ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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死ぬほど忙しかった…。疲れているせいかSAOのアドミニストレータにシンセサイズされる夢を見てしまった。失敗してたけど。

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第77話 「行かないでくれ」

その日の夜、自分の家に戻った俺は浴室でシャワーを浴びていた。

 

湯煙に曇る備え付けられた鏡には濡れた黒髪を水と一緒に垂らす自分の顔が映りこんでいる。

 

「…ホント、どうすればいいんだ」

 

鏡に前のめりになるように手を当て、映る自分の顔は実に情けないものだ。

 

今の俺の頭の中を駆け巡り、悩ませるものは3つ。

 

まずはロキ戦のことだ。

 

大役を任されたというプレッシャー、それが否応にも俺の心を圧迫する。絶対に失敗できない役目を確実に遂行できる自信もなくアザゼル先生にも聞いたがいい手立てを見つけられず、その不安は増していくばかりだ。

 

そしてもう一つは変わらず自分の心に影を落とし続けている転生のこと。

 

あの戦いでロキの言い放った「嘘つき」と言う言葉が、自分の心をとらえて離さない。一時は兵藤のおかげでなんとか振り払えたが、今の不安に煽られる精神状態がそれを蘇らせた。

 

そして最後に、朱乃さんの件だ。

 

今まで本人の見せる嫌悪感から触れづらかった朱乃さんとバラキエルの関係。事情を知って謎が解けたとスッキリしたかと思いきや、むしろ逆に余計に朱乃さんに話しかけづらくなった。このやりきれないもやもやがアザゼル先生の話を聞いてから胸につっかえたままだ。

 

そして今、大嫌いな父と共闘することになり心に押し込めてきたものをぶり返している。その証拠に、バラキエルさんがいない時でもそういうとげとげした雰囲気が出ているのだ。その雰囲気が、周りを遠ざけ不安を増長する。

 

正直に言って問題とは無関係な俺ごときが口出しできる問題じゃない。この問題は家族の問題ということもありやはり本人同士の間で解決するしかないが、当然朱乃さんにその意思はないだろう。だがもし、解決の糸口になる可能性があるとすればやはり兵藤だ。

 

朱乃さんが好意を寄せるあいつの話なら、頑なに父に心を閉ざす朱乃さんも聞き入れるかもしれない。

 

3つの不安要素が絡み合って大きな不安になり、強く、深く心を蝕んでいく。それに抗うことのできない俺は胸の内を吐露できず一人で悩み続ける。

 

無理に不安を打ち明ければ、さらに皆を不安にさせかねないからだ。だからこうするしかない。

 

「悠」

 

呼びかける声に意識は不安という黒い色に染まった思考の海から引き戻される。

 

いつの間にか鏡にゼノヴィアの姿が映っていた。その姿は惜しげもなく同性からも羨ましがられるようなスタイルを惜しげもなく晒す、一糸まとわぬ裸体である。

 

当然視線を背後にやれば、鏡に映るまま生まれたままの彼女が背後に立っている。

 

声をかけられるまで全く気付けなかった。それほどまでに、深く考え事をしていたということか。

 

「…人が入ってるのに勝手に風呂に入らないでくれ」

 

「すまない、けどどうしても君のことが気になったんだ。随分思い詰めているみたいだからね」

 

彼女も次の戦いのことが心配だろうに、いらない気をかけてしまったようだ。

 

それを差し置いても流石に全裸を見られるのは嫌だぞ…と言っても、子供を産むことが夢になった彼女はまず聞いてくれないのでもうそこはほぼ諦めた。いや、諦めてしまった。

 

「…作戦のことを考えていたのか?」

 

「ああ、はっきり言って俺には過ぎた大役だ。何でこんな役を頼まれるんだろうな、気に食わないヴァーリみたいに、俺なんかより適役はいるというのに」

 

先生も、誰もかれも俺がコカビエルに勝ったことで過大評価しすぎなのだ。あれはただの偶然、まぐれでしかないのに。俺がいつでもコカビエルに勝てると思ったら大間違いだ。

 

「…そうだね。無理に君だけが苦しみを背負う必要はない。たまには逃げたっていい」

 

「は?」

 

今、何て言った?逃げていいだと?

