ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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忙殺され、気付けば年が明けていました。お待たせして申し訳ございません。

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現在、スペクターの使える眼魂は…
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第192話「術式解放」

「呪い…?」

 

彼女の口から出た、これまでとは毛色の違う言葉に、誰もが胡乱気な声を漏らす。注目を一身に浴びる彼女はどこからともなく取り出した真っ白な紙札を虚空に並べ、円陣を組む。

 

「悪業罰示式神・急急如律令」

 

詠唱に応じ、紙札に妖しい青光が宿る。闇夜に導きを与えてくれる星光のようでも、暗闇に人々を惑わす鬼火のようでもあるそれらはひとりでに動いて円陣を星形の方陣へと形を変えた。

 

「!?」

 

方陣がバチバチとスパークを起こし、その先にあるナニカの力が青い奔流となって漏れ出る。震える大気、馳せる電撃。これまで感じたことのない力の波動。その化身がこれから顕現しようとしていた。

 

〈BGM:伏魔御廚子(呪術廻戦)〉

 

「術式順転」

 

飄々とした笑みをたたえる彼女が輝く方陣を艶やかな手で撫でる。光をなぞった指で印を結ぶその言葉が、扉を開くカギとなる。

 

「寅之吉将・青龍」

 

方陣から勢いよく巨大な東洋型の龍が出現する。晴れ渡る蒼空のような青い鱗、巨木のように太い体をうねらせ、産声を上げるように咆哮を放つ。

 

六壬天将術。これこそ彼女が『呪力を宿し戦う者と人の呪いから生まれた異形が戦う異界』で目覚めた、生得術式。

 

「ほう、式神か!」

 

大地を割り荒れ狂う龍、未知なる力を前に高揚するラディウスはこれを迎え撃つ。高速で迫る青龍の突撃を横っ飛びで躱し、振り向きざまに手刀を振るう。その時、彼の手刀に触れた空気に能力が付与され、不可視の風刃となって飛んでいく。

 

「やれ」

 

身をくねらせ、刃をすり抜ける青龍が光のブレスを放つ。凄まじい質量を持つそれが間もなくラディウスに直撃。大爆発を引き起こした。

 

「やはり効かんな!」

 

数秒と待たずして爆炎の中から笑うような声が不可視の鎌居達と共に飛び出す。躱す間もなく、大きく深い傷跡が刻まれる。身を切り裂かれる青龍が痛ましい悲鳴を上げる。

 

「それはこちらも同じよ」

 

一笑するポラリス。攻撃を喰らい、血を流す青龍の傷がたちどころに癒えて消えた。

 

「ほう!」

 

「青龍の特性は『生命』。溢れる生命力は無尽蔵のパワーを生み己の傷を癒し、大地の恵みを呼び起こす」

 

印を結ぶポラリス。呼応するように青龍の気が高まり、巨体に見合わぬ神速でラディウスの背後に回り込むと、その巨尾を振り抜いて強烈な痛打を繰り出す。猛烈なスピードで吹っ飛ぶ彼の体をコロッセオの壁にめり込ませた。

 

「さて…」

 

今のうちにと跳躍し、片膝ついて腹を抑え呻くアザゼルの下へ駆け寄る。そして患部に仄かな光宿る手をかざすと忽ちに出血が止まり、荒い呼吸が落ち着きを取り戻していった。

 

「立て、アザゼル」

 

「うっ、助かったぜ…」

 

回復の速度はすさまじく、深刻なダメージを受けたはずが直ぐに体を動かせるレベルに復調する。黒閃を決めたことでゾーン状態に入った彼女の呪力の出力は大幅に向上していた。当然、反転術式の効果も同様。アーシアを超える傷の回復速度に驚くアザゼル。

 

「これがお前の本気か」

 

「いや、本気の一つにすぎんよ」

 

「本気が複数あるって意味わかんねえ…が、まだお前の底が知れねえってことはよくわかるぜ」

 

ビシッ、バキッ!!

