Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
23.コロンブス
31.ライト
40.ジャンヌ(new)
41.シグルド
42.ユキムラ
43.ゲオルク(new)
44.ハンゾウ
46.ノーベル(new)
49.曹操(new)
50.呂布(new)
「はぁ…疲れた」
体の芯から滲み出たような深いため息をついたのはポラリス。木製の温かみのある卓の上でぐったりと項垂れる様は誰が見ても彼女がかなり疲労していることが理解できる。
そんな彼女にイレブンは気配りを欠かさない。
「お疲れさまでした、ポラリス様。すぐに紅茶を入れてまいります」
「頼む。まさか最後の最後でシーグヴァイラ・アガレスに絡まれようとはのう…奴がロボット好きであることを失念しておったわい」
「これで…全部か」
深く息を吐くポラリス。その赤い双眸が見つめるモニターの映像で、最後の豪獣鬼の巨体が崩れ落ちる。首や片足は跡形もなく消え去り、体は至る所が焼けこげ、削り取られたような傷ができていた。
勝利の勝鬨を上げ、迎撃軍の歓声に戦場が満ち満ちていく。その声はポラリスの耳にも届いているが、彼女はその喜びを分かち合う気はない。
つい先ほど、曹操が討たれたとの連絡がガルドラボークから入った。それはつまり、この一連の騒動の終焉を意味する。
やるべきことは成し遂げた。ならばこれ以上ここに留まる必要はない。
「また会おう」
レバーを操作し、バーニアを吹かしてブライトロンの巨体が飛行を始める。
『待ちなさい!』
それを引き留めようとしたのは女性の声。淡いグリーンがかったブロンドの長髪が目を引く、物静かな知性を感じる女性悪魔がブライトロンと同じ目線まで飛翔して語り掛けてきた。
『私は大公アガレス家の次期当主、シーグヴァイラ・アガレス。遅れましたが、この戦いでのあなたの協力に感謝致します。是非とも、我がアガレス領で…』
そんなことは知っている。リアス・グレモリーやソーナ・シトリーと並ぶ若手悪魔の最有力候補の一角だ。
歓待をしたいだの言っているが、そんなものを受けている暇はない。気にも留めず、ブライトロンは飛行を再開する。
『ま、待ちなさい!!』
だが彼女がそれを容易く逃がすはずもない。すぐに追跡をはじめ、空の彼方へ消えようとするブライトロン目掛けて飛翔する。
「...粘るのう」
やれやれとため息をつく。しかしツインドライブ搭載のブライトロンの速度は相当なもの。いかに有力な悪魔と言えど、すぐに差をつけられ諦めるだろう。
内心そう高を括る。しかしそれは大きな誤りだった。
汗だくで追うシーグヴァイラの次の台詞が彼女を大いに困惑させた。
『そっ、その紺碧のボディを、じっくり見せて頂戴ぃぃぃぃ!!!』
「な、なんじゃこいつは…?」
ブライトロンを逃がすまいと、興奮気味に迫るシーグヴァイラ。その目は一種の執着のような熱あるものに取りつかれているようだった。
逃げる相手に逃げるなというのはわかる。しかし今の台詞は根掘り葉掘り素性を調べ上げようとする、ねぎらうために歓待したいと懇願する者の台詞ではない。
素性などどうでもよく、ただブライトロンそのものに強い興味があるように聞こえた。
相手がそう簡単に引きそうにないと判断したポラリスは更にブライトロンを加速させる。しかしそれでも。
『せ、せめてっ、名前だけでも教えてぇぇぇぇぇ!!!じゃないと…死んでも死ねないわァァァァ!!!』
「こ、こやつ、こんなに速かったか!?」
