ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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ふと思いついてしまった15の英雄眼魂ではなく13の神滅具Verのグレイトフル魂。…リゼヴィムと滅茶苦茶相性悪そう。

ついに明日発売、真D×D2巻、堕天の狗神3巻。そういえばリントは誰の転生天使なんだろう。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
3.ロビン
5.ビリーザキッド
7.ベンケイ
11.ツタンカーメン
13.フーディーニ


第44話 「修行、開始」

その日の夜、ベッドに身を預けながら組んだ両手に頭を乗せる俺は何をするわけでもなく天井を眺めていた。

 

カーテンから微かに漏れる月明かりが仄かに室内を照らす。本来冥界に太陽や月はないのだが転生悪魔の登場によって政府が彼らに配慮する形で似たものを作り出し、人間界と同じ様な環境を再現したのだとか。

 

こういう所を見ると魔法技術で発展した悪魔と機械技術で発展した人間との違いがよく出ているとつくづく実感する。人間にはまだこういうのはできないからな。

 

「なあ」

 

「どうした?」

 

天井に投げた視線をそのままに隣にいる人物に話しかける。…まあ、今俺と同じ部屋にいるのなんてパジャマ姿のゼノヴィアしかいないが。

 

彼女にも専用の部屋があてがわれたが一人で使うには広すぎると言って俺の部屋に転がり込んできたのだ。

まあ俺も似たようなことを考えていたし、さっきまでトランプで遊んでいたりと楽しい夜を過ごせて気持ちのいいものだから気にするようなことではない。

 

「一つ訊いていいか?」

 

この何となくいい感じの雰囲気に任せて聞いてみるか。

 

普通、仲間とはいえ子作りしようなんて相手に言うか?それはどんなに浮世離れしたゼノヴィアと言えども流石にオープンすぎるしまずない…と思いたい。

 

オカ研のほとんどの女子が兵藤にぞっこんな中なぜゼノヴィアはそうでもないのか…。別に二人の仲が悪いってわけでもなさそうだ。部活や休み時間で二人で話してるところもよく見かけるしな。

 

それに最近、兵藤の家が大きく増築されオカ研女子は結束を高めるため兵藤の家に住むようにとサーゼクスさんから話があった。向こうに住んだ方が温泉もあったりと生活環境も快適だろうし仲のいいアルジェントさんとも暮らせる。こっちで二人で暮らすより大人数で賑やかな方が楽しいだろうに。

 

何で魔王の話を蹴ってまで俺の家にいてくれるんだ?

 

「何でも訊いてくれ、ルシファードのことか?」

 

「いや…あ、でもそれも聞きたいな」

 

冥界の魔王領といったらそれは日本で言う東京都とかそんな感じだろう?ちなみに冥界の悪魔側の中心となる都市はリリスとかいうらしい。

 

「っていうかお前、どうしてそんなに俺に…その…あ…えっと…」

 

雰囲気の力を借りても中々思うように口に出せない。

 

「何か言いにくいことでもあるのか?」

 

「えっと…あの…どうしてわざわざ俺の家に住み続けるんだ?一応、オカ研の女子が皆兵藤の家に住んだのもサーゼクスさんの話があったからなんだろう?」

 

ああダメだ、上手いこと口に出せなかった。

 

ゼノヴィアは一瞬ぽかんとした表情を浮かべる。が、すぐに持ち直して話し出した。

 

「…コカビエル戦を覚えているか?」

 

「え、ああ。そりゃもちろん」

 

あの戦いがあったからこそ今の俺がある。あれは俺の原点…といっても過言ではない。

戦う覚悟だったり、今の和平推進大使もあの戦いを経たからのものだ。

 

…しかし、いきなりなんでその話を?

 

彼女はどこか影のある表情で語る。

 

「あの時、目の前で主の不在を明かされた私は心底ショックだった。目の前が真っ暗になって自分の中の大切な何かが砕けたような気がした。…いっそこのまま死んで主のもとに行けたらいいとも思ったよ」

 

…そうだったな、俺はコカビエルがカミングアウトした時絶賛逃走中だったから人伝にしか聞いていないが。

 

てかおい、お前自殺なんてこと考えてたのかよ。確かキリスト教では自殺は禁じられている…か、そうでなくとも戒められてるんだっけか?…でも、その根幹を成す聖書の神が死んでるからそれもほぼ意味を成さなくなってしまった。

 

