第3、9話も一部変更を加えました。ストーリーの流れに変更はありませんが。
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は……
S.スペクター
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディー二
「じゃあ来週末にお前の兄さんは来るんだな」
「せやで、お兄ちゃんはたこ焼き作るのがごっつうまいで」
放課後、俺は天王寺と一緒に雑談をしていた。
夕日の眩しさに目を細めながら天王寺が手をポンと叩き、思いついたことをそのまま喋る。
「せや!折角やから綾瀬ちゃんも誘ってタコパしよか!」
「いいなそれ!楽しみが増えた」
一日を埋めた楽しみな予定に心踊らせる。
「そろそろバイトの時間や、ほなまたな!」
鞄を持ち、教室から去っていく天王寺。
「おう、頑張れよ」
その様子を軽く手を挙げて見送る。
「さて俺も帰ろ…ん?」
ズボンの裾を引っ張られる感覚に足元を見下ろすと。
「シャー!」
相棒がいた。首を何度か振り、廊下の向こうへ滑るように這っていく。
「…ついて来いってことか」
何か異変でもあったのだろうか。取り敢えず相棒を追うことにした。
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相棒を追ってたどり着いた先は旧校舎を囲む森だった。
「前に除きはしませんって言ったんだけどな…」
もし相棒が覗きをして何か異変を察知したのであれば最悪また謝らなければならないことになる。
進んでいき、森を出る一歩で立ち止まった。
剣撃の音、叫び声。聞こえてきたこれらの音で察する。
「戦ってるのか?」
歩のスピードを早め、やがて旧校舎が見えてきた。
森を抜けて開けた旧校舎の裏手に出る間際、慌てて歩を止めて近くの木に身を隠す。
そこにいたのは見慣れたオカルト研究部のメンバーと黒いアンダースーツのような衣装に身を包む見知らぬ二人。どちらもピッチリとした衣装によって身体の線がはっきりと浮き出ている。胸の膨らみからして女か。
一人は日本刀をもつ栗毛色のツインテールの女。朗らかに笑うと日本刀は仄かに一瞬光を帯びると紐に形を変えた。一体どうなってんだ?
そして長剣を地面に突き立てる緑のメッシュが入った青髪のショートカットの女。
鋭い目付きがその気性を表しているように見える。てか地面に小さなクレーターができてるぞ。まさかこいつがやったのか?
よく見ると二人に対峙するような形で兵藤と木場が膝をついている。
先の音はこの四人が戦う音だったのか。そしてこの二人の敗北に終わったと。
他の部員はどうやら手を出していな……。
「い!?」
思わず声を上げてしまい一斉にこの場にいる全員の視線を浴びてしまう。
何故か知らないがアルジェントさんと塔城さんが生まれたままの姿なのだ。
大切なところは手で隠しているが。
「────?」
青髪の少女がこちらに長剣と警戒の視線を向け、何かを問うように話しかけてくる。
バレた以上仕方ないので勘弁したように前に出る。
(んー、何て言ってるのか分からない……)
少なくとも英語ではないな。アルジェントさんと初めて会ったときもそうだった。
「彼は紀伊国悠。ここの生徒よ。ここに入れたのは多分神器所有者だからかしら」
「──────」
「ええ、彼は悪魔じゃないわ」
グレモリー先輩が事情を話し、青髪の少女の警戒を解いた。
こういうときに便利だよな、その言語能力は。
「──────」
今までまじまじと俺の顔を見ていたツインテールの少女が「あ!」と声を上げ、栗毛色の髪を揺らしながらこちらに駆け寄ってくる。
「やっほー、久しぶりね紀伊国君!大きくなって、眼鏡も掛けてたし分からなかったわ」
