ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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今更ですがまたD×D原作を読み返して執筆意欲を取り戻してきました。早く真D×Dまでとは言わずとも、大きな転換点になるルシファー編まで進めたひ。

ちなみにマウント取るつもりはないですが、拙作以外でライダー系の長寿D×D二次小説ってあるんですかね。執筆以外でハーメルンを当分読んでないもので、もしあるならインスピレーションを受けてみたいと思ったり。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
2.エジソン
3.ロビンフッド
5.ビリー・ザ・キッド
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9.リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
40.ジャンヌ
46.ノーベル
50.呂布


第194話「聖王剣は穿つ」

〈BGM:COUNTER ATTACK(機動戦士ガンダムOO)〉

 

「プトレマイオスの力は48の星座を操る能力。多彩さで言えばどの眼魂にも勝る」

 

光の弓を発現させ、眩い光の矢を立て続けに射る。風切り飛翔する矢の群れを、身をよじり華麗に旋回することで回避する。お返しにとガンガンハンドの射撃を放つが、奴にはびくともしない。

 

「獅子座のルーツになったネメアの獅子は、生半可な飛び道具を受け付けない鋼鉄の毛皮を持つという」

 

ご丁寧に解説まで付けやがって。何でもありかその眼魂。俺が欲しいわ。

 

ならば近接戦だと、スピードを上げて突撃。奴に捕捉されぬよう左右に、上下に揺れながら移動し、すれ違いざまに高速回転するホイールとガンガンハンドの打撃を浴びせていくが、効き目は薄い。

 

「硬いな…!」

 

「俺も忘れんなっての!」

 

竜の翼を羽ばたかせ、兵藤が地上から猛烈な勢いで舞い上がる。降り注ぐ矢の雨をドラゴンショットで薙ぎ払うと、右手にオーラを集中させ、装甲を肥大化させる。トリアイナの内、『戦車』の駒を発動させたのだ。

 

「モードチェンジ!『龍剛の戦車《ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク》』!!」

 

〔Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!〕

 

「喰らえェェェッ!!!」

 

真正面から喰らえばいくら神クラスと言えどノーダメージとはいくまい。そう思ったところを、ネクロムはなんと拳を握り、真正面から聖剣付きで拳同士をぶつけるのだった。パワーとパワーの衝突で、大気が鈍い音を立てて震えた。

 

「こいつ、こんなパワーも!?」

 

『戦車』の駒に切り替え、その特性を発揮することで増大したパワーと真っ向から打ち合える膂力に兵藤も驚きを禁じ得ない。プトレマイオスは天文学者、おおよそ肉弾戦を得意とするイメージはないが。

 

「ヘルクレス座になぞらえた力だ。そこに我のオーラを加えれば」

 

拳に込められたネクロムのオーラが一瞬膨れ上がる。びきっ。肥大化した片腕の装甲にヒビが入ると、がしゃんと無残にも破砕されてしまう。

 

「容易い芸当だ」

 

「マジかよ!」

 

更なる追撃を予感し、俺はすぐさまフーディーニの鎖を射出する。まずは兵藤の腰に巻きつけ、多少手荒にでも引っ張ってネクロムから距離を離す。

 

「おわっ、アブなかった…」

 

更には今度はネクロムへと鎖を伸ばし、攻撃へと移る。鋼鉄の鎖の舌先が、空を縦横無尽に走ってネクロムへと殺到するが、そのパーカーの袖の下から突然伸びた光の鎖に弾かれる。

 

「アンドロメダの鎖か!」

 

「正解」

 

防御だけには終わらず、こちらの鎖を辿り、逆に俺の体に巻き付いて瞬く間に縛り上げてしまう。

 

「ぐっ!」

 

縛る力が半端ではない。みしみしと肉が締まり、骨が軋む。このまま俺を絞め殺さんとするようだ。

 

そして奴が両手を突き出すと、どこからか爆発的に巻き起こった水の激流が押し寄せてくる。まるで荒れ狂う大河のようだ。これも星座の力だというのか。

 

「深海!」

 

「心配するな!」

 

だが脱出に関してはフーディーニの専売特許だ。脱出マジックに由来する瞬間移動能力を発動し、どうにか鎖と激流から逃れる。

 

