ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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大変お待たせしました(もう何度言ったか覚えてない)

エボルはポラリス自身のゼクスドライバーが用意できるまでの暫定的な処置です。もし完成後も何らかの事情でゼクスドライバーが使えなくなった場合はまた出番があるかも。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
2.エジソン
3.ロビンフッド
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
40.ジャンヌ
46.ノーベル
50.呂布




第186話「レイド家の剣」

「さて、誰が先陣を切る?」

 

ガチャリとベルトを撫でるポラリスさん…エボルが言う。

 

「そんなもん決まってるさ」

 

これまで何度もそうだったし、本人もそうしたいと思っているはずだ。その確信のままに俺はその人を指す。

 

「ゼノヴィア、幸先良い先制攻撃を決めてやれ!」

 

俺直々の使命に驚いたか一瞬ぽかんとした表情を浮かべる彼女だったが、すぐに大胆不敵な笑みに変わり。

 

「ああ、丁度決めたくて疼いていたところだ!」

 

エクスデュランダルを握り、その切っ先を振り上げ紫の天空へと掲げる。すると刀身が輝きを放ち、その刃に秘められた絶大無比な聖なるオーラがどっと解放される。もはやそれは砲撃というより、天高く屹立する極太の光の塔だ。

 

「いっけぇぇぇ!!!」

 

余りの輝きに焼け付くような眩い光も、その主が気にするところではなく、裂帛の気合と共に剣を振り下ろす。光の塔が轟音を立てて前方に展開する敵軍目掛け倒れこんでいく。着弾と共に巻き起こったのは体の髄までも揺らすような爆音、爆風、爆炎。

 

怒涛の光の奔流が直撃コースにいた無数のプラセクトを跡形もなく消し飛ばし、その余波だけでも付近の数多の敵を巻き込み豪快に吹き飛ばした。その衝撃はこちらに吹き荒れ、俺達を攫わんとばかりに吹き付けた。

 

「…相変わらず馬鹿げた威力、頼もしい限りね」

 

余波に堪え、生まれた光景を見てぽつりと言葉を零す部長さん。その目線の先には、開けて焦げた長く大きな一本道が生まれていた。

 

「すっげー、出力だけならコールブランドに並ぶんじゃね?」

 

「どうでしょうね」

 

美猴の言葉にアーサーが否定も肯定も示さないのは聖王剣の使い手としてのプライド故か。

 

「これがエクスデュランダルのフルパワー…!おいおい、またビンビンになっちまうじゃねえか…!」

 

「えっ、戦闘中に…!?」

 

「なんだこの変態…」

 

一連の攻撃を見届けたレーヴァテインさんは伝説の聖剣の力を目の当たりにした昂りを押さえられないのか、モジモジし始める。彼女の見たことのない高揚っぷりに俺も兵藤も思わずドン引きだ。

 

「イッセー先輩の剣バージョンです」

 

「さっきもグラムを見てこんな感じになってたわね」

 

塔城さんと朱乃さんからの情報が困惑を更に加速させる。レジスタンスに出入りして面識のある自分でもこんな一面知らなかったぞ。

 

「おい、こいついつもこんな感じなのか?」

 

「昔からだ。彼女は剣が好きすぎるあまり、剣で性的興奮するようになってしまったようでね。最近では剣で自…」

 

アザゼル先生の彼の言葉を待たずして、隣にいたヴァーリがいきなり白い閃光をなびかせて勢いよく飛び立つ。

 

「御託は良い。俺は行くぞ」

 

「お先に失礼しますよ」

 

「お先!」

 

果敢に先陣を切るリーダーに続くようにアーサー達ヴァーリチームも前進を開始する。高速で移動する彼らとプラセクトの接敵は早く、すぐさま戦いの音が聞こえ始めた。その音で戦闘へ意識を引き戻されたか、「んん」と咳ばらいをするガルドラボークさん。

 

