Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
2.エジソン
3.ロビンフッド
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
40.ジャンヌ
46.ノーベル
50.呂布
アルル達の襲撃を受け、伊豆への慰安旅行は当然中止。一分一秒も勿体ないということでこれまでの旅行気分は吹き飛び、大急ぎで魔法陣で兵藤邸へ帰宅することになる。激変する事態の中、関係者は集まった。
「状況は最悪、と言っていいだろうな」
いつものオカ研メンバーにシトリー眷属、ヴァーリチームの面々に加え、レジスタンスの三人に戦闘終了後に到着した六華閃の三人も揃い踏みだ。揃いも揃って神妙な表情を浮かべてモニターの映像を睨むように観る。雰囲気はまさに深刻そのもの。VIPルームのキャパシティ的にも結構きつい。
「奴ら、豪獣鬼を市街地のど真ん中に召喚しやがった。どこもすぐに迎撃部隊を編成して向かわせているが、民間人と戦闘員の被害は甚大だ」
映像には冥界のニュースが流れており、遠方からカメラが歪な姿に変貌した豪獣鬼を捉えている。欠損部を歪に大樹の根で修復、あるいは縫合された異形の怪獣がビルをなぎ倒し、火炎を吐いて街を地獄の様相に塗り替えていく。
『攻撃を止めるな!!魔王ベルゼブブ様の術式はまだか!!』
『後衛部隊の準備がまだです!!』
暴虐の限りを尽くす怪獣へ、空から容赦なく魔法やオーラが降り注ぎダメージを与えていく。しかし怪獣は痛みを知らないのか、進撃を止めない。
「せっかく状況が落ち着いてきたって時に…」
「何のためにこんな…」
「第二の魔獣騒動、と言ったところかしら」
豪獣鬼の復活し大暴れをしている場面を見れば誰もが部長さんと同じワードを連想するだろう。しかし今回は完全な不意打ちとはいえ市街地への攻撃を許してしまっている。おかげで一般人が前回の倍以上は出てしまった。アルルの動向も気になるが、こちらも何とも看過しがたい事態だ。
「ただ、前回と違って神滅具を警戒する必要がない。おかげで神クラスや魔王クラスも鎮圧に出られるってのは不幸中の幸いだろうな。以前の戦いで考案された対抗術式もあるし見立て通りなら、今夜中には全ての豪獣鬼を討伐できるはずだ」
顎鬚をいじりながらアザゼル先生は推測を立てる。前回の戦いは曹操の聖槍を始めとする神滅具持ちが複数人いたため、不意打ちを警戒して神仏も参戦できなかった。神仏が倒されるようなことがあっては政治的な話は勿論、彼らの影響力が欠けた世界に何が起こるかわからない。パワーバランスが揺らぐ一大事だったからだ。
しかし俺たちの手で英雄派が打倒された今、警戒する要素はなく存分に神仏も介入できる。これ以上に頼もしいことはない。
「奴は豪獣鬼の死体を再利用したと言っていたぞ。死体は処分しなかったのか?」
「確認したところ、まだ戦場跡地に安置されていたそうだ。あれだけの巨体だから完全な焼却処分には時間もかかるってことで一応の防腐処理はされていたんだが…」
咎めるようなヴァーリの指摘。確かにしっかり、迅速に死体を処分していればこんな事態は起きなかっただろう。死体の処分に手間がかかることも見越しての今回の行動だろうか。
映像が切り替わり、今度は北欧の戦いの様子が映される。ヴァルキリーやエインヘリヤルの軍勢が魔法攻撃を仕掛けるが、豪獣鬼はその剛腕を振り抜き、何百という兵士をまとめてぶっ飛ばしてしまう。
「観ろ、お前が真っ二つにした豪獣鬼も綺麗にユグドラシルで縫合されて復活しているぞ」
「げ、粉微塵に切り刻んどきゃよかった」
と、やり取りするのはニュース映像を指さすガルドラボークさんとレーヴァテインさん。彼女もシトリー領での戦いに参加し、獅子奮迅の活躍を見せたと聞く。俺やゼノヴィアが手合わせした時には抜かなかった一族に伝わる宝剣を抜いたとか。
「妾が首を消し飛ばした個体は復活しておらんようじゃな」
「え?」
そんな何気ないポラリスさんの呟きに全員の視線が集中した。
「ん、まだ話してなかったか。グレモリー領で青いロボットに搭乗して戦ったのは妾じゃよ」
「え!?あのロボットの!?」
「うそん!?」
「あなただったの!?」
突拍子もなく、唐突過ぎるカミングアウトで特にグレモリー組は声を上げて驚いた。俺たちが英雄派と戦っている裏で、グレモリー領を守ってくれたわけだからな。本当は豪獣鬼討伐の前線に加わりたかったメンバーも多いはずだ。
「ダンガムのパイロットじゃん…」
「そうだったのね…私たちの代わりにグレモリー領を守るために戦ってくれて感謝するわ。あなたのおかげで戦線を維持できたとライザーから聞いたわ」
「気にするな。お主らに協力すると言っておきながら、冥界の危機に動かないわけがなかろう」
お礼を言う部長さんにポラリスさんは謙遜して微笑んだ。
現在冥界のメディアを賑わせているのは魔獣騒動、ガイウスのスキャンダル、そしてグレモリー領に現れた謎のロボットの三巨頭だ。なんでもおっぱいドラゴンに並んで子どもたちの食いつきがよく、ニュースで映像が流れるたびに子どもたちが喜ぶらしい。
「お前があのロボットを持ってんのか!うちの技術者が戦闘の映像を見て大歓喜してたぜ、ロボットがアニメさながらに活躍してるってな」
「ほう。機会があれば間近で見せようか」
そういえば何気にポラリスさんとアザゼル先生って立場が似てるな。同じ組織の指導者、技術開発を兼ねる立場として。どっちも結構年いってるっぽいし、切っ掛けがあればかなり気が合うのでは?
