Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
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3.ロビンフッド
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
40.ジャンヌ
46.ノーベル
50.呂布
太古の昔、神域より現れた神々がこの世界の神と竜たちが争った神竜戦争。その最中でディンギルに対抗すべくアームドが武器職人の中でも各武器のスペシャリストを集め結成したのが創星六華閃だ。ディンギルと戦うはずの組織の中に、あろうことかディンギルに与した裏切者がいた。
以前からヴァーリによりその可能性が示唆されてはいた。それを聞いた時、俺はてっきりレジスタンスにまだ協力していない、ディンギルと戦う使命を忘れたままの3家(当時はまだ天峰家は協力していない)だとばかり思っていた。しかしそれがよりにもよって、一番率先してレジスタンスにも協力しているガルドラボークさんの家系だったとは…。
「我がジャフリール家の歴代当主…初代と俺を除き、その全てがディンギルと通じていた」
「え!?」
一人どころかそんなに大規模な裏切りだなんて…。思った以上に裏切りの根は深く張られていたらしい。
…ん?初代と俺を除きってことは、今目の前にいるガルドラボークさんはディンギルに通じてないってことだな?そりゃ自分から、自分が裏切者ですって白状する奴はいないか。寧ろレジスタンスに協力しているガルドラボークさんも裏切ってたら、ポラリスさんやウリエルさんも巻き込んだ大問題になる。
ヴァーリすらも驚きに目を軽く見開きながらも、恐る恐る話を踏み込む。
「つまり、二代目が最初の裏切り者なんだな?」
「そうだ。事の発端は神竜戦争時代に遡る。初代当主の息子がディンギルと繋がり、人知れず叶えし者となったことでジャフリール家の裏切りの歴史が始まった」
「そんなに昔から…」
初代当主ときたら、戦争で一番ディンギルと戦った人だろう。その間近にいたであろう親類がディンギルの甘言に乗せられていたなんて…。
「彼も戦争でディンギルのことは知っていたでしょう、何故叶えし者に…」
「さてな。親子関係がうまくいかなかったと聞いている。だからディンギルと戦う道を選んだ親と反対に、ディンギルの手を取る道を選んだ」
「付け込まれたということか」
「奴らのやりそうなことだ。戦後、初代が亡くなり当主の座を継ぐと初代が残した文献を永い年月をかけて改ざん、あるいは破棄を始めた。戦後間もない代はまだ他の六華閃の目があったようで、大規模にはできなかったようだがな」
聞くだけで頭が痛くなりそうだ。ディンギルと戦うはずの六華閃に裏切者がいて、人知れず悪事を働いていたと。獅子身中の虫とはこのことか。
「そして二代目の死後もディンギルとの繋がりは当主の座と共に代々受け継がれてきた。時間をかけて史料の破棄・改ざんを続け、薄汚い金と戦後に残留した叶えし者の暗躍という協力を代価に得てジャフリール家は栄えた。今代になるまで使命を知る他家の当主がいなかった原因はこれだろうな」
「そんな…」
同じ六華閃の当主である叢雲さんは茫然としていた。清廉潔白に大義を求める厳格なガルドラボークさんの口からこんな話が飛び出すとは、この中で最も予想だにしなかっただろう。
「はぁ…語るのも憚られる我が家の恥部だ。本来なら俺もその永らく続いてきたシステムの一部に組み込まれるはずだった」
話すだけでもストレスなのか、苛立ち交じりにため息を吐くガルドラボークさん。普段は気が合わないがこの時ばかりは同情した。
「だがその運命を変えたのが、先代サイン家当主…ローハン・サインだった」
「曹操たちに殺された男か」
「ああ。彼は仁智勇を兼ね備え人間と戦士の鑑のような男だった。俺もかつては尊敬し、あのようになりたいと憧れたものだ」
その名は俺もレジスタンスで聞いている。先代サイン家の当主は実力と人格を兼ね備えた素晴らしい人物で、ガルドラボークさんの尊敬の的であったと。ポラリスさんとも面識があり、認める程らしい。
「聡明な彼はジャフリール家が歴史の闇に葬ったディンギルと戦うという使命に気づき、情報を司るジャフリール家の先代…俺の父と会談を持ち掛けた。そこで…俺とローハンは知ってしまった。父も、祖父も、何代にも渡って歴代当主が初代の遺志を踏みにじり、ディンギルに魂を売って来たことを」
