ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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第1話です、操作に慣れないながらも書き上げました。


プロローグ
第1話 「こんなはずじゃなかったさ……!」


「ぱぇ………?」

 

この間抜けた音が、俺のこの世界での第一声である。

 

なにも好き好んでこのセリフを第一声に選んだ訳ではない。折角の転生なら俺もカッコいい台詞を第一声にしたかった。

 

「こんなはずじゃなかったさ……!」と、どこぞの姫様にフラれた黒い獅子のパイロットの声が幻聴として聞こえてくるようなこないような。

 

これは予想外の出来事に対して思わず発せられた声でもある。

その予想外の出来事というのは………

 

(目の前が真っ暗なんですけど)

 

目を開けても真っ暗、一瞬光の存在しない無の世界に飛ばされたのかと思ったが、その考えはすぐに消えた。

 

消毒液の匂い、手足が感じる布団に似た触感、そして隣から聞こえてくる電子機器の音。

 

ここは病院なのだと理解した。そしておそらく、今入院している。

 

しかし何故自分が病院にいるのか、何故目を開けても真っ暗なままなのかと考えようとした矢先、

 

 

 

 

 

 

「か、鏡先生っ!紀伊国君が!紀伊国君が起きましたっ!!」

 

「お、おおお落ち着け、医者たるものこういう状況こそ冷静に対処するべきだ」

 

「鏡先生も落ち着いてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

……ファンタジーな要素もあるって聞かされたけど本当にあるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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春の暖かな風が吹き、道に咲く桜の花びらが舞うなか、

俺は病院で聞かされた情報をもとに住宅街を歩く。

ここは『駒王町』と呼ばれる地方都市。

 

俺の名前は『紀伊国 悠《きのくに ゆう》』。

正確に言えばこの名前はこの世界で俺が転生した人物の名前である。なので以前生きていた世界での名前もあるが、それはおいておく。

 

先から何度も話に出ている通り、俺は俗に言う『転生者』である。

 

テンプレの如くトラックにひかれたわけでもなく、前世での死は、

電車の脱線事故に巻き込まれてのものだった。

 

そうして死んだ矢先、俺の魂は青髪の女神に拾われ……

 

 

 

 

「あなたを他の世界に[特典]を付けて転生させるので、誰にもあなたが死んだということを言わないでください」

 

 

と、雨宮ボイスで惚れ惚れするほど綺麗な土下座で頼まれてしまった。

どうやら向こうのミスで俺の人生は予定よりも早く終えてしまったらしい。

 

その事に何とも思わない訳ではないが、転生という言葉に心が踊り、その案を受け入れた。

 

『特典』は何でもいい、ファンタジーな世界に転生させると聞き、俺はその特典に『仮面ライダースペクターの力』を選んだ。

 

その答えに至るまでの過程で俺は悩みに悩んだ。クウガ、オーズ、ブレイドと数あるライダーの中でスペクターを選んだ理由はやはり、最終形態のシンスペクターの存在である。

 

六枚の翼、七つの大罪をモチーフにした必殺技は俺の琴線に大いに触れた。

悩みに悩んだ末に答え、俺はこの世界に送られた。

 

 

 

 

そして同時期に車の事故に巻き込まれて両親を失い、大怪我を負い1週間寝たきりだった『紀伊国 悠』の体は他世界から来た魂が入ることで奇跡的な回復を遂げた。

 

しかし、奇跡的とはいっても完全なる回復ではなかった。

 

事故の影響で両目の視力を落としてしまったのだ。

 

目を開けても真っ暗という状況は頭に巻かれた包帯によるものだった。専用のメガネを作るために数日待たなければならず、早く外の世界に出たいと悶々とベッドの上で過ごしていたのは記憶に新しい。

 

担当の鏡先生は名前を聞いた時、「まさか」と思ったけど本当にそのまさかだった。ガシャットもバグスターもない(と思われる)世界だけど初期の様に患者とは必要以上に関わらないということも、「お前の存在はノーサンキューだ」と言われることもなかった。

 

ただ、やはりショートケーキが好きな模様。

 

そうして数日を経てメガネを受け取り、友達から送られたという荷物をバッグに詰め込み俺は退院した。

 

見たい見たいと切に願っていた外の世界だが、やはりファンタジーの欠片もない以前住んでいた世界と何一つ変わらない文明レベルだった。

 

その事実に肩透かしを食らいながらも歩きだし、今に至る。

 