「…その代わり、厄介なオタクに目を付けられることになったがのう」
「彼女のことね…」
厄介なオタク?彼女?何のことだろう。その彼女に部長さんが思い当たる節があるっぽいが…いずれにせよポラリスさんが疲れた目をしている時点でろくでもない相手なのは想像がつく。
ごほんとヴァーリの咳払いが脱線しかけた話題を引き戻し、アザゼル先生に問いかける。
「…それで、死体を持ち出したガイウスとやらはどうしている?」
「ついさっき、首と体がぱっくり別れた遺体で見つかった。口封じってところだろうよ。それか、アジトが割れても構わんような言い方をしていたアルルのことだ、単に用済みだから消したって理由も考えられる」
「そんな…」
それはまさしく今後の望みを絶つ悲報だった。奴こそがアルル達の潜伏先を知る唯一の最重要人物としてサーゼクスさんたちが追及していたのに、今の混乱に紛れて消されてしまった。
「それじゃ、奴らのアジトへの手がかりは…」
「失われた、ということですね」
アーサーの言で部屋の雰囲気が沈むように感じた。凜を取り戻す大きな足掛かりを外され、まさしく痛恨の極みと言えよう。もうポラリスさんが提示した救出の猶予、アルルが示した儀式のリミットまで時間がない。
このまま神域と接続してディンギルが降臨し、凜をガルドラボークさん達の手で消されてしまうのか。最悪のヴィジョンが否応なく浮かび上がってくる。
「ハァ…何から何までしてやられたってところだ。幸い、超獣鬼の死体はイッセーがロンギヌス・スマッシャーで消し飛ばしてくれたから利用されずに済んだ」
「超獣鬼まで復活させられていたらどうなっていたか…考えるのも恐ろしいわ」
魔獣騒動で豪獣鬼以上の脅威とされ、ルシファー眷属が対応に当たっていた魔獣『超獣鬼』。グレイフィアさん達をもってしても対応に困難を極めた怪物は次元の狭間から帰還し、ウルトラマンみたいに巨大化した兵藤によって打倒された。あいつがグレートレッドと合体したことは一般には秘密にされている。
「だが、消えた死体は全部で6体だ。あいつらが送り込んだ豪獣鬼は5体」
「つまり、どこかで1体追加で送り込んでくる可能性があるということですか」
「そういうことになる」
アルルが手元に残している最後の一体。追い込まれた豪獣鬼のサポートとして投入するのか、アジトの守備に回しているのか、はたまたもっと先のタイミングで投入するのか、どう使われるかはわからないし、図体もだが不安要素としてもでかい。
だが、俺達にはもっとやらなければならないことがある。それを確信して、俺は発言する。
「豪獣鬼もそうだけど、俺たちが叩くべきはアルル本体だ。今夜、連中が儀式を始めるなら何としても止めなければならない。そうしないと、ディンギル共が降りてきて豪獣鬼以上の被害が出ることになる」
「その通りだ。…お前の気持ちはよくわかってる。サーゼクスにもその旨は伝えてるが、あいつは豪獣鬼の対応にかかりっきりだ。戦力を裂く余裕はない。それに、肝心のアジトの位置が割れてねえ。今からリミットまでに特定は…」
「できておる」
「は?」
行き詰った現状を告げる先生の言葉を遮ったのはポラリスさんだった。
「奴らのアジトなら今しがた特定した」
「な…は、どうやって?」
俺も含め、誰もが喜ぶよりも呆気にとられた。ついさっき唯一の手掛かりが無くなったって話をしたばかりだ。一体どうやって…?前々からポラリスさんサイドで調査を進めているとは聞いていたけど、それが実を結んだのか?
