

 

「…やるね、一瞬意識が吹っ飛んだよ。いい一撃をもらった」

 

喋る曹操は鼻血を垂らし、口の中は血で真っ赤だ。だがその端正な顔立ちは一切歪んではいない。とことん頑丈になってやがるな。

 

「…悪魔にとって聖槍の攻撃は必殺だ。どうして無傷でいられる?」

 

「俺がダメージを肩代わりしたからさ」

 

「肩代わり…だと?」

 

「ベンケイの能力はパワーの強化だけじゃない。味方のダメージを引き受けることだってできる。それで俺が聖なるダメージを引き受けたってからくりだ。最も、人間の俺にはそんなものは痛くも痒くもない」

 

ここで種明かし。どうせ説明せずとも二度目は見切って来るだろうし、自力で辿り着くだろう。こいつはそういう男だ。生まれ持った戦いのセンスは俺や兵藤を遥かにしのぐ。

 

「ほう…そんな能力があるというデータはないな。つい最近発現した能力か?」

 

「いいや。これも、今まで一度も使ったことがない能力だ」

 

ベンケイ以外にもグリムだってつい最近手に入れたから向こうはデータをまるっきり持っていないだろう。

そういった能力なら奴に対抗する手立てはある。もっとも、生半可な運用では通用するはずもないが。

 

「…はっ!君との戦いは本当に飽きないね」

 

ぷっと血を吐き捨て、聖槍を支えに立ち上がった。

 

「君たちもサイラオーグ・バアルも、傷を負ってからが精神的・肉体的コンディションで本領を発揮するタイプだと認識している。種族の身体性能から傷を負えない俺にはわからない感覚だったが…今ならわかる」

 

俺が兵藤達と同じHPが減ってから本領発揮しているだと…?

 

コカビエル、ネクロム、ロキ…過去の戦いを思い返したが、確かにボロボロの状態で勝ってるな。当時の気持ちも振り返ると、あながち曹操の言は間違いではない。

 

逆境だからこそ、引くに引けない状況だからこそ力をさらに引き出せた。ある種の火事場の馬鹿力だ。それが人の精神に感応する神器所有者なら猶更そうだ。

 

こんなところまで見抜いてるなんてもはや恐ろしいを通り越して気持ち悪くなってきたぞ。研究のルビにストーキングって振られたりしていないか?

 

「血を流して感じた…この赤い血が闘志で沸き立つ。戦で燃やす俺の命を肌身で実感するよ…!ここまで相手を倒したい、勝ちたいと純粋に思えた戦いはスダルシャナ以来だ…!!」

 

腰を低く落とし、槍を構える曹操の表情はいつになく本気そのものだった。完全にスイッチが入っている。

 

「さあ、死合おうかッ…!!」

 

〈挿入歌:Alteration(仮面ライダーウィザード)〉

 

刹那、高速の疾走。風を切る曹操が転移ではない純粋な身体能力によるスピードで距離を一瞬で詰めた。

 

槍の一突きと見せかけた巧みな拳打のフェイントに惑わされ、一瞬の判断の迷いを付け込まれるように拳で穿たれる。

 

「ぐぁ!」

 

「この!」

 

割って入る兵藤の肉弾戦。高速の拳のラッシュを舞うようなステップを踏みつつぱしぱしと弾いていく。兵藤をフォローすべくエジソンの電撃を木の枝のように迸らせるが、その一挙一動が見えるがごとく奴は正確に避けつつ兵藤の攻撃をさばく。

 

躱されて空しく空を切る拳。その腕をつかんだ曹操が何が起こったかすらわからないほど手慣れた素早い動作で巴投げを決めた。

 

「がは!」

 

「ちぃ!」

 

飛び出し、体を回転させて勢いを載せた踵落とし。曹操の脳天にぶち込むはずだが、奴はなんと聖槍の柄で受け止めて、俺の体重の乗った聖槍を曲芸のごとく片手で軽く回し、先ほど地面に叩きつけた兵藤の上に積み上げるように叩きつけてきた。

 

「ぐはっ!」

 

「まとめて仕舞いだ!」

 

俺と兵藤をまとめて串刺しにせんと迫る曹操の聖槍。咄嗟に俺は英雄の力を起動する。

 