それもあってそのような考えに達してしまったんだろう。信徒でない俺には当時の彼女のショックは計り知れない。

 

「でも心身ともにボロボロの私をお前は守った、そして『生きろ』とまで言った。最初はお前を憎いとすら思ったね。殉教を邪魔したお前を今すぐにでもデュランダルの錆にしたいと」

 

「えっ」

 

お前あの時そんなこと考えてたのか!?俺あの時頑張ってコカビエルと戦ってた後ろでそんな怖いこと考えてたの!?流石に伝説の聖剣でぶった切られるのは勘弁だな…。

 

俺の反応を見ていたずらっぽく笑った。

 

「昔の話だよ、私はコカビエルを倒した君の姿を見て…心を奪われたのかもしれないね」

 

「いっ!!?」

 

思わず飛び跳ねる勢いで上体を起こしてしまった。

 

お前…そんなにストレートに言う!?こんな恋愛経験なんて微塵もない俺はこんなときどうすれば…!?

 

「それだけじゃない。悪魔に転生し、行き当たりばったりの中での決断に後悔を抱いた私を前向きにさせてくれた。挙句、ミカエル様に再びお祈りができるよう直談判ときた」

 

それも確か一週間ちょっと前のことだったな。

 

あの時はいつもは豪快に俺を振り回して、笑う彼女の暗い顔が見てられなかった。ミカエルさんの件は…タイミング的にもちょうどよかったしこのチャンスを逃すまじという一心でやったことだ。

 

「教会にいた時、愛とか恋とか口うるさく説いていた同僚が『誰にでも運命の人がいる』なんて言っていた。その時はくだらないとしか感じなかったが…今になって分かった気がする」

 

「?」

 

「私はお前に三度も救われた。ふふっ、これを『運命の人』と呼ばずして何という?」

 

…おいおい、こんな可愛らしい笑顔を向けられたらドキドキするじゃないか。

 

あの、もしかして、もしかしなくてもこれってゼノヴィアが俺に惚れて…。

 

あ、やばい、だめだ何か胸がドキドキしてきた。心臓がドックンドックンしてる。

 

「いや…そのお前、俺はお前に隠し事をしてるんだぞ?そんな胡散臭い奴を『運命の人』なんて…」

「お前が仲間思いな奴だってことはわかってる。もう一か月近くはお前と暮らしてるんだぞ?お前が隠し事をしてるのも、やましいことだから言えないのではなく私たちのことを思ってのことだろう?」

 

「……!」

 

なんで…なんでそんなに俺のことを信じてくれるんだよ…?

 

今まで彼女の行動が読めず度々振り回された中で、一番わからない。

『どうして』と言う疑問が俺の脳内を埋め尽くす。

 

「この際、お前が何を隠しているのかは聞かない。…でもこのままお前に助けられっぱなしなのはデュランダル使

いとして許せん」

 

おもむろに手を動かし、俺の手を取った。彼女の手の温かさが伝わってくる。

 

「だから私を信じてくれ、お前があの時の私のように壁に当たって絶望した時は私の手を迷わず取ってほしい。私は考えるのは苦手だからお前の前に立ちふさがる壁を豪快に切り倒すことしかできない。だから…」

 

狼狽に揺らめく俺の瞳を彼女の真っすぐな性格を表すように真っすぐ見てくる。

 

「お前が救った仲間を、信じろ」

 

「…ッ!」

 

その真っすぐな目と真っすぐな思いを乗せた言葉がどこまでも俺の心に突き刺さる。

 

最近の俺の行動に思う所はあるはずだ。なのにあえて聞かず、愚直なまでに俺を信じてくれる。

彼女なりの配慮が逆に俺の心を苦しめている。

 

どうしてこんなにいい仲間に隠し事なんてできる?今まで心の奥に封じ込めてきた罪悪感が疼く。

疼き、暴れ、やがて内に秘めた罪悪感は出口を求める。

 

約束も何かも忘れて、俺は衝動に駆られるまま口を開いた。

 

「…ゼノヴィア!お、俺は!」

 

意を決して打ち明けようと口を開いた瞬間、彼女は寝返りを打って背を向けた。

 

「私はもう寝る。明日は朝早い、お前も早く寝るんだぞ」

 

「えっ、あ、ああ、うん…」

 

うおい!!?折角色々話そうとしたのにそれかよ!!やっぱお前はお前だな!

