TIME IS MONEY   作:遠人五円

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第13話 彼を知り己を知れば百戦殆うからず

「では先ほどと同じように」

「ああ任せろ」

 

  第二回戦。相手は打鉄とラファール・リヴァイブ。ハリと箒の使うISと同じ組み合わせだ。つまり操縦者の実力がモロに出る。試合開始の合図と同時に打鉄同士が前に飛び出し、ラファール・リヴァイブは支援と牽制に動くのだが、ハリだけは一歩も動かずただ特等席に座っているように試合を眺めるだけ。舐めているのかと相手は険しい顔つきになるが、そんな余裕は相手にはない。

 

「上手いものだ」

「はい、篠ノ之さんが相手の打鉄をラファール・リヴァイブの射線上に来るように動かすことで相手の動きを制限していますね。まさかたった一人で二機を抑えるなんて、一回戦も驚きましたが」

「打鉄同士なら操縦者の腕次第。篠ノ之の剣の腕が他とは比べものにならんからな。故にこんな作戦が成り立つ。ハリに時間を使わせないためだろうがここまでやるとは正直驚いた」

「どう見ますか織村先生」

「山田先生と同じだよ。篠ノ之が相手を押し込んで二機ごと纏めてお終いだ」

 

  剣と剣が打ち合った刹那。箒は鍔迫り合いに移行することなく相手の刃を流して肩口で相手を弾き飛ばす。丁度相手の打鉄の後ろに控えていたラファール・リヴァイブと衝突し、後はもう滅多斬りだ。剣技で相手の動きを牽制しながら確実に相手のシールドエネルギーを削っていく。折り重なるような二機はそれもあって満足に動けずに三分後試合終了のアナウンスがされた。

 

「お見事です。次に勝てば決勝です。相手はまああの二人ですから次は僕も動くことになりそうですがね」

「ああ、鈴音とセシリアが勝ったからな。決勝まで持つか?」

「それは次次第でしょう。終わってもいない準決勝の心配をしなければ足元をすくわれますよ」

「分かっている。だが不思議と負ける気がしない」

 

  箒は少し浮き足立っているが、言っていることに間違いはない。ハリの目から見ても箒の調子は絶好調だ。今IS適正の検査をすれば、低く見てもBはあるんじゃないかというほど打鉄を滑らかに動かしている。習うより慣れろ。ダリルとフォルテとハリ。この三人と特訓を重ねた後では相手の連携がとても拙く箒には見え。どこに割って入れば連携の糸を断ち切れるのかよく分かる。これまでの相手は高すぎる壁だ。どれだけ箒の実力が上がろうと、結果は全く変わらず実感も何もなかったが、本番こそが適正なハードル。箒が十全に実力を発揮できれば訓練機使用の一般的なIS操縦者の卵ではまず相手にならない。自分の力をようやく実感し、箒の気が多少は緩むのもしょうがないことだ。

 

「そう言えばダリル先輩とフォルテ先輩はどうなんだ?」

「まるで問題ありません。本人達は不本意でしょうが」

 

  三学年はもう卒業だ。この一回一回の戦いが彼女達の未来を左右する。そのため一年生や二年生と違いなりふり構わず勝ちに動いた結果。当然ダリルのチームが最強となり負ける可能性は皆無。ここまで二年間共に過ごしたことで実力が分かっているからか、「つまんねえ」とはダリルの言葉。

 

  問題はフォルテだ。打倒楯無を掲げていたのはいい。だがチームを組んでいない者の宿命。抽選の結果でまさかのフォルテと楯無が組むこととなった。これによってフォルテが負けることはなくなったのだが、苦い顔を浮かべたフォルテの顔が頭から離れない。そのため、これ勝てるだろ。と、ダリルが言うワンツースリーフィニッシュが現実的なものとなり、優勝できなかったものは優勝した相手の言うことを何でも一つ聞くことという理不尽な約束を取り付けられた。ただでさえハリは一つダリルの言うことを聞かなければならないため、ここで負けるわけにはいかなくなってしまった。

 

「なら次は一夏達の準決勝だな。これで勝った方が私たちの相手だ」

「僕達が勝てばですがね。彼とデュノアさん。ボーデヴィッヒさんと布仏さん。できれば彼に勝ってもらいたいですね」

「それはなぜだ?」

「ボーデヴィッヒさんが相手の方が厳しいからです。AICは僕の弱点になりうる。アレに掴まれて五分経つだけで僕は戦闘不能。まあ一撃を貰えば終わりの彼の単一使用能力も厄介ですがね」

「なるほどな。だが大丈夫だ。一夏が勝つ」

「その根拠は?」

「そうでなければ面白くない」

「……なるほど、確かにその通りだ」

 

  そんな会話で時間を潰している間に白式がアリーナに降り立った。それを合図に続々とラファール・リヴァイブ、シュバルツェア・レーゲンが姿を表す。

 

