遂にビルドソングコレクション発売ッ!今年の挿入歌も最高でした!
ファイズ見返し中。草加いらないこと言うなよと思いつつも草加の存在がいいスパイスになって人間関係やストーリーが面白いことになってるなと思うこの頃。CSMデルタギアまだかな。
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
3.ロビン
4.ニュートン
5.ビリーザキッド
7.ベンケイ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
翌日の朝、学校は公開授業の日であり生徒だけでなくその親御さんたちが来る日であった。更には親御さんだけでなく中等部の生徒やその親御さんの見学もOKということで更に多くの人が集まる。
大勢の人が集まるのは少し苦手だから緊張する。しかし今の俺にはそれ以上に悩ませるものがあった。
結局昨日は家に帰ってから、ゼノヴィアとほとんど口を利くことはなかった。こちらとしてもあんなことがあったものだから話しかけにくいし、向こうも何となく雰囲気を察したのかあまり話しかけてくることはなく気まずい雰囲気が流れた。
こんなこと初めてだからどうすればいいのかわからないというのが現状だった。一体どうすれば元の関係に戻れるだろうか…。
「久しぶりに沈んだ顔をしてるわね」
声をかけてきたのは上柚木。相も変わらずのツンツンした表情で俺の顔を伺っている。
「…ああ、ちょっとゼノヴィアとトラブってな」
ずれた眼鏡をくいっと上げながら答える。
「あら、同居人とトラブルを起こすなんて大変ね」
「すこぶる居心地悪くなるぞ、これが同居人が出来ることのデメリットだなって思ったよ」
家族など複数人で暮らすならまだしも二人暮らしだとそういった関係の変化をもろに受ける。よい方向への変化なら問題ないのだが一度悪い方向へ変化するとたちまち二人でいることさえ気まずくなってしまう。
「そういえばお前の親は来るのか?」
公開授業となれば当然気になる事柄。俺は早速上柚木に訊ねた。
「ええ、パパは来れないみたいだけどママが来るわ。あなたは…そうだったわね、ごめんなさい」
うかつだったと申し訳なさそうに謝罪する上柚木。
「いやいいさ、気にするな」
変なところで気を使わせてしまったようだ。…そのことは転生したときからわかっていたことだ。俺は二度と両親に会うことはない。それでも俺は異世界で生きることを決めたんだ。
「悠」
不意に後ろから声をかけられ振り向く。するとそこには俺の目をじっと見つめるゼノヴィアがいた。
「ゼノヴィア…どうした?」
まさか何の前触れもなくいきなり向こうから話しかけてくるとは…。
「昨日は済まなかった」
ゼノヴィアは申し訳なさそうに頭を下げて謝罪の言葉を告げた。
「昨日は君のことを考えずに先走ってしまった。やはりいきなりは難しいだろう」
昨日のことを向こうも悩んでいたのか。一応、ヘタレなせいで向こうの期待に応えてやらなかったこっちも悪いのかも…いや、それでも無計画にそういうことをするのはよくない。
俺は少しでも彼女を元気づけようと笑って謝罪を受け入れることにした。
「あ、ああまあ気にするな!そう、だからな、ちゃんとした関係を結びそこからより親しくなっていくという手順をだな…」
うんうんと頷いていると、ゼノヴィアが目の前でおもむろにポケットから何かを取り出した。
「だから、まずはこれを使って練習しよう」
取り出したのは0.01mmと書かれた小さな袋。丸い輪のような隆起があるそれは紛れもなく、コンドームであった。
「あー……」
死んだ。社会的に死んだ。クラスの皆が俺とゼノヴィアを目を見開き、あんぐりと口を開けて見ている。
ああ、そうだ。もしオリジナルのオルフェノクに覚醒したらスマートブレインに養ってもらおう。うんそうしよう、それがいい。
……
「ってちょっと待てぇぇぇぇぇぇ!!お前なんてことをしてくれるんだぁぁぁぁぁ!!」
ガタっと立ち上がってゼノヴィアに抗議する。俺の心で発生したツッコミが烈叫となって喉から迸る。
何でこんなことするの!?何でお前はいつも予測不可能な方向に爆走するの!?何で謝罪で話を終わらせずに新たな爆弾を投げてくるの!?もっとTPOをわきまえろよ!人前で出すものじゃないだろうそれは!!
「紀伊国貴様ァァァ!お前もモテない軍団を裏切るのか!?」
「お前ならきっとわかってくれると思っていたのに…!!」
血涙を流しながら叫ぶ松田と元浜。知らねえよ、俺はそんな軍団に入った覚えもないしわかるつもりもないよ!
