ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

82 / 208
ロキ大暴れの回です。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
5.ビリーザキッド
7.ゴエモン
9. リョウマ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ



第73話 「悪神と神喰狼と禁忌」

〈BGM:バリアンズ・フォース(遊戯王ゼアル)〉

 

敵意が弾けたと同時に天高く光の柱が立ち上る。

 

ゼノヴィアがアスカロンとデュランダル、名のある二振りの聖剣を握り共鳴、増幅させて長大な聖なるオーラを剣から発生させたのだ。

 

「先手必勝!」

 

大振りな動作と共にぶんと振り抜き、長くのびる聖なるオーラによって距離を無視した一撃を片腕を異形のモノへと変えたロキにぶつける。

 

「ふん」

 

鼻を鳴らすロキは避ける動作の一切を見せず、樹状化した右腕で受け止める。

 

豪快な一閃と共に放たれた眩いオーラは奴に直撃するや否やドゴンと爆音を立て、ビリビリとこっちにも伝わる強い衝撃が大気を震わせる。

 

大抵の悪魔なら触れただけで塵と化すことは間違いなしの凄まじい聖剣のオーラだ、神と言えども聖剣のトップクラスに立つデュランダルの一撃は多少なりとも効くはず。

 

少なくとも俺はそう思った。これまでデュランダルをと共に戦い抜いてきて、攻撃力に自信のあるゼノヴィア本人もそう思っただろう。

 

だから、次に起こった現象を予測することなんてできなかった。

 

「ふん…!」

 

ロキに直撃した光のオーラは爆ぜることも、ロキを吹き飛ばすこともなく直撃したまま静止している。

 

そして次の瞬間、異変は起こり始める。

 

「何?」

 

最初に違和感を感じたのはゼノヴィアだった。太く、大きく、遠くへ伸びる絶大な光の柱が徐々に小さくなっているのだ。

 

「聖剣のオーラが…!」

 

やがてその変化は誰が見ても一目瞭然なほどに大きくなり、どんどん小さくなっていく。

 

光が小さくなっていく中で俺は見た、ロキの世界樹の腕が触れた聖剣のオーラを吸い取っているのが。そしてとうとう、聖剣のオーラは吸収しつくされ消えてなくなった。

 

「デュランダルのオーラを吸ったのか…?」

 

「そうとも、これが世界樹の力…世界樹と合一化した我が右腕はあらゆるオーラ、魔力を吸収し我が力へと変換する。舐めるなよ、聖剣使いの小娘」

 

自信もたっぷりに能力の源となる右腕を掲げて見せるロキ。

 

「オーラと魔力を吸収するですって…!?」

 

「厄介な能力を身に着けてくれたな、ロキ…!」

 

先生は奴の披露した能力に苦々しく眉を顰める。

 

オーラ攻撃が効かないということは恐らく兵藤のドラゴンショットもだめか。うちは朱乃さんや部長さんのように魔力攻撃をメインに戦う人が多い以上、戦術が限られてくる。

 

だからと言って奴をこのまま放っておくわけにもいかない。俺達の任務はオーディン様の護衛、今ここでオーディン様に仇成す敵は対処し、身の安全を保障しなければならない。

 

故に、俺達だけ逃げ出すわけにはいかない。北欧の主神というVIPの護衛と言う大役を任された俺達の信用問題に関わる以上、奴に立ち向かうのだ。

 

「イリナさん、これを」

 

視界の端にいた木場が紫藤さんに寄り、片手剣を手渡す。その刀身に宿る輝きは木場が作る剣でも聖魔剣ではなく、むしろアスカロンやデュランダルに近い物があった。

 

紫藤さんはそれが何か、瞬時に理解できた。

 

「これって…聖剣!」

 

「はい。僕の『聖剣創造《ブレード・ブラックスミス》』で作りました。多分奴は光力も吸収するでしょう、『擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》』と比べると弱いですが」

 

「なるほど!これで十分よ、サンキュー木場君!」

 

元々木場は生来持つ『魔剣創造《ソード・バース》』で魔剣を生み出すことが出来た。しかしコカビエルとの一件で同胞の魂から聖剣使いの因子を譲り受け聖魔剣に目覚めたと同時に聖剣を生み出す能力をも手にした。

 

そして創造された聖剣を、聖剣使いの因子を備えた紫藤さんは存分に扱うことができる。

 

「イリナちゃん、行きますよ!」

 

「ええ!」

 

ウリエルのQであるメリィさんとミカエルのAである紫藤さん。御使いでも高位に位置する二人の天使が動いた。

 

