Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
5.ビリーザキッド
6.ベートーベン
7.ゴエモン
9. リョウマ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
〈挿入歌:Just the beginning(仮面ライダーウィザード)〉
最初に動いたのはヴァーリだった。ロキのセリフが終わったのと同時に物凄いスピードで白光の尾を引いて空へ舞いあがり、ジクザグな軌道で突撃をかける。
「俺も…!」
遅れて兵藤も背部のブースターから赤いオーラを生み出し、それを推進力にして地上から猛スピードで追随する。
次第に遠ざかっていく二人の背中。戦闘開始早々、完全に出遅れてしまい俺は一人になってしまった。
「…まずは試してみるか」
二人に置いてけぼりにされた俺は手に握る槍を一瞥し、深呼吸する。
呼吸を整え、戦いを前に感情、闘志に揺れる精神を一度凪にすることで集中力を高めるためだ。
「ふっ!」
そして神槍に意識と全身を流れる霊力を一気に集中させる。全身のラインを伝って流れていく霊力の光に槍は次第に包まれ、その力を呼び覚ます。
「我の相手は二天龍…相手にとって不足なし!」
その間にもロキとの距離を消し飛ばす二天龍の二人に好戦的に笑うと周囲に幾つも魔方陣を生み出し、そこから緑光の帯が飛び出す。
攻撃を認め、すぐに軌道を変える二人。それに応じて光の帯も動き二人を追いかける。追尾性のある攻撃魔法、それもおそらく悪魔が苦手とする光属性のモノだ。
「初手から仕掛けてくれるな…!」
空を縦横無尽に駆け巡って回避しつつ、ヴァーリは魔力を放って迫りくる魔法を打ち落とす。一方兵藤は戸惑いながらも光の雨を躱していく。的を外した魔法は地面に注ぐや否や爆発を起こし土煙を巻き上げる。
「火中の栗を拾う…いや、火中の悪神を討ちに行くか!」
見ているばかりではいられない俺も降り注ぐ光の雨の中へ飛び込み、雨の間を縫って馳せる。途中でいくつかの光が俺に反応して向かってくるが、グングニルをぶつけて内包するオーラを利用し強引に軌道をそらして事なきを得る。
「躱してても埒が明かねぇ…なら!」
そんな中、しびれを切らす兵藤が不意にブースターを吹かし、ロキ一直線に猛進した。途中光の雨を受けようとお構いなしにただひたすらに進む。
そしてばさりと龍の翼を広げて飛び立ち、真っすぐロキに拳を放つ。
「ウラァァァァァ!!」
気合の入った一撃をロキは前面に魔方陣を展開して防いだ。互いのオーラのぶつかり合いによりバチバチとスパークが飛び散る。
「いい拳だ。戦士としては上々」
「まだまだぁ!」
〔Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!〕
ゴリ押しせんと鳴り響く籠手の音声、高ぶる龍の力、それに耐えかねた魔方陣がガシャンとガラスが割れるような音と共に崩れ去る。
続けざまにロキの頭上から白い流星が降り注いだ。流星と見まがうほどの美しい光を纏うヴァーリがロキの肩口目掛けて飛び蹴りを炸裂させ、ド派手に大地に叩きつけた。
岩が砕け、大きく土煙が舞い上がる。もちろん奴がこのまま倒れるはずがない、俺は奴が動く前にとすぐに土煙の中心部へと突っ込む。
土煙に入ってすぐ、視界が悪いながらも立ち上がろうとする奴の姿は視認できた。撃つべき攻撃はただ一つ。
「神槍を…」
〔ダイカイガン!スペクター!〕
さらなる霊力が槍に込められ、青と金色の眩い光を放つ。
「!」
「叩き込むッ!!」
〔オメガドライブ!〕
一息にて迅雷の如くロキ…の世界樹に侵食された右腕目掛けて突き出す。
「ぬぅ!!」
世界樹とグングニルがぶつかったインパクトで一瞬にして周囲の土煙が晴れる。
「グングニル…いや、レプリカか!わざわざ宝物庫から引っ張り出してきたな…!」