「あなたね…」
やめろ上柚木!ごみを見るような目で俺を見るな!そういうのは天王寺や兵藤に向けろ!
「悠君に先を越されてもうた…!」
上柚木の隣で悔しそうに拳を握る天王寺。お前はすぐ隣にいる人の好意に気付け!
「おやおやー?紀伊国君とゼノヴィアっちはいつの間にそういう関係になったんですかね…!」
眼鏡をくいっと持ち上げながらニヤニヤした笑みを浮かべた桐生さんが歩み寄る。ダメだ、皆に完全に誤解されている。
「いやいや、俺は何もしてない!信じてくれよ!」
手を大きく振って身の潔白を訴える。しかしそれでも桐生さんはにやにやをやめない。
「まあゼノヴィアっちはスタイルがいいからねー、二人っきりで一緒に暮らしていれば食べたいって思っても仕方ないよね」
「あいつのスタイルがいいのは認めるが何もないんだよ!」
俺は何もアクションを起こしていない、起こしたのは向こうなんだ!…ゼノヴィアとそういうことをするのはやぶさかではないけれども!
「あの、ゼノヴィアさんが持っているものは何なんですか?それにゼノヴィアさんを食べるとは一体…」
この場にいる皆の中でアルジェントさんだけは状況を理解できず困惑した表情を浮かべている。
そこに桐生さんがすかさず耳打ちをする。
耳打ちの途中、アルジェントさんが次第に顔を真っ赤にした。
「うぅ……!」
快活に笑う桐生さんがポンポンとアルジェントさんの肩を叩く。
「アーシアもゼノヴィアっちみたいに積極的に攻めていくべきよ!ただでさえ兵藤の周りには強敵ばかりなんだからさ、ここらで大胆な手を打ったらどう?そうしないとあいつ、取られちゃうわよ?」
「それは嫌です!」
「だったらなおさらよ、清楚な雰囲気もいいけどやるときにはやらないとね!」
「う、うーん…」
桐生さんの押しにまごつくアルジェントさん。二人は兵藤を落とす作戦を練っているのか?確かに部長さんとも暮らしているあいつを落とすのは難しいだろうな。
血涙を流す松田と元浜が俺の胸倉を掴み上げる。
「おい紀伊国!毎日家で一体ゼノヴィアちゃんと何をしているんだ!?」
「お前もイッセーのように美少女と…おのれぇぇ!」
「何もしてねえよ!」
普通に勉強して、ご飯食べて、風呂入って、寝てるだけだよ!何もいかがわしいことはない。そうだ、俺は何も悪くない!それでも空気を読めないゼノヴィアが話しかけてくる。
「それで性交の予定だが…」
「もうやめルォ!!」
興奮しすぎて途中、ショットガンで親友を助ける後の脱獄犯のような口調になってしまった。
ざわざわ…ざわざわ…
ダメだ、教室がざわついている。教室にいる皆が俺たちを見てひそひそと何かを話している。見るな、そんな目で俺を見るな!!これ以上は俺の心が死ぬ!
この日、俺は三度目の死(今度は社会的な)への恐怖を味わった。
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騒ぎは授業を担当する先生が来たことであっという間に鎮静化し、そのまま授業が始まった。
公開授業が行われるのは英語の授業。悪魔の言語能力を持つ兵藤やアルジェントさん、ゼノヴィアの独擅場になるだろうなぁ。
教室の後ろや外から親御さんたちや中等部の生徒たちが俺たちの授業を受ける様子をじっと見ている。そして机に座って授業を受ける俺たちが何をやっているかと言うと。
「今日は配られた紙粘土で好きなものを作ってください。自分たちの脳裏に浮かんだものをありのまま表現してください…そういう英会話もあるんです」
ねぇよ。恐らく俺と同じ様なことを皆思っただろう。海外旅行で粘土を使って相手に自分の意志を伝える状況ってどうやったらそんな風になるんだよ。
(何を作ろうかな)
ちぎった粘土を手のひらに乗せ、転がしながら考える。
案は既にいくつかある。眼魂、スペクターのマスク、葛城巧が作った禁断のアイテム…。どれも面白そうとは思うのだがこれだ!というところまではいかない。
(ゼノヴィアは一体何を…)
ちらりと隣の席で黙々と手を動かすゼノヴィアを見る。何やら二つにちぎった粘土を長く伸ばしているみたいだ。
すると今度は伸ばした粘土を平たくし、先端に向けて細くさせ始めた。…もしかしてあれは剣か?