 

俺はにわかに、彼女の口からぼそりと出た言葉を信じられなかった。

 

その一方で、彼女は改まった表情を見せる。

 

「いや…今から私はものすごく自分勝手でわがままなお願いをする。でも、真剣に聞いてほしい」

 

「…わかった」

 

このタイミングで、あのゴーイングマイウェイな彼女が自分でもわがままと思うほどのお願いとは何だろうか。

 

彼女の表情に一瞬躊躇の色が見えたがフッと掻き消えると、切実な表情でノイローゼ気味の表情を浮かべたままの俺を見据えた。

 

艶やかな口が、ゆっくりと言葉を吐き出さんと開く。

 

「今回の戦い……君には出ないでほしい」

 

「は?」

 

予想だにしなかった願いに体が固まった。暗く沈んでいた心に驚きの波紋が走る。

 

「…俺に戦うな、って言うのか?」

 

「そうだ」

 

「…どうしてだ?いつにもましてお前らしくない」

 

彼女は俺がこの世界に来る何年も前から教会の戦士として聖剣を携え、幾度も死線を潜り抜け悪魔を屠って来た。聖剣使いとして、戦士としての誇りを持つ彼女が何故同じ戦士である俺に戦うな、逃げろと言うのか。まるで理解できない。

 

「…君はいつも、ボロボロになるまで戦ってきた」

 

恐る恐る理由を問い詰めると、ふと俯いて彼女は語り始めた。

 

「ヴァーリの時も、パーティーの時も、ネクロムの時も…いつも傷ついて、死にかけて…そんな君を見て思った。『悠が死んでしまうのは嫌だ、二人で過ごす時間が無くなってしまうのは嫌だ』って。君の傷つく姿を見るたびにその思いは強くなっていった。同時に、そう思うくらい君が私にとって大切な人なんだということに気付かされたんだ」

 

「…!」

 

話が進むにつれてより彼女の顔が俯いていく。そして彼女の思いの告白に、俺はハッとした。

 

今まで…ゼノヴィアがそんなことを思っていただなんて誰よりも彼女と過ごしていながら俺は露程も予想もできなかった。

 

「今だって、君はこんなに辛い思いをして悩んでる。心も体もすり減らして…傷つくばかりじゃないか」

 

語る彼女の声が若干上ずり始めた。その表情は俯いたままで窺うことはできない。

 

「いつか…君が戦い続けて本当に死んでしまうんじゃないかと思うと、本当に、たまらなく悲しくて…寂しくて…辛いんだ」

 

彼女が風呂場のタイルを踏み一歩近づくと、温かな身を寄せてきた。密着する柔らかい肌から彼女の温もりが内に秘める思いをこれでもかと訴える程に伝わってくる。

 

「私がとんでもないことを言ってるのはわかってる。お前が戦わなかったら、作戦は成功しない。でも…それでもお前にこれ以上苦しんでほしくない、死んでほしくないんだ…!」

 

「ゼノヴィア…」

 

そして、隠してきた顔を上げ、見せた。

 

「だから…行かないでくれ」

 

溢れ出す感情が、涙と共にボロボロと流れていく。真っ赤な泣き顔で俺を真っすぐに見据えて感情のままに切なる願いを痛烈に訴えてくる。

 

いつも身近にいながら、全然気づけなかった彼女の思い。

 

戦うことで皆が守られる、救われる。力の責任を意識するあまり俺は今までそうだと、それが当然なんだとしか思っていなかった。

 

でもそうじゃなかった。俺が戦って傷つくことでこんなにも悲しむ人がすぐそばにいる。そしてその人は今俺に戦うなと言っている。

 

何て俺は罪深い人間なんだろう。自分が苦しめば、その自分の周囲にいる人間も苦しませてしまう。生きることは苦しむことなのか、これが誰しも人生は一度という生命の理を意図せず外れて、別の世界でさらなる人生を得た代償とでも言うのか。

