ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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今回の話を書いてて…今までストーリー性だったり燃える要素を重視しすぎてD×Dらしいエロ要素が足りないなということに気付いてしまった。

それはともかくラグナロク編スタートです。原作でも後に重要なイベントとなったこの章が本作ではどうなるのか…。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
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13.フーディーニ



死霊強襲編 《コード・アサルト》 第四章 放課後のラグナロク
第67話 「募る思い」


『俺は決して、貴様ら闇の軍団には負けない!禁手化!』

 

モニターに映る兵藤が、勇ましい工場を述べ赤龍帝の鎧を纏う。そしてそのまま駆け出し、いかにも悪者な格好をした敵と戦闘を始めた。

 

傍から見ればまるでヒーローものの番組のようなセリフと展開。そう、これは現実ではない。テレビ番組なのだ。

 

今冥界で放送され、大人気となったこの番組の名は、『乳龍帝おっぱいドラゴン』。俺達アザゼル先生を含めたオカ研は兵藤宅の地下で大きなモニターを使って鑑賞していた。

 

物語のあらすじは、伝説の赤いドラゴンと契約した悪魔、イッセー・グレモリーがヒーローに変身して悪魔と敵対する悪の組織と戦うというもの。

 

ドラゴンと、愛するおっぱいの力で彼はおっぱいドラゴンとなって極悪非道の敵をやっつけるのだ!

 

ちなみに番組内で主人公を演じているのは兵藤ではない。同じ背格好の役者にCGで兵藤の顔をはめ込みしたものだ。

 

『フッハハハ!どうやらおっぱいドラゴンの力もその程度だったようだな!』

 

『このままじゃやられる…!』

 

画面で繰り広げられる戦いの中、悪の軍団が新兵器を投入し主人公が窮地に陥る。

 

『助けに来たわ、おっぱいドラゴン!』

 

そこに駆け付けたのは、赤いドレスを着た部長さん…こと、ヒロインのスイッチ姫。これも主人公同様、役者に顔をはめ込み合成したものだ。

 

『君の力があれば、誰にも負けない!』

 

立ち上がった主人公がスイッチ姫の胸に触れる。するとたちまち力が溢れ出し、完全に力を取り戻すどころか、以前よりもパワーアップした。

 

いやオイオイ。俺は内心ツッコミを入れた。

 

(…え、もしかしてこの展開がデフォになるの?)

 

乳首を押して禁手に覚醒し、胸に触って覇龍を解除という言葉にすれば中々頭のおかしい状況が子供向け番組に採用されるだと…?ツッコミ足りないが、人間界なら深夜行き確定なのにこれがニチアサみたいな感じで放送されて子供にウケているというのだから驚きだ。

 

悪魔と人間の価値観ってのは、違うということなのだろうか…。環境も文化も違う訳だし、深く考えるのはよした方がいいのか。

 

こんな番組だが放送開始して間もなく視聴率は50パーセント越えという驚異の数値を叩きだし、グッズ展開も順調でおもちゃも開発中だという。著作権はもちろんグレモリー家が握っている。視聴率50パーセント越えの超人気番組の著作権だ、稼ぎは相当なものだろう。

 

ついでに言うと、どういうことかOPの歌を聞くと頭痛がした。あのぶっ飛んだフレーズを聞くと、なんだか嫌なものを思い出すような気が…。その時ドライグがやけくそ気味な笑いと共に「お前も俺の仲間だ」とか言ってきたのが記憶に残っている。

 

俺で頭痛するくらいだから、赤龍帝のドラゴン本人としては本当につらいはずだよな…あいつの神器に宿っているから、ああいう酷い展開をいつも間近に見ることになるわけだし。

 

「アザゼル、グレイフィアから聞いたわ。あなたがスイッチ姫の案をグレモリー家に送ったんでしょう!?」

 

番組を鑑賞している最中にもかかわらず部長さんが怒りに顔を赤くしてアザゼル先生にハリセンを持って詰め寄っていた。

 

え、スイッチ姫の案を出したの先生なのか!?あの名前を考えたのは美猴だし、あいつがそのあだ名を口にしたときその場にいたのは今この鑑賞会にいる面子だけだが…。

 

