ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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ビルド終わってしまった…。自分が一番うれしかったのは本物のマスター(エボルトじゃない)を見られたことですかね。前川さんも楽しんで演技していたように見えました。この一年間、ビルドにたくさんの思い出を貰いました、感謝。

丁度ファイズを見返しているタイミングでジオウにたっくんと草加が出演決定とは…。
二人が仲良くクリーニングで働いていたら多分笑いが止まらなくて死ぬ。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
3.ロビン
4.ニュートン
5.ビリーザキッド
7.ベンケイ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ



第26話 「新たな夢」

「日曜日も学校に行くのは辛いな…」

 

「そうか?私はそうは思わないが」

 

日曜日の朝、俺たちは兵藤の家へと向かう道中ゼノヴィアとだべっていた。

 

何故、日曜日の朝に俺たちが制服と鞄を持って兵藤の家に向かうのか。その答えはただ一つ。

 

今年の学園のプール開きを前に、オカルト研究部が生徒会にプール掃除を任されたのだ。

 

無論ただで休日を使ってプール掃除しろという訳ではない。部長さんはプールを一番に使うことを条件に引き受けた。そして今、俺たちは兵藤たちと合流するために家に向かっているということだ。

 

「だって部活に入ってる奴ならまだしも天王寺とかいないんだぞ?」

 

「あ、そうだった…」

 

残念そうにするゼノヴィア。そうするうちに兵藤家の前に着いた。兵藤の家は俺の家から4件ほど離れた先に建っている。近所と言えば近所なのだが。

 

「さて、着いたな」

 

早速インターホンを押し、来訪を知らせる。

 

『はい…あ、紀伊国さん!』

 

この声だけでも伝わる優しさの持ち主はアルジェントさん。アルジェントさんはレイナーレの一件から兵藤の家にホームステイしている。あまり詳しくは知らないが元々身寄りのない人だというし、そう言った面でも兵藤に救われただろう。

 

「アルジェントさんか、そっちは準備できてる?」

 

『はい、こっちももう出られます』

 

「了解」

 

問答から1分後、兵藤とアルジェントさん、そして部長さんが玄関から姿を現した。

 

「おはよう、兵藤。部長さんもおはようございます」

 

「おう、おはよう!」

 

「ええ、おはよう」

 

「ゼノヴィアさん、おはようございます!」

 

「やあアーシア」

 

そうして五人で学校への往路に着いた。その間俺たちはそれぞれの話題で談笑する。

 

「アーシア、宿題は済ませたか?」

 

「はい、イッセーさんが教えてくれたおかげでなんとか…ゼノヴィアさんは?」

 

アルジェントさんとゼノヴィアは同じ信徒と言うだけあって仲がいいようだ。初対面の時いろいろあったと聞いたが今はこうして良好な関係を築けているようで何よりだ。

 

「私も悠が教えてくれたおかげでなんとか乗り切ったよ。やはり漢字が難しいな、経済対策の恐ろしさをかいむ見たよ…」

 

「かいむじゃなくて垣間な」

 

「おっとそうだった。やはり難しいな…」

 

こういったゼノヴィアの言葉の間違いを訂正するやり取りも慣れてきた。

 

兵藤は掃除の後のプールで部長さんが披露する水着に興味津々のようだ。ゼノヴィアは先月の部長さんたちとのショッピングで水着を買ったらしいが頑なに見せてはくれなかった。その時は恥ずかしくて見せなかったのだと思っていたが今になって納得した。彼女はこのタイミングで披露するつもりなのだ。

 

ちなみに俺は普通に青いサーフパンツを持ってきた。今までおしゃれに興味がなかったし転生してからは家事に追われていたのもあって更に目がいかなくなっていた。

今度からはもっと目を向けてみようかな…?

