サブタイの元ネタはクウガのあの名言。
やることを詰め込んでいざ書いてみたら長くなってしまった。
後悔はしてないけど反省はちょっとしてる、
だが私は謝らな(殴
次の日の朝、新しい制服に袖を通しネクタイを手に取る。
あの後も何度か試したが結局、ドライバーが現れることはなかった。
というか眼魂《アイコン》だけでどう戦えと?
某筋肉バカみたいに眼魂《アイコン》を振って戦えってか?
それともモ○スター○ールみたいに投げて使えってか?
駄目だ、考えれば考えるだけあの女神への愚痴が思い浮かんでくる。
今度からあれのことは駄女神と呼んでやろう。
備え付けられたドアホンのチャイム音が鳴る。
『悠くん、来たで!』
「はーい」
朝から元気のいい友達の声が聞こえてきた。
ネクタイを結んで鞄を持ち、玄関のドアを開ける。朝の心地いい日差しが眩しい。
「うっす、おはよう」
「おはよう!」
「おはよう」
昨日の私服姿と違い学生服に身を包む天王寺と上柚木。
俺と天王寺は黒のズボン、白のワイシャツの上に黒のブレザー。
なんというか、凄くオシャレに見える。あのシンプルな学ランが恋しい。
上柚木はアニメや漫画にありそうな初めて見るタイプの制服。
スカートの赤紫以外は男子用と同じく黒と白がメインのカラーリング。
「……何よ、じろじろ見ないでよ」
「それ改造してるの?」
「してないわよ、ちゃんと学校指定の物よ」
「さいですか…」
まあ元から改造してるように見えるデザインだからこれ以上何をどうしろという話だが。
「話はそれぐらいにして、ほな行こか!」
こうして俺たちは学園への往路を歩く。
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「着いたで、ここが『駒王学園』や!」
俺は二人の案内を受けて学園にたどり着いた。
正面から見える校舎は西洋風の建築。ずっと見ていると外国に行ったような錯覚を覚えそうだ。グラウンドでは運動部の人たちが各々の練習に励んでいる。
校舎内に入り通路を歩きながら天王寺に尋ねる。
「俺のことはクラスの皆に連絡はいってるのか?」
「ばっちりやで!」
サムズアップで答える天王寺。
「クラス変えの後やけど皆、ほんまに悠くんのこと心配してた
で?」
「……そっか…」
うつむき気味に心情を吐露する。
「自分のことを心配してくれる人のことを忘れるなんて、薄情だよな……」
「悠くん……」
「……いちいち記憶喪失を気にしてんじゃないわよ」
……まさか上柚木から励まされるとは。
そうだ、大事なのは前を向いて生きることだと天王寺に言われた。
「…そうだな」
歩くうちに着いた教室の扉を開ける。
外観に反してそこまで西洋の感じはない空間で、いかにも教室という感じがある。
「紀伊国君大丈夫なの!?」
「って紀伊国君メガネかけてる!?」
「記憶喪失ってホント?」
入って早々にクラスメイトから質問攻めを受ける。俺は聖徳太子じゃないから一気に聞かれたらパンクする。
「あの、記憶喪失はホントだけどそれと視力以外は大丈夫だから……」
そう言うとみんなは安心したようで「わからないことがあったら聞いてね」と言ってそれぞれの仲がいい人との会話に戻っていった。
向こうが親切なのかそれとも『紀伊国 悠』の人望が厚いのかはわからないが、とにかく親切な人の多いクラスで安心した。
天王寺に「席は向こうやで!」と言われ、指された席に鞄を下ろす。
「よっ、久しぶりだな紀伊国…ってそっか、記憶がないんだっけな…」
「うん、悪いね」
後ろの席の男子から声を掛けられる。
制服を着崩し、中の赤いシャツが見える茶髪の男子。
今の声ってあの人だよね?「お前はバカ丸出しだッ!」とか言うあの人だよね?
