ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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久しぶりにあのキャラが登場。ヴァンパイア編以来の登場です。

それから前話の前書きで話した設定変更はヴァンパイア編の最終回とヘルキャット編の外伝でした。すみませんでした。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
5.ビリーザキッド
7.ゴエモン
9. リョウマ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ



第70話 「デート・チェイサーズ」

「揃ったわね」

 

来るべくして来た次の日の休日。朱乃さんを除く部長さん達兵藤ラバーズと木場、そしてギャスパー君が家に荷物を持って押しかけて来た。

 

デートに行った二人とアザゼル先生を除くオカ研メンバーが一堂に会し、リビングの木造の優しい色合いをしたテーブルを囲む。

 

「変装はばっちり…ちょっと、あなたたち変装はどうしたの?」

 

集まった面々を見渡す部長さんが突っ込んだのは俺と木場だった。集まった女性陣は持ち込んだサングラスや奇抜な被り物などをしている中で、俺達だけ普通の私服を着ただけだからだ。

 

「僕は近々ショーで変装と言うか衣装を着るので十分です」

 

「俺はいつも変身して衣装みたいなの着てるので十分です」

 

昨日だって変身したよ?パーカーゴースト着るのは当たり前だもんな?パーカーだから衣装だよな?

 

木場は近々冥界で行われるおっぱいドラゴンのサイン会に出るらしい。何でも、木場はおっぱいドラゴンの敵役なんだとか。そしておまけにイケメンフェイスも相まって女性の人気が高い。学園でも冥界でも女性に人気だな、木場って。

 

「あなたたち…まあいいわ」

 

断る俺達に何か言いたげだったが喉まで出かけた言葉を押し込んだ。

 

「ゼノヴィア先輩、例のモノ持ってきました」

 

「ありがとう、小猫。勉強させてもらうよ」

 

余所では塔城さんが大きめの紙袋のゼノヴィアに渡していた。袋に浮き出た形から察するに本か?あいつが読む本か、一体どんな…?

 

「そういえば、あなた色々な能力が使えるわよね。何か使えそうな能力とかあるかしら?」

 

「えっと、銃を増やす、空間を切り裂く、鎖、高速移動、早撃ち…特にないですね。まあせいぜいガジェットが使えるくらいです。ていうか実力行使するつもりですか…?」

 

「場合によっては、それも辞さないわ」

 

マジですか。おかわいそうに…いざとなったら、俺がお前の墓を作ってやるからな、兵藤。

 

「イッセー先輩の取り合いでバチバチするのは日常茶飯事です」

 

「そうですね。昨日も確か、ぼうちゅうじゅつ?の話で小猫ちゃんと…」

 

「あ、アーシア先輩、その話はやめてください…!」

 

アーシアさんが何やら昨夜に起こったという出来事を話そうとすると顔を赤くして塔城さんが制止に入った。

 

ぼうちゅうじゅつ…なんだろう、虫よけの技で防虫術か?

 

それにしてもあいつ、常日頃から取り合いに巻き込まれてるんだな。しかも取り合っている本人たち全員が同じ家に住んでいるってことはあいつが取り合いから離れて心安らげる場はもうどこにも…。

 

そう考えると、なんだかあいつが少し不憫に思えてきた。今度、何か奢ってやろうか。

 

「さて、準備は整ったわね?今イッセーと朱乃は駅前のファムリーマートに向かったわ」

 

机を軽くたたいて凛々しく声を放ち、皆の視線を一身に浴びるのは部長さんだ。

 

「って、何でそんなこと知ってるんですか」

 

「家を出る前、イッセーの部屋の前で一生懸命聞き耳を立てたのよ」

 

「ええ…」

 

あいつのプライバシーは何処へ。

 

「追跡は簡単、二人の跡をつけてよからぬことをしないか見張るだけよ。基本的には無干渉、でも朱乃のことだからきっと最後には…」

 

その先の言葉はあえて飲み込んで、凛然と作戦の開始を告げる。

 

「さあ、行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の私、変?」

 