 

…それでも、それでも俺は。

 

「…残念だけど、お前の望みを受け入れることはできない。俺は戦わなくちゃいけないんだ」

 

俺は、そんな彼女の願いを叶えることはできない。それでも俺は戦う道を選んだ。

 

こんなになってまで死んでほしくないと訴える彼女の思いを断るのは辛かった。それでも、俺は断らなければなら

ない。

 

「どうして…?どうして君はいつも…!」

 

「ロキの言う通りなんだよ」

 

理解できないとばかりの彼女の追及を自嘲気味の言葉で遮る。

 

「…俺は嘘つきだ。こんなに心配して、信じてくれる皆に一人言えない秘密を抱えて…打ち明けたら今の皆との関係が崩れてしまうんじゃないかとビビってる、俺はとんだ臆病者の嘘つき野郎だ」

 

自分の思いを打ち明けてくれた彼女に対し俺はありのまま、胸に抱える不安を打ち明ける。

 

「だからこそ俺は皆と一緒に戦わなきゃいけない、守らないといけない。お前たちが命懸けで戦って苦しんでいるのに一人だけ何もせず逃げ出したら、俺は本当に最低の嘘つき野郎になってしまう。それだけは、越えてはならない一線なんだよ」

 

もう二度と、あの時のような思いはしたくない。あんなみじめな姿は晒さない。嘘を抱えていく以上、皆のために戦うという誓いを守り続ける。それだけは決して譲れない。

 

この誓いが破られた時、俺は真に最低最悪の嘘つきになる。逃げるだけの、隠すだけのクソ野郎だ。そうなってしまえば俺があいつらと一緒にいる資格なんてない。そんなのは全く持って御免だ。

 

身を寄せる彼女の両肩をそっと掴む。

 

「頼む、俺を最低の嘘つきにしないでくれ」

 

彼女の目を真っすぐに見て、今度は俺が切なる願いを訴える。

 

視線は数秒の間静かに、しかし強く交錯する。その後返ってきたのはふっという笑みだった。

 

「本当に…人の頼みを断ったうえで人に頼みごとをするなんて酷い奴だ」

 

「…ごめん」

 

「でもだからこそ……なのかもしれないな」

 

呆れ交じりに笑う彼女は涙に濡れ、赤くなった顔を手で拭う。

 

「…わかった。一緒にロキと戦おう、私が君を最低の嘘つきにはさせない」

 

「ゼノヴィア…!」

 

話を聞いてくれたことに安堵すると、彼女が人差し指でトンと俺の胸を叩く。

 

「その代わり、絶対に死なないでくれ。皆揃って、必ず生きて帰るんだ。死んだら悪魔の寿命で1万年はずっと呪ってやるからな」

 

「…それは勘弁してくれ」

 

初代の悪魔だとか割と1万年生きている悪魔っているから、結構冗談に聞こえないぞ。死んでも恨まれ続けるのは流石に嫌だ。

 

「…悠、最後にもう一ついいか?」

 

「どうした?」

 

話が終わろうかと思った矢先に、またも彼女はさっきより一段と改まった表情を見せる。

 

「この戦いが終わったら、話したいことがあるんだ。聞いてくれるかな?」

 

「…わかった。帰ってこれた時にはきっと、な」

 

まだ精神的に弱っていながらも精一杯の笑みで彼女の言葉に答えた。

 

彼女が戦いの後に話したいということ。それを、生きて帰ってくるための道しるべとするために。

 

絶対に、生き残る。

 

こんな自分を信じてくれた彼女の思いに、俺は必ず答えて見せる。

 

 

 

 

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日本のとある県境にある山。人が足を踏み入れないような太い木々が空を覆いつくさんとばかりに伸ばす枝とそれに付随する葉に遮られ、日光のほとんど差さない山奥に彼はいた。

 

「ぐ…あああ……!!」

 

北欧の神、ロキは呻く。両膝を突いて、右腕を中心に全身へと広がる激痛に喉からとめどなく苦悶の声が溢れる。

 

