ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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今回は解説回です。今回を入れて3話でロキ戦に入ります。

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第79話 「特異点」

『まず諸君らは、並行世界とバタフライエフェクトをご存知か?』

 

如何にも思わせぶりな前置きから解説が始まって早々、投げかけられた質問は全く別の単語だった。

 

「ばたふらい…?えっと…蝶の効果?遊〇王の話か?」

 

「いや違うから」

 

ここで安定の頭が足りてない様子を見せる兵藤。確かに効果のことをエフェクトと言うキャラもいたけど違うぞ。

 

「昔読んだSF作品で聞いたことがあるよ。蝶の小さな羽ばたきがやがて竜巻になる、だったかな」

 

「私も木場君と同じです」

 

「うちの部下にSFオタクがいてな、俺はそいつから聞いたぜ」

 

反対に理解を示したのは木場と会長さん、そして先生だった。

 

堕天使のSFオタクとかいるのか。だがそもそもグリゴリが欲を持って堕天した天使たちの集まりだ、そういうキャラの濃い人、マニアやオタクと呼ばれる人種がいても何らおかしくはない。事実、そのトップが神器マニアなわけだし。

 

『知っている者も数名いるようだが、説明しておこう。バタフライエフェクトとはざっと言えば些末な出来事が些細な出来事の連鎖を繰り返し、やがて大きな変化になるという事象。他世界解釈で言うとバタフライエフェクトが並行世界というあり得るかもしれない可能性の世界を生み出す、あるいは未来を大きく変えてしまうというのがSF作品の通説になっている理論だ』

 

「あり得るかもしれない可能性の世界……」

 

本題に入る前にいきなり難しい話になって来た。解説のためにこんな難しい話から始まるとは特異点とは一体どんな存在なのだろうか。

 

『そうだ。あくまで仮の話だが、並行世界を例えるなら…』

 

おもむろに立てたポラリスさんの指が紫藤さんを指す。

 

『紫藤イリナがグレモリー眷属の『騎士』に転生し、逆にゼノヴィアがミカエルのAに転生した世界』

 

次にアーシアさん。

 

『アーシア・アルジェントがディオドラ・アスタロトの計画通りに奴の眷属になった世界』

 

そして今度は兵藤へ。

 

『兵藤一誠が赤龍帝でなく白龍皇になる世界、だろうか。実際にあるかどうかはさておきだが』

 

あり得たかもしれない可能性の世界。それを示された兵藤たちの表情に複雑なものが浮かび上がる。例に挙げるポラリスさんよりも本人たちの方がより考えただろう。

 

もしも自分があの時違う選択肢を、道を歩んでいたら。IFの先にある結末が現実よりもいいものであれ悪いものであれ、誰もが一度は考えることだ。俺だって日常の些細な失敗からあの時ああしていればと考えたことは数え切れないほどある。

 

だがどれだけ過去を思い悩んだところで過去を変えることはできない。あの時に戻ることはできず、自分達にできることはただ今と言う時間を進み続けることだけなのだから。ここにいる者はそんな過去に踏ん切りをつけて、あるいはつけようとして今を進んでいる。

 

「…特異点の話をするんじゃなかったのか?」

 

『そうだ、今まさに特異点の話をしているのだよ』

 

話が見えてこないゼノヴィアは胡乱気な視線を送る。

 

『今話したバタフライエフェクトによる世界の分岐……それは間違いだ。バタフライエフェクト程度で世界は無限に分岐し、並行世界は生成されない。世界は歴史上に登場する人物のような強い運命力を持った一握りの人間の行動、選択によってのみ分岐するのだ』

 

「強い運命力…?」

 

『あくまで例えだ。自分も運命力とは如何なるものかということには辿り着いていない。その解明不能な、類まれなる運命力を持つ一握りの人間こそが特異点だ』

 

「…なるほど」

 

歴史上の人物の選択というのはつまり、歴史で例えるなら織田信長が明智光秀の裏切りに合わなかったら、だろうか。

 

信長は本能寺の変が起きた時点で天下統一へとかなり近づいていた。もし彼がまだ生きていたら、日本の歴史は自分の知るモノから大きく変わっていたに違いない。この特異点の説で行くと、信長が天下統一を果たした世界線があるということになるのか。

 

『並行世界と特異点についてわかりやすく例を挙げようか。特異点Aが特異点Yと戦ったとする、そこでどちらが勝利するかわからないタイミングで両者の運命力は世界を二つに分岐させる』

 

「…なんでAとYなんだ?」

 

何気なくツッコミを入れる兵藤。確かに普通はこういう場合だとAとBなのでは?もしかして、実在の人を指していたりするのか?