 

突如、コロッセオの外壁に大きなヒビが入り、破砕。ガラガラと無残な瓦礫となって崩れ落ちていく。

 

「アーシア・アルジェントに類似した、いやそれ以上の回復能力…それに加え彼女にない戦闘力を併せ持つ、やはり脅威だな!」

 

巻き上がった土煙の中から悠然と姿を現すラディウス。その姿はやはり無傷だが、歴戦の経験刻むその顔に久しく感じなかった未知への高揚が色濃く浮かんでいた。

 

「その言葉、そのまま返そう。貴様ほどの脅威はそうないわ」

 

印を結ぶポラリスの意に応じ、青龍が牙を剥いてラディウスへ急襲を駆ける。拳、尾、蹴り、風の刃、あらゆる手段を持って繰り広げられる壮絶なインファイト。ラディウスの攻撃に惨く肉体を破壊されようと、再生の片手間に更なる荒々しい攻撃を放って応戦する。無双の鬼神と荒ぶる龍神の戦いは古の絵巻のようであった。

 

「にしても、四神の青龍を操るなんてな。いや、さっきの口上は十二天将の方か?オマエ、本当に何者なんだ?」

 

「…」

 

(やはり呪力も効かない…異界の異能なら効く、わけでもないか)

 

アザゼルが問うが、彼女の心は目先の戦闘、事象の分析に集中している。黒閃が効いていなかった段階で薄々そうではないかと考えていたが、物理攻撃特化の青龍をここまでぶつけてノーダメージという事実を突きつけられたら認めざるを得ない。

 

恐らく彼は一切の物理、魔法攻撃を無効にできるのだろう。それがこの世界の理に属さないものであろうと、一切の例外はない。時間制限、閾値、どのような条件があるかは不明だが、これから検証を重ねていくしかない。

 

(青龍は奴の足止めには打ってつけだが決定打にはならぬ…他の式神も試してから、極ノ番か領域で締めるのが最善とみた)

 

物理攻撃以外の能力を持った式神も多く存在する。パワーとタフネスを両立した青龍を前衛にし、後方から特殊能力特化の式神で相手の反応を見る。何も相手を押しつぶすだけが戦いではないのだ。そこである程度の反応、消耗を確認できれば、そこから術式の極致となる技法で一気に決着をつける。現状打てる最善の手はそれしかない。

 

「少しおとなしくしておれ」

 

青龍の大地を揺るがす猛々しい咆哮。それにより雄大な大地の力が呼び覚まされ、次々に地面から巨木が生え、生い茂る。溢れる生命力のままに変幻自在にうねる巨木の幹がラディウスへ一斉に襲い掛かる。

 

「そのような芸当もできるのか!」

 

殺到する幹を砕き、回避しながら飛び乗る。さらには駆け抜け昇り、行く手を阻む枝を拳で砕く。唸る自然の猛威など、彼の前では他愛もない小細工でしかない。へしゃげた幹を踏み台に跳躍。青龍目掛け拳を振りかかる、その時だった。

 

「ラディウスッ!」

 

〈BGM:破滅のフォトンストリーム(遊戯王ゼアル)〉

 

吼える龍がもう一匹。白銀の鎧と絶大なるオーラを纏うヴァーリが彗星のごとく空から降る。見惚れるような閃光を見上げ、ラディウスは待っていたと言わんばかりに迎え撃つ。

 

「やはりドラゴンはしぶといな!」

 

流星のような跳び蹴りを両の手でガードする。凄まじい威力を秘めた攻撃に大気が砕けるような音を立てた。

 

「白銀の鎧で来たか!しかし、まだ届かんよ」

 

反撃を察したヴァーリは受け止めたラディウスの手を踏み台にまたも跳躍、そして両手を突き出し。

 

「これならどうだ」

 

全身の宝玉の輝きが増し、その力を解き放つ。

 

「圧縮しろッ!!」

 

〔Compression Divider!!!〕

 

瞬間、あらゆる物質、現象を圧縮し滅ぼす秘技が発動する。対象は無論、ラディウス。

 

「!」

 

〔Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!〕

 

とめどなく叫ぶように鳴る音声の度に圧縮が繰り返される。大気が震え、潰れ、消えていく。神をも葬る天龍の暴威がラディウスを襲う。

 

ズン!ズン!ズン!ズン!

