書いてたら滅茶苦茶長いかつ内容が濃くなり過ぎたので3分割しました。これで少しは更新ペースを早く出来るはず。
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
5.ビリーザキッド
7.ゴエモン
9. リョウマ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
「こんな夜更けに何の用なんだ…」
「同感だ。夜に強い悪魔だって疲れる時は疲れるし、寝たい時は寝たいよ」
内心にくすぶる苛立ちをぼそぼそと吐きながら、兵藤宅の廊下をばたばたと歩く。
シャワーも浴びて、ようやく床に付こうかと思った矢先にアザゼル先生から突然の連絡を受けた俺はゼノヴィアと共に再び兵藤宅の最上階、VIPルームに足を運んでいる。
今日は精神的にかなりボロボロだったのでやっとリフレッシュできると思った矢先のこれだ。苛立たないわけがない。一刻も早く用事を済ませて今度こそ疲れを取るために安眠に就きたいものだ。
歩みを進めるうちに目的の部屋の前へとたどり着き、ガチャリとドアを開けてVIPルームに足を踏み入れる。そこで俺の思考は一瞬停止した。
「これは…!?」
俺は今、ドアが開かれて目の前に飛び込んできた光景をにわかに信じられなかった。
どういうわけかヘルブロス…に変身したポラリスさんがこの場にいるのだ。既に到着していた兵藤たちと会長さんは柔らかなソファに悠然と腰を下ろしている彼女に静かに警戒心を向けている。
眼前の光景は、苛立っていた思考を一瞬にして驚愕と疑問の色に塗りつぶす。
何故ポラリスさんがここにいるのか、彼女は彼女の言う来たるべき時まで表舞台に出ないのではなかったか。
尽きぬ疑問が俺の足をその場に固める。一体、あの人は何を考えているんだ…?
「あれは…?」
「俺にもわからん。結界を誰にも気づかれず突破していつのまにかここにいた。ただ話がしたいだけらしいが…」
隣にいるゼノヴィアも、彼女の存在に疑問の声を上げる。
結界を突破…なるほど、VIPルームのドアを介してこっちに来たんだな。しかし、結界が張られていようとお構いなしか。堕天使の長など地位の高い三大勢力のスタッフが集まり、その分警備も厳重なこの地の結界を突破できるレジスタンスの驚異の技術には常々驚かされる。
「先生、ヴァーリは?」
「あの気まぐれ集団はラーメン屋台巡りの真っ最中だ。一応監視を付けてはいるが唐突過ぎるし時間もなかったから近くにいるお前らとシトリー眷属はソーナと椿しか呼べなかった」
ヴァーリチームがラーメン屋台巡り?あの非常時に何をやっているんだフリーダムズめ…。
もはや怒りを通り越して呆れの感情が湧き出てくる。あいつら余裕だな、こちとら飯もあまり進まないというのに。
『よし、全員揃ったか』
そして数名(主にヴァーリチーム)を除いて一応の全員の到着を確認したポラリスさんは俺の動揺などつゆ知らず、ゆっくりと腰を上げる。
『初めましてだ、グレモリーの諸君。自分の名は…ポラリスだ』
「ポラリス…?星の名前か」
『自分の名はどうでもいい、不審者でも歯車野郎でも好きに呼んでもらって構わんよ』
今のポラリスさんは先生たちからすればどう見ても不審者だ。ロキの件でピリピリしているのもあって行動次第ではすぐに戦闘開始、この場にいる全員から攻撃されてもおかしくないのにポラリスさんは余裕たっぷりかつ冷静に名乗る。
「そうか。それで不審者、お前はどこの所属だ?」
『所属はない、自分はフリーの者だ』
この世界のどの勢力にも属していない、と言う意味なら所属はないといっても嘘ではないな。
「フリーだと?どこにも所属せず、なおかつこの結界を突破してくるほどの実力者がいたとはな…」
「そのフリーのあなたが、私たちに一体何の用かしら?」
ポラリスさんの返答に先生は予想外だと声を漏らし、鋭い眼差しを向ける部長さんが詰問する。
『諸君らの状況は知っている。近々、北欧の悪神ロキと事を構えるそうだな。増援も見込めず、大変苦しい状況であると聞いているよ』
「……」
先生たちは苦い表情で押し黙る。既に俺達の状況はお見通しか。
しかし、俺はまだロキのことを報告はしていないのにどこから聞きつけてきた?もしかして誰かの携帯をハックして盗聴していた?考えられるとしたらやはりそれか。
壁に耳あり障子に目あり、あらゆるインターネットを覗くことができ、ドアを介してどこにでも行けるこの人にとって人のプライバシーや秘密などあってないようなものだ。
そんな俺達の様子をざっと見渡すと、奥のテーブルにひょいっと腰を下ろす。
『此度の一戦…自分も諸君らに力を貸したい。共に力を合わせ、討神を成そうではないか』
「何だと?」
「な!?」
「えぇ!?」
「!?」
そして投げかけられた驚きの提案に、彼女を知る俺を含めた全員が一様に警戒心の入り混じる驚きの表情を見せる。
ポラリスさんが協力…!?今まで全く表に出るそぶりを見せなかったあの人が今になって、このタイミングで?