「そ、そんなことないです!可愛いです、最高です、最高!」

 

夏の暑さも鳴りを潜め始め、徐々に木の葉が赤く色づき始める町の景色。駅前のコンビニの外で早速カップルらしいやり取りをするのは兵藤、そして朱乃さんだ。

 

兵藤は今回のデートに備えて気合を入れたようで、普段ファッションには疎いながらも長袖長ズボンを見栄えよくしっかり着こなしていた。度重なる戦闘で初めて会った時と比べてがっしりとしたものになったスタイルも相まってどこか男らしくカッコよく見える。

 

一方朱乃さんはオカ研メンバーの副部長として年上らしく落ち着きのある服装かと思いきや、ピンクと赤のワンピースといったお姉さまらしさではなく可愛らしさを押し出した感じだ。

 

「本当?じゃあ、今日はイッセーって呼んでいい?」

 

「ど、どうぞ…!」

 

見てるだけでも甘酸っぱくなるような光景を俺達追跡組はコンビニの陰から窺う。俺達追跡組の中でひときわ目立つ格好をしているのは虎のプロレスラーのような被り物をした塔城さんと、視界確保のために二つ穴を開けたがためにホラー映画のような雰囲気に仕上がったギャスパー君の二人だ。

 

追跡というのはバレないから追跡だというのにこの1年の二人は…それだけ、ノリノリということか。

 

「…いやガチじゃん」

 

しかしこの二人、どこからどう見てもカップルにしか見えないぞ。…ちょっと羨ましいような。

 

「「「……」」」

 

兵藤ラバーズはその様子を息を殺してじっと見る。若干ピリピリするようなオーラは隠しきれてないが。

 

「行きましょう!」

 

「ええ」

 

そんな視線を知ってか知らずか心の底からの笑顔で答え、朱乃さんは好意を示すように兵藤に身を寄せデートを始めた。

 

それと同時に、俺達の追跡も始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が町に繰り出して最初に訪れた場所はブランド物の服を取り扱うショップだ。

 

色とりどりで、値段もちょっと張る分上等なコート、ズボンなどがずらりと並ぶ店内で二人は興味をひかれた服を手に取る朱乃さんと兵藤は談笑する。

 

その様子を何食わぬ様子で距離を取りつつ店内を歩きながら目をやる俺達追跡組はと言うと…。

 

「…こんなこと言ったら部長に怒られますけど、だんだん二人がお似合いに見えてきます」

 

「うん、俺もそう思った」

 

「この服気に行ったわ」

 

「アーシア先輩、こういう服が似合いそうですよ」

 

「わ、私に合うでしょうか…」

 

参加するからにはしっかりやることはやろうとする男子組、一方女性陣は早速追跡をすっぽかして店内に並ぶ服を見て購入意欲を掻き立てられ、手に取っては試していた。

 

まあ確かに、こういう所はオシャレに気を使う人間はどうしても気になるものだが…言い出しっぺのあんたがほったらかしてどうする。あんたがこの追跡組と言う急ごしらえの船の操舵手なんだぞ、しっかりしないとすぐにこの船は遭難して……。

 

「なるほど、こういう時はああいう……」

 

しかしそんな中でただ一人、ゼノヴィアだけは二人の行動をしっかり見て聞き耳を立てて何か熱心にメモを取っていた。

 

勉強ってそういうことかい!!というか人のデートを追跡しながら熱心にメモ取って勉強する奴がいるか!言い出しっぺよりお前の方がやる気あんのかーい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台を移して、水族館では…。

 

「お魚さんがこんなにたくさん…初めて見ました…!」

 

「私もだ。見ろアーシア、あれはジンベエザメだ!コバンザメも引っ付いているぞ!」

 

「クリオネ、流氷の天使よ!」

 

「ネットでよく見るんですけど、実際に見るとメンダコって本当にかわいいですねぇ」

 

「冥界には海がないから、凶悪な魔物はいてもサメやクジラみたいな生き物はいないの」

 

