ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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第177話「アーサー魂の脅威」

〈BGM:フィジカルギフテッド(呪術廻戦)〉

 

二度と、会うことはないはずだった。そう誰もが思っていた。アザゼル自身も、その他の幹部たちも皆戦友の離別を悲しんだ。しかし彼が裏切者である以上、心を殺して厳然たる対応を取らなければならなかった。

 

どういうわけか、運命は二度目を与えた。戦友としてではなく、復讐に飢えた獣として。

 

「コカビエル…どうして、お前が」

 

「地獄の底から蘇ったのさ、貴様を屠るためにな!!」

 

「!」

 

正体を現したことで、コカビエルは攻めの手を更に激しくする。光の槍で容赦ないラッシュを繰り出しアザゼルを追い詰めていく。一分の隙もなく、吹き付ける嵐のような攻撃にアザゼルは防御に徹するしかない。

 

「てめえ、どうしてアルルに手を貸す!?奴の目的は…!!」

 

話したい事、聞きたい事。共に戦争を生き抜いたかつての仲間に対して数え切れない程ある。しかし状況は感傷に浸る間を与えない。だから、アザゼルは今のコカビエルの行動の動機を問うた。

 

ディンギル達が目論む世界の滅亡。それは堕天使勢力の繁栄を願う彼の思いとは真反対だ。だからアザゼルはアルルに与する彼の思惑が読めなかった。

 

「知っているさ。堕天使含めた世界の滅亡、それがどうした!!」

 

「何だと!?」

 

槍の攻撃の隙間をぬってコカビエルの蹴りが炸裂する。

 

「うっ!?」

 

「俺が幽閉されてる間に貴様たちが作り上げた腑抜けた和平!堕天使の勝利を願い散っていった同胞の意志を無駄にする茶番を破壊できるなら、如何なる犠牲も厭わんッ!!」

 

怒りを吼え、槍を捨てて放ったのは拳のラッシュ。腹、胸、顔面。彼自身がコキュートスで燃やし続けた停戦への怒りを、解放されてから知った現状の和平への怒りを一発一発に込めて放つ。

 

「それが堕天使の絶滅に繋がってもか!?」

 

がしりとコカビエルの拳を受け止め、捩じる。だがそれでも彼は怯まない。

 

「そうだ、堕天使であろうと和平を享受するなら俺の敵だ!!」

 

アザゼルを睨むコカビエルの目には同胞に向ける仲間意識は既に失われている。あるのは底なしに燃え続ける怒り。それが今のコカビエルを突き動かす物。

 

受け止められた拳を掴まれたまま強引に引き、釣られたアザゼルを頭突きでぶつ。そして光力でハンマーを生成してアザゼルへ振り下ろす。怒りの鉄槌の威力はアザゼルの全身を駆け巡り、空から地面へと叩き落されてしまう。

 

「がはっ…コキュートスにいるはずのお前が…」

 

駒王学園にて敗れたコカビエルは地獄の底、コキュートスにて永久冷凍の刑に処された。仮に冷凍状態から復活できたとしても、冥府や三大勢力の監視の目から逃れることはできないはず。

 

だが少し前に、英雄派は冥府神ハーデスと取引し一度だけ同じコキュートスにて封印されるエデンの蛇サマエルの召喚が許可されたことがあった。

 

もし、これもそうだとしたら。

 

「ふん、俺がいない間に嫌われたようだな?」

 

意味深なコカビエルの笑みが、その答えを物語っていた。

 

「野郎、これも嫌がらせかよ!!」

 

戦犯コカビエルが脱獄していればすぐに首脳陣に連絡が行くし、冥府を管轄とするハーデス神の耳にも入るはず。それをアザゼルが知らなかったということは誰かが情報を止めていたということに他ならない。そんなことをする人物など、動機含め納得できるハーデス神しかいない。

 

戦いが終わったらハーデス神に問い詰めなければならない。サマエルの件然り短期間で随分しでかしてくれたと怒りを抑えきれない。一発殴れるものなら殴りたい、いや、あの時殴っておくべきだったと後悔する。

 

だがそれも、今コカビエル含めたアルル達との戦いを切り抜けてからだ。

 

翼を羽ばたかせ、ゆっくりとコカビエルが下りてくる。その目に失望の色を隠さずに。

 

「見損なったぞアザゼル。総督の座を降り片腕は義手になり、俺を討った悪魔の小僧どもを率いて教師ごっこか。落ちぶれたな、かつてグリゴリを興した貴様はどこに消えた?」

 

