ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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遅くなりましたが明けましておめでとうございます。今年も一話一話、着実に進めていきますので宜しくお願い致します。

本来なら年末に上げる予定のところ、体調を崩してしまい年が明けてしまいました。今は無事に復調しておりますのでご安心を。

前回、ネクロムがオメガフィニッシュに使った眼魂。一体どの英雄の眼魂かはあえて伏せます。攻撃のエフェクトから色々想像してみてください。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
2.エジソン
3.ロビンフッド
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
40.ジャンヌ
46.ノーベル
50.呂布


第178話「凍・拳・炸・裂」

〈BGM:Gothic Adventure〉

 

「…またあなたですか。これで三度目ですね」

 

横槍を入れてきた赤き乱入者ドレイクにダークゴーストは深々と苛立ち交じりの息を吐く。

 

一度目はグレモリーとバアルのレーティングゲームの裏で、二度目はグラシャラボラス領での中級悪魔昇格試験会場にて六華閃の二人と共に。アルギス達叶えし者が動き出す度に彼は立ちはだかって来た。

 

「...」

 

〔Boost!〕

 

ドレイクの返事はない。赤龍帝の倍加を発動させて無言で踏み出し、一瞬で距離を詰めて挨拶代わりのパンチを見舞う。

 

「!!」

 

速い。高速の拳打はダークゴーストに反応する時間も与えず、顔にクリーンヒットする。仰け反る彼へドレイクは追い打ちにと足払いをかけて倒した。

 

「あいつ、やっぱり俺と同じ…」

 

聞き慣れた音声とその効果を見て一誠は確信した。悠河から話を聞いていたが、それでも衝撃的だった。自分と同じ赤龍帝の力を持つものが存在することに。

 

ドレイクは倒れたダークゴーストへ足を豪速で振り下ろす。本能の危機を感じ、反射的に間一髪横に転がって事なきを得るダークゴースト。外した脚は大地を踏み抜くと轟音を立て、ミシミシと地面に大きなひびを入れるのだった。

 

「本当に面倒な手合いだ…!」

 

恐ろしいパワーに毒づきつつもガンガンセイバーをガンモードに切り替え、遠距離からの攻撃を試みる。トリガーを何度も引いて銃撃を放ち、鮮やかな閃光がドレイク目掛けて空をひた走った。

 

対するドレイクはウェポンクラウドからGNアサルト・バスターライフルをマテリアライズ。連射モードの銃撃による赤い閃光が寸分たがわず全ての弾丸に命中し、撃ち落としていった。

 

息つく間もなくドレイクが動く。ライフルを放り背部の翼から凄まじいエネルギーを赤い粒子と共に放出して再度接近。神速のアッパーカットを決める。

 

「がふ!」

 

顎から脳天へ突き上げる痛烈な衝撃。視認できたのは粒子だけ、その姿を捉え反応する前に食らった攻撃にダークゴーストは完全に翻弄されていた。そして翻弄は暴力的に続いていく。

 

「動きが見えないッ…!」

 

叩きつけ、殴打、掌底、あらゆる打撃の嵐がダークゴーストの胸部へくまなく打ち込まれていく。一発一発が強烈な威力を秘めており、ヒットのたびに鈍い快音を打ち鳴らす。

 

「ぶはっ!」

 

吐血し、痛みに呻きながらもダークゴーストは諦めない。体力を一気に刈り取るための渾身の一撃が繰り出される一瞬のタメ、そこで全身から魔力を放出して目くらましをする。

 

「ここは一旦…!」

 

悪魔の翼を広げ、空へ飛ぶアルギス。追撃のビームから逃れつつ次第に距離を離していく。スーツの中身は既にあざだらけかつ血塗れだ。ここは一時距離を取って態勢を立て直し、状況をしのぐ策を練る。

 

以前はドレイクとプライムスペクターの二人係で抑え込まれたが、間違いなくドレイク単騎でも十分自身を倒せるパワーがある。それに加えて手負いとはいえ赤龍帝を相手にするのはかなり厳しい。

 

(ラディウスがあの邪魔者をとっとと片付けてくれたら)

 

かつて神祖の仮面回収任務を妨害した戦士も同時に乱入して来ている。ラディウスはその対処にかかりっきりだ。しかし、万に一つにもラディウスが負けることはない。手に余るこの二人も、ラディウスの手があれば一瞬にして終わる。

 

