ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

201 / 208
エボルXのカラーリング正統進化感あって好き。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
2.エジソン
3.ロビンフッド
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
40.ジャンヌ
46.ノーベル
50.呂布




第187話「入城の挨拶」

〈BGM:フィジカルギフテッド(呪術廻戦)〉

 

『ならし運転は一度、実戦は初の使用ですが…』

 

蜂のような羽音を立てて軽やかに飛ぶライトニングホーネットレイダー。プログライズキーに合わせた黄色のカラーリングのアタッシュアローを手に、同じく飛翔するプラセクト達を切り刻む。初使用の不慣れさを感じさせない軽快な動きに、プラセクト達は彼女を捕捉できず一方的に翻弄されていた。

 

『成程、やはりスタッグキーより馴染みそうですね』

 

プラセクトは人より何倍も大きな巨体と堅牢な甲殻を持つものが多い。その為に防御と巨体にものを言わせたパワーに優れているがスピードは鈍い。その一方でイレブンは飛行の為に装甲を軽量化しており、パワーと引き換えに身軽な立ち回りが可能だ。そこに固い殻を容易に斬り裂ける刃があれば、何ら恐れる要素はない。

 

迫りくるはスズメバチ型のプラセクト。耳障りな羽音を攻撃的に上げ、腹部先端から突き出た凶悪な針をさながらフェンシングのように突き立て襲ってくる。

 

だがそれら全て、彼女を射止めるには能わず。ホバリング飛行を活かした小回りの良さで攻撃をすり抜け様に腕を切り落とし、返す刃で首をも落とす。

 

小回りと鋭利な刃を両立させる彼女は、空の戦闘に置いて無類の強さを発揮していた。そして彼女の武器は、近距離用だけではない。

 

胸部装甲から蜂型ミサイル『へクスベスパ』を遠方にいる個体目掛けて射出。働きバチたるそのミサイルは、女王バチたるイレブンの意のままに動く。へクスベスパの大群はミサイルらしからぬ、さながら本物の蜂のような生物的な軌道を描きながらプラセクトを攪乱。

 

「!?」

 

巨体に纏わりつくように張り付くと動きを鈍らせ爆散、その小ささからは予想もつかない威力の爆発でプラセクト共を撃墜していく。だが虫の進撃は止まらず、燃え盛る爆炎の中からプラセクトが数体抜けてくる。

 

〔チャージライズ!フルチャージ!〕

 

ホーネットレイダーは一度アタッシュアローを折りたたみ、再度アローモードへ変形。レバーを引き絞ると先端の銃口に黄色のエネルギーが収束していき、狙いを定める。

 

〔カバンシュート!〕

 

レバーを放し、エネルギーを開放。迸る光の矢が空駆ける流星のごとく生き残りを悉く射抜き、沈めていった。多くの敵を葬ってなお、彼女の攻め手は緩むところを知らない。今度は新たなプログライズキーをアローに装填する。

 

〔ELECTRIC〕

 

〔Progrise key confirmed. Ready to utilize. Girraf's ability〕

 

待機音とエネルギーの増幅が加速し、弾けるエネルギーが電撃になって周囲に迸る。スパーキングジラフの力を込めた一矢。その狙いの先は。

 

「道を空けなさい」

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

八本の足を器用にかつ狡猾に使いこなすクモ型プラセクト。その鋭利な脚の猛撃をフルボトルバスター バスターブレードモードで弾きながら応戦する。パワーに特化したエボルタンクフォームはスペック上では勝るが、時折俊敏な個体の動きに翻弄されることもあった。

 

『ちぃ、慣れぬ装備をいきなり使うものではないな』

 

脚にエネルギーを集中させ、一瞬だけ高速移動を発動。あっという間に間合いを詰めたエボルはプラセクトがそれに気づくよりも早く、柔らかい腹部に必殺の砲撃を見舞い沈めた。

 

戦闘自体に問題はなく、プラセクトを順調に撃破できている。しかし今、彼女の顔をしかめさせているのは重厚なパワースタイルのフォームという彼女自身の戦闘スタイルのずれだ。

 

背後からの気配。振り向くまでもなく、戦車を模した肩部装甲が回転して砲撃。不意を突かんとする不埒者を撃ち落とした。

 

一体倒してまた二体。戦いも、そして彼女の進撃もまだまだ終わらない。

 

〔ヘッジホッグ!フルボトルブレイク!〕

 

『はぁっ!』

 

砲口に収束した白いエネルギーを無数の針状の弾丸に変換して発射、射線上の敵全てを撃ち貫く。甲殻を貫通する鋭利さの前に為すすべなく、体液を散らして朽ちていった。

 

そうして作った道を彼女は前進する。それをすぐさま立ち塞がんと瞬く間にどこからともなく出現したプラセクトだが。

 

〔海賊!フルボトルブレイク!〕

 

再びバスターブレードモードに変形。海賊ボトルを装填し、波打つ水のエネルギーを纏わせ豪快に薙ぎ払う。閉ざされた道を切り開きながら進んでいく。

 

〔ユニコーン!カブトムシ!ジャストマッチデース!〕

 

装填したフルボトルから溢れ出すエネルギーを纏った刃で突きを繰り出し、そのままカブトムシのごとく豪快に投げ倒す。

 

〔シカ!トラ!マイク!ジャストマッチデース!〕

 

今度はバスターキャノンモードで必殺技を発動。撃ちだされたエネルギーがシカとトラを象ると、何故かどこかで聞いたことがあるようなメロディーを波動として放出しながら進行方向上の敵をなぎ倒す。エボルの攻撃はまだ終わらない。

 

〔ライオン!ウルフ!タカ!ミラクルマッチでーす!〕

 

砲口から打ち出された3つのエネルギー。それぞれフルボトルに込められた動物を模したエネルギーが縦横無尽に駆け回り、爪を振るってはプラセクトに荒々しくも食らいつき、戦場をかき乱す。

