Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
5.ビリーザキッド
6.ベートーベン
7.ゴエモン
9. リョウマ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
「ふむ、力はそれほどではないにせよ面白い能力を持っているな」
顎を指でさすりながら、ロキは遠くから悠の戦いを観察していた。
プラセクト達を向かわせた先では感じたことのない魔法の力を感じ、敵の中に混じっていたあの歯車を顔にそのままくっつけたようなパワードスーツを纏った戦士の者だと気付いた。
前情報も全くなかったあの戦士からは今まで相対してきた何者よりも異質なものを感じる。はっきり言ってロキが今回の戦いで警戒しているのは彼くらいだ。
同じく異質なものを感じる男、三大勢力に和平推進大使とやらに祭り上げられた紀伊国悠と言う輩はそう大したものではない。何度かぶつかって分かったが、せいぜい今の赤龍帝と同程度か少し劣るくらいの強さだ。
しかし彼の使う見たこともない神器の能力に関しては歯車の戦士ほどではないにせよ警戒に値するだろう。
「よそ見するとは心外だ!」
「俺達がいるってこと忘れんな!」
距離を離された悠がロキの下へ向かう間にも、二天龍の二人も激しい攻撃を仕掛ける。魔力攻撃やオーラに物を言わせた攻撃はロキには通用しないので両者ともに近接戦で攻め立てる。
「無論忘れはしないさ」
世界樹の腕を掲げるロキが前面に多くの魔方陣を展開する。そして色とりどりの光を帯びたそれらは一斉に豪炎、激流、烈風などあらゆる属性の強烈な魔法を吐き出し、二天龍を飲み込まんと分厚く広範囲に押し寄せる。
「本体に効けば楽なんだがな」
〔Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!〕
対するヴァーリは両手を突き出し、白龍皇の『半減』の能力を発動させる。音声と共に魔法の弾幕は範囲を徐々に狭めていき、やがて消えていく。かつて一誠や悠と和平会談で対峙した時に披露した技、ハーフディメンションの応用だ。
しかし半減領域を突破してきたいくつかの魔法が二人に降り注ぐ。一誠はドラゴンショットを放って撃ち落としていくが、それでも撃ち漏らしてしまう魔法に能力の行使に集中するヴァーリはいくつか被弾して鎧を破損させてしまう。
「くっ…」
「ヴァーリ!」
「俺に構うな、行け!」
魔法を受けながらも能力を発動するヴァーリは言葉で一誠の背を押す。放っておけないという表情を浮かべるがすぐにその感情を飲み込んで一誠は飛翔し、ロキへと猛進する。
「喰らえェェ!!」
再びロキを間合いにおさめた一誠は渾身の右ストレートをかます。しかしロキは間一髪で上体をそらして躱す。
これまでの戦いで、二人の戦い方は分かれていた。
一誠は荒ぶるドラゴンの力を存分に拳や蹴りに乗せて猛烈に攻撃を加える。一誠がそもそもあまり魔力攻撃に秀でておらず、接近戦を好むスタイルであるが故あまり制限も気にせず戦えていた。
一方のヴァーリは高速で飛び回って動きを読まれないようにしながら、一誠の攻撃に生まれる隙をカバーするようにロキを攻撃する。
結果、センスが光るヴァーリとの連携により一誠は息つく間もない攻撃のラッシュを咥えることが出来ていた。しかし相手は彼らよりも長い時を生きてきた神だ。生半可な攻撃で打倒されるような者ではない。
ロキは自身の能力により魔力攻撃が通じず、二人が遠距離攻撃を仕掛けられないのをいいことに自身の得意とする魔法攻撃を存分に行った。怒涛の魔法を突破してきたなら、ユグドラシルによって強化された身体能力で二人の攻撃を捌き、いなし、時折カウンターも織り交ぜて攻撃を凌ぐ。
「技の白龍皇と力の赤龍帝……そんな言葉が思いついた」
「そりゃどうも!」
赤龍の力で高まった蹴り、拳の乱打、それらをいなしつつロキはそんな言葉をこぼした。今までの二人の戦いを見てロキはそう実感していた。
赤龍帝がまだまだ白龍皇に比べると技量も場数も、劣る部分が多いのは理解した。だが白龍皇に勝るのは直線でのトップスピード、そしてトップスピードから繰り出される物理攻撃のパワー。あのロキも、それだけはなるべく正面から受け続けるのは避けた方がいいと判断していた。
対するヴァーリは戦闘の随所で元来の才能が光る動きがめざましい。追尾魔法を宙を我が物にするかのように高速で飛び続けて回避しては神がかったタイミングで魔法を打ち落とし、さらには己の注意が僅かに一誠の方に傾けばすぐに攻撃を仕掛けてくる。