「ええ、ど、どうも…」
フレンドリーに話しかけてくるこの少女に戸惑いを隠せない。
てかそっちは普通に日本語喋れるのかよ。
「私は紫藤イリナ!あなたの幼馴染みよ、覚えてない?」
……おー、また幼馴染みか。
てかこの身体の主は豊富な交遊関係を持っているんだな。兵藤に天王寺、上柚木、そして紫藤さん。案外活発な性格の持ち主だったのかもな。
戸惑いぎみに返答をする。
「いやあの、俺実は事故で記憶がなくて……」
「そうだったの!?それは大変だったわね……」
残念そうな表情を浮かべた。
相手には悪いが記憶がないので仕方ない。いや、俺は『紀伊国悠』ではなくその身体に憑依した別世界の人間だ。記憶がなくて当然だ。こいつが意識も戻らない、いつ死んでもおかしくない状態に俺は憑依した。
だが時々、天王寺や兵藤たちと一緒にいると変な気分になる。何か懐かしいような、手が届きそうなのに届かないような……。
もしかしたら、『紀伊国悠』はまだ俺の中で生きているかもしれない。だとすれば俺は自分の力だけでなく『紀伊国悠』という人間と向き合わなければならないときが来るかもしれない。その時俺は一体どうなってしまうのか……。
思考の海に沈みかけていると突然、目の前で紫藤さんが膝をつき、両手を握って天を仰いだ。
「ああ、主よ!この者に惜しみ無き慈悲を!」
(なんなんだこいつは……)
突然の行動に思わず顔がひきつる。
もしかしてアルジェントさんと同じ教会出身なのだろうか。合宿中アルジェントさんが同じようなことをして頭痛に悩まされる場面を度々見た。とにかく、俺に同情しているのはわかった。
話題を変えて、多分彼女も知っているであろう人物の名前を出す。
「ま、まあ折角だし上柚木や天王寺にも会ってきたらどう?」
「綾瀬ちゃんに飛鳥くん、懐かしいわねー…。よく遊んだものね」
思い出に浸りかけたところを相方の青髪の少女が肩を叩き何か言う。
「─────」
「─────」
会話を終えると再び向き直り、別れを告げた。この人はバイリンガルなのか。
「じゃあね、紀伊国君。また会えるといいわね!」
踵を返して青髪の少女と一緒にこの場を去っていった。
手を軽く振りそれを見送る。
「くそっ!」
俺もこの場を去る前に見た、木場の心底悔しそうな顔が忘れられなかった。
その目の奥に以前の俺と似たようなものを見た。
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「で、この面子はなんだ?」
休日、兵藤にメールで大事な話があると駅前に呼び出された俺は目の前の状況に困惑していた。
「紀伊国、お前もこいつに呼び出されたのか?」
「まあね」
気だるげな表情を浮かべる会長さんの『兵士』、匙と…。
「イッセー先輩、何をするつもりですか?」
うろんな目で兵藤を見つめる塔城さん。兵藤とこの二人の繋がりはといえば悪魔だということぐらいか。なかなか見ない組み合わせだ。
「塔城さんも呼ばれたの?」
「いえ、私はたまたま見かけただけです」
どうやら駅前で二人が集まっているところを見かけて、監視の意味も込めてこの面子に混ざっているらしい。
「で、用件はなんだ?」
本題に入り、呼び出した理由を兵藤に訊ねる。
ヤツは至って真剣な表情でこう言った。
「ああ、今からエクスカリバーの破壊許可を紫藤イリナとゼノヴィアからもらいにいく」
「……は?」
エクスカリバー?あのゲームとかでよく出てくるメジャーなキング・オブ・剣と言っても過言ではないあのエクスカリバー?
「…話が全く読めないんだが」
なんでそんなものを破壊する許可をもらいに紫藤さんのとこに行くんだ?
あとゼノヴィアってのは昨日の青髪の方か?