 

彼女が決戦用に選んだ武装はフルボトルバスター。最大4つのフルボトルを装填し、混ぜ合わせてより強力なエネルギーを扱うことができる。出力は勿論だが何より、スチームガンより同時に使用できるボトルの数が増えたことでより多彩な攻撃が可能になった。

 

このベルトの力だけでも十二分に敵を圧倒できるがそれだけでは肩慣らしには不十分だ。ふと、この肉体に宿した異能を試したくなった。

 

彼女の目に、ミラクルマッチブレイクから幸運にも逃れた一体が目に留まった。それ目掛けて跳躍し、体に漲る異能…呪力を込めた拳を繰り出す。直撃、インパクト同時に虫は悲鳴を上げる間もなく一撃でぶちっと破裂するように木っ端みじんに破壊された。

 

『っと…呪力の操作は上々、変身中でも問題なし。呪力による身体強化と併用すればここまで威力が上がるのか。恐らく黒閃は厳しいじゃろうが…』

 

飛沫を浴びつつも着地後、殴った手の感触を確かめるように開いては閉じ、拳に残る呪力の余韻を感じる。エボルタンクの素のスペックでも十分脅威的なパワーを発揮できるが、呪力が乗ることで更に倍以上に引き上げられる。イレブンより近接戦で劣る彼女でも、これだけのパワーがあれば恐れるものはない。

 

『これから骨の折れる相手をせねばならんのでな。もう少しウォーミングアップに付き合ってもらおうかの』

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーれ!」

 

仙術と魔法を混ぜ合わせたオーラの波動がドッジボールのように放り投げられ、着弾と同時に何匹ものプラセクトを葬り去る凶悪な爆発を起こす。まるで遊びに夢中になった子供のような無邪気な掛け声で球戯に明け暮れるのは黒歌だ。

 

「図体だけデカいばっかりで死神より張り合いがないにゃ。ねー、白音♡」

 

「集中してください」

 

素っ気なく返すのは小猫。言葉の内容とは裏腹に黒歌にしっかり返答を寄こすくらいの余裕を保ちながら、小柄な体からは想像もつかないパワーで次から次へと軽々しく殴り飛ばし、あるいは蹴り飛ばして道を作る。

 

「あらら、焼き鳥ちゃんも一緒に遊ぶ?」

 

肩をすくめる黒歌が次にロックオンしたのはレイヴェルだった。

 

「遊びではありませんわ!命を懸けた、真剣な戦いですわ!!」

 

客人の身ながら、居ても立っても居られないと前線に出ることを決意した彼女。リアス達に比べれば数段以上は劣るがそれでも上級悪魔の血族。炎の魔力を巧みに操って放ち、プラセクトを硬い殻ごと焼き尽くす。それでも打ち漏らした個体は小猫がフォローを入れて片付けていく。

 

戦闘に慣れた黒歌や小猫とは違って経験が不足している彼女は、そのまじめな性格もあって慣れないながらも必死に乱戦を立ち回っていた。自分から志願してこの戦場に立っているのだ。仲間の為にも、自身の為にも、一人怖気づいて後ろに引っ込むことなどできない。何よりここで逃げては、一誠達の隣に立つ資格がない。

 

「行きますわよ!」

 

兄と同じ炎の翼を広げ、その羽ばたきと共に豪炎の礫をまき散らし広範囲を焼く。火の手から逃れ損ねたプラセクト達は漏れなく焼かれ、力なく倒れ伏していく。

 

そんな彼女の内心に抱える必死さを、黒歌は見透かしていた。

 

「にゃはっ、そんな堅苦しいまんまじゃ、うまく立ち回ることなんてできないけどねー」

 

「何ですって~!?」

 

懸命に戦う自分をおちょくるような物言いにレイヴェルは眉を吊り上げ、黒歌の方へ振り返った。向こうだって他と比較しての自身の力不足は知っているはずなのに、何故連携を乱すようなことを言えるのか。必死さから爆発した感情に黒歌に食って掛かろうとした矢先。

 

「ほら」

 

「!」

 

頭が彼女への怒りでいっぱいになって気づけなかった。地中から飛び出し、彼女をからめとらんとする大型のミミズタイプの出現に。原種と違って刺々しいフォルムのそれが死角から襲い掛かろうとした所をすかさず黒歌が仙術を乗せた拳で撃ち沈める。

 

「あっ…」

 

それを呆然とレイヴェルは目を見開いたまま空から見ていた。言葉もなかった。黒歌のフォローがなければ間違いなくやられていた。怒りでいっぱいの頭は一瞬で真っ白になっていた。

 

「四方八方敵だらけ。こんな乱戦じゃ、ちょっとした動揺でいつ足元掬われてもおかしくないにゃ。一対一の決闘じゃないの。お堅い貴族の常識なんて捨てて、自由奔放に、余裕たっぷりに動き回るのが一番ってこと」

 

「…」

 

命を奪われていたかもしれない動揺から未だ立ち直れずにいるレイヴェルの手をそっと取る黒歌。柄にない優し気な笑みは、彼女が唯一の肉親の友だからか。

 

「わかったら、一先ずは私たちに付いてフォローに徹してみなさい。戦い方を見て勉強することねん。お嬢様ならお勉強、得意でしょ?」

 

「…わ、わかりましたわ…」

 

「素直でよろしい」

 

こつんと優しくレイヴェルの額を突いて、黒歌は笑う。姉が他人にその様子を白音は意外だという表情で見ていた。

 

「…レイヴェルにも教えるんですね」

 

「だって、こんな真面目な子おちょくらなきゃ損じゃん?もしかして、今度はお友達を取られるんじゃないかって妬けちゃった?」

 

「…」

 

自由気ままで悪戯好きの彼女にとって、真面目な優等生の反応は悪戯心をそそるかっこうの餌。それは妹だろうと例外ではない。レイヴェルに続いてつんつんと顔をつつく姉の推察に小猫は顔を逸らし無言を貫く。