 

『特に深い意味はない。特異点Aが勝利し、Yがいなくなった世界。逆に特異点Yが勝利してAがいなくなった世界…これが並行世界だ。兵藤一誠、君も今までの戦いを通していくつもの並行世界を生み出してきたはずだ』

 

「俺が並行世界を…?」

 

兵藤が生み出した並行世界…例えば禁手に至れず黒歌に敗北したり、覇龍から戻れなかったり、あるいはそもそもの話レイナーレに目を付けられ無かったら、とか?

 

『そうだ。本来、時間の流れには強力な修正力が働く。故に大抵の運命は過程は異なれど最終的に辿る運命は変わらない。しかし特異点の運命力は時にその修正力を凌駕し、良い形であれ、悪い形であれ未来を改変する』

 

迎える運命は変えられないってつまり、漫画で死ぬと決まっているキャラはどれだけ頑張っても死の運命から逃れられないみたいなものだ。でもそれが特異点の運命力があれば、それすら変えられる、つまり生存ルートを切り開ける。

 

話を聞けば聞くほど、考えれば考えるほど特異点が主人公みたいな存在に思えてくる。道理で兵藤が今まで皆を救ってこられたわけだ。だがそれも特異点の運命力だけじゃなく本人の意思があったからこそだろうが。

 

「…まるで、究極の羯磨《テロス・カルマ》みたいだな」

 

『テロス・カルマに限らず、この世界の特異点は神滅具持ちに多いだろう。事実、兵藤一誠がそうなのだから』

 

先生がぼそりと言った神滅具の名前。13番目と忌み嫌われる神滅具、因果律を操作しあり得ない出来事を引き起こす能力を秘めた神器だ。

 

「うーん…話が難しすぎて全然わかんねえ」

 

「私も同感だ」

 

一方目下話題に上がっている兵藤、そしてゼノヴィアは難しい理屈を並べられて頭がパンクしていた。

 

眷属内でも猪突猛進でおバカキャラに定評がある彼らが話についてこれなくなるのは当然と言えば当然か。俺でも話の難解さに少し混乱しそうになっているのだから。

 

『恐ろしくかみ砕いて言うなら、ゲームや漫画の主人公のような存在だ。無論この世界はゲームでも漫画ではない。荒唐無稽な話だが、それは実際にこの世界に存在する』

 

「ゲームの主人公…なるほどわかった」

 

「漫画の主人公だな、最近読んでるからわかるぞ」

 

そんな彼らにポラリスさんは苦笑しながらも現代っ子の兵藤にはどストライクな例えをしてくれた。ゲームの主人公か、難しい話を一気に分かりやすくしてくれるいい例えだ。

 

「僕も納得です、つまり特異点はギャルゲーやエロゲーの主人公なんですね」

 

「「「……」」」

 

そんな中ギャスパー君の何気ない言葉で一瞬場が凍り付いた。停止の邪眼は一切使っていないはずなのにみんなの表情が固まる。

 

いや、いきなりあの話からギャルゲーに繋げるとは誰も思わないよ。あんな壮大過ぎて訳が分からなく話をギャルゲーやエロゲーの一言でまとめ上げてしまうのか…。

 

凍り付いた雰囲気を、んんとポラリスさんは咳払いで溶かす。

 

『……その解釈で概ね間違いない。とどのつまり、特異点とは決められた未来を改変しうる存在。世界の運命を握り、救世主にも破壊神にもなりうる存在なのだ』

 

「未来を変える存在…」

 

「俺ってそんなすごい奴だったのか……?」

 

「すごいな兵藤、お前救世主になれるんだってよ」

 

今度から我が救世主とでも呼んだ方がいいか?