「同時に仕掛けます!」

 

そこに聖魔剣を携え、神速で突撃する木場も加わる。

 

「金羊の子守歌《ゴールデン・ララバイ》!」

 

メリイさんが握る黄金の杖が光を放つと、俺達とロキを金色の結界が覆った。

 

張られた結界を見上げ、見下ろし、見渡し、冷静に奴は分析する。

 

「結界…なるほど、結界内の対象のエネルギーを奪う神器か」

 

「その通りです。あなたのお邪魔をさせていただきます」

 

メリィさんの神器は補助…ゲームのように言うならデバフ特化型か。セラフのQの神器の能力なだけあって、効果は期待できる。

 

その間にも迫る紫藤さんの聖剣と木場の聖魔剣。二振りの剣が振り下ろされ、それを樹へと変じた腕で防御する。

 

「はっ!」

 

拮抗する刃と世界樹の根。これ以上の拮抗は無意味と悟り剣を一度引き、続けて二人は高速で剣技を繰り出すも、難なくロキは全て防ぎ対処して見せる。

 

「聖魔剣か、だがやはり神を相手にするには足りないな」

 

右腕だけで全ての攻撃を弾きながら退屈そうな顔をするロキ。何合目か打ち合った時、全身から瞬間的にオーラを放って二人を吹き飛ばして距離を離す。

 

「きゃ!」

 

「神との戦いは初めてか?なら我が懇切丁寧に、神に歯向かう愚かさを教えてやろう」

 

傲岸不遜に、世界樹の力を身に着けた悪神は俺達を見据える。戦場が奴の放つプレッシャーでより緊迫する。

 

〔Welsh Dragon Balance Breaker!〕

 

そんな中果敢に後方から颯爽と飛び出し、一気にロキとの距離を詰める赤い流星。後ろで禁手のカウント終了を待っていた兵藤が禁手を発動して攻撃に加わったのだ。

 

「そうだ、護衛のメンバーの中には赤龍帝がいたのだったな。どれ、今代の力が如何ほどか試していこうか!」

 

「オーラを吸うなら、直接殴る!」

 

〔Boost!〕

 

宝玉が光り、威力が高まる拳。真っすぐ、豪速で繰り出される拳を奴はがしっと受け止める。

 

「正解だ、赤龍帝。今の我を倒すには直接攻撃しかない…だが、我の取り柄がそれだけと勘違いされては困るな」

 

受け止めながらもう片方の手を向ける。そこにブンと魔方陣が展開し、次々に雷撃と氷塊が飛び出す。回避しようとする兵藤だが、突きだした拳はロキによってがっしりと掴まれているため動けなかった。

 

「がっ!?」

 

神の魔法が兵藤の腹部に叩き込まれる。強烈な威力に赤い鎧が砕け吹っ飛びはしたが、直撃の瞬間魔法を金色のオーラが包み込んで威力を落としたため、中の兵藤は浅いダメージで済んだ。

 

あれがメリィさんの神器の力か?攻撃の威力を抑える神器とは、また珍しい能力を持っているな。

 

「神と戦うにはまだまだパワーが足りないな。『覇龍』でも発動すれば面白くなるか?」

 

魔法を放った奴は退屈そうな口ぶりで、顎をさする。

 

メリィさんの能力で威力をある程度は抑えられているとはいえまさか手加減したのか?本気を出せばあいつを瞬殺するくらい容易くできたはず。

 

…力を手に入れて、調子をこくのは神も一緒だな。

 

「イッセー!よくも…!」

 

ロキの攻撃が、兵藤ラバーズのヒエラルキーの中でも上位に立つ部長さんと朱乃さんの怒りに軽く触れる。

 

怒気を含んだ赤い滅びの魔力と、痺れる雷が怒りの対象たるロキへと向かう。しかし…。

 

「その程度では牽制にもならんな」

 

朱乃さんの雷も、部長さんの滅びの魔力も全て世界樹の右腕で受け、たちまちのうちに吸いつくしてしまう。

 

「私たちじゃダメだというの…!?」

 

自分達が得意とする魔力攻撃の通用しない相手、彼女たちにはそれ以上の攻撃手段はない。無力さを感じる二人は心底悔しそうに歯噛みする。

 

〈BGM終了〉

 

その間に、後衛からアーシアさんの回復のオーラを受けた兵藤が戻ってきた。

 

「…『覇龍』は使わねえ。『覇龍』を使わずに強くなる。そしてお前を倒す!」

 