「…我々も後れを取るわけにはいかんな」

 

「今何言おうとした」

 

「おいちょっと!その先何て言おうとしたのかだけ教えてくれ!!」

 

「俺も気になる!先っちょだけでいいから!」

 

俺と兵藤、果てにはアザゼル先生の三人でガルドラボークさんに言葉の先を詰問するが、これ以上話す気はないとすまし顔で知らんぷりだ。

 

「アザゼル、馬鹿なこと言ってないで私たちも続くわよ!!」

 

「お、おうそうだな…よしお前ら、正面突破だ!!戦力は陸と空、二つに分けるぞ。空は俺、リアス、朱乃、イリナ、ギャスパー、ロスヴァイセ、アーシアだ。アーシアは俺に、ギャスパーはリアスに付け。陸はイッセー、深海、小猫、ゼノヴィア、木場で担当する」

 

「私達は飛行タイプを堕としつつ、陸上の敵を空から攻撃して援護ね」

 

「そういうことだ」

 

「俺達六華閃も地上組に加わろう。ところで、少々こちらの数が心許ないと思わないか」

 

俺達の作戦会議に何食わぬ顔で混ざって来るガルドラボークさん。普段はバチバチに意見対立してくるくせに、こういう時はすごい協力的なの違和感だな。パラリと本をめくり、木場に一瞥する彼の意図を読んだ木場は。

 

「…そういうことですか」

 

握る剣を聖魔剣から聖剣に変え、二人は能力を同時に発動する。

 

「第一頁、天より進軍する必罰の聖軍」

 

「聖覇の龍騎士団《グローリィ・ドラグ・トルーパー》!」

 

発動の宣言と同時に両者の得物が発光し、その足元からぞろぞろと甲冑の騎士たちと光の人形が現れ出でる。一瞬にして俺たちの頭数は大勢の分身を加えることで倍以上に膨れ上がった。

 

「お前たちはどうする?」

 

先生が声をかけたのは、六華閃同様にまた突撃しなかったポラリスさん達レジスタンスの面々。ふむとポラリスさんが変身したエボルは顎に手をやる。

 

「妾も地上部隊に加わるとしようかの。ドレイクとイレブンは空を任せる」

 

「御意」

 

『わかった』

 

指示を受けた二人が同意を見せたことで一応の動きを決めた俺達は改めて、敵の大群へ向き直る。数えるのもあほらしい程の頭数で来る敵の進撃のペースは速く、いよいよ俺達と接敵せん勢いだ。

 

だが俺達に迷いも恐れもない。その先にいる、もっと強大な本当の敵を見据えているからだ。

 

「さあ、俺達も進軍開始だ!!」

 

先生の声を張った一声で、俺たちは散会し、動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈挿入歌:Alteration(仮面ライダーウィザード)〉

 

「ドラゴンショット!」

 

赤いオーラが戦場を流星のごとく駆け抜ける。複数体まとめてプラセクトの頭から尻にかけて風穴空けた兵藤は跳びあがると重い拳を叩き込み、そのまま地面へ虫をめり込ませる。ただの一発で甲殻には拳の跡が残り、車がへしゃげたように様変わりしていた。

 

「前よりは硬くなってるけど、サイラオーグさんに比べたら屁でもないな!!」

 

「それに、もう戦い慣れてる!」

 

グラムを手にし、騎士団を従わせる木場は目にもとまらぬスピードでプラセクトを翻弄して斬り伏せる。グラムのオーラをセーブしているためか破壊力はないが、それを埋め合わせるように彼のテクニックが加わることで問題なく両断できている。

 

続く騎士団たちも魔剣の力をいかんなく発揮し、殲滅しにかかる。ダインスレイブの氷柱が広範囲の敵を横にまとめて貫き、バルムンクのオーラで複数匹を纏めて貫き、空間ごと硬い甲殻を削り取る。ゼノヴィアも模擬戦で手を焼くほどの戦力だ。相手はひとたまりもないだろう。