 

「無駄だ、私を傷つけることは出来ん!」

 

その渦中にあってもラディウスはなお健在であり、不敵な笑みを崩さない。それどころか、一歩、また一歩と牛歩ながらも歩み始める。

 

「ウォォォォォッ!!!」

 

まだ届かない。ならば届かせるまで。闘志を込めたヴァーリの咆哮が神器の更なる力を引き出す。全身の宝玉の輝きがさらに増し、目が潰れるような光を放つ。

 

「…ん?」

 

「何ッ…!?」

 

めき、めき、めきめき。

 

この音は明らかに大気が潰れる音ではない。生身の体が軋み潰れる音だ。その異変を己の左腕に感じ、視線を下ろすラディウスは驚愕する。永らく傷つくことのなかった我が腕が震え、ぷしゅぷしゅっと血を僅かながらふきだしていることに。

 

「ぐぅ…ッ!?」

 

痛みに溜まらず眉を顰める。間違いない、己の能力を貫通している。オーラを腕に集中させて高め攻撃に抗うが、対処が遅かった。異変は収まらず、やがては大きくぐしゃっと痛々しい音を立てて、永きに渡り多くの命を圧倒的理不尽な暴威の元屠り続けてきた彼の左腕はしぼんたブドウのような無残な姿へと化す。

 

「はぁ…はぁ…」

 

〈BGM終了〉

 

全身全霊を賭けた一撃を終え、白銀の鎧が解かれ、ついには禁手すら解除される。体中から血と汗を流し、肩で息をするヴァーリだったが、その戦意だけは途切れることのないようにと決して片膝を突くことはなかった。

 

「私に、傷を…」

 

驚き、呆然とするラディウスは潰れた自身の腕を見下ろしたまま固まる。それはポラリス達も同様であった。

 

「ヴァーリの攻撃があいつに効いた…!?」

 

「ふっ…これでダメなら一生溜飲は下がらんな」

 

「…」

 

ポラリスは我も続かんとする青龍を制止し、今起きた現象を解析すべく思考する。

 

これまでただの一度たりとも通じなかった攻撃が、やっと通じた。その原因は何なのか。純粋な威力か、

ディンギルが忌むドラゴンの力か、はたまた神滅具故か。可能性は様々にある。今の一回だけではその原因を特定しきることは難しい。

 

死闘が続いた戦いの場に、破壊も咆哮もない、沈黙が訪れた。それだけの強烈な効果をヴァーリの一撃はもたらした。

 

「…」

 

「ふっ、ふふふっ、ふふふふふふ」

 

しばし固まったままのラディウスがぽつりと声を零す。それは雨粒がぽつぽつと落ちていくようなささやかなものから、次第に勢いを増すかのように笑いがこぼれ。

 

「ふはははははははははははッ!!」

 

ダムが決壊したかのようにラディウスは大口を開けて豪快に笑った。腕の痛みなどまるで意に介さない。ただ彼は己の身が傷つけられたという事実を笑い飛ばす。

 

「ははははっ!何分、私を傷つけるものなどディンギル以外に久しく現れたことなどなかった。気が弛んでいたらしい。礼を言おう、私の気を今一度、引き締めてくれた」

 

「油断とまぐれでやっと、とは恐れ入るのう」

 

今の現象を気のゆるみの一言だけで言い切られたことに、もはや考えることもあほらしくなってくる。

 

「しかし極覇龍はもう使えまい。一度きりの手札、もう少し効果的な場面で切るべきだったな」

 

「片腕を潰したのに平然としてやがる…!」

 

「能力抜きにしてもバケモノだということか!」

 

片腕を使用不能にされてなお、彼は微塵も苦悶の表情も声も漏らさない。平時そのものの立ち振る舞いだ。

 

やっとの思いで通ったダメージ。片腕を大きく負傷させても彼の継戦能力を削るには及ばない。削って打破に近づいたつもりが、かえって勝利には程遠いと彼らは思い知らされることとなった。

 

しかし全てを諦めるには、まだ出し尽くしていない。

 

「そう焦るな。手札なら、まだたんまり残しておるぞ」

 

再び紙札で方陣を作り出すポラリス。彼女の術式が再び発動し、新たな式神を召喚するつもりだ。

 

「術式順転」

 

方陣から現れ出でたのは夜のようなローブを纏う陰気な老婆のごとき異形。

 

「酉之吉将 太陰」

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:理子の捜索(呪術廻戦)〉

 

「ぬぅんッ!!」

 

「く」

 

光の刃と白銀の刃。輝き帯びる凶刃が幾度となく切り結び、弾け、また交わる。戦いに狂喜の笑みを浮かべるコカビエルとは対照に、イレブンはどこまでも淡々とした無表情だ。幾戦も重ねた果てることのない闘志と、肉体改造を重ねた尽きることのない体力が刃に乗ってぶつかり合う。

 

「フハハハハハ!強い、貴様強いな!これだけの強さを持った強者がまだいたとは!」

 

『あなたも、堕天使の幹部に名を連ねるだけはありますね』

 

激しく鍔迫り合い、両者が睨みあう。

 