「…何言ってんだ、俺の方針は変わんねえよ」

 

ゆっくりと立ち上がるアザゼルは黄金の短槍を構える。

 

「…俺自身の好奇心の探求、そんで未来への投資だ。見たことねえ面白い物で楽しめて、ついでに皆のハッピーを実現できるなら万々歳ってもんだろ」

 

神器を研究するのは神が残した謎だらけの面白い物の全貌と可能性を解き明かしたいという探求のため。リアスたちの面倒を見るのは未来ある若者たちのポテンシャルを引き出し、未知なるものを見たいという好奇心のため。

 

自分自身を満足させるための行動で、皆も満足させられるなら文句のつけようもない。温くなったと言われるかもしれない。しかし温くなったとしても、それがアザゼルという男の生き方であることには変わりないのだから。

 

「…それが気に入らないと言っているのだッ!!」

 

刃を交えるのはかつての戦友。決別し、断たれたと思われた道は再び交わる。果てない怒りと共に。

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

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〈BGM: Relentless Drive(仮面ライダーブレイド)〉

 

「コカビエルだと…!?」

 

先生と戦うかつての敵の姿に驚きを隠せない。あいつは俺が追い詰め、ヴァーリが倒して連行したはずだ。

コキュートスで冷凍刑に処され、もう戻ってこないはずの奴がなぜ?

 

「貴様らのサイラオーグ・バアルとの試合。ハーデス神が観戦に行って冥府を留守にしていたのでな、その隙にコキュートスに忍び込み解放させてもらった」

 

「なら、アルギスの襲撃は陽動か!!」

 

「ご名答」

 

ガンガンセイバーとコールブランド。幾度となく剣を切り結び、そのたびにぶつかり合う霊力と聖なる力の火花が輝いては消えていく。

 

引かない、屈しない、負けない。燃えるような意地を胸に抱いて剣を振るう。思いが乗ったことで普段以上に苛烈で強靭な剣だが、アルルはそれに難なく追随してくる。

 

奴があのフォームにチェンジしてからパワーとスピードが格段に上がった。付け入る隙も、押し込む隙も無い。剣の腕は本来の持ち主であるアーサー程ではないが、向上したフィジカルがその差を埋めている。

 

「この眼魂の能力は…優れたフィジカルスペックと聖剣のパワーの向上。特に聖剣の力の向上率は倍以上と言ってもいい」

 

アーサー魂によって引き上げられた今のコールブランドの輝きはエクスデュランダル以上のものになっている。大半が悪魔で構成されるグレモリー組では俺や紫藤さん、アザゼル先生ぐらいしか相手にできない、いやしてはならないだろう。

 

振り下ろされる剣閃。間一髪のところ身をよじって凌ぐが、掠めたパーカーゴーストの部位が抉られたように消えている。防御力が底上げされるシグルド魂のパーカーゴーストごと削る力、これはコールブランドの能力だ。

 

「!」

 

危険を察知し、透明化能力を発動しその場を離れる。次の瞬間、俺のいたところに下段からの切り上げによって空間に裂け目が生まれた。

 

空間を切り裂く力。それが聖剣の頂点に君臨する聖王剣コールブランドの能力だ。どんな物体も空間ごと穿つ刃の前には如何なる盾も防御も機能しない。

 

しかし空間を切り裂く刃はごく短い間に連続して使えないことはわかった。インターバルは大体一呼吸分の時間。もしもっと短時間で連続して発動できるなら、剣で切り結ぶこともさせず、ガンガンセイバーごと俺をぶった切って終わりにしていたはずだ。

 

「姑息だな」

 

息を殺し、音を殺し、気配を殺す。そうして背後に回り込み、居合の要領で剣を切り上げる。が、ネクロムは何もない前方の空に突如剣の突きを放った。

 

「ぐぁっ…!!」

 

背中に鋭い痛み。背後からコールブランドの攻撃を受けていた。突きで空間を穿ち、俺の背後へ攻撃を届けてきたのだ。シグルド魂の弱点である柔い背中を狙われた。そんな器用な攻撃もできるのかよ…!

