Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
3.ロビン
4.ニュートン
5.ビリーザキッド
7.ベンケイ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
「えっ」
その衝撃に一瞬、俺の脳と心臓が活動を停止した。
…今、何て言った?
私 と 子 作 り ?
「聞こえなかったか?もう一度言うぞ、私と」
「いやいや聞こえたから!バッチリ聞こえたからいいって!」
あれ、この流れつい昨日もあったような…?それに俺はまだ心の準備が出来ていない。今は突然の発言にすごく混乱している。俺はその混乱を少しでも鎮めようと息を深く吐いた。
「ちなみに理由を聞いてもいいか…?」
俺は突然の頼みのわけを恐る恐る尋ねた。
「うん、私は子供のころから夢や目標と言ったものが全て信仰が絡んだものだったんだ。だから主を失ったことを知ったと同時にそれらも全て潰えてしまった」
「うん」
「悪魔になった今どうすればいいかわからなくなった私は部長に訊ねたんだ」
『悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲に生きる存在。難しく考えることはないわ、あなたの好きに生きていいのよ』
「だから私は今まで信仰のためにと封じてきたものを解き放ち、味わいたいと思っている」
「うん…?」
「そうだ、私は女の喜びを解き放ち、知り、子供を産む!それが私の答えだ!」
「ええええええ!!?」
思わず叫んでしまった俺の口を咄嗟にゼノヴィアが手でふさぎ、自身の口に人差し指をそっと立てた。取り敢えず落ち着いた俺は手をのけて話を続ける。
「いや待て話が飛躍しすぎだろう!封じてきたものなら他にもあるんじゃないのか!?」
「そうだ、オシャレ、娯楽、その他ごろごろ…。今までは宗教上の貞操観念があってできなかったがやはり女として生まれた以上、女にしかできないことをしたいんだ」
うん、ごろごろじゃなくて諸々な。雷雲を出してどうするんだ。
しかし困ったな。まさかそういう方面に答えを出してしまうとは。やはり彼女の浮世離れした思考は俺には予測不可能なものなのか…?
「しかし何で俺と…?」
子作りしたいのならパッとしない俺ではなくルックスも中身もバッチグーな木場とやればいいと俺は思うのだが。
「暮らしを共にしてわかった、君は信頼できる人間だ。掃除もできるし料理もおいしい、私が困っているとすぐに駆け付けて助けになってくれる。…それにあのコカビエルを真正面から打倒した男だ。やはり戦士として相手にそれなりの実力を私は求める」
「うーん…そこまで言われると嬉しいけど…」
そんなに褒められると照れるな…。それにちゃんと俺の日頃の生活態度を見ていたのか。
ゼノヴィアがそっと自分の胸に手を当てた。
「不服か?これでもスタイルには自信があるんだ。部長ほどではないがアーシアよりは胸はあるぞ」
指を滑らかに動かし、谷間もできるサイズの胸が弾力に揺れる。
「う…」
確かに俺も思った。部長さんの胸は制服越しにでもわかる大きさだ。すなわち、デカい。ゼノヴィアも部長さんほどではないがそれでも制服越しにでも思うほどの大きさはある。
「いや!俺だってそういうことをしてみたいなーと思う年頃ではあるけど子供は…」
「大丈夫だ、基本的に私が育てる。だが父の愛情を子が望んだ時はしっかり注いでやってほしい」
それって下手すると俺が子供に嫌われるよね?俺も平成ライダー恒例のクソ親父の一人に数えられるのは嫌だ!俺は人に嫌われるのが一番嫌いなんだよ!
「悪魔の出生については調べてある。なかなか子供が出来ないそうだが私は転生悪魔で君は人間、生まれる確率は純血よりも遥かに高いはずだ。思春期の性欲があればかなりのペースで行為ができるだろうな。そうすれば最低でも10年以内に一人はできる」
そうなのか…?悪魔の出生事情なんて初めて聞いた。寿命が長い分、子供が出来ないのか。道理で純血の悪魔が貴重とされているわけだ。
そう言ってゼノヴィアは自分のブラジャーに手をかけ、外した。俺は咄嗟に手を目で覆い隠した。
「ちょ…!」
「こういったことをするのは初めてだが手順をしっかり踏んでくれれば好きにしてくれてかまわない、さあ」
ゼノヴィアがそっと顔に当てた俺の手を取り自身の体に寄せる。その何でもない動作が今の俺にはとてつもなく艶やかに見えた。
待ってくれ、いや待ってください。俺もこういったことをするのは前世も含めて初めてなんだ。そもそもこういう状況に置かれること自体が初めてだから緊張とドキドキが合わさって何をしたらいいのかわからないよ…。
「私を抱いてくれ」
「――ッ!」
俺を見つめる彼女の瞳は期待に輝いている。本当にこんなところで初体験を迎えてもいいのか…!?