〔ベートーベン!〕

 

高速で射出された音符型の霊力が聖槍の柄に命中。必殺の軌道を逸らし、何もない地面に鋭利な先端が突き立てられた。地面を抉るような一突きの威力にひやりとしたものを覚えた。

 

「!」

 

「はっ!」

 

カウンターでさらに曹操の腹に蹴りを入れて後退させる。反応からしてほとんど効いていないようだがそれで結構。その間に起き上がって態勢を整えた俺たちのコンビネーションが始まる。

 

「「おおおおおおッ!!!」」

 

蹴りと拳のあらゆる体術で攻め立てる。これまでに培ってきた持てる全てを俺たちは互いにかみ合わせて目の前の超えるべき強敵に余すことなくぶつけた。

 

互いの隙をカバーし、付け入る隙を無くす。ミジンコほどの小さな穴だろうと見透かし突こうとしてくる敵の慧眼には感服するほかない。おまけに奴はメドゥーサの眼も随所で発動して体の一部を石化させようとしてくる。兵藤はすぐに再生できる鎧の特性上、石化した個所を破壊してまた再生するといった対処法を編み出したが、俺はそうはいかない。

 

徐々に石化した面積を増やしつつも、ただがむしゃらに打ち合う。一瞬でも気を緩めばそこを突かれて終わってしまう。

 

進め、打て、穿て。ただひたすらに。

 

この戦いに勝つのは俺達だ。

 

「「はっ!!!」」

 

オーラと熱い闘志を乗せた、二人のタイミングのあった同時拳打。それを受け止めた曹操もたまらず突き抜ける余波で大きく後ろへ下がっていった。

 

「やるな!だが戦いはこれからだ!」

 

再び飛行の七宝で空へと駆けあがっていく。それに追随しようと駆けだすが。

 

「はぁ…はぁ…」

 

隣で兵藤の動きが鈍った。息が荒く、疲労感を隠せずにいた。オーラも戦闘開始からかなり消耗している。

 

「復活したてでこの戦いはきついか…?」

 

一発入ったとはいえ奴はまだ健在。一人で闘うのは厳しいがやるしか…。

 

そう思った矢先、兵藤の体を温かな紅のオーラが包み込む。

 

「これは…!」

 

「リアス…!!」

 

露にした乳房の先端から、紅い光線を放ち兵藤に浴びせる部長さんだった。ジークフリートの時とは違い、譲渡されなくても自発的に撃てるようになったらしい。

 

みるみるうちに兵藤のオーラが回復し、荒い息が整っていった。

 

豊満な乳が徐々にしぼんでいくことを気にも留めず、部長さんは気高く兵藤の背を押すべく叫ぶ。

 

「行って、イッセー!!」

 

「はい!!」

 

「得意の乳技か。熱いね」

 

皮肉とも賞賛ともつかないコメントはやめろ。

 

「ドライグ!例の新技だ!」

 

『オーラが回復した今ならいけそうだ。ここで決めるぞ!』

 

〔Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!〕

 

瞬間、兵藤のオーラが何倍にも一気に膨れ上がる。赤く滾るオーラが炎のように兵藤の体から溢れ出した。

 

とどまることを知らず高まるオーラはやがて三人の鎧の龍人を生み出す。

 

「その姿は…!」

 

曹操は兵藤の前に並び立つ三人に目を丸くする。そう、それは兵藤が『イリーガル・ムーブ・トリアイナ』

で変化する『騎士』『僧侶』『戦車』の3つの駒の特性を発現した姿そのものだからだ。

 

最初に飛び出したのは『騎士』の駒竜。

 

神速で空を飛び回る龍は曹操を翻弄し、反撃の聖なる波動すら躱して時折飛び込んで牙を剥く。

 

「ちぃ!」

 

さらに攻撃を仕掛けてくるのは二人目の『戦車』の龍。両拳を握りしめ、曹操へ思い切り叩きつけた。

 

「くっ!」

 

地面へ落下しかけるもどうにか立て直して飛行を継続するが、そこに3人目の龍が背部の砲口から紅いオーラを吐き出す。

 

そのオーラに突っ込む兵藤が、紅い龍と化した3人の分身たちを極大のオーラへと変換し、曹操へ突っ込んでいった。

 