 

「悪魔であれば最上級クラスでも掠めるだけで消滅するだろうな」

 

攻撃を受けて透明化を解除した俺を待っていたのは回し蹴り。諸に食らうが、回し蹴りを喰らって回った体の勢いを利用して剣を振るい、まぐれだが一閃浴びせることに成功した。

 

「ん…」

 

「はぁッ!!」

 

追い打ちで仕掛けるのは渾身の袈裟切り。ネクロムは胴体にしっかり受け、ガキンと大きな金属音が鳴り響く。

 

「満足か?」

 

「がはっ」

 

真っすぐ打ち据えた踏み込みからの肘撃ち。鳩尾にクリーンヒットし、溜まらず悶える。アルルにダメージがあまり入っていない。恐らく神のオーラでパワードスーツの防護性能を上げているな。

 

苦しむ俺を他所に、奴はふとメガウルオウダーに装填された眼魂に目を落とした。

 

「…妙だな。この眼魂、不完全だ。一つの眼魂として完成はしているが、大きく穴だらけのような…」

 

俺を放置して何やらそのまま考え込み始めた。何だかわからんが、攻めるなら今だ。ガンガンセイバーを握って再度斬りかかる。

 

「余所見をするな!」

 

「余所見しても勝てると言っているのだ」

 

剣戟を弾き袈裟切りで返される。そして前蹴りを腹に受け、地面を横転していく。

 

「がっ…」

 

「折角だ、この眼魂も試してやろう」

 

夜空のような紺色に星のような金色のラメが入った眼魂。それをガンガンキャッチャーに装填し、銃口を空に向けた。

 

〔DAIKAIGAN!OMEGA FINISH!〕

 

トリガーを引いた直後、放たれた銃弾は俺の頭上広範囲に満天の星空のようなフィールドを展開させる。そこから流星群のように霊力の塊が次々に降り注ぎ、俺の全身を隈なく破壊していく。

 

「がはぁッ!!!」

 

全身から激しく散るスパーク。いよいよ限界を迎えた俺は変身を解除してしまいその場に倒れこんでしまった。

 

〔オヤスミー〕

 

「眼魂が…」

 

転がる大量の眼魂。それら一つ一つをネクロムは目の前で拾い集めていく。

 

「っ!」

 

「英雄派から多くの眼魂を得たのはお互い様だな」

 

くっそ…今ので俺の体力も眼魂も相当持っていかれた。プライムトリガーも奪われ踏んだり蹴ったりだ。

まだ、俺は一人でこいつに勝てないのか。

 

いや、俺が強くなったようにあいつも力を取り戻し強くなった。それだけだ。差は少しも埋まるどころか大きく開くばかり。

 

「これで理解できたか?人間では真なる神には勝てない。我らの前に屈し、願うしかないのだ」

 

「…だったら俺の願いを叶えて見せろよ、今すぐ!!凜を返せ!!神なんだろ!!」

 

気づけば俺は怒鳴り散らしていた。己の無力さ、焦り、悲しみ、それらが混然一体の激情となって痛みと共に激しく体を焼く。

 

ようやく巡ってきたチャンスがこのような結果で終わらせる自分が許せない。認めない。こんな結末のまま、終わってたまるか。

 

血が出るほど歯噛みして、アルルを見上げ睨みつける。変身した状態で表情の読めぬアルルはぽつりとつぶやいた。

 

「…叶わぬ願いだ、諦めろ」

 

すっと俺の首筋に冷たい刃を添えられる。

 

「無念を抱えて、死ね」

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

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関羽魂にチェンジしたダークゴーストの一撃は一誠にクリーンヒット。脚力が目覚ましくパワーアップする関羽魂の蹴りをもろに受けて、立つことなどできない。

 

そう見積もっていたはずだった。

 

「いてて…」

 

「…今の蹴りでこの程度のダメージですか」

 

軽く驚いた。若手悪魔最強のサイラオーグと正面から渡り合い、打ち勝てるフィジカルと根性の主だ。そう易々と沈む相手ではないことはわかっていたが、それでももう少しは効くものだと思っていた。

 

一誠自身も、ダメージの少なさに驚いているようだった。

 

「んー?…もしかして、体が新しくなったからより頑丈になったのか?」

 

「なるほど、今のあなたはグレードレッドの分身とも呼べる肉体だ。人間からの転生悪魔だったころとは基礎が違うと」

 

「たぶんそういうこと。今の、確かに重い蹴りだった。でもな、サイラオーグさんのパンチには程遠いんだよ!」

 

「…屈辱ですね」

 

〈BGM:牙を剥く紋章獣(遊戯王ゼアル)〉

 

眉を顰めるダークゴーストが駆ける。霊力と魔力で強化した脚で一誠との距離を走破し、今度は刃の錆にせんと迫る。

 

「ドラゴンショット!!」

 