サイラオーグ・バアルや兵藤一誠の言う『根性』が一見そういった概念に無縁そうな彼女にもあったらしい。限界を超え、ブライトロンの加速に匹敵する速度を見せるシーグヴァイラ。彼女にここまでのスペックがあったという情報は聞いていない。
スピーカー越しに彼女の絶叫が聞こえてくる。トランザムを使って振り切ろうにもGN粒子の残量はないし、かといって攻撃するわけにもいかない。
なんて面倒な手合いだ。こちらは一刻も早く帰投したいというのに。向こうの顔はまるでトランザムをしているかのように真っ赤だ。それだけ必死に追いかけているようだ。
かくして二人の鬼ごっこは一時間ほど続いた。限界を越えに越えたシーグヴァイラが音を上げて近隣の山に墜落したことでようやく彼女は帰還を果たした。
「こっちも久しぶりに大暴れ出来てストレス発散になったわー。何度も再生するから好きなだけ斬りたい放題だったしな」
卓を囲むレーヴァテインも、戦いで乱れた長い赤髪を整えながら息をつく。
レーヴァテインもシトリー領での戦いに参戦し、家宝の宝剣と自身の最高傑作の二振りで魔獣たちを一網打尽にし、豪獣鬼にも深手を負わせた。後にその場に居合わせた兵士たちは、彼女の戦いを戦に飢え、戦を喰らい、戦を求め続ける鬼神のようだったと評することになる。
「二人もご苦労じゃったのう」
「いいさ。おかげでグレモリーたちを直に見ることができたからな。青臭くて敵わなかったが」
ぱらぱらと本を読みながら会話に加わるガルドラボーク。彼としても、現状の彼女らの成長具合を直接確認できるいい機会だったと思っている。プルートに後れを取るところだった一点を除けば。
「ちとは目をつむってやれ。今後に期待といったところじゃろ」
「ふん…ところで、例の計画はどうする?」
「当初の予定通りに実行する。計画の始動は…3日後でよかろう。その時は妾も出る」
「ほう」
「ブライトロンを出した以上、アルルも気づいておるじゃろう。本来はもっと後でネタバラシをするつもりだったが致し方ない。グレモリーたちに妾の素性を明かしてでも連携し、ここで今、確実に叩き潰す」
ウリエルやガルドラボーク、スダルシャナ達と練り上げたプロジェクト・ロンギヌスは既に当初の計画から大きく狂っていた。それは深海兄妹とアルルの介入によるところが大きい。
しかし、最終的な部分に狂いはない。寧ろ、深海悠河を取り込むことでより確実になったとも言える。それを十全にするためにも、今回の作戦でアルル達叶えし者の打倒は必要不可欠だ。
リアスたちに素性を明かさず、表立った行動を避けてきたのは叶えし者たちやディンギルに存在を悟られるのを避けるためだった。下手に動いて計画の邪魔をされることがあっては非常に困るからだ。
それに一勢力として相応以上の力を誇示するためのゼクスドライバーも未完な以上、他勢力から舐められる可能性もある。計画通りに事態をコントロールするには多くの勢力にその力を示し、協力させなければならないのだ。
しかし度重なるイレギュラーによりアルルや叶えし者たちへの直接的な対応を迫られ、ブライトロンという自身の素性を決定づけるものすら出した以上、隠す理由はほぼなくなった。
ゼクスドライバーの完成は作戦まで間に合わない。なので持ち合わせと深海悠河を利用して今回の作戦に臨む。深海悠河の望みも叶えば、ソルの再来になるという懸念点も消え、彼もしっかりディンギルとの戦いに集中してくれることだろう。
「ふ、俺も楽しみだよ。六華閃の使命を真に果たせそうだからな。アルルのスパイだった信長も、どういう理由か心変わりして大きな手掛かりを残したようだしな」
