評価バーオレンジに続いてUAが20000を突破しました。有難い限りです。
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
3.ロビン(停止)
4.ニュートン(停止)
5.ビリーザキッド
7.ベンケイ(停止)
11.ツタンカーメン(停止)
12.ノブナガ
13.フーディーニ
「…何だ?」
気が付くと、室内の様子は変わっていた。腕を組むアザゼルと真剣な表情で話し合うミカエルさん、グレイフィアさんと何やら話し合っているサーゼクスさん、そして瞑目し壁に背を預け静かにたたずむ白龍皇。
不意にコトコトッと何かが近くに落ちる音がした。何かと思い下を向くと。
「眼魂が…!」
所持している眼魂がいくつか床に転がっていた。そのどれもが時間停止させられたものと同じ様なモノクロカラーになっている。他の眼魂はと思い取り出すと明るく仄かな光を放っていた。…俺を守ったのか?
「あら、紀伊国君も気が付いたわね」
投げかけられた声の方を向くとレヴィアタンさんがいた。
部員たちはどうなったのかと思い辺りを見渡すと兵藤と部長さん、そして木場とゼノヴィアが集まっているのが見えた。それを見るや否や集まりに駆け寄る。向こうも俺に気づいた。
「紀伊国君、君も無事だったんだね」
安堵の表情を見せる木場。しかしその色は弱い。
「他の仲間は全員止められてしまったようだ」
ゼノヴィアが目をやる方向には椅子に座ったまま停止したアルジェントさんと朱乃さん、塔城さんや会長さんの姿があった。現状動いているのは俺を含めたオカルト研究部の一部と首脳陣、白龍皇とミカエルさんの護衛だけだ。
っていうかこの中に混じっているってことはあの護衛さんもすごい人なのか?
「イッセーは赤龍帝の力、裕斗はイレギュラーな聖魔剣の力があったから無事なのかしら、ゼノヴィアはデュランダルで防いだのね」
「時間停止の対処法は体で覚えた。力をぶつけられる前にデュランダルのオーラで防げばいい」
何気なく凄いことを言ってくれる。豪快な所は変わらずだな。
「紀伊国はどうして動けるんだ?」
「多分、眼魂に守られた。そうとしか言いようがない」
取り出した眼魂を見せる。モノクロカラーに変色した物と変わらず仄かな光を放つ物。
それを見て兵藤は首を捻った。
「…なあ、そもそも眼魂っていったい何なんだ?」
「さあな…ぶっちゃけ俺にもどういう物なのかよくわからない」
俺は兵藤の問いに明確な答えを返せなかった。
一応皆にはゴーストドライバーという神器は眼魂と呼ばれるアイテムの力を引き出し扱える能力を持っているという話で通しているが正直に言うと俺自身、特典として得た英雄眼魂が一体どういう物になっているのかよくわかっていない。あくまでただのフォームチェンジのアイテムなのか、それとも本当に偉人の魂や意思が宿っているのか。
フーディーニ眼魂が一時期起動しなかったという点を鑑みれば、後者になるのか。いずれにせよ、後で調べておいた方が良さそうだ。
「それにしても部長、これは一体…」
「テロだよ」
続く木場の問いに答えたのはアザゼルだった。言葉の後、彼は顔を窓の方に向ける。
「外を見てみろ」
窓に駆け寄り外の様子を見る。外では上空に大きな魔方陣が浮かび上がり、その下で展開した夥しい数の小さな魔方陣から黒いローブに身を包み、フードを目深にかぶる怪しげな集団が次々に現れていた。
怪しげな集団が一つ、魔方陣を展開させるとそこから勢いよく光弾が飛び出した。
校舎へと真っすぐ向かいぶつかる寸前、より大きな魔方陣が校舎に展開して防ぎ事なきを得た。爆音と多少の揺れはあったが。
「何だあいつら?」
「魔法使い…伝説の魔術師『マーリン・アンブロシウス』が悪魔の魔力を分析して人間にも扱えるように再構築して編み出した『魔法』を操る連中さ。んでもって今はそいつらに攻撃を受けてる。いつの世も和平を邪魔する連中はいるもんだな」
アザゼルが外の連中について解説する。俺は特に驚くことなく外の様子を眺めた。悪魔や天使がいるくらいだし魔法使いくらいいて当然かと思ったからだ。
「時間が止まっているのは…まさか」
「そうだ、お前らのとこのハーフヴァンパイアが捕まって、魔術か神器の力で強制的に禁手状態にさせられたんだろうな。そして今もその力は高まっている」
俺の言葉にアザゼルが肯定の意を示す。
やはりこの現象はギャスパー君か…。まさかこのタイミングで敵に捕まり能力を利用されるとは思わなかった。
「今は我々が障壁結界を張って被害が出ないようにしていますが、このまま力が増大すれば我々も止められてしまうでしょうね。敵の狙いは魔術師たちをぶつけて我々を足止め、時間停止の力が増大して我々全員が停止したところを一網打尽にすると言ったところでしょうか」
ミカエルさんが険しい表情で話す。ギャスパー君の能力は首脳陣が停止するレベルにまで行くのか…!