「使命に気づいた?どうやって?」
「ポラリスとの接触と、サイン家の先祖がジャフリール家から借りたまま返さなかった史料が残っていたらしい」
「それ借りパクって言わないか?」
「先祖しっかりしろ」
思わず美猴とツッコミが揃ってしまった。借りパクはダメだけどこんなことでプラスに働くことってあるんだな…しかもかなり昔の出来事だろう。
「当然、話は決裂し戦闘になった。相手が親友だろうと、父は止まれなかった。幾百年、いやそれ以上に渡るディンギルとの癒着は家の根深いところまで食い込み、修復不能になっていた。だから父は家を守るために戦うしかなかった」
ガルドラボークさんの語り口調に、若干の熱がこもってきた。それだけ当時の出来事がこの人にとって重く忘れがたいものだと伝わってくる。
「…ローハン・サインは、あなたの父を殺したのですか?」
「いや、父を殺したのは俺だ」
「!?」
「何?」
「あなたが…」
アーサーの問いかけに自嘲気味に笑うガルドラボークさん。その衝撃の告白に、動揺の波が俺たちの間に駆け抜ける。
「ああ。別に俺だって最初から冷めた人間だったわけじゃない。父以上にローハンを尊敬していたが肉親だ。怒りも悲しみもあった、父を止めたいと思った。だがそれ以上に長きに続いた悪習を終わらせるのは…俺しかいないと思ってしまった」
淡々と真実を語るガルドラボークさんの瞳に陰りが見えた。きっと今でも父を殺したことを後悔しているのだろう。親殺しなど、余程の恨みが無ければできるもんじゃない。話から察するにガルドラボークさんの場合は親子関係は良好だっただろう。それだけに、彼の決断の重さと悲壮さが窺える。
「そうして俺はこの当主の座をガルドラボークの名と、魔導書と共に受け継いだ。親殺しの業も、六華閃の裏切者の業も、全てをジャフリール家の跡取りとして背負い新たな未来を切り開く道を選んだ」
「…そのような事件が」
彼の過去を、この場に居合わせた誰もが神妙な表情で受け止めていた。叢雲さんは悲哀を感じる表情で目を伏せていた。
「…これだけ話せば十分か?君たちは俺を軽蔑するか?」
話したくもないことを話したと不機嫌そうにガルドラボークさんは鼻を鳴らす。ところがヴァーリは彼を否定せず、ふっと一笑に付した。
「いや、俺も肉親を殺したいと思っていてね」
「お前、アザゼル先生を!!」
そんな恐ろしい爆弾発言を奴が口にした途端、反射的に俺はヴァーリにつかみかかっていた。
こいつもこいつでとんでもないこと言いやがって!!少しは見直したと思った矢先に見下げ果てたぞ!!
「違う。アザゼルではない。実の父と祖父のことだ。あまりいい思い出が無くてね。…俺まで語り出してはキリがないな」
「君の父と祖父…そうか、それはさぞ大変な道のりだろうな。特に祖父は君の力ではね」
「そこまで知っているのか。流石は叡智を司るジャフリール家だ」
何?ガルドラボークさんはヴァーリの親のことを知っているのか?ヴァーリのおじいさんって滅茶苦茶強いの?
「ジャフリール家は長きに渡ってディンギルと戦うべき六華閃の名に泥を塗り続けた。なればこそ俺はその汚名を払拭する。誰よりも強かったローハンの遺志を継ぎ、六華閃の使命を体現することでな」
ガルドラボークさんの赤い瞳が真っすぐに俺達を見据える。その内には激しい意志の炎が太陽のように燃えるようだった。どこか昏い色のあるポラリスさんと違い、そら恐ろしいほど純粋なまでに燃える炎が。
「だからこそ俺は君たち全員に覚悟を求める。救世の為、私を遍く公に捧げる覚悟をだ。それなくして俺は君たちを真の戦士とは認められない」
これがガルドラボークさんの背負うもの。ただ家の使命だからというだけではない。先祖の罪をあがなう為、尊敬していた恩人に報いる為。数多の人間の人生を彼は背負っている。それが彼の歩みの原動力なんだ。
「ガルドラボーク、熱くなってるぜ。らしくねえ」
「…少々、感情的になり過ぎた。反省だな」
またもレーヴァテインさんに小突かれると、正気に戻ったか眉を顰めて顔を背けてしまう。確かに今のはガルドラボークさんらしくない。いや、これが彼の本質というべきなんだろうか。それを俺は今まで知らなかっただけだ。
「俺にはディンギル討伐以外にも使命がある。先祖たちが破棄、改ざんした史料の復元だ。失われた歴史を取り戻し、戦争の全てを明らかにする」
そして彼は、ヴァーリが手にする神竜書記を指差した。