信長が悠河に伝えた、アルルのアジトの手がかり。大王派の中堅議員のガイウス・ベトレアルが関わっているとされる。元々ブラックリストに上がり、調査を進めていた悪魔の一人だ。
「ああ、後は前々から進めていた調査の情報と照合すればアジトの位置を特定できそうじゃ」
「ほう、そこまで情報を収集していたのか」
「当然じゃろう。ディンギルの討伐は妾の大願じゃぞ。成就には如何なる苦労も惜しくはない」
後は情報をまとめ、悪魔のみならず異形界全体のマスコミにリークし、現魔王派や大王派に民意と外部勢力による圧をかける。政治力で大王派に劣る現魔王派も、身内の不祥事で看板に傷をつけられた大王派もことなかれとすることはできず、否応なしに対応を迫られる。
「…しかし、最近のあんたの顔は疲労の色が濃い。ここずっと働きづめだろう、たまには旅行でリフレッシュでもしたらどうだ?」
「ふん、お主から気遣いの言葉が聞けるとはのう。それほど今の妾が疲れているように見えるか?」
意外なガルドラボークの優しい言葉に、ポラリスは思わず疲労で重さを感じていた瞼を上げた。
「働き者を休みなく永遠に働けと言うほど俺は鬼ではないさ。それに、良好なコンディションの維持は戦闘のパフォーマンスに大きく影響するからな」
「そうじゃのう…イレブンと二人でゆっくり温泉にでもつかって心身を癒すのが好さそうじゃ。伊豆辺りがいいかの」
非科学的な考えだが、温泉には科学では再現しきれない特有の雰囲気と癒しがある。和物を好むイレブンなら喜んでついてきてくれるだろう。ここ最近、自分もだがイレブンも仮面と叶えし者の調査というかなりの重労働を任せてしまった。その詫びと労いの意味も込めて、有意義な旅行にしたいものだ。
「イズ?確か日本の地名だったか」
「ああ。オフに入るならとことんオフを満喫させてもらおう。無論、計画の仕込みを終わらせてからのう」
微笑むポラリスの表情に、ガルドラボークは何かを感じ取った。
「その顔、何か企んでいるときの顔だな」
「ふふ、面白いことを思いついてのう」
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曹操たち英雄派との決戦から数日後。
魔王領を始めとする冥界の都市は各所で勃発した旧魔王派や禁手使い達の反乱から着実に立ち直ろうとしていた。
今回の事件で動いた旧魔王派は叩き潰され、現在クルゼレイ・アスモデウスをリーダーとする組織は更なる衰退を迫られることとなった。ここまで来ても全く持って動きがない奴は一体何を考えているのか…不気味なところだ。
反乱を起こした神器持ちは大半が鎮圧され、捕縛された。しかしその全てを鎮圧できたわけではない。今回蜂起した神器持ち達の数割は行方知れずとなっているのだ。もしかすると、今後徒党を組んで大きな集団となって事件を引き起こす可能性があるかもしれない。
超獣鬼を撃破した兵藤とグレートレッドの一連の顛末については、表には二人とルシファー眷属が共闘して撃破したこととされた。兵藤とグレートレッドの融合は一般には公表されていない。なんでも、グレートレッド関係は謎も多く、禍の団のように狙う輩も多いためそれから兵藤を守るための措置なのだとか。
上がる話題は他にも二つ。一つは突如参戦し、豪獣鬼の討伐に大きく貢献した謎の巨大ロボ。各勢力がその詳細を突き止めんと調査に乗り出しているという話だ。まあ俺は後からポラリスさんに話を聞かされたから知っているのだが。