今、俺の眼前に男なら誰もが望むような光景がある。
薄暗い用具室に年頃の男女が二人、シチュエーションとしては最高だ。
今、俺の中にあるこの気持ちは葛藤。
今までのように状況に流されるばかりでは取り返しのつかないことになるという良心とでもいうべきものとこのまま若い衝動に身を任せてしまえばいいという悪魔の囁き。あ、そういえばゼノヴィアは悪魔だった。
最初は拮抗していた良心と悪魔の激突もゼノヴィアの話を聞いていくうちに悪魔がじりじりと押し始め、ゼノヴィアがその豊満な胸を露わにしたことで悪魔の勝利は確定したと言っていいほどになった。
「……」
微かに残る葛藤を抱えながらも俺の手が自然とゼノヴィアの胸に伸びる。ゆっくりとだが少しずつ距離を詰めていく。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。…ちょっと触るくらいなら…。
良心の叫びが小さくなり衝動に飲まれかけたその時、外からどたどたと慌ただしい音が聞こえた。
「ひー、危なかったぜ…?」
ガタン!と音を立てながらドアを開けて入ってきたのは兵藤。額に流れる汗を拭ってこちらを一瞥した。
「あ」
三人の目が合う。この時点で俺の弱まった理性は戻ってきていた。兵藤は無言でこっそりと踵を返しドアノブに手をかけた。
「…えっと、お邪魔しましたー…」
「いや待て待て!ゼノヴィアを止めてくれ!!」
慌てて用具室から出ようとする兵藤を呼び止める。
俺は何をしようとしていたんだ!?そうだ、無計画に事を起こすのは互いによくない。それにゼノヴィアは同居人だ、下手をすれば関係が悪化して今後の生活にも響く。それをわかっていながら俺は…!
「どうした悠?私と子作りしよう」
「お前は空気を読めェ!」
ゼノヴィアは何もなかったかのように行為の再開を促した。頼むからお前は場を読む力を養ってくれよ!
すると更なる第三者の声が近づいてきた。
「ここはイッセー君に直接決めてもらった方がいいですわ」
「ちょっとイッセー!私と朱乃どっちが……」
用具室に姿を現したのは部長さんと朱乃さん。入って来るや否やすぐに兵藤に詰め寄る。そして兵藤が視線を向ける方に二人が視線を向けるのも時間の問題だった。部長さんは目を見開いて驚いた。
「ゼゼゼゼノヴィア!?あなた紀伊国君と何を!?」
「子作りだが?」
「こづっ!?」
「あらあら、ゼノヴィアちゃんを食べようなんて紀伊国君も大胆ですわ」
朱乃さんはこの様子を見てもいつものようにニコニコとした笑顔を崩さなかった。
部長さんはため息をつき瞑目するとすぐにいつもの表情、いやいつもと少し厳しい表情で言った。
「…ちょっとあなたに訊きたいことがあるわ。ついてきなさい」
「はい…」
渋々ながらも部長さんについていき用具室を後にする。
歩きながらちらりとゼノヴィアを一瞥すると彼女はこう言った。
「私はいつでも仕掛けるからな」
マジですか…。
そして連行されてから事情説明の後、部長さんにしこたま説教された。
正座で足がしびれながらの説教だったがその様子を眺める塔城さんがゴミを見るような顔をしていた。きっと兵藤はああいう顔にさせるようなことをたくさんしてきたんだろうな…。
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「あー怖かった…」
鞄を手に引っ提げてプールを後にする。
連行された後、プールサイドに正座させられて説教された。
言われてみれば年頃の男女二人だけで暮らすのってあまりよくないよな…。二人しかいないということは若さゆえの過ちと言うものを止める人がいないということでもあるから。
…俺は今のゼノヴィアとの二人暮らしが楽しい。今まで学校が終わればずっと家で一人で過ごしてきた。家事をこなせるようにはなったけど学校の楽しかったことを話す相手がいない。相棒がいるけど喋れないから話し相手にはならない。その時はまだ自分の力について悩んでいたしそれもあって暗く、退屈で寂しい日々が続いていた。
でもそんなとき、あいつがやってきて全てが変わった。毎日毎日、あいつの破天荒なところに振り回されて苦労しているけどそんな日常がたまらなく好きだ。互いに学校であった他愛もない出来事を話しては笑い、俺の作った料理を本当に美味しそうに食べてくれる。これも全部ゼノヴィアのおかげだ。
用具室の時躊躇したのはもちろん、ゼノヴィアが嫌いだからという訳ではない。あいつも俺が嫌いだったら今日みたいなことはしないだろうし俺もあいつが嫌いだったらすぐに拒絶していただろう。でも、俺はあの先に行って関係が変わるのが怖いんだ。もしかするともう楽しい日常に戻れなくなってしまうかもしれない。折角手に入れた幸せを俺は手放したくない。
「…俺はどうすればいいんだよ」