 

「ちなみにだが、その情報の出所…お前はどうやってそれを知った?こんなSFじみた壮大な話、まるまる信じろと言うのは無理な話だ」

 

纏まろうとした壮大な特異点の話に待ったをかけたのは先生だった。

 

『この特異点理論は量子力学と他世界解釈を研究する北アーカム大学のカール・ワイバーン教授が提唱した学説だ。最も、その特異点の実在を証明できずただの戯言として埋もれた説だが…自分はその実在を確認した、それだけのこと』

 

「…カール・ワイバーンって誰?」

 

『詳しくはお手持ちの端末で調べるといい。異形と関わりのないただの一般人だが、中々に面白い経歴を持っている』

 

あとで調べておくとしよう。カール・ワイバーン教授、ね。中々にかっこいいファミリーネームを持っている人だ。

 

「一つ聞かせて頂戴。あなたはイッセー以外の特異点も知っているのかしら?」

 

『無論、既に10人以上の素性は割れている』

 

部長さんの質問から返って来た答えはこれまた驚愕のものだった。

 

「10人以上!?」

 

その一握りの人間を、そこまで特定していたのか!?一体どうやってそれを特定できたか気になるところだが…この質問は今聞いても答えてくれない気がするな。

 

「その名前は?」

 

『この場でいる者なら…兵藤一誠』

 

「それは知ってるわ。他は?」

 

『…リアス・グレモリー、アザゼルだな。その他にもヴァーリ・ルシファー、サイラオーグ・バアル、デュリオ・ジェズアルド、曹操、幾瀬鳶雄、神崎光也等々、といったところだ』

 

この場にいる者から、名前だけなら聞いたことのある有名人が複数人その名を連ねる。

 

サイラオーグ・バアルは既に兵藤たちは若手悪魔の会合で顔合わせ済みだったか。俺だけはそれに参加できず、ゲームの映像で見たことはあっても直接会ったことはない。

 

デュリオ・ジェズアルドは教会の最強格のエクソシスト、幾瀬鳶尾はグリゴリのエージェントらしい。どちらも神滅具使いで片や上位の神滅具を所持し、片や生まれつき禁手に至っていたという化け物だとか。

 

「私も特異点なの…?」

 

「俺とうちの鳶雄もか。なら、俺はあのネクロムに狙われる側ってことだ」

 

まさか先生と部長さんもその特異点だったとは驚きだ。あのヴァーリも…だがあいつは赤龍帝の兵藤がそうだから当然そうだろうということで納得はいく。

 

ところで何か知らない人の名前もいたんだけど。神崎光也って誰?ライダー史上最も迷惑なお兄ちゃんの親戚か?それに曹操って三国志の人、つまり故人だよね?何でそんな人の名前が挙がったんだ?

 

『そうなるな、特異点でなくとも奴らにとって君たちは邪魔な存在だからな。そしてこれだけは言っておこう、特異点は近しい者の運命に作用し、特異点でない者をさらなる特異点へと覚醒させることもある…それが結果的にいい方に繋がるかは別だが』

 

兵藤が特異点ということはつまり、他のオカ研メンバーも兵藤と同じ特異点になる可能性があるということだ。そして特異点になるということは、凛に狙われやすくなることでもある。

 

…しかし何故ポラリスさんはその特異点を重要視し、凛はそれを敵視するのだろうか?それだけが解せない。

 

特異点が未来を変える存在であり、それを求めるということはつまりポラリスさんの真の目的は未来を変えることか?だとすれば、ポラリスさんが変えたいと思う未来とは?そしてポラリスさんが特異点を利用して求める未来とは一体?

 

それだけじゃない。竜域とやらの滅亡をもくろむ凛が未来を変える存在である兵藤を排除しようとすることは…まさか。

 

「以上の話とネクロムが未来を変えうる特異点を狙っていることから推測するに、彼女には変えられるとまずい未来があるということでしょうか」

 

「そうか!なら、奴らはもしかすると未来のことを知っているのか…?」

 

いち早く情報を整理し、さらなる真実へとたどり着こうとしているのは顎に手をやり思索する会長さんだ。

 

未来のことを知っている…あ。

 

その時、俺の中で合点が行った。凛が俺をイレギュラーと呼んでいることに。元々俺は存在するはずのない存在だ、彼女が未来を知っているならその未来に特異点以上の変化を与える、そもそもいるはずのない俺を特異点ではなくイレギュラーと呼ぶのもわかる。

 

そうなるとやはり、会長さんも考えたようにこの世界の未来は彼女にとって都合のいいものに確定している…?