そしてもう一つは俺が病院で旧魔王派の残党と戦ったことが報じられている。民間人の命を救い、テロリストを叩きのめしたことで今までおっぱいドラゴンの陰に隠れていた俺の推進大使としての名が上がり始めたようだ。恥ずかしい気もするが、褒められるのは悪い気はしない。
逃走した英雄派については中枢となる幹部は叩き潰されたことで組織としては壊滅状態となっている。ヘラクレス、ジャンヌが捕縛、信長とジークフリートは戦死、神滅具持ちの曹操とゲオルク、レオナルドは消息不明となっている。
二人の幹部は今頃きつく尋問されていることだろう。
この一件以来、奴らが主導していた神器持ちを各勢力の拠点に送り込む襲撃もすっかり止まった。しかし天界はまだ三種の神滅具の消失を確認していないため、曹操たちが生存しているのは確実だ。まだ完全に驚異の芽が消えたわけではない。
だが、ヴァーリも言う様に、サマエルの毒を喰らった曹操は間違いなく後遺症を残す。ゲオルクは四肢の一部や片目を欠損したことで、活動に支障をきたすだろう。レオナルドもシャルバによって神器を強引に禁手化、暴走させられたことで心身ともに深いダメージを負っているというのが先生の見方だ。
だからと言って放置しておくわけにはいかない。横合いから弱った曹操たちから神滅具を奪う輩が出てくる可能性もゼロではない。それを防ぐためにも一刻も早く曹操たちの潜伏先を特定してお縄に掛けたいところなんだが。
だが何より俺たちを驚かせたニュースは…。
「えぇぇぇ!!?総督を辞めた!!?」
先生の告白に驚愕の叫びをあげたのは兵藤だ。叫びはしなかったものの、全員が一様に驚きを隠せない表情を浮かべていた。
それを先生は思った以上の反応が返って来たと愉快気にくくと笑う。
「辞めた、じゃなくて更迭な。今後はこの地域の監督になる。グリゴリ内では特別技術顧問だ」
「な、なんで急に…」
「仕方ねえだろ、他に黙ってオーフィスを連れてきたんだからな。首が飛んでもおかしくねえ」
「処分は当然だけど、こうもあっさり受け入れるとは思わなかったわ…」
と、呟く部長さん。
出会ってからずっと総督だった先生がトップの座を降りたか。しかし、和平を一番に推進してきた先生が役職交代するとなれば、後任次第でまた和平の方針が大きく変わってしまうのでは?
「前々から重い役職だとは思ってたからな。これからは副総督のシェムハザが総督になって、バラキエルが新しい副総督だ。あー嬉しいぜ!真面目な連中に重い役職をぶん投げられて気持ちがいい!趣味に気兼ねなく没頭できるからな!よっしゃ、早速酒でも…」
そうか、シェムハザさんとバラキエルさんが後任なら心配はいらないな。むしろシェムハザさんならもっとまじめに組織を運用してくれそうだ。
…ん?趣味に没頭?
あれ、もしかしてグリゴリは最悪の選択をしてしまったのでは?かえってこの人を自由にさせたらもっとまずいことになりそうな。
「まだ勤務中ですよ、アザゼル先生。飲酒は控えてください」
言うが早く、どこからか酒瓶を取り出すアザゼル先生をロスヴァイセ先生が冷静に諫める。そうだぞ、こんなところで昼酒してるんじゃない。
「堕天使はアリなんだよ。北欧はお堅ぇな。いい酒だからお前も飲め!」
「またロスヴァイセ先生が悪酔いしたら困るのでやめてください」
また悪酔いしてここで魔法をぶっ放されたらどう責任を取ってくれるんだ。
しかし、先生の何気ない発言がロスヴァイセ先生のスイッチを入れてしまったらしい。
「お堅いって…!私だって色々やりたいですよ!」
「んなら早速イッセーとでもくっついちまえばいいじゃねえか。そそるだろ?教師と生徒、禁断の恋愛!そうすりゃオーディンの爺さんにいじられずに済むだろ」