 

「悠、鼻にご飯粒がついているぞ」

 

「げっ、本当だ」

 

指摘を受けて人差し指で鼻をつつき、引っ付いた米粒をペロリと舐める。

こんな風にしょうもない談笑を続けながら俺たちは学校に向かった。

 

 

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「それでは掃除を始めるわよ」

 

水を抜いて一面緑だらけになったプールを背に部長が宣言する。

皆はジャージ姿に着替えその手にはデッキブラシ、あるいはホースが握られている。

 

アルジェントさんがホースで水を撒いて一面緑のプールの隅に綺麗な青の底面が姿を現す。そこに兵藤たちが下りていき、デッキブラシで底を擦り始める。

 

改めて見ると底にあったのは藻、落ち葉、泥、更にはヤゴなど。ゼノヴィアはヤゴを拾っては興味深そうに観察していた。

 

…この汚れに汚れたプールの底を見た時からから心が疼く。

 

ダメだ、もう我慢できない!

 

口角を上げ、この疼きを叫びにして飛ばす。

 

「行くぜぇぇぇぇ!!」

 

「紀伊国!?」

 

デッキブラシを握り、擦りながらプールの底を駆け巡る。俺は昔から掃除をしていると何だか心が滾るのだ。

 

こういう汚れた床、窓、テーブルを見ると無性に綺麗にしたい、しよう、しなければという衝動に駆られ気が付いたら掃除道具を握っている時もある。今日のようなここまで汚れた物を見た時には凄まじい衝動が来るのだ。

 

誰もが爪が伸びるのを止められないように、俺はこの衝動を止められない。

 

鍛えられた腕力が可能にする猛烈な擦りのラッシュが底にこびりついた泥、落ち葉を一瞬にしてはがしていく。

 

「アルジェントさん、こっちに水くれェ!」

 

「は、はい!」

 

アルジェントさんがこちらに駆け付け、ホースで水を撒く。そして撒かれた部分を重点的に擦る。

 

「紀伊国先輩、まるで別人みたいです」

 

「…なんかあいつ、記憶を無くす前とはまるで別人だよな」

 

後ろで何か言われているような気がするが俺は知らん!

 

「俺はただ、掃除をするだけだァァァァ!!」

 

この後、調子に乗り過ぎて足を滑らせて顔面を強打した。ぶつけた瞬間、あまりの痛さに悶絶し記憶が曖昧になったがとにかく痛かったことだけは覚えている。

 

 

 

 

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「あぁ…気持ちいい…」

 

プール掃除の後、オカルト研究部の自由時間が始まった。

 

俺は足湯の如くプールに足だけ浸かりながら黄昏ている。決して泳げないからこうしているわけじゃない。掃除で疲れたから今はこうしてくつろぐだけに留めているのだ。

 

視線の先では兵藤は塔城さんに泳ぎを教え、木場は一人で泳いでいる。部長さんと朱乃さんはパラソルや椅子を立てて優雅にくつろぎ、グラスに注がれたジュースをストローで吸っていた。アルジェントさんは俺の後ろで日光浴をするなど各々好きな方法でこの自由時間を満喫していた。

 

「紀伊国さん」

 

不意に後ろからアルジェントさんに声をかけられた。ちなみにアルジェントさんの水着は胸にあーしあと書かれた詩集の入ったスクール水着だ。どこか幼さの残る雰囲気のアルジェントさんとべすとまっちしている。

 

「ん?どうした?」

 

「あの、今まであまりお話したことがなかったのでお話してみようかなと…」

 

「あーそういえばそうだね。クラスも同じなのにほとんど話したことなかったな」

 

言われてみれば確かにアルジェントさんとはあまり会話したことがなかった。

 

木場、塔城さん、朱乃さん――入部してそう呼ぶように言われた――とは合宿の時に一緒に特訓に励んだし、兵藤は今更言う必要もないだろう、部長さんとは部活のことで色々話したりする。それなのにアルジェントさんとは合宿で一緒に過ごすこともほとんどなかった。

 

最初に遭った時はまだアルジェントさんが悪魔じゃなかったから言葉も分からなかった。

 

「紀伊国さんはイッセーさんと友達なんですよね?」

 

「うん、あいつには今まで何度も振り回されてきたけどそれもいい思い出だな」

 

あいつには学校でもそれ以外でも振り回された。その中で一番と言っていいのがやはりレーティングゲームだろう。最初は義理として引き受けたがそこからのサーゼクスさんとの出会いは俺を大きく変えた。

 

「アルジェントさんにとって兵藤はどんな奴なんだ?」

 

今度は俺の方から聞いてみた。俺はまだ入部したばかりということもあってあまりアルジェントさんのことを知らない。アルジェントさんは瞑目して祈るように手を握って言った。