それまで時間稼ぎをしなくてはならない。その為の策として、眼魂を…。

 

「考え事かい?悩みがあるなら聞こうか?」

 

「ッ!?」

 

声。気づいた時には遅かった。背後を取ったドレイクが太陽を背にGNビームサーベルを抜き放ち、赤い光刃を走らせる。瞬刃一閃。一瞬にして両翼を焼き切る。

 

「ッ~~~!!!」

 

熱と激痛で声にならない叫びを上げるアルギス。無残に裂かれた翼が黒い羽を散らして空に舞った。悪魔の象徴たる翼を失った彼にだめ押しと蹴りを入れ、地面へ押し飛ばす。

 

「がはっ!!」

 

強烈な衝撃にアルギスは血反吐を吐いて、地に伏す。翼の切断面から血がとめどなく流れ、体力と一緒に失われていく。

 

「つぇぇ…」

 

たった一人でアルギスを圧倒するドレイクの姿に呆けてぽつんと一誠は口にしていた。圧倒的実力、速度、膂力。同じ赤龍帝の力でここまでの差が出るものなのか。

 

〈BGM終了〉

 

『ん…む』

 

「ドライグ、起きたのか!?」

 

内側から聞こえてきた寝起きの声。それは久しく聞くことのなかった相棒ドライグの声だった。

 

『ああ、一時的だろうが体調がいい。それよりこの状況は…』

 

まだ眠気交じりの声だが、不調の色はない。本人はまだ気づいていないが、今の覚醒はドレイクの赤龍帝の力との接触によるものである。

 

「アルル達叶えし者が仕掛けてきやがったんだ」

 

言葉少なくとも一心同体であるドライグには一誠の記憶がわかる。状況と経緯を即座に把握し、ドライグは為すべきことを決める。

 

『…そういうことか。そしてあれがもう一人の赤龍帝とやらか。相棒、赤龍帝は俺たち一人、唯一無二だ。後から湧いて出た者に負けるわけにはいかん』

 

「わかってるさ、勝つためにお前の力が必要だ」

 

一誠は勿論だが特にドライグにとってもう一人の赤龍帝が現れたという情報は到底無視できるものではない。彼のプライドの根底にあるドラゴンとしての強者へのライバル心、敵ではないとはいえ、赤龍帝を名乗る者は世界に唯一無二、自身でなければならないという自負。対抗心湧かずにはいられない。

 

『本調子ではないが紅の鎧で行くぞ!』

 

「応ッ!」

 

二人の赤龍帝による、逆転劇が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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理不尽なまでの圧倒的な防御と攻撃でリアスたちをねじ伏せたラディウス。その戦況に一石を投じるがごとく現れたのはエキサイティングスタッグレイダーに実装したイレブンだった。

 

クワガタの顎のようなショートブレード『スタッグブレード』をくるくると手で回し、敵対の意を明示するようにラディウスへ切っ先を向けた。

 

「何者なの…?」

 

『あなた達の味方です。ここは私に任せてください。アーシア・アルジェントさん、あなたは仲間の治癒に専念を』

 

「は、はい!」

 

朱乃の問いに言葉身近に返して一歩踏み出すイレブンへ、リアスは痛み腹を押さえ声を絞って注意を促す。

 

「ううっ…気を付けて、あいつには一切の物理攻撃も魔法も効かないわ」

 

『…それは困りましたね』

 

剣士である彼女にとってその情報は非常に苦々しいものだった。今はトランスチームシステムを主体として使っているが、本来数多の術で敵を翻弄、圧倒するポラリスに対して彼女は極限まで鍛え上げた純粋なフィジカルと剣術、それを補佐する為の術しか攻撃手段を持ち合わせていない。

 

それが通じないとなれば、立ち回りを考える必要がある。おまけに余裕と隙のなさを両立した敵の立ち姿、滲み出る底知れぬオーラから相当な手練れと見た。能力頼りというわけでもなさそうだ。

 

難敵と判断した彼女だが、諦めたわけではない。一人で彼女らをしかしどんな能力にも必ず穴、特に強力になればなるほど条件が存在してくる。それを見切れば、自分の有利な分野で勝利にねじ込める。

 

〈BGM:闘志果てしなく(遊戯王ゼアル)〉

 

まずは試しにイレブンは二刀のスタッグブレードを軽々と振るい斬撃を飛ばす。何気なく放った一撃だが、それでも鋼鉄は軽く両断するほどの威力がある。生身で受けて無事でいられる道理はない。