「先の戦いで銃撃に紛れて発信機をネクロムに撃ち込んでおいた。これまでの交戦で何度か試しはしたが全て看過されてのう。じゃが今回、うまく乱戦状態になり混乱したことで成功したのじゃろうな」
「!!」
それが俺たちにとって…いや、特に俺にとってどれだけありがたいことか。長らく待ち望んだ念願の情報がようやく明かされた。芳しくない状況で唯一指した希望の光と言えよう。
「場所はベトレアル領の山林地帯。後で詳しい位置情報は共有しよう。天はまだ我らを見放してはおらんぞ」
「よし、準備をしてすぐに…」
「待て、これまで失敗したやり方が今回は成功した点が引っかかる。罠じゃないのか?」
儀式まで時間は残されていない。一刻も早くとはやる俺を制止するように先生は言葉を遮った。
「私も同感です。そもそも今夜、本当に儀式を行うのでしょうか?それもまた我々を罠にかけるブラフの可能性もあります」
会長さんも同意見だったようで、より慎重な行動を求めるその姿に俺は不意に苛立ちを覚えてしまう。
(ここまで来て躊躇するのかよ…!もう時間がないことは先生だってわかってるだろうに!!)
流れがいい方向に進みだした矢先にこれだ。凜のこと、儀式のこと、どうにかしないことが制限時間付きで迫ってくる中で何を言い出すのか。懸念はわかる、でもそんなことを言って行動をやめる場合じゃない。
「どちらも可能性としては十分にある。…が、この戦力なら強行突破できると踏んでおるがのう。二天龍に六華閃、今ほど強者ぞろいのタイミングはあるまい」
慎重なポラリスさんも同様の意見かと思いきや、真反対に攻め込むべきだと主張する。強行突破、策を弄さずパワーで突破する俺ららしいやり方と言えばそうだが。
正直、ポラリスさんから提示されたリミット的に本当の本当にラストチャンスだ。時間はもう残されていない。だがここで苛立ちを露にすれば話がこじれて時間がもっと無くなるだけだ。ここは突入を確実にするためにも、冷静に意見するんだ。
「…俺はあいつの言ってることは本当だと思う。儀式は今夜、絶対に行うはず」
「理由は?」
「プライムトリガーには複数の眼魂の力を共鳴、増幅させる機能がある。15の眼魂で強化されたロキを倒せるとんでもパワーを発揮できたんだ。アルル自身の神の力と英雄派からかき集めた大量の眼魂があれば儀式に十分なエネルギーは集まるはず」
あいつらがどれだけの数の眼魂を集めたかは知らんが、これまで確認した眼魂の数だけでも倍以上はあるはずだ。15個でロキを倒せるパワーなら、世界を繋げるなんてとんでもない芸当を実現するに足るだけのエネルギーを生み出せるだろう。
個人的には儀式関係抜きにしてもパワーアップアイテムのプライムトリガーを奪われたのはかなり痛い。あれがないと強敵相手にしんどいし、早く取り戻したいところだ。
「豪獣鬼の復活も、魔王達に儀式に介入させないための陽動なんじゃないか?あれだけ派手な破壊なら、魔王はそっちの対応を優先せざるをえないだろう」
「でないと、魔王様達は民衆を後回しにしたと後ろ指を刺されることになる」
「…なら、敵の言うことは確かになりますね」
ゼノヴィアの援護射撃もあり、会長さんも唸りつつも納得の意を見せた。ナイスゼノヴィア。
しかし、理屈立てて話を勧めようとする一方で、俺たちの理屈に関係なく動こうとする者もいた。
「ふっ、君たちがどう動こうと俺たちは行くぞ。身内を奪われたまま見逃すなどもってのほかでね。だろう、アーサー?」
議論を静かに眺めていたヴァーリが不敵な笑みを浮かべ拳を握る。そう、彼らは仲間であるルフェイを拉致されている。こいつらには儀式を止める以上に仲間の奪還という優先事項があるのだ。
「ええ。妹を奪還し、敵に一矢報いなければ聖王剣の使い手の名折れです」
「あたしらだって、舐められっぱなしはごめんだからねー」
「強敵に挑むのが、俺達ヴァーリチームってもんだい」
アーサーを始めとした面々も次々に同意を示す。今にもカチコミをかける気満々のようだ。
「聞いての通り、どの道こやつらは敵陣に突っ込んでいくぞ。なら、敵のブラフに躊躇するよりも同時に仕掛けた方が得策だと思うが」
「…ハァ、育ての親だってのにこいつらはそういう連中だってこと忘れてたぜ」
話し合いの結果がどうであれ止まる気はないヴァーリ達にいよいよ先生は頭を抱えてため息をついた。そもそもはみ出し者のこいつらが俺らの言うことを聞く道理はない。
「なら、リアス、ソーナ、ガルドラボーク。改めて訊く。お前らの意向はどうだ?」
アザゼル先生が質問の矛先に定めたのはこの場に集まった各チームのリーダー格三人だ。
