ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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悠河はアルルとの戦闘に集中のため、ラディウスのことは知りません。コカビエルの復活に関しては、それぞれがそれぞれの戦闘に集中しているので誰も気づいていません。哀れ。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
2.エジソン
3.ロビンフッド
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
40.ジャンヌ
46.ノーベル
50.呂布


第179話「露見」

その人はこれまで己の正体を隠してきた。まだ諸々の準備ができておらず、歴史の表舞台に立つには時期早々という理由で。それでも自身の介入が必要な時にはヘルブロスという仮面を身に着けて俺達に手を差し伸べてきた。

 

しかしその隠匿が、期せずして終わりの時を迎えた。

 

女性らしさを表ような赤い指し色の入った黒スカートの服に、気品で彩るような襟元の白いジャボ。殴られた頬は荒れ、口が切れて端からつと一筋の血が流れる。

 

何よりの特徴である銀色の長髪が土交じりの風になびき、赤い眼は仇敵への敵意に燃えていた。それは例え地に尻をつけ這いつくばろうとも、何度でも立ち上がり敵に食らいつく意地だ。

 

「あれが、ポラリス?」

 

これまでヘルブロスの姿で接してきたポラリスさん。その変身が今解かれ、正体が明らかになった。少し離れたところにいる部長さんたちの間にどよめきが走る。ボイスチェンジャーで男性の声にしていたのが一転、正体が自分たちと同じ年齢の少女の姿だったことに衝撃を受けているようだ。

 

「ポラリスって、女性だったの…!?」

 

「てっきり男だと…」

 

「つまり、逆ギャスパー君ってこと!?」

 

「逆ギャスパー君ってどういうことかな…」

 

おいどういう反応だよ紫藤さん。声は男で男のふりをしていたら実際女だったからって意味の逆ギャスパー君か。よくこんな状況で変なこと言えたな。

 

「…気の流れからして悪魔でも天使でも、神でもありません。かといって普通の人間でもない…異質な力を感じます」

 

「以前は無所属だって言っていたけど…一体何者なの、彼女は」

 

正直彼女の種族的な所は俺の中でも曖昧な所だ。人間と言えば人間なんだろうが、寿命は人外の域らしいし…どうなんだろう。

 

「…まさか、こんな形で顔ワレするとはの」

 

驚く彼女らの反応を横目に当の本人は軽くため息をついた。…あれ、そんなに慌てることじゃないのこれ。今まで散々避けてきたことなのに。

 

だが正体の露見は驚愕の反応だけには終わらない。アルルだけは見下ろした彼女の顔を見て一笑に付した。

 

「貴様だったのか、アドミニストレータ ポラリス。…なるほど、我らを知っていること、敵対していること、全て合点がいった。しかし、その惨めな顔も力量を見誤る愚かさも変わらんな。そしてやはり、あの時と同じだ。少年少女を自分の目的のために利用している」

 

「…貴様は随分と変わったのう。神格にこだわる貴様が人の体を借りねば活動できぬとは、さぞ屈辱じゃろう」

 

変身解除に追い込まれ、不利な状況であるにもかかわらずポラリスさんは不敵にも煽って見せる。

 

少年少女を利用?元居た世界の話だろうか。スーパーコンピューターへの革命戦争の際に過去から来た子どもたちと共に戦ったと聞いているが…。

 

「それも直に終わる。…てっきり、死んだものと思っていたぞ。よしんば異界に逃れようともあの船の状態だ。時空間の狭間を漂い、歪に呑まれて消滅すると高を括っていたのだが…」

 

「たまたま運が巡って来たのじゃよ。生きて、お前たちを滅ぼす。その為に妾は生きてきた」

 

スカートの土を払って彼女は立ち上がる。決然とした彼女の後姿にはどこか圧倒されるものを感じた。背負った仲間の思い、何よりも固い覚悟。それを実現するために費やした時間と労力。華奢な体だが恐ろしく大きなように見える。

 

「仲間の敵討ちが目的か。だが、結局のところは我に届いていないな。少しは力をつけたようだが肝心の本気も出せずにいるではないか」

 

そう言いつつアルルが手をこちらに向けると、神々しい光がともる。その瞬間、凄まじいオーラの波動が俺とポラリスさん目掛け照射された。

 

「下がれ!」

 

ポラリスさんの対応は素早かった。俺の前に出て防御魔法陣を展開し、俺をその攻撃から守ってくれた。

 

「ポラリスさん!」

 

「ぐぬぅぅぅ…ッ!!」

 

力を注いで防御魔法陣の維持に努める。しかし相手は神だ、そう易々と攻撃をしのげるはずがない。迸るオーラの激流によってごりごりと魔法陣は削られていき、やがては波動にあてられてポラリスさんは吹き飛ばされてしまう。

 

「うぁっ!」

 

「くっ…」

 

前から飛んでくるポラリスさんに巻き込まれ、俺たち二人とも強く体と頭を打ち付けて地面に転がされる。

 