白龍皇と魔王ルシファーの血を継ぐものとして、戦闘では名前負けしない素晴らしい才能が輝いていた。今後も自分のような強者と戦っていけば、さらなる高みへと登り詰めていくことだろう。
それからも押し寄せる打撃のラッシュの中で、ロキは顔面に向かって放たれた拳を受け止めてぐっと握りしめた世界樹の拳で一誠を豪快に殴り飛ばした。
地面と45度の角度を描いて、地面との接吻を果たそうとするも一誠はどうにか持ち直して空中に留まる。
振り抜いた拳を収めるロキは、兵藤とヴァーリを交互に見やった。
「高速で動き回る白龍皇とそれ以上の速度だが動きを読みやすい赤龍帝、どちらも厄介だが譲渡を使われては面倒だ。先に赤龍帝から始末するか」
見下ろす視線が動き、ロキの注意が明らかに一誠に向く。
「また余所見とは人の話を聞かない神だ」
それを待っていたと言わんばかりに背後を取った影が一つ。ロキの隙を伺うヴァーリが一気に距離を詰めたのだ。
「先ほど余所見をするなと言われたばかりだが…」
この好機を逃すまいと振るわれるヴァーリの全力の拳。それがロキの背を木っ端みじんに砕かんと迫る。
「かく言う貴様も、余所見には気を付けろと言っておこうか」
背後から攻撃が飛んでくるとわかっていてなお視線をくれてやることなく、ロキが不敵に笑む。拳がロキの背中を打つその直前、ヴァーリの姿が消えた。
「なっ……っ!!?」
それはあまりに一瞬の出来事だった。一誠の理解が追い付かない。
消えたヴァーリの居所はどこだとあちこちに視線をやり、見つけた。
ヴァーリがどこからともなく現れたフェンリルに攫われるように噛みつかれていたのだ。鎧ごとかみ砕かれ、鮮血をまき散らすヴァーリはフェンリルに咥えられたままでいた。
「スコルには攻撃を、ハティにはフェンリルの解放を指示していた。プラセクト達は二頭の行動にとっていい影になってくれたよ」
向こうのプラセクトの群れの中に混じった二頭の狼、スコルとハティはプラセクト達の合間合間を縫ってロキの指示を実行に移していた。
スコルは一撃離脱の攻撃をかけてダメージを与え、じわじわと敵の戦力を崩す。もう一頭のハティに与えられた命令こそ本命。スコルが陽動で敵の注意を引き付けている間に前線組を抜けて後方に攻め込み、グレイプニルの鎖に囚われたフェンリルを解放する。
次々に押し寄せてくるプラセクトのせいで対ロキチームは注意も余裕も奪われたこともあり、まんまとロキの企みは成功した。
「ヴァーリィ!!」
一瞬で致命傷を負わされた好敵手の名を叫ぶ。そこからの行動は早かった。
すぐさまブースターから赤いオーラを放出して猛スピードでフェンリルに迫る。ロキとの戦いでヴァーリの力は必要不可欠だ。どうにかして彼を助け出さねば。その一心で一誠は動いていた。
「この畜生がァ!」
怒りに燃える一誠は猛る思いを込めて全力で拳打を繰り出した。しかしヴァーリを咥えるフェンリルは一瞥をくれてやると。
「ごふぅあ!!?」
刹那の内に巻き起こった一陣の旋風が一誠の体を赤い鎧ごと切り裂いた。赤い鎧の破片と共に、赤い血の華が咲き誇った。
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俺は目の前の光景が信じられなかった。
ようやく距離を引き離されたロキの下にたどり着いたと思ったら、先ほど後方組から解放されてしまったと連絡があったフェンリルがあっという間に二天龍の二人に大きな傷を負わせていたのだ。
ヴァーリは見るからに戦闘不能なダメージ、兵藤も腹を大きく切り裂かれて深手を負った。
倒れゆく彼らの姿を目にして、呆然と足が立ちすくんだ。
これが神の力。人間には抗いようのない、絶対的な差の向こう側に存在する者。二天龍であっても、その差を越えることは出来ないのか。
またしても、俺は一人になってしまった。
「後は…貴様か」
そんな俺の前に悠然と降り立つロキが乱れた前髪を払ってかつかつと一歩ずつこちらに近づいてくる。まるで恐怖を煽るかのようにその足取りはゆっくりで、悪神の笑みは鋭かった。
だが、それでも俺が戦わないわけにはいかない。ロキに勝つために、皆を守るために俺がやるしかない。
「ハァァァ!」
仲間をやられた怒りを、悲しみを霊力に変えて槍に込める。それは今まで以上に鋭く繰り出された一撃だった。
「それは飽きた」
しかしそれすら見切ったとばかりにロキはこちらが突きだした右腕をがっと掴んで足払いをかけ、その場に即座に組み伏せてしまう。
「ぐあ!」
採掘場なだけあって硬い地面に叩きつけられたことで鈍い痛みが走る。続けてロキはグングニルを握る俺の右手をはたいて神槍を手放させ、組み伏せてから俺の体を押さえつけるロキの右手がドライバーに触れた。