「懸念点はあるわ。…でも、それら全てを潰して乗り越えてこそ私たちというものよ。因縁だってある、今日こそ決着をつけましょう」
「部長さん…」
部長さんの一瞥に俺は言葉の意図を読み取った。状況だけではなく、俺のためにも動こうとしてくれているんだ。リーダーとして慮ってくれる彼女に言葉にせずとも内心で感謝の意を送った。
「ここで止めても無駄骨なのでしょう。ならば私達シトリーも戦います」
先生と同調して慎重派の会長さんも折れたようだ。
「私も賛成だ。ディンギル討伐を悲願とする一族の使命を果たす千載一遇の機会。乗らない手はない」
ガルドラボークさんも眼鏡をくいっと上げて参戦を表明する。ヴァーリ並みに気に食わない相手だが、共闘してくるなら非常に心強いし歓迎だ。
「…ったく、てめえらが行くつって俺一人だけビビってたらみっともねえじゃねえか」
めんどくさそうに頭をかく先生。頭に浮かんでいるだろう幾つもの懸念を振り払うように頭を振って、意を決する。
「いずれにせよ、この状況で俺達だけ動かねえなんてことはありえねえ。俺たち全員で連中のアジトに突撃だ。奴らを壊滅させるまたとないチャンス、必ずアルルや叶えし者をぶっ倒し、儀式とやらを止めるぞ!」
「よっしゃ!」
「やったな、悠」
「ふっ、神殺しか。滾るな」
「そうときたら、敵は全員三枚おろしだ!」
「レーヴァテインさん、あまり興奮してはだめですよ」
最後の一人になった先生が声を張り上げ士気を上げる。先生は議論の末に方針が固まり、緊密な雰囲気が戦いに向けた熱気で吹き飛んだ。
「決まりだ。傷が癒え次第、準備を整えてすぐにでも出るぞ」
「ああ…と言いたいところだがその前にだ。ポラリス、はっきりしておきたいことが幾つかある」
先生の目が鋭くなる。
「お前がオーフィスの蛇を持っていると、そこにいるオーフィス本人から聞いた。お前は禍の団と繋がっているのか?」
前にゲオルクの結界に閉じ込められたときにオーフィス本人が言ってた話だな。接触して蛇を貰ったのが10年前、組織の設立が4年前と時系列から可能性は低いが、その間通じていた可能性は否定できないと先生は考えているらしい。
俺からもポラリスさんに問い詰めたかったが、兵藤が死んだり魔獣騒動のごたごたですっかり頭から抜け落ちていた。
「…妾がオーフィスから蛇を貰ったこと。それは事実じゃ。だが、禍の団及び組織に在籍中の彼女との繋がりや接触は全くない。貰ったのは10年前、例の組織の設立はお主のところのサタナエルが抜けた4年前の話じゃろう?」
「接触がないことを証明する方法はあるのか?」
「本人に直接聞けばよかろう」
涼しい顔で答えるポラリスさん。確かに、それを証明するのにこれ以上ないオーフィス本人がいるわけだが。
「…オーフィス、お前がポラリスさんと最後に連絡を取ったり会ったりしたのっていつだ?」
恐る恐る兵藤が尋ねると、やはり周囲の視線を介さず常日頃と変わらぬ調子で。
「10年前。蛇を渡してそれっきり」
「…まあ、オーフィスが言うならそうなんだろうな」
「嘘はつかないものね」
オーフィスはこの場にいる誰よりも長生きなのにまるで子供、純粋そのもの。先日の事件以来、この兵藤邸に居つくようになってからも日常生活でその性質が伺える場面は多々あった。
「何のために蛇を手に入れた?前にオーフィスはディンギルと戦うために与えたと言っていたが、それは本当なのか?」
「本当じゃよ。無限と称されるドラゴンの力を研究する為じゃ。英雄派やシャルバたちの研究とは違うアプローチ…単なる強化のみならず、オーフィス本人と近しい、同質の力を得るためのな」
「オーフィスと同質?」
全員が一様に頭上に疑問符を浮かべた。どういうこと?俺らがオーフィスになるってことか?
「お主らも知っておる通り、ディンギルは不死の存在。討伐には不死の攻略は必須じゃ。そして奴らは竜域の生物の中でドラゴンという種族そのものを最も憎んでおる。その最強たるグレートレッドとオーフィスは特にのう。同じく強大な力を持つ神仏にはあまり目をくれて無いようじゃ。それは神竜戦争で五竜に辛酸を舐めさせられた以外にも理由がある」
ポラリスさんは人差し指を上げると、それを兵藤やヴァーリに指し示す。
「ドラゴンの力は、奴らの不死を突破できる。故にディンギルはドラゴンを憎む。恐れという感情はプライドの塊である奴らにとって認めがたい故、憎しみで押し隠してな」
「ドラゴンの力が…?」
ドラゴンがディンギルを殺せる?つまり、ドラゴンに龍殺しがあるように、ディンギルにはドラゴンが神殺しの力を発揮するということか?