兵藤は確かに『覇龍』でとんでもない力を解放した。だがそれは寿命を引き換えにした諸刃の剣だ。残された寿命から考えて二度目の使用はないと宣告を受けたあいつはもう『覇龍』を使えない。

 

赤龍帝の籠手に存在する神器の究極、禁手を越えた究極の力。だがその道が絶たれたからとあいつは諦めなかった。

 

そこには魔力を使えない大王バアルの男、サイラオーグ・バアルの存在があるようだ。才能の持たない彼にあいつは自分自身を重ね合わせ、励みにしているのだろう。だからあいつは足りないもの、使えないものを少しでも埋め合わせようと地道な努力を重ねる道を選んだ。

 

「舐められたものだ」

 

兵藤の決意を馬鹿馬鹿しいと鼻で笑う。

 

お前にとっては取るに足らないように思える俺達にも、意地がある。例え無力だとしても象に抗う蟻の意地がな。

 

…さて、そろそろ俺も動くか。

 

腹の底から息を吐きだして、兵藤の隣に並んだ。

 

〈BGM:ハードボイルド(仮面ライダーW)〉

 

「兵藤、行けるか?」

 

神と戦う覚悟を決め、兵藤に呼びかける。

 

「まだまだ行けるぜ!」

 

まだ元気を残した様子の兵藤は応じる。壊れた鎧は瞬時に再生し、元の形を取り戻す。そして今度は肩を並べて、二人でロキに猛進する。

 

風を切り、赤と青の二人の戦士が悪神に挑む。

 

「次は噂の推進大使か、少々試させてもらおう」

 

「「ハァァ!!」」

 

二人で一斉に渾身の拳打を繰り出す。しかし余裕たっぷりの奴は両腕を動かし、器用に弾いてみせる。

 

「ふん!」

 

そして神のカウンターが来る。

 

「おあ!」

 

片や鋭い蹴りが赤龍の力を纏う兵藤を打ち抜き、軽々と吹っ飛ばす。

 

片や俺に放たれたのは変化していない左腕から繰り出されるパンチ。真っすぐに穿つ勢いで来るそれは腹に打ち据えられた。

 

「ごふっ!」

 

突き抜ける衝撃で息と一緒に血も吐き出される。しかし俺は屈しない。繰り出された拳をがっしりと掴む。

 

「何?」

 

掴んだ拳を腹で受け止めたまま放さない。流石のロキもこれにはうざったそうな表情を見せた。

 

「これでも喰らえ…!」

 

距離を保った至近距離でガンガンハンドで顔面に銃撃をぶちかます。しかしすぐさま割って入った右腕に防がれ、余すことなく吸われる。

 

別にこんな小手だましの攻撃でダメージが入るなんて思ってはいない。本命は…!

 

銃撃の防御と吸収に意識が向いた隙にブーストを吹かして戻り、身を低くして懐に詰め寄った兵藤が赤い弧を描いて回し蹴りを腹に入れる。

 

「オラァ!」

 

「ぐっ!」

 

それは俺達がこの戦闘で与えた初めてのダメージだった。くぐもった声を漏らすロキに、兵藤はさらに追撃にとパンチを打ち出す。

 

「舐めるな!」

 

しかし易々と反撃を許す神ではない。拳打を受け流して拳を掴み、大胆にも捕えた兵藤を俺に投げつけた。

 

「ごうっ!?」

 

まさかの反撃を受け、どさりと飛び込んできた兵藤を受け止めるが態勢を崩す。それと同時に隙を作ってしまった。

 

そして手のひらに青白く煌めく光を生み出し、俺達に向ける。

 

あの手のひらに末恐ろしいオーラが込められている。間違いなくとどめの一撃を撃つつもりだ。

 

こんな…ここで俺は終わるのか…?

 

〈BGM終了〉

 

「そんな…!」

 

「逃げてイッセー!紀伊国君!」

 

「死ぬな!悠!」

 

戦慄する俺達。仲間たちの悲鳴もむなしく、無慈悲にとどめの一撃は放たれる…と見せかけて、奴は生まれた光をその手でグッと握り潰した。

 

「何だと!?」

 

この場にいた全員が奴の行動に驚愕した。誰もがあの攻撃で俺と兵藤が消し飛ぶと思っただろう。奴にとっても絶好のチャンスだ。なのにこいつはそれを棒に振った。

 

「止めならいつでも刺せる。が…ちょうど今、楽しいことに気付いてね」

 

「楽しいことだと…!?」

 

完全にこいつは俺達を舐めてるな。兵藤の攻撃で手を抜いたり、今さっきも明らかに俺と兵藤を消せたのにあえて止めたり。手に入れた力を試したいから俺達にさっさととどめを刺さないのか?

