リアルが忙しくなるけど頑張って週一ペースを維持したい。
それよりスペクターの小説を書いてる身として嬉しすぎるニュースが…!
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
3.ロビン
4.ニュートン
5.ビリーザキッド
7.ベンケイ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
観光ツアーを終えてすぐに帰還したグレモリー眷属+俺とグレイフィアさんは再び駅を訪れた。
グレモリー眷属はこれから有望な若手悪魔たちの会合に参加するらしく魔王領ルシファードまで列車で移動するそうだ。
俺は協力者であっても眷属悪魔ではないためこのグレモリー領にお留守番という訳だ。この駅にグレイフィアさんと一緒にいるのは見送りで来たからだ。
俺も一緒に行きたかったけどな。でも行ったら行ったでこれと言ってやることもないし、これから別の用事もあることだしな。
混雑を避けるためグレモリー家専用のホームから列車は出発する。そのため俺とグレイフィアさん、グレモリー眷属以外は誰もいない。昨日と比べれば随分と寂しい出発になってしまった。
「しかし部長さんは随分と人気者なんだな」
「ええ、部長は魔王様の妹。美しさもあって領民だけでなく下級、中級悪魔の憧れですわよ」
悠然とした振る舞いで前を歩く朱乃さんが答えた。
確かに部長さんは綺麗だしな。出るとこ出てるし、特にあの紅髪は本当に惚れ惚れするほどだ。…いや流石に兵藤がいるし、どうこうしようってわけじゃないからな?
そんな見た目よしな人が財力もしっかり…というかそれ以上に持っていてこんな手厚い待遇までしてくれるなんて俺は…。
「…俺、今度から部長様って呼んだ方がいいだろうか」
やはりこちらもそれ相応の態度を取るべきか。
「恥ずかしいからやめて、今まで通りでいいのよ?」
俺の呟きを振り返ることなく速攻で拒否する部長さん。
うーん、確かに急に呼び方が変わるのは変か。呼び捨てみたいにフランクにする方はともかくその逆ってあまりないからな。
…あれ、グレモリー先輩呼びから部長さん呼びはどっちなんだろう?
やがてグレモリー家専用のホームに着いた。専用というだけあり辺りは閑散としており既にホームには以前乗った列車が待機していた。
俺とグレイフィアさん以外の面子が続々と列車に足を運び始める。
いざこうしてみるとまた列車に乗りたくなってきたな。それにルシファードとか言う場所も気になるなぁ。冥界の首都リリスもあそこにあるらしいし、冥界の首都ってどんな感じなんだろう。
そんな思いで列車を見ていると、グレイフィアさんが恭しく部長さんに一礼した。
「いってらっしゃいませお嬢様」
「ええ、家のことは任せたわ」
そうだ、俺も声かけぐらいはしておくか。
まだ列車の入口から姿が見える兵藤に話しかける。
「じゃ、行ってこい兵藤。土産話を期待しているぞ」
あと俺たちが観光している間に何を勉強したかもな。俺達が一旦帰ってきた時えらく疲れたような顔をしていた。ここで勉強することなんて普段触れないようなことに違いない。
「ああ!楽しみにしてろよ!」
ニッと笑ってあいつは返す。
それからもう一人だ。
「あとゼノヴィア、周りに迷惑かけるなよ」
会合というくらいだからそれなりに人…でなく悪魔が集まるだろう。あいつが変なことを言ったりしなければいいが。
俺の言葉を聞き、ふふんと胸を張り言った。
「当たり前田のクラッカーだ」
「…どこでそんな言葉を覚えたんだ?」
そんなきょうび聞かない言葉を一体どこで…?