 

それっきり言葉が返ってくることはなかった。呆気に取られてそのまま一分近くベッドの上でそのままの態勢で固まった。

 

…実はまた迫られるんじゃないかとちょっと期待してた自分がいたり。

 

 

 

 

 

翌朝、目覚めたらベッドの外の冷たい床で寝ていたことに気付いた。

そしてベッドの上で一人で寝ている彼女の寝相を見て察した。

 

蹴り落とされた…。

 

 

 

 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

来たる朝、本邸の庭に集合したオカ研。

アザゼル先生を含めた全員がジャージ姿でアザゼル先生の前に並んでいる。

 

皆、これから始まる修行に向けて気を引き締めているのがしっかり表情から窺える。

かく言う俺もその一人だが。

 

「よーし、点呼するぞ」

 

資料を手に持つアザゼル先生が点呼を始める。

 

「リアス」

 

「はい」

 

「イッセー」

 

「はいっ!」

 

「朱乃」

 

「…はい」

 

「小猫」

 

「はいっ」

 

「木場」

 

「はい」

 

「アーシア」

 

「はい!」

 

「ゼノヴィア」

 

「ん?」

 

「ギャスパー」

 

「はいですぅ!」

 

「最後に悠」

 

「はい」

 

それぞれの個性を反映した返事が返ってくる。

何か昨日一昨日とは打って変わって塔城さんの気合が入ってる。

 

結局、なんで落ち込んでたんだろうな。本人に聞こうとしても「ほっといてください」の一点張りで何もわからずじまいだった。…今は修行があるから気持ちを切り替えただけなのか?

 

「うっし、全員集合だな」

 

「…点呼する意味あったのかしら?」

 

「つれねえな、たまには俺に先生らしくさせろよ」

 

ちなみに学校ではアザゼル先生は化学担当だ。要点をきっちりとらえた授業内容とちょい悪でフランクな姿が生徒に人気だ。

 

ふっと笑みを消して、真剣な表情に切り替える。

 

「それじゃあ今からお前らのトレーニングメニューを発表する。これは試合に備えたものでもあるが将来的なものも見ている。すぐに効果の出る奴もいるがじわじわと出てくる奴もいるだろう。だが方向性を間違いさえしなければお前らは一級品のダイヤモンドになれる。俺が保証しよう」

 

おお、堕天使総督から見てもこの面子はすごいのか。まあこいつらが凄くないわけがないよな。デュランダルだったり聖魔剣だったり赤龍帝だったりグレモリーの次期当主だったり。それで凄くないっていう奴は余程の無知か、余程自分の腕に自信があるかだ。

 

「まずはリアス」

 

最初は部長さん。

 

「お前は基礎トレーニングをこなしつつ過去のあらゆるレーティングゲームのデータを頭に叩き込め。詳細はこれに書いてある」

 

そう言って早速書類を手渡した。

 

「…特別なトレーニングはないようだけれど」

 

サッと目を通した部長さん、怪訝そうな声色で漏らした。

 

「ああ。お前は魔力も才能も身体能力も高スペックの上級悪魔、だから戦闘に関しては基礎トレーニングをこなしさえすればほぼほぼ問題はない。だがお前はグレモリー眷属を率いる『王』だ」

 

「…」

 

「リーダーに求められるのはその場その場の状況を的確に分析する判断力、苦境を打破する思考力、そして機転だ。眷属の持ち味を活かすも殺すもお前次第なんだよ、だからお前はそっちを重視で鍛えなければならん。だがゲームは戦場と同じで何が起こるかわからないってのもよーく覚えておけ」

 

なるほど、レーティングゲームは実戦と違って様々なルールが適用される『ゲーム』。中にはゲームを一種のチェスだととらえる悪魔もいる。状況に応じて適した眷属を適切に動かすことが彼らを指揮する『王』には求められる。

 

今後、レーティングゲームの公式参戦も目指す部長さんにとって大きな20日間になりそうだ。

 

「次、朱乃」

 

次に呼ばれたのは朱乃さん。険しい表情はこれからの修行に気を引き締めているようにも単に不機嫌そうなだけにも見える。

 

「お前は自分に流れる血を受け入れることからだ」

 

「…!!」

 

明かされたトレーニングの内容に動揺、怒りすら感じる表情と言う反応を返した。

 

アザゼル先生が来た時の話もそうだけど、やっぱり朱乃さんって堕天使関係で何かあるのか?