首脳陣が止められる頃には俺らも全員停止してるだろうな。そうなれば向こうのやりたい放題、つまり無抵抗のままに簡単に殺されてしまう。改めて俺は自分が置かれている状況の危険度を理解し、眉をひそめた。
近くで部長さんが顎に手を当てながら思案している。
「敵はギャスパーの情報を知っている…一体どこから得たのかしら?でも今は私の眷属をテロに利用したその事実が許せないわ…!!」
そう呟く部長さんの目には憤怒の炎が宿っていた。悪魔の中でも情に深いと言われるグレモリー家。その血を引く部長さんも例外ではなかった。眷属であるギャスパー君を利用し、危険に晒すものに怒りの炎を燃やしている。
「ちなみに警護に当たってた天使、堕天使、悪魔は全員停止させられている…そらよ」
アザゼルが窓にそっと手を向ける。すると窓際の外に無数の光の槍が出現、一斉に魔術師たちが我が物にする空に放たれ次々と魔術師たちを刺し貫き命を瞬く間に刈り取っていった。
「ッ!!?」
余りの光景に目を見開いて驚いた。
あの数を一瞬で…!!これが堕天使総督の力か…!
絶命した魔術師たちは続々と雨のように校庭に降り注ぎ、骸の山を作り上げた。しかし上空から新たな魔方陣が無数に展開し、そこからまた魔術師たちが現れ始めた。
「また敵が…」
「何度やってもこれさ。全く、テロのやり方と言いタイミングと言い上手く出来すぎだ。誰かが情報を流したんだろうな」
アザゼルは訝し気に呟いた。
この中に裏切り者がいるなんてあまり考えたくはないな。折角の和平、それを乱す輩が和平を結ぶための会談に参加した皆の中にいるなんて。
「ここから脱出はできないんですか?」
「脱出には結界を解く必要がある。だがそうすれば外に被害が出てしまう、だからそれはできない…が、ちゃんと打開策はある」
「それはなんですか!?」
兵藤がアザゼルの言葉に食いつくように訊いた。それに答えるのはサーゼクスさん。
「旧校舎にいるギャスパー君の奪還。彼を解放すればこの状況はひっくり返る。…我々は結界の維持と籠城戦でしびれを切らした黒幕が現れるのを待つ。我々が前に出ればそれこそ敵の思うつぼだろうからね」
「兄様、私が救出に行きます」
名を挙げたのは部長さん。毅然とした姿、その目に決意の光が燦々と輝いている。
「私の眷属をこれ以上ひどい目に遭わせるわけにはいきません」
その言葉に秘めたるは仲間を利用した憤怒だけではない。仲間を守るという愛情もあった。
サーゼクスさんは部長さんの決意を訊いて渋々ながらも頷いた。その表情に状況を打開したいという思いとかわいい妹を危険に晒したくないという思いのせめぎ合いが垣間見えた。
「わかった。しかし相手は魔術師だ。当然転移魔法の対策はしてあるだろうし旧校舎まで魔法の嵐を通り抜けるのは至難の業だが…」
「それに関しては旧校舎に保管してある未使用の『戦車』の駒でキャスリングを使います」
キャスリング…?そのワードを訊いた俺は内心首を傾げた。よくはわからないが、俺が転生できなかったことが役に立ったということだろうか。
「キャスリングは王と戦車の位置を入れ替えるチェスのルールのことだよ」
「へぇー、そんなルールがあるのか!」
木場が隣でちんぷんかんぷんだと言わんばかりの顔をしていた兵藤に分かりやすく教えていた。
なるほど、ありがとう木場。ボードゲームは滅多にしないしやっても勝率が悪すぎるから俺もちんぷんかんぷんだったよ。カードゲームはやるのにな。
「なるほど、だが一人では無謀だ。グレイフィア、私の魔力方式でキャスリングで転移できる人数を増やせないか?」
「この場であれば簡易式ならできそうです。しかし簡易式ではせいぜい一人増えるぐらいが限界かと」
「それで十分だ。もう一人は…」
