ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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大変お待たせしました。

仕事で忙殺されており、更新が遅れ申し訳ございません。
今後もこつこつ更新しますので宜しくお願い致します。

Count the eyecon!
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第188話「マッチメイキング」

「ッ…!?」

 

「ここは…」

 

眩い閃光から強烈に塗りつぶされた視界を取り戻したリアス達は周囲の景色の変容に驚いた。

 

空模様は冥界特有のどんより模様。森の中で人の手の久しく入っていないボロ屋敷が彼女らの前にそびえ立っている。リアスは一瞬、戦場から遠く離れた地に飛ばされたかと思ったが、魔法に長けているロスヴァイセは僅かな違和感からこの場所の正体を看破する。

 

「結界です。恐らく、レーティングゲームのフィールドと同じ技術を用いた空間でしょう」

 

「ゲオルクの時と同じ、ということか?」

 

「いえ、完全な異空間ではないと思います」

 

ゼノヴィアの問いにロスヴァイセはかぶりを振る。あたりをきょろきょろ見渡すアーシアは人員の不足に気づいた。

 

「あれ、イッセーさん達は…?」

 

この場に残ったのはリアス、ロスヴァイセ、ゼノヴィア、アーシア、そしてレイヴェル。先程まで共に行動していたメンバーの大半が消えていた。

 

「魔力を感じませんわ、ということは…」

 

「別の場所に飛ばされたんでしょう」

 

リアスはすぐさま通信魔法を起動するが、耳に流れる音は一切なく、沈黙がただ続くばかりだ。嫌な沈黙が、彼女の不安を掻き立てる。

 

「…だめね、繋がらないわ」

 

「私達、孤立したということですの?」

 

「その通り」

 

不安げなレイヴェルの問いに答えたのはリアス達ではなかった。嘲笑うような、穏やかで気品漂わせる男の声が答えを指し示した。

 

「ここは応接間。あなた達客人を歓待するためのね」

 

「そしてこれから、貴様らの墓標が立つことになる」

 

術中にはまった彼女らを嘲るように薄ら笑いを浮かべる茶髪の男と、苛烈な怒りを込めてリアス達を睨む緑髪のヴァルキリー。アルギスとジークルーネがここの番人と言わんばかりの存在感を放ちながら、乾いた靴音を立てて現れる。

 

「あら、それはどうも。にしては随分手荒な出迎えだったわね」

 

「あれくらいでなければ、あなた方をもてなすには不十分でしょう」

 

リアスとアルギス。元七十二柱の悪魔の血を継ぐ者たちの眼差しと言葉が交差する。しかし縁のある者同士の組み合わせはこの一組だけではない。

 

「ジークルーネ…そこまで私たちのことが許せないのですか?」

 

「当然だろう。寧ろ貴様こそなぜそちらに着く?あの耄碌神に置き去りにされた恨みがあるのではないのか?」

 

ロスヴァイセとジークルーネ。同じ北欧神話の出であり、今は立場を違えた二人が邂逅する。

 

片やオーディンに仕え、ぞんざいな扱いのために離れることになり、もう片やオーディンに相対するロキに仕え、そのロキを排除したオーディンへの恨みの為に北欧を離れた。元の立場と今の立場、どちらも相対するものではあるものの、辿って来た経緯から共感できるものがあるとジークルーネはロスヴァイセに対し同情を抱いていたのだ。

 

「恨みがないわけではありません。でも、だからといって全てを捨てて復讐に走る程人生を諦めてません!」

 

「毒されたな。少しは私の気持ちを理解できると思ったのに…」

 

しかしそれだけで恨みつらみに染まり切る程、彼女は失いつくしたわけではなかった。出会った信頼できる新たな仲間のおかげで彼女は新たな人生を歩むことができた。信頼関係のなく、主への忠義一筋の為に復讐に走るジークルーネのようになるはずがないのだ。

 

互いが互いを理解できぬ関係。それでも残った同情の念を惜しみながらも捨て去るジークルーネの表情には寂しさの色があった。

 

「…そうそう、そこのヴァルキリーがここをつらつらと分析していましたが半分不正解です」

 

「?」

 

「まず、ここをレーティングゲームと同様の技術で作ったのは正解。でもここはゲオルクの禁手のような異空間でに展開した結界ではありません」

 

「あくまでこの聖なる塔『ジグラート』の一室に展開した結界にすぎん。私とアルルの手製だ。このフィールド内では我らに有利に働く効果がある。貴様らはもう逃げられんよ」

 