 

「潰します」

 

猫又の尾と白髪なびかせ駆ける塔城さん。細身で小柄な体を活かしプラセクトで埋めつくされた戦場を縫うように馳せ、次々に仙術帯びた拳を叩きつけ敵の群れをかき乱す。

 

「!」

 

不意にプラセクトの一体が振り向きざまに滞空する塔城さんへ脚を叩きつけた。ただ本能で暴れるだけのプラセクトの動きは彼女の予想を偶然にも上回ったのだ。

 

「くっ」

 

「私に任せてください!」

 

小さな体が地面に打ち付けたと同時にアーシアさんの回復のオーラが塔城さんを包み込み、傷を癒す。アーシアさんとギャスパー君はアザゼル先生に着き、守られながら各員のサポートを行っている。

 

「第16頁、風啼く岬の鎌居達」

 

獰猛なプラセクトを睥睨するガルドラボークさん。厳然とした詠唱の後、無数の魔法陣が虚空に生み出される。そこから風の刃が絶え間なく吐き出され、プラセクトを次々と八つ裂きにしていった。打ち漏らした個体は様々な武器持つ光の分身が掃討していく。

 

一方、先行して戦っていたヴァーリ達。チームの中でも一際キレの良さをみせるのはアーサーだった。数匹に囲まれ四面楚歌に陥ろうとも焦りも難もなく、攻撃をやり過ごしては両断し、その死体を起点に飛び跳ねて捕捉される前に斬る。その一挙手一投足、一太刀一太刀に気品と洗練された技を感じさせる。

 

「手になじむこの感覚…やはり、コールブランドがなくては」

 

「へっ、本調子が出てきたようだねぃ!」

 

その隣でサイズを何倍にも増した如意棒を豪快にぶん回しなぎ倒す美猴。こっちは真面目に戦ってるのにこいつらときたらやっぱり戦いをエンジョイしているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フルバースト…と行きたいところですが、慎重に行きましょう」

 

無論、俺達もヴァーリチームに負けじと戦う。普段なら豪勢に属性魔法のフルバーストを放つロスヴァイセ先生は堅実にも数を押さえた属性魔法で纏めて、しかし数に対する適切な火力で潰していく。グレモリー眷属にしては珍しいスタイル、この先の更なる強敵との戦闘を見据えて温存するつもりらしい。

 

そのすぐ真隣を白いオーラ迸らせ、強大なオーラにものを言わせた攻撃でヴァーリが薙ぎ払いをかける。その一撃だけで数十は消し飛んでいった。

 

「一見生真面目そうに思ったが、新入りの君もグレモリーの気質に染まって来たようだな」

 

「あなたの方こそ私たちらしい脳筋な戦いをしているようですが」

 

「どうにも最近は負けが込んでいてね。溜まった鬱憤を晴らすにはちょうどいい」

 

ラディウスに負けたり、少し前はサマエルに瞬殺されて呪いの効果でしばらく寝てたりだったか。プルートを瞬殺して少しは晴らせた矢先にまたボコられたときたもんだ。好き勝手にやってるこいつらの自業自得、という感情よりも簡単に捻ってしまう強敵の出現に恐ろしいという感情が先行してくる。

 

「いくら神様だからって、世界滅亡なんて悪いこと企んでるならお仕置きよ!」

 

空中担当の紫藤さんが光輪をいくつも飛ばす。光輪は変幻自在の軌道を描きながらも的確に飛行するプラセクトを拘束。その間に聖魔剣で一閃し、剣の錆に変えていく。

 

「不遜な神は、この手で斬る!」

 

ゼノヴィアも存分にエクスカリバーの一つ、破壊の聖剣の力を開放して叩き斬ると同時に粉砕し、その衝撃波で他の個体も巻き込んで攻撃するという技を披露している。もうここまで来たらテクニックに片足突っ込んでるのかそれともパワーに全振りしているのかわからないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆がそれぞれのスタイルで、確実に大量の敵を屠っていく。俺も負けてはいられない。