あの技は『真・女王』状態でのみ使用できる兵藤の新たな必殺技。莫大なオーラから生み出された3人の分身それぞれが『戦車』『騎士』『僧侶』の性質を持ち、対象に攻撃を仕掛けて追い詰めることで最後の一撃のためのお膳立てを行う。

 

かつてヴァーリ戦で披露した跳び蹴り、ウェルシュ・レッド・ストライクを遥かに上回る威力を秘めた進化系。

 

その名も。

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

〔Cardinal Crimson Strike!!!〕

 

「最高だ!!まさしくドラゴンの頂にも上る強者の中の強者のオーラだッ!!」

 

紅の彗星となり天へ逆昇る兵藤の飛び蹴りが曹操に激突する。

 

興奮ここに極まれりと狂気に目を輝かせ、聖槍を盾にして受け止める曹操。だが如何に強化された肉体と言えど凄まじいオーラで袖が弾け、両腕がみるみるうちに傷つき血がにじんでボロボロになっていく。

 

「おおおおおおおっ…!!!」

 

曹操の表情に余裕は全くない。歯を食いしばって、全力で攻撃をこらえようとしている。しかしそれでも、瞳の中の戦意が衰える気配はない。

 

だが忘れてもらっては困る。曹操と戦っているのは二人だということを。

 

「さらにもう一発!!」

 

空を飛び曹操の背後から仕掛ける俺も、素早くドライバーを操作する。

 

〔プライムチャージ!ダイカイガン!〕

 

「もらっていけぇぇぇぇ!!!」

 

〔プライムスペクター!ハイパー・オメガドライブ!!〕

 

英雄たちの色とりどりのオーラ渦巻く蹴撃を、曹操の背目掛けて浴びせんと前進する。

 

「!!」

 

驚く曹操。だがこのまま受けてくれるほど奴は甘くなかった。

 

なんと左手で聖槍を握って兵藤の攻撃を受け止め、空いた右腕の一本で俺のキックを受け止めたのだ。

 

「なに!?」

 

強化された腕力をもって、俺のキックを止めている。なんてパワーだ。

 

凄まじい二つのオーラの奔流に板挟みにされ、曹操の肌も衣装もみるみる傷ついていく。すぐに圧殺されないのは呂布の眼魂の力の賜物なのだろう。

 

だがそんなものは関係ない。なにがあろうと押しとおるだけ!!

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」」

 

体の芯から発せられる俺たちの雄たけびが体を震わせ、さらなる力を発揮する。均衡が徐々に崩れ、みしみしと奴の腕から骨が軋む音が聞こえた。

 

苦悶に表情を歪めるが、曹操は笑っていた。どこまでもこの状況を楽しんでいる。

 

「ハハハハハ!!!全く君たちはどこまでも俺を高まらせてくれるな!」

 

口の端から血がにじんでいる。それだけ奴も力を振り絞っているということか。

 

「でも、勝つのは俺だ!!」

 

その時、曹操の背に残っていた七宝が動き、俊敏な機動で兵藤の懐に飛び込む。

 

「!」

 

どごっ!!!

 

まるで鈍い音と共に、兵藤が幾つものビルを突き破って彼方へ吹っ飛んでしまった。

 

「なっ!?」

 

あれは衝撃波の異能…!!どうしてだ、最初に武器破壊と分身諸共破壊したはず!

 

俺の考えていることが読めているのか、曹操は深い笑みを見せた。

 

「どうやら勘違いしていたみたいだね。あれは女宝だよ」

 

「!!」

 

虚を突かれた俺の動きが緩む。刹那、聖槍の刃が深々と腹に突き刺さった。

 

「がは!」

 

さらに素早く引き抜いた曹操は体を回転させ、勢いの乗った踵落としを決める。

 

重く、鈍い、響く衝撃。

 

届いたと思った一撃から一転、曹操は遠ざかっていく。

 

〈挿入歌終了〉




MVPはニュートンです。もしアルギスに取られていたら詰んでました。

ベンケイの能力はテ〇朝の公式サイトにこっそり書いてた能力です。いつかこの展開をやろうと思って取っていました。

ここでまさかのどんでん返し。次で決着です。

次回、「聖槍の行く末」
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