「逃げ足だけは一流の姑息な眼魂だな」

 

ちまちま攻めるだけでは埒が明かないと踏んだか、奴は素早くメガウルオウダーを操作し必殺待機状態に入る。背後に一つ目の紋章を浮かび上がらせ、そら恐ろしい程のオーラと霊力を右脚に収束していく。

 

〔DAITENGAN!PTOLEMAEUS!〕

 

「一気にケリをつける気か!」

 

〔ダイカイガン!フーディーニ!〕

 

負けじとこちらもオメガドライブを発動。方陣から生成した霊力を4つのホイールに宿し、そこから鎖を射出する。さらにこちらの回転を加えたライダーキックを組み合わせることで、霊力の奔流を纏いながら高速回転、突撃するライダーキックへと転じる。

 

「ドライグ、やるぞ!」

 

『応!』

 

〔Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!〕

 

並び立つ兵藤も倍加を立て続けに発動。全身から高めた赤いオーラを激しく噴出し、猛々しい龍の形に変じさせてキックを繰り出す。

 

〔OMEGA UL-ORDE!〕

 

紺碧の空を彩る星座の輝きを収束したキックが空から降り。

 

〔オメガドライブ!〕

 

〔Welsh Red Strike!〕

 

天へと昇るような赤き龍の蹴撃と青い彗星が激突し、白き巨塔の頂上に炎の星を輝かせた。

 

〈BGM終了〉

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

〈BGM:Proof of Soul(響命クロスディライブ)〉

 

妹と相対することへの迷いを断ち切ったアーサー。回避も剣筋も、微塵の躊躇ない。平常通りのキレを取り戻していた。

 

大火球が飛んでくれば袈裟切り一閃、両断して道を開き、空から轟雷が降ればコールブランドで受け止め振り払い、刃に帯びた電撃を明後日の方向に飛ばしてしまう。

 

「っ…!」

 

また一つ打ち砕かれる魔法を見て、ルフェイの額に冷や汗が流れる。彼女自身も、ヴァーリチームに属する以上は相応の魔法の腕があり、自信もあった。だがアーサーの一挙手一投足はその自信をへし折らんとするばかりだ。

 

それでも止めずにルフェイは新たな魔法を繰り出す。今度は吹雪と烈風を掛け合わせた、凍てつく大竜巻だ。生身の人間が巻き込まれれば、身はズタズタに引き裂かれ、無残な赤い氷像と化すのは免れない。

 

「…」

 

暴威を前にしてアーサーは恐れない。止まらない。ただ前へと歩みを進め、コールブランドを高く掲げ、振り下ろす。

 

惚れ惚れするような一閃。それだけで竜巻は割れ、首を垂れるがごとく霧散しアーサーの為に道を開ける。

 

一歩、また一歩と歩みを進めていくアーサーの目は恐ろしい程にルフェイを捉えていた。それはまるで、妹を危機にさらした結果や責任と向き合うと言わんばかりに。

 

「どうして?どうしてどうしてどうして!?」

 

己が魔法の悉くをあっさりと破られ、焦燥に駆られるルフェイ。こんなはずはないと認めがたい現実を振り払うように頭を振う彼女はカっと目を見開く。そして杖を掲げるとありったけの魔法力を爆発させ、あらゆる属性を内包した無数の魔法陣を部屋全体を埋めつくさんとばかりに展開する。

 

「どうして私の邪魔をするの?アルル様の邪魔をするの!?世界が滅びれば、皆苦しむことなんてない!私も、お兄様も!幸せになるのに!!」

 

「所詮は急場しのぎの洗脳、ということですか」

 

「…!?」

 

「一度乱れれば容易く崩れる。そのような陳腐なもので我が妹を汚すなど、言語道断です。この手で私が解放してみせましょう」

 

洗脳も相まって錯乱した彼女の狂気と魔法が兄に向けられようとしたその瞬間。

 

「裂け、コールブランド」

 

魔法が発動するより早く、その全ての魔法陣を切り刻み、破壊した。あれだけの数を瞬きするよりも早く全て破壊する神業。それはまさに聖王剣の使い手たるに相応しい実力の証左である。

 