 

「図星みたいね。なら二人そろって、もっと踏み込んであんなことやこんなこともしっぽり教えちゃおうかしら~?」

 

「拒否します」

 

つい赤くなった顔を隠すように背け、素っ気なく返す小猫。あらまと肩をすくめる黒歌は狙いを別に定める。

 

「お友達もどう?」

 

「戦い方だけで十分ですわ」

 

レイヴェルの心の扉を開くのは、まだまだ先のことである。

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「舐めるなよ!」

 

「ハァ!!」

 

続く乱戦を果敢に戦い抜くのは強大な龍の力をその身に宿す二人、一誠と匙。迫りくるプラセクトを真正面から殴り飛ばす。今のは大きめの個体だったがグレートレッドの肉体を使って申請したこの体は劇的にパワーも潜在能力も上がっている。この程度、トリアイナを使うまでもない。

 

「邪龍の黒炎《ブレイズ・ブラック・フレア》!龍の牢獄《シャドウ・プリズン》!」

 

解呪の難しい呪の炎が次々に立ち上り、プラセクト達を捉えるのではなく直に焼き、呪い焼き殺していく。二つともグリゴリによって後天的に移植された神器だ。生来宿した神器と同じヴリトラ系の神器だが、後天的に移植されたものを使いこなすには相応の努力が必要となる。

 

それでも匙は今、肩を並べて戦う目標の男に追いつきたい一心で訓練を積んできた。寿命を削るヴァジュラの雷や暴走の危険をはらんだ龍王変化(ヴリトラ・プロモーション)に頼らない戦闘の手段が自身の成長に必要だと判断したからだ。血のにじむ努力の結果、こうして実戦で振るえるレベルに引き上げることができた。

 

「はぁ…なあ、何匹倒した!?」

 

「覚えてねえよ!」

 

何体倒したか数えるのも馬鹿らしいほど拳を振るい沈めてきた。大元の豪獣鬼は遠方で六華閃の三人が叩いているが、元の豪獣鬼のタフさにユグドラシルによる強化が入った個体だ。すぐには片付かないだろう。

 

このままではアルルに辿り着く前に気も力も使い果たし、ばててしまう。ここは多少強行にでも突破をと考えた矢先、二体のプラセクトが強襲を仕掛けてきた。

 

「!」

 

それに構えるより先に、背後から高速で飛んできた白い光弾が眼前の二体を撃ち沈めた。それに驚く二人はばっと振り返る。

 

「まだまだ甘いな、兵藤一誠」

 

「ヴァーリ!」

 

思わぬ援護射撃を放ったのは同じ二天龍のライバル、ヴァーリだった。光の翼を悠然と広げ、かつて相対した時と同じように空の高みからこちらを見下ろしてくる。

 

そんな彼の背後によぎった陰にいち早く一誠は対応。ドラゴンショットを放ってカブトムシ型のどてっぱらに命中させ撃墜する。

 

「そっちだって甘いんじゃないのか?」

 

「譲っただけだけのことだ」

 

一誠とは違い、こちらはそれも予測していたのだと彼は鼻を鳴らして返す。

 

「龍神と真龍の力を手にしてより龍の気が増したな。…だが浮かれるなよ、まだ君を俺より完全に強いとは認めるつもりはない」

 

びしっと一誠を指さすヴァーリ。自身の確たる意志を示すように。

 

「何故なら君は赤龍帝で、俺は白龍皇だからな」

 

「そうかよ。だったらぐうの音も出ないくらいもっと強くなって、認めさせてやる!」

 

「俺も同感だ。お前たち天龍には及ばない龍王でも意地ってもんがある。下の位に甘んじる気はないぜ!」

 

ヴァーリの言葉が、乱戦で摩耗しつつあった一誠の心に火をつけた。魔王ルシファーの血族であり、二天龍の片割れでもある男。こんなにも強大なライバルがいるのだ。なら、雑魚に足引っ張られて息を上げていてはいつまでたっても追い抜くことなんてできない。

 

そしてそれは匙も同じこと。ライバルと認めた男と、さらにそのライバルと宿命づけられた男。いずれも誰もが認める強者だ。目指すレベルは依然として遠い。ならばここでくすぶっていては肩を並べることなど夢のまた夢。故に彼は燃やす。龍として、兵士としての意地を。

 

「…なら、競争と行こうか」

 

すっとヴァーリは、プラセクトが進軍してくる方向、その奥にある大きな巨塔を指さす。その中できっと大将は待ち構えている。

 

「どちらが先にあの城に辿り着くか。シンプルだろう?」

 

こんな状況でも戦いを楽しみ、さらに楽しさを生み出そうとするライバルの言動。だが一誠はそれに突っ込むことはしなかった。これまでの付き合いで、誰にも捻じ曲げられない彼の人となりと矜持を理解したからだ。

 

「いいぜ、負けても後で文句言うなよ!」

 

だから一誠はその挑戦に真正面から受けて立った。それが彼に自分の意志を伝える、言葉以上の手段だから。

 

その眼前にはプラセクトがわらわらと群れて向かってくる。個体に統一性はなく、モデルもサイズもバラバラ。まるで二人のやり取りに水を差すがごとく、耳障りな奇声を上げて威嚇してくる。

 

「こちらの台詞だ」

 

動き出したのはコンマ秒単位で同時。爆発したような音を上げて赤いオーラと白いオーラ、それぞれの力の波動を放出しながら目指すべきゴールへ突き進む。

 

「モードチェンジ!『龍星の騎士《ウェルシュ・ソニック・ブースト・ナイト》』!!」

 

体内の兵士の駒が騎士へ昇格し、背部装甲のブースターの数が倍加。スピードもまた倍増し、プラセクトの反応すら置き去りにして隙間を縫うように爆進する。

 

「!!」

 