「ドラゴンが奴らの不死を攻略できる?どういうカラクリだ?」
「でも、前に俺と深海が戦った時はそんなに効いてなかったぞ!」
先生と兵藤に質問攻めされてポラリスさんはやれやれと手を振る。
「質問が多いのう。お主の場合は液状化で攻撃を躱しておったし、恐らく今の奴は人間の体に憑依しているため効きが悪いのじゃろう。なぜドラゴンの力に弱い体質なのか、理由はまだわからぬ。しかしそれは先ほど実証された」
「…ブリザードナックルか」
ポラリスさんがネクロムに決めたブリザードナックルの一撃。あれに使ったボトルの柄は黒い龍だった。あれがオーフィスを表すものなんだ。
「そう、先の戦いで妾は蛇から抽出したオーフィスの力をアルルへの攻撃に使った。戦闘データを解析したが攻撃の出力とネクロムの性能を考慮して予測できるダメージの倍は効いていたようじゃ」
「それに、オーフィスの蛇が持つ力の増幅作用は魅力的じゃ。深く突き詰めれば、力の増幅にとどまらずオーフィスと同等の『無限』の力も得られる可能性もある。行く行くはこの場にいる全員がディンギル特攻の力を手にできるようにしたいのでな」
「私たちがオーフィスと同じ力を…」
「そうでなければ、これから先に起こる災厄を乗り切ることなどできまい」
災厄、ウリエルさんが予知夢で見たディンギル侵攻の未来。そこであのロキ以上の神々と俺たちは戦うんだろう。相手は一度は世界を滅ぼしたこともあるんだ、今の力量では到底敵わないだろう。そしてだれ一人欠けることなく乗り越えることもできない。
だが俺たち全員がオーフィスの力を手にすれば話は違う。争いの未来を皆で戦い抜くことができる。それは俺が一番願うところだ。ゼノヴィア(ウリエルさんの時間操作で免れたが)と兵藤の死で痛感した。もう二度と仲間に死んでほしくない。その為にもポラリスさんの研究は必要だ。
「なるほどな。その口ぶりから研究が完成すればこちらに提供する、という認識でいいんだな?」
「当然。安全に運用できるようにも仕上げる所存よ」
「…まだ聞きたいことはある。あいつはなにもんだ。どうやってもう一人の赤龍帝を作り出した?」
先生が指さす先はドレイク。この部屋でただ一人、仮面をかぶって未だその素性が知れない男だ。ミステリアスな点もだが、この世に二つとないはずの赤龍帝の力を使うことから注目度は高い。
ちなみにイレブンさんはポラリスさんの指示があってか素面で参加している。こっちも女かとポラリスさん程ではなかったが驚かれていた。
「彼もまた、妾が先ほど述べたドラゴンの研究成果の一つじゃ。名をドレイク。生来ドラゴンの力を持たぬ者が、オーフィスに限らず強力無比なドラゴンの力を行使できるようにするドライバーのテスターじゃ」
ドレイクがゼクスドライバーオリジンを取り出し、皆に見せる。両端にそれぞれスロットがついた白い外装の中央に青いコアが埋め込まれたベルトだ。技術者である先生や、赤龍帝のライバルであるヴァーリはそれを興味深そうに見ている。
「オーフィスの力は現状強大過ぎる故に、手を尽くしているが制御が難しい。そんな折手に入ったのがロキとの戦いで回収した赤龍帝の鎧の一部。そこから赤龍帝の力を解析し、数多の異界の技術を組み合わせることで実戦運用可能な兵器として仕上げた」
「ロキ戦で…?」
「破損した赤龍帝の鎧の一部…埋まっている緑色の宝玉じゃよ」
「あ!あれか!!」
本人も声を上げて思い出したようだ。こいつがヴァーリと戦ったときも白龍皇の鎧に埋まっていた宝玉を籠手に突っ込んだもんな。ドラゴンの鎧にある宝玉は単なる飾りではなく、どの部位よりも力が濃縮している部位なんだろう。
「うーん、赤龍帝の力を解析…イッセーの話を聞くに神滅具の力も使えるらしいが、俺らでもまだ実現できてない人工神滅具って言えばいいのか?だがそれにしちゃ技術のアプローチが違い過ぎる…そうでもしなけば、完成は無理か?」
先生はなんか独り言をぶつぶつと言い出して一人の世界に入りかけてる。いつもの癖だな。
俺も詳細は聞かされてないから単なる予想だけど、神器関係の技術は多分全く絡んでないだろうな。レジスタンスにグリゴリの協力者はいないって話だし。あくまで神器の能力ではなく、封印されているドライグ自身の力を再現しているのではなかろうか。
そんな先生を他所に、会長さんが質問を投げる。
「テスターということはまだ未完成品ですか?」
「うむ。まだまだ実戦運用のデータが足りなくてのう。おまけにあのドライバー…ゼクスドライバーオリジンは強力無比ではあるが量産には全く向かん。よってお主らに提供するオーフィス研究の一品は別の形になる。それでも量産は難航するじゃろうが」
「ドライバーねー、なんかスペクターちんの神器みたい」
この面子で言えば大体黒歌と同じ感想に行きつくんだろうな。この世界にはベルトが象徴になっている平成も、令和ライダーもないのだから。
「ところで、何で顔を隠したままなの?ポラリスさんは顔出ししてるのに」