…ああ、何となくわかった。
(あいつデュランダルを作るのか…)
多分、残った方でエクスカリバーも作るつもりだろう。ゼノヴィアらしいと言えばゼノヴィアらしいチョイスだ。
そうだ、いっそ夏っぽいものを作るのはどうだろうか。
夏と言えば、海、スイカ、セミ、カブトムシ…。
カブトムシ?
(そうだ、それにしよう)
思いついてすぐにイメージを現実の形にするべく作業を開始する。
数分後、俺の机に鎮座しているのは粘土製、カブトゼクター。
必殺技を起動するボタンのついた脚や大振りな角、背のデティールなど思い出せる限りのものをしっかり再現した。角が自重に耐え切れずやや垂れ下がっているのは愛嬌だ。だがやはりあのカブトを代表するあの赤色でないと物足りない感じがする。
一息ついて喜びの声を漏らす。
「よっし、でき…」
「ひょ、兵藤くん…?」
遮るように後ろで聞こえた先生の声。それにつられて皆の視線が俺の後ろの兵藤…いや、その作品に集まっていた。俺も何事かと振り返ってすぐ後ろの兵藤の作品を見た。
兵藤の机上で完成されたのは粘土製の部長さん像。
揺らめく髪、表情、女性らしさを強調する体の滑らかな曲線、艶やかな動作のついた手足。
本物の部長さんと遜色ない素晴らしい出来栄えだ。
それを見た俺の内心にはただただ恐ろしい出来栄えを持つこの作品への驚きと称賛の気持ちしかなかった。
(凄い…一体何をどうしたらこんなものを作れるんだ!?)
「「おおお!!」」
「素晴らしい…君にこんな才能が眠っていたなんて…!先生は感激しているっ!!」
教室で見学していた親御さんや生徒達もこの場にいる皆が感嘆の声を上げた。
先生は全身を震わせ、感激の表情で兵藤の作品を褒めたたえた。…あんた英語の先生じゃないのか?
「う、嘘よ!リアスお姉さまがあんな野獣に…!」
「わ、私にそれを頂戴!5千円出すわ!」
「いいや俺は7530円だ!」
「8000!俺が今夜のお供にするんだ!」
やがて生徒のみならず親御さんたちからも声が上がり始める。公開授業が行われているはずの教室はいつの間にかオークション会場と化した。
誰がこの事態を収拾するんだ…。
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公開授業が終わり昼休みになった。
俺は天王寺と上柚木、ゼノヴィアと共に公開授業で多くの来校者で賑わう学校を見て回ることにした。
親御さんたちを見回していた上柚木は突然、一点を見つめるとそのまま嬉しそうにその方向へ走っていった。
「パパ!?」
その先にいたのは中年の男。上柚木に気付いた男も嬉しそうな表情で迎え入れる。
「パパ、シンガポールに行ってたはずじゃ…!」
「やあ綾瀬、公開授業と聞いてシンガポールから飛んできたんだ。愛娘が勉学に励む姿を見に行かないわけがないだろう?」
そのまま二人は俺たちの存在を忘れて談笑し始めた。
…上柚木の家族か?どことなく上柚木と似ている気がする。
「あの人って上柚木のお父さんか?」
「せやで、最近シンガポールで遺跡発掘してるって聞いたけど来てくれたんやな」
…ふーん。
俺は口角をニヤッと上げて天王寺に言った。
「…天王寺、俺はゼノヴィアと学校を回っていくからお前は未来のお義父さんに今から挨拶しに行ってこい」
「ええ!?そんなこと言わなくても挨拶するつもりやけど…」
疎い奴だな。天王寺の肩をポンポンと叩き、一気に押し出す。
「じゃ、行ってこーい!」
「おわっ!?」
押し出された天王寺がふらふらと上柚木親子の下へ近づいて行った。
俺は天王寺を押し出してすぐにゼノヴィアの方へ駆け寄る。
「…私のために無理をさせたか?」
「いいや、あいつはいちいちこういうことを気にしないさ」
ゼノヴィアが辺りを見回す。そこにいるのは家族と談笑する同級生たち。俺にとっては見慣れた光景であり、今まで当たり前だった光景だった。しかし、俺は二度とああすることはできない。
「これが家族、か」
ふとゼノヴィアが思ったことを漏らした。
…そういえば、こいつの昔のことは教会の戦士だったということしか知らないな。
「…お前は親の顔とか知ってるか?」
折角だからこの際、訊ねてみることにした。
「いや、物心ついた時から教会の施設で育てられたから見たことはないね」
被りを振って答えるゼノヴィア。
「そっか」
こいつも戦士やシスターという方向は違えどアルジェントさんと同じ道を歩んできたということか。家族の温もりを知らない彼女にとってそれに相当するものと言えばやはり主だったのだろうか。それを失った今の彼女は…。
校内を歩くうちに体育館に着いた。
賑わっている校内と違って少しは閑散としているかと思いきや思いのほか人が集まっていた。
そしてその大半はステージに集まっている。何やらカメラのシャッターを切る音がたくさん聞こえてくるが。
「悠、あれはなんだ?」
ステージを指さすゼノヴィア。ステージ上にいるのは黒髪をツインテールにした快活な雰囲気を放つ美少女。
可愛らしいステッキを持って身にまとう衣装は魔法少女とかそういった系のアニメに出そうな物、つまりコスプレだ。黒髪と赤紫色の瞳という組み合わせにどこか既視感を覚える。同じものを持つ人物が身近にいたような…?