 

「ほう」

 

やはりラディウスは動かない。斬撃は彼に触れる寸前でバシュンと音を立てて消失する。リアスの言葉通りと確認。

 

(一定の範囲に領域を張り、入った攻撃を無効…じゃない。)

 

ならば得意を活かしたゴリ押しで、更なる可能性を試す。腰に巻かれたレイドライザーのスイッチを叩く。

 

〔EXCITING BOLIDE!〕

 

瞬間、全身を駆け巡るエネルギーが強化スーツ並びに変身者の身体能力を引き上げる。オレンジ色に発光し、使用しているエキサイティングスタッグプログライズキーの能力が解放される。

 

そして大地を蹴り馳せる。その速度は音よりも早く、姿を視認できない程。速度を落とさぬままラディウスへ突っ込み、なんと周囲を取り囲むように走り続ける。高速の周回は風を起こし、風量は増していきやがては小さな竜巻へと変じていく。分厚い風のベールは二人の姿をひた隠しにしていった。

 

「きゃっ」

 

「あの速さ…僕でも見切れません」

 

「何をする気なの…?」

 

引き上げられた純粋な身体能力が為す常識外れの現象にリアスたちは息を呑む。眷属トップスピードを誇る祐斗ですら、高速移動だけで竜巻を起こす彼女の動きを捉えられずにいた。

 

(あいつ…あんなに速かったのか)

 

レジスタンスの存在を知り、唯一彼女と手合わせしたこともあるゼノヴィア。剣士として強い対抗心を燃やす彼女だが、ここまで本気を出したイレブンは見たことがない。まだまだ彼女のレベルには遠いと、その差を改めて突きつけられたようだ。

 

圧倒されるリアス達とは対象に、攻撃の渦中にいるラディウスは冷静そのものだ。

 

「曲芸のつもりかね」

 

猛烈な暴風に晒され、動きを封じられた形だがなんら動じることはない。その気になればいつでも突破できる能力と自信があるからだ。

 

そんな彼がピクリと指を動かした瞬間、胸部に剣戟を受けた感覚。しかし能力に阻まれダメージはない。次は背中、今度は首、そのまた次は脛。次から次へと剣戟が体のあらゆる個所に絶え間なく続いていく。それがイレブンの次なるごり押しによる実験だった。

 

(相手の防壁に隙はあるのか、持続時間はどの程度か、それを確かめる)

 

ガキン、ガキン、ガキン。風の壁から一瞬飛び出してはすれ違いざまに切り付けて風の壁に消え、また飛び出しては切り付ける。それを神速で何度も何度も繰り返し、全身に浴びせ続ける。甲高い無数の金属音が重なり、さながらマイクのハウリングのようだ。30秒、1分、数分と刃の暴風雨を力の限り疾走して叩き込む。

 

(刃が通らない)

 

何十、何百回と繰り返しただろうか。それでも届かない。もう彼はいつどのタイミングでどこに攻撃を受けた、受けるかもわからないはずだ。焼け石に水とはまさにこのことか。

 

彼の能力は認識できる攻撃を全て無効にする、というわけではないらしい。恐らく攻撃の無効は彼の認識に関わらずオートで行われる。よってどれだけ速く攻撃しようと、無効になるより先に攻撃しようとも無意味というわけだ。

 

しかし攻撃の無効が発動する範囲はわかった。それは彼の肌身からほんの数センチ。その数センチを挟んだ外界からのあらゆる攻撃を遮断している。無効にできる攻撃の威力に上限があるかも試したいところだが、オーラによる砲撃のような最大限実験できるだけの火力は今のイレブンは持ち合わせていない。

 

「かけっこは十分だろう?」

 

唐突にラディウスがドンと地面を踏み鳴らす。ただそれだけで凄まじい爆音と共に衝撃波が駆け抜け、広範囲に渡って駐車場の舗装が大地諸共一気に砕け散る。走る足場を乱されたイレブンは姿勢を崩すも衝撃波の範囲から逃れるべく、速度を落とさぬまま距離を離した。

 

『今のパワー…』

 

センサーで捉えたオーラによる肉体強化やそもそもの膂力だけでは説明がつかない。これもまた能力によるものか。

 

ぱしぱしと無傷のラディウスはほこりを払う様にライトアーマーを叩くのだった。

 