「ピンポーン。まあいいじゃねえか、キッズたちからの人気も急上昇したんだし、雑誌の特集だってスイッチ姫特集に急遽変更されたらしいな。すごい人気っぷりだ」

 

先生は怒る部長さんに対し、悪びれもせず答えた。

 

元々美しいルックスや魔王の妹という立場もあって人気の高かった部長さんは、この番組の影響でさらに人気を高めたようだ。だが当の部長さんはどうもスイッチ姫という名前を気にしているらしい。

 

「はぁ…もう冥界を歩けないわ」

 

アザゼル先生の話を否定できず、深くため息を吐いた。

 

美猴から付けられた不名誉なあだ名が、番組の人気もあって今や彼女を象徴するあだ名となってしまった。子供たちが皆、彼女を無邪気にスイッチ姫、スイッチ姫と呼ぶ。これを喜んでいいのか悲しむべきか、本人にとって複雑極まりない気持ちだろう。

 

「あの赤龍帝の鎧、すごくクオリティが高いね。よく作りこまれてるよ」

 

「冥界のCGもすげえな。違和感ないレベルにできてる」

 

今まで俺は異形界は魔法などの神秘の力がある分、人間が持つ近代的な機械やコンピューターの技術には疎いと思っていたんだがそうでもないらしい。映像技術は人間界のものと遜色ないレベルだ。

 

「悪魔でも人間でも、子供たちってこういうヒーローが大好きなのよね」

 

イリナさんはこのノリを受け入れていれ、一視聴者として番組を楽しんでいた。おっぱいとか天使としてちょっとどうなのと突っ込むかなとは思っていたが、すでに兵藤宅で起きている兵藤の取り合いも認知しているイリナさんにはどうということはなかったようだ。

 

「イッセー君って、昔から特撮ヒーロー好きよね。私も小さいときはヒーローごっこに付き合ってたわ」

 

「そうだったなぁ、あの頃のイリナはマジで見た目も性格も男の子っぽかった。それが今はこんなに可愛くなって、人間変わるもんだな」

 

「ちょ、私が可愛いってすぐに口説こうとするんだから!そうやってリアスさん達を堕としてきたのね!?」

 

頬を赤くして照れる紫藤さん。いつの間にか出現していた紫藤さんの白い双翼が彼女の感情に反応するかのように白から黒へ、黒から白へと点滅し出した。

 

それを見て、さらに狼狽を深める。

 

「わ、私堕天しちゃうっ!?」

 

「おっ、堕天か?いいぜ、ミカエル直属の部下ならVIP待遇で大歓迎だ」

 

目の前でミカエルさんのAという貴重な人材が堕天しようとしているのを目にして、アザゼル先生も豪快に笑う。

 

天使は邪な欲望に負けたり、悪魔に誘惑されたりすると純白の翼が黒く染まって堕天使になると聞いていたが、こうやって堕天するのか。実際に見るのは初めてだ。

 

「堕天使のトップに勧誘されるぅぅ!主よ、お助けをォォォォ!!」

 

堕天を避けようと、わたわたと慌てながらも必死に祈りを捧げ始める。

 

「しかし堕天ってこんな簡単にするのか?」

 

「これは単にイリナがピュアすぎるだけだろ」

 

ですよねー。可愛いって言われて照れるだけで堕天するんじゃ今頃もっと天使が希少な種族になっていただろう。

 

「先生、そういえば特異点の件、どうですか?」

 

アスタロトの件を受けて、凛やディオドラが語った特異点や神祖の仮面について調査が始まったのだ。

 

「あれか。全然だめだな、どこの勢力の資料を調べてもそんなもんはなかった。神祖の仮面についてもサーゼクス達が調査しているが全く手掛かりをつかめていないそうだ」

 

「旧魔王派と、彼らと通じている悪魔が隠したのかしら」

 

顎に手をやって推測する部長さん。

 

「サーゼクスもそう睨んでいるんだがな。オーフィスの蛇を持ったあいつらが欲しがる以上、単純なパワーアップアイテムってだけじゃねえだろうから少しでも情報が欲しいところだよ」

 

今のところ情報は全くなしか。旧魔王の遺産と言うからには現魔王であるサーゼクスさんたちが調べれば少しは情報が得られるかと思ったが…そんな情報を一体どうやって奴らは掴んだんだ?