  試合開始の合図がされ、一夏がラウラに向かって飛び出した。ラウラも多少は丸くなったが、それで教官であった千冬への敬愛が失われたわけではない。つまり一夏に対する評価はそこまで変わらず、ここで一夏が力を示さなければラウラに見下され続けるだろう。猪突猛進。ただ真っ直ぐ突っ込む一夏は暑いAICのいい的だ。だがこれまでの一二回戦を見て何の対策も取らぬわけがない。要は捕まらなければいい。その方法の一つが相手の視界から消えること。瞬時加速の使い方はハリに叩き込まれている。手を上げたラウラの目の前で、一夏の姿が消えた。

 

「なに⁉︎」

 

  衝撃は真横からではなく後ろから。一度の瞬時加速でそこまで移動できるわけがない。多段瞬時加速。武装が剣だけの一夏が力を入れたのは立ち回り。ハリになんとか瞬時加速のコツを教えて貰い習得した。白式の性能ならばやって出来ないことはない。

 

「貴様その動き」

「ラウラの教官が千冬姉だって言うなら俺の教官はハリだぜ。ハリみたいにはできないけど、俺にしかできないこともある!」

 

  瞬時加速は本来近接用。一夏の使い方が正しく、ただ相手の周りを飛び回るために惜しげもなく瞬時加速を連発するハリの頭と腕がおかしいのだ。その圧倒的なGを乗せた剣撃は軽いわけわなく、ラウラの態勢を崩して弾き飛ばす。そして一夏が肉薄することができれば下準備は完了だ。

 

「ほう、あの愚弟めなかなか味なことをする」

「すごい。織斑君てここまで強かったんですか?」

「ただ環境に恵まれただけだ。ハリに篠ノ之。その技術の合作といったところだな。もし篠ノ之が決勝まで来たら面白いことになりそうだ」

 

  超近接戦闘。AICを相手に向けるために動かすラウラの腕を剣技で潰す。ハリの技術で肉薄し箒の技術で渡り合う。これが一夏の答えだ。軍人は全てそつなくこなせるように満遍なく技術を学ぶ。それを破るにはただ一点の集中突破。射撃戦ならいざ知らず格闘戦でならば一夏も遅れはとらない。ラウラが腕を上げようとすればそれを上から押さえつけ、突き出そうとすれば前に踏み込み距離を潰す。だがラウラも甘くはない。急所は避けて一夏の隙を伺いながら機をうかがう。

 

  予想以上。それがラウラの一夏に対する評価だ。なるほどハリの自称親友で千冬の弟だけはあると認めざるおえない。しかし、それが負けていい理由にはならない。今までの自分は打ち壊された。ならばこれからの自分のためにラウラは勝つ。これはチーム戦。ワンマンプレーをする気はラウラにはない。これだけ密着した膠着状態ならば的も同じ。いくら布仏であろうとも外れようとラウラ達の付近に銃弾を落とすことができよう。そうすれば状況は変わる。しかし、そんなラウラの計算は簡単に狂った。ハイパーセンサーが捉えたアリーナの端。シャルルが盾殺しを布仏に押し付けて連発している。

 

「終わったよ一夏!」

「んな⁉︎ そこまでやるとは貴様ら正気か⁉︎」

「え……いやまさか俺もあそこまでするとは……」

「ごめんね、負けちゃったよー」

「後は任せろ! 貴様は安静にしておけ!」

 

  盾殺し。まさかのとっつき使いのせいで戦況が一気に傾く。一対一では無類の強さを誇るシュバルツェア・レーゲンだろうと二対一では厳しい。シャルルの援護射撃のおかげでラウラに隙が生まれ、零落白夜の眩しい光で勝負は決した。

 

「……よかったな。一夏が勝ったぞ」

「これは注意すべきは彼ではなくデュノアさんかもしれませんね。なかなか容赦がない。僕好みの戦い方ではあるのですが」

「お前が相手をするからか?」

「決勝に行ければそうなるでしょうね」

「なによハリ、もう勝った気でいるの?」

「心外ですわね。わたくし達も甘くはありませんわよ?」

「行ければと言ったでしょう。もう出番なんですからこんなところにいないでピットに行ってください」

 

  どこからともなく現れたセシリアと鈴音にため息を吐いてハリと箒はピットへと向かう。ハリが箒を選んだおかげで理不尽に怒っている二人の相手をする気はハリにはない。どうせもう戦うことになるのだ。それ以外に労力を割く気はハリにはなかった。

 

「ようやく準決勝。どうするハリ」

「あの二人の機体はどちらも多対一向き。満足には動けない。それが分かっているから織斑先生は以前あの二人を組ませて山田先生に当てたわけですが、その時の教訓をあの二人がどれだけ活かせるかが勝負の分かれ目でしょうね」