「いっつ…」

 

打ち付けた衝撃で頭がくらくらする。折角の私服はもう土だらけ、血がにじんだり随所が破れて台無しだ。

 

ポラリスさんの方を見ると、前方で防御していた分更に手ひどいけがを負っていた。額からぬめりとした血が流れ、掌もオーラを間近に受けたことで皮がむけて焼けたようだ。

 

「く…やってくれるのう…」

 

「どうした、傷を治さないのか?…いや、治せないのだろう?もうそんな余力もないと見た」

 

「…」

 

「我には見える。お前の体には我の知らぬ力が幾つも巡っている。が、それぞれが衝突を起こし、高いレベルの調和を生み出していない。どれか一つの力を強く引き出そうとすれば、別の力が干渉して力を弱め、体に負担を強いるのだろう?」

 

つまり、今のポラリスさんは様々な異界の力が使えるけどその本領を発揮することはできない、と。確かに今のように全力を出せない状態は神クラスの力を持つディンギルの討滅を目標とするポラリスさんにとって非常にネックとなる。

 

もしかして、歴史の表舞台に立つ準備というのはゼクスドライバーの完成だけでなくその問題の解消もあるのだろうか?

 

ポラリスさんはアルルの推測に対し、ふっと一笑を返すのだった。

 

「…真なる神を自称するだけあって、何でもお見通しなのじゃな」

 

「ふん。さっきの変身も弱みをカバーするためのものだろう。そんな不全な状態で我を滅ぼせるものか」

 

ポラリスさんもアルルもそれぞれの理由でまだ真の力を発揮できていない。だが同じ不完全同士でもここまでの差が生まれている。

 

敵に大ダメージを与えてなお、突きつけられた不利な状況。部長さんたちの方はまだ治癒にかかりっきりだし、兵藤の方もまだ戻ってこない。

 

どう立ち回る?どうすればこの状況を好転できる?可能性ならプライムトリガーを奪い返すことだろうだが、消耗した俺とポラリスさんで、傷をおったとはいえまだ余裕のありそうなあいつと戦えるか?

 

脳をフル回転させてこれからの一手を考える一方で、ポラリスさんは既に一手を打っていた。

 

「はっ、何を言っておる」

 

ポラリスさんは笑う。その笑いはハッタリではない。酷い傷を負い苦境に立たされようとも、まだ勝利を諦めない戦士の眼差しをアルルに毅然と向ける。

 

「勝負はまだここからじゃ」

 

直後、白い光弾が空からネクロム目掛けて激しく降り付ける。流星群のような光弾の一発一発が大地を抉る爆発を起こし、すぐにネクロムの姿を爆炎で覆い隠してしまう。

 

「!?」

 

援軍か、それにあの白い光は…!!

 

しばらくして爆炎が晴れると、体を液状化して無傷でやり過ごしたネクロムの姿があった。やはり強くなっても液状化は健在か。

 

「…蛆虫がまた湧いたか」

 

「白龍皇を蛆虫呼ばわりとは不遜な物言いだな」

 

俺たちの下に白い光が舞い降りる。白き龍の鎧を纏い、魔王の血を引く男。その男とは時に拳を交え、敵ながらも手を取り合って難局に臨んだこともあった。

 

「ヴァーリ!?」

 

「どうした、もう死にかけか?なら俺が代わってやろう」

 

傷だらけの俺を見下ろすあいつは不敵に笑った。最近こいつの顔をよく見るな。あんまり見たくはないが。

 

「ポラリスから聞いた。貴様らが兵藤一誠達をつけ狙っていると。先の刺客のお礼参りもしたいちょうどいいタイミングで情報を持ってきてくれた」

 

刺客?お礼参り?何だか流れがわからんが、口ぶりからしてヴァーリ達にもアルル達と因縁ができたようだ。

 

ネクロムは小さくため息をつくと、ポラリスに言葉を刺す。

 

「やはり貴様は姑息だな。下らぬ知恵を働かせ、群れることばかりを考えている」

 

「大いに結構。それで貴様らを打倒できるならのう」

 

ヴァーリチーム、禍の団から追放されたあげくに追放した側も壊滅状態となった今は偏に敵と呼べないややこしい連中になってしまった。しかしここで協力してくれるのはありがたい。この苦境をひっくり返してアルルを倒し、凜を助けるためならなんだっていい。

 

「さて、貴様があの男の頭だろう?ルフェイとコールブランドを返してもらおうか。拉致した理由を含め聞きたいことも山のようにある。無事で済むとは思うなよ」

 

「ルフェイとコールブランド?」

 

コールブランドはついさっき、アルルが眼魂を作るために奪ったと聞いているがルフェイまでもとは聞いてないぞ。どういう流れでルフェイまでこいつらに奪われたんだ?