戦いを楽しむ趣味はないが認めざるを得ない。コカビエルは侮りがたい強敵だ。圧倒する身体スペック、互角の敵を相手にしても凌ぎ切れる技術と経験値。一瞬の気も抜けない。悠河や一誠達が勝てたのは幸運中の幸運といえるだろう。

 

剣戟合戦ではらちが明かないと、互いにサッと距離を取る。数分以上切り結んでいるが互いに一向に隙が生まれる気配がない。ならば今度は。

 

〔LIGHTNING BOLIDE!〕

 

レイドライザーのスイッチを叩き、出力を爆発的に上げるレイダーの全身から雷が迸る。そして雷光の速度で突貫するや、すれ違いざまに斬撃を繰り出す。

 

「フッ…!!」

 

斬撃は一撃にあらず。雷を迸らせたままに、何度も、何度も、突撃し、縦横無尽に斬りかかる。剣を振るい、その刃が受け止められるたびに雷轟が鳴り響き、稲光が瞬いた。

 

雷のスピードで攻める彼女の攻撃に、コカビエルは狂喜の表情で迎え撃つ。閃光となった彼女の攻撃を光の槍で受け、弾き、いなす。並の反応速度では到底追いつくことのできないスピードに追随できているのは技術だけではない、歴戦の中で養われたセンス、勘があってこそ。

 

やがて光と雷の衝突が20を超えたその時、ついにレイダーのスピードに順応した彼はレイダーの進行ルートを完全に見切る。

 

「ここだな!」

 

『!』

 

突撃がトップスピードに達し、回避運動を取れなくなるその瞬間に彼は光の槍を投擲する。風を切り裂く光を前にレイダーは回避の選択肢が失われたことを悟り、得物での防御という選択肢を取る。胴を守るように向けたアタッシュアローで槍を受け止めるが、その衝撃でルートが僅かにずれ、一閃を外したことで一連の攻撃は終わりを迎えてしまう。

 

『…一筋縄では行きませんね』

 

「今のは良かったぞ。しかし、足りないな」

 

先程の苛烈な攻撃にも、彼女の声に戦いの熱を感じ取れないコカビエルは彼女に問うた。

 

「貴様の戦いには熱がない。楽しくないのか?」

 

『楽しい?』

 

「そうだ。強者との戦い、鍛え上げた己が力を試すことのできる戦場、そこで手にする栄光と勝利。心奮わせる甘美な美酒とは思わないのか?」

 

過去の戦争の最中、幾度となく彼は天使、悪魔をねじ伏せ勝利の美酒に酔いしれてきた。そしてこれからも求め続ける。それが己の為、ひいては堕天使という種族の未来に繋がるというなら誰が責めることのできようか。

 

「貴様ほどの強者が戦の歓びを感じないわけがない。問おう、貴様にとって戦いとはなんだ?」

 

『…私にとって戦いとは目的を遂行するための手段にすぎません。手段が目的に取って代わられることなど、あってはならない』

 

「おいおい…あまりがっかりさせることを言ってくれるな」

 

彼女の冷めた回答はどこまでもコカビエルを落胆させる。

 

横槍を入れるように光を帯びた雷の群れがコカビエルを襲う。その一条一条を剣戟をいなすがごとく槍で弾き、逸らしていく。

 

「強かだな、バラキエルの娘」

 

「やはり一筋縄では行かないようですわね」

 

「ふん、あの時からかなり力を上げたようだ。見違えたぞ」

 

先程からレイダーとの剣戟の合間合間を縫って的確に雷光を撃ち込んでくる。朱乃の背に広がる堕天使の翼も一瞥する。それもまた、かつての戦いからの変化、時間の経過を彼に認識させるものだった。

 

「それに堕天使の力も使いこなせている。力を与えた父親に感謝するのだな」

 

「ええ。でもこの力は父が与えてくれただけじゃない。皆と共に磨いた力ですわ!」

 

「…そうか。貴様にも因縁があるが、今はそれよりも」

 

朱乃に向けられた眼差しが再びホーネットレイダーへ向けられる。その瞳を、戦への愉悦と渇望の色に染め上げて。

 

「この強者を味わい尽くしたいッ!!」

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:破壊神(仮面ライダー電王)〉

 

 

巨大な魔獣と天使の軍勢が激闘を繰り広げる。その様はまるで神話の一場面を描く絵画のようであった。しかし現実は、揺るぎない正義の側であるはずの天使は魔獣の脅威に大いに苦戦を強いられていた。