 

「フェニックス戦を見たぜ。何だあの様は?堕天使の力を解放し、光の力を使っていればあの『女王』は難なく倒せたはずだ」

 

呆れ半分で語るアザゼル先生。

 

…え、もしかして朱乃さんって堕天使だったの!?

俺初耳なんだが!

 

周りを見るとびっくりしてるのは俺とゼノヴィア、アルジェントさんだけだ。…ん?あれ兵藤知ってたのか?

 

「私はっ!あの忌々しい力に頼らずとも…!!」

 

「だからお前は強くなれないんだよ、お前のそのプライドこそがお前を弱くしているんだ。これから『禍の団』との戦いは激化する。戦場はお前のつまらない意地で生き残れるような生易しい場所じゃねえぞ」

 

朱乃さんの嫌悪感に満ちた訴えをアザゼル先生は厳しく突き放す。堕天使嫌いの堕天使…いや悪魔?堕天使?朱乃さんってどっちなんだ?

 

「お前はこの20日間で『雷の巫女』から『雷光の巫女』に進化して見せろ」

 

それを最後に朱乃さんも怒りの矛を渋々ながらも鎮めたようでそれっきり喋ることはなかった。

 

「よっし、木場」

 

次は木場だ。会談の時こいつの戦いっぷりを見たが上手いことスピードを活かし、自分の間合いに持ち込んだりしていて特に問題点がなさそうに見えるが…。

 

「お前は禁手の維持時間を伸ばすことだ。まずは一日、今度は実戦形式で一日、これを繰り返してどんどん時間を伸ばす。剣術は…確かサーゼクスの『騎士』にしごいてもらうんだったな」

 

「はい、師匠に一から指導してもらいます」

 

凛々しく頷く木場。

 

禁手の維持時間…つまりどれだけ聖魔剣が使えるかってことだな。もしかしてアザゼル先生から見てもそれ以外に目立った問題点がなかったりする?

 

ていうか待て、木場に師匠がいたの!?しかもその師匠が魔王の眷属…って、眷属内で俺の知らない情報多くないか?

 

アザゼル先生の視線がゼノヴィアに移った。

 

「ゼノヴィアはデュランダルの威力向上を目指せ」

 

「威力だと?デュランダルを制御するのではないのか?」

 

「ああ、その方がお前の性にも戦闘スタイルにもあっているだろう?勿論近接戦でも問題なく扱えるようある程度制御には挑戦してもらう。禍の団には剣豪だってごろごろいる、そんな奴に剣に振り回されたまま近接戦に持ち込むのは危険だ」

 

確かに、こいつは小手先の技を使うタイプじゃないな。それに何でもぶった切るデュランダルの火力は殺さず追求する方が戦い方としてはベストだろう。

 

「聞いたか木場!?やはり私にはパワーを極めるべきなんだ!!」

 

アザゼル先生の話を聞いて木場に向かってどうだと言わんばかりにドヤ顔をし始めた。

 

…最近、木場に『騎士なんだからもうちょっとテクニカルに動いてくれ』って言われたばかりだもんな。会談の時もいきなりデュランダルを解放してたし。

 

「…ハァ」

 

木場もやれやれと頭を抱えだした。

 

「それとお前にはもう一本使ってほしい聖剣がある。それに慣れながらデュランダル使いとしてランクアップを目指せ」

 

「了解だ、聖剣使いとして腕が鳴るね」

 

そう言って彼女は自信満々に笑む。

 

「次にアーシアだが…」

 

「イッセーさんと同じ禁手ですか?」

 

あ、言われてみればアルジェントさんの神器も禁手があるはずだよな。ヴァーリや兵藤のせいで神滅具の禁手はすごい!ってのに目が行きがちだけど普通の神器だって木場の『魔剣創造』が聖魔剣になったように禁手になれるはずだ。

 

しかしアザゼル先生は首を横に振った。

 

「いや、お前の場合禁手になってもあまり意味がない」

 

「えっ、どうしてですか?」

 

「『聖母の微笑』の禁手は治癒能力の拡張だ。だがお前の神器は様々な実践を経たことで他の『聖母の微笑』使いを超えた治癒のレベル、回復速度になりつつある。つまりは禁手にならずとも十分な治癒効果を発揮しているってことだ。だから今回は治癒能力の新しい使い方を編み出すのさ」

 

「新しい使い方…」

 