「サーゼクス様、俺に行かせてください」
兵藤がサーゼクスさんの前に進み出た。その目に部長さんと負けず劣らずの決意の光が宿っていた。
一瞬驚くが、瞑目してサーゼクスさんはそれを了承した。
「…わかった、リアスとギャスパー君を頼む」
「ありがとうございます」
「…兵藤、しっかりギャスパー君を救ってこいよ。叶えたい夢があるんだろう?」
「ああ、俺に任せろ!」
互いに約束の証として拳をぶつけ合う。ぶつかったあいつの拳は内に秘める決意の熱さを表すかのように熱を持っていた。
…こんなことをするなんて、あいつの熱さが移ってしまったのかな。俺もギャスパー君救出に加わりたかったが二人までしか転移できない以上、役目を信頼できる友達に託して我慢するしかない。
「そうだ。おい赤龍帝、こいつをもってけ」
アザゼルが急に何かを放り投げ、慌てて兵藤がキャッチした。
よく見るとそれは小さな宝玉が埋め込まれた綺麗な腕輪だった。表面には難しそうな小さい文字が描かれている。
「そいつは神器のパワーを制御するアイテムだ。一つはハーフヴァンパイアにつけろ。神器の力を抑えて暴走を止められるはずだ。もう一つはお前が禁手を使うときに使え、一定時間代償なしで禁手が使える。体力の消費まではどうにもならないけどな」
アザゼルの真面目な話は続く。
「よく聞け、神器を使いこなせないお前は人間に毛が生えた程度のモンだ。如何に強力な神器と言えど使いこなせなければ意味がない。使いこなせない状態で戦いに臨めば、いずれ死ぬぞ」
「……」
神器マニアであり研究者でもある彼の忠告を兵藤も真剣な面持ちで深く頷いた。
あいつは神器を使いこなせない自分の弱さを身に染みて理解している。レーティングゲームでも、コカビエル戦でもそれを強く感じ、己の無力を恨んだはずだ。そしてそれを奴は受け入れ、前に進む原動力にしている。
アザゼルの話の間、部長さんはグレイフィアさんから額に何か特殊な魔方陣を施されていた。さっき話に出たキャスリングの転移を二人まで可能にする方法だろう。
アザゼルが壁際にいる白龍皇へと振り向いた。
「ヴァーリ、お前は外で暴れて敵の注意を引け。奴らもキャスリングで転移するのは想定外だろうしそれを含めて作戦を乱せるだろうさ」
「こそこそやるよりもハーフヴァンパイアを旧校舎とやらごと吹き飛ばせばいいんじゃないか?」
「テメェ…!」
白龍皇の提案に兵藤が怒る。
俺も奴の案に色々と言いたいことはある。でもあまり彼を責められない。部外者からすれば今のギャスパー君は俺たちを危機にさらしている大きな要因の一つに過ぎないのだから。
「和平を結ぼうって時にそんなことするわけにはいかねえよ。そりゃ最終手段にしとけ」
「…フッ、わかったよ」
嘆息しながら窓際に移動する。するとその背に青い光翼が現れた。
手を広げ、眼前の窓ガラスを割るとそこからサッと巨大な魔方陣が展開する空へと舞い上がった。
…会長さんが今の見たら怒るだろうな。もしやと思い会長さんの方を振り向くが停止したままだった。停止しててよかった。
〔Vanishing Dragon Balance Braker!〕
力強い音声と同時に白龍皇の体がカッと光り、眩い純白の鎧を纏う。
あの時見た、圧倒的なオーラとプレッシャーを漂わせる存在。それが再び、あの時と同じ場所に姿を現した。
奴は禁手化して早々に白い閃光となって縦横無尽に空を駆け巡った。空というキャンバスに麗しい一筋の白の閃光が描かれ、行く手を阻むキャンパスの汚点たる魔術師たちを消し去る。
その様を眺めていると窓際に立つサーゼクスさんがアザゼルに近づいた。
「アザゼル、さっきの話の続きだ」
「あ?あーたしか神器所有者を集める理由、だったか?」
「そうだ」