皆、半分追跡を忘れて普通に楽しんでいた。特にゼノヴィアとアーシアは水槽を悠々と泳ぐ生き物たちを見て目を輝かせていた。アーシアとゼノヴィアは過去の境遇的にこういう所に行くのが初めてだというメンバーだろう。

 

水族館という普段行かないような場所なので俺も存分に楽しませてもらった。ちなみに俺のお気に入りはテッポウウオ、アーチャーフィッシュだ。まず名前がカッコいいし、あの口から水を撃ちだして虫を落として食べるという独特な生態はゼノヴィアも大いに興味を持ったようだ。まあうちのアーチャーといえるロビンフッドは今手元にないのだが。

 

追跡もしつつ水族館を楽しみ、お土産を袋に引っ提げながら水族館から出た頃、木場が俺がずっと思っていたことを見事に代弁してくれた。

 

「もう普通に僕たちだけで遊んだ方がいいんじゃ…」

 

「右に同じ」

 

だって普通に楽しんでたじゃないか。ブランドショップに行ったときだって何だかんだで女性陣は皆服を買っていったし。もういいだろ…?俺達は俺達で好きにして、あの二人も好きにさせる。それでウィンウィンじゃないか。

 

「ダメよ、朱乃がイッセーに変なことしないか見張っておかないと」

 

「不純異性交遊はダメです」

 

「私、二人のデートを見て色々勉強してみたいんです」

 

「アーシアと同じだ」

 

「私も年頃の女の子のデートがどんなものか見たいわ!」

 

しかし皆の意見は厳しく、次々に俺達の意見に否を突き付けた。

 

「5対2で提言は却下されました、畜生!」

 

皆乗り気か!というかさっきまで水族館とか買い物楽しんでたあんた達が言うな!人のデートくらい好きにさせてやれよ!…でも、こんなこと言ってるから女心が分からないとか言われるんだろうなぁ。

 

「……」

 

木場も俺の肩を叩いてもうあきらめた方がいいよと言いたそうな目をしていた。…もう、俺も諦めるか。人間時には諦めが肝心だ。

 

「は…鼻がむずむ…」

 

そんなやり取りを繰り広げている中、ギャスパー君が不穏な動きを見せていた。むずかゆそうな表情をぴくつかせ…。

 

「くしょん!!」

 

可愛らしく大きなくしゃみを放った。周りにもはっきり聞こえる声量、水族館を後にする兵藤と朱乃さんも当然、何事かとこっちを振り向いた。

 

「「あっ」」

 

その瞬間、確かに目と目が合った。一瞬の沈黙、最初に動いたのは朱乃さんだった。

 

ふっと悪戯っぽい笑みを浮かべると一目散に背を向けて走りだし、一瞬遅れて兵藤もそれにばたばたとついていく。

 

「ま、待ちなさい!」

 

逃げる二人を一足早く正気に戻った部長さんは慌てて追いかける。それに俺達も後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

それから10分後。入り組んだ住宅街の中にある公園で俺達は立ち尽くしていた。

 

「完全に逃したわね」

 

ため息交じりに部長さんは汗をかいた額を拭う。

 

あの後水族館から必死に追いかけ、兵藤たちはうまいこと人ごみの中に混じって姿を消した。それでもどうにか人ごみを抜けてすでに遠くに逃げゆく二人の姿を捉えて追って来たが、追った先のこの住宅街の地形を利用されたことで二人の逃走成功は決定的なものになってしまった。

 

どこを見渡しても二人の姿はない。追跡は完全に失敗だ。

 

「ゼノヴィアさん、どこに行ったんでしょうか…」

 

「いつもの彼女らしいと言えばそうだけど……」

 

おまけに俺達の中で、ゼノヴィアだけは気持ちが入り過ぎて俺達を置いて一人だけで探しに行こうと突っ走り、はぐれてしまった。

 

何ともあいつらしいというか…世話を焼かせてくれる。

 

「あいつどこに行ったんだ…そうだ」

 