「そ!そそそそんな破廉恥なことをよくも…!!」
おちょくるアザゼル先生に、ロスヴァイセ先生は怒りと羞恥が入り混じって顔を真っ赤にしていく。
普通に今の発言はセクハラでは…?いっそ技術顧問とか監督ではなく平堕天使からやり直した方がいいんじゃ。
「ま、それはともかく一誠と朱乃、木場の中級悪魔昇格試験の結果だが…出たぜ」
「「「!!」」」
英雄派や魔獣騒動のごたごたですっかり忘れていた試験。ちゃんと上は試験のこと覚えて早くに手を回してくれていたのか。
「ついさっき連絡があった。忙しいサーゼクスに代わって、俺が発表してやろう」
ごくりと唾をのむ音。いつになく神妙な声色と顔色の先生に、特に試験を受けた三人の表情が緊張でこわばる。
いやいや、まさかこの3人に限って落ちるなんてことは…。実技は文句の付け所がないだろうし、筆記も兵藤だって事前対策は万端だった。
その表情を見渡し、一拍間を置くと先生の口角が吊り上がる。
「…全員、合格だ。よくやった、おめでとう」
「やったぁぁぁ!!」
ほっと安堵の息を吐く二人と、元気よく快哉を叫ぶ兵藤。
「おめでとうございます!」
「おめでとう、よくやったわね。イッセー、祐斗、朱乃」
「私がマネージャーなのですから当然ですわ!それはさておき、おめでとうございますわ!」
「おめでとう!」
3人の合格を破顔して祝う俺たち。信じていたとはいえ、全員合格とはめでたい。
「今日からお前らは中級悪魔だ。正式な授与式はまた後日に連絡がある。特に朱乃、バラキエルに一足先に話をしたら泣いて喜んでたぜ。ちゃんと連絡してやれよ?」
「全く、お父様ったら…!」
ほろりと朱乃さんの目にも喜びの涙がきらめいた。あんなにいがみ合ってた時から随分仲が改善されたみたいだ。
「イッセー。お前の復活劇は上層部に伝わってるぜ。サマエルの毒で殺しても死なねえ、グレートレッドとオーフィスの力生き返って来るんだからこれ以上恐ろしいもんはねえよ。頭いかれてるぜ、現魔王派の対立派閥はビビりあがってると聞いてるぞ?」
「マジっすか…?」
殺しても死なないし、生き返って来る奴なんてそうそういない。それが現魔王派に属し、民衆の圧倒的支持を得る赤龍帝ともなれば対立派閥にとってこれ以上に恐ろしいことはないだろう。
「こいつ以上に頭おかしい経歴辿ってる奴はいないな。異世界から来た俺がかすむ」
「いやお前も大概だと思うぞ」
「全くですわ」
「その通りです」
「僕もそう思うよ」
「深海さんも同じくらい凄いと思います!」
「えっ」
皆の中ではグレートレッド+オーフィス=異世界なの?俺はグレートレッド+オーフィス≧異世界だと思ってたけど?いやいや、そりゃ龍神と神龍の方がよっぽど凄いだろう。なにせ世界最強の2角だぞ?
「ま、この調子で頑張ってくれや。曹操だけじゃなく、いっそ世界中で悪さしてる連中もまとめて全部お前らが倒せ。そうすりゃ俺もサーゼクスも楽ができるし皆がハッピーで万々歳だ」
「か、軽々しく…」
軽く言うけど俺たちここまで来るのに何度死にかけ、修羅場を抜けて来たと思っているんだ。俺たち学生だぞ。学生に世界はまだ荷が重すぎる。まあ神を相手にしておいて言うのもなんだが。
「曹操は自業自得だろう。何せ私たちの修学旅行を台無しにしてきたからね」
「ま、これからもわたしたちにちょっかいかける連中はギタンギタンにしてやりましょ!」
「グレモリーに手を出したら潰します。来るもの拒まずです」
「いずれその手の噂が広まりそうですわね」
あれぇー?もしかして皆は乗り気?月一ペースで世界を揺るがす悪党と戦うのは勘弁なんだが?