ぱちんとジークルーネが指を鳴らせば、周囲の世界に所狭しと輝く魔法陣がうっすらと浮かび上がった。その魔法陣が物語る緻密さにロスヴァイセは不利を悟りながらも舌を巻く。

 

「そういうことですか…結界術に優れているとヴァルキリーの中でも名高いあなたの手なら、納得がいきました」

 

「…ふっ」

 

不利な状況を突き付ける二人を前に一人、笑みをこぼしたのはゼノヴィアだった。

 

「何がおかしいのですか?」

 

「いや、どうもそこまでしなければ私たちには勝てないとしか聞こえなくてね」

 

「何?」

 

傲岸不遜なゼノヴィアの物言いにジークルーネが眉を吊り上げた。ゼノヴィアに続くようにリアスも追い打ちをかける。

 

「それに、さっきの戦いでは随分大恥かかされたそうね。だからこうした対策を設けないと勝てない、とでも思ったのかしら?」

 

「…相変わらず耳の痛い。やはり悪魔は意地汚い」

 

アルギス一人に絞った煽りだったが、当の彼は挑発になびくどころかため息をついて肩をすくめるだけだった。

 

「そういうあなただって悪魔のはずよ?」

 

「ええ…私が憎むのは私以外の、アンドロマリウスに非ざる悪魔全て。そしてアンドロマリウスはもう私以外にいない」

 

悲しみと苦しみ、永き時をかけしたためてきた感情にアルギスは目を伏せる。拳を握りしめる彼の胸中に、一族の無念が燃え上がり、その矛先をリアスに向け睨んだ。

 

「この悲しみを生んだのはあなたの兄を始めとした現魔王と、旧魔王が原因に他ならない。体制側のあなたにはわからないでしょう、革新の手から零れ落ち、誰からも顧みられなかった者の痛みが!」

 

「…一体、アンドロマリウス家に何があったというの?」

 

この世で唯一のアンドロマリウスの血を継ぐ男の叫びに、リアスは悲哀の情を感じた。兄であるサーゼクスが若手悪魔のパーティーの一件以来アンドロマリウス家について調査を進めているが、その後続々と起こる大きな事件の対応にも追われ、中々全貌が明らかになっていないところだ。

 

断絶したと思われていたアンドロマリウス家。現悪魔社会に強い恨みを抱く末裔。裏がある気がしてならない。

 

「語ったところで今更顧みられることなんてありませんよ。理解してほしいとも思いません。私が求めるものはただ一つ」

 

腰にゴーストドライバーを出現させ、その手に眼魂を握るアルギスが激しい心炎を帯びた眼でリアス達を見据えた。

 

「悪魔の滅亡。ひいてはこの世界の破滅。私はこの世界に価値など感じていませんよ」

 

〔アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!〕

 

「変身」

 

素早いドライバーの操作でアルギスはあっという間にパーカーゴーストを纏い、仮面ライダーダークゴーストへと変身を遂げる。溢れ出る冷たい夜のような黒い闇は、彼自身の誰からの理解を拒む心の闇の具現のようでもあった。

 

〔カイガン!ダークライダー!闇の力!悪い奴ら!〕

 

「…最近はどうも戦績が振るわないものでして」

 

ダークゴースト特有の霊力とアルギス自身の魔力が混ざり合い、融合し白紫の蛇状のオーラへと変じる。しゅるしゅると主の腕に巻き付き、共に獲物へ一睨みを利かす。ただならぬ技、彼から放たれる敵意とオーラにリアスたちは身構える。

 

「ここで一つ、大金星を頂きましょうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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リアス達とは違い、どこか古代の闘技場を彷彿させる広間に転移させられたアザゼル。一目で転移魔法で遠くに飛ばされたのではなく、巨塔のフロアの一角に転移したと理解し、ほっと安堵の息をこぼした。

 

「変なとこに飛ばされなくてよかったが…結界が貼られている。俺達をここに閉じ込めておく算段のようだ」

 

「ふっ、俺を結界で閉じ込められるとは甘く見られたものだ」

 

「よせ、今結界を解析しておる。カウンターが仕込まれている可能性も否定できん。終わるまで何もするでない」

 

一緒に転移させられたのはヴァーリとポラリス。各チームのトップにあたる三人が行動を共にすることとなった。血の気の多いヴァーリを、システムを使って周囲環境を調べるポラリスことエボルが諫める。

 