 

「つい先日、ラディウスという叶えし者の強襲を受けてルフェイを拉致され、コールブランドも奪われてな。俺たちは奪い返すために来たんだが…なんだ、コールブランドは既に奪還していたのか」

 

「ついさっきな、それよりルフェイが拉致って…お前らがそこまで追い詰められる敵が向こうにいるのか」

 

気に入らないが、こいつらの実力は確かだ。プルートをぺしゃんこにできる白龍皇のこいつを筆頭に、孫悟空の子孫や猫又のはぐれ悪魔、聖王剣の使い手と古代兵器や神をも殺す狼を従える魔法使いまでいる。単体で見ても驚異の連中の寄り集まりを一人で制圧したとはにわかに信じがたい。

 

「そうだ、俺たちは勿論ゴグマゴグとフェンリルもいる中でな。あの男、相当な手練れだった」

 

忌々し気な声色が、戦闘の激しさと彼の無念を感じさえた。あのヴァーリがそう評する相手…こっちはアルルで手一杯なのに、なるべく避けたいところだ。

 

「どいつもこいつも返せ返せと…強欲だな。ルシファーとは驕傲なものと思っていたが」

 

「貪欲でない者が強くなどなれるものか」

 

「それは言えておるな」

 

そこはポラリスさんと同じく嫌々だがこいつの意見には同意だ。俺たちみんながむしゃらに研鑽して強くなり、ここまで来たわけだからな。

 

「…コールブランドは俺達の元に戻った。ルフェイも返してもらおうか。まさか殺してはいないだろうな?」

 

アルルを問い詰めるヴァーリの声は静かだが震えているように聞こえた。それは辛酸を舐めさせられた屈辱からか、それとも仲間を奪われた怒りからか。

 

おい、コールブランドはもう取り返した認識なんかい。俺はまだお前を気に入らないし、何よりお前らはまだ世間的にはお尋ね者だから返還を拒否ってもいいんだぞ。

 

「さてな」

 

返事は肯定とも否定ともとれるようだった。低い声での問いにアルルは涼しい声ではぐらかす。その何気ない返答がヴァーリの怒りに触れた。

 

「――!!」

 

次の瞬間には、ネクロムのすぐそばに現れたヴァーリが拳を振り抜いていた。空ぶった拳の放つ拳圧だけで周囲の木々が騒々しく揺れ、木の幹が折れていった。

 

「!!」

 

なんて速度だ。まるで見えなかったぞ。神器がヴァーリの怒りに呼応して力を引き上げているのか。

 

そこから身をよじって追撃の回し蹴りを繰り出すが軽やかにアルルはその間合いから逃れる。さらに一歩踏み込み前進。

 

「ちぃ!」

 

続くヴァーリの猛攻。その攻撃一つ一つに彼の怒りが込められている。当たれば如何にアルルとはいえ負傷した状態では大ダメージは避けられないだろう。

 

しかしそれは当たればの話。現実はヴァーリの荒々しい一挙手一投足を踊り子のようなステップを踏んで避けていく。

 

「俺の拳が怖いか!?」

 

「安い挑発だ。触れたら『半減』されることはわかっている」

 

白龍皇の光翼の能力は触れた相手の力を半分にし、その分自分の力に変える。だから迂闊にこいつに接近戦を仕掛けることはできない。液状化しても攻撃が当たれば一応触れたことにはなるから、液状化を使わずに身のこなしだけで避けているのか。

 

しかしやはり、ディオドラの事件で戦った時と比べて身のこなしの軽やかさが段違いだ。力が戻ったことで身体強化術も跳ね上がっているようだ。

 

「仲間の身が心配か。白龍皇も温くなったな。赤龍帝に影響されたか」

 

「黙れ!」

 

「しかし一つ言うなら…彼女は無事ではないだろうな」

 

「そうか、やはり貴様はここで潰す!!」

 

怒りを滲ませるヴァーリから、どっと白いオーラが全身より放出される。大気を震わせ、風が鳴くように吹き付ける。その高まりは以前にも見たことがある。

 

あいつ、極覇龍を使う気だ!プルートを圧死させた技をアルルにもぶつけるつもりか、そんなことをすれば…!!

 

「待てヴァーリ!奴を殺すな!!」

 

激しい風を浴びながらも俺は声を張ってあいつに呼びかける。あんな技を放たれたら塵も残らなくなってしまい、凜を取り戻すどころではない。

 

「何故止める!?俺達をここまで愚弄したツケを払わさなければ…」

 

「それは…あいつは生け捕りにする!!ディンギルの情報を引き出すんだ!!」

 

事情が事情。まだ俺の背景は首脳陣とごく一部を除いて知らされていない機密事項だ。咄嗟に理由を絞り出して懸命に呼びかけるが、やはりあいつは聞く耳を持たない。

 

「甘いことを…!!」

 

俺がヴァーリと揉めている間、ネクロムはふと虚空を見上げ始めた。

 

「…気配が3つ近づいてくる。六華閃か。いよいよ面倒だ」

 

するとメガウルオウダーを操作し、何やら呼びかける。

 

「ラディウス、撤退だ」

 

「何!?」

 

ここで撤退!?どういうつもりなんだこいつは!!