「今ので君のレベルは大体わかった。相当なものだ。今の彼女らなら一人で全員を瞬殺、三枚おろしにできるだろう」

 

ちらりとアーシアによる治癒の終わらぬリアスたちを一瞥する。そしてイレブンに不敵な笑みを向けた。

 

「でも、それでは私には勝てない。さあ、次はどうする?」

 

ラディウスの言う通りだ。自身の剣技ではまともな勝負にならないことはわかった。なら、それ以外の手札を切るまで。

 

『繋げ、秘儀糸』

 

印を結んで指から光の糸を伸ばし、次々に複数の魔法陣を編んでいく。ポラリスも使用する、捨てられた夢が怪物となる世界で習得した魔法だ。

 

『囚われよ、不朽の雀羅に囚われよ』

 

幾つもの魔法陣から雷の鎖が伸びてラディウスの四肢を素早く絡めとる。電撃と合わせて相手の動きを強力に縛る魔法。そもそも足に自信のあるイレブンがあまり使うことはないが、拉致の際には役に立つ。

 

「ふん」

 

だがラディウスは腕を振るい抜いて軽々と拘束を破って見せる。自由になった腕をぶんぶんと振るい、その腕に帯びた電撃の残滓にふむと興味深そうにうなった。

 

〈BGM終了〉

 

「なるほど、見ない魔法だ。永い時を生きてきたがどの神話、魔法体系にも属さない…ならば、この世界の者ではないな」

 

『…』

 

「いやいや、私は単に面白いと思っただけなのだよ。長生きするとどうにも全く新鮮なものを見る機会が減ってね。生きる張りというものがなくなってしまう」

 

『あなた、人間ではないのですか?』

 

彼の言葉ぶりから、人並み以上の生を過ごしてきたという印象を受け取れる。センサーで見るオーラの質は完全にディンギル寄りだが、叶えし者っぽくもある。異形でもない、むしろ人間。こんな相手は初めてだ。その能力といい、判断の難しい相手を前にイレブンは純粋な興味で疑問を投げかけた。

 

「人間だよ。ただ、神の恩恵を極め続けたことで寿命が延びたようでね。これもまた、試練ということなのだろう」

 

『…?』

 

ますますわからない。叶えし者としての能力を極めたというにはこれまで見た彼の能力と寿命の延長は結びつけにくい。叶えし者が単純に不老不死を願うのではなく、力を極めることで寿命を延ばすなど聞いたことがない。

 

口ぶりから人の倍以上は生きているだろう。不明な能力、何から何まで不気味さを感じられずにはいられない。

 

「さて、面白い魔法を見せてくれた礼と言っては何だが、私の特技をお見せしよう」

 

イレブンの魔法にご機嫌な表情を浮かべるラディウスがゆっくりと、右手をイレブンへ向けた。

 

「デコピン、という奴だ」

 

ピンとラディウスが何もない虚空をデコピンで弾いた。何気ない所作。しかしそれは彼が行えば強烈な攻撃と化す。

 

『ッ!!?』

 

衝撃。突然真正面から顔を殴られたような感覚。装甲を貫通してくる衝撃に鼻血を噴いて、溜まらず仰け反った。

 

空気砲に近いだろう。それも途轍もない威力の、ごく小さな範囲の。若手悪魔随一のパワーを誇るサイラオーグでもこんな芸当はできないはずだ。

 

『…』

 

やられた個所をイレブンはそっと撫でる。今ので頭部のアンテナが折れ、頬の装甲にひびを入れられた。鋼鉄の数倍はある硬度でできた装甲にヒビを入れるなどにわかには信じがたかった。それも、ただのデコピンで。

 

驚くイレブンの反応を楽しむように、ラディウスはかかと笑う。

 

「はははっ、驚いたかな?長生きするには遊び心が大事だと私は思うよ」

 

『…なるほど、ふざけたパワーですね』

 

攻撃の無効と強力無比な攻撃。その身に受けて途轍もない能力のセットだと実感して息を呑む。

 

理屈がわからない。二つの能力を持っているのか、それともどれも一つの能力から派生した事象なのか。

 

(…これは私よりもポラリス様に向いた相手ですね)

 

千の術を持つ彼女であればより強固かつ複雑な絡め手が使える。フィジカル面では彼女に勝るイレブンとはいえ、真正面から圧倒的なフィジカルで押してくる相手では話が違ってくる。