「だが、何故奴らは俺達を遠く離れた地に飛ばさない?寧ろ俺達の歩みを助けているようなものじゃないか」

 

至極当然の疑問にヴァーリは首をかしげる。転移魔法に巻き込めるのなら遥か遠方へ強制的に転移させることもできたはずなのに、そうしなかった敵の意図が読めない。何か不穏なものを感じてならなかった。

 

「さてな、妾はこの結界に何らかのヒントがあるのでは、と踏んでおるよ」

 

「…しかし、奴らもこのまま俺達を引き留められるとは思ってないだろ」

 

「つまり、足止めが来ると?」

 

「察しが早くて助かる」

 

その直後、駆け抜けた戦慄がこの空間を支配する。それは一人の男の出現、たったそれだけで起こったもの。ゆっくりと歩いてくるラディウスの姿を認め、ヴァーリはその整った眉を歪める。

 

「…どうやら余裕を感じる暇のない相手だそうだ」

 

「やはりか」

 

「二天龍の片割れにそう評されるとは、恐れ入るよ」

 

悠然と歩み、圧倒的な存在感を滲ませながら現れたのはラディウス。自他共に認める叶えし者の頂点に君臨する男だ。その深く青い眼差しに敵意はなく、ただ真っすぐに侵入者たる三人を見つめる。

 

「妾達の相手をできる戦力なぞ、現状はお主しかおらんと思うておったわ」

 

「アルル様より君たちを退屈させぬようもてなせ、との命を受けている」

 

ばさり。その一動で神父服のようなローブがたなびく。それだけで、戦いの機運が高まる。

 

「構えろ、奴に生半可な攻撃は通用しない!」

 

「言われずともわかっている」

 

「まさかこうも早くお主らと肩を並べようとはの」

 

顔を険しくする三人が一斉に構えを取る。ヴァーリ、アザゼル、ポラリス。それぞれのチームを束ねる強大な力を持つ長たちの戦いが始まろうとしていた。

 

「生半可じゃなくても通じない、が正解だがね」

 

「俺達を一か所に集めた理由が分かったぜ。インチキパワーで俺達を確実に一網打尽にしようってハラか!」

 

「肯定。如何に力を極め高みに昇ろうとも、世には抗いようのないものがあるということを知るがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

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アーサー達が転移させられた先に広がっていたのは英国風の絢爛な屋敷の広間。どこか懐かしさを感じさせる光景に、アーサーは郷愁の念を覚えると同時に警戒心を抱いていた。

 

「何故、敵はこのような空間を…」

 

まるで自分がここに飛ばされてくることを予定していたかのような部屋の装いはアーサーの警戒心を否応にも掻き立ててくる。

 

こみ上げる郷愁を抑えながら警戒のため、辺りを見回すアーサーだが。

 

「ギャー君、大丈夫だよ」

 

「あうう…どうしよう、小猫ちゃん…皆とはぐれちゃった…」

 

警戒とは無縁なように、敵陣のど真ん中で仲間の大半と分かれた不安に震えるギャスパーとそれを宥める小猫。

二人もまたアーサーと同じ場所に飛ばされていた。

 

「あらら、白音の同級生じゃん。ギャスパー君、男の娘、なんだっけ?」

 

「ひぃ!?」

 

新しいおもちゃを見つけたと目を輝かせる黒歌に、ギャスパーは震えあがり小猫の後ろに隠れる。これから起こるであろう彼女の悪戯に怯える彼の反応はより一層黒歌をそそった。

 

「レイヴェルちゃんも真面目ちゃんで面白いけど、こっちもいじり甲斐があって楽しそうねー♪」

 

「お姉さま」

 

「ちょっとからかっただけにゃん、そう熱くならないでよ♪」

 

ジト目の一言に圧を乗せる小猫だったが、黒歌が反省するそぶりを見せることはない。いついかなる時も自身のペースを崩さないこの心の持ちようこそ、彼女の長所でもある。

 

きゃっきゃっと笑う黒歌の耳朶を打ったのはツーっと鞘から刀身が引き抜かれた時の金属音。虚空を見据えるアーサーがコールブランドを抜き放っていたのだ。

 

「アーサー?」

 

「空間を切り裂いて、結界から脱出します。こんなところで足止めされている場合ではありません」

 

「ありゃ、その手があったわね。さっすがー!」

 

感心だと手を打つ黒歌。さっきまでギャスパーで盛り上がっていたのに、話題の切り替えの早さにまたも小猫は嘆息する。

 