「そうは言っても、当分はお前たちにちょっかいをかけることができる奴はいないはずだ。英雄派に限らず、禍の団はほぼ壊滅したと考えていいだろう。残った有力者のクルゼレイ・アスモデウスだけじゃ残った連中をまとめきれるとは思えん。何より、元ボスがこっちにいるからな」
そう言う先生の視線の先には、オーフィスがちょこんと体操座りで静かにたたずんでいた。
「我、ドライグ…イッセーと友達」
あの戦いの後、そのままオーフィスは兵藤の家に居候することになった。生活ぶりを聞いてみると兵藤にいつも着いてきて、女子のやることを見よう見まねで何でもやろうとするのだとか。ペットみたいだと兵藤本人は語っていた。元最強の龍神様にえらく懐かれたみたいで。
「アーシアとイリナも、我と友達?」
「はい、もちろんです!」
「当たり前よ!一緒にトランプした仲じゃない!」
そして一際高い適応力を見せるのがアーシアさんと紫藤さん。客人として来訪した時同様に遊んでいるらしい。俺もオーフィスには色々聞きたいことがあるから、機会を改めて話してみようかな。
ちなみにオーフィスは公式にはこの駒王町にはいないことになっている。悪の親玉が和平の象徴であるここにいるなんてあってはならないことだからな。ただ、当然ながら力を奪われてなお強大なその力は危険ということで、幾重にも封印を施されている。
曹操に奪われた力が現在、オーフィスということになっている。禍の団側も世界最強のボスの不在なんて都合の悪いことを言えないだろうし、よほどのことがない限りはオーフィス関係の状況が動くことはないはずだ。
ただ、仮に動く可能性があるとしたら曹操に奪われたオーフィスの力だ。あれで新しいウロボロスを作ると息巻いていた曹操たち英雄派はいなくなり、現在誰が手綱を握っているかわからない。残ったクルゼレイがそれを利用して行動を起こすことも考えられるが…。
「禍の団関係はまだ終わらねえが、目下やるべきことが二つある。一つは魔法使いの契約だ」
「魔法使い?」
「魔術師協会が先日、お前たちの世代の若手悪魔の評価を全世界の魔法使いに向けて発表した。これからお前たちに魔法使いが接触を図って来る時期になる。ちゃんと相手は選べよ?さもなくばお前たちの評価も落ちることになるからな」
う、うーん。人間の俺には無縁ということはわかったが、これからオカ研の悪魔組全員が誰か素知らぬ魔法使いと契約することになるのか。魔術師協会にもいくつかあるということは先生からざっくりと聞いている。面倒な輩でなければいいのだが。
「魔法使いの契約って、普段の活動と違うんですか?」
「魔法使いは私たち悪魔と契約を結び、召喚に応じて代価を受け取ることで力を貸すの。あなたが普段やってる営業とは様式が違うわ。より正式で、厳格なものよ」
「お前らにはまだ早いが、人間界で言う就活みたいなもんだ。選り取り見取りの経歴を持つ魔法使いたちが、お前らと言う優良物件の会社を目指して履歴書なりを送って、お前たちが見定めて契約を結ぶかどうか決める。青田買いだってあるんだ、どこの悪魔と契約を取るかでそいつの評価も変わってくる」
「難しいですけど、何となくわかりました」
兵藤も部長さんとアザゼル先生の解説でようやく話の全貌を掴めたようだ。俺もよくわかったぞ。
「特にお前たちは優良中の優良物件だ。赤龍帝、魔王の妹、デュランダル使い、バラキエルの娘、聖魔剣使い…名前を上げるだけでも連中からすれば喉から手が出るほど契約を結びたい面子だろうよ」
ほう、つまりこいつらは人間で例えるなら俺達の誰もが知る某食品メーカーやファッション企業、ゲーム制作会社みたいなものか。そりゃ将来の安定や自分の価値を高めるためにも応募が殺到するだろう。
英雄派の対応が終わってすぐに契約者選定ね。年がら年中忙しいグループだな、ここは。俺も何かしら手伝えたらいいが。
「そして、もう一点のやるべきことだが…」
「ええ。ヴァンパイアの名門、ヴラディ家にコンタクトを取るわ」
「!」
ヴラディ家。その名前が出た途端、ギャスパー君の顔が強張る。
「ゲオルクに何もさせず、一方的に倒したあの力が何なのか…私たちは知る必要がある。そうでなければギャスパー本人も、私たちにも危険が及ぶ可能性があるわ。ヴラディ家なら、何か知っているはずよ」