尽きない疑問に首を傾げる。
「嫌だぁぁぁぁ!!なんでそんな面倒事に巻き込むんだよおおおお!!」
早速匙がべそをかきだし顔を真っ青にして逃走を図るも。
「祐斗先輩のことですよね?私も協力します」
すんなりと協力を決めた塔城さんの怪力によってあっさりと捕まり逃げられなくされてしまった。
「離してくれぇぇ!おい兵藤!お前のとこの部長は厳しくも優しいんだろうけどよ、俺のとこの会長は厳しくて厳しいんだぞ!!そんなことばれたら殺される!!」
涙ながらに文句を言う匙。その様子から会長さんの怖さが伺える。
「でも頼れるのがお前しかいないんだよ、頼む!」
手を合わせて協力をお願いする兵藤。
「あの二人はエクスカリバーを堕天使から破壊してでも取り返したい。木場はエクスカリバーを破壊して仲間の復讐を果たしたい。目的は違ってもやることは同じだ」
木場?堕天使?復讐?話は複雑になっていく一方だ。
てか、また堕天使絡みの事件か?あまり堕天使にはいい思い出がないんだけどな。
そろそろ進む話に追い付きたくて口を開く。
「おい兵藤。話を進めるのは良いけどお前らが新幹線並の速さで話を進めるせいで俺が遥か後ろにおいてけぼりにされてるんだが」
「あ」と声を出し思い出したように
「あーそうだったな……わかった。エクスカリバーの話は二人を探しながらするけど木場の話は……」
「本人に直接話してもらった方がいいですね。他人が語っていいものでもないですし」
「そうか」
取りあえずは木場もなにかしら重いものを抱えているということはわかった。
「問題は二人が俺達悪魔の話を聞いてくれるかだよな……」
兵藤が悩ましげに言葉を絞り出す。
「二人は悪魔嫌いなのか?」
「いえ、二人は悪魔と敵対する教会から派遣された戦士です」
「悪魔と敵対……なるほどね」
だからそれで悩んでるんだな。一つ納得。
「最悪、話が拗れて関係が悪化するかもしれないし部長たちには黙ってた方がいいよな……小猫ちゃんは降りてもいいんだよ?」
「おい兵藤!俺も降りていいよな!いいよな!?」
匙の懇願に兵藤はニッと笑い、サムズアップして答えた。
「匙、同じ『兵士』として一緒に頑張ろうぜ?もしかしたら交渉が成功するかもだろ?」
「なんでだぁぁ!」
(哀れだなぁ)
目の前の二人のやり取りを眺める。
「私は降りません」
毅然として自分の意思を告げる塔城さん。どこか優しげに次の言葉を紡いだ。
「だってイッセー先輩も祐斗先輩も、大事な仲間ですから」
…この人も、強いんだな。
「紀伊国、お前も降りていいんだぜ?先月はゲームで迷惑をかけたし…」
「いや、気にするな。今回は自分の意思で参加するよ」
「でもお前戦いたくないんじゃ…」
「色々あったんだよ、色々」
「そ、そうか……」
それ以上は兵藤も追及しなかった。
俺の力と向き合い、『答え』を出す。その一助になるのではと思って俺はこの誘いに乗った。
ポンポンと匙の肩を叩く。
「さっさと二人を探しに行くぞ。ほら立て匙」
「やめてくれぇぇ!」
その後、泣き出す匙をなだめて教会から派遣されたという二人を探しに俺達は町に繰り出した。
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「────────」
「どうか、哀れな私たちに慈悲をぉぉぉ!」
「えっと、どこから突っ込めばいいのか」
二人の捜索はそう時間をかけることなく終わった。昨日の黒衣装ではなく白いローブを纏う二人がなにやら路頭で道行く人に物乞いしている。道行く人はそんな二人に奇異の目線を向ける。
「ええ…」
「なあ兵藤、本当にこの二人なのか…?」
「ああ…」
匙と兵藤はドン引きしている。昨日とイメージが全然違う。特に青髪のゼノヴィアさんは。
「────────!」
「───────────」
「─────────!?」
「───────!!」
物乞いの次は喧嘩を始めた。立てかけていた絵画を紫藤さんが持ち青髪のゼノヴィアさんと言い争っている。ついには顔をぶつけ合わせた。
貧相な格好をしたおっさんとその周囲にラッパを吹く天使の描かれた絵。芸術のわからない俺が見ても下手だなぁと思う絵だ。これだけで何があったかすぐに想像がついた。
大方騙されてこの下手な絵を買ってしまい、路銀を使い果たしてしまったとかそんなところだろう。さすがにエクスカリバーは売らなかったようだが。
二人を見つける前、町を歩きながら今回の事のあらましを聞いた。
聖剣エクスカリバー。
魔に属するものに必殺の効果を持つそれはかつての大戦で砕け散ってしまった。
教会は砕けたかけらを基に形、能力がそれぞれ違う七つの聖剣エクスカリバーを作り上げてプロテスタント、カトリック、正教会がそれぞれ2本ずつ、残り一本は行方不明という形で今に至った。
だが最近それが堕天使の幹部コカビエルによって三つの宗派から一本ずつが奪われてしまい当のコカビエルはこの駒王町に潜伏した。奪われた聖剣の奪還のために今目の前にいる二人が残った聖剣の内二本を携えてこの町にやってきた。
事前に町に派遣された神父も既に何者かに殺害されている。昨日この二人が旧校舎にいたのはその件で手出しをしないようグレモリー先輩に話を通しに来たからだそうだ。
「─────────!!」
「───────!!」
まだ目の前で言い争いを繰り広げる二人。昨日会っていなければ多分二人が教会の戦士だと信じなかった。本当にこの二人で大丈夫か?