 

「おらっ!」

 

馬乗りになったプラセクトの顎を掴み、強引に引きちぎる。緑色の体液が飛び散って装甲を汚すががそれに構う暇もなく、露になった口内にガンガンハンドをねじ込み銃撃を連射し、内部から破壊する。トリガーを引くたびにプラセクトの体がビクンと震え、6度目の時に完全にその動きを止めた。

 

「緊褌一番だ。キャプテンゴースト!」

 

コブラケータイで呼び出しコードを素早く入力すると、まるで待ってましたと言わんばかりにタイムラグなく地面を突き破るようにイグアナストライカーが出でる。

 

「ギャォォォ!!」

 

土の塊を巻き上げた怪獣さながらの登場。迫力ある雄たけびにプラセクト共も負けじと唸りを上げる。

 

四足歩行で地を馳せるイグアナストライカーは立ちはだかるプラセクト共を鋭利な爪と牙でちぎっては捨て、腕の一振りで次々に地面に叩きつけていく。目には目を、怪物には怪物、といったところか。

 

イグアナストライカーの大暴れで巻き起こる混乱。向こうに気を取られたプラセクトの腹の下に滑り込み、ガンガンハンドを叩き込む。

 

「リョウマ、行くぞ」

 

〔カイガン!リョウマ!目覚めよ!日本!夜明けぜよ!〕

 

剣と銃、オールレンジの戦いに優れたリョウマ魂へと変身。鋭利な腕を構え、相対するカマキリ型とガンガンセイバーで激しく剣戟を交え、何度も火花を散らす。

 

幾度か数えるのもそろそろ飽きてきたころに俺は戦局を変えるべく大胆にも一歩大きく前へ踏み出す。それは本体へと間合いをより詰める為。しかしそこまでの知性のない虫にはそれを理解するはずもない。

 

相手の手が止まったこれ幸いとプラセクトの魔手が伸びるが、それよりも早く鋭利な刃を生やした腕の付け根を切り飛ばす。

 

「キシャァァァァァ!!」

 

〔ダイカイガン!オメガブレイク!〕

 

「はぁ!!」

 

すかさずドライバーに武器をかざして霊力の送受信を行い、溢れ出た青いオーラを乗せた斬撃を飛ばす。カマキリ型を始めとした数体を一気に消し飛ばすのだった。

 

「次!」

 

〔カイガン!ベートーベン!曲名?運命!ジャジャジャジャーン!〕

 

流れるような動作でドライバーの眼魂を入れ替え、ベートーベン魂へゴーストチェンジ。

 

「フォルテッシモ!スタッカート!」

 

指向性を持たせた霊力はメロディーと五線譜に乗った音符に変わり、次々と爆音とプラセクトの奇声に満ちた戦場に雄大かつ気品あるクラシック音楽が鳴り響く。戦場を縦横無尽にかけるメロディーはぬるりとプラセクト達の間を縫うように馳せ、次々に命中。爆散せしめる。

 

五線譜を次々に生み出し、粗暴な血と光と暴力に満ちた戦場に美しい弾幕を張る。地上、空を問わず魂を震わす旋律はプラセクト共に届けられ、永遠の安らぎへと誘う。

 

「ディミヌエンド」

 

背後から感じた気配目掛け、音符を撃ち込む。振り返ればその効果はたちまちに現れ、大地を割るような振り下ろしは力強さをまるっきり失われ、へなちょこと表現するほかない動きへたちどころに変わる。

 

そこに至近距離でフォルテッシモを撃ち込み、敵を粉砕。だがベートーベン魂の能力は攻撃だけに終わらない。

 

「塔城さん!アレグロ!」

 

「!」

 