進行ルートの真正面に偶然にもナナフシ型のプラセクトが立ちはだかる。それを認めた一誠はブースターの噴射をあえて一時的に止め、勢いを落とさぬままスライディングし、腹の下を潜り抜けた。そして突破と同時に再びバーニアを吹かせてその噴射をプラセクトに浴びせて吹っ飛ばし、自分は更なる猛進を続ける。

 

爆走、突破、猛進、ブッチギリ。誰も一誠と止めることはできない。

 

「これが、トリアイナ…」

 

「速いな!紅の鎧にならずともこれ程とは…!」

 

後れを取ったヴァーリは遠ざかるライバルの姿に思わず喜びに口角を吊り上げた。かつては親を殺そうとしてまで成長を求めたライバルが、今こうして予測もつかない方向へ成長を遂げ自身を圧倒するまでの域に達している。

 

「なら、俺も白銀を使わずとも…!!」

 

『負けていられないな』

 

ヴァーリとアルビオン。両者の高揚する心が更なる力を生み出す。全身から迸る圧倒的な白い光を推力に彼もまた空を駆ける。寄せ来る敵は全て体から放出するオーラで吹き飛ばし、一切を寄せ付けない。

 

地上を駆ける赤い流星と、空を滑る白い彗星。小難しい理屈も技もいらない。ただ純粋なパワーと速度で二人は切磋琢磨し、追い抜かんと進む。

 

「おーい、待ってくれよ!!」

 

強さに追いつきたいとは思ったが、競争に追いつきたいとは言っていない。二天龍の競争に置き去られた匙も一人、ヴァーリが残したプラセクト達なき轍を踏んで追っていく。

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつら、勝手に突っ込みやがって…!」

 

眼下で行われる二天龍の派手な競争に呆れて息を吐くのはアザゼルだった。両隣にアーシア、ギャスパーというサポート要員を控えさせながら、自身も光の槍を振るい向かい来るプラセクトの迎撃にあたる。

 

「はっ!」

 

光の槍で薙ぎ払い。堕ちてなお眩い軌跡を描いてプラセクトの頭を切り裂き、閃光が命を呑みこむ。その間迫るトンボ型の鋭利な顎での食らいつきを。

 

「よいしょ!」

 

槍で受け止め、背負い投げの要領でぶん投げ、その勢いのままに体を回転させて勢いをつけてから槍を投擲。腹に風穴空けられ、あえなく墜落していった。

 

歴戦の雄。最近は研究に没頭し、隻腕となった彼だが堕天使を率いて大戦を生き抜いたその腕とセンスはまだまだ衰えてはいない。乱戦を凌ぐことなど彼には容易い。そして彼の仕事はただ目の前の敵を討つことだけではない。

 

「アーシア、7時の方向、ゼノヴィアに飛ばせ!次は10時の方向、リアスだ!」

 

「はい!」

 

アザゼルの指示を受け、アーシアが両手に溜めた緑色の波動を飛ばす。指示通りの方角にいたゼノヴィアにそれが触れると、背中の傷がたちまちに塞がっていく。それに続いてリアスへも飛ばし、即座にフォローを入れる。

 

「ギャスパー、3時の方向、ムカデを止めろ!」

 

「は、はい!」

 

今度はギャスパーの停止が発動。うねりながらも背後から忍び寄るムカデ型のプラセクトの動きがぴたりと止まり、そこにアーサーが駆けつけ鮮やかな手つきで輪切りにしてしまう。

 

乱戦で敵味方入り乱れる中で眼前の敵を排除しつつ、味方の動きにも注意しフォローの指示を飛ばす。それはこの場においては長年幾千の軍勢を率いる組織の長であったアザゼルにしかできない芸当だ。

 

「六華閃の連中、偉い暴れっぷりだな。当代が敵じゃなくて良かったぜ」

 

それに奮闘しているのは六華閃だけではない。教え子のリアス達も、一度は離れたが今はまた別の繋がり方をしているヴァーリ達も、腹の底は見えないまでも同じ目的のために命を張っているポラリス達も、必死にこの戦局を乗り越えようとしている。

 

「俺もちょいと奮発するか」

 

一息で練り上げ、高めた光力を一瞬にして無数の槍に変換。ずらりと空中に並べられたそれらは寸分たがわずプラセクトたちへ矛先を向けている。そしてアザゼルの合図で逆降る五月雨のように空飛ぶ虫たちに射出し串刺し、貫き、無数の物言わぬ亡骸に変える。

 

「…しかしこのままじゃジリ貧だ」

 

豪獣鬼の登場は想定出来てはいたが、プラセクトの生産能力を備えていることまでは想定できなかった。これでは突破のために戦力のいくつかを裂かれることは免れない。泥沼にはまる前に、戦況を変える一手を導き打たなければ。

 

考えろ、もっと戦況を見ろ。目の前の敵を討つだけではなく、サポートの二人を預かる自分だからこそ、見えるものがあるはずだ。

 

ふと豪獣鬼の方へ見やる。そこでは凄まじい剣圧を放つレーヴァテインと大規模な魔法を展開するガルドラボークの奮闘が遠目からでも見えた。その表皮からはやはり絶えずプラセクト達が量産され続けている。生れ落ちたそばから本能で敵を理解しているのか、真っすぐに自分らの下へ前進してくる。

 

「…いや待て、数が減ってる?」

 

戦闘開始時に見た生産の光景よりも、そのスピードが明らかに落ちている。体感3分の一程度。量産し続けたことで豪獣鬼が疲労しているのか、はたまた六華閃達が大きなダメージを与えている影響か。

 

理由は明確にはできない。しかしこれだけはわかる。

 

「なら、今がチャンスか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

〔ダイカイガン!エジソン!オメガドライブ!〕

 

バチバチに高めた霊力を迸る電撃に変え、全身から放出。周囲を取り囲むプラセクトを空中地上問わず巻き込んで一網打尽に感電させ、焼き焦がす。

 

プスプスと煙を上げて倒れ伏す大量のプラセクト達だが、彼らを顧みる余裕はない。減った分を補うようにまた新たなプラセクト達が出現し俺の前に立ちはだかって来る。

 

「くそ、いつまでこんなことを…!!」

 

ごろごろと足元に転がって来た虫の亡骸の欠片を乱暴に蹴とばし、ガンガンセイバーの射撃でプラセクトをけん制する。

 

さっきから雑魚ばかり。叶えし者共は出てくる気配もない。こんなところで道草食ってちゃいつまでも凜の下には…!!