妙案を思いついてすぐ鞄からコブラケータイとバットクロックたちガジェットを取り出して放ると、空中でガシャガシャと音を立てながら素早くアニマルモードへと変形する。

 

「お前ら、ゼノヴィアと兵藤たちを探してくれるか」

 

こくこくと頷くバットクロックは空へと羽ばたき、コブラケータイは近くの草木にするりと這うとそのまま姿を消した。

 

彼らが3人を発見すれば、俺のスマホにインストールされたアプリを通じて連絡が行くようになっている。後はそのまま連絡を待つだけでもいい。

 

「彼女を発見次第、合流しましょう…ちょうどいいタイミングね」

 

被っていた帽子を手に取る部長さんは不意に意味深な言葉を口にした。タイミング?何の話だ?

 

「図らずも場が整ったわね、ずばり訊くわ」

 

「?」

 

その瞳は真剣な光を宿し、がっちりと俺を捉えている。

 

「紀伊国君、ぶっちゃけゼノヴィアのことどう思う?」

 

「ん”!?」

 

そして放たれた、まさかこの場で聞かれるとはつゆにも思わなかった予想外度120%の質問に、思わず心臓が跳ね上がるほどにびっくりした。

 

「ちょ…いきなりそんな……」

 

なんでそんなこと訊くの!?もしかして俺とゼノヴィアが同居人を踏み込んだ関係に行っていると思っているのか!?あいつの夢が夢だからそう思われても仕方ないかもしれないが…。

 

「どうなんですか、紀伊国さん!」

 

「げろった方が楽になるのでは」

 

「僕も気になるかな」

 

「僕も…」

 

俺を囲う皆も真剣な表情で答えを追求する。常識人の木場も今回ばかりは助けてくれない。桐生さんにも時々聞かれるが、そんなに俺とゼノヴィアの仲が気になるか…?

 

「もちろん、恋愛的な意味で」

 

言い出しっぺの部長さんは言わずもがなと言わんばかりの言葉を目を細めて付け加える。

 

「あ…おお……ううぉ」

 

一斉に問い詰められ、雰囲気に押される俺は言葉に詰まる。

 

何度も何度も、学校でもこんなところでも皆揃って聞いてきやがって…!だが逆に、今までの積み重ねが相まって俺をとうとうやけ気味にさせた。

 

そんなに気になるというなら…みんなが一番喜ぶ、俺の本心を教えてやろうじゃあないか。

 

心の準備を済ませるために一度大きく息を吐いてから、大胆にカミングアウトする。

 

「まあ…ぶっちゃけると、好きですよ」

 

「!!」

 

これに関しては別に隠す必要もないし、以前紫藤さんにも問い質された答えをはっきり言うことにした。俺の返答を待っていた女性陣が目に見えて分かりやすく「おお!」と反応する。

 

「アホっぽいところも愛嬌と言うか…世話の焼ける奴ですけど、やっぱりあいつと暮らすうちに…俺、あいつに救われたんだなって、好きなんだなって」

 

料理はほぼできないし、今のように一人で突っ走って何かと俺を困らせるあいつだが一人暮らしをしていた時期もあって、あいつと共に家で過ごす時間が一層凄く楽しく感じる。今にして思えば、一人暮らしで家に帰ってからは一人で寂しかった俺の第二の人生は、彼女が家に来てから大きく色づいて変わった。

 

俗世から離れた生活を送って来た彼女が初めてのモノに触れるたびに見せる新鮮で、好奇心に満ちた楽しそうな表情と笑顔には何度もドキッとさせられてきた。彼女は俺に何度も救われたというが、それはこっちだって同じだ。

 

理由はそれだけではない。言わずもがな、何度もあのスタイルのいい体で誘惑してくるあいつに気を抱かないわけがない。最近はどういう理由があるかは知らないが、それも減ってきた。とはいえ恋人ではない同居人の異性の裸体を何度も拝んでいるのはどうかと思うけど。

 

「これはもう、カップル成立なのでは?」

 

「青春過ぎてドキドキが止まらないわ…!」

 