呼びかけ、指先から霊力の音符を塔城さん目掛け飛ばす。

 

するとベートーベンのオーラを纏い、移動速度が倍加。まるで本物の猫さながらの俊敏な動きで敵を翻弄し、動きを止めた敵に重い拳を叩き込む。固い甲殻はそのインパクトでバキバキに砕け、緑色の体液を散らしながら倒れ伏した。

 

塔城さんは仙術を使用して戦っている。従来のパワフルさを更に強化した拳に攻撃した相手の体内に作用する仙術が合わさり、一撃で相手の体を内側からも外側からも破壊する強力無比な攻撃を放てるようになったのだ。

 

ベートーベン魂のメロディーに乗せた霊力を操り、特定のコマンドでそれに更なる状態変化を加える能力。

 

これができるようになった…いや、思いついたのは直近のことだ。グレモリー領の病院での戦いでベートーベン魂を使用し様々な攻撃を試したこと、この戦いに備えて新たな手札を用意する必要があったこと。この二つが絡み合ったことで生まれた発想だ。

 

「悠!私にもかけてくれ!」

 

早速ゼノヴィアから飛んでくるバフのオーダー。狙いを定め、指先から霊力を放つ。

 

「フォルテ!」

 

五線譜の波動がゼノヴィアへとひた走り、絡みつき霧散するとデュランダルの輝きが増す。剣を握る力を強め一閃を繰り出すと、その剣圧だけで何匹ものプラセクトがまとめて両断されるか吹き飛ばされていった。

 

目に見えてわかる破壊力の向上。しかし彼女は不満げだ。

 

「おい、フォルテッシモじゃないのか?」

 

「まだできるようになったばかりだから、強いバフは加減がわからないんだよ!」

 

互いに霊力を飛ばし、あるいは剣を振るって敵を討ちながら会話を交わす。

 

「…が、これでも十分だ!」

 

大胆不敵に笑む彼女はギアを上げ、さらに豪快な剣戟を繰り出し敵の掃討を加速させていく。フォルテッシモをかけていればあれ以上の破壊力になるんだろうな。

 

ベートーベン魂は変幻自在の中遠距離攻撃とサポート、二つをこなせるフォームへと進化した。時間が無くて試せていないが、プライムスペクターでも使うことができれば英友装と併用して更なる味方の強化が可能になるだろう。それとより強力なバフをかけられるよう調整も進めたいところだ。

 

やがて弾幕を抜けて距離を詰める個体が現れ始める。指揮棒を振るうがごとく指を振るう俺目掛けて殺到するが。

 

「ダカーポ!」

 

その号令一つで楽譜はくるりと方向転換し、背後からプラセクト共を撃ち抜いていく。俺が何も対策せず中遠距離特化のベートーベン魂を使うわけがないだろう。

 

何度も指を振るい、何度も五線譜の弾幕を放ち、何度もプラセクトを撃ち落とす。魂を震えさせる旋律は絶えずやまない。そう、いつまでも。

 

「数が多すぎる!」

 

「埒があかないわ!」

 

どれだけ戦っても進んでも代り映えのしない状況に対し、苛立ち交じりに木場と紫藤さんは声を漏らす。何体倒しても、減った数を上回る数が豪獣鬼から量産されてしまう。ゼノヴィアが初撃で作った道も既に半分以上は虫でふさがれている。大元を断たねばじり貧だ。

 

「これくらいが前菜に丁度いいってもんよ!」

 

「飽きるにはまだ遠いですね」

 

終わりなき戦いを楽しむメンバー(主にヴァーリチーム)もいるが、生憎こちとら雑魚に構っている余裕は全くない。

 

そんな折に視界の隅、プラセクトが跋扈する空を一筋の赤い流星が走った。

 

『ふん』

 