と、率直に聞いてくるのは紫藤さん。ポラリスさんやイレブンさんが顔を隠すのをやめた今、ドレイクだけが龍の仮面で顔を隠している。そのせいでこの場で一番浮いているメンバーになってしまった。
「妾とは違う理由での。彼は過去の戦いで顔に酷い傷を負っている。人前に出せるものではない故、こうしてマスクで覆っておるのじゃ」
『そういうことだ。済まないね』
紫藤さんの率直な質問が俺も知らない彼の背景を暴いた。そんな理由で仮面をかぶっていたのか。余程酷い怪我なんだろうな。それでもいつか見てみたくはあるが。
「三つ目の質問だ。お前は何のためにディンギルと戦っている?ディンギルを倒した先にお前は何を得る?」
最後に先生が問うたのはこれまでの質問で一番彼女の核心をつく質問だ。それは彼女の背景、人となりを覗くもの。回答次第で先生の彼女に対する今後の対応が大きく変わっていくだろう。
「…動機か。強いて言うなら、死んでいった仲間の、滅んだ故郷の弔い合戦じゃろうな」
そこからポラリスさんは自分の過去について話を広げていく。
生まれ育った世界のこと、それがディンギルに滅ぼされたこと、幾つもの世界を巡りようやくこの世界に辿り着いたこと。この世界もかつてディンギルの侵攻を受けたことを知り、六華閃の協力を仰ぎながら今日にいたるまでの準備を進めてきたことも。
話の途中、皆の反応は様々だった。衝撃や驚き、怪訝な反応。それら全てを話し終えたとき、一様に沈黙が降りた。それは膨大な情報を咀嚼する為か、真偽を疑う為か。
「…そうか、異界の人間だったのか」
「驚かないのか」
ヴァーリが先生に訊く。この場にいる中でこいつらだけまだ俺が異界人であることは知らない。
「最近それ絡みのケースが多くてな、こいつが使う魔法も、根本からどの魔法体系にも当てはまらない。想像に難くないと思っただけだ」
俺のことや兵藤が繋がった乳神のことを指しているのだろう。一応外部に漏らしてはならない機密事項ではあるからな。
「人間の科学技術が発展し、異形のいない世界…私たち悪魔からすれば想像もつかないわ」
部長さんはそう言うが、俺だってこの世界に来るまでは想像してなかった。別の世界が本当に存在すること、ましてやその世界では神話や伝承に語られる神や天使、悪魔が実在するなんて。
「それにしても、六華閃はディンギルと戦うための組織だったんですね。驚きました」
と、ロスヴァイセ先生が漏らす。先生は魔道に精通している者としてガルドラボークさんを尊敬しているらしい。本人の性格を知っている俺からすれば理解できんが。
「我々は神竜戦争時代に先祖たちが発足した武器職人たちを守り導く集団であると同時に、ディンギルに対抗する使命を帯びている。初代当主の志と武具を受け継いできたはず…だったが、時の流れが初代の意志を忘れさせてしまったようだ」
「この場にいない残りの三家はどうしている?」
「サイン家は知っての通り、英雄派のテロで当主が死亡。ジヴァン家は乗ってくれるようだが、どうにも最近連絡が取れなくてな。スカラー家はそんな使命などどうでもいいと取り付く島もない」
「そんな使命って…世界の危機なのに」
「現当主はそういう男だ。昔から己の研鑽以外に興味がないのさ。その甲斐あって、先代サイン家当主の死後、繰り上がりで六華閃最強の座を得た。単純な槍術なら曹操を上回るだろうな」
呆れる兵藤にガルドラボークさんは返す。曹操を上回る槍術の達人…強者ってのはどうして変人だらけなんだろう。逆にまともだと突出した強者になれないのだろうか。
そんなガルドラボークさんの話を先生はふむふむと注意深く耳を傾けていたようだった。
「…興味深いな。六華閃の事情なんてそう耳に届くもんじゃねえ」
「秘密主義なんですか?」
「基本どこの勢力にも加担しないスタンスを取っているからな。だが武器職人のことになれば勢力の垣根を無視して行動できる力も持っている。認めた強者には優れた武具を提供するから、組織的でなくても個人を通して間接的に恩恵を得られるから文句もつけにくい、絶妙な立場を得てる」
「実際、ウリエルの剣を仕立てたのはあたしだ。あいつのとんでもねえ力を受け止められるだけの剣なんて難しいオーダーだったぜ。あたしに剣を作ってもらいたい奴がいたらテストしてやるよ」
「今度相談してみようかしら」
と、カミングアウトするレーヴァテインさん。時空間を歪めることもできるらしいウリエルさんの剣を作れるのは彼女しかいないだろう。
紫藤さんのエクスカリバーは普段ゼノヴィアのエクスデュランダルに収納されてから、彼女が不在のタイミングだと戦闘面で少し不安かもな。ミカエル様のAと言っても聖剣のあるなしで戦闘力はかなり変わってくる。そうならないよう、個人で剣を用意するのは良いかもしれない。
「私としてはあなたの剣の腕を試したいところですが」
「いいぜ、コールブランドを見せてくれるんならな!」
おい、この非常事態にナチュラルに勝負の約束すんのやめろ。コールブランドはまだ俺が持ってるんだからな!