俺の得物を見て、忌々し気にロキは言う。このまま攻撃を受けてくれるはずもなく、奴は全身から緑色のオーラを放ち、至近距離にいた俺はあえなく吹き飛ばされてしまった。
「おわっ!」
宙でどうにか態勢を立て直し、ずざざと軽く土煙を起こして血を滑りながら無事着地する。
「私の腕を破壊しようという魂胆か。腕を傷つけるには十分、だが破壊にはまだ不十分だ」
傷ついた箇所を撫でるロキ、その横合いから息をつかせる間も与えまいと飛び出す赤い影が一つ。
「おりゃぁぁ!!」
現れたのは今回のもう一つの秘密兵器、雷神トールの戦槌ミョルニルを掲げ、ロキ目掛けて降り被らんとする兵藤だった。ミョルニルは渡された時の大工の金づちのようなサイズではなく戦槌らしい大きさに変化している。
奴はその姿を認めるや否や一笑に付し、スピードはあれど一直線で動きを読みやすいその突撃をひらりと身を翻して回避した。
回避された兵藤は相手を失い、勢いをそのままミョルニルを何もない大地に叩きつけた。ゴっという鈍い音と共にたった一撃だけで大きなクレーターができあがった。
「あれ…?トールの雷が出ない?」
「今度はミョルニルのレプリカ…そこまでして私を止めたいということか、オーディン、トールよ」
「そうだ、グングニルとミョルニル。俺達三人と二つの武器でお前を止める!」
〈挿入歌終了〉
ミョルニルの攻撃に首を傾げる兵藤、ヴァーリ、そして俺。ロキの相手を任された3人でさっとロキを取り囲む。しかし一切余裕を崩さない奴は嘲笑を見せた。
「だが託した相手が悪かったな。その槌はただ力があれば使えるわけではない。純粋で清らかな心の持ち主こそが神の雷を発現させられるのだ、おっぱいドラゴンなどという下劣な名で呼ばれる貴様なぞに扱えるはずがない!」
「うぐ…そういうことかよ…」
正論のあまり兵藤は言葉もなかった。いっそ交換すればどうにかなるか?グングニルは使い手があのキャラだから清らかな心でなければ使えないなんて縛りはなさそうだし。でも交換したら交換したでグングニルと同じ様に俺が100%力を発揮できるわけでもない。
「貴様らの考えの浅い作戦に付き合うまでもないな。フェンリル、お前の出番だ」
どこか落胆した調子でセリフを吐いて手をさっとあげると、それに反応してフェンリルが一歩動き出す。
「今よ」
待ってましたとばかりに出されたのは部長さんの短い合図。そしてにやりと笑う黒歌がバッと両手を広げ、周囲に大きな魔方陣を展開する。
黒歌を中心に妖し気に輝く魔方陣、そこからズンと音を立ててルーン文字が刻まれた巨大な鎖がいくつも現れる。
今回対フェンリル用に用意した北欧神話に伝わる魔法の紐、グレイプニル。紐と言うよりかは見た目は完全に鎖なそれは大きさゆえに今回の戦いに備えて強化を施して送られてきた後、黒歌が魔法を使って別空間に保管していた。
「行くぞ!」
「はい!」
「ええ!」
「おうよ!」
戦場に現れた鎖をバラキエルさん、タンニーンさん、メリィさん、ロスヴァイセさん、ポラリスさん、そしてオカ研とヴァーリチームのメンバーたちが鎖へと近づき持ち上げると、フェンリル目掛けてぶんと放り投げる。
巨大なグレイプニルは宙に投げ出された瞬間、鈍い輝きを放ちまるで意思を持ったかのようにくねり、獲物目掛けて俊敏に忍び寄り食らいつく蛇のようにフェンリルの下へと殺到した。
「グレイプニルを強化したのか…!」
そう、今回のためにドワーフが作り出したグレイプニルをダークエルフの長老が強化してくれたのだ。
宙を走る鎖はあっという間にフェンリルの四肢、胴、首に絡みつき拘束する。脱出せんともがくフェンリルだが頑丈な拘束に容易に動くととすら敵わないようだ。
「GRRR!!」
「これにてフェンリル捕縛完了だ」
「効果はてきめんなようね」
それでもなおフェンリルが牙を剥き出しにて怒りを露わにガチャガチャともがく。一つ目の作戦の成功に皆の間に安堵の息が出た。
「にゃはっ、犬っころには首輪がお似合いにゃん」
