それと思ったより長くなったのでいつも通り分割しました。
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
5.ビリーザキッド
6.ベートーベン
7.ゴエモン
9. リョウマ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
コートのピアノの鍵盤のようなデザインをした胸部をなぞるように撫でる。するとさながら本物のピアノを弾いたかのようにメロディが発せられ、それは霊力を伴って光る音符の形となって実体化する。
そして、それはただの霊力の塊ではない。
指揮者のように両手を軽やかに振るって見せる。それに応じて浮遊する音符は宙を滑るように流れ、その動きは指揮者たる俺の思うがままに動きプラセクト達の下へ向かう。
「フォルテ」
その言葉で音符は弾け飛び、それを受けたプラセクトの甲殻もまたひしゃげた。この攻撃の前ではどんなに硬い装甲や鎧に覆われた相手だろうと、防御は意味を成さない。
ベートーベン魂が放つ攻撃の正体、それは特殊なエネルギー振動波である。胸部のピアノ風のデザインになっている衿には小型の音響装置が内蔵されており、そこから発せられる振動波が音楽と霊力を帯びて目に見える形になっているのだ。
この攻撃は振動波であるが故に敵の装甲だけでなく、内部にも攻撃を届かせることが可能になっている。また衿は振動波の出力調整の機能も備わっている。
放出された振動波は『シンフォニーフード』の機能により、指向性を持って指揮者のイメージや指の動作により自由自在にコントロールされ、敵を翻弄しつつ華やかなビジュアルに反した強烈な一撃を喰らわせることができるのだ。
続けて、旋律は再び奏でられる。五線譜に乗った音符たちが宙をうねり、視覚的にも聴覚的にも彩った。
それは俺の指揮の下、聴衆たるプラセクト達に届けられ。
「フォルテッシモ!」
聴衆を打ち砕く。奏でられる旋律は留まることを知らず次の聴衆へと向かう。
「ピアニッシモ!」
旋律は物理的な縄となり、数体のプラセクトを縛り上げる。
即興の演奏会の最中、ひときわ大きな影が降った。ずしんと砂煙と音を巻き上げて現れたのはカブトムシのようなプラセクト。ただし日本で一般的に知られるカブトムシではない、確か中米から南米に生息しているというエレファスゾウカブトに酷似している。
世界最重量と呼ばれるエレファスゾウカブトを模した個体なだけあって大きな図体はもちろん、甲殻も今までの個体と比べるとかなり分厚い。だがその動きは重量に引っ張られているせいで鈍い。しかしその重量が乗った一撃はさぞ脅威になるだろう。
このフォームの力を見るためにも、なるべく能力をフルに使うべき。そう判断した俺は被ったフードの飾り『デスティニーチューナー』を起動させる。チューナーは聞き取ることのできない超音波を発生させ敵の内部構造、そしてそこから導き出される弱点となる部位を把握できるのだ。
超音波を利用した解析機能によって敵の内部構造を知覚した俺は胸の鍵盤をさらりと鳴らし、旋律を生み出す。指揮棒の代わりの指を宙に走らせ指揮するとその動きに旋律は従属し、カブトムシの下へと走る。
「デクレッシェンド」
別に奏でられた旋律は俺の指揮によって次第にそのサイズを小さくしていき、カブトムシの下に着く頃にはやがて人差し指と同じくらいの大きさになった。
そこで再び指を滑らかに動かし、前面に押し出すような動きの後、くいっと指を上げる。旋律は指揮に導かれるまま、甲殻と内側の本体の隙間に滑り込んだ。
「フォルテッシモ!!」
その指揮で甲殻とそれに守られた本体の隙間で旋律は大きく弾ける。重いプラセクトの体がズンと揺れた。しかし内側から攻めても耐久力に優れているらしくまだ健在だ。