ドレイクさんが紅い粒子の尾を引いて、空を駆け巡る。ライフルの連射で光弾をばらまきながら身をよじって下級を躱し、カウンターの射撃を見舞う。赤い光条が虚空を焼いて真っすぐに両手にライフルを携え、二丁拳銃でプラセクト共を撃滅する。なんだかあの人を見ているとガンダムの戦闘シーンを見ているかのような錯覚に陥るな。

 

「くっ…やはり必殺技を作っておくべきね」

 

空中からとめどなく消滅のオーラや雷光を繰り出し、広範囲を殲滅する部長さんと朱乃さん。そんな彼女らの下へ、ごくわずかな弾幕の隙間を縫うように潜り抜けた個体が耳障りな羽音を立てて迫る。

 

「!」

 

「部長!」

 

声を張り上げるギャスパー君が両目を怪しく輝かせ、ハエ型のプラセクトの動きを停止させた。その間に朱乃さんが雷光を叩きつけ、即座に消し炭に変えてしまった。

 

「危ない所でした…」

 

「助かったわギャスパー、朱乃!」

 

「ええ。それよりも豪獣鬼をどうにか…」

 

朱乃さんが豪獣鬼へと視線を向けたその時、異変を認めた彼女は思わず言葉を止めた。その次の瞬間にはアザゼル先生が声を大に叫んでいた。

 

〈挿入歌終了〉

 

「豪獣鬼が動くぞ!」

 

なにか腹と喉を膨らませ、えずくような動作を見せる。そのぎらついた瞳は真っすぐ俺らの方向を見つめていた。

 

「来るぞ!」

 

誰かの叫びと同時、豪獣鬼が莫大な業火をえずいた。森全てを焼き、視界を埋めつくすような規模。止められなければ、全滅は免れないだろう。

 

「おいおいマジかよ!」

 

「あれはまずいな」

 

流石のヴァーリもそう呟く威力。味方のプラセクト達もお構いなしに焼き尽くすそれを前に会長さんが果敢にも。

 

「私が防ぎます…!」

 

上級悪魔特有の強力な魔力から水を生み出し、激しい水流へと変化させてぶつける。しかし圧倒的な質量を持つ豪獣鬼の火炎の前ではそれでも焼け石に水だ。会長さん一人の力では全てを打ち消すには足りない。

 

「仕方ない」

 

〔Half Dimension〕

 

「手を貸そう。第二十頁、業火を押し流す龍の涙」

 

そこに動いたのがヴァーリとガルドラボークさんだった。ヴァーリの光翼が輝きを発すると炎の規模が少しばかり収縮する。そこに魔導書の頁をパラリとめくる六華閃の叡智を司る男の魔法が発動し、会長さんのそれをはるかに上回る規模の怒涛の水流をぶつける。混ざり合った二人の水流がようやく業火を相殺しきった。

 

巻き起こる蒸気を翼の羽ばたきで払う先生は顔をしかめた。あの威力の攻撃が何度も飛んでくるようなら、進むどころではない。

 

「早めに対処しないと面倒だな…予定を前倒ししたいがガルドラボーク、やれるか!?」

 

「ああ。六華閃は豪獣鬼を引き受ける。レーヴァテイン、叢雲、行くぞ!」

 

アザゼル先生の指名を受けると、声を張り上げ呼びかけるガルドラボークに、二人が呼応する。

 

「あったりめえよォ!!」

 

「鍛錬の成果を今…!」

 

どうやら六華閃の真骨頂が拝めそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:永久の絶望 救いはない〉

 

レーヴァテイン・レイドは才媛である。

 

創り手としての剣の知識、使い手としての剣の技量、その全てが一級品である彼女は異形社会からはソードマスターと評され、彼女が打った最高峰の剣を欲する者は後を絶たない。

 

異形社会に名だたる剣の使い手の多くは彼女が創った剣を愛用しており、彼らが武勇を轟かせれば彼女の名もまた世界に轟くこととなっていた。剣という武器の中で最もポピュラーな得物を得意分野とする彼女、またはレイド家は六華閃の中で最も著名かつ力のある家と言えるだろう。