「その為に、その本は君達に預ける。君達なりに戦争のことを調べているのなら今はとやかく返せとは言うまい。本に記録されたすべてを取り戻したときに返してくれたらそれでいい」
「俺達はお尋ね者だ。そんな人間に託していいのか?」
「ただの乱暴者でないことは知れている。同じ神秘を探求する者として一応は信頼するということだ」
…意外だな。ガルドラボークさんは秩序も重んじる人間だとばかり思ってたから、ヴァーリに強くあたると思ったらそんな評価をしていようとは。
「そうか、なら神秘の探求者として一つ訊きたいことがある。この本が神竜書記弐式ということは、壱式もあるということだな」
「ああ。壱式は我が家の保管庫にある。ただ、中身は全て破り去られているがね。魔導書を扱う一族として非常に腹立たしい限りだ」
弐式は落丁まみれと思っていたら壱式はもっとひどいことになっていた。そこまでするなら本そのものを捨てた方が早いだろ。逆にガワだけ残された理由が気になる。
「…長話に付き合わせてしまった。私はこれで失礼する。君達も準備があるだろう。決戦で足を引っ張らぬよう、入念にしてくれよ」
「期待してるぜ、コールブランドの暴れっぷりをな!」
最後まで嫌味ったらしいセリフを残し、踵を返して去っていくガルドラボークさんとレーヴァテインさん。
これからの戦い、本当に大丈夫なんだろうか…。
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ガルドラボークさんとのひと悶着とヴァーリ達の案内が終わると、疲れた体と心を休めるために一息つこうと俺はその場を離れた。その隣を申し訳ない顔で叢雲さんが付いてくる。
「すみません。こんな時にまでガルドラボークが…」
「いえいえ、イヤーな奴ですけど彼の言うことにも一理あるのは確かですから」
嫌なことばかり言うけど、こういう人は一人いた方が組織が回るんだろうなと思う。憎まれ役というか、必要悪というか。
「叢雲さんは、あの人のことどう思ってるんですか?」
ふと思ったことを叢雲さんに問うてみる。六華閃の当主という彼と対等な立場であり、同じ使命を背負う者として彼をどう評価しているのか俺は聞いてみたかった。
「ああ言う言い方をする人ですけど、大義には物凄く熱い人です。私をレジスタンスに勧誘した時はそれはもう熱心でしたよ」
「あの人が熱心…」
あんな冷静かつ嫌なこと言ってくる人が、か。ただ俺に言うことも裏を返せばそれだけ使命を果たすことに熱心だからこそ執拗に言うんだと取れる。家の闇に恩人の死。あんな過去を聞けば、そうなって当然だ。
「よくも悪くも、先代スダルシャナに影響を受けているんだと思います。私はお会いしたことはありませんが...いくら閉鎖政策を取っていたとはいえ、同じ六華閃の当主。会っておくべきだったと後悔しています。そうすれば…信長もあんなことにならずに済んだかもしれません」
レーヴァテインさんと前に話したとき、彼女自身も彼の影響を受けており、ガルドラボークさんは彼の死を機に大きく変わったと言っていた。会うことは叶わずとも、話だけで周囲の人間を変えていく人間性は特筆すべきものだと理解できる。
保守的だった天峰家の先代当主も彼と交流できていれば、もっと違う未来があったのだろうか。例えば今この場に信長も居合わせ、共にアルルに立ち向かうような未来が。もしそうだったなら、きっと頼れる戦力になっていただろう。
…いや、そんなことを考えても仕方ない。先代も信長ももういない。俺達は散った人達の意志を糧により良い未来へ前進していくしかないんだ。
そんなやり取りをしていると、廊下の向こうから見知った顔の集団と鉢合わせる。
「おや、深海君と…叢雲さんですか」
「よっ」
会長さん率いるシトリー眷属だ。会議の後、シトリーだけで打ち合わせをする流れになっていたようだから丁度終わったところなんだろう。
「こうして会うのは初めてですね。ずっとお話ししたいと思っていました」
「私もです。グレモリーとのゲームの時は刀を融通して頂きありがとうございました」
「いえいえ、あの刀はよそ者嫌いの保守的な父への反骨精神で作ったものですから。いいガス抜きにもなりました。ガス抜きと言っても、手は一切抜いていませんが」
夏の冥界での合宿。その最後のイベントとしてグレモリー眷属とシトリー眷属でレーティングゲーム形式の試合が行われた。アザゼル先生がグレモリー側のコーチについたように、シトリー側にもパワーバランスを取るべくシェムハザさんとラファエルさんがサポーターとして付いたのだ。