 

…ポラリスさんなら、何か知っているだろうか。叶えし者とその主と戦ってきたというあの人なら、彼らの持つ知識についてもある程度知っているのでは?

 

しかし最近、NOAHに足を運んでも会うのはイレブンさんだけだ。話を聞くにはポラリスさんはここ最近開発やらで忙しすぎて数日はずっと寝ずに作業に集中しているらしい。

 

大丈夫かと心配したが、イレブンさんにあの人なら大丈夫と何でもないように返された。どんな人間でも流石に数日間寝ていないのはきついと思うが…。

 

…スキエンティアを調べれば出てくるか?ポラリスさんが様々な世界を巡って集めてきた情報を記録した無限大の容量を持つレジスタンスの所有するデータベース、スキエンティア。しかし俺のアクセス権限レベルを超えた領域にある可能性もあるしやはり直接聞いた方が早いか。

 

「ねえイッセー君、あの約束はいつにするの?」

 

不意に朱乃さんが、兵藤に話を振った。

 

「約束?」

 

「アスタロト戦の時言ってくれたじゃない。今度デートしてくれるって」

 

何!?で、デートだと!?兵藤、お前攻めたな…!

 

言い出しっぺの割には妙なことに朱乃さんの話に最初はピンときていないようで首を捻った兵藤だが、すぐに思い当たった。

 

「あっ、そういえば…」

 

「…もしかして、嘘だったの…?」

 

朱乃さんの赤紫の瞳が、悲し気に潤む。

 

「お前、いつの間にそんな約束を…」

 

また俺の知らない所で面白いことが起こってるな。

 

「ディオドラの眷属と戦ったとき、そう言えばパワーアップできるって私がアドバイスしました」

 

流れを飲み込めていない俺に塔城さんがそっと耳元で囁いた。

 

それはパワーアップするよなぁ。今まで部長さんやアーシアさんとデートしたとか聞いてないし、朱乃さん本人としては二人に対してイニシアティブを取れたと思ってさぞ嬉しかっただろう。

 

「いえいえ!もちろん行きます!行きましょう!今度の休日にでもぜひ!」

 

悲し気な双眸に見つめられた兵藤は二つ返事でうんうんと首を振って、約束の実行にOKを出す。

 

「やった!うふふっ、イッセー君とデート…!」

 

了承を貰ったことでいつも浮かべるような穏やかな微笑みではなく、子供のように心から嬉しそうにニコニコとした笑顔を見せる。

 

デートねぇ。もしかしてはっきりデートと銘打っての行動は朱乃さんが初めてなんじゃないか?

 

部長さん、アーシアさん、塔城さん、朱乃さんたち兵藤ラバーズ。兵藤宅で共に暮らす彼女たちが様々なアプローチを仕掛けているのは普段の兵藤の会話から知っている。

 

あの制服越しにでもわかる豊満な胸を惜しげもなく使って大胆に攻めてくる部長さん。

 

部長さんに影響され、エロ方面で攻めるようになったがちょっと恥ずかしさが残っているアーシアさん。

 

部長さんと負けず劣らずの巨乳と浮気と言う中々のエロワードを使って攻める朱乃さん。

 

他3人と比べればかなり奥手でどこがとは言わないが控えめな塔城さん。

 

彼女らと一緒に寝るのはもはや日課と化してきているらしい。起きたらいつの間にかいたパターンもあるようだ。

 

あのエロの化身だの呼ばれる兵藤が逆に振り回されるのだから相当だ。…もしかして兵藤ってあれか?女子にいる、下ネタを言うのが好きだけど逆に言われると苦手と言うか、照れるタイプ。

 

俺は部長さんが一気に攻めて既成事実を作り速攻で一抜けするかと思っていたが案外一抜けるのは朱乃さんになりそうだ。

 

「「……」」

 

当然、意中の相手と目の前でデートの約束を取り付けられたオカ研女性陣は穏やかな顔つきでなく…。

 

 

 

 

 

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仄かな白い月光が暗き空を照らす夜、オカルト研究部ことグレモリー眷属は悪魔の仕事を開始していた。