「例えばだ、今までは負傷者のもとに行ってその怪我に直接治癒のオーラを当てていたわけだが…例えばゲームでヒーラーが攻撃が飛び交う前線に出るのは危険だよな?あいつらは大体後ろに下がってそこから支援魔法をかけたりしている」

 

アザゼル先生、ゲームをやらないアルジェントさんにその例えは通じないと思うぞ。でも確かに言われてみれば今のアルジェントさんの回復方法ってあまり効率が良くないな。

 

アザゼル先生の言わんとしていることにいち早く気付いたのは兵藤だった。

 

「あ!もしかして治癒のオーラを飛ばせたりするんですか!?」

 

「正解だ、一応俺達のデータでは全身から癒しのオーラを出して周囲の味方全員を回復することもできると出ているが…アーシアの場合、それをやると『優しさ』故に敵ごと回復してしまう可能性が高い。なら多少回復の力が落ちても確実に回復する方をできるようにするってことだ」

 

おお!それならアルジェントさんのカバーもある程度気にしなくて済むな。今まで前線で負傷した俺達を回復するには危険な前線まで行かなければいけなかったがこれで問題も解消だ。

 

てか全身から癒しのオーラなんてこともできるのか!そこまで調べてるなんて、流石グリゴリは神器に関しては餅は餅屋だな。

 

「ギャスパー」

 

「はいいい!!」

 

ギャスパー君はビクンと跳ね上がる勢いで返事する。

 

「お前は専用の引きこもり脱出プログラムを組んだ。この20日間で段ボール生活とおさらばしろ。折角希少な神器を持ってるってのに引きこもりで前に出ないってのは流石にもったいねえ」

 

20日間で引きこもり脱出かーい!他の面子がしっかりした内容だっただけにイマイチな内容に思えるが…でも引きこもりを引きずってると今後に響きそうだ。

 

「そして…小猫」

 

「はい」

 

静かながらも気合の入った一声。この中で一番気合が入っているとしたら間違いなく塔城さん、そう思うくらいの意思の強さと言うものを感じる。

 

「お前も朱乃と同じだ。自分の内にある力を受け入れろ」

 

「っ…」

 

さっきまでの気合が挫かれ、朱乃さんと同じ不満げな、しかし怒りではなく恐れの入り混じった表情を見せ始めた。

 

塔城さんもレアキャラだったりするのか?…というよりさっきから仲間内で隠し事や知らないことが多すぎて俺は悲しいぞ。あまり俺も言えた口ではないが。

 

「赤龍帝のイッセー、聖魔剣の木場、デュランダルのゼノヴィア。攻撃力特化の『戦車』のお前は『戦車』でない三人に大きく劣っている。自分の力を受け入れ、モノにしないと今後足手纏いになるぞ」

 

「…はい」

 

厳しい言葉に益々気合は失われていき、ついには昨日と同じくらいのテンションに戻ってしまった。

 

「大丈夫だって!小猫ちゃんなら速攻で強くなれるさ」

 

そんな彼女を元気づけようと笑って肩をたたく兵藤、しかしその手はパチンという音を立てて弾かれる。

 

「軽々しくそんなこと言わないでください…ッ!」

 

それはいつものように物静かな塔城さんの姿ではなく、悩みという壁にぶち当たり苦しむ一人の少女の姿だった。

 

…ここまで感情を露わにした塔城さんは初めて見た。

 

何というか、戦闘的な面でも精神的な面でも俺達がまだまだ問題を抱えたチームだということを強く認識させられた。今まで表に出さなくても大丈夫だったものをアザゼル先生がどんどん掘り上げていってる感じだ。でもそれを乗り越えた時、俺達はもっと強くなっているはずだ。

 

「待たせたなイッセー。次はお前だ」

 

「はいっ!」

 

指名に兵藤の表情が緊張からか硬くなる。

 

「お前にはとっておきのコーチを用意した。向こうの山でしっかり鍛えてもらい、禁手に至れ」

 

やっぱり兵藤は禁手か。会談の時みたいにグリゴリ謹製のリングがあれば一定時間至れるようだが多用すれば正式な禁手に至れなくなるらしいからな。

 

それにヴァーリ戦を考えれば禁手は必須だろう。赤白対決、しっかり赤が勝ってくれよ。

 

「は、はい…?」

 

兵藤が怪訝な声を上げる。

 

「そろそろ来るはずだが…」

 

そう言ってアザゼル先生が宙を仰いだ。

 

数秒後、俺達に向かって飛んでくる影が見え始めた。次第にそれは大きくなり…。

 

あれ、デカくないか?ていうかあのフォルムは…ドラゴン!?