現状知っていることはこの世界は以前の世界とほぼ変わらないものだということと、先の車の事故のことだけである。

 

両親を失い、頼れるものは病院で聞いた自分の家の情報とこの荷物という状況、先行きに大きな不安を感じざるを得ない。

 

歩くうちに本当にこの道であっているのか不安になり、一応近くの道を歩くおそらく自分と同年代であろう男女二人組に聞くことにした。

 

整った顔立ちをした青年と、ハーフめいた顔立ちのブロンドヘアーの少女。こういうところにはここが異世界であると思わされる。

 

「あの、すみませんけど…」

 

俺の声を聞き、顔を見た二人組の男女は予想外の反応を見せた。

 

「悠くん……?ホンマに悠くんなんか!?」

 

「あなたいつの間に退院したの!?こっちがどれだけ心配したか知りもせずに……!」

 

どうやら自分を知っている人間なようだ。しかし俺にその『悠』の記憶はないので

 

「ごめん、実は事故で記憶が無くなったんだ」

 

と、誤魔化すことにした。

 

すると二人は「そうなのね……」「そうなんか……」とショックを受けてしまった。

 

二人には申し訳ないことをしてしまったと心の中に罪悪感が生じる。

 

この暗い雰囲気のなか会話を続けても記憶のない自分では二人にまたショックを与えてしまうだろうと思い、このまま道を聞いて会話を終えようとしたとき、

 

「なら、僕らでまたたくさん思い出をつくればええんや!」

 

青年はこの事実を前向きにとらえた。

 

そのポジティブさ加減に少女もあきれた様子だ。

 

「あなた、彼が今どういう状況か本当に解っているの?」

 

「わかってる」

 

青年はまぶしい笑顔を向けて話す。

 

「記憶がなくなっても悠くんは悠くんや、死んだわけやない、大事なのは今、前を向いて生きることや!」

 

何このイケメン、見た目だけじゃなく中身もイケメンだった。

 

「……あなた、泣いてるわよ」

 

「えっ…」

 

言われて初めて目から涙が流れていることに気づいた。

どうやら自分でも知らないうちに頼れる者のいない状況に大きく寂しさを感じていたらしい。

 

親身に自分と向き合ってくれたこの青年に感動してしまう位に。

 

「ぼ、僕そんな泣かせるようなこと言ったかいな…!?」

 

「いやちょっと感動しただけだ、親身になってくれてありがとう」

 

「ならよかった!」

 

藪から棒に青年が言い出す。

 

「せや、僕と綾瀬ちゃんが最初の友達になったる!記憶がないんなら僕と綾瀬ちゃんが最初になるんやろ?」

 

「まぁ、そうかな…」

 

「ほな、決まりな!」

 

「私はまだなるとは言ってないわよ」

 

「まぁそう言わずに、綾瀬ちゃんと僕の仲やろ?」

 

押しに押された綾瀬という少女も微笑を浮かべて「仕方ないわね…いいわ、私もあなたの友達になるわよ」と返す。

 

言葉の割には楽しげな様子だ。

 

「フフ……」

 

「どうしたの?」

 

友達ができた嬉しさからか思わず笑いが出てしまった。

 

「いいやなんでもない、じゃ改めて自己紹介から、俺は『紀伊国 悠』」

 

「僕は『天王寺 飛鳥』!よろしゅうな!」

 

関西弁の青年が手を差し出し、握手で応じる。

 

「『上柚木 綾瀬』、よろしく」

 

続けて差し出された少女の手にも、同様に応じる。向こうは照れくさいようで、顔を少し赤らめていた。

 

……ツンデレの片鱗が見えた気がする。

 

「そう言えば、俺は最初自分の家の道を聞こうとしたんだった」

 

「なら一緒に行こか!友達を助けるのも友達やで!」

 

「私も付き合ってあげるわ」

 

これが俺の異世界での最初の友達、真のイケメンこと『天王寺 飛鳥』とツンデレ美少女『上柚木 綾瀬』の出会いだった。

 

俺は彼らの優しさと明るさに救われた。心寂しい異世界生活で彼らの存在はとても大きい。

 

これから始まる彼らとの日常を守りたいと、密かに願うのだった。

 

 

 

 

 

 

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「ここがあなたの家よ」

 