サーゼクスさんが頷く。それを見たアザゼルは真面目な表情で話し始めた。
「備えていたのさ…『禍の団《カオス・ブリゲード》』にな」
「『禍の団』?聞いたことがないな」
サーゼクスさんは訝し気に首を傾げる。
話を又聞きした俺も頭の中の知識の引き出しを開け始める。ブリゲードとは旅団のこと。つまりは混沌の旅団…まったく意味が分からん。
「最近うちの副総督、シェムハザが確認した各勢力の反乱分子やならず者たちの集まりさ。神器使いの人間も加わり神滅具使いも何名かいる。そしてそのトップは『無限の龍神《ウロボロス・ドラゴン》オーフィス』」
「!?」
「オーフィス!?まさか、神をも恐れたあの龍神が動くとは…!」
アザゼルの解説に首脳陣が皆、衝撃を受けた。その様からオーフィスと言うドラゴンの持つ影響力がうかがい知れた。
「目的はなんなの?」
「単純明快…破壊と混乱さ。ま、テロリストだな」
レヴィアタンさんの問いにアザゼルが答える。
首脳陣がびっくりするほどの多分神より強いとんでもドラゴンがさらに強い連中を集めて徒党を組み目的が単純に破壊と混沌って相当やばくない?向こうの神滅具もその名に恥じない恐ろしい能力を持っているだろうしきっと、今後いやでも俺たちと戦うことになるだろう。強き力を集めるという赤龍帝の力。既にデュランダルや聖魔剣がその下に集っている。案外、それも時間の問題かもしれない。
…ポラリスさんはこのことを見越して『戦わないと大切な者は守れない』と言ったのだろうか。あの人が一体どこまで先を読んでいるのか、今の俺にはわからない。
そのままサーゼクスさんがアザゼルとミカエルさんに位置的に挟まれる形でその脅威について話し合いを始めた。
「…ッ」
話が始まって数分の後、突如としてミカエルさんの隣で控えていた護衛の女性天使が、アザゼルと話しこんでいてミカエルさんに背を向ける形になっていたサーゼクスさんに向かって鬼気迫る表情で駆け出す。その手には光力で作り出したであろう光輝くナイフが握られている。
「!」
それにいち早く気付いた俺は反射的にガンガンハンドを召喚した。生身でもガンガンハンドを呼び出せることに気付いたのは最近のことだ。
何かがおかしい、危険だ。俺の本能がそう訴えている。
「ッ!やめなさい!!」
「死ねぇ!」
部下の奇行に気づいたミカエルの制止の声も聞かず、女性天使がナイフを鋭く突きだす。
サーゼクスさんと一歩分の間合いに入ったところ、室内に銃声が響いた。
「ガッ!?」
瞬時に打たれた腕を庇い立ち止まる女性天使。引き金を絞り銃弾が放たれたガンガンハンドの銃口から小さな煙が上がっている。ひるんだところ間髪入れずに駆け寄って女性天使を取り押さえた。
「何の真似だ…!?」
「離せッ!!」
荒々しく取り押さえられた女性天使が声を荒げてジタバタと足掻く。
その際服が乱れそこから覗く肌、胸のあたりには奇妙な十字架の紋様が浮かんでいたのが見えた。
「これは…?」
「ッ!!!」
十字架を見られたことに激しい反応を見せた護衛は一瞬苦悶の表情を浮かべた後、ぐったりとなった。
「何が起こった!?」
アザゼルが駆け寄り護衛の様子を見る。外傷が撃ち抜いた腕以外にないことを確認し、次第により強くなった血の匂いに「まさか」と呟き口を開かせると、口内は真っ赤な血で染まりきっていた。
「こいつ、舌を噛み切りやがった…!」
アザゼルは何をしたのかすぐに気づいたようだ。もう一度胸のあたりに目をやると紋様はすっかり消えていた。
…さっきの紋様、見たことがある。以前俺を襲ってきた悪魔が同じ様な十字架のネックレスをしていた。悪魔は十字架に触れるとダメージを受けるはず。ならやはり、今回の件と言いあの十字架には何か特別なものがある…?