「ギャルゲーじゃない、これがリアルの恋愛ですか…」

 

ギャスパー君、ゲームとかパソコンいじってばかりの人種だからそうなんじゃないかと思っていたけどやっぱりギャルゲーやってたんだな。

 

「紀伊国君、彼女にアタックしてみたら!?きっとゼノヴィアも喜ぶわ!!」

 

俺の話に一層目をキラキラさせる紫藤さんは昂る喜びのままに思い切った提案をする。

 

告白か。高校生らしい、いかにも青春といったイベントだ。

 

「…でも、俺は……」

 

俺が彼女にこの思いを告白することはできない。いや、してはいけない。

 

「どうしたの?」

 

「俺は…」

 

何せ俺は、あんなに信じてくれる彼女に秘密を作っている嘘つきだから。俺はあんなにも自分を頼ってくれと、心配してくれる彼女の気持ちを蔑ろにして己を偽り、過去も裏のことも隠し続けた裏切り者だ。

 

もちろん、告白なんてしてしまえば彼女との関係、今の同居人としての楽しい毎日が変わってしまうのではという恐怖もある。だが何よりそんな大事なことを隠している嘘つきが、自分を偽っている奴が、彼女とこれ以上の関係を望もうなどあってはならない。

 

自分が抱える嘘が、嘘を吐いたという事実が彼女を傷つけてしまうかもしれないから。

 

抱える暗い思いがさらに言葉を詰まらせたその時、恋バナで盛り上がりかけた雰囲気を切り裂くように携帯の着信音が鳴りだす。少なくとも俺のではない。

 

「私ね」

 

自分から名乗り出て、おもむろに部長さんがバッグから携帯を取り出した。

 

「アザゼルからだわ」

 

携帯の画面に表示された相手を確認して、通話に出る。

 

「何よアザゼル、今いいところだったのに…」

 

通話して早々、通話越しのアザゼル先生に不機嫌気味な言葉を浴びせた。しかし幾つかのやり取りをしていくうちに、部長さんの表情が次第に年頃の普通の女の子のものから、真面目なグレモリーの次期当主としてのものに変わっていく。

 

「わかったわ、すぐ行く」

 

そして最後は手短に返して、電話を切った。もしかして異形絡みで何かあったのか?例えば、また英雄派の連中が来たとか。

 

「どうかしたんですか?」

 

「二人を追ってる場合じゃなくなったわ」

 

さっきまで二人の追跡を楽しんでいたのが打って変わって真面目な表情に切り替わった部長さんが告げる。

 

「至急イッセーの家に集まるわよ。北欧神話のオーディン様が、来日されたわ」

 

揺れる俺の気持ちなどお構いなしに、世界がまた動こうとしていた。

 

 

 

 

 

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人間界の澄み渡るような青空とは対照的に歪な紫色が広がる天空。そこで相対していたのは二人の男だった。

 

「いやはやー、たった一人で俺をここまで追いかけてくるなんて俺ってすっげえ人気者だねぇ!愛されてるねぇ!」

 

片やサーゼクス達魔王が纏うローブと同じデザインのローブに身を包み、挑発的な表情を浮かべる銀髪の男。

その背に広がる12枚の黒き翼が証明するのは、その男が悪魔の中でも最上級を越える魔王クラスであることだ。

 

「黙れ。今、ここでお前を倒せば世界は救われる」

 

そんな彼とにらみ合うのは特徴的な灰桜色の髪をなびかせ、神々しい鎧を纏う男。背に展開しているのは12枚の金色の翼。それは彼が最上級の天使、熾天使である証左だ。

 

にらみ合い、一歩も引かない両者。二人からにじみ出るオーラが両者の間で激しくぶつかり合い火花を咲かせる。半端者ではその場に居合わせるだけで失神すること間違いなしだ。

 

「救世主気取りかな?救世主と戦うルシファーの血を舐めないでほしいんだよねェ!!」

 

「気取りで結構、世界を守れるのならその程度の誹りは甘んじて受けようッ!!」

 