 

募る焦り、苛立ち、そして敵を一体討つたびに小さくとも積み重なる疲労。それらがじわりじわりと俺の足に枷をかけていく。

 

「!!」

 

そんな心の靄を切り裂くように、上空に天を裂くような長大なる光の柱が立ち上った。一目でわかる、あれはゼノヴィアのエクスデュランダルじゃない。あいつでもあれだけの出力は出せない。あの発生源の方角には、確か豪獣鬼と交戦している六華閃がいたはずだ。

 

「オラァ!!」

 

「GOGAAAAAAAAA!!!」

 

それを自在に振り回し、豪獣鬼に叩きつけるレーヴァテインさん。絶大な威力を秘めた剣戟の前にけたたましい叫びを上げる豪獣鬼の体が大きく揺れ、態勢を崩した。小細工も能力もなく、ただあの強大なパワーを維持したまま継戦する姿はまさにゼノヴィアが理想にする剣の究極だろう。

 

…っと。ついまた六華閃の戦いに注意が行きそうになってしまった。やはり六華閃の当主なだけあって、戦いに華がある。これではまた叢雲さんに叱られてしまうな。

 

また意識を戦いに引き戻そうとふと通信魔法が繋がった。この決戦のために用意しておいたチャンネルだ。

 

『お前ら聞け!六華閃が豪獣鬼を叩いてくれてるお陰か知らんが、プラセクト共の生産ペースがかなり落ちてる!』

 

「!!」

 

その情報で俺ははっと気づかされた。ただひたすら目の前の敵を討つことだけに集中することを強いられ、戦況の把握

 

『今がチャンスだ。多少強引にでも突出するぞ!!』

 

アザゼル先生の言葉が、俺の心を再点火した。

 

「合点承知!」

 

〈BGM:仮面ライダースペクター 攻勢〉

 

瞬時にすべきことを導き出した俺は、素早く眼魂を入れ替えビリーザキッド魂にゴーストチェンジする。

 

〔カイガン!ビリーザキッド!百発百中!ズキューン!バキューン!〕

 

どこからともなく飛来してきたバットクロックをガンガンセイバーに合体。ライフルモードへと変形させ、柄部のエナジーアイクレストをドライバーにかざした。

 

〔ダイカイガン!ガンガンミナ―!ガンガンミナ―!〕

 

そして続けざまにドライバーのレバーを二度引く。

 

〔ダイカイガン!ビリーザキッド!〕

 

急速に高まるブラウンカラーの霊力が俺の背後で大きな目玉の紋章を形成し、それが一気に銃口に注がれていく。キィーンと耳をつんざくような、かつてない攻撃の予兆を起こしながら。

 

〔オメガ・インパクト!オオメダマ!〕

 

ビリーザキッド魂の最大火力。眼魂のエネルギーを使い果たし一定期間使用不能になる秘技『オオメダマ』を併用し、限界まで高めた霊力を照射。その威力の反動で体が仰け反りそうになるが、どうにか腰に力を入れて耐え抜く。重く、眩く、熱い極太の光線が射線上の一切合切を消し飛ばし、道を作った。

 

「ハァ…ちょっと今のは無茶だったか…」

 

急激なエネルギーの消耗で、肩に重荷がのしかかったような感覚。少し乱れた息を整える一方で全霊力を使い果たしたビリーザキッド魂のパーカーの色が灰色に変化していく。

 

武器側のダイカイガンとドライバーのオオメダマの併用はコカビエル戦以来だったか。俺の成長に合わせて大分威力が跳ね上がったように見える。霊力を使い切る性質上、模擬戦でもそう使えない技だから気づけなかった。

 

〔アーイ!カイガン!ノブナガ!我の生き様!桶狭間!〕

 

その労をねぎらうように俺はビリーザキッド眼魂に瞑目するとノブナガ魂にチェンジし、俺は拓いた道を突き進む。

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

悠河や二天龍が独自に進撃を始める一方、司令塔たるアザゼルの下に続々と戦士たちが集まろうとしていた。

 

「アザゼル、今のは本当!?」

 

朱乃とイリナを伴って、リアスが飛んでくる。横合いから茶々を入れんとするプラセクトを滅びの力で消し飛ばしながら。

 

「多分な!六華閃達が暴れてるのがいい具合に影響が出ている!」

 

そこに猫又姉妹とレイヴェルも加わる。

 

「なら、行くっきゃないっしょ!」

 

軽快な体術で敵を蹴散らす黒歌の意見にこくりと頷くアザゼルは、眼下で戦いを繰り広げるゼノヴィアに指示を飛ばす。

 

「ゼノヴィア、もう一回思いっきりぶちかませ!」

 

「任せろ!」

 

勢いよくエクスデュランダルを天高く掲げるゼノヴィア。刃身がスライドし、聖なる力をチャージし始める。だがそれをプラセクト達が許すはずもなく、本能で察知した危険の根源に向けて迫る。

 

「!」

 

それを次々に一刀両断する俊敏な影が二人。その影が駆け抜けた跡、プラセクト達は固い甲殻を難なく切り裂かれ、あえなく大地に伏していった。

 

「今はエクスデュランダルの力に頼らせてもらいましょうか」

 

「僕たちが時間を稼ぐ!」

 

アーサーと裕斗。各チームが誇る二大剣士が彼女の前に躍り出て、聖剣を手にして鮮やかな剣技で狂虫を矢継ぎ早に屠る。

 