「ロキを倒したらデュランダルの錆にしてやろう」
このままフェンリルを拘束しておき、ロキを片付け終わったら全員で一斉攻撃をかけて倒すのが対フェンリルの作戦。自由を奪った状態で殴るなんて…と思わないこともないが伝説の魔獣が相手ならそうも言ってられない。
神をも殺せるという大きな戦力を失ったロキ。奴の表情に動揺が走るかと思われたが…。
「ふっ、そう来ると思っていた。今の私よりもまだフェンリルが脅威度は上かつ対策を取りやすいだろうからな」
微塵も焦る様子もないロキはおもむろに手を振るう。するとロキの両隣の何もない空間に波紋が走る。波紋は何度も起き、その奥から何かの影が見えた。
あの現象は間違いない、奴が現れた時と全く同じだ。まだ奴は何か策を持っている。
予感は的中し、繰り返す波紋の中から勢いよく二頭の狼が飛び出した。出現した狼たちはロキの傍に降り立つと俺達に鋭い牙と殺意を向ける。
「GRR!」
ロキが召喚した二頭の狼。見た目はフェンリルをそのまま小さくしたような感じだ。美しい銀毛、雄々しい角、そしてフェンリルと遜色ないレベルの凶暴さ。
フェンリルとそっくりな見た目だが、もしやフェンリルのクローンだろうか。最強とも言われる魔獣のクローンが二体など冗談もいいとこだ。冗談にしては笑えないが。
「あれはスコルとハティ…!」
ロキやフェンリルと同じ神話出身のロスヴァイセさんは奴が新たに呼び出した手駒について知っているようだ。
「何だあれ、フェンリルの子供か!?」
「そうだ、神話によれば狼に変えられた巨人族の女とフェンリルの間に生まれた子らしい」
冷静を保つヴァーリはあの狼について話してくれた。
巨人を狼に変えて狼の子供を産ませるとは、悪神と言うだけあって趣味が悪い。
「白龍皇は赤龍帝と違って博識だな。スペックはフェンリルよりは劣るが、侮ればすぐに首の根を掻き切られるぞ?そして…」
突然身をかがめ、背に生える6本の木の根を空に向けるロキ。空に向けられた木の根からはメキメキと軋むような音が立つ。謎の行動に自然と全員の注目が集まった。
「ぬぅ!」
一声と共に木の根から空へと無数の小さな何かが放出される。目を凝らして見ればそれは植物の種のようなものだった。やがて種は空中でメキッ、ぐちゃと聞くに堪えない音と共に割れて膨れ上がり、変形して巨大な虫へと形を変えた。
「な…」
「なんだこのデカい虫は!?」
しかもそれはただの巨大昆虫ではない。体から草や花など植物が生え、刃のように鋭利になった顎や脚など通常の虫とは明らかに常軌を逸した姿なのだ。
「…キモイ」
「あまり見たくないですぅ……」
「ルフェイがいなくて安心しましたよ」
ただでさえ女性が苦手とする虫にグロテスク、化け物の要素が加わったそのフォルム、そしてそれが空中や地上に無数に出現する。
クワガタ、カマキリ、バッタ、クモ、などなど。数え出したらキリがない。奴の作り出した嫌がらせのような光景に女性陣はあからさまに気分の悪そうな顔をする。
「ユグドラシルの真理に触れかけた時手にした大樹の眷属…名を『プラセクト』。さあ、汚らわしき悪魔どもの血を啜れ」
ロキの指示と共に奇声を上げて前進するプラセクト達、それと共にスコルとハティも動き出す。群れて迫りくるそれらを前に、女性陣達も嫌悪感を押し殺して交戦に備える。
徐々に狭まる両者との間、オカ研やヴァーリチームたちの中からふと一歩進み出た者が一人いた。
『そろそろ自分の動く時か』
金色の歯車のパーツが嵌めこまれた紫色の銃にバルブのついた短剣が装着された武器、ネビュラスチームガンライフルモード。そのトリガーガード部に人差し指を通して引っ提げるのはレジスタンスのリーダー、ポラリスさん。
先頭に立つ彼女は皆の視線を背に受け、大胆不敵に言い放つ。
『諸君らに一つ、自分の力というモノを理解してもらおう』
次回は軽ーく無双的なものをやります。お初の技も色々使うかも。
次回、「星・輝・乱・舞」