「俺は兵藤一誠!覚えてないだろうけど、実はお前の幼なじみでもあるんだぜ?」
「本当か?そういえば近所に『兵藤』の表札が掛けられた家があったような……」
「そう、それ!」
本当幼なじみが多いな。前世には一人もそんなのいなかったのに。
今度は坊主頭と俺と同じく眼鏡をかけた男子から声を掛けられる。
「紀伊国氏、紀伊国氏、入院生活で色んなものが溜まっているのであろう!?」
「退院祝いだ、受け取ってくれ!」
そういって鞄から取り出したDVDを握らせられる。一体なんだろうと思ってタイトルを見ると……
「バカっ、お前なんでこんなもん学校に持ってきたんだよ!?」
パッケージに書かれた卑猥なタイトル、俗に言うAVと呼ばれる物だった。二人はニヤニヤとサムズアップをしている。いやいや、良くねぇよ!
「キャッ、紀伊国君が穢される!」
「あの三バカ……!」
「松田、元浜、兵藤死ね!」
女子から続々と非難の声が上がる。三バカと言うことはこの三人が例の変態三人組か?(おそらく)松田と元浜が「うっせー!」「紀伊国だって男だ!」と反論する。
確かに俺も男だけど流石にこれは……。そう俺が内心ひいている中、キンコンカンコンとチャイムの音が教室に鳴り響いた。みんなが席に戻り始めるなか坊主頭の手を掴み、渡されたDVDを無理矢理返して席に戻らせる。
いよいよ第二の学園生活が始まる、期待に胸が躍った。
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「──そして最後に、ここが旧校舎やで!」
昼休みの時間を使って俺は二人の案内を受けながら学園内を回った。グラウンドにテニスコート、プールや体育館など普通の学校にも見られる施設があるのは分かるが旧校舎が残っているのは意外だ。
旧校舎も本校舎と同じように西洋風の建築ではあるが周囲には木々が生い茂り外壁にはツタが伸びている。
「こんな所何に使うんだ?」
「ここは今、オカルト研究部が使っているのよ」
「オカルト研究部?また珍妙な部活があるもんだな」
初めて聞く部活の名前に興味が湧く。
入りたいとは思わないが。
「なんでも、怪奇現象とかを調査しているらしいわ、部員は少ないけど学園の有名人ばかりよ」
「へぇー」
「例えば────」
会話の途中で足音が聞こえてきた。
聞こえてくるほうをみると美男美女が揃って歩いてくる。
黒髪ポニーテールの美女はこちらの視線に「あらあらうふふ」とにこやかな笑みを返す。
優しげな顔立ちの金髪の美男子は「やぁ」と手をあげて先ほどの美女と同じようににこやかな笑みを向けた。
物静かな白髪の小柄な少女はこちらに一瞬視線を向けると再び旧校舎の方を向いた。
そしてそのまま旧校舎へと入っていった。
「入っていった順に二大お姉さまの一人、三年の姫島朱乃先輩と、二年の木場祐斗君、そして─」
「我らが学園のマスコット、一年の塔城小猫ちゃんや!……って痛い!?」
「……全く、すぐに鼻を伸ばして……」
上柚木が天王寺の耳を引っ張る。
……心なしか少し不機嫌そうに見える。もしかして上柚木は天王寺のことが……。
「上柚木ってもしかして……」
「な に か し ら ?」
「いえいえ!なんでもございません!!」
凄みがかった笑みで返されてしまった。しかしその目は決して笑っていない。
こうして二人の案内による学園探索は終わりを告げた。
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放課後、俺と天王寺は学園の近くのコンビニに寄っていた。
買い食いは学生ならではの楽しみだと俺は思う。
なら人生二度目の学園生活でもこれを楽しまない手はない。
コンビニの目玉商品、ファムチキを食べ終える。
「あーうまかった!ごちそーさま!」
「ごちそーさん!」
入院生活で病院食を食べる中でどうやらおいしいと判断するレベルが下がっていたらしくチキンが異様に美味しく感じた。昨夜、家にあったカップラーメンを夕飯に食べたときは思わず「ウンまああ~いっ!!」と叫んでしまうぐらいに。
「んじゃ、俺は帰る」
「うん、また明日な!」
天王寺と別れ帰路に着く。
……本当にアイツは太陽みたいなヤツだ。アイツと喋っていると後ろを向き気味な自分がアホらしくなる。まるで水晶のかがy……ゲフンゲフン!