ガラス片のように割れ、仄かな蛍火のように立ち上り消えていくそれらにルフェイは只呆然とするばかりだった。

 

無防備を晒す彼女へ、一瞬にしてアーサーが踏み込む。

 

「邪魔を…しないで…」

 

「ルフェイ、残念ですがあなたの言葉であっても聞き届けることはできません」

 

「!!」

 

剣の石突で、彼女の胸を打つ。穿ち、突き抜ける衝撃は一瞬にして彼女の意識を刈り取った。力を失い、前のめりに倒れる彼女の体を受け止めるアーサー。

 

「大丈夫、すぐに術を解きます」

 

優しくその場に寝かせると、今度はゴグマゴグと戦う黒歌達の方へ向き直る。

 

「離れてください!」

 

「!」

 

アーサーの合図に全てを察した黒歌は微笑を浮かべ、さっとその場から距離を取る。数瞬遅れて小猫とギャスパーも続いたのを確認した彼はコールブランドに絶大な光を蓄え、その切っ先を巨体奮わせるゴグマゴグへと向ける。

 

光の瞬き。一瞬のうちに絶大な光のオーラが解き放たれ、ゴグマゴグに見事に直撃する。大質量の一撃を受けたゴグマゴグもたまらず仰け反り、地響きを起こしながら倒れた。

 

目の前で悪魔の天敵である光の暴威を目の当たりにしたギャスパーは顔を真っ青にする。

 

「巻き込まれてたら、僕も消えてました…」

 

「…オーラの使い方がゼノヴィア先輩より格段に上ですね」

 

ほんの僅かな溜めで、ここまでのオーラを解放することはゼノヴィアにはできない。エクスデュランダルであれば溜め時間があれば先程以上の威力は出せるが、まだ強大な力故にエクスカリバーの能力も含め、扱いには苦慮している。

 

「今のうちにちゃちゃっとやっちゃうにゃ!」

 

ゴグマゴグとの戦闘であたりに散った瓦礫を俊敏に飛び移る二人はすぐにルフェイの下に駆けつけた。二人の手がルフェイの額に添えられると、怪しい光を放つ魔法陣が浮かび上がった。

 

「これにゃ」

 

そう黒歌が言った次の瞬間、魔法陣は真っ二つに断たれていた。ルフェイの体を微塵も傷つけることなく、魔法陣だけを斬る神速の早業。二人は全く目にも捉えることはできなかった。

 

(速い…祐斗先輩、それ以上です)

 

恐ろしい速度に小猫は目を見張る。身内びいきを加味したとしても、その技術は木場より勝っている。聖王剣使いの名は伊達ではない。彼が越えるべき壁はまだ高くそびえ立っていると認識させられた。

 

〈BGM終了〉

 

「ルフェイ、ルフェイ」

 

アーサーは手早くコールブランドを鞘に納めると、横たわるルフェイの肩を揺らして何度も名を呼び、呼びかける。

 

「…ぁ」

 

ほどなくして、気絶から覚醒したルフェイが寝起きのような吐息を零しながら瞼をゆっくりと開ける。先程まで虚ろだった瞳に、少しずつ意志の光を宿しながら。

 

「お兄様…?」

 

「あれ、私は…」

 

ゆっくりと上体を起こすと、辺りをきょろきょろと見渡す彼女は、覚束ない頭でどうにか状況を把握していく。

 

「私は…お兄様と…」

 

覚醒していくにつれ、記憶に残る自身の行いに血の気が引いていくのを感じた。己の意志を奪われ、その手で兄を殺めようとした恐ろしさに手が震える。

 

しかしその先の自責の言葉を遮るように、アーサーは心に溢れる安堵の言葉を絞るように吐いた。

 

「良かった…」

 

安堵に緩んだ兄の表情にルフェイは驚き目を丸くした。洗脳されていたとはいえ、あれだけ敬愛する兄に酷い言葉を浴びせ、魔法も向けたにもかかわらず、当のアーサーはそれら一切を歯牙にもかけていない。

 

「でも私、お兄様だけじゃない、皆さんにもご迷惑を…」

 

「私があなたに迷惑をかけてばかりですから、このくらいどうということはありません。それに、あなたに迷惑を掛けられたくらいで気にするほどの者はチームに一人とていませんよ」