どういうつもりなんだ?
解決されない疑問は増えるばかりだ。そしてそれらは解決されることなく話は進んでいく。
「あなたが私たちに協力するメリットは?まさかただで協力してくれるとは言わないだろうし、見返りに何を求めるというの?」
いち早く正気に戻り詰問する部長さんの目は懐疑の色だ。いきなり厳重な結界を突破して現れた、要注意の不審者と見なされて当然のポラリスさん。彼女が敵意なしに協力すると言っても誰も易々と信じてはくれないだろう。
だが、そんな部長さんの問いにポラリスさんがよこした答えはたった2文字のシンプル過ぎる答えだった。
『信頼』
「は?」
『自分が得られるメリット、見返りは諸君らの信頼。ただそれだけだ』
「…ますます怪しいです」
「胡散臭さが増したな」
「下手な訪問販売よりも怪しさ満点ですね」
部長さん達は眉をひそめ、口々に彼女への不信を口にする。見返りが相手の信用だけという胡散臭いにもほどがある発言にはポラリスさんの事情を知っている自分でも同じことを思う。
信頼…?あの人が果たしてそういうあやふやなモノのためだけに動く人だろうか。色々面倒を見てもらっているしいい人だとは思うんだが、イマイチ自分にも人を食ったような態度を度々取り、ある時は熱い一面を見せる彼女についてまだわからないことが多い。
今回も読めない腹の内に一体何を抱えているのか。それを少しでも見極めるために、そしてポラリスさんと繋がりがあるとボロを出さないためにも今は黙って静観に徹するとしようか。
『ふっ、だろうな。流石にそれだけでは諸君らの信用が得られるとは思ってはおらんよ。なら、そちらにとって利になるモノ…例えば、現在進行形で気になる、知りたい情報を提供するのはどうか?それがあれば少しは信用度は増すだろうよ』
そんな俺達の反応にポラリスさんも思った通りだと薄く笑う。
「知りたい情報といやぁ胡散臭いてめえの素性だがな」
『素性なら先ほど全てを話したが?』
「どうかな…まだ隠しているものがあるように思えてならねぇ」
そんなポラリスさんに食って掛かるのは先生だ。疑いの目で、歯車の装甲とスーツで隠れた裏の顔を見透かさんとばかりにじっと見つめる。
俺もポラリスさんの素性は気になることが色々ある、例えばレジスタンス結成の理由とか、元居た世界のこととか。特に後者は頑として語らない。
彼女が頑として語らない過去とは一体何なのか…今の俺には頭の中で想像することしかできない。
『…さて、自分の素性に関してはこれ以上語ることはないが、そうだな…特異点の情報なんてのはどうだろう?』
「特異点だと?」
特異点。そのワードに皆の注意はすぐさま向けられた。
「先日の戦いで聞いたな」
「確か、ネクロムが言ってたやつか?俺が特異点だどうだって…」
今の凛が固執するイレギュラーである俺、そして特異点である兵藤。彼女の口ぶりからグレモリー眷属も邪魔になっているようだが中でも俺達二人が際立って邪魔な存在になっているらしい。
先生がアスタロトの一件以来調査を進めてきてはいたが全く手掛かりを得られなかった。その情報を、彼女は握っている。
『その特異点で相違ない、自分はその全てを知っている。気にならないか?どこの組織も神話勢力も持っていない情報、それを目の前にいる自分が知っていて実質タダで見返りもなく提供してもいいと言っているんだ』
それぞれの反応を見て、抱える興味をより煽るような物言いでポラリスさんは言う。
「…聞かせてもらおうか」
目を瞑って数秒の逡巡の後、先生は返答する。
「アザゼル、奴を信じるというの?」
「奴の言う通り、どの勢力も特異点とやらの情報を持っていない。思いがけずようやく見えた手掛かりだ。話半分でも聞いておきたいと俺は思う」
「部長、俺もあいつの話を聞いてみたいです。あいつの言う特異点が何なのか、俺は知りたい」
ポラリスさんの話に乗る先生に兵藤も続く。それを静観する俺も内心で二人の意見に同意を示す。
特異点について知らないのは俺も同じだ、全員が集まったこの絶好のタイミングで特異点の情報を知っておきたい。それに、この情報の内容によってはもしかすると凛の詳細な目的に近づける手掛かりになるかもしれない。
だとしたら、ここで聞かない手はない。
「イッセーも…あなたがそう言うなら、私も聞くわ」
警戒している部長さんも兵藤の意思を受け、ようやく首を縦に振る。
話はまとまり、再び自然と注目が奥のテーブルに腰を下ろすポラリスさんに集まる。
『意見は揃ったようだな、よかろう。では心して聞き給え、遍く世界の真理をな』
仮面の裏で、意味深に彼女が笑んだ気がした。
ちなみに素顔を出さない、喋り方を変えているのはまだ本当の意味で腹を見せていない、協力しているわけではないことを暗に示していたり示さなかったり。
次回は解説回。物語の根本について触れます。
次回、「特異点」