「あれは撮影会か…?」
首をひねりながらも質問に答える。
その時、見知った顔が体育館に現れた。
「おらおら解散だ解散!」
声を上げて人だかりに突っ込むのは匙。人だかりは次第に散っていき体育館にいる人は俺とゼノヴィア、匙、そして例の少女のみとなった。匙も仕事してるな。
ステージ上で匙が少女に抗議する。
「ここでそんなことをされたら困る。公開授業だからとそこまでフリーダムなことをやっていいわけないだろ?それにもしかして親御さんか?もしそうならちゃんとした正装で来てくださいよね」
「えー、これが私の正装だもん!」
「おいおい…」
匙の言葉に反省の色を見せない少女にやれやれとため息を吐く匙。…どうしたものか、一応助け舟を出すか。
そう思って一歩踏み出した時。
「どうしたの?」
体育館に響く第三者の声。現れたのは兵藤を引き連れた部長さんだ。
「あ、リアス先輩!ちょうど今魔王様と先輩のお父さんを案内していたところですよ」
すると体育館入口から紅髪の男性が二人、姿を現した。一人は見知った顔だ。その二人を先導するような形で我らが生徒会長、ソーナ・シトリー先輩がいる。
「何事ですか匙?…あ」
ステージに立つ少女の姿を見た瞬間、気まずそうな表情のまま会長さんが固まった。
そしてそれを見た少女の表情は対照的に喜びの色に染まった。
「あ、ソーナちゃん!見ーつけた!」
…ソーナちゃん?親し気な呼び方はもしかして知り合いか?
「やあセラフォルー、君も来ていたんだね」
そしていつの間にか近づいたサーゼクスさんも親し気に少女に声をかける。
サーゼクスさんの隣にいる同じ紅髪をしたダンディーな男性はもしや…。
「部長、あの人は一体…?」
兵藤が部長さんに訊ねる。サーゼクスさんとも知り合いのあの少女は一体…?
「あの方は四大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタン様。ソーナの姉よ」
それを聞いた時、俺の顔が固まった。
え。魔王?この人が?サーゼクスさんと同じ?それでいてあの会長さんの姉?
「ええええええええええええ!!?」
体育館に兵藤の絶叫が響き渡った。
そうしたいのは俺もだよ…!まさかこの日にもう一人の魔王に会うことになるとは思わなかった…!しかもよりによって会長さんのお姉さんか!
「あら、リアスちゃん!元気にしてた?」
フランクに部長さんに話しかけるレヴィアタンさん。
部長さんとも知り合いなのか。でもおかしいことではないだろう。部長さんと会長さんは友達だというし姉や兄が同じ魔王である者同士だ。
部長さんはやや驚きながらも返す。
「はい、今日は公開授業で?」
「そうよそうよ!でもソーナちゃんったらそのことを黙ってたのよ!もうショックでショックで…天界に攻め込むところだったわ♪」
にっこりした表情と裏腹に恐ろしいことを言うレヴィアタンさん。
何となくわかった。この人もサーゼクスさんや大和さんと同類だ。兄弟愛、いや姉妹愛が溢れ出るタイプの人だ…。何で俺の周りにはそういう人が多いんだろう。それにしても冷静沈着な会長さんとは正反対の人物だ。会長さんを「静」とするならレヴィアタンさんは「動」といったところか。
そっとサーゼクスさんが兵藤に歩み寄った。
「セラフォルー、彼が兵藤一誠、リアスの『兵士』であり今代の『赤龍帝』だよ」
「ど、どうも初めまして!」
兵藤はおどおどしながら挨拶をする。あいつもまさかここでもう一人の魔王と出くわすとは思っていなかっただろう。
「初めまして!私のことは気軽にレヴィアたんって呼んでね♪」
きゃぴきゃぴとしながらウィンクして挨拶を返すレヴィアタンさん。
「そっちの二人は?」
今度は俺たちの方へ視線が向いた。魔王と向かい合う緊張を咳払いで誤魔化して自己紹介する。
「紀伊国悠、先月の一件に首を突っ込んだ人間です」
「ゼノヴィアだ。リアス・グレモリーの『騎士』をやっている」