ぎゅるるるる…。
「「…」」
腹の虫が音を立てた瞬間、二人は喧嘩をやめた。そしてその場に崩れ落ちた。
「…取り敢えず、何か食べる?」
兵藤の提案に教会の聖剣使い達は二つ返事で頷いたのであった。
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「─────────」
「──────────」
一心不乱に美味しそうに料理を食べる教会から来た二人。
よほど腹が減っていたらしいな。
あの後近くのファミレスに足を運び、交渉の前に相手の腹をいっぱいにすることにした。
交渉相手が空腹で倒れましたなんてことになったら話にならない。
二人は最後まで何やらぶつぶつといっていたが俺には全く分からなかった。
ちなみに代金は俺たち4人の割り勘になった。二人が食べている間塔城さんたちもパフェを注文して食べるなりして時間をつぶしている。
かく言う俺はメロンソーダで喉を潤した。レモンソーダやピーチソーダもありどれにするか悩んだがやはり呉島主任が一番だろうと思いこれにした。
俺はメロンソーダはソーダ系の飲み物の定番だと思っている。
「…うまっ、流石呉島主任だ」
「呉島主任って誰だよ」
「知らないのか?メロンニーサンだよ」
「いや知らねえ…」
逆に知っていたら俺の同類確定だが。異世界から来たという点で。
「アニメのキャラクターですか?私は聞いたことがありませんが」
「まあ、ある意味そうかもね」
眼鏡をクイッと直しながら答える。
合宿中、塔城さんはかなり多趣味な人だと兵藤から聞いた。
アニメにも理解があるらしい。
「────────」
どうやら二人の食事もひと段落着いたらしくスプーンとフォークを置いた。
「──────!」
紫藤さんが何か言いながら胸で十字を切ると兵藤たちが頭を抱えだした。
「おいどうした?」
「悪魔は十字に弱いんだよ…」
「──────────?」
布巾で口元を拭ったゼノヴィアさんが問う。雰囲気からして話の本題に入るつもりだ。
「エクスカリバーの破壊に協力したい」
答えたのは兵藤だった。二人は目を丸くして驚いていた。
「─────────────────」
「なんて言ったんだ?」
「破壊できるなら一本任せたいけどこっちが上に悪魔と協力しているとばれないようにしてくれ、だとよ」
「本当か?よかった…」
紫藤さんとゼノヴィアさんが真面目に話し合っている中、匙が答えてくれた。
その結果にホッと胸をなでおろす。
早くも交渉成立か。心配していた反面案外あっさり終わったものだな。
「─────────?」
と思ったら今度は俺に何か質問してきた。
「神器持ちの人間だと聞いたが君は戦えるのか?、だって」
「ん、ああもちのろんだ。それはこの二人が保証してくれるよ」
兵藤の翻訳を通してやり取りする。
「────────」
ゼノヴィアさんが口元を緩めて手を差し出す。つまりよろしく、と言ったのか。
「ああ、こちらこそ」
何となく相手の言ったことを察して握手で返す。最初言葉通じないし怖い人かなと思ったけど案外そうでもない?
「……紀伊国に対する態度が俺達と比べて明らかに違うよな」
「あわよくば教会側に引き抜くことも考えてるかもしれないです」
兵藤と塔城さんがこそこそ話しているが知らん。態度が違うのは俺が悪魔じゃなくて人間だからかもな。今度は兵藤がゼノヴィアさんに話しかけられた。
「────────────?」
「ああ、俺もドラゴンの力を存分に貸すよ。そうだ、もう一人呼んでいいか?」
少々の会話の後、兵藤が携帯でメールを打ち始める。
(もう一人?)