「やりますね」

 

「そちらこそ!」

 

交わす言葉は少なく、切り捨てる敵は多く。二人の剣士が競い合うように派手な露払いを披露する。神速の剣に追随できるものはいない。

 

「あー、俺っちを置いてけぼりで盛り上がっちゃってんな」

 

「彼らだけに任せるつもりはありません」

 

「そうね、私たちも援護するわよ!」

 

「了解!」

 

遅れてきた美猴とソーナそれを見たリアス達も、ゼノヴィアのフォローに入るべく、密集して円陣を組み、周囲の虫たちを撃滅していく。

 

水の魔力、如意棒、滅びの魔力、雷光、仙術。それぞれの個性を体現する攻撃が次々に降り注ぎ、振るわれ、数多の虫を蹴散らす。おかげでゼノヴィアは渾身の一撃の準備を難なく終えることができた。

 

「これだけ溜めれば…!」

 

柄を握る力を強め、一気に開放。光の大樹が空目掛けて咲き誇る。

 

「エクスデュランダルよ、私たちの道を!切り開けェェェッ!!!」

 

裂帛の気合を叫び、長大な光を前方めがけ振り下ろした。

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊力を足に集中させ、ただひたすらに全力疾走する。鬱蒼とした森はプラセクトによって無残に踏み荒らされ、その上で戦火に焼かれたことで更地と化していた。

 

何もない野にぽつんと、しかし圧倒するような存在感を放つ巨塔へ向かう。やっとだ、やっと戦局が動き出した。このチャンスを逃す手はない。そう思う気持ちが、俺の走りを更に加速させる。

 

〔ドラゴン!電車!ジャストマッチデース!〕

 

「!!」

 

背後からふざけた電子音。直後、高速で走る電車型のエネルギーが線路を引きながら隣を爆走し、龍を伴って車線上の敵を轢いていく。

 

今の音、フルボトルバスターだ。ということはポラリスさんか?

 

威力と速度は衰えを知らず、破壊の特急列車は真っすぐに巨塔へ向かっていく。それがいよいよ入口に乗り込もうかという矢先、突然エネルギーが弾けて派手な爆発を引き起こした。

 

「なんだ!?」

 

突然の現象に俺は驚いた。だがその理由は爆炎が晴れると同時に直ぐに理解できた。魔法文字がびっしり刻まれた光が塔の入り口を守っていたからだ。

 

「結界か!」

 

「当然、用意はしていたか」

 

「この結界大きすぎんだろ…!」

 

驚いたのは俺だけではなく、この現象に舌打ちするヴァーリと、塔を守る結界のサイズに圧倒される兵藤。…ん?

 

「お前ら、いつの間に…!」

 

「ああ。今回は俺の勝ちだな、兵藤一誠」

 

「いーや、俺の方がちょっとだけ速かったぞ!」

 

いつに間にいたと思ったら俺を放って喧嘩し始めた。こいつら何しに来たの?この戦況で何を勝負してたんだ?

 

あーだこーだとしょうもないことで盛り上がる俺が二人を詰めようとした矢先、更なる仕掛けが明らかになる。

 

地面が突如まばらに盛り上がり、地中に隠れていたプラセクトの援軍がさらに出現する。数百はくだらない頭数でこちらを一斉に睥睨し耳障りな啼き声を上げて威嚇してくる。

 

「まだ仕込んでいたのか!」

 

「くっそ、せっかく道が開けたのに!」

 

ここまで来てまた足止めを喰らうのか。とことん俺達を削りたいみたいだな向こうは!

 

ようやく乱戦を抜けて来たのにまた乱戦。一向に打破できず、またしても振出しに戻り変わらない状況に俺達が歯噛みする中で。

 

『そう悲観するな、ここはお主らのやり方に準ずるが吉と見た』

 

遅れて現れたのはポラリスさんが変身するエボル。やはりフルボトルバスターを片手に現れると、空いた手で四本のフルボトルを指に挟み、それを俺達に見せた。

 

「…ゴリ押しか」

 

『ああ。大勢の出迎えじゃ。ならこちらも挨拶くらいせねば無礼というもの』

 

そして四本のフルボトルを矢継ぎ早にフルボトルバスターに装填していく。

 

〈BGM:仮面ライダースペクター 進撃〉

 

〔タンク!ガトリング!ジェット!潜水艦!アルティメットマッチデース!〕

 

「なら俺も!」

 

〔Change Fang Blast!〕

 

銃口にエネルギーを蓄え、攻撃の準備を始めたエボルに続いて兵藤は僧侶に昇格。鎧のバックパックの形状が変化し、二門のキャノン砲がせり出す。

 

『僕も忘れてもらっては困る』

 

上空にて、赤い光条を散らしながら向かってくるドレイクさんがドライバーを操作し、一気に出力を上げて二丁のライフルの銃口にエネルギーを集中させる。

 

「力比べか。侮るなよ」

 

ヴァーリも両手を前方に構え、白い波動を集中させていく。こちらもそれに応じてガンガンハンドをドライバーにかざし、アイコンタクトを行う。

 

『ダイカイガン!ガンガンミロー!ガンガンミロー!』

 

高まる霊力。それに応じて自身の周囲に多くのガンガンハンドの実態ある幻影が生まれ、光を蓄えた銃口を一誠に向けた。

 

『オメガスパーク!』

 

「ドラゴンブラスターッ!!!」

 

〔アルティメットマッチブレイク!〕

 

〔IGNITION DRIVE〕

 

それぞれの銃口が一斉に業火を吹いた。無数の光、弾丸が次から次へ激流のごとくプラセクトの軍勢を荒々しくぶち抜き、そのまま結界に撃ち込まれていく。この怒涛の集中砲火の前に、頭数などまるで意味をなさなかった。

 