ゲオルクを倒したあの闇の力。あれは停止の邪眼の禁手と考えるにはあまりにも逸脱した規模だ。停止の力も発動していることから、明らかに何かしらのほかの要素と複合した力に見える。
あの時のギャスパー君を見て脳裏によぎったのは『暴走』。和平会談の時のように力だけを制御不能の域に暴走させただけではない。精神すら狂わせる危険な領域だった。部長さんの言う通り、下手すればこちらにも危害が及びかねない。あの恐ろしい能力の矛先がこちらに向けられたら、そう想像するだけでも怖気がする。
「すみません...あの時の記憶が全くなくて…僕もそんな力があったなんて思いもしませんでした」
現にギャスパー君本人にも記憶がない。自覚すらないあの力の正体をなるべく早くに詳細を突き止めたいところだ。
「ヴァンパイアの情勢は今、かなりの混乱状態にある。神滅具所有者が出たってもんだから俺も特に注力して調査を入れている。面倒ごとに巻き込まれないよう、どうにかコンタクトを取れるようお膳立ては進めるさ」
「い、家の人とはあまり関わりたくありませんが…でも、皆さんがそう言うなら…」
ハーフであるがゆえに家から疎まれ、追い出されたギャスパー君は一度ヴァンパイアハンターの手にかかって落命している。朱乃さんと同じように、自らの血と向き合わなければならない。
辛い道を歩むことになるが、それを乗り越えたとき、さらなる成長を遂げるだろう。それはきっと、皆のためにグリゴリに単身向かったギャスパー君の願いが叶うことにも繋がるはずだ。
「…ま、真面目な話はそれくらいにしてだ。楽しい話でもしようぜ。リアス、さっきからイッセーに何か言いたげな顔してるな?」
「ええ。イッセー、試験前にした約束。覚えてるかしら」
「はい、二人でデート。ですよね」
おいおい、早速お熱いじゃないか。最近ずっと忙しかったし、一回兵藤も死ぬくらいだったしな。寂しい思いをさせた分、しっかり仲を深めてやれ。
「ええ。でも、その前に一つやりたいことができたわ。皆で3人の中級悪魔昇格祝いをしましょう!」
昇格祝いか。授与式はまだだが、善は急げだ。何より、皆で賑やかになれるのは良い。
「よし、早速みんなでやろうぜ!」
「異議なし、今から盛り上がっていくか!」
「早速皆で祝ってくれるなんて嬉しいよ」
「先輩たちをお祝いしたいです!」
「ちょうど腹が減っていたんだ。肉が欲しいところだね」
「今から、宴?」
「宴じゃなくてパーティーよ!オーフィスも一緒に食べるわよ!」
「早速料理を手配してきますわ!」
「私もできることがあればお手伝いします!」
「私もいるからたくさん手配して、焼き鳥」
「よっしゃ、酒だ酒!」
「もう、駄目ですよアザゼル先生!」
「あらあら、皆元気がいいですわね」
早速みんながパーティーの準備に取り掛かり、テンションを上げていく。こりゃ夜までパーティーになりそうだ。
長く激しい戦いの末にようやく戻って来た平穏だ。一人欠けることなく駆け抜けたこのメンバーでたっぷり享受し、満喫していこう。
まだ始まってもいないのに盛り上がり出す俺たちを他所に、一人先生が通信に出ていた。
「…俺だ、どうした?」
雰囲気にあてられて緩んでいた表情が驚愕の色に染まっていく。
「何!?…わかった。俺は今からパーティーだから頼んだぜ。詳細は後でな!」
と、通信をぶつ切る先生。おい。今早速仕事を放り投げなかったか。この元総督堕天使は。
「どうしたんですか?」
「大王派のガイウス・べトレアルのスキャンダルがどっかから大量にリークされた。北欧、天界、堕天使にも大々的にだ。その中に、ディンギル勢力のつながりも疑われているそうだ」
「「「「「!!?」」」」」
…ついにポラリスさんが仕掛けたか。
一難去ってまた一難。宿命の再会の時が近づこうとしていた。
ウリエル「すまない、ガノタのことを忘れていた」
ポラリス「…」
というわけで、ヒーローズ編は以上になります。英雄派と決着し、次はいよいよ…です。
例のごとく、外伝に次章予告をつけますのでお楽しみに。
外伝は駒王町駐在の天界陣営スタッフとの顔合わせです。新キャラも数名出ます。
更新スケジュールは以下の通りです。
・外伝
↓
・活動報告で裏話(ウロボロス編・ヒーローズ編のまとめ)
↓
・英雄集結編最終章 デュナミス編スタート