すると全身を巡る霊力の光が、奴の手へと集まっていく。全身のラインを巡る光が失われていく。同時に全身にみなぎる力も徐々に弱くなっていき。
〔オヤスミー〕
「なっ…!」
ついには変身を維持できる最低限の霊力も奪われ、光が弾けて変身が解除されてしまった。
「変身が解除されるまで貴様の力を吸わせてもらった。そして…」
ロキがドライバーに当てたままの手に力を込める。木の根になっている五指がシュルシュルと伸びてドライバーを拘束するように絡みついた。そしてロキはドライバーに絡みついた手をバキッと音を立てて、まるでトカゲが自分の尾を切り捨てるかのように、ベルトに残した。
「!?」
ドライバーの拘束に使われ、手首から先を無くしたロキの世界樹の腕は直ちに再生する。ロキは再生したばかりの手を具合を試すようにひらひらと振ってから言った。
「そのベルトを物理的に操作できなくした、これで貴様は変身できない」
「何だと…!?」
その言葉は今までの戦いで起きたどんな状況にも勝る驚愕を俺にもたらした。絶句し、思考が停止し、一瞬心臓すら鼓動が止まったと錯覚するほどに。
俺が変身できない…?そんなバカな。
その言葉を脳が受け付けない。そんなことがあるものか。すぐには信じられず、あるいは悪神らしい惑わす嘘であってほしいという願いを込めながら、まるで手形のようにロキの世界樹の手が残されたドライバーのレバーをガチャガチャと引っ張る。
「くそ…動かない…!」
動かない。おそらく木の根が伸びて内部に干渉しているのだろう。何度も引っ張る。力づくに引っ張る。だが動かない。ドライバーの前面の透明なカバーも木の根に絡まって固く閉じられたままだ。
信じ難い…いや、信じたくないがロキの言葉は事実だ。今の俺は言うなれば、ただのおもちゃを腰に付けた子供だ。
どこまでも無情に、あまりにも突然に訪れてしまった最悪の事態。ロキの言葉はまさしく、推進大使としての、スペクターとしてこの世界で生きる俺にとっての死刑宣告に等しかった。
この力を無くして、俺は一体どうやってこの異形の世界を生きていけばいい?
しかし解せないことがある。目の前で立ち上がり背を向けるロキに、上体を起こして湧いた疑問を即座にぶつけた。
「どうして俺を殺さない…!?」
俺は震える声で問うた。わざわざこんな真似をしなくても、このタイミングで確実に俺を倒せたはずだ。いや、戦う力を失った今なら好きなタイミングで殺せる。
なのに奴は組み伏せたまま俺の喉を掻ききったり、振り向きざまにとどめの魔法を放つどころか、まるで興味を無くしたように見向きもしない、何もしてこない。
「殺さないのではない。お前に構う優先順位を変えたのだ。貴様の神器さえ封じてしまえば他に貴様自身の異能は何もないと見た。そのベルトの力さえなければ、貴様はグングニルを扱うことは出来ない、違うか?」
「…!」
精神的動揺の激しい今の俺は、ロキの指摘に図星もいいところな具合に表情が揺らめいた。
俺の手元を離れたグングニルは1m足らず離れたところを転がっていた。取りに行こうと思えば取りに行ける。
だがそれを手にしたところで俺には使うことが出来ない。なぜなら、俺の異能とはゴーストドライバーだけなのだから。それを封じられた今、俺が使える異能はない。
「つまり貴様はいつでも殺せるということだ。そんな人間を赤龍帝や悪魔より先に構ってやる必要などあるまい。…ああそうだ。その拘束を力づくで赤龍帝に壊してもらおうとは思うなよ。無理にはがそうとすれば内部まで食い込まれたドライバーが壊れる。神器使いにとって、神器が壊れるということは…そういうことだ」
「そんな……」
ロキが明かす事実に更なる絶望が湧きたつ。絶望は俺の心をむしばみ、震えさせる。
「グングニルのレプリカを持ってきたからにはそれなりにできる男かと思ったが…とんだ見当違いだったようだ。我も、それを託したオーディンもな」
力を失い、立ち上がれない俺をロキはどこまでも落胆した、まるで足元をうろちょろする蟻を見るかのような目で見下ろして嘲笑の声をかけた。そして再び背を向けて去って行く。
考えもしなかった状況に今まで溜まっていた焦燥は爆発し、そこにあまりにも唐突に戦う力を無くしたことによる虚無感が加わる。
混然一体となった感情が心に嵐の如く吹き荒れた。他の人が今どうなっているかなど考える余裕もない。戦いも、何もかも全てを脳内から巻き上げては吹き飛ばして彼方に追いやり、希望も未来も何もかもを絶たれた俺をその場に貼り付けにする。
突然の喪失に、目を愕然と見開いたまま、去り行く神の背を眺めた。
呆然とうなだれる、ただの無力な人間だけが、そこに残された。
まさかの変身ができなくなってしまった悠。この戦いで彼は…。
次回、「巡り合う因縁」