まだ届かないというなら、攻撃を延長すればいい。
「そしてフェルマータ」
次なる指揮。フォルテッシモで増幅された振動波が強い音をそのままに延々と発せられ続ける。
ズン、ズン、ズシン。一定のリズムを刻んで揺れ続けるプラセクト、甲殻の裏側から攻撃されやがて甲殻の隙間からブシュッと体液が噴き出す。
「フィーネ!」
それが意味する言葉は楽譜の終止。音楽は鳴りやみ、内側から攻撃を加え続けられたプラセクトは大きく弾け飛んだ。体の大半を破壊され、ようやく戦闘不能になったプラセクトの甲殻の欠片が辺りに散らばった。
それでもまだプラセクトは数体残っている。こちらもそろそろ終幕といこう。
鍵盤に指を走らせ、力強く大胆に旋律を奏でる。さらにダメ押しにとドライバーのレバーを引いて霊力を解放する。
〔ダイカイガン!ベートーベン!〕
「フォルテッシモからのスタッカート!」
〔オメガドライブ!〕
オメガドライブによって増幅し、フォルテッシモで生み出された霊力の音符がスタッカートでいくつも分離し、それらが緩やかに辺り全体に振り下ろす指の所作によって周囲を取り囲むプラセクト達をまとめて一網打尽にする。
取り敢えず周囲のプラセクトを一通り撃破し終えた俺は一息を吐く。
「雑魚散らしにはもってこいだが癖があるな…」
旋律を自由に奏でてそれを思うように操作して攻撃するという眼魂の中でも特に変わった能力。それを使う俺にはもちろん音楽の知識はからっきしだ。先ほどの攻撃も旋律も全て、ベートーベン魂に内包された音楽の情報とサポートがあってこそのもの。
普通に攻撃する分には他のフォームで十分だが、振動波という稀有な攻撃手段が必要になる、活躍できる場面は今後あるだろう。堅牢な鎧を纏い、外からの攻撃を寄せ付けない相手などには有効打になりそうだ。
「さて、早いとこ戻るか」
地面に突き立てていたグングニルを回収し、兵藤たちの下へ向かおうとしていた時だった。
背後でまた息を保っていたプラセクトが一匹、ボロボロになった体をのろりのろりと動かしながら接近する。そして奇妙な方向に折れ曲がった前足をゆっくりと振り上げる。
「!」
後ろでガサゴソという物音に気付いて振り返った時にはその前足は振り下ろされていた。
だが攻撃が届く前に本体たるプラセクトの体がずばんと真っ二つになる。プラセクトの体が分かれ、その背後から姿を現したのはデュランダルとアスカロンを携えるゼノヴィアだった。
突然の登場に俺はマスクの裏で目を見開く。
「お前、もうここまで来たのか!?」
「そうだ、お前一人放っておけるか!」
対する彼女は勇ましい笑みで返す。
まさかこのタイミングで合流するとは思いもしなかった。だが彼女の顔を見れたことで、あの数を相手にする激戦でも無事でいられたという事実を確認できたことに安堵と喜びの念を覚えた。
しかし戦場はそんな喜びに浸れるほど易いものではないし、暇を与えてはくれない。すぐに彼方から羽音と地響きを鳴らして次なるプラセクト達がやって来る。
それを見据える彼女は気を引き締め、二振りの聖剣を構えなおす。
「悠、雑魚は任せてお前はロキを!」
「…頼んだ!」
この場をゼノヴィアに任せ、目の前をふさぐプラセクトを音波攻撃で沈めて道を作って先を行く。
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続くプラセクトと対フェンリル班の戦闘。数は多いながらも彼らの奮闘によって圧倒的な数はすぐに減らされ、優勢に持ち込めそうに見える。
しかし実際はそうでもなかった。プラセクト達の数が一向に減らないのだ。それは皆が戦ったプラセクトを仕留め損なったとかそういう訳ではない。単純な話、プラセクト達が増えている。プラセクト達はどこからともなく湧いては打倒された数を埋め合わせてさらにそれ以上の数にしている。