 

 

 

 

 

 

 

 

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ホテル周辺の森で、木々をなぎ倒す荒々しい衝撃波が駆け抜ける。その余波に巻き込まれながらも踏ん張り耐え抜いてラディウスに立ち向かう4人。

 

『二人の仙術も通用しないとは…』

 

「骨が折れますね…」

 

「こいつホント腹立つにゃん!」

 

「何なら効くんだよ!」

 

戦闘不能になったリアスたちに代わりラディウスと戦うイレブン、後から合流した黒歌達ヴァーリチームもその暴威を止められずにいた。

 

既にイレブンのスタッグブレードは二刀共に折られ、全身の装甲も攻撃の余波でボロボロになりつつある。デコピンでヒビを入れられた顔の装甲は更に破損が進んで、生身の片目が露出するようになってしまった。完全に破壊されずに済んだのはリアスたちのアドバイスで真正面からの戦闘は避けることができたからである。

 

「聖剣創造の聖剣では太刀打ちできませんね…せめてコールブランドがあれば」

 

コールブランドが手元にないアーサーはここに来る直前に木場祐斗から神器で創造した聖剣を借り受けた。

聖王剣のない状態での戦闘にヴァーリや仲間から心配されたが、それでも彼は戦う道を選んだ。ルフェイとコールブランド、自身の大切なものを二つも奪われて戦わず傍観に徹するのは彼のプライドに関わるからだ。

 

しかし如何に手練れのアーサーと言えど、無法を体現したラディウスの能力の前では為すすべもない。黒歌と美猴共々、幸いにも前回の戦いの反省とイレブンの試行によって得られた情報によって、種は不明ながらも大まかに能力の概要を掴めたため前回のような無様を晒さずにいられている。

 

しかし4人とも消耗戦を強いられ、息を荒げている。このままでは攻勢に耐え切れずにすりつぶされてしまう。

 

「さて、もう一段ギアを…」

 

やはり無傷のラディウスが徐に手を上げた直後、耳元に通信魔法陣が開く。幾つかのやり取りを手短にしたのち。

 

「…む、どうやらここまでのようだ」

 

手を下げ、彼女らに背を向ける。向こうの優勢と思われた中での突然の行動に4人は呆気にとられた。

 

「は?」

 

「アルル様がお呼びだ。では、さらば」

 

そしてそのまま強烈な脚力を活かして森の向こう、宿の方角へと猛速で飛び去るのだった。

 

「ちょっ!?」

 

「待ちやがれこの野郎!」

 

虚を突かれたがすぐさま気を取り直して彼女らも追いかける。彼一人で十分戦況をひっくり返す力がある。向こうの戦闘に加わられるのは非常にまずい。

 

黒歌達はヴァーリの為、イレブンはポラリスの為、それぞれのリーダーの下へとひた走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠とドレイク、二人の赤龍帝は共に力を合わせダークゴーストとの戦闘を圧倒的優位に進めていた。

 

「おらぁ!」

 

『ハッ!!』

 

紅の鎧を解放した一誠の猛攻とその合間合間に当意即妙の強烈な追撃をかけるドレイク。彼らの荒々しいドラゴンの力を前にダークゴーストは為すすべもなかった。

 

「がはぁッ!!」

 

血反吐を吐いて、どさっと膝を突く。それでも持ち込んだ眼魂の一つも奪われずにいたのは彼の意地だった。

 

「よっしゃ、一気に行くぜ!」

 

『ああ、ここでアルギスを倒す』

 

一誠が必殺の蹴りを放つべくオーラを高め、ドレイクもドライバーの操作を始める。

 

その様子を、ボロボロの体をどうにか起こして顔を上げたダークゴーストは見た。

 

(…ここまでか)

 

無念。

 

その言葉が彼の脳裏をよぎる。

 

信じる者も頼れる者もいないあの地獄の中で、彼は信じるべき神と出会った。それだけが彼の絶対だった。その絶対に尽くすべく前進してきた。

 

しかしまだ、主の念願の成就には至っていない。主の念願は自身の念願でもある。それを為さずしてここで果てることは何よりの屈辱だ。

 

「…まだ」

 

こんなところで終われない。自分が、主が最も忌み嫌う特異点の肥やしになるなど、言語道断だ。ましてや現体制の象徴たる彼に敗れるなど屈辱の極み。

 

震える足を叩いて立ち上がる。諦めるなどあり得ない。命を賭して、主のために闘うのだ。それだけは曲げられない。

 

「まだ、終わらない!!」

 

血反吐ともに叫ぶ。命の燃焼を。忠誠を。

 

絶体絶命の中で煌々と燃え滾るアルギスの意志を、運命はまだ見放していなかった。

 

森から飛び出して来た閃光が、猛烈なスピードで一誠達に一撃を浴びせなぎ倒したのだ。

 

「!?」

 

『ぐぁっ!!』

 