「…なるほど、状況は把握したよ」
木場が口につけた珈琲の注がれたカップをそっとソーサーに乗せる。
もう一人とは木場のことだった。
兵藤の連絡を受けてここに来たあいつが教会組を見たときゾッとするような雰囲気を一瞬放っていた。どうやらあいつの抱えるエクスカリバーに対する憎しみは相当なもののようだ。
「ねえ木場君、やっぱり聖剣計画のことで恨んでるのよね?」
「ああ」
紫藤さんの問いに木場は敵意を隠すことなく答えた。また新たなワードが出てきたな。
「でもあの計画のおかげで聖剣の研究は大いに発展したの。私のように聖剣の因子を持たない人も聖剣を使えるようにできるくらいにね」
「だから研究のための犠牲を容認しろって言うのかい?」
まだいつものマイルドな言い方ではあるが木場が目を鋭くし低い声で反論する。
…まずい、非常にまずい。木場の放つ敵意が一層色濃くなった。このままだと下手すれば成立した交渉が決裂してしまいそうだ。
「そうは言わないわ。この計画は教会の中でも忌避されている事柄よ。当時の責任者も追放されたわ」
「────────」
「その責任者の名は?」
「バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男よ」
物騒な二つ名に兵藤と匙が息を飲む。
堕天使の幹部コカビエルと3本のエクスカリバー、そして皆殺しの大司教か。どうやらとんでもない事件に俺は首を突っ込んでしまったらしい。
「バルパー・ガリレイ…堕天使を追えばたどり着けるかな」
木場が確かめるようにその人物の名を呟く。そいつが今堕天使とつるんでるってわけか。
珈琲を飲んで一息つくと話を続けた。
「…わかった、僕も情報を提供しよう。ここ最近の神父殺しの犯人と遭遇した」
「「!」」
神父殺しって…。この町は堕天使といい物騒すぎやしないか?
「彼はエクスカリバーを持っていた。名はフリード・セルゼンだ」
フリード…。確か合宿の時兵藤が言っていたレイナーレの部下だったというエクソシストか。イカれているとも言われていたな。会いたくないなと思っていたんだが。
「フリードってマジかよ…」
「────────」
「彼は元ヴァチカン法皇直属のエクソシストで13歳でエクソシストになった天才よ。でも度の過ぎた戦闘への執着と殺意で異端にされるのも時間の問題だったわ」
教会組はそいつのことを知っているみたいだ。天才だけどイカれているか。天才ってのはどこの世界も頭がどこかおかしいものなのか?
「元ヴァチカン法皇直属って…お前らそんなとんでもないやつと戦ったのか?」
「多分、あのときは手を抜いていた可能性が高いよ。先日戦った時の方が手ごたえがあったからね」
当時のことを振り返る木場。その表情から悔しさが滲み出ている。
「──────────」
「────────」
席を立ち出口へと向かう二人。これで話し合いは終わりか。紫藤さんは兵藤にウィンクしているし。
ふと気になったことを訊ねる。
「そういえばどうやって連絡を取るんだ?」
「心配ないわ。イッセーのおばさまから電話番号を教えてもらったからね」
「な!?いつの間に…!」
「紀伊国君もまたね!一緒に頑張りましょ!」
「了解だ」
軽く敬礼して返事をする。交渉は無事成功に終わった。後は木場に昔のことでも聞いてみるか。エクスカリバー木場の因縁。図々しいだろうが、今回の事件に関わる以上知らないといけない、俺はそう思う。
小猫「そういえば先輩、昨日私の裸見ましたよね?」
悠「え、い、いや遠くてあんまり見えなかったなー…」
小猫「…」(疑う視線)
悠「嘘ですバッチリ見ましたすみません」
長くなるのでスパークルカット。
ヒロインのヒントは今回から小出ししていきます。鋭い人はもう気付いてるかも?
イリナはバイリンガルになりました……というかイッセーの母と普通に話してたし大丈夫なはず。
次回、イカれたエクソシストの登場です。