一誠の腕から迸る赤いオーラが一直線にダークゴーストへ飛ぶ。威力と速度は十分。回避は容易い直線上の攻撃など上級悪魔の血を引く彼を脅かすには足りえない。

 

「馬鹿の一つ覚えだ!」

 

笑い捨て、ダークゴーストは易々と横っ飛びで躱す。獲物を失いそのまま後ろへ突き抜ける赤い閃光。不発に終わるかと思われたそれは突如折れ曲がり軌道を変えて。

 

「バカを舐めんな!」

 

「ッ~~!!」

 

ダークゴーストの背中に突き刺さるように直撃し、爆ぜる。魔王サーゼクスのオーラ攻撃を見てヒントを得たそれはトリアイナの砲撃以外にも利用される。予期せぬ攻撃に態勢を崩しよろけるダークゴーストへ一誠は踏み込み。

 

「歯ぁ食いしばれ!!」

 

これまで届かなかった鬱憤を晴らすように、渾身のパンチを腹に叩き込んだ。

 

響く快音。しかし肝心の手ごたえがない。

 

「はは…実に運がいい」

 

状況をひっくり返す拳は、ガンガンセイバーの刀身で受け止められていた。先の攻撃で態勢を崩したアルギスの手は意図せずして腹の前へともつれこみ、図らずもガンガンセイバーでパンチをガードすることに成功したのだ。

 

「流石のあなたでもこれを至近距離で受ければ!!」

 

〔ダイカイガン!関羽!オメガドライブ!〕

 

形勢逆転の機会は失われた。ドライバーのレバーを引き、一気に刃に霊力と魔力を込めて一閃。濃密なオーラの斬撃が一誠の腹を打ち据えた。

 

「うぁぁぁッ!!!」

 

ガードも間に合わずに直撃、鎧の破片と血をまき散らし、旅館の方角へ吹き飛んでいく。何度もバウンドを繰り返して、旅館の外壁に衝突する寸前で静止した。

 

そんな兵藤を追って、アルギスは浮足立って駆けつける。負傷し、血に這いつくばる一誠を見たくて仕方ないと言わんばかりに。そして彼の無様は、まさしく彼が思い描いていた通りのものだった。

 

「…うふっ、ふふふははははっ!気味がいいですねぇ!現政権の象徴が今、私の足元に跪いている!!」

 

心の底から湧きあがる愉悦を哄笑に載せる。悪魔を憎む彼にとって、悪魔社会の未来の希望である一誠の無様はこれ以上にない愉悦をもたらした。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ふむふむ、ここまでしても使わないとなると…やはり今のあなたはトリアイナや紅の鎧が使えないのでは?」

 

優位に立ったアルギスは煽るようにつんつんと爪先で一誠を蹴る。

 

「…いってぇ」

 

返答は低めた声と睥睨。アルギスは笑みを深めた。

 

「そうですか。大方、あなたの蘇生に力を使った、といったところでしょうか?あなたは実に運がなく、判断力もない。不全のまま私を倒せると見くびるとはね!」

 

「くっそぉ…」

 

「さあ、トドメを」

 

〈BGM終了〉

 

ガンガンセイバーを握りしめるアルギス、その手がつと止まる。どこからともなく聞こえてくる、今まで聞こえなかった異様な音に、アルギスも一誠も同時に空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

キィィィィィィィン――――

 

 

 

 

 

 

 

昼空に瞬く赤い星。それは刻一刻と輝きを増す。いや、輝きを増しているのではない。地上に堕ちようとしている。

 

「あの光…気配、まさか」

 

アルギスはあの星を知っている。かつて深海悠河を追い込んだ時、横槍を入れ辛酸を舐めさせられた相手。

 

キィンと甲高い機械の駆動音を立て、空から赤い流星が降って来る。高速で飛び回る龍のオーラを纏った閃光がアルギスに衝突し、吹き飛ばした。

 

「これって…」

 

一誠はあの星を聞いている。以前仲間の窮地に駆けつけた、唯一無二のはずの自身と同じ赤龍帝の力を持つ者。

 

「…またあなたですか」

 

「もう一人の赤龍帝…!!」

 

光は一誠をかばうように前に立ち、赤いベールを脱ぐ。赤龍帝の鎧にも似た灰色のライトアーマーを着たパワードスーツの男。

 

戦場に降り立った男の名はドレイク。レジスタンスに所属し、赤龍帝の力を持つ龍の星。

 

『僕が来たからには、これ以上君の好きにはさせない』

 