 

まあ相手が相手だ、神である自分からすればユグドラシルの力も相まってゴキブリのように取るに足らない何かにしか思えないのだろう。

 

端正な奴の顔に、三日月状の薄い笑みが生まれた。

 

「推進大使の貴様、嘘つきだな」

 

「!」

 

放たれた奴の唐突な言葉に、俺は動揺してしまった。

 

最近抱える秘密に悩まされていたのもあって、動揺は強かった。奴とはたった今会ったばかりなのにどうしてそれを見抜いた…!?

 

俺の様子に図星だと思ったか、ふふっと笑った。

 

「トリックスター、悪神を名乗るだけあって嘘つきはすぐにわかる。ニオイと言うのかな…貴様からはそれが強く感じるぞ。これは罪悪感の混ざった、苦悩の濃いニオイだ」

 

悪辣じみた笑みを交えて奴は言葉を投げかけてくる。その言葉は鎖のように俺を巻き付け、動きを止めてしまった。

 

「大切な仲間たちに言えない秘密と罪悪感を抱えたまま、嘘と吐いた仲間たちと肩を並べてお前はこの場にいる…そんなところか?」

 

「お…俺は……そんな」

 

ロキの言葉が猛風のように俺の心に吹き、内に燃やす戦意の炎が強風に吹かれたように揺らめく。そして並べ立てられた核心を突く言葉の数々は霧となり、心眼を鈍らせる。

 

「紀伊国!」

 

動揺し、動きも戦意も鈍らせる俺の名を呼んだのは兵藤だった。がしっと群青色のパーカーの襟首を掴んで顔を寄せ、間近に出された大声にはっと我に返る。

 

「隠し事をしてるとしてもお前は俺達の仲間なんだろ!?トリックスターだか何だか知らないけど、お前が俺達を本当に仲間だと思うならあいつの言葉に惑わされんな!!」

 

「!」

 

「お前は俺と同じ苦しんでる仲間を放っておけないバカだけどオカ研男子で、俺達のために何度も命を懸けて一緒に戦ってきた!隠し事とかよくわかんねえけど俺はお前を信じてるし、頼れる仲間だと思ってる!お前はどうなんだ!?お前にとって俺達はなんだ!?」

 

兜の裏から覗く真っすぐで熱い眼が痛いほど突き刺さってくる。それが俺達の今までを呼び起こす。

 

「…そうだ、お前は俺の…友達で、仲間だ。それだけははっきり言える」

 

学校では変なことをやるこいつを諫め、部活動でもクラスでも共に笑い合う毎日。異形の世界では何度も格上の相手に死と隣り合わせにして立ち向かってきた。共に苦境を乗り越えて、こんな嘘つきな俺をそれでも信じてくれるこいつらをどうして仲間ではないと言える?

 

ロキの巧みな話術で心を惑わそうとしてくる霧は、兵藤の熱く力強い風で晴らされた。

 

「だったら迷ってないで、今すぐあいつをぶっ飛ばしてやろうぜ!」

 

「ああ、そうだな…!」

 

一度は消えかけた戦意の炎に、兵藤は牧をくべた。再び俺の中で熱く、煌煌と燃え上がる。

 

いつもは俺がツッコミを入れる立場なんだが、今回はまさかこいつに熱い言葉で励まされるなんてな。

 

神と戦っているっていうのに、お前がいると何だか上手く行けそうな気がしてくる。お前がいてよかったよ、兵藤。ありがとうな。

 

「一人折れると思ったが…今代の赤龍帝は力はないが面倒なタイプだな」

 

今まで手を出さず傍観に徹していたが、興冷めだと冷めた表情を浮かべるロキは切り替えも早くすぐさま苛烈な魔法の驟雨を叩き込んでくる。

 

元々接近戦を仕掛けるために距離は詰めていた。躱す時間はなく、神の攻撃を完璧に防御する術もない。

 

「ぐぁぁ!!」

 

「がっ!!」

 

なすすべなく神が為す魔法の威力に俺達はまとめて木っ端の如く吹き飛ばされ、詰めた距離が離される。

 

飛ばされながらも何とか態勢を持ち直して、ホイールウィングの稼働によって宙に踏みとどまる。兵藤の方も同様に持ち直していた。

 