突然の不意打ちに彼らの対応は間に合わず打撃を受け、地を舐めることになる。そして流星は速度を殺さぬままアルギスの下へと滑り込んだ。

 

その後ろ姿は、自身が使えるべき主の次に尊敬し、信を置く者。彼の助太刀を待つためにアルギスは激しい攻撃を受けてなお粘って来た。かすれるような声で、その名を呼んだ。

 

「ラディウス…」

 

「してやられたな、アルギスよ。鍛錬が足りんな」

 

「申し訳ございません…」

 

「君にはまだ、アルル様に忠を尽くす使命が残っている。ここで終わるわけにはいかないだろう?」

 

ラディウスの肩に手を貸して、変身を解いたアルギス。体中血に塗れて息を肩でしている状態だ。戦闘不能なのは目に見えて理解できる。

 

「くっ…なんだ?」

 

不意打ちから立ち直った一誠達が立ち上がる。真なる赤龍帝と新たなる赤龍帝。神が憎んだ龍とその力を継ぐ者。その二人が並ぶ姿を一瞥し、やはり彼は背を向けた。

 

「特異なる運命に恵まれた二人の赤龍帝よ。君たちを潰すのはまた今度の機会だ」

 

そして彼は再び駆ける。白き龍と対峙する真なる神の下へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「逃げるつもりか、どこまで俺を苛立たせてくれるッ…!!」

 

ネクロムから飛び出した撤退という言葉はヴァーリの怒りのボルテージを引き上げた。俺とポラリスさんの制止の言葉を振り切るがごとく、拳を掲げ詠唱を口にする。

 

「我、目覚めるは律の絶対を闇に堕とす白龍皇なり―――」

 

その一節で、ヴァーリのオーラは劇的に高まる。風が泣き、空がひりつくようだ。

 

「おい、お前―!!」

 

「近寄るな、生身で寄れば潰れるぞ!」

 

止めようと一歩踏み出すもポラリスさんに捕まれ止められる。例え変身していようとも迂闊に近づけばただでは済まないだろう。

 

「ッ…!」

 

『天龍の高みを極め、白龍の覇道を往かんッ!』

 

制止も出来ず、圧倒的なまでにヴァーリは詠唱とオーラを高め続ける。白いオーラはやがて銀色へと変わり始める。

 

『無限を制し、夢幻を喰らうッ!』

 

「無限の破滅と黎明の夢を穿ちて覇道を往く。我、無垢なる龍の皇帝と成りて―――」

 

詠唱が進むにつれ、ヴァーリの鎧が変化していく。そして詠唱にピリオドを穿つ最後の一節を決然と放つ。

 

「汝を白銀の幻想と魔道の極致へと従えよう―――ッ!!」

 

〔Juggernaut Over Drive!!!〕

 

そして完成したのは圧倒的なまでのオーラを放つ白銀の鎧。『白銀の極覇龍《エンピレオ・ジャガーノート・オーバードライブ》』…神にも届く力の化身が再び爆誕した。

 

「ヴァーリ!!」

 

叫びも空しく、奴は両手をアルルへ突き出しオーラを溜め始める。

 

「コンプレッション…!!」

 

しかしそのオーラは解き放たれる寸前、突き出した腕を横合いから飛び出してきた男が蹴り上げる。ドゴンと爆音を響かせて上空へと向けられた力の波動はあらぬ方向へと飛んで霧散するのだった。

 

「なんだ!?」

 

ヴァーリの攻撃を途中で妨害したのは神父服とライトアーマーを融合したような変わった出で立ちの、しかし威厳ある男。傷だらけのアルギスを抱え、アルルの下へと駆けつけたその男をヴァーリは睨みつけた。

 

「ラディウス…!!」

 

「また会ったな、アルビオンの宿主。して、如何されましたか、アルル様」

 

こいつがラディウスか!ヴァーリチームを単騎で相手取りコールブランドとルフェイを奪ったという強者。くそ、ヴァーリを止められたはいいが面倒な事態になって来たぞ。

 

「六華閃が来る。これ以上乱戦になると面倒だ。その前に引く」

 

「承知しました」

 

ヴァーリの話が確かならあのラディウスって男はとんでもなく強い。あいつ、撤退のためのボディーガードとして優先して呼びやがったのか!