 

「ははっ、オラァどうした!」

 

寄せ来る大軍をものともせず、次々に屠りさらなる剣の餌を求める彼女が操るのは二振りの剣。叩き斬り、捩じ斬り、なで斬る。三百六十度あらゆる方向から襲い来る敵を彼女はたった一人、血に飢えた野獣のように暴れ、死体に変える。彼女が進んだ轍には夥しい数のプラセクトの死体が残されていた。

 

「キシャァァァァァ!!」

 

「いい気勢だ!」

 

数多の仲間を殺され、発狂したかのように嘶きを上げるプラセクトが食らいつかんと迫る。それを怯まず受け止めるように正面から断ち切り、前方へ道を作る。通常であれば派手に両断されたプラセクトの断面から体液が流れ出るはずだったが、断面が凍結されていたためその血が戦場を汚すことはなかった。

 

左手に握る剣、青白い雪の結晶のような儚い輝きを放つ『零氷剣アブソルータ』を振るえば斬撃と共にたちまちに猛吹雪が巻き起こり、範囲内の敵を凍結、両断する。先代当主である彼女の父が愛用した一振りだ。

北欧神話で語られる霧の国二ヴルヘイムで打たれたこの剣にはかの国で絶えず吹きすさぶ吹雪が封じ込められている。

 

仲間の死体を踏み越え、働きアリのように群れ為すプラセクトが横合いから飛び出す。その一群を認めた彼女は赤い剣を振るい、巻き起こった爆炎で灰に帰した。

 

「ハアッ!」

 

右手に握るのは焼け付く炎のように赤く輝く『煌炎剣オルタフレア』。振るえばその斬撃に業火の炎が付与され、立ちはだかる悉くを焼き切ってしまう。アブソルータと対極にある炎の力を宿すこの剣は同じく北欧神話に伝わる炎の国ムスペルヘイムで彼女が打った、愛用の逸品である。

 

爆炎と吹雪の中、獣のような荒々しさとその対極にある達人の技巧を合わせた剣筋レイド家の当主に恥じぬ戦いぶりだ。

 

「ギアをもう一段上げるぜ」

 

そう呟く彼女の背に、からくりの細腕が生える。彼女が生来宿した神器、『機械仕掛けの御手《マヌス・エクス・マキナ》』だ。特筆すべき能力はなく、英雄派のジークフリートが保有していた類似の神器と比較するとある一点のみ優れその他全体的な性能、特にパワーの面で劣っている品だが。

 

「更にバランスブレイク!」

 

彼女は更にその先の境地へと至らせている。宣言と同時に三の腕が輝きを増し、腕の数が4つに増える。更に背中に天使の輪のような円盤が顕現し、炎の円環を為す。

 

『機械仕掛けの千手《デウス・ミーレ・エクス・マキナ》』。レーヴァテインが齢10にして目覚めた亜種禁手である。能力は至極単純で、腕の数の増加。

 

「まだまだあるぜ?」

 

嗜虐的な笑みを浮かべる彼女は更なる業物を亜空間から引き抜く。エクスカリバーと関わり深い純白の剣『飛聖剣セラフィカ』と危険な波動を発する黒剣『蝕魔剣ディアボリカ』。それらに加え、先ほどまで使っていた爆炎と爆氷の二振りの剣を禁手の四本腕に握らせる。

 

「あれは聖剣と魔剣…!?」

 

四本の剣を同時に操るその姿に裕斗は驚嘆する。以前交戦したジークフリートはそれ以上の数の剣を同時に振るっていたが、それは全て魔剣に類される得物だった(一振りだけ教会の戦士が使う光の剣だが)。自身は聖と魔の融合した聖魔剣を操るが、神器の切り替えの関係で聖剣と魔剣を同時に使うのは不可能だ。

 