その際シェムハザさんからは『反転』を、ラファエルさんからは伝手を使って叢雲さんが打った刀が供与された。その時は天峰家は先代当主の閉鎖政策の影響が強かったため、公に冥界に行くことはできなかったんだろう。
「そうでしたか。…実は魔獣騒動でも同じ六華閃のレーヴァテインさんがシトリー領で戦っていたと聞きまして。それも踏まえ、六華閃の方々に是非挨拶をと思っていました」
「ぜひ彼女にも挨拶してあげてください。変人ではありますが、悪い人ではありません」
叢雲さんの澄んだ瞳が巡さんに移る。緊張に体をこわばらせる巡さんだが、その緊張をほぐす様に叢雲さんはにこりと微笑んだ。
「あなたが巡巴柄さんですね、初めまして。天峰家の当主、天峰叢雲と言います」
「よ、宜しくお願いします!」
「例の試合は拝見しましたよ。結果は残念でしたが、試合に向けて鍛錬されてることがよく伝わったいい戦いだったと思います。それに…刀もしっかり手入れされてますね」
叢雲さんの一瞥の先には巡さんが帯刀する日本刀。これまでの戦いで使い込まれた雰囲気はあれど、雑に扱われたような傷や汚れは全くない。
「はい!自分なりに手入れのやり方を調べてやってみました。あの刀、本当に切れ味が凄くてびっくりしました。大事に使ってます!」
「大事にしてあげてください。私にとって刀とは我が子のようなものです。あなたの思いにきっと刀も応えてくれますよ」
「はいっ!!」
一生懸命な巡さんに叢雲さんはにっこりと微笑みかけた。
何と言うか、叢雲さんって六華閃の中で一番まともかつ話の通じる人ではなかろうか。比較対象が二人だけで、それも大義絶対主義のガルドラボークさんにズボラなレーヴァテインさんしかいないって言うのが良くないんだろうが。
ま、それはともかくだ。
「匙、お前の援護マジで期待してるぞ」
今度の戦いでアルルの動きを止めるために匙の力を借りることになったのだ。つまり、途中参戦かつ力の制御が完璧でなく意識があやふやだったロキ戦とは違い、いよいよこいつも神と真っ向から戦うことになる。
「おうよ。にしても、俺まで神と戦うのかよ…あの時はやりますって気合入れて返したけど、今になって怖くなってきたぞ…」
顔を不安にこわばらせる匙。普通の反応はこれだよな。神なんて異形界のパワーピラミッドの頂点に君臨する存在。そんな相手と誰が好んで戦うだろうか。俺もロキ戦の時は内心不安いっぱいだったし。
「何を怯えているのです。それはあなたが兵藤君たちに並ぶ戦力であると見込まれている証拠ですよ」
「そうだぞ。封印されてるドラゴンそのものの姿になるなんて兵藤ですらできてないんだ。それができるお前は凄いと思うが」
「マジ…?」
「ああ、それにお前の黒炎はあのロキの動きだって止められただろ。お前ならやれるさ、信じてる」
「うーん…」
会長さんとタッグを組んでも浮かない表情で割り切れないこいつにダメ押すようにそっと耳打ちしてやる。
(会長さんの前でいいとこ見せたいだろ?)
(!!)
ぴくりと匙の肩が震えた。意中の相手を引き合いに出したことで、匙のエンジンが一気にかかる。
「わかった、神だろうと何だろうとやってやるさ!!」
浮かない感情はあっという間に吹っ飛んだらしい。ぐっと拳を握り、気合もたっぷりの返事をするのだった。あまりの豹変っぷりに若干会長さんも引いているようだ。
「急に元気に…何を吹き込まれたのですか?」
「いえ!戦いが終わったらいい焼肉食いに行こうって約束です!」
そんなこと言ってないが…まあそれくらいは俺のおごりでやってもいいかもな。終わったら打ち上げと別に二人で行くか。
「でもなんだか、選ばれなかったことに申し訳ないような、ほっとしているような…」
「悔しいけど、私たちじゃ力不足だものね」
と複雑な表情でぼやくのは仁村さんと花戒さん。
シトリー眷属は会長さんと匙を除いて駒王町で留守をすることになったのだ。理由は実力不足というところが大きい。偶々英雄派と遭遇して戦闘になった前回とは違い、明確に神クラスという相手が見えている。それを懸念してのこと。実力は申し分ない副会長さんは、『王』不在の中で残ったメンバーの取りまとめのために残ることになった。
「例の物の用意が早かったら私たちも行ってたのかな」
「いや、慣れない中で使っても足を引っ張るだけだろう。今の私たちに必要なのは地力を伸ばすことだ。もっと鍛錬しないとな」