「私を狙ったのか…このタイミング、恐らく敵のスパイか」
グレイフィアさんと部長さんが転移の準備に取り掛かり首脳陣は話し込んでいる、この危機的な状況に気を取られ自分に気を配れるものが少なくなったタイミングで仕掛けてくるか。護衛に忍ばせておくなんてことができるとは、天界の上層部にも『禍の団』に通じている者がいるのかもしれないな。
「おいミカエル、お前の護衛だろう?これはどういうことだ?」
「わかりません…彼女はこのようなことをする者では決してなかったのですが…」
ミカエルさんは沈痛な面持ちを浮かべる。
「…敵対しているとはいえ天使長でクソ真面目なお前が嘘を吐けるとは思えないしな。和平を結ぼうって時だ。今度からは護衛の人選はしっかりしろよ」
「彼女の件については謝罪します。この状況を切り抜けた後、彼女については調査を行います」
ミカエルさんはそっと遺体を壁に寄り掛からせると祈るような面持ちで瞑目した。きっと裏切られたのがショックだったんだろう。
その時だった。何の前触れもなく、冥福を祈る間も与えまいと部屋の隅に見知らぬ魔方陣が浮かび上がった。
部長さんやサーゼクスさん、空に浮かんでいる魔方陣とも違う新しい魔方陣。
「…!グレイフィア、急げ!」
それを見たサーゼクスさんが鬼気迫る表情で転移の準備をしていたグレイフィアさんに声を飛ばした。
グレイフィアさんは一瞬驚いた表情をするもすぐに頷き魔方陣を展開させ始めた。
「ちょ、グレイフィア!?」
「お嬢様、ご武運を!」
突然の展開についていけないまま、二人は転移の光に飲まれていった。
…頼んだぞ、兵藤。部長さん。心の中で作戦の成功と無事を祈る言葉を送った。
「ヴァチカンの書物で見たことがある。…あれは旧レヴィアタンの魔方陣だ」
ゼノヴィアが魔方陣を目を凝らして見て冷静に言う。旧レヴィアタン…?現レヴィアタンならここにいるが何故このタイミングで…?
すると魔方陣がカッと眩い光を放つ。
光が晴れた時、そこに立っていたのは褐色肌の眼鏡をかけた女性だった。露出のある衣装、細い三つ編みにした亜麻色の髪。見た目を操作できるため年齢に寄らず若い美女が多いという悪魔の女性の例に漏れない美女だ。
「ごきげんよう、三大勢力の首脳陣達」
女性が不敵な笑みを浮かべながら身振りも大仰に挨拶する。
「先代レヴィアタンの血を引く者、カテレア・レヴィアタン…何用かな?」
「我々旧魔王派の大半が『禍の団』への協力を決定しました」
旧魔王派。先の大戦で4人の魔王を失った悪魔陣営は戦争の継続を望む魔王の血族を中心とした旧魔王派と戦争の休止を求め、新政権を樹立せんとするサーゼクスさんを中心としたクーデター派に分かれた。
結果、クーデター派が勝利を収めて新政権を樹立。旧魔王の血族は冥界の隅に追いやられた…。そう、合宿の勉強会で聞いた。まさか、テロリストに加担するという形で他の勢力にまで大大的に敵対するようになるとは。
「君たちだったのか…何故だ?」
「我々はあなた達と逆の結論に達したのですよ。神と魔王がいないこの世界を一度滅ぼし、新世界を作り上げればいい…オーフィスはあくまで強者を集めるための旗印に過ぎません。新世界は我々が取り仕切る!」
「ほぉー、現魔王と旧魔王との確執が本格的になってきたってわけだ」
アザゼルが面白そうに呟く。大戦が終わり種の存続という新たな問題を抱え、それに取り組まなければならない今でも現魔王と旧魔王の対立は依然として変わらずあるようだ。
「カテレアちゃん!どうしてなの!?」
「貴様…セラフォルー!貴様たちが我々から魔王の座を奪わなければこんなことにはならなかったのです!大体魔王レヴィアタンと名乗る者が貴様のようなふざけた者であること自体が真なるレヴィアタンの血筋にとって耐え難い苦痛なのですよッ!!」