このままだとジリ貧になってすぐに数で一方的に押し込まれてしまうだろう。如何に皆が実力を持っているといえども無限の体力を持っているわけではない。魔力が尽きれば攻撃の威力は落ち、体力を消耗すれば動きは鈍くなる。
倒しても倒しても湧いて出てくる敵の軍勢にリアスは既に異変を感じていた。魔力攻撃でプラセクトを撃破しつつ背中合わせに戦うリアスと朱乃は言葉を交わす。
「朱乃、敵の数が減らないわ。きっと何か仕掛けがあるに違いないわね」
「ええ、でもこの数じゃこちらもまともに移動できない」
攻撃の合間に会話を挟む最中、耳元の通信魔方陣が起動した。
『聞こえるか、リアス・グレモリー。ポラリスだ』
「ええ、聞こえるわ」
通信を繋げてきた相手はあのポラリスだった。まさかあれほど暴れている彼から通信を寄こして来るとは思いもしなかったので少々驚いた。
『その様子だと無事だな』
「バラキエル?あなたもいるの?」
返事に続いてきた渋さが特徴の第三者の声の主の名を呼ぶ。バラキエルの名に隣で朱乃の表情が僅かに曇ったのは気付く由もない。
『ああ、今私とポラリス、そして君の3人で通信を繋いでいる。ポラリスがどうしても連絡しておきたいことがあると言うのでな』
「連絡しておきたいこと?」
『君たちもプラセクトの異常な数に気付いているだろう?』
ポラリスは早速本題に入る。ポラリス側から聞こえる音に混じる激しい銃撃音と打撃音から向こうもまた一人で激戦を繰り広げていることがわかった。
「そうね、倒しても倒しても埒が明かないわ」
『奴等の体液を採取して特性を解析したところ、自発的に増殖、あるいは再生する性質はなかった。ロキが何かしらの魔法をかけていた様子もない』
戦闘を行いつつポラリスは殺したプラセクトの体液を採取し、それを彼女自身の電脳武器倉庫空間『ウェポンクラウド』を利用して旗艦NOAHに送り、イレブンに解析させていた。
『…なら、どこかから先ほどロキが生み出した個体以外のプラセクト達が送られてきていると?』
『そうだ、恐らくはどこからか増援が送られていると考えていいだろう』
そして解析が完了し、送られてきたデータから彼女はそう結論を下すに至ったのだ。
「…厄介ね」
『我々にはあまり雑魚に構う時間も余裕もない。早急に対応するべきだ』
ポラリスが導き出した結論に両者とも苦い顔をする。一匹一匹は大した脅威ではない。だがそれが大量の群れを作ってやってくるとなれば話は別だ。自分がやられることはないにしてもその対処に時間も、体力も相応に削られてしまう。
『そうだ。そこで一つ考えがある、リアス・グレモリー』
「何かしら?」
『君の所の塔城小猫を借りたい。彼女の仙術で虫の出所を探り、私が単騎で増援の源を潰す』
思いもよらぬ提案に、リアスもバラキエルも目を瞬いた。
『君が単騎でだと?』
『そうだ、飛び入り参加で他のメンバーのようにこれといって決まった役目がない自分ならできる。幸いフェンリルの捕縛には成功しているからな。それにこの数だ、あまり戦力を割く余裕はないしバラキエルは作戦全体の、リアス・グレモリーはグレモリー眷属の指揮官だ。君たちが持ち場を離れて動くわけにはいくまい』
『なるほど、一理ある。君の力ならこのプラセクトの大群を突破するのも訳はないだろう』
と、納得するバラキエル。
『どうだ、リアス・グレモリー。この提案を受けてくれるか?』
そうして再び、ポラリスはリアスに了承を求める。これまでに並べられた彼の言葉はもっともであり、立場的にも、実力的にも彼が適任だ。リアスは一瞬逡巡した後、決断を返す。
「…いいわ。でも小猫の仙術で出所を探るなんてことができるの?」
『奴等は群れ為して来ている。群れの動きの流れを感知できればいけるはずだ』