ゴリ押しに次ぐゴリ押しに次ぐゴリ押しに次ぐゴリ押し。耳が割れんばかりの爆音と光が瞬く。それぞれの最大火力をぶつけたことで結界が悲鳴を上げるように明滅し、ついには粉々に砕け散った。

 

そして俺たちの攻撃は勢いを殺さぬまま結界を抜け、扉へと着弾。周囲の外壁を大きく吹き飛ばす大規模な爆発を巻き起こした。

 

「手ごたえアリだな」

 

もくもくと立ち上る煙。その確かな破壊の実感を噛み締めていると、後ろに続々と感じ慣れた気配が降り立ってくるのがわかった。

 

「一足遅れたようね」

 

部長さんたちを始めとしたグレモリー眷属にソーナと匙、ヴァーリチームにレジスタンスの面々が到着していく。ゼノヴィアはイグアナストライカーの背に乗り、乱れた息を整えて降りてきた。あの消耗具合はエクスデュランダルの力をまた解き放ったのだろう。

 

唯一匙だけ、肩で息をしてぜーぜー呼吸を漏らしていた。

 

「くっそ…お前らもうちょいゆっくりにしてくれても…」

 

「これで泣き言を言っては龍王の名折れだな」

 

「何ぃ…!?」

 

泣きっ面に蜂とはこのことか。息も絶え絶えながらもかちーんと頭に来たらしく、ヴァーリの一言に眉を吊り上げる匙だったがそれを会長さんが諫めた。

 

「匙、悔しいですが彼の言う通りです。あなたも、いや、私たちももっと強くならなくては」

 

「会長…」

 

険しい表情で決意を新たにする会長さんの言葉に、匙がこれ以上の言葉を紡ぐことはなかった。力に優れた俺達グレモリー組に対し、シトリー眷属は智に優れている。その為どうしても個々の戦力、まとまりとしての戦力では劣る。前線での戦いを余儀なくされることが多い俺達とはまた別の理由で、彼女らは強くなることに意欲的なのだ。

 

「しかし俺らが来るより先に結界を破っちまうなんてな…何をしたんだ?」

 

「「「「「ゴリ押し」」」」」

 

「だろうな。うん、そうしかないよな」

 

声を揃える俺たち下手人に先生は呆れ気味に笑った。

 

「かくいうそちらも後先考えないごり押しでこちらまで追い上げたんだろう?」

 

「まあな。どうにかこうにか全員集まって突破力を上げることで強引に抜けて来た。だからこれからツケを払うところなんだが…」

 

ふと振り返る先生。その視線の先には、プラセクトの大群が180度方向転換してこちらに怒涛の勢いで向かっていた。

 

「わかってます、この場は私たちで引き受けますわ」

 

「僕も残ります」

 

「私も。ここはミカエル様のAにどーんと任せなさいな!」

 

朱乃さんに木場、紫藤さんが名乗りを上げてプラセクトの大群に剣を向ける。あれだけの数をたった3人で相手にしようとする彼女らの言葉と表情には恐れなど微塵もない。

 

「ヴァーリ、アーサー、黒歌、ここは俺っちに任せて行きな!こいつらだけじゃ役者不足だろうからな!」

 

「…すまない」

 

『イレブン、殿は任せたぞ』

 

『お任せください』

 

ヴァーリとポラリスさんも信頼する仲間に後を託し、俺たちはこれから攻め込んでいく塔を真っすぐに見据えた。その先にいる敵すら捉えるように。

 

「待ってろ、凛…!!」

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

その目覚めは外の戦闘の音を聞いたからか、はたまた一歩ずつ迫る戦いの予感を感じ取ったからか。

 

うたた寝をしていた赤い瞳が開く。

 

「…」

 

階段に降ろしていた腰を上げ、アルルは祭壇へ振り返る。

 

魔法陣の上にくまなく円を描くように置かれた英雄眼魂。その中央に鎮座するのは英雄の力を束ね増幅するプライムトリガー。既に魔法陣は心臓が脈打つように力強く明滅し、力が溜まり切るその時を待っている。

 

「さて、客人をもてなしてやらねばな」

 

広げた手のひらの中の魔法陣が高速回転し、その力を発動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼル達に託され、未だ魑魅魍魎跋扈する戦場に残った朱乃達。肩を並べ、大海の波のように寄せ来る軍勢を見据える。頭数で言うなら、比我戦力差は1000対1。豪獣鬼の量産スピードに陰りが見えているとはいえ、依然としてその物量は脅威だ。

 

「へへっ、一度はこういう台詞言ってみたかったんだよねぃ」

 

「わっかるー!浪漫ってやつよね!」

 

肩を如意棒でトントンと叩く美猴に、同調するイリナ。チームのムードメーカー同士、波長が合うようだ。

 

「そう言ったきり帰らなかった仲間を何人も見てきましたが」

 

「「えっ」」

 

その涼しい表情以上に冷えるイレブンの何気ない言葉に二人の顔が凍り付いた。苦い経験を幾度としてきた彼女にとってその台詞は重いものなのだ。

 

「でも僕たちはそうなるつもりはない」

 

『ガウ!』

 

聖魔剣を握る力を強める祐斗の前に朱乃が出る。イグアナストライカーもまたそれに追随し、圧倒的な数を前に闘志を奮い立たせるように唸る。

 

凜と構える女王は後を託し、託された王の役目を代行するがごとく、この場に残った者の指揮を取る心づもりでいる。

 

「早く片付けて、皆の加勢に向かいましょう。逆境こそ、私たちの奮闘を何よりも後押ししてくれますわ」

 

頭数の戦力差は天と地ほど隔たっているが、彼らにはその差を覆すだけの力と自信がある。でなければこの場に残る選択はしない。

 

冥界、ひいては世界の未来の為に。戦友の切なる願いの為に、彼らは戦うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ」

 

崩落した瓦礫の山をヴァーリが拳の一振りで吹き飛ばし、転がる瓦礫の礫で悪い足場を踏み越えながらも続々と俺たちは城の中へ足を踏み入れる。

 

「あーあー派手に壊れちまって」

 

破壊の余波で巻き上がった煙のせいで、外装と同様に神殿然したつくりの内装も薄汚れてしまっている。壁の所々も大きくひび割れ、元は芸術的ですらあったであろう風情の空間は台無しだ。

 

ん?どうして俺達がわざわざ丁寧に入口から侵入するのかだって?そのまま飛んで城の頂上に向かえばいいんじゃないのかだと?