「テレビでたまたま聞いたんだが…なぜか頭に残ってね」
彼女はうーんと唸りながら答えを捻りだした。
テレビかよ。まあ暇な時間こいつはソファーの上でごろりと寝そべってテレビを見てたりするしな。
見る番組の内容としてはどうにもバラエティーは日本人と感覚がずれた彼女には受けが悪いみたいだが。むしろドラマとか見てる方が多いな。特にニチアサのヒーロー番組。「ネロを思い出す」とか言ってやや苦い顔をしながらも楽しそうに見ていた。
一時の別れの言葉もほどほどに皆が列車に乗り込んだ。
やがて列車が大きく汽笛を鳴らしておもむろに動き出す、最初はゆっくりだった加速もあっという間にホームとの距離を離してしまった。
視界から完全に消えたのを見て息を吐く。
「…行ったか」
「さて、我々は本邸に戻りましょう」
そういって踵を返すグレイフィアさん。
「あ、グレイフィアさん」
そんな彼女を俺は呼び止める。
「何でしょう?」
「俺、今から一人でこの辺りを観光がてら歩くので。5時までには戻ります」
無論、観光で歩くのではない。今から一人で魔烈の裂け目に行くための口実づくりである。
グレイフィアさんはやや怪訝な顔をするが、一拍置いた後頷く。
「…わかりました。本邸までの道はわかりますか?」
「コブラケータイがあるので大丈夫です」
そういってマップを表示した画面を見せる。コブラケータイを受け取り画面をまじまじと見るグレイフィアさん。
そういえばこの冥界って機械はどうなっているんだろう。観光の時には家電量販店とか携帯ショップなんて見かけなかったが…単にたまたま通ったとこの近くになかっただけか?
やっぱ皆スマホみたいなものを持っていたりするのだろうか?デビルのDでD-phone…なんつって。
「紀伊国さん、本邸に戻る時はここで留まっている馬車を利用してください」
グレイフィアさんが何かを入力するとマップのある個所に赤いマークが表示された。
おお、グレイフィアさん携帯使えるのか。ってことはある程度携帯は普及しているってことになるのかな。それか上流階級限定か。
「はい、わかりました。じゃ、行ってきます」
「では、お気をつけて」
グレイフィアさんの軽い見送りを背に、俺はホームを後にした。
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「ひーまーだー…」
グレイフィアさんと別れた後、町を出てキャプテンゴーストを呼び出して乗り込んだ俺は絶賛暇を持て余していた。
イグアナゴーストライカーに変形するので船としては大きさは小さい方だが一応、大の字になって寝転がるくらいのスペースはある。
眼魂の所在地の詳細を確認したが、徒歩で行くにもフーディーニで飛んでいくにも辛い距離だったので久しぶりに呼び出したわけだ。
ほら、うちのキャプテンゴーストはちゃんと活躍しているぞ!
もうおもちゃ売り場で売れ残るような悲しい奴とか言わせない!
え?それなら会談が襲撃された時呼べばよかったじゃないかだって?
…それは単に呼ぶまでもないかと思っただけだ、断じて忘れていたわけじゃあない。
どこまでも続く森の上空を行くキャプテンゴーストの甲板からの眺めは壮大だった。
甲板から森を見下ろせば見たことのない怪しげな植物が生えていたり、見るからに獰猛な獣がいたり。
時折陰に気付いた獣が上空を見上げるが、危害を加えられる高さにないのでつまらなそうに鼻を鳴らして去って行く。
こんな感じのちょっとした触れ合いのないサファリパーク気分だったが、これが30分も続けば流石に飽きる。
やっぱりサファリパークは動物との触れ合いがあってなんぼのモンだなとつくづく感じた。
「取り敢えず行ったのはいいけど、暇だな…」
冥界は日本のように電波が飛んでるわけじゃないからスマホはまず使えない。コブラケータイは魔法とかそういった類のものが使われているからネットはダメだがそれ以外の機能は使える。
…暇だから電話かけるか。