ここに、二人の赤龍帝が揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:時空竜召喚(遊戯王ゼアル)〉

 

無敵。最強。そんな言葉ばかりがリアスたちの脳をよぎる。

 

「がはぁッ!!」

 

ロスヴァイセの悲鳴。魔法を不可視の衝撃波で霧散され、ただの投石だけで戦闘衣装の鎧を粉砕される。肩口からとめどなく血を流す彼女は立つ力すら失い、前のめりに倒れた。

 

道端の砂利すらも必殺の威力を持ち、投擲されれば彼女らの肉を抉る。一方で反撃のためのこちらの攻撃の一切が通用しない。オーラや魔法は弾かれ、切っても殴っても傷一つ付けられず、怯ませることすらできない。理不尽そのものを体現したかのようだ。

 

ラディウスを相手取ったメンバーの中で立っているのはレイヴェルとアーシア、オーフィスしか残っていない。後のメンバーは全員、ラディウスの攻撃の前に悉く敗れ、身をボロボロにして地を這いつくばるのみだ。

 

「イリナさん、木場さん、しっかりしてください!」

 

特に近接戦を仕掛けたメンバーの負傷は激しく、アーシアが治癒に専念する。しかし、リアスや朱乃、ロスヴァイセも負傷しており回復の手が回っていない状態に陥っていた。

 

「…」

 

それでもオーフィスは動かなかった。リアスの言いつけを健気に守っていたからだ。ラディウス自身もオーフィスの強大な攻撃の余波に同胞が巻き込まれるのを憂慮していたため、手を出す気は更々なかった。

 

「諦めろ、これ以上の抵抗は無意味だ。弱者をいたぶる趣味はない」

 

憐れむような表情と声色で降伏を勧めるラディウス。その体は微塵も傷ついていない。

 

「何なの…攻撃が全く効かない…」

 

「こんな相手、初めてだ」

 

血反吐を吐き、痛みにまみれながらもゼノヴィア達は立ち上がろうとする。しかし深刻なダメージがそれを妨げ、すぐに倒れてしまう。

 

そんな状況に、レイヴェルは涙と内から湧きあがる感情を我慢できない。

 

「リアス様、これ以上は…!!」

 

手から炎を燃やすレイヴェル。彼女の足を掴み止めたのはリアスだった。息を荒くして虚ろな目で、それでも声を絞り出す。

 

「ダメよレイヴェル…あなたを傷つけることがあればライザーに申し訳が立たない…!」

 

「でも…!」

 

パチパチパチパチ。

 

乾いた拍手音が唐突に鳴る。リアスたちは呆気にとられた。その拍手の主が、今まさに自分たちを追い詰めているラディウスからのものだったからだ。

 

「グレモリー眷属よ、やはり君達の精神は称賛に値する。血にまみれながらも闘志を曲げず、苦難に立ち向かう心意気…その心と力は我々の下で活かされるべきだ」

 

「…あなた、一体何なの…私たちが弱いから…舐めてるつもり…?」

 

「舐めるとは心外。先の言葉は煽りではない、本心からの言葉だ。もし侮辱しているように感じたなら謝罪しよう」

 

ぺこりと頭を下げるラディウス。どう見ても悪気はない。命のやり取りをしている相手にそうされることそがリアス達にはひどく不気味だった。

 

「…少し、私の考えについて話をしようか。私はディンギルがもたらす滅亡を『究極の救済』と考えていてね」

 

「救済、だと…?」

 

胡乱気に声を上げるゼノヴィア。真なる神を僭称する者たちの横暴は、主を信仰する彼女にとって見過ごせるものではない。

 

「そうだ、人間、悪魔、天使、神…あらゆる種族が平等に滅亡し、苦痛と嘆きに満ちた竜域を浄化させる。誰も苦しむことのない、永久の安らぎに満ちた世界だ。私は平和を欲している」

 

「平和のために世界を滅ぼすなんて…おかしいわ!!」

 

「そんなものは平和とは呼びませんわ!!」

 

糾弾するようにイリナと朱乃が叫ぶ。

 

「私も最初はそうと思っていた。しかしながら、どれだけ人が平和を築いたとしてもいずれは争いが起き、崩れ去る。その理由は、『生きているから』に他ならないのだよ。肉体のしがらみ、名誉、欲望…生きているからそれらが発生し、それらのために人は苦しむ」

 

そう語るラディウスの目には、途方もない心からの悲しみと諦めに満ちていた。幾度も見てきたからこそ到達しえた結論。誰にも揺るがすことのできない真理。それをリアスたちに諭す様に言う。