 

「あなたはネクロムのことについても何か知っているのかしら?」

 

『質問が多いな。答えても良いが、今我々が対処すべきなのはロキであってネクロムではない。それについては後回しにした方がよいと自分は考えている。老婆心で言うが正直な話、ここから先の話は君たちの不安を大きく煽ることになる』

 

…ポラリスさんがそこまで言うほど、今の凛は危険人物なのか?自分の妹をそう言う風には思いたくないが、最近本当に妹なのかと疑問に思うこともある。

 

しかし願わくば、どんなに変わっていたとしても自分の妹であってほしいと思う。本当に凛なら、かつての彼女を取り戻しこの世界でまた平穏な生活を送ることができる可能性が少しでもあるということでもあるのだから。

 

「それだけ奴等が危険な存在だと言うんだな?」

 

『そうだ』

 

先生の確認にこくりと頷くポラリスさん。

 

前に会った時は凛がオーフィスとグレートレッドが守るエネルゲイアとやらを滅ぼすとか言ってたな。そのエネルゲイアを滅ぼすということはつまり、ゆくゆくは守護しているというオーフィスとグレートレッドの打倒も視野に入れているのか?

 

「…そうね、ならロキを倒したその時に聞かせてもらおうかしら」

 

『わかった…ざっと特異点に関してはこれくらいだな』

 

「OK、特異点がどんなものかは十分理解できた。だが、その話が事実であるのとお前を信用するのはまた別だ。本当にお前は俺達の味方なのか?」

 

ポラリスさんの情報を受けてなお先生はまだ警戒を解かない。そんな先生にポラリスさんは頭を軽く押さえ、大きくため息を吐いた。

 

『そうか……なら仕方ない。自分を信用するに足る事実を教えてやろう。数か月前のコカビエルの反乱についてな』

 

「…何故このタイミングでその話を?」

 

『まあ聞け。堕天使幹部のコカビエルは紀伊国悠が倒したわけだが…どうやって、心が折れて一度は逃げ出した彼がまた戦場に戻ってこれたと思う?』

 

「どうって、それは……」

 

ポラリスさんの問いかけ。その答えに誰よりも早く至った…というより知っている俺の背筋にすっと冷たい物が走る。

 

まさか、あの話を自分との関係を秘密にするように言ったポラリスさん自身が暴露しようというのか。一体どういうつもりなんだ!?

 

「それは…!」

 

『その答えはただ一つ。あの時、紀伊国悠を立ち直らせ戦士としての自覚を与えたのは自分だ』

 

「何だと…?」

 

「え…!?」

 

「悠、お前あいつのことを知っていたのか!?」

 

明かされた真実によりこの場に衝撃が満ちる。当然ゼノヴィアから詰問が飛び、皆の注目が一身に注がれる。

 

…彼女が何を考えてこの場でこの事実を言ったかは知らない。今までのように有耶無耶にし、逃げるという選択肢はないようだ。

 

…ここは、話すしかない。

 

腹を決めると動揺を静め、落ち着くためにも一度瞑目し大きく息を吐く。そして、気持ちを整えてからはっきりと答えた。

 

「…ああ、事実だ。俺はあの時この人に会って助けられた。この人がいなかったら俺は立ち上がれなかった」

 

それでもなお残る内心の動揺を必死に抑えながらありのまま事実を答える。

 

「どうして今まで彼、かしら…?のことを黙っていたの?」

 

「…俺は助けられた身です。向こうが他言無用にして欲しいということだったので恩を返すつもりで黙っていました。…ごめんなさい」

 

続く部長さんの問いにも嘘偽りなく答え、本心からの謝罪の言葉を付け加えた。

 

そう、俺は何も嘘入っていない。ありのまま全てを答えた。

 

…レジスタンスのことまで踏み込んでいないのは、まだその時ではないからだと考えていいんだな、ポラリスさん?