 

「何なんだあのバケモノは!」

 

「攻撃の手を緩めるな!何としても食い止めろ!」

 

幾度攻撃を浴びせようと、鈍重ながらも確かな破壊をまき散らすかの魔獣の進撃は止まらない。魔獣が腕を振るえば、逃れ損ねた天使たちが容易く撃ち落とされ、魔獣が炎を吐けば、100の天使が焼かれ散る。智天使たちも出動し前線で指揮を取り、時には攻撃に参加するが中々有効打にはならない。

 

「おのれ、このままでは…」

 

智天使の一人が倒れ行く仲間たちの姿に歯噛みしたまさにその瞬間、遥か天空の彼方から無数の光の矢が降り注ぐ。それら全て魔獣に着弾してはド派手に爆ぜ、その身を容赦なく破壊した。

 

「あの光は…!!」

 

その威光に、天使たちは歓喜の声を上げる。背に12の翼を背負う至高の天使の一角が、使徒を引き連れ空の彼方から猛スピードで光来する。

 

「ウリエル様だ!」

 

「ガブリエルさままで!ようやくセラフの方々が…!!」

 

「御使いの方々も!」

 

時を司るセラフ、ウリエル。そして天界最強の女性天使と目されるガブリエル。4大セラフの内二人が、御使いを引き連れ参上したのだ。彼らの登場で、兵士たちの士気は一気に復活、それどころか戦闘開始の倍以上に跳ね上がった。

 

「あの異形…ロキの置き土産がこのような混沌を生み出そうとは」

 

「ウリエルさん、皆さんの為にも短期決戦で行きましょう。その為に私たちが来たのですから」

 

普段はおっとりした振舞のガブリエルも甚大な被害をもたらす豪獣鬼を前に引き締まった面持ちだ。普段の彼女を良く知るからこそウリエルも一層、気を引き締める。

 

「はい、これ以上の犠牲は出しません。皆、出し惜しみはなしだ。全力で叩く!」

 

「「「「「はいっ!!」」」」

 

御使いたちの声と意志が揃う。天使たちの反撃が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トップが戦場に駆けつけたのは天界だけではない。悪魔たちが戦う冥界においても、魔王の到着で劣勢が一気に逆転の兆しを見せ始める。

 

「サーゼクス様!!」

 

「ルシファー眷属が揃って戦場に立たれるとは…!!!」

 

ルシファーの名を冠する悪魔、サーゼクス・ルシファーとその眷属たちが戦場に現着する。

 

「先は前線に立てなかった分、今回は力を振るわせてもらおう」

 

「ルシファー様が前線に立つのを快く思わない者もいるでしょうが、たまには威厳を見せるためにも良いのではないでしょう」

 

浅葱色のだんだら羽織に身を包む美男が、飛行するサーゼクスとグレイフィアの隣に付き従う。日本刀を帯刀する彼こそサーゼクス率いるルシファー眷属の『騎士』沖田総司。日本史に名を刻む新撰組に属していたその人である。

 

「スルト、今回は先走らないようにお願いしますよ」

 

「うるせえよ!!言われなくてもわかってらぁ!!」

 

『僧侶』のマグレガー・メイザースに小言がうるさいと『戦車』のスルト・セカンドが返す。先の超獣鬼との戦いでは戦闘開始直後に巨大化、全力の炎を無駄打ちして直ぐにガス欠になってしまったのだ。

 

引き連れる眷属たちの士気高揚を感じながらも、サーゼクスは戦場で暴れまわる豪獣鬼を見据える。

 

「冥界に二度も災厄を起こすわけにはいかない。短期決戦だ」

 

冥界最大の戦力が、盤面をひっくり返すときだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーゼクスたちの到着と同時、各地の戦場にも同じように勢力のトップ戦力たちが次々と現れていた。

 

「ガハハハッ!!儂の膝元で派手に暴れてくれたな!余程ケラウノスを浴びたいのだな!!」

 

ギリシャ神話の世界に降臨したのは右手に雷を迸らせ、豪快に笑うゼウス。オリュンポスの戦士たちは神々しくも力に満ち満ちたその姿に士気が一気に跳ね上がる。

 

「ロキよ…これもお主の怨念か?ここまでしてワシらを憎むか?」

 

北欧神話に伝わる神々の世界、アースガルズにおいては八本足の神馬、スレイプニルが引く馬車から現れたオーディン。ユグドラシルに蝕まれる豪獣鬼の姿にかつての仲間の意志を感じるようで、憂いを帯びた目で戦場を睥睨する。