レヴィアタンさんの言葉にカテレアが怒りを露わにして吼え散らす。彼女がレヴィアタンと言う名に誇りを持っているからこそ魔法少女好きの現レヴィアタンさんが許せないのだろう。
…後半に関しては、確かにイラつくだろうな。あのキャラで世間での厳格で高名な魔王レヴィアタンのイメージが大きく揺らいだだろうし、本家レヴィアタンの人からすればたまったものじゃないだろう。ちょっとだけ彼女に同情した。
「そんな…カテレアちゃん、私は…」
「フッ…安心なさい。この場であなたを殺してようやく私は真の、唯一無二の魔王レヴィアタンとなる!新世界を作り上げ、オーフィスは新世界の神…いやただの象徴であればいい。法と秩序は我々が構築する。ミカエル、サーゼクス、アザゼル、そしてセラフォルー。貴様らの首は新世界実現への橋頭堡となるのです!!」
魔王の血族としての意地、そしてプライドに塗れた講釈を垂れる。奴の演説じみた話にサーゼクスさんもミカエルさんも眉をひそめた。
「ク…ハハハハハッ!!」
そんな中、彼だけ違った。堪えきれないと言わんばかりにアザゼルが突如として大笑いを始める。カテレアはその様子を見て青筋を立てた。
「オイオイそりゃあ何年前のアニメの悪役のセリフだよ?そんなもん今更はやらねえぞ?そんなセリフを意気揚々とべらべら喋るなんざ小物かよ」
「言わせておけば…!!」
カテレアの整った顔が激しい怒りに歪む。アザゼルはそれを見ても気にしなかった。それどころか、戦意を放ち始めた。同時に室内の雰囲気がさらにピリピリした物と化す。何か起これば、すぐに弾けてしまいそうだ。
「サーゼクス、ミカエル。こいつは俺が仕留める」
「…最後に訊く。カテレア、降るつもりはないのだな?」
「ええ、サーゼクス。あなたはいい魔王ではありましたが、最高の魔王ではなかった」
「残念だ」
ガシャァァァァァン!!
サーゼクスさんの言葉と同時に室内の窓ガラスが大きな音を立て一瞬にして粉々に砕け散った。
対峙する両者が各々の翼を広げて、まだ白い閃光が走る空へと舞い上がる。
「さあ、旧レヴィアタンの末裔、カテレア・レヴィアタン!いっちょハルマゲドンと洒落こもうぜ!」
「堕ちた天使の総督が!」
アザゼルの啖呵を皮切りに、三大勢力でも上に位置する力と名を持つ者同士が激突した。
魔王の血筋が放つ圧倒的な魔力と聖書に記されし堕天使の長が放つ膨大な光。それらが激しくぶつかり合い、喰らい合い、潰し合う。苛烈な激闘に誰も割って入る者はいなかった。
白龍皇の陽動で激しい爆音が起きていたが、両者の戦いによってさらに苛烈な爆音が聞こえ始めた。
…次元が違い過ぎて圧倒されてしまった。あの二人の戦いが凄すぎて自分のできることが何もないように思えてくる。このままここに残って二人の戦いを眺めるべきか、それともあの中を突っ切って兵藤たちの助けに入るか…。
苦慮していた時、サーゼクスさんが残った部員たちに声をかけた。
「木場裕斗君、ゼノヴィア君。私たちはあの二人の戦いに備えて結界の強化と維持に努める。グレイフィアが魔術師の転移術式の解析を終えるまでの間、外の魔術師を始末してくれないか?」
「はい。魔王直々の勅命…光栄の極みです!」
「了解した。…木場、奴らに我々グレモリー眷属の『騎士』というものを、身をもって教えてやろうか!」
歯切れよく返事する木場と、不敵に笑うゼノヴィア。
二人は戦意を滾らせ、得物を握ると颯爽と窓から飛び降り魔術師たちが跋扈する戦場と化した校庭へと躍り出た。数秒後、派手な爆音が聞こえ始めた。…まあ間違いなくデュランダルを解放したんだろうな。
二人が動くのなら俺も黙ってこの場にいるつもりはないとサーゼクスさんに声をかける。
「サーゼクスさん、俺も行きます。陽動は多い方がいいでしょう?」
「ああ、頼んだ」