あいつは兵藤と同じ真っすぐなタイプだから何度も俺にアタックをかけるだろう。きっといずれは応じなければならなくなるかもしれない。逆に俺の方が我慢できずに襲ってしまうこともあるやもしれない。
無論、俺も年頃の男子だからそれなりに性欲はあるしそういうことをしてみたいという願望もある。でも、それ以上に今の幸せを保ちたいという願いが強い。たくさん苦労してたどり着いた今の日常。
俺はそれを何としてでも守る。
「家に帰ったらあいつに何て言おうかな」
家に帰った後のことをあれこれ考えていると校門を出た。そして俺はその先の光景を見て足を止めた。
校門を出た先には木場とゼノヴィアが各々の剣を見知らぬ銀髪の少年に突き付ける光景があった。険しい表情を浮かべる二人の剣士の剣を握る手は心なしか震えていた。
一歩間違えれば首が即座に飛ぶ状況にあっても銀髪の少年は余裕の表情を崩さず兵藤に指を突き付けている。
「おいおいどうした、白昼堂々と穏やかじゃないな」
昼間から喧嘩…いや、喧嘩にしては派手だな。ゼノヴィアが視線を銀髪の少年から外すことなく俺の言葉に答えた。
「悠、こいつは白龍皇だ」
「!?」
驚きながらも即座に戦闘態勢に入った。こいつがあの時コカビエルとフリードを回収していった『白い龍』…!あの時見た純白の鎧の美しさと鎧から放たれる圧倒的なプレッシャーは今でも鮮明に覚えている。
少年がふとこちらに振り向いた。鋭い眼差し、端正な顔立ち、世間一般で言うイケメンと言う奴だ。
「誰だ君は?見たところ悪魔ではないようだが」
白龍皇が問いかける。
「紀伊国悠。こいつらの仲間だ」
「そうか」
白龍皇は生返事で返した。伝説の聖剣使いでも神滅具使いでもない俺はお呼びでないらしい。
「―兵藤一誠、君は世界で何番目に強いと思う?」
「は?」
俺たちは突然の問いに困惑した。
「不完全な禁手状態だと上から数えて4桁…といったところか」
「何が言いたいんだよ」
兵藤がやや不満げに食って掛かった。
「この世界は強者が多くいるということだ。魔王やセラフのように広く名を知られている者もいれば名もなき強者もいる。例えるなら先月コカビエルを打倒したあの戦士か…いずれ手合わせ願いたいものだ」
(マジヤベーイ)
白龍皇は不敵に笑う。
いつの間にか白龍皇にロックオンされているよ…。さっきの自己紹介で余計なことを言わないでよかった…!
「だがどんなに強者が増えたとしても一位は変わらない。彼、いや彼女と言うべきか…不動の一位がね」
「もったいぶらずに早く言え」
こいつもポラリスさんと同じで言い方が周りくどい奴だな。
「いずれわかるさ。…兵藤一誠は貴重な存在だ。しっかり育てた方がいい――そうだろう、リアス・グレモリー」
不意に白龍皇の視線が俺、いやその後ろに向いた。
「…」
振り返るとそこに部長さんや朱乃さん、塔城さんとアルジェントさんがいた。アルジェントさんは心配そうな表情を浮かべ他の三人はいつでも戦えるように構えている。奴はふっと笑い兵藤に突き付けた指を下ろし、言った。
「何、今日は戦いに来たわけじゃない。この町にはアザゼルの付き添いで来ていてね、これはただの暇つぶしさ」
「やはり堕天使と…」
奴の言葉を受けてゆっくりと木場とゼノヴィアが各々の得物を引っ込める。武器を引っ込めはしたが顔には警戒の色がまだ残っている。後ろの三人もまた警戒を少しだが解いた。
…本当に白龍皇は堕天使側だったのか。赤龍帝が属する悪魔サイドに敵対する堕天使サイドに白龍皇。これもいずれ戦うことになるという赤と白の龍の運命なのか。
「過去、二天龍に関わった者はろくな生き方をしていない。…あなたはどうだろうな、リアス・グレモリー」
奴の言葉に部長さんは眉をひそめた。…あれ、その言い方だと俺もろくな生き方をしてないってことになるのでは?俺一回死んでるし…。
「フ、じゃあなグレモリー眷属。次は会談で会おう」
白龍皇は踵を返すと、手を軽く振ってそのまま去ってしまった。
(あいつ、これだけの面子を前にしても余裕だったな)
額に一筋の汗が走った。
神に喧嘩を売ったという『二天龍』の片割れが宿り、禁手にも至った神滅具使い。
力を行使せずとも俺たちは力の差と言うものを知らしめられた。
…このままじゃ、仲間を守れない。こいつより強い奴なんてざらにいるだろう。もしそんな奴が脅威になることがあれば間違いなく敗れる。
コカビエルを倒したことで俺は少し浮かれていたのかもしれない。このままの強さでも十分脅威を太刀打ちできると。でもそうじゃない、俺は所詮井の中の蛙だった。
(…もっと強くならないと)
拳を握り、密かに決意を固めた。
正宗、蛮野、仁、笛木「待ってるよ」
悠「嫌だ!」
大和「俺たち」
ポラリス、ヴァーリ、大和「銀髪三銃士!」
どこかのヴァルキリー「私だっていますよぉ!ひっく!」
グレイフィア「…ハァ」
次回、「魔王は魔法少女」