苦痛の原因は彼が右腕に移植したユグドラシルの種にある。

 

オーディンとの一戦以降、どうにもユグドラシルの腕が疼く。ミシミシと音を立て、普段は引っ込めている世界樹の根が妖しく蠢いてその領域をじわじわと広げんとしている。それを宿すロキは今自分の身に何が起こっているのか理解していた。

 

ユグドラシルが自分の体を侵食している。間違いなくあの戦いでデュランダルやオーディンの強大なオーラを大量に吸収したからだ。それを養分に、己の体を苗床にして種は成長しようとしているのだ。

 

「凄まじい力…流石ユグドラシルだ…あああッ!!!」

 

神と言えども、一神話の根幹を成す力に抗えるはずがない。ましてやそれが内側から作用しているのであればなおさらだ。

 

全身から脂汗が噴き出し、世界樹を宿していない左手は痛みをこらえるために握りしめて真っ赤になっている。

 

「だが…飲まれるわけには…!」

 

しかしロキは耐える。この力を完全に己のものにして来たる日にオーディンを打倒し、北欧神話をあるべき姿に戻す日を信じればどれ程の苦痛だろうと関係ない。

 

必ずや完全に己のものにする。そしてこの力を、新たな北欧神話のシンボルとするのだ。

 

その一心で、ロキは持っていかれそうになる精神をひたすらにつなぐ。

 

「我は…北欧を…繁栄…させ…バンブツヲ…ヒトツニ…!」

 

力に精神を持っていかれまいと、己に言い聞かせるように吐いた言葉の途中脳裏にある光景がよぎった。

 

澄み渡る空。青々と生い茂る木々たち。不毛の地も、砂漠も、緑は存在しないと言われる場所にも植物が生い茂る。

 

しかしそこには知的生命体の築いた文明はない。文明の名残は全て植物に侵食された。あるのは人間界も冥界も天界も何もかもが植物に支配された世界だけ。

 

「!!」

 

一瞬だがその光景は脳裏にしっかりとこびりついた。

 

次の瞬間、彼を襲ったのは猛烈な嘔吐感。

 

「ごはっ!?」

 

そして込み上げてきたそれを思いっきりぶちまける。出てきたのは吐しゃ物ではない。深く、赤い、神の血。

 

だがぶちまけたおかげか、不意に今まで苦しめてきた大樹の胎動は収まってくれた。

 

「がっ…我は……今何を…?」

 

脂汗と血にまみれた両手で地に手を突き、息を整える。

 

「ハァ…ハァ…今ので侵食はかなり進んでしまったな…だが今までよりユグドラシルの力を行使できそうだ…」

 

血だまりに映る自分の姿には、今までの腕だけだった世界樹の部位がさらに増えていた。顔の右半分は樹木に飲まれ、まだその領域が広がっていないながらも左の側頭部には根が角のように伸びている。

 

「…この力を利用すれば、アレを再利用できるやもしれん」

 

苦痛の余韻が残る悪神の口元に薄い笑みが浮かんだ。

 

今自分がすべきことは足踏みではない。オーディンを打倒するための策を練ることだ。

 

あの戦いで最後に現れた白龍皇。間違いなく次の戦いにも参戦してくるだろう。奴らは神に喧嘩を売るだけの力を秘めた二天龍なのだ、如何にこちらにはフェンリルとユグドラシルの力があるとはいえ念には念を入れておかねばならない。

 

「この戦いを征すのは…我だ」

 

トリックスターなどと、表に出ず裏から周りをかき回す役目を担ってきた自分が柄にないことをしているとは思っている。

 

いや、むしろオーディンの思惑をかき乱しているという意味では今回も同じなのかもしれない。人の性質は変わらないというように、神の性質もまた何万年と経とうと変わらないもののようだ。

 

トリックスターの役目を果たし、二天龍とオーディンを倒して北欧のあるべき未来を取り戻す。

 

そう、いつだって最後に笑うのは自分だ。

 

 

 

 

 

 