 

外部の干渉を防ぐ結界を破壊した時点で、飛行能力でそのまま頂上まで行ってしまえばいいというのは至極当然のアイデアだ。どうせアルルもこの手のセオリーに従って天辺でふんぞり返ってるだろうしな。

 

入口から順当に昇っていくのは時間と労力の無駄。何が仕掛けてあるかもわからない以上、フーディーニやその他のメンバーはそれぞれの翼で外から飛んで侵入するのがベストというもの。

 

ズバリ結論を言うと、試しはした。俺らじゃなくヴァーリが、だ。結界をぶっ壊した後、そのままあいつ単身で高度を上げて頂きへ向かおうとした。

 

しかし一定の高さになった途端にあいつは空から叩きつけられるように落っこちてきた。ポラリスさんの解析によると、塔を中心に一定の範囲内の一定の高度から強烈な重力がかかる魔法が発動しているらしい。恐らくその発生源は塔の中。向こうはどこまでもズルを許さず、一方的な嫌がらせをしたいようだ。

 

「さて、ここからは手筈通りに戦力を分散する。全員まとまって動いて罠にかけられちゃ目に手も当てられないからな」

 

パンパンと手を叩いて視線を集めるアザゼル先生がこの場を取り仕切る。大分時間と手間がかかったが、やっとこちらの当初のプラン通りに動けそうだ。

 

「まずは俺、イッセー、悠、ゼノヴィア。次にリアス、ドレイク、小猫、アーシア」

 

名を上げられた順にそれぞれのチームに固まっていく。各班に一人は指揮を取るリーダー役、サポート役がいるという構成だ。俺の班は…俺が眼魂の能力を生かしたオフェンス兼サポート役だ。

 

「ヴァーリ、ロスヴァイセ、ギャスパー、黒歌」

 

「えー、白音と一緒がいいー」

 

「文句言うな、前持って決めたろうが」

 

打ち合わせで事前に決めたというのに未練たらたらな黒歌は口をへの字に異議を唱える。わがままな文句を突っぱねるアザゼル先生に黒歌はぼそりと。

 

「けちんぽ総督」

 

「俺の権限で駒王町出禁にしてもいいんだぞ!?」

 

「ちょっと、私の一存なしに出禁なんてどういうつもりかしら?」

 

何気ない黒歌の一言がアザゼル先生に火をつけ、さらに部長さんにまで延焼する。どうしてくれんだこれ。

 

「おい、お前からも何とか言ってやれ」

 

つんつんと俺が助け舟を求めたのはヴァーリ。リーダーなら仲間の監督もしっかりしてくれよ。俺の要請にやれやれと嘆息したヴァーリは。

 

「…黒歌。妹と行動したければ後でどうにかしてやるから今はこらえろ」

 

「ちぇー、ヴァーリにまで言われたらしゃあないにゃ」

 

口の形をへの字からさらにひん曲げ、ようやく引き下がった。このタイミングでわがまま主張するなんてやっぱりどこまで行っても誰にも縛られたくないフリーダム集団だこいつら。

 

「後でどうにかしてやるってどうするつもりだよ…」

 

それに黒歌を抑えたヴァーリの発言。こいつまた変なことする気じゃないだろうな。この自由人が来るとろくなことが起きないからマジで勘弁な。

 

「はぁ…まあいい、そして最後にポラリス、ソーナ、匙、アーサー。ベースは打ち合わせと変わらんが」

 

『うむ』

 

「各小隊で行動し、敵を倒しながら最上階に向かい、合流する。天辺にボスキャラがいるのはこの手のもんの定石だからな」

 

「お前にもわかりやすく言ったら、敵をなぎ倒していけば小猫と合流できるってことだよ」

 

「最初からそう言ってほしいにゃ」

 

「打ち合わせの時にもそう言ったよな…!?」

 

先生の説明に老婆心で黒歌に向けて捕捉してやったらこのざまだ。

 

こいつやっぱ一発殴っていいか…!?何気ない顔で俺らと手を組んでるけどまだ立場上は俺らに追われるテロリスト、の中でもさらに立場のないはぐれものだからな!?

 

「塔城さん、この上にアルルの気配は?」

 

「頂上に感じます。その下の階層にも、大きな気配が幾つか」

 

「…!」

 

それに加えて何を感じ取ったか、猫又姉妹がぴくんと耳を立て、急に足を止めた。

 

「待って、この部屋は不味いにゃ!!」

 

「どういうことだ?」

 

「凄い気の流れが向かってくる!」

 

「まさかいきなり幹部クラスが来るのか?」

 

その理由の全貌は、言葉ではなく事象で語られた。唐突に部屋の至る所に刻まれた魔法文字が発光し、この部屋全体に仕込まれた魔法陣の姿を明らかにする。

 

「この術式、転移魔法です!」

 

「この入口そのものが罠か!」

 

叫ぶロスヴァイセ先生。危機を悟った皆が踵を返して出口へ駆けだす。このままでは俺達主要戦力が軒並みどこかに転移させられ、戦線からの離脱を余儀なくされてしまう。どこに飛ばされるかはわからない。遥か遠くの山かもしれないし、知らない市街地かもしれない。はたまた最悪は次元の狭間やも。

 

そうなれば何のために俺たちはここまで…!

 

しかし無情にも光は輝きを増し、脱出よりも先に全てを呑みこんだ。

 




お久しぶりのオオメダマです。次からはいよいよ本戦。

次回、「マッチメイキング」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。