ゼノヴィアはいつものように堂々たる態度を崩さず言った。魔王相手にも動じないお前の度胸が羨ましいよ全く。
「あら、それは大変だったわね。ゼノヴィアちゃんもリアスちゃんを今後ともよろしくね!」
そう言ってルンルンと手に持つステッキを振り回し始めた。
「本当にこの人も魔王なのか…」
思わず心の声を漏らしてしまった。
「そうよ♪んー、立場的には同格だけど戦闘で言ったら流石にサーゼクスちゃんやアジュカちゃん達『超越者』と言われてる二人にはかなわないわ」
「超越者…?アジュカ…?」
新たなワードに首をひねる。
「超越者とはここにいるサーゼクスや魔王アジュカ・ベルゼブブ様のような悪魔にして悪魔と言う枠から外れる程の実力を持つ者のことだよ」
親切に答えてくれたのはサーゼクスさんの傍らにいる紅髪のダンディーな男性。見た目にふさわしいダンディーなボイスに俺はちょっとばかり震えた。
そんなに強いのかサーゼクスさんは…。そのアジュカって人も同格か。一体どんな人なんだろうか。レヴィアタンさんのようなぶっ飛んだ人でないことを願おう。
「セラフォルー殿、久しぶりでございますな。中々奇抜な衣装ですが…」
「あらおじさま、これが今の人間界の流行りの衣装ですのよ?」
「そうなのですか?」
「父上、信じてはなりませんよ」
話に流されるダンディーな男性を諫めるサーゼクスさん。
父上って言い方はやっぱりあの人はサーゼクスさんや部長さんのお父さんだったんだな。
その様子から何か言いたげな表情をしている兵藤を見て部長さんが小声で言った。
「…あまり言いたくはないのだけれど、プライベートの魔王様達は非常に軽いのよ…」
げんなりとした表情で言う部長さん。その表情からいかにも苦労している様が読み取れる。
まだ見ぬ二人の魔王もあんなタイプだったら悪魔社会を心配するぞ…。
「お姉さま…」
顔を真っ赤にして姉と対峙する会長さん。人前に出た今の姉の姿や言動がとても恥ずかしいのだろう。いつもは涼しい顔をした会長さんがここまで動揺した顔をするのを初めて見た。
レヴィアタンさんは体育館のステージを降りて会長さんに駆け寄るとその真っ赤にした顔を覗き込んだ。
「もうソーナちゃん、お顔を真っ赤にしてどうしたの?姉妹の再会なんだからもっと喜んでもいいのよ?抱き合いながら喜ぶ百合百合な展開も大歓迎よ!!」
その言葉に狼狽の色が濃くなった会長さんが震える声で返す。心なしか目元が引きつっている。
「こ、ここは学び舎です。その生徒会長としてお姉さまの行動を容認するわけには…」
「そーんな堅苦しいことはいいのよ!ね、再会のハグをしましょうよ♪ソーナちゃん!ねー!」
レヴィアタンさんは両腕を大きく広げてハグを待つ。凄まじくぶっ飛んでるな…。本人の快活な性格も相まって更に妹ラブが天元突破しているように見える。
涙で目を潤ませた会長の表情が次第に崩れていった。
「う、うう…!!もう私耐えられない!!」
我慢できないと言わんばかりにレヴィアタンさんに背を向けて走り出す会長さん。
「ま、待って!ソーナちゃぁぁぁん!」
そして会長さんの名前を叫びながら後を追うレヴィアタンさん。
二人が体育館を離れても、止まらない愛の叫びは聞こえた。
「ついてこないでくださいお姉さま!!」
「いやよぉぉ!!私を一人にしないでソーたん!!!」
「たん付けは止めてくださいとあれほど!!」
声は次第に遠ざかっていき、やがて消えた。
「…素晴らしい姉妹愛だ。ああいう愛の形もあるのだな」
「…うん」
ゼノヴィア、何事もちょうどいいところってものがあるんだ。あれはそのちょうどいいを100段位越しているものだよ。
二人目の魔王と遭遇した公開授業の日は、この後は何事もなく進んでいった。こんなハチャメチャな出来事がそう何度も一日に起きても困るが。
活動報告にこの作品の裏話をたっぷり書いてます。気になる人は是非。
次回、「もう一人の『僧侶』」