そう思いながら帰り道の途中にある廃工場の前に差し掛かった時だった。
────この世のありとあらゆる音が消えた。
鳥の鳴き声も、風の音も、人の声も。
音だけではない、生き物の気配すら消えている。
「なんだ、これ…………?」
「ぎゃあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!」
「っ!?」
悲鳴が突然聞こえた。
おそらく子供の声、そして初めて聞く断末魔の。
反射的に敷地の塀に身を隠し、ボロボロになって空いた小さな穴から様子を窺う。
───中学生くらいの子どもが、胸に光る槍状の物を突き立てられて倒れている。そしてその槍状の物を握っているのが───
「あーめんどくさっ、レイナーレ様も人使い、じゃなくて堕天使使いが悪いっすねぇ」
ゴスロリ風の衣装を身に纏う背に黒い翼を生やした少女だった。
(堕天使……?この世界には堕天使がいるのか!?)
こんな状況でようやくファンタジー感が出てきた。
堕天使少女は光の槍を胸から引き抜く。
「ごふっ…………」
子どもは血を吐き出すとそれっきり動かなくなってしまった。
……前世も含めて初めて人が目の前で死ぬのを見た。
「う゛っ…」
吐き気が込み上げてくる。無理やりそれを我慢し息を殺す。
今見つかるわけにはいかない。ひたすらにあの堕天使少女がこの場から消えてくれるのを願った。だが───
「そこでなにをコソコソしてるっすか?」
「ッ!!」
その願いは叶わなかった。
気づかれるやいなや全速力で走りだし廃工場から離れる。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいッ!!」
変身できない自分にあの堕天使を太刀打ちできるとは到底思えない。
一週間寝たきり、昨日まで入院生活を送ってろくに運動していないこの体の体力なんて
たかが知れてる。だからと言って諦める訳にはいかない。
不意に黒い物がヒラヒラと緩やかに落ちてくるのが視界に入る。
一瞬だけ目をそちらに向けるとそれは黒い羽根だった。
だが堕天使にとってその一瞬で十分だった。
「どこに行くっすかぁ?」
再び目を前方に向けると既にニヤニヤと笑みを浮かべる堕天使の姿があった。
腕を捕まれ、宙に投げられる。
一瞬風を感じ、俺の身体は廃工場内の砂地の地面に叩きつけられた。
「ガハッ…………!?」
肺の中の空気が一気に吐き出される。全身に激痛が走り、立つことさえままならない。
「はぁ…はぁ…クソっ、逃げないと……!」
何度も立ち上がり逃げようとするがその度に激痛によって倒れこむ。
その間にも堕天使少女は自分に向けて歩を進める。
「キャハっ、あんた軽すぎっしょ、ひょろっひょろのモヤシ野郎じゃないっすか?」
間近に迫った堕天使少女はその手に光の槍を生成する。
「一応逃げらんないようにっと」
その槍を俺の右太股に突き立てた。
「がぁぁっ!?、ァァァァァァァァっ!!」
血が吹き出し止めどなく溢れてくる。槍は完全に骨をも貫通し風穴を空けた。
喉から今まで発したことのない絶叫が迸る。
「痛い痛い痛い痛い痛いっ!!」
あまりの激痛に涙が溢れてくる。もう駄目かもしれない。
「大声で叫んでも無駄っすよ?ここ一帯には人払いの結界がはられてるっすから」
槍を引き抜き、転がっているもう一つの死体を指し示す。
「あの死体の仲間入りがあんたの運命っすからね!」
「くっそぉ…………」
「レイナーレ様に危険な神器《セイクリッド・ギア》使いを始末するよう言われてるっすけど、この結界に入れる以上あんたも神器《セイクリッド・ギア》使いだし見られた以上始末するしかないっすからねぇ?」
光の槍を俺の心臓に狙いを定め、振り上げる。
折角異世界に転生したのに一週間足らずで俺の第二の人生は終わりを告げるのか?