「組織の繋がりで言うなら最近はそうでもありませんよ。私の天峰家は五大宗家や日本政府の異能に関わる機関と密接なつながりがありますから。その代わり、それ以外の繋がりの一切を捨てた排他的なお家になってしまいました」
と、補足するのは叢雲さん。レーヴァテインさん共々この場にいるほぼ全員とは初めましての人だ。
「でも、あなたがここにいるということは今は違うのでしょう?」
「はい、私が当主になってからはより広く対外的な関係構築に努めています。彼女への協力を決めたのもそれが理由の一つです」
「基本は他勢力に与しないあなた方が、異世界から来た彼女と組織として手を組んだ。彼女を信用するに値すると判断したのね」
「そういうことだ。彼女の情報と技術は非常に有益なのでね」
こくりと頷くガルドラボークさん。裏では俺以上に情報、資金を通じた強い関係を構築しているんだろうな。レーヴァテインさんはそこまでしっかりしたイメージないし。
「…さて、ここまで話せばわかるじゃろう?妾が戦いの果てに何を得るのかが」
「…復讐、得られるものはない」
「経験者はわかっておるのう」
木場の呟きに話が早いと手を叩く。
「そう、一時の空しい充足感だけ。敵討ちをしたところで死んだ仲間も帰ってこないしのう。かといって奴らを放置すること、存在し続けることを容認できぬ。故に妾は戦う。何千何百という同胞の思いを果たせず、ただ負け犬として朽ちることなど断じてありえぬのでな」
「…いい気迫だ、平和希求でなく戦うことを選んだ君を好ましく思うよ」
静かながらも内に秘める感情を語気に滲ませるポラリスさんにヴァーリはふと微笑んだ。
戦いを求めるヴァーリは平和が嫌なんだっけか。それで禍の団に入ったぐらいだし。でもポラリスさんは徒に戦いを求めているわけではない。こいつとは違う人種だ。
「…なるほど、話はわかった。腑に落ちん気持ちはあるが、あんたはディンギルのことを良く知る貴重な人物だ。他から戦力を募れない以上は一人でも強者が欲しい。あんたを頼りにさせてもらう」
「今はそれで構わんよ。最初から100信用しろとは言わん」
こうして再び、共闘関係が結ばれることとなった。グレモリー、シトリー、白龍皇チーム、六華閃、そしてレジスタンス。絆の元、そして打倒ディンギルという志の下に勇者が集う。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
そこはべトレアル領に広がる広大な山林地帯。一見は何ら変哲もない大自然が広がっているが、アルルのアジト…石造りの城が結界と蜃気楼で隠されている。
その城内で冷たく乾いた足音を響かせて、石畳の通路を歩く男女はラディウスとアルル。竜域に残存する真なる神の眷属をまとめ上げる一人と一柱である。転移魔法でアジトに帰還するやいなや、次なる行動への準備に取り掛かっていた。
「あなた様の負傷はあれど、私がいれば十分制圧できたはずでは」
「いや、不安要素がある。ガルドラボークの魔導書の中に幾つかお前を封殺、あるいは対抗し得る魔法がある。実際、それがどこまで通用するかはわからんがな」
ガルドラボークの一族に伝わる『ソピア』は最高峰にして未完の魔導書。そのページ数に限りはなく、あらゆる魔法を保管するだけのキャパシティがある。一族の歴代当主が新たな魔法を生み出してはそれに記し、次の代へと繋げていくのがしきたりである。
初代当主が存命の神竜戦争時代から相当な数魔法も増えたが、とある筋から魔法の詳細についての情報は得ている。本来ならサイン家同様に英雄派をぶつけて現当主を消しておきたいところだったが、
「…お心遣い痛み入ります」
「お前は現状、我に次ぐ最高戦力であり、アヌ様がお気に召されている叶えし者だ。ぞんざいに扱うことはアヌ様をぞんざいに扱うと同義。あってはならぬ」
彼は残存する叶えし者の中で最も位の高い神と契約した、原初にして頂点の叶えし者。彼を知る真神の誰もが最高傑作と評する存在だ。そんな彼は対外的な活動を任せていたアルギスとは対照に、もう一人の叶えし者と共にこのアジトの建造と儀式用の大規模な魔法陣の構築を担ってきた。アルルが今日の日を迎えられたのは彼の存在あってこそだ。