 

って、あいつら六華閃とか言っているが。

 

「六華閃って、ガルドラボークさんが来るのか!?」

 

「事前に打診しておいた。レーヴァテインと叢雲も来る」

 

そりゃ心強いことこの上ないが、あいつら来る前に尻尾巻いて逃げる気だぞ。

 

「ぐっ!!」

 

またしても空から勢いよく何かが降って来た。それは龍王ファーブニルの金色の鎧を纏ったアザゼル先生だった。

 

「アザゼル先生!!」

 

龍王の鎧は傷だらけで、数か所ヒビも入れられている。息が荒い体の動きからして結構消耗しているようだ。

 

「こいつ、英雄化で俺の人工禁手に対抗してきやがった…!!」

 

「英雄化で対抗!?」

 

アルル側に英雄化できる連中がいるのはわかる。元々アルル側が眼魂の秘儀を開発して英雄派に提供し、英雄化を開発した英雄派に信長がスパイとしていたわけだからな。英雄派が作った眼魂と一緒に英雄化の情報が渡ってもおかしい話じゃない。

 

しかし、アザゼル先生は少し前まで堕天使のトップだった実力者だ。それに龍王の力が合わさった強力無比な人を追い詰めるなんて、英雄化の強化があったとしてもできることじゃない。

 

一体だれがと尋ねるより早く、下手人は空から降りてきた。

 

「ふん、隻腕になってから力が落ちたな。それで堕天使総督を名乗っていたとは…片腹痛いわ」

 

その身にまとうパーカーゴーストは血のような赤だった。フード部はまるで古代ギリシャの兵士が被る兜のようで、全体的に勇ましさと豪勢さが合わさったような鎧のシルエット。そしてなにより、背中から生える十枚の翼を生やす堕天使のロン毛の男を忘れるはずもない。

 

「コカビエル!?」

 

こいつは捕まった後、コキュートス送りになったはず!あれだけの事件を起こした人物が脱獄したならすぐに気づかれて大ニュースになるはずなのに、全く聞いてないぞ!!

 

「なんでこいつが…!?」

 

「噓でしょ…!?」

 

俺だけではない、部長さんたちも一様に復活した奴の姿を見て驚いている。捕まって二度と顔を見ることのない敵が現れたのだから。

 

「小猫ちゃん、あの怖い堕天使は…」

 

「コカビエル。グリゴリの元幹部で前にエクスカリバーの事件の犯人だよ。今はコキュートスに捕まってるって聞いたけど…」

 

「こ、コカビエル!?あの人が噂の!?」

 

「深海君が戦う切っ掛け、ゼノヴィアさんが悪魔に転生した理由になった事件ですね。まさか黒幕と会うことになるなんて」

 

事件当時、その場にいなかったギャスパー君やロスヴァイセ先生も教えられて驚きに息を呑んでいる。

 

「久しぶりだな。貴様らのおかげで長らく氷の地獄に幽閉されることになった。あの耐えがたい苦しみ、凍える痛みは屈辱と共に生涯忘れることはない…ッ!!」

 

拳を強く握りしめて殺さんばかりに俺たちを睨みつけてくる。

 

「コカビエル、撤退だ。奴と戦う機会はまた用意する」

 

「撤退だと!?ふざけているのか!!ここで雪辱を晴らさずして…」

 

しかしアルルはそんなコカビエルの怒りに何ら臆さず指図してのける。水を差されたコカビエルは当然、怒りの矛先をアルルにも向けた。

 

「目的はある程度達成した。援軍が来るともなればこれ以上ここでの戦闘に意味はない。それとも貴様一人残って、またコキュートス送りになりたいか?」

 

「…チッ」

 

因縁の宿敵を前に逃げるなどあり得ないと怒りを露に食って掛かる。しかし冷静に戦況を見るアルルの冷たいオーラを前に渋々ながら槍を収めた。

 

見たところ、あいつに忠誠を誓ってるわけじゃないのか。そりゃあいつ程の力とプライドの塊がそう易々と誰かに膝を曲げるとは思えないしな。

 

「さて、撤退前にもうひと暴れするとしようか」

 

アルルはまだまだ爆弾を投げるつもりらしい。新しい黒と水色が合わさったカラーの眼魂を取り出し、更なるフォームへとゴーストチェンジを決める。

 

〔TENGAN!MORGAN!MEGA UL-ORDE THE WITCH OF AVALON〕

 

その姿はまさに魔女。とんがり帽子のようなフードに妖精の羽の意匠で彩られた、足まで届く長いローブ。仮面ライダーネクロム モルガン魂といったところか。

 

音声の言うアヴァロンの魔女…アヴァロンはアーサー王伝説に登場する島の名前だ。アーサー王伝説の魔女ときて、それにこのタイミングで使ってくるとしたら間違いなく…。

 

「ルフェイの力か…!!どこまで煽ってくれるな!!!」

 

ネクロムの姿を見たヴァーリが声を荒げる。やはりあれはルフェイから作った眼魂なのか!