「そういうことね、わかった。あなたと小猫に任せるわ」
『私も異存はない。君に任せよう』
『感謝する、必ずや元を絶ってみせる』
ポラリスの提案は二人の指揮官の迅速な決断により承諾された。しかしプラセクトの他にもリアスの懸念はあった。
「プラセクト対策はこれでいいとして、ロキが放ったスコルとハティの姿が見えないのも気がかりだわ」
『その点はギャスパー君のコウモリで探らせるべきだと私は考えている』
すぐに対応策を用意したのはバラキエルだった。確かにギャスパーの吸血鬼としての力、自身の体を無数のコウモリに変化させる能力は広範囲の索敵に有効だ。
バラキエルの提案に頷くリアスはすぐに決断する。
「その手があったわね、すぐに連絡するわ」
『よし。では、後は頼んだぞ』
その言葉を最後に通信は終了する。
『これでよし』
通信が切れた後、ポラリスは溜まった疲労を一度リセットしようと息を吐く。
本来ならわざわざ小猫の仙術に頼らずとも自分一人で出所を探って潰すまでできる仕事だった。むしろこうしてわざわざ作戦を立案して実行に移す方が時間のロスにもなる。
だが彼女の目的はただ今回のユグドラシルの力を手にして強大になったロキと言うイレギュラーを潰すだけではない。それを利用してグレモリー眷属たちと協力し、今後を見越して信頼を得るのも大きな目的なのだ。
そのためには、自分の力を見せることはもちろん、なるべく彼らと行動を共にする方がいい。行動を共にし、力を証明するとともに警戒を緩めさせる。
全ては、来たるべき決戦のために。
『さて、塔城小猫は…』
ポラリスが使っているヘルブロスに搭載されているレジスタンス製のOSには予めグレモリー眷属たちやヴァーリチームなどのオーラをシステムに登録しており、混戦であろうといつでも位置を特定できるようになっている。
目的の塔城小猫の位置を捉え、彼女の下へ向かおうと方向転換したその時だった。
センサーの中に、どの反応よりも高速で動く反応が一つ不意に現れた。識別反応はグレモリー眷属の中でも随一の俊足を誇る木場裕斗ではない。フェンリルは今はまだグレイプニルの鎖に繋がれたまま。プラセクトにしては俊敏すぎる反応だ。
『この反応は…』
となれば答えは一つ。ロキが新たに呼び寄せたフェンリルの子供、今だ姿が見えないスコルとハティのどちらかだ。
反応は自分の周囲を囲むように動き回っている。周囲は自分が倒したプラセクトの死骸だらけで見通しは悪い。どこから来るかわからない攻撃に備えて、一段と警戒心を引き上げる。
そして深く息を吐き、五感を研ぎ澄ませる。音を聞く。
走る音が聞こえた。一定の距離を保ちつつ、一周するたびに距離を狭めてくる。
馳せ、狭まり、馳せ、狭まり、馳せ。
『そこか!』
その反応は刹那の内だった。
咄嗟に後ろに倒れるように身を伏せる。それから1秒も足らないうちに死骸と死骸の隙間から飛び出してきたスコルの鋭利な爪をやり過ごし、お返しにと無防備な腹に至近距離で銃撃を見舞う。
「ギャウ!?」
思わぬ銃撃を受けた狼は無様に砂煙を巻き上げて横転する。しかし即座に起き上がるとこちらを深追いすることはなく、また辺り一面に散らばるプラセクト達の死骸の影へと姿を消した。
『一撃離脱…こちらの戦力を少しづつ削る戦法か?』
一連の素早い行動をポラリスはそう評する。数でゴリ押してくるプラセクトも厄介だがあの二頭も厄介だ。急いで作戦を完遂しなければ。
その思いを強くして、彼女は走った。
「うっ…」
塔城小猫は苦悶の声を漏らしながら地に伏していた。
戦いの最中、突如として駆け抜けたスコルにより肩を切り裂かれてしまったのだ。それはポラリスがバラキエルとリアスの二人と連絡を取っている最中の出来事だった。