 

「…私にとってイッセーさんは初めての友達なんです。でも今はそれ以上に大切な人だと思っています」

 

「初めての友達…?」

 

アルジェントさんのような誰にでも笑顔と優しさをふりまけるような人に友達がいなかったとは意外だ。

 

「はい、私は幼い頃小さな教会に拾われてそこでシスターをしていたんです。神器の力で皆の傷を治す毎日、皆優しくしてくれて私も自分の力が役に立つのが嬉しかったんです」

 

初めて知るアルジェントさんの過去。神器使いは兵藤のように脅威とみなされて始末される者もいれば逆に力を認められて祭り上げられる者もいる。アルジェントさんは後者だったということか。

 

「でもある日、私は怪我をした悪魔と出会ってしまったんです。私はその人を放っておけなくて神器の力で治したんですけどそれを理由に教会を追放されてしまいました」

 

「!」

 

悪魔を癒して追放された…。コカビエル戦の時、俺はアルジェントさんが神器の力で仲間の回復に努める様子を何度も見た。今まで何とも思わなかった行為が実は教会側にとって大問題だったのか。

 

ゼノヴィアは確か、教会は些細な異端でも嫌うと言っていた。教会と敵対する悪魔も癒せる力が、異端の対象となってしまったということか。

 

「そうしてレイナーレ様に拾われて日本に来たところでイッセーさんと紀伊国さんに会ったんです」

 

「あの時か…ごめん、あの時何もしてやれなくて」

 

あの時はアルジェントさんの言葉を理解できず結果的に半ば兵藤に丸投げするような形になってしまった。

 

実は未だに気にしていたことでもあった。もしかするとそれで引け目を感じて今までアルジェントさんと会話できなかったかもしれない。

 

「いえ、あの時は仕方ないですよ。気にしないでください」

 

アルジェントさんは俺の謝罪を笑って受け入れてくれた。

 

「実はあの後、偶然またイッセーさんと会ったんです。その時は互いの立場を知った後だったんですけどそれでもイッセーさんは悪魔や教会に関係なく私の友達になると言ってくれました」

 

「そっか…ふふっ」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、あいつはとんだお人好しだなと思ってね。ホント、互いにいい友達を持ったよ」

 

「はい、…本当にイッセーさんはお人好しです」

 

互いにふふっとおかしそうに笑う。馬鹿で、変態で、お人好しの友達。最高じゃないか。変態であることを除けば。

 

話が終わると、今度はアルジェントさんが一瞬ためらうような表情を見せた後口を開いた。

 

「あの、紀伊国さんは記憶喪失だと聞きました」

 

「うん、事故で家族や視力と一緒に無くしてね」

 

ちなみに今は度の入ったゴーグルをつけている。頭を締め付ける感覚が少し不愉快ではあるが眼鏡なしと比べればましだ。

 

「やはり記憶を取り戻したいと思ったりするんですか?記憶喪失を辛いと思うことがあるんですか?」

 

アルジェントさんは言いづらそうな表情で恐る恐る訊ねた。

 

記憶喪失がつらい、か。そもそも俺は紀伊国悠とは別人だから記憶喪失ではないのだが転生の事を言えず記憶喪失で通している以上こうした話題は避けられない。

 

プールの水を手ですくい、被って答えた。水の冷たさが日差しの暑さを少しばかり和らげた。

 

「…正直なところ、天王寺や上柚木には悪いけど俺はあまり無くした記憶にこだわっていないし取り戻そうという気持ちは薄い」

 

「どうしてですか?」

 

アルジェントさんは不思議そうに再び問いかけた。

 

「それは今が幸せだからだよ。オカルト研究部の皆や天王寺たちと笑って過ごせる今が最高に楽しい。ゼノヴィアには振り回されっぱなしだけどそれでも一人暮らしだった時と比べると断然家が賑やかになった。記憶喪失のことなんて気にする間もないくらいどたばたして楽しい今を俺は生きている。無くした思い出の分、いやそれ以上にたくさんの思い出をもらっているんだ」

 

「…!」

 

そう答える俺の表情は自然と笑んでいた。これは紛れもない俺の本心だ。苦悩して、逃げて、立ち向かってたどり着いた未来。それはこんなにも楽しくて笑顔溢れるものだった。

 