 

「肯定だ。貴様の仲間から作った眼魂の力を味わうがいい」

 

〔DAITENGAN!MORGAN!OMEGA UL-ORDE〕

 

背後に出現する方陣が霊力となって指先に収束する。そこから幾層にも連なる大きな魔法陣が展開し、こちらに向ける。すると魔法陣が高速回転を始め、清らかな歌姫を連想させるような女性を象ったオーラが砲撃となって放たれた。

 

凄まじいオーラの奔流だ。眼魂自身の力だけじゃない、アルルの神としてのオーラも織り交ぜて放っているのだろう。出なければこの勢いは説明がつかない。

 

「舐めるな!」

 

ヴァーリが動く。両手を構え、オーラの砲撃を放つ…より早く。

 

「クリムゾン・ブラスターァァァ!!!」

 

〔ELTANIN!IGNITION BREAK!〕

 

聞き慣れた叫びと電子音と同時に赤と紅のオーラがネクロムの攻撃に衝突し、爆発とともに掻き消した。

 

「くっ…今のは」

 

何度受けたかもわからない爆発の余波にこらえながらも、俺は兵藤の到着を確信した。そしてやはり俺たちの下に二人が飛んできた。

 

「大丈夫か、深海!?」

 

「ああ、一応、どうにかな…って紅の鎧じゃねえか」

 

俺たちをかばう様に前に出た兵藤の姿は今までドライグの不調でなれなかったはずの紅の鎧だ。アルギスとの戦いで復調したのか?

 

「ドライグが復活したんだ。今なら本気でやれる!」

 

「そいつは頼もしい…!!」

 

紅の鎧で戦ってくれるなら心強いことこの上ない。二天龍+αの揃った今、あいつをやれる。

 

「遅かったのう、ドレイク」

 

『申し訳ない。ラディウスという男に邪魔されアルギスをまたも逃がしてしまった…って、どうしてここで変身を解いている?』

 

「アルルにやられてしもうてのう。後の処理はどうにかする」

 

『了解した』

 

兵藤と共に現れたドレイク。ポラリスさんとのやり取りは俺達とは対照的に淡白だ。NOAHに顔を出すとたまに二人がやり取りしている所を見かけるんだが、どうにもお互いの対応が塩なんだよな。

 

「…深海、その隣にいる女の子は?」

 

…あー、そういえばあとから来たからこの中でまだポラリスさんの素顔知らないんだったな。

 

「この人がポラリスさんだ」

 

「…ポラリスさん?」

 

一、二、三。数えること三秒フリーズして。

 

「ええええええええええええっ!!!お、女の子だったの!?ロスヴァイセ先生と同じ、銀髪の美少女!!」

 

身振りも大げさにすごい驚愕のリアクションだ。今までのヘルブロスとしての言動からは女性とはこいつはいよいよ創造なんてしなかっただろうしな。しかもこいつ、美少女だからって喜んでない?

 

「何?貴様がポラリスか?仮面の下は女だったとはな」

 

てかヴァーリも今になって気づいたんかい!!今までここにいるポラリスさんのことを何だと認識してたんだよ!!たまたま居合わせた一般人とか、俺らの新しい仲間Aとでも思ってたのか!?

 

「よろしゅう」

 

「よ、よろしゅう…えええ…びっくりした…ん、あれっ、おっぱいがちらり…」

 

「ん?」

 

皆、兵藤の指摘で気づいた。ポラリスさんの肩から腹にかけて袈裟切りの跡が服に残っている。そう、彼女の白肌も、それなりの乳もその隙間から覗いているのだ。

 

うおう、これはラッキースケベというやつだ。しかもポラリスさんのなんて初めてだしレアなのでは。ポラリスさんは綺麗ではあるが、口調も相まってそういう色っぽさ、女の子っぽさは全くないからなんか…興奮しない。

 

「アルルに斬られた時にブラジャーの紐も斬られたのか。反転では服まで治せんからのう。まあこの程度気にすることではない」

 

「お、俺にはめっちゃ気になることです!!」

 

しかしこいつはおっぱいならあまり気にしないらしい。がんがん食いつくじゃん。女性陣がやれやれ言ってるし、特に塔城さんが拳を振り上げようとしているのに気づけ。

 

「ほれ、妾の胸を気にするより敵の動向に目を向けんか」

 

兵藤がポラリスさんの胸に夢中になっているのを他所に奴らは撤退の準備を進めていた。その足元に大きな魔法陣が浮かび上がる。恐らく転移の魔法だろう。

 

「逃がさないわ!」

 

部長さんと朱乃さん、ヴァーリの三人が強烈なオーラ攻撃を繰り出す。だがそれをラディウスが前に立っていともたやすく攻撃を弾き飛ばしてしまった。

 

「またか…!!」

 

「やはり効かないのね…」

 

その現象にヴァーリと部長さんたちはやはりと歯噛みするようだった。あれがラディウスの能力なのか?

 

ラディウスが攻撃を弾く間にアルルがメガウルオウダーを操作する。動きを見るにまたも外部との連絡のようだ。

 

「例の仕込みを起動させろ」

 

その一言だけで通信を終えると、俺達に衝撃の宣言を放った。

 

「たった今、冥界、天界、須弥山、北欧、オリュンポスに計5体の豪獣鬼を放った」

 

「はぁ!?」

 

「なんだと!?」

 

「豪獣鬼ですって…!?」

 

「倒したはずじゃ!?」

 

俺達に揃いも揃って戦慄の波が駆け巡る。

 

シャルバがレオナルドの『魔獣創造』を利用して冥界の都市に放った凶悪無比な巨大魔獣『豪獣鬼』。他神話や天界の助力と魔王の叡智を合わせてようやく駆逐できた怪物だ。

 

進行ルート上に甚大な物的、人的被害をもたらした悪夢が、今度は冥界だけでなく他神話の世界にも出現することになるとは。やっと被害地域の復興に動き出したところで、また魔獣騒動を引き起こそうって言うのか!!