 

「お兄様…」

 

過去、家宝のコールブランドを手にしてアーサーはペンドラゴン家を出奔した。自身の野望とある人のためを思っての独断、その真意を一切を語らなかったにも関わらず、ルフェイは彼に付いてきた。出奔したばかりか、彼がヴァーリと共にテロ組織に身を寄せた時ですら、彼女は兄と行動を共にした。

 

アーサーは意図せずして彼女の運命を大きく変えてしまった。それに比べたら、先の彼女の行動も当の昔に向けられて然るべきものであり、些末なものだ。出奔してなお自身と共にいてくれる妹への感謝と無償の兄妹愛。人間最強の候補として名を上げられる男の根底には、どれだけ高みを目指そうとも、強く根付いている。

 

「ま、むしろ世話が焼けるくらいが、私たちのチームらしいにゃ」

 

「黒歌さまも…」

 

なんてことはないと微笑むアーサーにからからと笑う黒歌。自身の失態を許すどころか気にもかけない彼女らのおおらかさにルフェイの手の震えは気付けば止まっていた。

 

「…う」

 

「え、ちょっと、泣いてるの?」

 

「いえ…皆さんの優しさが…嬉しくて、なんだか…ほんのちょっとだけ、泣いちゃいました」

 

家族であり、仲間である彼女らの温かな光景を前に小猫も口元を緩めていた。

 

「ルフェイさんはいい人ですね」

 

「ええ、私の妹ですから」

 

妹への誉め言葉を受け取り、普段は内心を隠す仮面のように微笑をたたえるアーサーも今だけは、本心からの微笑みを浮かべていた。

 

「さてっと、それじゃ…」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

どこか可愛らしさのある悲鳴が、感動的な空気を切り裂いた。何事かと振り返れば、大きな拳やミサイルを地面に突き立て暴れるゴグマゴグから、ギャスパーが必死に逃げていた。

 

「は、早く助けてほしいですぅぅぅぅぅ!!!」

 

涙目で悪魔の翼を精一杯羽ばたかせて逃げるギャスパー。ミサイルの雨を死に物狂いでギリギリで躱すギャスパーの姿がいたたまれなくなって。

 

「ルフェイ、ゴグマゴグを」

 

「はい!」

 

魔法陣を展開し、目まぐるしく何かを操作すると、ゴグマゴグはたちまちに攻撃をやめ、その動きを急に止めた。

 

「た、助かった…」

 

ゴグマゴグの攻撃はギャスパーの目前にまで迫っていた。恐怖と緊張からの解放から、へなへなとギャスパーはその場にくずおれた。

 

「さっきのは?」

 

「万が一に備えて仕込んだ、緊急停止魔法です。構造は完全には解析できなかったんですけど、それとなく重要な回路っぽいのはわかったので、局所的にショックを与えて緊急停止させました」

 

「そんなものを…」

 

ゴグマゴグは古の時代に神によってつくられた兵器。残された資料は少ないが、手元に置く以上は熟知せねばならないとヴァーリ達は放浪すると同時にゴグマゴグの調査も進めていたのだ。

 

「怖かったよぉ…」

 

「そちらのお友達も世話が焼けそうですね」

 

「その方がいじり甲斐がありますから」

 

「あらら、もしかしてお姉ちゃんに似てきた?」

 

「心外です」

 

にやりと笑みを浮かべていじってくる姉に思わず顔を背ける小猫。ペンドラゴン兄妹とは違い、まだ猫又姉妹が心を真に通わせるにはまだ壁がある。

 

と、話は程々に黒歌はとある疑問を投じる。

 

「…ところで、何であいつらはルフェイを攫ったのかしらね?」

 

「私も気になっていました。彼女らにとってもこのタイミングで我々に手を出し、邪魔が入るのは一利もないはずです。なのにリスクを承知でコールブランドを奪い、ルフェイを攫う理由は…」

 

「奴らの会話を何か聞いた?」

 

「まだ記憶が朧気なんですけど…コールブランドも私も、強い眼魂を作るための材料にするため、って聞いた気がします」

 

洗脳から覚めたばかりで覚束ない頭から記憶を絞り出し、彼女は語る。

 