世界を断つべく刃を振り上げるアーサー。ぐっと力を込めたその瞬間、ふと感じた気配が彼の動きを止めた。

 

「!」

 

「アーサー?」

 

それは彼が今この場に立つ理由。探し求めた者。それを唐突に感じ、驚きに目を見開く彼の表情に黒歌は思わず名を呼んだ。

 

「まさか…」

 

気配が近い。足早に廊下を辿り、だんだんと近づいてくる。やがて突き当たる廊下から飛び出すように現れたのは。

 

「お兄様!」

 

「!」

 

少しボロボロになった見慣れたローブを纏うルフェイ。彼女自身も同じく兄であるアーサーの気配を感じ察していたのか、驚くこともなくただ喜びに満ちた面持ちだった。

 

「ルフェイ!」

 

「お兄様、やっと会えた…!」

 

喜びに感情が弾け、足早に駆け寄る兄妹。その光景にギャスパーは表情を綻ばせる。

 

「よかった、無事…」

 

「待って!今のルフェイは!」

 

しかし猫又姉妹は視界の情報では気づかぬ異変に気付いていた。仙術で感じた異様な気配に慌てて黒歌は走るアーサーを引き留めんと叫んだ。

 

しかしもう遅い。再会にひた走る二人の距離はもうすぐ間近になろうとしていた。

 

「!」

 

直後、ルフェイの杖から魔法陣が出現する。そこから漏れ出した氷の刃をナイフのようにルフェイは兄に突き立てんとする。

 

驚くアーサー。予想だにしなかった事態だ。やっとのことで再会できた妹が自身に凶刃を向けてくるなど。間合いに入ったルフェイの氷の刃がアーサーの腹に突き刺さると同時、咄嗟に剣で刃を弾く。

 

「ぐふ…」

 

激痛に身を焼かれながらも衝撃を利用して黒歌達の下へ後退するアーサー。すぐに仙術で黒歌が応急処置に掛かる。

 

「一体、何故…」

 

心と体の痛みに顔を歪めショックを受けるアーサーの腹からぬめりとした鮮血が流れ出る。深手は避けたが、決して無視できない傷だ。

 

「気の流れがおかしい…魔法か何かで洗脳されています」

 

「何ですって…」

 

分析する小猫の言葉にアーサーは言葉を失う。攫われた妹との再会に突きつけられた悲劇は、冷静沈着なアーサーの心をかき乱すには十分過ぎた。

 

一方、兄を傷つけた妹のルフェイは寒気を感じる程平然としていた。魔法を使った杖をくるくると可愛らしく回しながら。

 

「お兄様、どうして私の魔法を躱そうとしたのですか?」

 

「ルフェイ…」

 

いつものような天真爛漫な明るさは失われ、冷たさを帯びた彼女の表情にアーサーはこらえようもなく苦虫を嚙み潰したように端正な顔を歪めた。

 

その直後、ルフェイの背後の壁が豪快に破壊される。巻き起こる土煙のヴェールを破ってゆっくりと現れたのは。

 

「うそでしょ…ゴグマゴグまで」

 

ルフェイに付き従うように佇む巨大ゴーレム。ラディウスの襲撃を受けてからルフェイと共にその消息を絶っていたそれが異常な光の信号で目を輝かせて出現した。

 

「死んでください。私とアルル様の為に」

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

冥界のどんよりとした空とは打って変わり晴れやかな青空が広がる空間。足元は真っ白な雲だが、現実の雲とは違って踏みしめれば確かな感触があり、床としての機能を果たしている。天国とはまさにこのことを指すのだろうか。

 

そこに突如として現れた三人は、見渡す限りの広大な空間を行く当てもなく歩いていた。

 

「どうやら、孤立したようですね」

 

『そのようだね。他の人も同じように分断されたかもしれない』

 

歩きながらも淡々と言葉を交わすのはソーナとドレイク。突然の非常事態にも拘らず冷静沈着に状況を把握する二人とは対照に、端的に整理された状況に匙は項垂れる。

 

「おいおいマジか…なあ、こんな時にあのラディウスとかいうバケモンが出てきたらどうしようもねえよ」

 

「いえ、その可能性はないでしょう」

 

「?」

 

「私がアルルなら、アザゼルやヴァーリに彼をぶつけます。彼らの強さなら私たちにぶつけるより、最高戦力にぶつけた方がいい足止めになるでしょう」

 