 

「死体が数体残っていたのでな。ガイウスに秘密裏に回収させ、ユグドラシルの根を仕込ませてもらった。死体故、我の魔法によるプログラムとユグドラシルの生命力で動くただの人形だが…あれだけの図体とパワーなら十分脅威となろう」

 

「そんな…」

 

「なんてことを…!!」

 

「ロキが残したユグドラシルの力は有効活用させてもらっている。北欧の神々は苦い思いをするだろうな」

 

ロキ戦の後でアルルが持ち去ったユグドラシルの欠片か…まさかこんな利用方法を思いつくなんてな。とんでもない置き土産を残しやがったな、あの悪神は!

 

「我々のユグドラシルをこんな悪行に使うなんて…許せません」

 

ロスヴァイセ先生は拳を握りしめ、震える声を漏らした。北欧出身の先生からすれば畏敬の対象がこのような悪用をされる事態は非常に心痛いだろう。

 

「許せなければどうした。貴様ごときに何ができる。今夜にでも我々は二つの世界を繋ぐ儀式を始める。豪獣鬼と我ら、どちらを止めるか選ぶがいい。どちらを選ぼうとも、世界は滅ぶがな」

 

「今夜!?」

 

今夜にでも儀式を始めるだと!?もうそこまで奴らの準備は進んでいるのか!?まだこっちはアジトの特定が終わっていないのに…それに、今夜儀式を始めるとか、渡月橋での曹操みたいな宣戦布告をしやがって。

 

魔獣の復活に儀式のリミット、衝撃の情報とそれにより目まぐるしく変わった状況。その処理を強いられる間にも、奴らの転移魔法陣の輝きが一層強まる。

 

「…さて、そろそろ別れの刻が来るようだ」

 

「…アルル様、お言葉ですが…深海悠河の所持する眼魂が、まだ残っているのでは?」

 

転移を開始する直前、ラディウスに抱えられたままのアルギスが今にも消えそうな声でアルルに問うた。

 

確かに奴の言う通り俺はまだ全ての眼魂を奪われていない。もし奴らの目的に眼魂が必要ならまだ戦闘を続けるべきじゃないのか。

 

「眼魂は全て奪えなかったが、このプライムトリガーが良い代用品となろう。戻り次第、直ぐに準備に取り掛かるぞ」

 

プライムトリガーが代用品になる…?まさか、プライムスペクターの変身の根幹となる、複数の眼魂の力をシンクロさせて増幅、安定化する機能を利用する気か?

 

もしそうなら眼魂が多少足りなくてもその穴を埋めるだけの力を発揮するだろうな。メガウルオウダーの構造上、変身には使えないだろうが、あいつらなら変身なしでも機能を発動させる術を用意できるはずだ。

 

くそ、アレなしじゃアルルと戦えない上に目的のために利用されるなんて…なんという屈辱だ。俺の力が世界の滅亡の一助になってしまうことは何としてでも止めなければ。

 

「かしこまりました」

 

「御意」

 

「ここまでか、つまらん」

 

アルギスとラディウスが恭しく首を垂れる一方で未だ不服そうにふんと鼻を鳴らすコカビエル。それでも怒りを発散し足りぬと、アザゼル先生にびしと指をさして言い放つ。

 

「アザゼル、努々忘れるな。俺は必ず貴様を殺し、腐った堕天使諸共世界を潰す!!」

 

「コカビエル…」

 

怒りと殺意に満ちた敵対宣言に先生は難とも言い難い複雑な表情と声色だった。かつての仲間に対し、何を思うのだろう。

 

「神域と竜域の接続の刻は近い。貴様らは己の無力を噛み締め、絶対なるお方が降臨なされるのを指をくわえて眺めているがいい」

 

「待て!!」

 

痛みに構わず、俺は駆けだす。このままじゃ逃げられる。何としてでも止めなければ。ただ考えもなく、勢いと感情だけが俺の体を動かした。

 

手を伸ばす。しかし届かない。そのまま光が弾け、求めていた彼女の姿を搔き消した。

 

その後には何もない。取り戻すべきものも、何も。

 

「くそぉぉぉぉぉ!!!」

 




第一ラウンド、終了です。じみーにポラリスが巡った世界が一つ明かされました。ポラリスの疲労は戦闘で反転を連発したのは勿論、ブリザードナックルで特殊なボトルを使った攻撃の反動もあります。

ラディウスどうやって倒すの?→立ち回り方は色々ありますが真正面からでは突破不可能です。一応、誰がどうやって倒すのかはもう決めています。

次回、「疑念の答え合わせ」
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