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駒王町の夜。煌煌と輝く街明かりで古来よりロマンの象徴となって来た夜空の星たちの輝きは鈍る。

 

そんな光景に耽る余裕もなく、夜空と打って変わって卓上のデスクランプの明かりだけが輝く夜のVIPルームで一人、アザゼルは作業に勤しんでいた。

 

「…爺さんの話がどうにも引っかかるぜ」

 

思い返すのはつい先ほどこのVIPルームで交わしたオーディンとの会話。

 

『アザゼル。ロキが手に入れたユグドラシルの力についてなんじゃが…』

 

『なんだ?』

 

『どうにもあの世界樹の腕に違和感を感じるのじゃ。あれは本当に…ユグドラシルなのか?』

 

『…どういうことだ?あれがユグドラシルじゃないって言うのか?』

 

『いや、間違いなくあれはユグドラシルそのものじゃ。じゃが、言葉にし難いが何かが違う気がしてならん…』

 

その時、オーディンは自身の胸に小さく渦巻く違和感をうまく説明できなかったが何となく言いたいことは伝わった。

 

ロキが手にしたあれはユグドラシルと似て非なる力であることを。しかし当然、それを感じた本人が分からないものをそれをさらに人づてに聞いたものが理解できるはずもない。

 

「ま、あれが何であれ俺達にとって脅威であることに変わりないんだがな」

 

出所を探ったところで今更どうにかなるはずもない。探りを入れるのは元々ユグドラシルの管理を担うオーディン達北欧神話の仕事、餅は餅屋ということだ。

 

さっと頭からさっきの出来事を振り払ってテーブルに置いたコーヒーカップに手を付ける。

 

「…コーヒーが冷めちまった。新しく入れるか」

 

資料を読み漁り、関係各所に連絡を取ってる間に冷めてしまったらしい。

 

長時間同じ態勢を維持したせいで軋む体を動かし、立ち上がろうとした矢先。

 

『深夜までお勤めご苦労様だ』

 

「悪いな、ありが…」

 

水音と温かな湯気を立てて新しく注がれるコーヒー、差し出されたカップを受け取ろうとして初めて気づいた。

 

「!?」

 

弾かれたようにアザゼルは立ち上がり、瞬時に距離を取る。赤紫色の瞳を、突如この場に出現した謎の存在に向けながら。

 

黒いスーツの上に随所に青と白の歯車のはめ込まれた装甲で覆われた男とも女ともつかない存在が薄暗い部屋の中で佇んでいる。

 

「何者だ、どうやって侵入した!?」

 

自身の知識にない存在に対し即座に警戒の意を露わに、いつでも戦闘に入れるよう構えを取る。

 

『どうやっても何も、そこのドアから入っただけだが』

 

「結界を突破してきたのか…?だとしたら反応が出るはずだが」

 

謎の存在はこともなげに答える。

 

この町と同様、この兵藤宅にはがっちりと結界が張られている。禍の団が一般人でありながらグレモリー眷属の中核となっている兵藤一誠の両親を狙わないとは限らない。万が一に備え、結界は常に万全のものにしてある。

 

しかしこの存在は全くスタッフたちにも自分にも気取られることなく侵入してきた。その事実が、アザゼルの警戒レベルを一気に引き上げている。

 

『自分がどうやってここに来たかを知る必要はないし、そう殺気立てる必要もない。わら…んん、自分は味方だ』

 

「味方だと…?」

 

味方と言う言葉にアザゼルの眉が吊り上がる。向こうは安心させるような口ぶりだが、すぐには警戒を解かない。即座に戦闘できる体勢を維持しながら胡乱気に問い返した。

 

『ちょいとばかし話がしたい。心配なら、可愛い教え子たちを同席させても構わんよ』

 




すごいヒロインムーブだけど、絵面的にはいつでもR18に持っていきそうな場面でした。

ゼノヴィアの君、お前呼びですが普段は君、感情が昂るとお前呼びになるようにしてます。

いよいよ妾が登場、その真意とは。

次回、「巡り合う歯車」
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