まだやりたいことだってたくさんあるのに、天王寺や上柚木、兵藤ともっと話したいのに、もっと学園生活だって楽しみたいのに、まだ変身もしてないのに!
「嫌…だ…こんなの…」
「あっれ、もしかして泣いてるっすか?キャハハハっ!ダッサ!」
涙が止まらない。だが痛みに流れる涙じゃない、悔しさに流れる涙だ。
「んじゃ、死ね!」
堕天使が槍を降り下ろす。
「くっそぉぉぉぉぉぉっ!!」
誰でもいい、誰か助けてくれ!堕天使がいるなら天使だっているはずだ。なんだったら悪魔だっていい!
まだ死にたくない!
───────そんな俺の願いを天は見放さなかった。
天から青い一筋の光が降ってくる。
それは流星のような速さで廃工場に落ち、屋根を易々と突き破り工場の中に侵入すると
槍を降り下ろそうとする堕天使に激突し、吹っ飛ばした。
「きゃっ!?」
青く輝く小さな光の球体は俺の目の前で静止し、宙に浮いている。
球体が放つ暖かな光を受けた俺の体から痛みが消えていく。
「痛くない……?」
緩やかに立ち上がり、右太股を見ると槍に貫かれてできたはずの傷が完全にふさがっている。
球体に恐る恐る手を伸ばす。指が触れると光が弾け……
「やっと来たのか……タイミングが良すぎるんだよ!」
散々駄女神にケチをつける要因となった『特典』、ゴーストドライバーが現れた。
これの使い方はわかっている。
そしてこれを使って成すべきことも。
〈BGM 命燃やすぜ!(仮面ライダーゴースト) 〉
ドライバーを持ち腰にあてると自動でベルトが巻かれる。
〔ゴーストドライバー!〕
手にスペクター眼魂《アイコン》を出現させスイッチを押して起動させる。
そしてそれをカバーを開いたドライバーのアイコンスローンにセットし、カバーを閉じる。
〔アーイ!〕
ドライバーから青いラインの入った黒いパーカーの様なものが飛び出し、周囲を自由自在に舞い始める。
〔バッチリミロー!バッチリミロー!〕
「変身!」
ドライバー右部にあるデトネイトリガーを引くと、それに連動してドライバーが“瞬き”をし眼魂の力を解放する。
〔カイガン!スペクター!〕
解放されたエネルギー、霊力が黒いスーツの形状に変化し俺の身を包んだ。
顔の前面に展開するヴァリアスバイザーは銀一色ののっぺらぼうの様な『トランジェント』と呼ばれる形態。
そして宙を舞っていたパーカーゴーストを身に纏い、ヴァリアスバイザーが青地に黒い心電図の様なフェイスバーサークと呼ばれる模様が浮かび上がり、二本角《ウィスプホーン》が起き上がることで変身は完了した。
〔レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キゴースト!〕
「これが……俺の変身……!」
これが後に世界にその名を轟かせることになる人間の戦士、『スペクター』の誕生である。
そしてその初陣が今、始まる─────
Q.悠の怪我が治ったのはなぜ?
A.青い光に駄女神お得意の治癒魔法が仕込んであったから。
折角スペクターを題材にした小説を書くので、
本編未使用、未登場のフォームや技も出したい。
スペクター版ムサシとか、ディープスペクター版フーディーニとか。オオメダマも。
次回、初戦闘です、お楽しみに。