聖の極みと魔の極みの激突。悪魔と天使、両陣営トップクラスの実力者がぶつかり、天空を激しい光と暗雷が荒れ狂った。

 

 

 

 

 

 

 

 

カッと目を潰すような光が弾けた後、彼が襲われたのはぐいんと何かに引っ張られるように景色も何もかもが遠のく感覚。

 

 

 

 

 

 

 

やがて純白のベッドで横たわる彼は意識の浮上と共に目を覚ます。彼の者の名は四大セラフが一人、ウリエル。

 

「…夢、いや『超既視感』か」

 

天井を眠気の残る目で眺めながら、さっきまで見ていた夢の内容を反芻する。

 

彼の持つ能力の一つ、『超既視感』は未来に起こる出来事を夢に見ることができる。熾天使と、彼の御使いのみが知る極秘事項に指定される、所謂予知夢だ。

 

ディオドラ・アスタロトのテロも彼がそれを予知夢に見たことがアザゼルの作戦の決行と、各勢力のVIP達の参加を後押ししたのだ。

 

柔らかなベッドから身を起こして立ち上がると、耳元に通信魔方陣が展開する。

 

『おはよう、妾じゃ』

 

通信魔方陣から耳を打つ声の主は彼が熾天使としての務めを果たす裏で協力している組織、レジスタンスのリーダーポラリスだ。

 

寝起きもあって彼は気だるげに返事を寄こす。

 

「ああ、おはよう。しばらく連絡を寄こさないと思えば…何用だ」

 

『すまんの、最近は特に開発で忙しくて手が離せんじゃった』

 

「ふっ、忙しいのはお互い様か。こちらは和平交渉はミカエル様とガブリエル様に任せつつ、『禍の団』対策で働き詰めだ」

 

天使、悪魔、堕天使の三大勢力は和平を結んで以来、異形界に生まれた融和の流れの中心として様々な勢力と交渉を始めた。天界は天使たちのリーダーたるミカエルとガブリエル、時にラファエルが積極的に様々な勢力に働きかけてきた。

 

四大天使の中でもウリエルは彼らと違い各地で勃発する『禍の団』対策や戦士の育成に尽力していた。そしてその裏で、レジスタンスに様々な情報を提供しラファエル共々彼女を大きく支えている。

 

『ご苦労じゃの、それはさておき大事な話がある』

 

一拍置いて、彼女が告げる。

 

『既に『創造』がこの世界に来ている、叶えし者たちを集めて暗躍しておるようじゃ』

 

「何だと…!?それは本当か!?」

 

もたらされた情報に彼は心底衝撃を受けた。

 

『ディオドラ・アスタロトのテロの映像を見て確信した。詳しいことはわからぬが、今は紀伊国悠…妹、深海凛を名乗っておるようじゃ。悠と同じ、眼魂のシステムを使っておる』

 

最初に出現した時はただ力のある叶えし者、パーティー会場に出現した人形から『創造』の眷属かと思っていた。しかしアスタロト戦で見せた一叶えし者にしては異常なオーラと、最後に見せたあの文字が彼女に眷属ではなく、『創造』そのものだと確信させた。

 

その時彼女は大いに焦ったものだった。そして同時に最大のチャンスだとも思った。ここまで弱体化した今なら、奴を倒せるのではないかと。急いでNOAHをゲーム用のフィールドが存在する空間に飛ばしたが時すでに遅し、すでに姿を消していた。

 

その時、白龍皇ヴァーリに船の存在について気付かれてしまったことまでは認知していないが。

 

何故奴が紀伊国悠の妹の姿を取り、仮面ライダーの力を持っているかまではわからない。だが最悪、紀伊国悠に彼女を…。

 

「下級、中級ならまだしも上級が…」

 

『幸い、力はかなり落ちておるようじゃ。まだ『神域』との接続がなされておらんせいじゃろうな、本領発揮には程遠い力じゃった。そうでなければ、アスタロト戦でグレモリー眷属は全滅しておったな』