「くそっ…折角反撃しようって雰囲気だったのに…!」

 

今のは明らかにそういう雰囲気だった。なのにこいつは…空気の読めない悪神だ。いや、色々かき回してきたトリックスターだからこそか。

 

「神器は心の昂りに応じる。敵のパワーアップを許すと思うか?」

 

なら当然、お前のパワーアップを俺達が許すわけがないよな?もう事後だけど。

 

「用があるのはオーディンだけだ。貴様らは我が息子たちの遊び相手になってもらおうか」

 

ロキは意味深な言葉を放つと、俺達から少し距離を取った。

 

「いでよ、神をも喰らう我が獰猛なる牙!」

 

そして大樹と一体化した右手を掲げ、高らかに詠唱する。

 

次の瞬間、虚空が歪む。まるで水面に立つ波紋のように歪むと、その歪みから一匹の雄々しき獣が出現した。

 

〈BGM:時空竜 召喚(遊戯王ゼアル)〉

 

「GRRR…」

 

その獣を一言で表すなら大きな狼だ。透き通り、見る者全ての心を吸い取るように美しい銀色の毛並み、前足の付け根からせり出す角。

 

牙を剥き出し、視線だけで生物を殺せそうなくらい獰猛な眼で威嚇する狼の唸り声に大気が冷え込む。風すらも出でたその存在に恐れをなし息を殺す。

 

「しまった…お前ら、あの狼とはやり合うな!今のお前たちじゃ絶対に無理な相手だ!!」

 

先生もロキが召喚した大狼に焦りを露わにし、真に迫った様子で声を大きくして俺達に注意を促す。

 

「先生、あの狼は…」

 

「神喰狼《フェンリル》…全勢力の実力者のトップ10にも入る最凶の魔物、ロキの息子だ。ぶっちゃけロキよりも強いし、何よりそいつの牙は神をも殺せる!」

 

「えええ!!?」

 

凶悪さの中に気高さすらあるフェンリルの情報に兵藤は絶叫じみた驚きの声を上げた。

 

魔獣という区分ならコカビエル戦でケルベロスと戦ったが、あれとはもはや階段を数100段飛ばしはくだらないだろう別格の魔獣だ。

 

フェンリルの出現がただでさえ苦戦の色濃い状況をさらに濃厚にすることは間違いない。それどころか、一気に全滅する可能性も多分に出てきた。

 

この状況、どう切り抜ける…?

 

「試したことはないが、フェンリルの牙は他の神話の神仏にも有効打となるだろう。神仏に効くなら上級悪魔やドラゴン程度どうということはない。余所者に自慢の牙を使いたくはないが…」

 

長髪を撫でるロキの目が、おもむろに部長さんへと移る。

 

「まずは魔王の血筋からだ」

 

その言葉と同時にフェンリルの姿が消える。刹那、疾風が駆け抜ける。

 

「させるかァァァァァ!!」

 

次にいち早く危機を感じ取った兵藤の叫び。背中のブースターを一気に吹かし部長さんの下へとギュンと飛んだ。

 

「オラァァァァ!!」

 

部長さんを襲わんと突撃したフェンリルの前に躍り出ると、赤き籠手を纏った拳を振り抜き神をも殺す獣を真正面から殴り飛ばした。

 

そして赤い鎧がガシャンと無残に砕け散ったのはほぼ同時だった。

 

「ごふっ」

 

胸に大穴を開けられた兵藤が部長さんの眼前で、烈華が咲くかの如く大量の血をまき散らしていく。

 

相対したのはただの一瞬だった。あのフェンリルはその一瞬に致命傷となる一撃を叩き込んだのだ。近接戦では俺を除いたグレモリー眷属内ではトップの兵藤が一瞬の内の一撃でやられた。

 

あまりにも速すぎて、衝撃的過ぎて、あっけなさすぎる展開に頭の中が恐怖や戦意すら忘れて比喩でなく真っ白になった。

 

「兵藤!!」

 

「イッセー君!!」

 

「イッセー!!」

 

「イッセー先輩!!」

 

血を流しながら崩れ落ちていくあいつの姿に、悲鳴じみた叫び声が上がった。

 

〈BGM終了〉




ロキの吸収能力はNARUTOの輪廻眼の餓鬼道のようなものと思っていただければ。ユグドラシルにそんな能力あった?と思う方もいるでしょう。そこらへんはまた後々に…。

舐めプしまくるロキ「このニオイは!嘘をついているニオイだぜっ!紀伊国悠!」

次回、「一槍報いる」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。