 

やがてそれは緩やかに降下し、砂煙を上げて地面に着地する。

 

赤紫の鱗、頭部に生えた角のついた湾曲をした大きな角、背に生やした大きな翼、筋肉のしっかりついた逞しい人型のフォルムをした巨大なドラゴン。

 

その場にいるだけで圧倒される存在感を放つドラゴンが腕組み、俺達を舐めるように見下ろした。

 

「ド、ドラゴン!?」

 

「すごく…大きいです…」

 

…俺、この世界に来て悪魔や堕天使はたくさん見たのにちゃんとしたドラゴンは初めて見た。本当にすげえ、こんなのと対峙して戦える物語の主人公ってすごいんだなとしみじみと思う。

 

二天龍?あれは封印されてるしそこまで姿もドラゴンっぽくないしノーカンだ。

 

やがてドラゴンが獰猛な牙を蓄えた顎を開く。

 

「ここに来るのは久しいな…アザゼル、よくもまあ堕天使の頭がぬけぬけと悪魔の領域に居れるものだな」

 

「ちゃんとサーゼクスの許可を取ってるからいいんだよ。それはいいから知らない連中のために軽く自己紹介でもしてやれ」

 

ニヤリと口の端を上げフンと鼻を鳴らした巨大ドラゴンの顔が俺達に向いた。…って、普通に喋れるんかい。

 

「初めましてだ、リアス嬢の眷属たちよ。俺の名はタンニーン。元六大龍王の一角で今は最上級悪魔をやらせてもらっている」

 

堂々たる眼前にそびえる龍の姿に誰もが息を呑んだ。

 

「龍王で最上級悪魔かよ…!」

 

最上級悪魔って区分で言えば多分、魔王の次に偉い階級だろう?とんでもないコーチを連れてきたな!

 

…あれ、んん?龍なのに悪魔?それに。

 

「六大龍王…?」

 

前にヴリトラが五大龍王だという話は聞いたけど、どういうことだ?最近になってまた増えたのか?

 

「ヴリトラ達五大龍王は元々タンニーンを入れて六大龍王だったんだが、こいつが悪魔に転生して抜けたことで五大龍王になったのさ」

 

俺の内心を見透かしたがごとくアザゼル先生が解説してくれた。

 

龍王が悪魔になるって、そんなことできるのか…。それに最上級悪魔ってことは上級悪魔の部長さんより上ってことになるのか。元龍王の転生悪魔、悪魔って色々いるんだな…。

 

俺達を見下ろすタンニーンさんの視線が兵藤…の左手に向いた。

 

「む、ドライグか。久しいな」

 

『ああ、何百年ぶりだ?』

 

兵藤の左手の甲から丸い緑色の光が点滅し、親し気に会話を交わす両者。しかし天龍と龍王の会話って中々レアな光景を目にしているな。

 

「さてな、それよりまだティアマットに追いかけられているのか?」

 

『相棒の前でその話は勘弁してくれ…』

 

お、ドライグにもなにか隠したいことがあるんだな。あの天龍にそこまで言わしめるティアマットって人とどんな関係が…?

 

「『魔龍聖《ブレイズ・ミーティア・ドラゴン》』タンニーン。口から放たれる火の息は隕石の衝撃にも匹敵すると言われている。ドラゴンの修行と言えば元来より実戦あるのみだ。しっかり鍛えてやってくれ」

 

「うむ、ドライグを宿すものを鍛えるとはな…生きていれば何が起こるかわからないものだ。覚悟しておけ少年、私のしごきは優しい物じゃないぞ」

 

『ある程度加減はしてくれ、想像以上にうちの宿主は弱くてな。お前が本気を出せばあっという間にお陀仏だ』

 

兵藤…お前、死ぬんじゃないか?ブレイズ・ミーティア・ドラゴンとか元龍王とか最上級悪魔とか聞くだけでおっかない称号をたくさん持ったドラゴンに鍛えてもらえるなんて、そりゃ強くなれるだろうが結果が出る前に死ぬだろ…。しかも隕石並の攻撃力を持っていると来た。

 

軽く心の中で合掌した。もし生きて帰ってきたらミルクでも奢ったやるか。

 

話も程々にアザゼル先生の視線が俺に移った。

 

「最後に悠」

 

「はい」

 

ついに来た。緊張で胸が高鳴る。最近ヴァーリやアルギスにやられっぱなしだからな、ここらでしっかり鍛えて強くならないと。

 

一体どんなメニューが…?