数分後、二人の案内を受けて家にたどり着いた。

その道中、彼らの知る紀伊国悠がどんな人物だったか、彼らの通う『駒王学園』という学校について聞いた。

 

紀伊国悠は二人の幼なじみで内気ではあるが、優しい人物だったと語ってくれた。もし傍若無人だとか、慇懃無礼な人物だったとか言われたらどうしようかと思った。いきなり見ず知らずの他人に身に覚えのない因縁をぶり返されたらたまったもんじゃない。

 

『駒王学園』は駒王町にある元々は女学校で近年共学になった学校と聞いた。

 

学年が上に行くほど女子の比率が高く二大お姉さまとか変態三人組などの有名人がいるとも。しかもその三人組と自分たち三人は同じクラスらしい。

賑やかな学校生活になりそうだなー(遠い目)。

 

「はぁ…はぁ…ほどけた靴紐を直すくらい待ってくれてもええやろ……はぁ…」

 

息も絶え絶えに天王寺が走ってくる。

 

「いや俺は待とうとしたけれど上柚木が…」

 

「これで昨日の件についてはチャラよ」

 

「あ、あれは不可抗力や!冤罪や!」

 

…一体あいつは何をやらかしたのだろうか。

 

一応聞いてみたら「言わせないでよ、恥ずかしい……」とうやむやにされてしまった。深追いしたらどうなるかわからないので止めておこう。

 

あれ?もしかしてコイツら主人公とヒロインなんじゃないか?

二人の容姿にしても関係にしてもピッタリだと思うんですけど。

いやまさかな……

 

「とにかく、明日の朝私と飛鳥がまた来るわ、それまでに学校にいく準備をしておくことね」

 

上柚木の言葉に了解の意を示す。

 

「ほな、また明日な!」

 

「おう」

 

家の前から去り行く二人を見送り、鍵を開けて家に入る。

 

外観も中もザ・普通の家といった感じだ。ただ、妙に気になるのは床や家の物がホコリを被っていないことだ。

 

事故から一週間が経っている。一週間この家に誰も居なかったのならホコリを少しでも被ってる方が自然だ。

 

もしかして数日前に天王寺か上柚木が掃除でもしてくれたのだろうか。あまり考えたくはないが空き巣狙いという可能性も捨てきれない。

 

「……」

 

荷物の整理がてら家の探索をしたがやはり綺麗に掃除されている。それどころか父母の部屋の物は完全に撤去されている。

 

……まさかあの青い女神の使いがやったのか?いや向こう側の手違いで死んだとはいえそこまでやる理由はない。

 

考えてもきりがないので早々に片付けをすませ、リビングに降り確認するべき物を確認する。

 

「とりあえず試してみるか」

 

女神からもらった『仮面ライダースペクターの力』という『特典』。

 

動作確認は大事だ。不良品が送られていていざというとき使えないなんてことのないように念入りにしておく。

 

まずは眼魂《アイコン》。

スペクターは数多く存在するこの眼魂《アイコン》をベルトにはめることで様々な力を発揮する。

 

念じてみると右手に青のグラフィックのついた黒い眼魂《アイコン》が出現した。

 

「これが……」

 

スペクター眼魂《アイコン》。間違いなく、希望した通りだ。

スイッチを押すと変化した瞳のグラフィック、Sの文字が浮かび上がる。

 

……他の眼魂《アイコン》はいくら念じても出てこないのが気になるところだが。

 

そして次に変身ベルトたるゴーストドライバー。

はめられた眼魂《アイコン》の力を解放する道具。

 

ゴーストドライバーはブレイバックルやダブルドライバーのように、本体を腰にあてると勝手にベルトが巻き付くタイプではなくクウガのアークルのように最初から腰に巻かれた状態で出現するタイプなので早速念じてみるが……

 

 

 

 

 

 

「…あれ、出ない……?」

 

何度も念じるが一向に出現する気配がない。

 

「嘘だろ……」

 

嘘だと言ってよ、バーニィ!

 

とりあえずお決まりのあのセリフを言うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウゾダドンドコドーン!!」

 

こんな調子で俺の異世界生活が始まってしまうのであった。

 




Q.そんな装備で大丈夫か?
A.大丈夫じゃない、大問題だ。

鏡先生は多分今後一切出てきません。
???「ソレイジョウイウナー!」

飛鳥の関西弁難しい……
これに関しては時間をかけて慣れていくしかありません。

最後はあんな調子でしたが、次回、初変身です。

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