それを彼女がことなげに為せる理由は、初代当主以来の特異体質によるものだが今の彼が知る由はない。

 

「ほら上げてけよ虫けらァ!!」

 

「ふん」

 

鬼神のごとき戦いぶりを見せるレーヴァテインの横に並んで馳せるのは叢雲。すれ違う敵、前方の敵、全てを走りざまに一太刀で斬り伏せる。剣光は一瞬。敵を切る度に、その剣速は加速する。

 

集中に時間を費やすことで抜刀時の剣速、切れ味を増す伝家の宝刀、破真を使いこなすために彼女は幼少期から厳しい鍛錬を重ねてきた。だが戦闘中に前線で集中し、刀のポテンシャルを引き出す余裕などない。それ故に刀の力に頼らぬ地力の成長は六華閃の中でも特に求められるのが天峰家だ。

 

レーヴァテインが天才なら、彼女は秀才である。ひたむきに剣と向き合いその力を引き出す一方で、自己の鍛錬で刀に頼らない己の腕も磨き上げてきた。生真面目さもまた、彼女がレーヴァテイン達と肩を並べんとする実力の一因だ。

 

「…」

 

気合の一声もなく、集中に費やす彼女の太刀は固い殻に覆われたプラセクトだろうと問答無用で断ち切る。横合いから飛び出す二体も抜刀の勢いに任せて体を回転させまとめて斬。レーヴァテインが力強い剣であるなら、叢雲は軽やかな刀だ。レーヴァテインのような派手さはないが、一体一体確実に仕留め進む。

 

「さあ、本丸と対面だ!」

 

自身の攻撃でちぎれ顔面目掛けて飛んできた殻の欠片を噛んで掴むレーヴァテイン。ぷっと吐き捨て、セラフィカが輝くと背部の円環から炎の翼が生まれ、彼女の戦いの舞台を空へと押し出す。飛翔の間に次々にすれ違う虫を切り裂く彼女は亜空間から重厚で絢爛な鞘に納められた一振りの剣を引き抜く。

 

「天星光剣の力、腹いっぱい味わいな!!」

 

無窮の輝きを放つこの剣こそ、初代レーヴァテインが打った最高傑作であり歴代当主が代々受け継ぐ当主の証。幾千年以上にもわたり幾千の戦いを潜り抜けてきた剣の力が今、解き放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

「すげえ…」

 

ガルドラボークさんの魔法を受けて加速し、空へ飛び出すレーヴァテインさんの無双っぷりに俺は思わず目を奪われていた。

 

レーヴァテインさんだけではない。ガルドラボークさんもロスヴァイセ先生以上の多彩な魔法を放ち敵を滅し、叢雲さんも敵を片っ端から居合抜刀で目にもとまらぬ速さで切り捨てていく。これが武器職人の頂点に立つ三人の六華閃の真骨頂。当主三人の共闘など、過去にも稀な光景だろう。

 

「何を呆けているのです!」

 

意図せず走るペースが遅くなったことに気づいたのか、叢雲さんから喝が飛んできた。

 

「!」

 

「ここに来たのは全て妹さんの為でしょう!なら、味方の戦いにゆっくり余裕を向けるはずはないはず!あなたの妹さんを救ってください!」

 

…そうだ、俺は凛を救うためにここにいる、ここまで来た。親類を救えなかった叢雲さんはその後悔を願いに変えて俺に託そうとしている。ならば俺がやるべきことは、進むことだ。

 

「…はい!必ずッ!!」

 

強者の喝を背に受けた俺は更に心を奮い立たせ、更なる戦いへひた走る。

 

〈BGM終了〉

 




ドレイクは決戦仕様らしく、ライフル二丁持ちです。

意外と出番が少ないヒミコ魂は能力が悪魔特攻なところもあるので、乱戦状態だと味方を巻き込む可能性があって使えない感じです。

次回、「入城の挨拶」
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