了承を得て腰にゴーストドライバーを出現させる。結界を張るミカエルさんはこちらに目をやっていた。
気に留めずスペクター眼魂を取り出し、起動。Sの文字が浮かび上がる。
半透明なカバーを開いて、眼魂をアイコンスローンに押し込んだ。
〔アーイ!バッチリミロー!バッチリミロー!〕
両腕を振り上げつつカバーを閉じると同時、ドライバーから黒と青のパーカーゴーストが出現し室内を飛んで踊りまわる。振り上げた右手を握り締め、力強く引き寄せる。
「変身!」
素早くレバーを引き、霊力を展開、物質化してスーツになった霊力を身に纏う。
〔カイガン!スペクター!レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!〕
パーカーゴーストを着こんで、二本のウィスプホーンが起き上がり変身完了する。
サーゼクスさんとミカエルさんはそれを興味深そうな目で見ていた。
「映像にもあったが、それはスペクターというのかい?」
「はい…ここを頼みます」
話もほどほどに、粉々にガラスの砕け散った窓から飛び降りる。
魔術師たちが俺の存在に気付き、一斉に敵意を向け始める。
一旦落ち着こうと一呼吸置き、パン!と自分の拳を手に当てる。
「片っ端からぶちのめす…それでいいな!」
俺の言葉が戦闘開始の合図となった。先手を取らんと魔術師たちが一斉に魔法を放つ。
「ハァ!」
掛け声と同時に土を力強く踏み、馳せる。
超人的な身体能力によって放たれた魔法を躱し、あるいは置き去りにして一気に間合いを詰め、一瞬にして眼前を魔術師の驚愕に染まった表情が埋め尽くす。
戦いとは誰かを傷つけること。無論その中で相手の命を奪い、奪われることもあるだろう。戦いは双方に憎しみと悲しみをまき散らし、その悲しみや憎しみが更なる戦いにつながる連鎖を生み出す。
だがその中に身を投じる俺は殺しを肯定するつもりはないし、出来ることなら戦いを未然に防ぎたい。俺は平穏が好きだ。だから今回の和平に賛成した。
しかし、この異形の世界にはそんな甘い考えは通用しない。俺がいかに死にたくないと願っていてもいつかは死ぬ、あるいは殺される。俺を殺すのはもしかしたら俺が戦いで生み出してしまった悲しみと憎しみを背負った誰かかもしれない。
どんな悪人だって生まれたからには幸せになりたいと願う。俺はその誰かの幸せを奪ってしまったのだから俺はそうされて、憎まれて当然だ。俺だってその立場になれば同じようなことを思う。
でも俺にだって幸せを願う権利はある、そのために決めた道がある。世の中というのは幸せになりたいという願いのぶつかり合いで成り立っていると俺は思う。誰かが幸せになるためには誰かの幸せを踏みにじらなければならない。世界は幸せが競争し合う戦場と言ってもいい。
この異形の世界で己の大切な者を守るには意思を通す力と覚悟が必要だ。覚悟とは、どんなにつらいことや苦しいことがあっても耐え忍び、己が決めた目標に向かって道を突き進む心構え。俺の場合、自分の愛おしい日常と大切な人たちを守るためにそれを壊さんとする連中を打倒する、あるいは殺す覚悟だ。
相手を傷つけても全く心が痛まないような冷たい心を俺は持っていない。相手の苦痛に歪む顔を見ると俺の心も痛む。それでも俺は進まなければならない、進むしかない。咎ならいくらでも受ける、憎まれる覚悟はある。俺は既にそうされるだけのことをした。
でもそれは俺のやりたいことを完遂した後でだ。それまで俺は死ねない、死ぬわけにはいかない。だから今は…。
「ハッ!!」
大切な者を守るために、目の前の敵を打ち倒す!
最近は戦闘シーンを考えているのが一番楽しいです。次回はしっかりと暴れさせます。
覚悟って難しいですよね…。でも戦士胎動編で悩み苦しんだ彼だからこそたどり着いたと思います。
次回、今度こそ「横槍を叩き込む」