 

「どうしたのかね、もっと見たいかね?」

 

ラディウスはゆっくりと考える暇を与えてはくれない。圧をかけるように一歩一歩と迫ってくる。

 

(…距離を剥がしつつ、時間稼ぎするしかない)

 

そう判断した彼女は引き下がり、距離を取りながら雷撃を帯びた斬撃を飛ばす。彼との戦いで負傷したグレモリー眷属を巻き込む可能性は0ではない。

 

自分の手札に打つ手がない以上は後から来る援軍の手に期待し、到着までの時間を稼ぐ。かっこつけて登場した手前恥ずかしくはあるが勝利のためにはやむなしだ。

 

「狩りは趣味ではないが、付き合おう」

 

腕の一振りで打ち消しながら、ラディウスは森の方へ引く彼女を追い始める。

 

これから始まる険しい孤軍奮闘に彼女は嘆息して駆けだすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「どうして、ここに…」

 

絶体絶命の瞬間に現れたポラリスさん…が変身するヘルブロス。まさかの参戦に俺は驚かずにはいられなかった。

 

『リフレッシュのための旅行中とはいえ、宿敵が近くに現れたら飛ばない理由はなかろう』

 

…そういえば伊豆に旅行行くみたいなこと言ってたな。こっちの旅行ですっかり忘れていたけど場所被りしてんじゃねえか。とはいえ、ラッキーすぎる援軍だ。

 

「なるほど、以前アルギスを邪魔した二人と貴様は仲間か。ということは六華閃も同様と…蛆虫がよく群れるものだ」

 

『ここまで引っ掻き回された以上隠す必要もない。寧ろそれと引き換えに今の貴様らを潰せるなら安いコストよ』

 

「我らを潰すなど大言壮語だな」

 

〈BGM:牙をむく紋章獣(遊戯王ゼアル)〉

 

コールブランドを握り、ネクロムはヘルブロスへと歩みを進める。ゆっくりと、歩みを速め、走り、距離が縮んでいく。

 

その間、ヘルブロスは青いフルボトルをネビュラスチームガンに装填、更にスチームブレードのバルブをひねるとブレードの刃から弾けるような電撃が発生し始める。

 

〔フルボトル!潜水艦!〕

 

〔エレキスチーム!〕

 

〔ファンキー・アタック!潜水艦!〕

 

豪速のコールブランドで斬りかかるネクロム。空間を切り裂く一撃。喰らえば一溜まりもない。

 

寸前、ヘルブロスの足元が液状化し、どぼんと飛沫を上げて沈む。水のない場所で水中に潜水したかのような能力により攻撃を躱すことに成功する。

 

「っ」

 

横合いから気配。振り向いた時には液状化した地面からヘルブロスが飛び出し、電撃を帯びた一太刀を浴びせにかかっていた。咄嗟に刃で一閃を受け、反撃の剣を振るうも再び地面を液状化させて沈み込んでいく。

 

またも気配。背後から飛び出してすれ違いざまに斬りかかってはまた沈み、今度は右から、左から。四方八方からタイミングをずらしてのヒット&アウェイを繰り返し、息つく間も与えずじりじりとネクロムを削っていく。

 

「小賢しい」

 

言葉にはするが内心には一切の苛立ちを感じないネクロム。次の攻撃は正面から。

 

〔アイススチーム!〕

 

ヘルブロスは飛び掛かりざまに今度は冷気の一閃を浴びせようとするが。

 

「ふん」

 

剣閃を弾き返すとコールブランドの刃が光り、一閃。それを受け止めるはずのスチームブレードは柄と刀身の二つに切断されてしまった。コールブランドの力で空間ごとスチームブレードを切ったのだ。

 

「スチームブレードを斬るか!」

 

「斬ったのは武器だけではないがな」

 

「!」

 

そう語るネクロムが握るコールブランドの刃が薄赤に輝く。直後、肩口から腹にかけて、すっと切り込みが入りそこから血が勢いよく噴き出した。

 

「!!」

 

急激な失血にヘルブロスの態勢がぐらりと大きく崩れた。刃と刃が交わったあの一瞬で本体ごと切り裂いたのか。

 

「仕舞だ」

 

生まれた隙を逃すネクロムではない。一気に駆け寄り、動きを鈍らせたヘルブロスへ刃を振り下ろす。その寸前、ヘルブロスはスチームガンから大量の煙を放出して目くらましに出た。