その存在を感じ取ったのはほんの数瞬前だった。感知はできていたが、その神速に対応することは出来なかったのだ。
「まだ…私は」
ポケットを漁って洒落た小瓶を取り出す。その中に入っているのはフェニックスの涙。フェニックス家だけが生産できる、どんな傷もたちどころに癒すことができる秘薬だ。昨今のテロにより需要が跳ね上がった結果天井知らずに価値も価格も上昇したが、今回特別に作戦に参加する全員に支給された。
瓶のふたを捻って開けた瞬間、彼女の視界が一段明度を下げた。見上げると、そこにはカミキリムシ型のプラセクトが食事にありつこうと咢を開き、木の幹なら容易にかみ砕けるような鋭く強力なあごが彼女に迫る。
「!」
当然彼女は反応する。しかし肩に鋭く刻まれた傷の痛みが彼女の動きを鈍らせてしまった。
回避が可能なタイミングは失われた。そこから先にあるのは避けようのない攻撃。そして、死。
「イッセー先輩…」
彼女の口から、自分を救ってくれた者の名が出た。彼が目下悪神との戦闘中なのは知っている。だが、それでも彼の助けを望まずにはいられない。
どんな絶体絶命の状況でも、仲間を想って立ち上がり続けた彼の勇姿を。
そんな彼女の願いが天に通じたか、突然数十cmまで距離を縮めたカミキリムシがまるで急ブレーキをかけたかのように静止した。
「…!?」
まさかの現象に瞠目する彼女を次に襲ったのは僅かばかりの寒さだった。
そしてその寒さの発生源は目の前のカミキリムシだ。後ろから前へと、パキパキとその緑色に黒いまだら模様の入った体表を氷の膜が覆っていく。氷の膜はすぐにその領域を体全体へと広げてカミキリムシの全てが凍結し、その動きを完全に止めた。
『兵藤一誠でなくてすまない』
氷像と化したカミキリムシの陰からどこか心にない声音ながらも謝罪の言葉と共にひょいと姿を現したのはヘルブロスだった。
一瞬、倒れている小猫の傷に視線をやった。
『無事…ではないか』
「…助かりました」
辞世の句になるはずだった言葉を聞かれたことに若干の羞恥の念と不快感を覚えるが、感情を表に出さないことに長けた彼女はそれを押し殺して感謝の言葉を絞り出す。
『例には及ばん、もしかすると逆もあり得るからな』
言葉を交わしながらヘルブロスは小猫の下に寄り、彼女の手に持つフェニックスの涙を取ると中身の透明な液体を傷口にかけた。大きく裂かれた傷口は見る間に小さくなっていき、ついには跡形もなく完治した。
『立てるか?』
「…はい」
肩を貸りながら、再び小猫は立つ。そしてポラリスはここに来た目的を単刀直入に彼女に告げる。
『回復して早々、君に頼みたいことがある。君の仙術でプラセクトの群れの流れを読んでほしい』
「プラセクトの…群れの流れ、ですか」
『このプラセクトの異常な数はおそらくどこからか増援が流れているからだ。そこを断てば戦況を変えられる。協力してくれるか?』
「…わかりました。でもまだ私は姉さまほど仙術が上手くないので時間がかかります」
頷き了承する小猫。彼には危ないところを助けられた、それに対して恩を返さないわけにはいかない。
彼方から地響きと無数の羽音が響き始める。視線の先にはまたもプラセクトの軍勢が我先にと押し寄せてきていた。
それはもしかするとポラリスの予想通りまた援軍が送られたからかもしれないし、仲間を大量に殺された恨みを抱いたプラセクト達が敵を討たんとポラリスを狙ったからかもしれない。
『それで結構、君が好きなだけ時間を稼ぐ』
だが彼女にはプラセクト達の事情など知ったことではない。寄せ来る敵はすべて排除するのみ。
そう言って、ヘルブロスは両手の光糸を紡ぎ始める。その時、彼女に再び通信が繋がった。
『なに、フェンリルが…?』
ほぼ書き終えた状態で後半を分けたので多分明日も更新します。
次回、「倒れゆく者達」