「…戻ったのか」
ふと足を止め呼びかけると、通路の突き当りからすっと緑髪のヴァルキリー、ジークルーネが現れる。
「後始末は済ませてきたぞ」
「ご苦労」
淡白な報告に淡白な返答。二人の間に忠義はない。あくまで目的のために利用しあうだけの関係だ。
彼女にはガイウスのサポートと処分を任せていた。彼が根回ししてジークルーネを豪獣鬼の死体まで忍ばせてユグドラシルの欠片を仕込み、予め各勢力圏に潜む叶えし者がマーキングしていた場所に転移魔法陣で豪獣鬼を送り込む。目論見がすべてうまくいったのを確認すれば、後は用済みとなったガイウスを消すだけ。
「お前の指示でやったのではない、忌々しいオーディンに一泡吹かせるためだ」
「豪獣鬼でオーディンに一泡吹かせるには物足りないだろうな」
「…っ」
オーディンの名に彼女の眉がピクリと動く。忠誠を誓ったロキを討った兵藤一誠達は勿論のこと、現体制の頂点であるオーディンも憎悪の対象である。
「…くっ」
不意にアルルが腹に鋭い痛みを感じ、態勢を崩す。痛みを感じた個所を押さえた手はぬめりと鈍く光りを照り返す血に濡れていた。
「アルル様」
「奴から受けた傷が痛む。治りも遅い。あの状態でまともに極覇龍とやりあえば致命傷を受けていたかもしれんな」
「撤退は正解でしたね」
「…しかし、人の体でもこのダメージか。やはりオーフィスは危険だ、サマエルをどうにかして利用する方法も考えた方が良さそうだ」
無限を体現するオーフィスに唯一害をなすことができた龍殺しの堕天使サマエル。つい最近までコキュートスに封じられていたコカビエル以上に厳重に封印されているため、手を伸ばすのは難しい。その上、下手に運用すればこちらも痛手を受ける程の呪いだ。入手と運用は慎重に慎重を重ねて期さねばならない。
しかし目下の課題は儀式だ。何においてもそれの完遂を優先しなければならない。
「…ところで、アルギスの処遇は如何に?」
両翼をもがれ、深刻なダメージを受けた彼はアルルの処置を受けて休息を取っている。今回の一戦で己の無力を痛感し、ベッドの上で酷く落ち込んでいるのをラディウスは見た。
「あの体たらくだが貴重な戦力だ。まだ働いてもらう。しかし儀式が終わり次第、今後の処遇は検討せねばならんな…さて、これだけ時間を置けば十分だろう」
背中に手を回し、何かを引っぺがすアルル。その手の中にはごく小さな機械のチップのようなものがあった。
「何度も懲りん女だ」
つまらなそうに鼻を鳴らすとバキリと握りつぶす。ぷすぷすと上がる煙を一息で吹き消し、投げ捨てた。
「発信機ですか」
「思った通りの動きだ。これで奴らに我々の居所が割れた。今夜というリミットを提示した以上、必ず奴らはやって来る。儀式の成功には少しでも多くの眼魂とエネルギーが必要だからな、協力は仰がねばならん」
彼女が発信機をつけられたのはヘルブロスから最初に受けた銃撃の時だ。弾丸の中に発信機を内蔵し、炸裂と同時に張り付くように仕込まれていた。その全てを承知の上で彼女はここまで発信機を破壊せずにいた。
「総力戦に備えろ。折角の儀式だ、客人は多い方がいい。ジークルーネ、貴様にも協力してもらう」
「わかっている。その代わり、好きにさせてもらう」
「いいだろう、相応しい相手を用意しようか」
彼女の考えからどう動くか、誰と戦いたいかは大体予想がつく。兵藤一誠や深海悠河は荷が重いが、彼女の士気を挙げるに足る相手はもう一人いる。
望む相手に臨む相手をぶつける決戦のマッチング。その全ては彼女が決める。その為の仕込みは以前アルギスから受けた報告から生まれた。
「全ての準備は整った。この日が歴史の特異点だ。アヌ様もエンリル様も、きっと喜ばれる」
ディンギルが嫌う者、特異点とドラゴン。前者は自分たちが敷いた滅びの未来を変える因子であるため、後者は己の不死を殺しうる存在の為。
彼女が顔を隠してきた理由は実はまだありますが…気づく人は気づくかもしれません。彼女が全員の強化を目指しているのは真神の先の邪神も見据えての…?
次回、「行動で示す」