 

「ちっ」

 

視界が分厚い煙の幕に覆われたことで動きが鈍った。だがそれも一瞬のこと。オーラを込めたコールブランドの一閃で煙幕を即座に吹き払ってしまう。だが払われた煙幕の中にヘルブロスの姿はなかった。

 

『危なかった』

 

「姑息だな」

 

そう断ずるネクロムが振り返る。少し離れた位置にヘルブロスは立っていた。しゅうしゅうと塞がっていく傷口から煙を上げて。

 

「…肉体の自然治癒、ではないな。魔法でもない、何かの術で自身の体を治癒しているのか」

 

『正解』

 

「ならば治癒する間もなく、跡形もなく消し去ってみるとしようか」

 

〔DAITENGAN!〕

 

メガウルオウダーを操作したネクロム。背後に浮かび上がる金色の魔法陣から溢れ出る霊力がコールブランドの刀身に纏わりついていく。聖剣の輝きに呼応し、オーラを感じ取れない俺でも寒気がするような高まりを見せる。

 

〔ARTHUR!OMEGAUL-ORDE!〕

 

コールブランドを前方へ突き出すと、さながら極太の光線のような聖なるオーラが照射される。空と地面を圧倒的熱量で焼きながらヘルブロスへ直進していく。

 

『これはまずいな』

 

ヘルブロスは両腕のガントレットから歯車型のエネルギーを連射しぶつけるが、当然ながら聖王剣のオーラの勢いと威力を殺すには至らない。

 

故に、ヘルブロスが更なる攻撃を繰り出すのもまた当然だった。不死鳥が象られたフルボトルをスチームガンに装填。

 

〔フルボトル!フェニックス!〕

 

『繋げ、秘儀糸!』

 

指先から光の糸を伸ばし、前面に大きな魔法陣を微細に編み込む。鍛錬に鍛錬を重ねたであろう高速で行われる手作業の中、同時に詠唱も行われた。

 

『目覚めよ神雷!空の静寂打ち砕き、あえかな夢を千切り裂け!』

 

魔法陣から打ち出されたのは極太の雷柱。大地が砕けるかのような轟音を伴って聖王剣のオーラと衝突した。朱乃さんの雷光とは比にならない質量と光だ。

 

〔ファンキー・アタック!フェニックス!〕

 

そして雷柱を滑るように業火の鳥のオーラもスチームガンから射出され、共に聖王剣のオーラを押し返さんとする。

 

ネビュラスチームガンの射撃、ヘルブロスのエネルギー、そして魔法の三重に重ねた攻撃が王を冠する聖剣のオーラと衝突する。凄まじい質量同士の衝突がまき散らす光と音に、目と耳が潰れるようだ。

 

やがてエネルギーは限界を迎え、土煙と轟音を放って大爆発を起こす。爆炎と煙を受けながらもヘルブロスは討つべき敵を逃さず追撃をかける。

 

銃撃を放ちながら接近するヘルブロス。それを容易く剣の一振りで両断し、ネクロムは迎え撃つ。

 

『光弾を切り裂くか!』

 

「接近戦ではアーサー魂には勝てん」

 

徒手空拳での格闘戦に持ち込むが、それを最低限の動作でいなしコールブランドの一突きをヘルブロスの腹へ押し込んでしまう。布に糸を通すような軽さで強化スーツを貫通し、コールブランドの刃がぬめりとした血に濡れた。

 

〈BGM終了〉

 

『がふ』

 

「動きが雑になっているぞ。傷を癒しても失血による消耗は隠せないな」

 

『…それがわざと、とは思わないのか?』

 

「何?」

 

いきなりヘルブロスがコールブランドを握る右腕をがしっと捕まえ、腹に蹴りを入れる。そして攻撃を受けて緩んだ手からコールブランドを引き剥がすと、勢いよく腹から刃をずぶりと引き抜いた。

 

『つっ…!!!悠河!』

 

ぶしゃと傷口から血があふれるが、構いもせずに剣を俺の下へ放り投げた。カランカランと音を立てて俺の下に剣が滑り込んできた。

 

「!」

 

『その剣、絶対に取られるな!』

 

「剣を…!」

 

一連の行動に流石のネクロムも驚いたらしい。一瞬にして鮮やかかつ大胆な手法でコールブランドを奪われた。聖王剣の奪取は奴にとって大きな戦力ダウンになるだろう。

 