大の字に転がって冥界の紫空を仰ぎながら、おもむろにコブラケータイを取り出して操作する。
耳に添えて、相手が通話に出るのを待つ。
今頃オカ研は会合で忙しいので相手は一人しかいない。
そしてその相手は通話に出た。
「もしもし」
『向こうからかけてくるのは珍しいのう、何があった?』
そう、我らがレジスタンスリーダー、ポラリスだ。
「いや…単に暇だから話し相手にならないかなーって」
『…ハァ、妾は暇人ではないのじゃ。日々情報収集に励み、戦に備えての新兵器の開発、そして日々の鍛錬。妾は決してニートではない』
ポラリスさんはうんざりした調子で言う。
そんなことしてたの?俺が来た時は大抵デスクワークみたくずっとパソコンいじってたり駄菓子をぽりぽり食べてるだけだが。
「でも前行ったときはキバ見てたじゃん」
最後に行ったときは「キバを全話完走するのじゃ」とか言って頬図絵ついて仮面ライダーキバを見ていた。えらく熱心にイクサを見ていた気もするような。
『それは…たまたま休憩していただけじゃ。それにのう、妾は所謂ボスキャラ的な立場なのじゃ、そういうキャラをポンポン軽く出しては肝心な場面での盛り上がりも、威厳も無くなるじゃろう?』
「えっ、あんたボスキャラだったの?」
中々動かないから半分俺をサポートしてくれる暇人のような人だと…。
『そうじゃ、妾は…おっと口が滑るところだった』
「?」
またまた意味ありげな発言を途中でやめるポラリスさん。
ぶっちゃけいつかうっかり口を滑らせて全部言う日を楽しみにしている。
『例えばじゃ。仮面ライダークウガで一話からン・ダグバ・ゼバがしょっちゅう出てきて、戦闘したとしよう。そんな時おぬしはどう思う?』
お、話が始まった。っていきなりなんでクウガなんだよ…。
「んー、最初はこいつ滅茶苦茶強いなって思うけど後半になっていくにつれてボスキャラとしての威厳を感じなくなっていきそうだな。それに反比例するようにクウガは強くなるし」
『そうじゃ、もっと身近な例を挙げればアザゼルじゃ。初対面時や会談の時は『なんかこいつヤバそう』みたいに感じたじゃろう?それがオカルト研究部の顧問になって日常的に接するようになってからは『このオッサンなんか面白いな』程度の認識に落ち着いた、違うか?』
「うん、でもそれ言ったらポラリスさんだってよく会うよね?大体周三ペースで会ってるよね?」
自分のことを棚上げにして他のボスキャラをさげるのはよくないなぁ…。
『それは…あれじゃ、妾はまだおぬしに本気を見せていないじゃろう?会談でおぬしの目の前で戦ったアザゼルとは違ってまだボスキャラとしての威厳はあると思うがのう』
「あぁー、まあ確かにな…」
実力を隠しているという面では底知れなさとか、ある意味威厳のようなものはあるかな。
ポラリスさんは実力も過去も隠し事だらけで得体の知れなさというものはある。
「っていうかあんた戦えるのか?」
『もちのろんじゃ、妾は後ろでふんぞり返るタイプでなく前線に出て暴れるタイプ、自分の敵は己の手で倒す』
最後の言葉を聞いた時ちょっと背筋がゾッとした。なんか最後の文だけ声が低くなったような気が…。
『話は十分じゃな、それがわかったら気安く妾に暇つぶしで電話をかけるでない』
向こうは話の区切りがついたとみて通話を終わらせにかかる。
まずい、これが終わったらまた暇な時間に戻ってしまう。何としてでも話を繋がなければ…!
えっと、ボスから続く話題…えっと、えっと…。
「えー…だって暇だし。…あ、そうだ」
『なんじゃ、遂に諦める気になったか?』
「三大勢力のボス達がガチンコで勝負したら誰が勝つの?」
『切られまいとして咄嗟に思いついた話じゃろ、それ』
「Exactly」
速攻で見抜かれたか。でもこっちも暇なんだよ、一時間スマホも本もなくずーっと甲板の上だぞ?しかも今の俺財布も何もなく手ぶらだからな?景色を眺めるのに飽きたらもうゴロゴロするくらいしかやることないからな?