 

それぞれの戦場に、頂点に立つ者たちが集う。豪獣鬼がもたらす厄災に終止符を打つために。

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

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塔の頂上。そこは屋根のない大広間であり、天に目を向けるがごとく大きな魔法陣が祭壇に刻まれている。47の眼魂が魔法陣の内を彩るように設置され、力を吸い出されている。その力を導き、制御する要こそ、中央に置かれたプライムトリガー。複数の眼魂の力を集約するその機能は今、アドリブ的にアルルに利用されることとなってしまった。

 

「もう少しだ」

 

光が脈動する祭壇の端に腰かけるアルルは天を仰ぐ。空模様はこれから起こる大異変を予期するがごとく、不穏な曇天の色に染まっていた。

 

「もう少しで儀式は成り、我らの長きに渡る雌伏の時は終わる」

 

最上位の神の命を受け、この世界に降り立ってから5年。各地に残存する叶えし者たちに呼びかけ、合流し統率を図るのは並の苦労ではなかった。そこから悪魔社会、天界、各神話勢力、さらには人間社会にネットワークを広げ、彼女らは暗躍を続けてきた。全てはこの瞬間の為に。

 

「そうなれば、この体とも別れか…中々に不便だったな、人間の肉体というものは」

 

この体は彼女本来のものではない。深海凛のものだ。人間とディンギル、異なる種族の肉体構造とそれゆえの感覚の違いに最初は大いに戸惑い、不快感を覚えた。

 

「人間とはこのような不便の中で生きなければならないのか。…どこまでも下等で、哀れな生物だ。いや、たった百余年しか生きながらえないと思えば不便でもないか」

 

嘲笑の後、彼女の顔によぎったのは彼女自身も言葉にできない感情。

 

「…これでも貴様の苦しみには及ぶものではないだろうな」

 

不意に、扉の向こうから近づく二つの気配を感じた。

 

「運命の時が近いか」

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ…はぁ…やっとか…」

 

「一生分の階段を上った気がするぜ…」

 

変身してなお息切れするほどの階を駆け上がり、俺たちはようやく最上階に辿り着いた。高貴な装飾を施された重々しい扉を前に、俺たちは息を整えるべく腰を下ろした。

 

「俺らはまだまだ上るだろ、リアルの階段も人生の階段も」

 

「お前はもうオトナの階段を昇っちまっただろ」

 

「そうだ、どこぞのハーレム王と違ってな」

 

「アルルの前にお前をぶっ飛ばしてやりてえ…!」

 

そんな返しをされたら俺もカウンター決めるしかなくなるじゃないか。なんで仕掛けてくるんだよ。女性恐怖症なのはわかるが、ハーレム王を目指すなら避けて通れない道だろ。

 

軽口は程々に、肌を刺すようにひしひしと感じるものに意識を向ける。

 

「…兵藤、感じるか」

 

「ああ、どうやらいきなりお通しされたみたいだぜ」

 

扉の向こうに感じる。強大な力の鳴動、そして何より忘れがたい恐るべき神の気配。アルルがいる。

 

「覚悟はできてるか?」

 

「訊くまでもない。とうにできてる。今度こそ、決着をつける」

 

これまで幾度と彼女と戦ってきた。無残に負けたこともあった。追い返しはしたが助けることはできなかった。逃げられたこともあった。手を伸ばし、そのたびに届かず苦汁をなめ続けてきた。だがそんな因縁も今日で終わりだ。

 

俺が、いや俺達が全てを終わらせる。

 

その決意を新たにし、二人息を合わせて眼前の扉を蹴破る。真っすぐ飛んだ扉は途中で目にもとまらぬ神業で両断され、やがて壁に激突して破砕した。

 

「二人仲良く命を捨てに来たか」

 

その神業を為した下手人が、コピシュを手に相も変わらずあらゆる命を見下す冷めた目と言葉を投げかけてくる。

装いを新たにし、白と金色の巫女を想起させるようなローブを纏う彼女もまた決戦を意識していたらしい。

 

「いや、命を拾いに来たのさ。俺の大事な妹のな」

 

「お前らの企みもここまでだ!」

 

 




ということでポラリスの術式は十二天将の式神を操る術式でした。天将の命名法則は大体お判りでしょう。
ウリエルとラファエルは4大セラフの中でもニューフェイスなので他二人には敬語を使います。

次回、「47VS13」
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