 

現在は一誠と裕斗が召喚され、女子組とギャスパーだけが部室に残されている。唯一の人間である悠は意気揚々にモップを携え、一階の広い廊下にモップ掛けに出ている。2階にある部室からでも、掃除好きの彼の興奮した奇声は聞こえた。

 

リアスは紅茶を嗜み、小猫とギャスパーは得意のゲームで対戦するなど残った者はそれぞれの時間を潰している。

 

ゼノヴィアはと言うと…。

 

「紀伊国君ってあんなキャラだったっけ?」

 

「私の知る悠はああいう奴だが」

 

イリナと一緒に、ババ抜きに興じていた。番が回って来たイリナがさっとゼノヴィアの手札を1枚抜き取る。

 

2枚のカードの数字が揃い、捨て札にする。残るカードは2枚。ハートのQと、JOKERだ。

 

「あれ、家でもやってるの?」

 

「そうだが?私も雑巾がけ対決をしているぞ」

 

「記憶喪失になってめっちゃ変わったわね…本当に大人しかったのに」

 

幼少期の彼とのイメージとの乖離にイリナは戸惑う。彼女の知る幼少期の彼はいつもおどおどしていて決してこのように感情をはっきりと表に出すタイプではなかった。

 

話している間にも、ゼノヴィアのターンが巡って来た。さっと箒を掃くようにイリナの手札を見る。

 

「こっちだ」

 

逡巡もなく、迷わずイリナの片方の札を抜き取る。辛くもハートのQを引き、手札のダイヤのQと数字を揃えたゼノヴィアは残った手札と一緒に捨て札にし勝利した。

 

「ふふ、私の勝ちだ」

 

「負けたわ…」

 

自分の勝利に得意げに笑うゼノヴィア。イリナは残るJOKERをカードの山に放る。その時、ふと山のトップにある1組のカードに目が止まった。

 

「ハートのQとダイヤのQ…あ、そういえば思い出したわ」

 

「何をだい?」

 

「ガブリエル様のQにシスター・グリゼルダが選ばれたそうよ」

 

「シスター・グリゼルダが…そうか、それはめでたいね」

 

久しぶりに聞いた恩人の名と、その活躍に懐かしに笑んだ。

 

シスター・グリゼルダ。教会の女エクソシストの中でも五指に入るほどの実力者だ。ゼノヴィアとは同じ施設の出の先輩であり、教会時代はイリナと一緒によくお世話になった人でもある。

 

「シスター・グリゼルダに連絡は取ってる?あなたを心配してたわよ?」

 

「できるわけないだろう、あの人にどの面下げて会えると言うんだ。会ったらまず殺される!」

 

シスター・グリゼルダは悪魔に転生した今のゼノヴィアが避けている人物でもある。それは決して彼女を嫌っているからではない。敬虔な信徒で大恩ある彼女に、やぶれかぶれで悪魔になったゼノヴィアは引け目を感じているからだ。敬虔な信徒が悪魔に転生した、共に培ってきた信仰を捨てたと思われても仕方ない。

 

悪魔になったことを受け入れた今でも、彼女への引け目は残っているのだ。

 

「へぇー、それはまあさておき。…ねえ、ゼノヴィア」

 

テーブルの上にばらばらに山を積み上げるトランプをまとめ上げて、イリナは好奇心に目を輝かせて問う。

 

「紀伊国君とはどういう関係?」

 

「んん”!?」

 

唐突に放たれた、核心に切り込んだ質問にびっくりしたのは訊かれたゼノヴィアではなく、飲もうとした紅茶でむせたリアスだった。

 

「大丈夫か?」

 

「げほっ、んん、え、ええゼノヴィア。大丈夫よ、ただビックリしただけよ。私にも聞かせて頂戴」

 

何度もせき込みながらも、微笑みを取り戻して落ち着くリアス。

 

「私も聞きたいわ。もしかしたらデートの参考になるかもしれませんし」

 

読書に耽っていた朱乃もこれから始まろうとする話に食いつく。デートという単語にこの場にいる何人かはムッとした表情を見せた。

 