『はぁ…これで目の上の瘤は取れた。これで正面からの殴り合いに臨める』

 

傷をまたも何かの術で治しながらガチャリとヘルブロスはあるデバイスを手にする。氷を連想させる冷たい青色のナックルガード。中央部のスロットに尾を噛む蛇が象られた黒いフルボトルを装填した。

 

「あれはブリザードナックル…!!」

 

原作では仮面ライダーグリス専用に製作された強化アイテム兼武器のブリザードナックル。それをまさかヘルブロスが使うとは。

 

〔ボトルキーン!〕

 

中央のスイッチを叩くと、輝く冷気とエネルギーが溢れ出し必殺待機状態に入った。

 

「よかろう」

 

〔DAITENGAN!〕

 

ネクロムもそれに応じ、メガウルオウダーを操作して必殺待機状態に入る。眩い薄金色の霊力が光と共にネクロムの拳に宿っていく。

 

両者の拳に、持てるオーラやエネルギーの全てが込められる。静かな両者の睨み合いはその一挙一動、呼吸の変化すら逃さず、先生行動を許さないようだ。

 

「…」

 

睨み合いはそう長くは続かなかった。躊躇いもなく同時に駆けだす。光の尾を引きながら向かう二人の拳が交差し、ヘルブロスの顔面を、ネクロムの腹に全くの同時に撃ち込まれる。

 

〔グレイシャルナックル!カチカチカチカチ!ガチンッ!!〕

 

〔ARTHUR!OMEGAUL-ORDE!〕

 

どちらも腰の入ったパンチだ。エネルギーの量もどちらも負けずとも劣らない。冷気の奔流と聖なる力の奔流がぶつかって、渦を巻いて混ざり合い、辺り一面を破壊していく。

 

『おおぉっ…!!』

 

バキバキ。強烈な霊力の奔流を拳と共にぶち込まれたヘルブロスの顔面の装甲にひびが入り、割れていく。

その中に隠された彼女の素顔も徐々に晒され始める。それでも一歩も引かずに踏ん張り、腹に叩き込んだ拳に力を込め続ける。

 

「ううっ!!この攻撃は…!」

 

一方のネクロムも痛烈な拳打を一身に受け、削られていくようだ。明らかに今までの攻撃とは違って苦しそうな反応を見せている。

 

やがてぶつかりながらも高まり続けるエネルギーに耐え切れず爆発が発生し、両者はそれに巻き込まれてしまう。

 

「くっ…」

 

爆発の余波がこっちまで襲ってくる。腕で顔をかばい、どうにかやり過ごす。一体どうなった?

 

庇う腕を解き、開けた視界に映ったのは。

 

『ぶはっ』

 

錐もみ回転をしながらこちらに吹っ飛んでいくヘルブロス。やがては地面に身を打ち付けて俺をエアクッション代わりにぶつかって止まった。

 

「いたっ」

 

『すまぬ。だが今ので…』

 

ヘルブロスが右手に持っていたブリザードナックルはバキバキに割れて、見るからに使えない程故障している。刺さっていたボトルも同様だ。今の攻撃は相当ナックルにも負荷をかけたものだったらしい。

 

「うぅ…」

 

煙の中から呻き声が聞こえてくる。ゆっくりとした歩みで煙幕から抜け出たのは通常のネクロム魂に戻ったアルルだった。攻撃を喰らった腹を押さえ、呼吸を乱している。そしてその足元にはネビュラスチームガンが転がっていた。

 

「先の攻撃、小賢しい細工をしてくれたな」

 

あのアルルが珍しく怒りを露にしている。今の攻撃かなり効いているみたいだが、ディンギル特攻だったのか?

 

怒るアルルは何と、ネビュラスチームガンを拾い上げるとストレスを発散するように握り砕いてしまう。

 

変身デバイスの喪失により、トランスチームシステムはシャットダウン…変身解除してしまう。兵藤達全員が居合わせる、この場で。

 

「!」

 

ヘルブロスの全身から煙が溢れて、強化スーツが消える。そしてポラリスさん本来の銀髪の少女の姿が初めてアルルの前で晒された。

 




アルギス「私って次回で死ぬんですか?」

死にません。いや、まだ死なせません。


上司と部下で同じような攻撃、似るものですかね。

次回、「露見」
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