 

「お前は実力以外にも知識を身につけなければならん、取り敢えずメジャーな神器や武器の名前と能力、それから各勢力の有名人の名前はあらかた言えるようにはしないとな」

 

つまり勉強か…。でも神器に関していえばヴァーリ戦で役に立つはずだ。一応推進大使なんて役職を貰ってるから有名人の顔と名前を覚えるくらいはしないとな。

 

「それで戦闘方面だが…ゲームに参加するわけでもないし、正直に言ってお前には他の連中のようにこれと言った問題点はない」

 

「え、そうですか?」

 

意外だな、今までそれぞれの問題点を突いたメニューが多かったから俺も何かしら痛いところをつつかれると思っていたが。

 

「ああ、眼魂を入れ替えて遠中近全てで立ち回れるお前さんは相当なもんだ、しかもまだ俺達に見せてない眼魂もあるときた。無理に新しい戦い方を増やす必要はないだろう」

 

…つつかれるどころか褒められたんだが。まあ確かにまだこっちの手に来たことのない眼魂が英雄眼魂だけでも7つほどあるからな。

 

「だがそれは眼魂があればの話、お前の戦い方は悪く言うなら眼魂頼みだ。今後アルギスに眼魂を奪われた時のことも想定しなければならん」

 

確かに、明確な目的はわからないが眼魂を狙う敵が現れたということは今後、手持ちの眼魂を奪われる可能性が出たということだ。最悪、全ての眼魂を奪われる可能性もある。

 

実はアザゼル先生に解析してもらったところスペクター眼魂には俺自身の魂が宿っていることが判明した。

つまりスペクター眼魂の破壊は俺の死を意味するということだ。奪取された場合は魂が抜け、多くて三日で魂と肉体のリンクが途切れ、天に召されることになる、らしい。

 

らしいというのはあくまでアザゼル先生の解析による結果で、実際はどうなるかはわからないが解析通りの結果になるだろうという見積もりが強い。まあ何が起こるかわからないから実際にやる気はないけど。

 

つまり奴の目的である眼魂の奪取と俺の抹殺はほぼイコールと言ってもいい。一体何の恨みがあってそんなことをするのだか。

 

「だから…お前にはお前自身の戦い方に更なる磨きをかけてもらう。眼魂に依存しない、お前自身の戦い方をな」

 

先生はニヤリと深い笑みを浮かべて、俺に書類を手渡したのだった。

 




おまけ サブキャラの集い in cafe パート4

「ゼノヴィアちゃんとかどや?」

「ゼノヴィアねぇー、最初はちょっと近寄りがたい雰囲気があったわね」

「あの頃はオカ研メンバーが色々フォローしてたもんな」

「最近は憑き物が落ちたみたいで柔らかくなったわね」

「せやなー、でも天然なところは変わらんな!」

「ゼノヴィアちゃんっていつもはキリっとしてるけどポンコツだよな」

「わかる!でもそこがいいのよねー、ギャップ萌えってやつ?」

「テスト期間はすごく勉強を頑張ってたみたいね。いい刺激になったわ」

「国語はイマイチだったけど他の教科はかなりの高得点だったな」

「うんうん、それでいて運動神経も抜群!ゼノヴィアちゃんが男でも惚れるわ!」

「……」

綾瀬の顔がムッとすると同時に、黒い靴を履いた足で飛鳥の足を踏みつけた。

「痛い痛い!ちょ、綾瀬ちゃん勘弁してやぁ!?」

「クソォ!天王寺め、お前も裏切り者か!」

「なぜ俺達は先に進めない…!?」

「松田君も元浜君もどうしたんや!?」

「…ねえ綾瀬っち、兵藤もそうだけどこいつも大概よね」

「…そうね」

綾瀬が飛鳥を振り向かせるのは難しそうだと実感した藍華だった。


ゼノヴィアは『運命の人』を恋愛的な意味で捉えていません。あくまで何かと縁があって頼りになり、より信頼できる仲間という風に思っています。悠、残念。

今年が終わるまでにはあと3話は上げたいなぁ…。

アザゼル先生の意味深な言葉の意味、それは次回に。

次回、「アザゼル先生のパーフェクト神器教室」
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