せめて喋り相手くらいにはなって欲しいんだよ。
『…ハァ、おぬしも世話が焼けるのう』
呆れたような声が返ってきた。ポラリスさんには悪いが俺の暇つぶしにもうしばし付き合ってもらおう。
『まず最初に各勢力で一番の強者を挙げようか』
先の呆れ気味の声でなく、いつもの平常運転な声が聞こえた。
「うんうん」
『悪魔側はサーゼクスとアジュカの『超越者』二人、堕天使はアザゼル、天界陣営は現ウリエルじゃ』
ほー、堕天使総督のアザゼル先生に魔王のサーゼクスさんとアジュカ…ベルゼブブだっけ?が一番強いのか。そういえば前に二人が『超越者』だって話は聞いたな。それより…。
「ん?ミカエルさんじゃなくてウリエル?なんで?」
なんで天使長のミカエルさんでなく同じ四大セラフのウリエルが最強なんだ?ていうかボスより強い幹部ってどうなの?…まあゲームにラスボスより強いボスなんて鮭の卵程いるが。
『ガチンコ勝負ならまずミカエルはウリエルに勝てん。何せあ奴は現にミカエルを差し置いて『最強の熾天使』とも呼ばれておる、その所以が…』
その時、船の航行が止まった。
何事かと思ってさっと起き上がり、甲板から船の下を覗くと…。
「あ」
地面に深く刻まれた裂け目がぽっかり口を開けている。
間違いなく、グレモリー列車で見た魔烈の裂け目だ。
『どうした?』
「いや、目的地に着いた」
『そうか、なら暇つぶしの必要もなくなったという訳じゃな。お土産を期待しておるぞ』
「あ、ちょっ!」
短い問答、ポラリスさんは有無を言わせぬ勢いで一方的に通話を切った。
ポラリスさんの話、最後まで聞きたかったな…。
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「…深いな」
眼下に広がる広大な谷を眉をひそめながら見下ろす。谷、というよりはその名の通り裂け目と言った方が正しいだろう。
谷底は見えないほどに深く、黒い闇をたたえている。森の中だというのにこの裂け目の周りだけは不自然なほどに草木一本生えていない。
「うーん…」
腕を組んで眉をひそめて唸る。
谷底に眼魂があるのだとしたら相当骨が折れる作業になりそうだ。だが諦める気は毛頭ない。
最近はヴァーリといいアザゼル先生といい、強者の戦いを間近で見てきた。そして自分の力不足を強く実感した。少しでもその差を埋められるのならこんなことで諦めるわけにはいかない。
禍の団を相手に戦い抜くためにもなんとしても眼魂は全て回収する。
恐らくこちらに来ているであろう眼魂でまだ未回収の物は9つ。
エジソン、ベートーベン、ゴエモン、リョウマ、ヒミコ、グリム、サンゾウ、ディープスペクター。
そして最後にシンスペクター。
全てを揃えることが出来れば今後の戦いで大いに役立つことだろう…もっとも、それを使いこなせる実力がなければ意味がない。例えばシンスペクターと同スペックの相手が出てきた場合、勝利するのは実力、あるいは経験がものを言う。1の実戦に勝つために100の経験を積む。そのためにも普段から俺は訓練に励んでいる。
「フーディーニで下りるか」
こんな深い谷はフーディーニで谷底まで下りるしかない。ニュートンはそもそもフォースフィールドに収まりきる深さかわからないからな。どれほどの深さがあるかわからないがやってみないことには始まらない。
呟きながらゴーストドライバーを出現させたその時だった。
ガサガサッ
茂みからがさがさと音がする。反射的にそちらへと目が動いた。そして隣の森の中からその男はゆっくりと姿を現した。
ふわふわとした茶髪、知性を感じさせる端正な顔立ち、金の刺繍が入った優雅な黒ローブは貴族服にも似ている。
見覚えがはっきりとある。以前、俺とゼノヴィアを襲ってきた悪魔だ。しかし何故このタイミング、この場所で…?
男は眼下の裂け目に軽く目をやった。
「この『魔烈の裂け目』は過去の大戦で『神祖の七大罪』に名を連ねた初代ベルフェゴールが現ウリエルとの一騎打ちで叩きつけた一撃の跡だそうですよ。未だに魔力の残滓から草木一本も生えていないようですねぇ」
男は滑らかに辺り一帯の、話の通りに草花一つ生えていない地面を見回す。
男の目は俺に向いていないにもかかわらず俺に話しかけるような語り口だった。
…またウリエルか。いろんなところで耳にするな。今度、本人に会って見たいものだ。
そうして今度は、深く昏い紺碧の瞳を俺に向けた。
「いやはや、久しぶりですね。まさかこんなところで再会することになろうとは」
そしてふっと穏やかに笑う。
あの妙に丁寧な態度が不気味さをより際立たせている。
「お前…何者だ?」
俺は戦闘態勢に入りながら低い声で訊く。それに男は「ああ!」とおどけたようにポンと手を叩いた。
「おっと、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は…」
仰々しく上体を傾け、頭を下げる。
「アルギス・アンドロマリウスと言う者です。一昔前は七十二柱だと持て囃された家の出ですよ。まああなたを殺した者の名ということで覚えておいてください」
こいつも部長さんや会長さんと同じ七十二柱の悪魔…。道理でゼノヴィアが上級悪魔クラスとみるわけだ。一筋縄ではいかなさそうだ。それに。
「へぇ…もう俺を殺した気でいるのか」
戦う前からあなたを殺した者だと言うあたりは随分と自信があるみたいだな。やっぱ向こうは俺狙いか。
それにしてもどうしてこいつは俺を狙ってくるんだ…?