目立つ反応を見せたリアスだけではない、部室にいる全員がゼノヴィアの答えに興味を持っていた。高校生らしく、他人の恋バナに興味津々なのだ。

 

「別に、そこまで大したものじゃないぞ?」

 

「またまたそう言って!本当はもうラブラブなんでしょ?」

 

アスタロト戦の前、悠と会話したときに同じ話題を振ったイリナ。タイミングも悪くあの時彼は明確に答えは出さなかったがその反応で何となく察してはいた。

 

となればやはり、気になるのは相手の方の気持ちだ。

 

「居候させてもらって、色々面倒を見てもらって、彼には本当に感謝してもしきれないくらいに恩があるし、何より何度も救われた。だが…」

 

言葉にする中で、彼との時間を思い出す。

 

眷属になったことでリアスにアパートの一室を提供してもらえるはずが自分勝手に悠の家に居候すると決め、それを受け入れてくれた。カルチャーショックを受け、日常生活の中で戸惑う自分を何度も助けてくれた。

 

コカビエル戦に主の不在を知り打ちひしがれた時も、悪魔になったことを悩んだ時も、己の剣士としての弱さにぶつかった時も、いつも彼がそばにいた。手を差し伸べて救ってくれた。

 

彼がいたからこそ、悪魔になって道を見失いかけた自分が今の自分でいられたのだと言っても過言ではない。

 

そんな彼女に気持ちに、最近変化が起こった。

 

「…あいつが無理をして傷つく姿を見ると、すごく心が痛くなる。そしてそれと同じかそれ以上に、あいつと一緒にいると心がとても安らぐんだ。あいつと過ごす時間が楽しいというか、何というか、ほっとするというか…ここ最近は、それを強く感じる」

 

それは夏の合宿が終わったときだろうか。今まで何となく感じていたそれが、意識するくらいに強く感じるようになった。

 

「ほぉー…」

 

「それと…アスタロト戦の時の悠の言ったことが妙に引っかかるんだ」

 

思い出すのはディオドラとネクロムとの戦いの時。

 

『…あいつを止めるのは俺じゃなきゃダメなんだよ。それに、俺はもう身近な人を失いたくない。助けられる可能性があるのにそれを無視して何もしないのは嫌なんだ!!』

 

激闘に打ちのめされ、立てなくなった彼が一人ネクロムに立ち向かおうとする一誠を見てそれでも立ち上がろうと無茶をしようとした時のセリフ。

 

「気になることは色々あるが何よりもそれを聞いた時…どういうわけか敵ながら悠に思われているんだと、悔しいが、奴に嫉妬してしまった」

 

あいつを止めるのは俺じゃなきゃダメなんだ。何故そう言ったのか、彼とネクロムとの間に何か敵対以上の関係があるのかはわからない。だがそれ以上に、彼女は女としてネクロムに嫉妬した。

 

あんなにボロボロになってまで、付き合いのある自分ではなく敵対しているはずの彼女のために立ち上がろうとしている。自分以上に大切に思われているのではないか?そう思うと、とても恨めしかった。

 

ゼノヴィアの彼に抱く思いの吐露。それを瞬き一つせず、一言一句逃すまいと彼女たちは真剣に聞いた。

 

「部長、これは…」

 

「間違いないわね」

 

そして話が終わった時、彼女たちの推測は確信へと変わった。そしてその確信を最初に笑顔たっぷりに口にしたのはイリナだった。

 

「うんうん!それって、恋よ!」

 

「これが…恋だと?」

 

「そうそう!あなたの思いは、彼が好きだからこそよ!紀伊国君だけじゃない、あなたも変わったのね…何だかときめいちゃったわ!!」

 

「ゼノヴィアさんの恋…素敵です」

 

「イッセー先輩よりも早く、カップルが誕生しそうですね」

 

話を聞いたイリナとアーシアがきらきらと目を輝かせる。そこにリアスは、思い切った提案をゼノヴィアにした。

 

「あなた、彼に告白する気はない?きっと彼もあなたの気持ちを受け入れてくれるはずよ」

 

「告白…それは、ドラマや演劇のような親しい異性に思いを打ち明けることか?」

 

彼と過ごし、思いを募らせていく中でも考えもしなかった、思わぬ提案に彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような表情を見せた。