 

「『生』にあるのは一時の快楽と永遠に続く苦しみだけだ。しかし、『死』には何もない。命が終わりを迎えればあらゆるしがらみ、苦痛から永遠に解放され、安らぎの中で眠りにつける。不平等な『生』が『死』によって平等に終わるのだ。争いのない世界、これを平和といわずして何という?」

 

「…」

 

リアスたちは言葉を失った。男の思想は彼女たちの常識、理解からかけ離れている。だが男は他者への善意、慈悲を根底に語る。それがより彼女たちの理解を拒絶する。

 

「叶えし者とは、神の意志…すなわち慈悲に賛同し、行動を共にする栄誉ある者たちだ。願いを叶える神々の奇跡は、そうだね…前払いの報酬のようなものだよ。与えられた幸福には行動をもって報いるのみ。私はそのような同志が一人でも増え、共に最後の『救済』を迎えることを願っている」

 

「狂ってる…」

 

アーシアの治癒を受けながら言葉を絞る木場。だが非難の言葉をラディウスは何ら気にすることはない。

 

「今はそう思うのだろう。しかし、神の真なる威光を知れば考えは変わる。私は君たちにもそれを知ってほしいのだ」

 

「…僕たちをすぐに殺さないのはそれが理由か…」

 

「そうとも、アルル様は渋い顔をされておられるが、特異点になりうる有望な若者こそ我らと心を一つにするべきだ。我々の傘下に下れば君たちは更なる強さと幸福を得ることができる。君たちが神側に着くとなれば我らが神々もさぞ喜ばれる」

 

「誰が…!!」

 

ゼノヴィアは拒絶する。そのような思想が、輩が跋扈することなどあってはならない。強さも幸福も、自分自身の手でつかみ取ってこそ。

 

そう思うからこそ、彼女は鍛錬に励み続ける。それはこれまでの戦いで勝利するたびに実感してきたことだ。楽して歩く道に、本当の幸福などあるものか。

 

言葉を尽くしてもなびかない彼女らに「はぁ」と呆れたようにラディウスはため息をついた。

 

「どうしても受け入れられないというのなら悲しいが、ここで君たちの道を閉ざすこともやぶさかではないのだよ。私情を優先して、ディンギルの障害となるようなことはあってはならないからね」

 

「!」

 

一歩踏み出すラディウスに、リアスたちの背筋を冷たいものが舐める。

 

「さあ、選びたまえ。祝福か、救済か」

 

〈BGM終了〉

 

手を差し伸べるラディウス。リアスたちはその手を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬撃。拒絶するより早く、地を駆ける鋭い斬撃がラディウスとリアスたちを分かつような線を大地に刻んだ。これまでの空気が一転し、緊迫したものに変わる。

 

ゼノヴィアと木場は一目で理解した。あの斬撃の主は只者ではないことに。

 

「ご高説のところ失礼します」

 

咎めるようにラディウスはゆっくり歩んでくる者に問いを投げかけた。

 

「…何者だね」

 

クワガタの顎を模した二振りの刀を携えた、ヒロイックなパワードスーツを着た男性や女性ともつかない戦士が現れる。

 

「通りすがりの者ですが、助太刀に参りました」

 

〔EXCITING STAG!Razor sharp blades will cross paths〕

 

レジスタンスのリーダー、ポラリスの懐刀であるイレブンの到着である。

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追い詰められた状況をつんざく銃声。背後から撃たれたネクロムがゆっくりと振り向いた。

 

「あんたは…」

 

ネクロムの股越しに見えた銃撃の主に俺は目を見開いた。このタイミングで再び介入してくるなど、予想もできなかった。

 

一方でネクロムは不愉快そうに声を低くする。

 

「…また貴様か」

 

『また、とは心外。人の楽しみを邪魔する連中には言われとうない』

 

レジスタンスのリーダー、ポラリス。その変身体であるヘルブロスが毅然とその銃口を仇敵へ向けた。

 




Q:なんでアルルはサマエルも解放しなかったの?
A:呪いが危険すぎて手が付けられないからです。

アーサー魂の脅威というよりはコールブランドの脅威ですねこれ。

今回登場したアーサー魂ですが、不完全なためアルルは100%の力を引き出すことができませんでした。呂布魂は固さとパワーに特化し、アーサー魂はバランス型で満遍なく身体能力を引き上げます。

次回、「凍・拳・炸・裂」
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