「アルジェントさんは兵藤たちといる今は幸せ?」

 

「はい!イッセーさんだけではありません、部長さんにもイッセーさんのお父さまやお母さまにもよくしてもらっています。悪魔に転生して知った家族の温かさに生きていける今が、本当に大好きです」

 

満面の笑みで答えるアルジェントさん。この純粋さと可愛さ…やはり天使か。

 

「ならそれでいいんだ。過去に気を取られて後ろばかり見ていたら、隣や前にある身近な幸せには気づけない」

 

エクスカリバー事件のときの木場がそうだったからな。あの時のあいつは復讐に囚われて頼れる仲間に頼ることを忘れていた。兵藤が手を差し伸べたおかげで今はより他の部員たちとも交流しているようだ。

 

「そうですね…あれ?そういえばゼノヴィアさん、まだ来ませんね」

 

「あ、ホントだ」

 

確かにどこを見てもゼノヴィアの姿が見当たらない。もしかするとまだ着替えに手間取っているのか?

 

「ちょっと様子を見てくる」

 

プールに突っ込んでいた足を出して立ち上がり、おそらくいるであろう女子更衣室に向かった。

 

「おーいゼノヴィア、大丈夫か?」

 

俺は女子更衣室のドアをノックし、中にいるであろう人物に呼びかける。

 

別に覗きという卑しいことを目的にこのようなことをしているのではない。単にいつまでたっても姿を現さないゼノヴィアを心配しての行動というちゃんとした理由がある。

 

するとガチャっとドアが開き、ゼノヴィアが顔を出した。

 

「悠か」

 

「…ッ!」

 

おもむろにゼノヴィアが更衣室から姿を現した。戦士らしく筋肉も適度についた引き締まった体つきだ。それに出る所もしっかり出ている。そんじょそこらのグラビアアイドルよりもかなりスタイルがいい。

 

水着は部長さんや朱乃さんほどではないがそこそこ露出のあるビキニだ。年頃の男子には中々目のやり場に困るものではあるが。

 

「こういうのは初めてで慣れなくてね、時間がかかってしまった」

 

「そっか」

 

信仰一筋だったゼノヴィアはこういった水着を着るのも初めてか。

ふとゼノヴィアが息をつくと、真剣な表情に切り替わった。

 

「悠…私はついに答え…いや夢を見つけたぞ」

 

「答え…?ああ、あの話か」

 

昨日話していた自分の生き方についてか。まさかこんなところでその話を振ってくるとは思わなかった。

 

「少し私についてきてくれるか」

 

「…?ああ」

 

返事をした俺はゼノヴィアの後に続いて、近くの用具室に入っていった。部屋の中は薄暗く小さな窓から仄かに日が差し込んでいた。何だってこんなところで話をするんだ…?

 

「…じゃあ聞かせてもらおうかな」

 

「ああ。私は信仰のために封じてきたものを解き放ち、堪能することにした」

 

「おー」

 

それはつまり、信仰一筋だったゼノヴィアがより年相応のJKに変わるということか。

肩の力を抜いて、環境の変化を受け入れ楽しむ。彼女がそう思ったのならそれでいい。

 

「その上で君に折り入って頼みがあるんだ」

 

ゼノヴィアの瞳が俺を真っすぐに捉えた。そしてこう言った。

 

「私と子作りしないか?」

 

 




アーシアとの絡みが全くなかったのでここでがっつりやっておきました。これからも原作キャラとの絡みはしっかり意識してやるつもりです。

ドキレディで書くつもりだったゼノヴィアをヒロインに抜擢した理由をここで書いておきます。
・単なる作者の好み
・イチャイチャだけでなくおバカキャラで日常編も楽しく書けそうだと思ったから。
・一誠の赤に対抗する青
イッセー(赤龍帝)とリアス(紅髪)の赤
悠(スペクター)とゼノヴィア(青髪とデュランダル)の青
X×Xの神崎光也とはそのうち青VS蒼なんてやるかもしれません。でもあれとやりあえるチートなんて一体…。

次回、「白龍皇襲来」

予告する。次話は9月1日0時00分に投稿だ。

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