 

「ええ。でもただ打ち明けるだけの行為じゃない、そこからさらにお互いの距離が縮まるの。手をつないだり、デートしたり…キスしたり。より幸せな時間を二人で共有できるわ」

 

「距離が縮まる…」

 

イマイチ告白というモノにピンと来ていない教会育ちの彼女にリアスは恋愛に興味を抱く少女らしく楽しそうに語る。

 

貴族の家に生まれ、夢見る少女としてグレモリーのリアスではなく、一人のリアスとして見てくれる恋人を求めた彼女は人一倍に恋愛への興味が強い。

 

「私より先にゼノヴィアちゃんがゴールインしそうですわね」

 

「朱乃…?」

 

余計な一言だと威圧感を放つが、呼ばれた本人は知らないと言わんばかりにルンルンと笑うだけだ。

 

「うーん、告白か…私も私の夢のために、何度も子作りを誘っているんだが中々上手くいかないんだ。果たして受け入れてくれるか…」

 

リアスの提案にゼノヴィアは難しそうに首を傾ける。

 

今まで何度も、悪魔になったことで子供を産むという夢を抱いた彼女は悠に誘いかけた。

 

ベッドに忍び込んだり、裸の付き合いと称して風呂に乱入したり、その度に慌てふためく彼は我慢し、誤魔化し、有耶無耶にして今まで一線を越えられずにいた。

 

「そ、それは段階を飛ばし過ぎじゃないかしら…私が言うのもなんだけど。まずは恋人という関係から始めれば、彼も子作りにのってくれるはずよ」

 

「紀伊国先輩はイッセー先輩と違って、意外と貞操観念がしっかりしてるんですよ」

 

「それは初耳…彼って意外とピュアなのね」

 

ゲームに打ち込むギャスパーがふと言う。夏の合宿で男子たちで一緒に風呂に入った時の彼の言動で、それを知ったのだ。

 

「まずは恋人から…そうなのか?」

 

「そうよそうよ!」

 

「だが…子作り以外でどうやってアプローチしたらいい?」

 

教会で育ち、俗世間の文化をあまり知らない彼女は当然、男女の色恋事には疎い。自分の身と信仰心を信仰すべき主に捧げ、尽くしてきたのもありこういうことには興味が全くなかったし自分がこうなるとは今まで考えたことはなかった。

 

「そこは私に任せなさい!この私、ミカエルさまのA紫藤イリナが恋のキューピッドになるわ!」

 

ドンと胸を張るイリナが天使の羽根と光輪を出現させ文字通りのキューピッドとなり、自らの天使性を誇示する。

 

「あらあら、羨ましいわ。私にも恋のキューピッドが欲しいわね」

 

「あなたにはいらないでしょう…私も協力するわ。眷属の悩みを解決するのも『王』の務め。お膳立ては任せなさい」

 

「私も手伝います。家にある少女漫画を今度持ってきますね」

 

「わ、私もゼノヴィアさんにできることがあれば…!」

 

リアスに小猫、アーシア。オカ研女性陣が次々に協力の意思を見せる。

 

それは単純な善意かもしれないし、もしかすると僅かなりとも自分のライバルが増える可能性を排除しておきたかったからかもしれない。

 

「みんな…あ、ありがとう」

 

照れくさそうな笑顔で、自分を支えようという仲間たちに礼を言う。

 

だがゼノヴィアは皆が手伝ってくれることが純粋に嬉しかった。そして何より、彼ともっと距離を近づけるかもしれないということに。

 

「私が…悠に……」

 

 

 

 

 

「ふぅー、掃除完了しまし…たよ…?」

 

汗を拭いながら部室に帰った俺を待っていたのは、ニヤニヤとこっちを見てくる部長さんたちと、どこか恥ずかし気に視線を逸らすゼノヴィアだった。

 

…何があったし?

 




宝生永夢ゥ!

何故ゼノヴィアが悠に明確な恋心を抱くようになったのかァ!

何故その時期が夏休み明けなのかァ!

その答えはただ一つ…!

…ゼノヴィアの気持ちに関してはもうちょっと掘り下げます。安易なものにならないよう頑張ります。

次回、「闇夜を馳せる忍」
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