「ええ、どう考えてもあなたに負ける要素がないので。以前は天王寺大和に邪魔されてしまいましたが今回はそううまくはいきませんよ」
男は恐ろしいほど笑顔で答えた。女性に見せればすぐに意中にできる、しかしこの状況ではさらに内に秘めた恐ろしさを醸し出す危険なもの。
(こいつ、やばいな…)
奴の放つ底知れないオーラに呑まれたか、額に冷汗がつうっと落ちる。
正直なところ俺は奴に勝てる自信があまりない。
おそらく奴は同じ上級悪魔の部長さん以上ヴァーリ以下のレベル。ちなみにヴァーリを挙げたのは会談の記憶が新しいからだ。あの力の差を知らされた戦いを俺は忘れるつもりはない。あの戦いで感じた物を全て原動力にして俺はさらに強くなる。
同じ上級悪魔であるライザーと戦った時はレーティングゲーム、やられても死ぬわけじゃないゲームの戦いだから向こうも全力ではなかったんだろうが今回は違う。
命を懸けた実戦、相手をぶちのめすためにお互い全力で攻撃しにかかる。俺はゲームのライザーでさえかなりダメージを受けてようやくあと一歩のところまで追い込んだレベルだ、実戦で同じ上級悪魔クラスとやりあって勝てる保証はない。
普段からコカビエル戦のような力を発揮できればいいんだが…あれ以来あそこまでの力を引き出したことは一度もない。あのときはなんだろう…覚悟を決めたことに呼応したからか?
顔を険しくする俺とは対照的に向こうは余裕さえ感じる涼しい顔だ。
「むしろ私と戦うのはあなたにとって得なはずですよ。例えば…」
アルギスは自身の懐に手を入れ、ある物を取り出した。
「それは!」
「一足先にここの眼魂はいただきました。回収するのに手間はかかりましたがね」
奴の手の上にあるのは蛍光イエローが目を引く英雄眼魂。それを見せびらかすように堂々と見せつけてくる。
あいつ谷底に落ちていた眼魂を探し当てたのか…!
…そうか!それなら急にここで眼魂の反応が出たのも納得がいく。
今までは深い谷底にあったせいで感知できなかったが、向こうが眼魂を引き上げたから感知に引っかかったんだ。
丁度いい、向こうが探す手間を省いてくれた。
「私を倒せばこの眼魂と、今いくつか持っている他の眼魂がまとめて手に入りますよ。もっとも…」
奴はそう言って懐から別の眼魂を取り出すと手元に小型の魔方陣を展開する。そしてそれを眼魂にかざすと同じ色をした靄が生み出された。
やがて靄は人型へと変じさせていき、明確な実態を持つことになる。
「それは…!!」
俺は驚きを隠せなかった。まさかこの世界で実物を見ることになるなんて一度も思わなかった。
大空を思わせる寒色系の体色、雲など気象をイメージした全身を走る意匠。そして何より頭部と肩部に嵌められた地球のような色と模様をした大きな球。
あのフォルム、見覚えがある。
俺はあの怪人を知っている。
仮面ライダーゴーストに登場したグレートアイ、それを守る15の守護者。
その一角、ガンマイザークライメット。
その佇まいに意思と言ったものは感じられず、ただただそこで命令を待つかのように立っているのみである。
「さらに…」
再び別の眼魂を取り出し、同じ動作を繰り返す。
今度の蛍光イエローの靄は槍の形になり、アルギスの手に収まった。
ガンマイザースピアー。槍の形をしていながら自律行動が可能で他のガンマイザーを強化する力を持つ武器型ガンマイザーだ。
「私に勝てたらの話ですがね。あの方の手を煩わせる前に、眼魂を回収して君を消そうか」
怪人を従え、槍の穂先と端正な顔立ちに浮かんだ陰惨な笑みを同時に俺に向けた。
今回のおまけはお休みします、また次回。
本格的にアルギスが登場、『あの方』と一緒に今後のストーリーをかきまわしてくれるでしょう。
次回、「ガンマイザーの猛威」
そういえば今月のホビージャパンのオラザク選手権、ここである有名なD×D小説を書いてるユーザーさんと同じ名前の人のハルート最終決戦仕様が掲載されていたのですが…。