 

もし本領を発揮すれば神クラスの力を見せる奴が本来の力を使えていないのは本当に幸いだった。だからこそ、彼女は今が討つチャンスだと思ったのだ。

 

『ただの叶えし者かと思えば、とんだイレギュラーが起こったものじゃ。最悪、30年も待たずに『神域』からの侵攻が始まるやもしれぬ』

 

「まだ『禍の団』との戦いが続いている中で、それだけは何としても避けなければならないな…」

 

次々と魔方陣の通信でもたらされる重大かつ衝撃的な情報の数々に形のいい眉を顰める。

 

『そうじゃ、これは想定もしなかった最悪のイレギュラーといってもいい。よって我々は今後の活動について話し合わなければならない。近々協力者たちを招集するつもりじゃ』

 

「わかった、ラファエルにはこちらから伝えておこう」

 

『頼んだぞ。今後、イレギュラーの多発が大いに予想される。近日起こるロキの件もイレギュラーが起こる可能性は高い。場合によってはおぬしに直接対処してもらうことになる』

 

「…そちらも引き受けよう。まだ君が表舞台に立つ時ではないからな。例のシステムもまだ完成してないのだろう?」

 

『うむ、こちらもまだ準備が整ってないのでな。小さなイレギュラーは悠で対処できるのじゃが…。システムも最悪の展開を見越し、予定を大きく前倒して急ピッチで開発に取り掛かっておる。あと一か月か3週間はあれば試作型ができそうじゃが…ロキにはまず間に合わんじゃろうな」

 

警戒する存在、計画したタイミング、そして何より彼女の得てきたすべてを十全に発揮するシステムの開発など様々な理由でレジスタンスは世界との接触を控えてきた。

 

そんな彼女たちが世界を動かす地位にあるウリエルとラファエルと関係を持つことになったのは、彼女が二人のある秘密を突き止めたからだ。そこから目的が一致することを知った彼らは手を取り合うことになった。

 

「なら、表向きに大きなイレギュラーが起これば我々協力者たちで対処しよう。二つのシステムは計画の完遂に必要不可欠だ、君はシステムの完成に尽力してくれ」

 

『言われずともわかっておるわい。こっちは10日間は寝ずに作業中じゃ。おぬしが羨ましいのう、寝るだけで一の役に立てるとは』

 

10日間にわたる作業の疲れからか、通信の向こうで深々と息を吐く彼女は皮肉たっぷりに返してしまう。現実時間では10日だが、NOAHに搭載された時間加速機能も使っているため実際の作業量は数100倍にも上る。

 

特殊な体を持つ彼女でなければ、ブラック企業も真っ青を通り越して真っ黒の労働時間なぞ到底耐えきれるものではないだろう。

 

「…『超既視感』も万能ではないし、私も良い未来を見れるわけではないのだが」

 

超既視感は未来を夢見る能力。しかしその未来は必ずしもいいモノだとは限らないし、夢見たとおりになるとも限らない。悲惨な戦争が起こる未来を見ることもあれば、身近な人の死を夢見る。時に精神的負担を強いる能力でもあるのだ。

 

『冗談じゃよ。召集のタイミングとしてはロキ戦の2日後を予定しておる。詳細は追って連絡する』

 

「わかった」

 

ウリエルの返事の後、通信は切れる。

 

「…奴らの思い通りになど、させるものか」

 

誰の耳にも届かなかったウリエルの言葉には、絶対の決意が秘められていた。




悠「ところでイレブンさんはぼうちゅうじゅつって何か知ってます?」

11「そ、その言葉を一体どこで…!!?」

悠「…もしかして、何かまずいワードでした?」

11「わ、私に質問しないでください…」


ゼノヴィアが仕掛けてこなくなった理由は子作りよりも心配とその他の感情が勝ったからですね。

レジスタンスの正式メンバーは現時点で3人ですが、表で名のある協力者たちが別にいるといった感じです。その協力者たちを今章でお披露目します。

次回、「オーディン護衛任務」
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