 

『これでわかったか?自分にとって、君たちは潰れてもらっては困る存在でな…つまり、自分が諸君らを救うのは今回で二度目だ』

 

このやりとりにどこか満足そうに一度頷くと、ポラリスさんは頭部のアンテナをさらりと撫でた。

 

…もしかして、俺を助けたのはこれのためでもあるのか?グレモリー眷属の仲間である俺を過去に助けたという事実があれば皆の信用を得る助けにもなる。はてさて、一体この人はどこまで先を考えて動いているのやら。

 

「…色々思う所はあるけど、協力を受けてもいいんじゃないかしら」

 

「戦力が不足している中、猫の手も借りたいところですわ。それがどこの誰とも知れない野良猫の手だとしても」

 

「俺も信じていいと思います」

 

「…思う所はあるが、悠を助けてくれたなら信じても良さそうか」

 

このカミングアウトが功を奏したか皆もポラリスさんの力を借りるという方へ話がしっかりと向いた。グレモリー眷属の面々はほぼほぼ彼女との共闘を受け入れたようだ。

 

そんな皆の様子に少し胸がすっとした。少なくともポラリスさんが信用に足る人物であると皆が思ってくれたからだ。これなら、来たるべきその時のカミングアウトの衝撃も和らげるクッションになりそうだ。

 

「それでも、アーシアさんを助けたヴァーリと信頼度は同レベルと思いますが」

 

しかしポラリスさんのカミングアウトで彼女を信じるという方に向かいつつある中でも会長さんの評価は手厳しい。

 

この反応も仕方ない。俺を過去に助けたとはいえ、まだ得体の知れない奴と言う域を抜け出ていないのだから。

 

明確に敵対してきたテロリストのヴァーリとは過去の遺恨などはないという点で違うが、まだ腹の底が見えないというのがネックになっている。

 

「だが一先ずは信じてみることにしよう。…しかしだ、肝心の実力が分からないんじゃあこちらも上手く戦えん」

 

この中で最も立場が上で最終的な判断を下す立場にある先生もポラリスさんの参戦にOKを出すが、まだ足りないと難しい顔をする。

 

『実力なら心配無用だ。そうでなければ自分から強大な力を手にした悪神と戦おうなどとは言わんよ』

 

「…そうだな。そもそもここの結界を破って来るレベルだ、それについては聞くまでもないか」

 

そんな先生に机の上に腰を下ろす彼女は自信交じりに苦笑を漏らした。

 

ポラリスさんの実力…基本的に模擬戦はイレブンとやっていて、ポラリスさんとは片手で数えるほどしかしていない。故に、彼女の実力、戦闘スタイルに関しては未知の部分が多い、というよりほぼ未知だ。

 

一応手合わせした時は全てヘルブロスに変身していたが、様々な世界を巡ったということから身に着けただろう異世界の技や武器を戦闘で使っている所は見たことがない。さらに言えばヘルブロス以外に変身したところもだ。本人曰く、使えないことはないとのことだが…。

 

『さて…まだ自分を不審に思う者も多かろう。だが、協力するからには必ずや諸君らの信頼を得るだけの戦果を上げて見せる。夜分遅くに失礼したな』

 

突然ポラリスさんが姿を現し、突然始まった深夜の緊急会合。それがようやく終わりを迎えポラリスさんがドアへとかつかつと歩む。

 

「……」

 

皆から内に隠しているであろうモノを探るような視線を最後まで浴びながらみんなの前を堂々と横切っていくとついにはドアノブを捻り、ガチャリとドアを開けて外に出た。

 

特異点の情報、コカビエルの一件での暴露、この深夜の一時間の間に色々あり過ぎて混乱している。

 

まだまだあの人には色々聞かなければならないことがある。もう少し夜更かしすることになりそうだ。

 

 




取り敢えず今回は助けたことがあるという事実だけをカミングアウトしました。具体的な関係等についてはまた後に。スーパーポラリスタイムはもうちょっとだけ続くんじゃよ。

カール・ワイバーン教授が出る予定は今のところないです。正直に言って原作であんな感じだからストーリーに絡ませづらい。

次回、「噛み合わない青と白」

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