ラディウスに攫われ、ここに転移したルフェイは塔の最上階、アルルの前に連れ出された。そこで彼女とコールブランドから眼魂を生成した後、アルルは彼女を有効活用する為に洗脳、戦力の一つとして使うことにしたのだ。

 

人質に取り、悠河から眼魂を奪うことで解放するという条件をヴァーリチームに突きつけグレモリーとぶつける手もアルルは考えはした。しかしセットで付いて来たゴグマゴグも戦力として使うために、ある程度コントロールができるルフェイを洗脳した方が来る決戦に有利に働くのでは、と判断したのだ。無論、そこまではルフェイの知る由もないが。

 

「強い眼魂、ですか。英雄派と同じく眼魂を集めているとは聞きましたが」

 

「強い眼魂…アルルはアーサー王の眼魂を前の戦いで使っていました」

 

「確かに、深海先輩からコールブランドを素材にアーサー眼魂を作ったとアルルが言っていた、って聞きました。相当苦戦したって」

 

先の戦いでネクロムが変身に用いたアーサー眼魂。素のスペックの高さに加えて、由来となったアーサー王が使用したとされるコールブランドの力を最大限に引き出し、スペクターを追い詰めた。

 

「ふーん、確かに聖王剣コールブランドから作れる眼魂で、有名なアーサー王の眼魂なら強力でしょうね。で、ルフェイの方はどんな偉人になるにゃ?」

 

「…彼女にゆかりのある偉人と言えば、一人しかないでしょう。ペンドラゴン家の祖であるアーサー王の血縁者

にして魔女と呼ばれた人物」

 

「モルガン・ル・フェイ」

 

ぽつりと、小猫は昔本で読んで知識を得たその名を口にする。アーサー王の文献に度々その名を登場させる魔女。ある文献ではアーサーの重傷を癒し、またある文献では妖術と悪知恵を働かせアーサーに仇なすなど姿役割を変えながら、確かに存在していた。

 

「なら、ルフェイから伝説上のモルガン・ル・フェイの眼魂を作るために攫ったってこと?眼魂を作る方法がわからないけど、ゆかりのあるものなら人でもモノでも何でもいいの?」

 

「うーん…ごめんなさい、どんなやり方で眼魂を作られたか覚えて無くて。モルガンであることが重要なのか、それとも眼魂の数を増やしたいだけなのか…考えてもわからないことばかりです。すみません、お役に立てなくて」

 

「ま、仕方ないにゃ。帰ったら赤龍帝ちんの家でぐーたら休めばいいにゃ。そしたらてきとーに思い出すでしょ」

 

申し訳なさげに顔を暗くするルフェイに、黒歌はなんてことないように楽観的な言葉をかけた。彼女にとっては普段通りの言葉であっても、罪悪感が強く心にのしかかる今の彼女には救いとなった。

 

「…そう言えば、フェンリルはどこに?」

 

「さっきの戦いにもいなかったですよね」

 

フェンリルの不在に気づいたのは小猫とギャスパー。曹操との戦いでも彼女の傍らに控えて威嚇するように鋭い眼を飛ばしていたのはまだ記憶に新しい。

 

「フェンリルちゃんはアルルの命令で別部屋に封印してしまいました…。場所は何となく覚えていますから、今すぐ解放しに行きましょう」

 

フェンリルは神喰狼とも呼ばれる、魔獣の中でもトップクラスの力を持つ強大な魔獣。ヴァーリと聖剣の力で力の大半を封じられたとはいえ、その力は神を恐れさせるには十分だ。神であるアルルとの戦いにおいてはこれほどまでに頼れる存在はない。

 

「勿論、と言いたいところですが…もう平気なのですか?」

 

「はい。皆さんにご迷惑をかけた分、取り返しに行かないとですから!」

 

アーサーとルフェイ。絆を取り戻した兄妹と未だ取り戻し得ぬ猫又の姉妹たちはこの場を去る。囚われた仲間を救出し、刃を向けた神に手痛いしっぺ返しを喰らわせるために。

 




プトレマイオス眼魂は現時点の眼魂の中でもトップクラスのチートになります。

次回、「隠翼と赤光」
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