「そうですよね…まだ向こうには、俺達しょうもない奴らって思われてんのかなぁ」

 

『そんなことはない。龍王の力を完全に近い状態で発現できる君を侮ることなんてできない』

 

「…」

 

ドレイクの慰めの言葉に、ふと匙は足を止めた。半ば本人も思わぬところではあったが、彼の中で何かが弾ける音がした。

 

「…そう言えば、俺を慰められるって思ったのかよ」

 

「匙?」

 

彼から感じた不穏な気配にソーナは心配の言葉をかけた。

 

『僕はただ、過小評価する必要はないと』

 

「そのベルト一つで簡単に赤龍帝の力であいつと肩並べられるお前にはわかんねえよな。俺も、あいつもどれだけ努力してここまで辿り着いたか…それでも追いつけない悔しさなんて」

 

糾弾するように、自身の内心くすぶり続けた物をぶつけるように、匙は叫んだ。

 

「こんな状況で言うのもなんだが俺は認めてないからな!赤龍帝はあいつだ、あいつ一人なんだ!」

 

チームは違えど同級生として、同じ『兵士』の眷属悪魔として、主へ思いを寄せるものとして誰よりも強く彼を意識しているからこその思い。負けてたまるか、自分もこのまま置いて行かれるばかりではいられない。

 

一度はゲームで戦ったことで強くなった思いは彼の活躍を目にし、耳にするたびに彼の胸でより強く燃え上がって来た。そんな彼の前に現れたこのドレイクという男の存在は、どこも誰とも知れぬ馬の骨が競争心を強く抱かせるライバルと同じ力を労せず手にし、いともたやすく彼と並んでしまっているような気がしてならなかった。

 

彼との差がまだ埋まらない焦りも相まって、無性に彼の心をかき乱すのだ。

 

『わかっている』

 

匙の叫びをドレイクは只受け止める。それは彼自身が一番強く理解していることだ。本当は自身にこの力を使う素質はあれど、資格なんてないことを。

 

「匙、やめなさい」

 

「はぁ…敵前で喧嘩なんて、危機感ないなぁ」

 

「「「!!?」」」

 

突如耳を打つ気だるげな第三者の声でようやく彼らはその存在に気づく。全身の神経が跳ね上がるように、飛び退って敵と相対する。白いスーツ姿の長身の男。純白の装いとブロンドの長髪が高貴な雰囲気を漂わせていた。

 

「やっと気づいたの?それじゃあ俺には勝てないかなぁ」

 

小ばかにするように笑う男。センサーに映る特有の反応から、ドレイクはその正体を看過しぽつりとつぶやいた。

 

『…天使』

 

「天使!?で、叶えし者ってことかよ!」

 

「天使とあろうものが聖書の神ではなく、異界の神に寝返ろうというのですか」

 

匙とソーナは揃って驚いた。よこしまな心を抱いた天使は堕天する。誰もが知る一般常識だ。にもかかわらず、この男は人類滅亡をもくろむ神々に仕えながらも天使であり続けている。その事実がこの男の異常性を物語っている。

 

「まあまあ主には色々思うところがあって、かといってルシファーのように反乱を起こす勇気もない。堕天するのも嫌なのでのらりくらりとやってきたんだけどさ」

 

驚く三人の反応に苦笑もなく、ただ憂鬱そうに髪をいじる天使。

 

「…システムの穴を突いて来たと」

 

「そりゃ昔は苦労したけど、主がいなくなってからは楽になったよ。なんで皆、主が亡くなったって気づかないんだろうね。主そのもののことより主への信仰ばっかりに気を取られてるのかな?馬鹿だと思わない?」

 

「こいつ、ヤバそうだな…」

 

淡々と語る事実が、匙に敵の恐ろしさをじわじわと認識させた。強敵を前に内心高まる緊張で、しかめる眉間と握る拳に自然と力がこもる。

 

「そりゃヤバイ奴じゃなきゃ、龍王と紛い物とはいえ天龍の相手を任せられはしないよ。…さて、永い前置きはこのくらいにして」

 

天使の背に3対の白い翼が広がり、雪のように白い羽根が舞い散る。男がこれまでに守り抜いてきた威厳と無垢を示すがごとく。

 

「座天使のネロ。アルル様に代わって、お命頂戴するよ」

 




ヤンデレルフェイ爆誕。

そういえばアルギスとジークルーネがリアス達と戦うの初めてでした。

次回、「昇る神十字」
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