ただ一人、前向きなのは由良さん。戦略を組んで戦うシトリー眷属であるもののストイックかつパワー気質な所はどっちかというとグレモリー眷属に近い。しかし草下さんの発言の中に気になるワードが。
「例の物?」
「ひーみーつー。ですよね、会長?」
「そうですね。また時が来たら話しましょう。それまでの楽しみにしてもいいかもしれません」
目配せする草下さんに会長さんも珍しく微笑んで合わせてきた。シトリーだけの秘密か、明かされるその時が楽しみだ。
「なんかどんどんグレモリーと距離を離されてるよね。やっぱ深海先輩にシトリーに来てほしかったなー。そしたらパワーバランスでつり合い取れたのに」
「まあヴリトラがあるって言っても俺一人じゃきついよなぁ…」
忘れがちだけど俺、謎の力に妨害されて悪魔に転生できないもんな。それが当然と認識されるあまり俺ですら今になるまで忘れていた。
「できないことを嘆いても仕方ありません。…と言っても、私ですら今回は匙が暴走した時のストッパーです。主戦力の兵藤君ばかりに負担をかけるわけにはいきませんから」
「それだけ、敵のレベルが上がっているってことですね」
「ええ。歯がゆい思いはありますが、その思いを含めオフェンスはあなた方に託します」
「勿論です。俺自身のためにも、皆のためにも必ずやり遂げます」
会長さんに託されちゃったな。荷が重い気もするが、それも踏まえてこれからに向けての気合が入るというもの。
「一つ訊きたいことがあります。もし、あなたの妹さんが戻ってきたらどのようにするつもりですか?」
「多分、俺とゼノヴィアの家で暮らすでしょうね。…なるべく、戦いには関わらせたくないと思ってます。辛い思いをしてきたでしょうから、穏やかにさせてやりたいです」
俺よりも早くこの世界に転生してから体を勝手に悪事に使われ、頼れるものもなかっただろう。だからその傷を癒すためにも凜には争いから遠ざけ、ゆっくりさせたい。
ある程度落ち着いたら俺の仲間を紹介し仲良くなってもらって、この世界で生きる意味と楽しさを見出してほしい。かつての俺もこの世界に一人投げ込まれ、頼りもなく寂しい思いをしたが、天王寺や上柚木、兵藤といった友人を得ることで前向きになれた。だからあいつにも、俺にとっての三人のような人を作ってほしいんだ。
「そうですか。では、妹さんの学校はどうするおつもりで?」
「ほとぼりが冷めたら、あいつは年齢で言うと中学か高校くらいになるので駒王学園に編入できればって考えてるんですけど…できますか?」
「勿論です。リアスとも掛け合い、時期を見て手配しましょう。平穏な暮らしと言っても、人として生活するうえで学校教育は必要だと思いますよ」
そろそろ11月という入学するにはカリキュラム的にも厳しい提案にも会長さんは微笑んで快諾してくれた。
学校を愛する彼女にとって同学の徒が増えるのは喜ばしいことだろう。俺もあの学校は信頼しているし、いい人がたくさんいると知っているからこそ、凜を通わせたいし一緒に通いたい。
「高等部1年なら私と同じクラスにしてほしいっす!」
「いいな、仁村さんは明るいからあいつと気が合うかも。同級生として友達になってくれるとあいつも寂しい思いをしなくて済む」
「任せてください!」
胸を張り率先してあいつと関わろうとしてくる仁村さんの笑顔が眩しい。これならあいつが編入しても心配なさそうだ。
「素質があるなら生徒会にも誘ってみるといいんじゃないか?」
「それいいね!」
「あなた達、会長を無視して勝手に話を進めないで」
まだ見ぬニューカマーに由良さん達が盛り上がるのを見て鋭い突込みを入れるのは副会長さん。俺も凜を生徒会に入れてもいいって言った覚えはないが…まあ凜の仲間が増えるには良いだろう。
「兎にも角にも、この戦いをうまく終わらせないことには始まりません。必ずや勝ちましょう」
「絶対頑張ってくださいね!」
「駒王町から応援してるわ」
「元ちゃんと一緒に頑張ってね」
「おう」
凜を取り戻そうとする俺を応援してくれているのは何も一番身近なグレモリー眷属だけじゃない。そのことを改めて認識できた。
外伝は改めて今回語られたガルドラボークの過去回想をやろうかと思います。今の大義マンになる前の彼やポラリスとの初対面など、彼のエピソードゼロとも呼べる内容を予定しています。
ガルドラボークはラゼヴァンやリゼヴィムとは面識がありません。ルシファー直系のヴァーリの父、祖父ならあいつらだろうな、という流れです。
次回は決戦のドシリアス前の最後のほんわか回です。
次回、「名剣の巣窟」