「つまり私達はあの二人の撹乱に力を注げばいいということか」

「いえ、それでは時間がかかり過ぎる。五分以上使う羽目になるでしょうし、元々決め手に欠ける僕達ではジリ貧になって負けるでしょう」

「ならばどうする?」

「考えはあります」

 

  セシリアと鈴音が組んだのは余ったからというわけでもない。前回拙い連携を晒してしまったからこそ二人が組んだという経緯がある。これまでの試合。見る限りこれといった連携をまだしておらず、機体の性能差で勝っている二人。ハリの言った通り操縦者の腕がどれだけ活かせるかがハリと箒の勝利に繋がる。ここまでは二組にとって言ってしまえばウォーミングアップだ。これが一回戦と言っても過言ではない。数少ない専用機持ちと数少ない実力者の戦い。これまででそれが分かっている観客達も一年生ながら質の高いだろう試合を見ようと集まって来ていた。だが観客は関係ない。ハリも箒も見ている先は一つだ。優勝し愛する者に振り向いて貰うため。一夏を合法的にボコボコにしてダリルの思惑を潰すため。そのためだけに二人は動く。そんな二人の目標がピットに入った二人を待っており、ハリと箒を見て笑顔を見せた。

 

「まさか二人が組むとはな。しかも箒めっちゃ強いし驚いたぞ」

「決勝進出者にそう言ってもらえて光栄ですがね。いいんですかこっちに来て」

「ああ、言っておきたいことがあったからな。ハリ、俺は本気でお前と戦ってみたい」

 

  そう言う一夏の顔から笑顔が消えた。これまで力を貸してくれたハリ。訓練は別として一夏が本気でハリと戦ったことはない。友人としてハリは最高だ。だが、だからこそいつまでも頼ってはいられない。自分もこれだけやれるんだということを一夏はハリに示したい。ただの友人ではなく、本当の親友として。

 

「勝つ気ですか?」

「ああ勝つ」

「それが可能だと?」

「やってみなきゃ分かんねえ!」

「へえ……いいでしょう。もし決勝で会えれば本気で相手をしましょうか」

「おう!」

「一夏! 待っていろ、お前と戦いたいのはハリだけではないぞ!」

「箒、ああ、待ってるぜ!」

「あのー、僕はどういう立ち位置にいればいいのかな?」

「知りませんよ」

 

  観客は満員御礼。中国とイギリスの専用機を見れるとあって、数多くの生徒達が集まっている。彼女達が見たいのはブルー・ティアーズと甲龍、そして男性操縦者でしかない。だが誰もハリが勝つことを期待してはいない。強いのは女性で、ハリが情けなくも負けてしまうのを期待しているのだ。そんな居心地の悪い空気がアリーナに入ったハリと箒の身を包んだ。気持ちが悪い、振り払いたいとハリ達の体に力が入る。

 

「ハリ、勝つぞ。一夏が待っている」

「それよりもう来ますよ」

「待たせたわねハリ! ここで会ったが百年目ってね、今日は勝たせて貰うわよ!」

「ふふふ、前のようにはいきませんわよハリさん。今度はちゃんとした形で勝利をいただきますわ」

 

  二人の登場で会場が沸き立つ。数少ない専用機。国の技術の結晶。見た目だけならすでにハリ達の負けだ。だがこのトーナメントは見た目を競っているわけではない。ハリは手に持つライフルを握り直し、箒は強く刀を握った。今か今かと合図を待ち、試合開始のブザーと共に、鈴音と箒が飛び出した。

 

「なに⁉︎」

「悪いけどあたしの相手はハリよ!わざわざ正直に正面からぶつかる必要はってあれ⁉︎」

「ちょっと鈴音さんなにをやっていますの⁉︎ ハリさんはもう! くッ‼︎」

 

  箒を無視してハリの元に突っ込もうと飛び出した鈴音の前には観客席だけが広がり、ハリは既にセシリアの背後に身を移していた。放つ弾丸はブルー・ティアーズの装甲を削り、慌てて距離をとろうと後ろへ下がるセシリアに向けて、相手をされなかった箒がセシリアに突っ込む。

 

「貰った!」

「甘いですわ!」

「甘いのはどっちだ!」

 

  インターセプター。ショートブレードを振るうセシリアだが、相手が悪すぎる。元々ブルー・ティアーズは近接用のISではない。それに加えて箒の剣の腕は入学当初からずいぶん上がった。剛の剣しか使えなかった箒の剣に柔らかさが加わった。短い剣で突き刺そうというセシリアの刃を刀で受け回しそのままブルー・ティアーズの胴を薙ぎ払う。

 

「なッ⁉︎」

「パワーで競り合おうとは思わん! 私は私の技で勝つ!」

「すいませんがさっさと落ちてください。このまま削り切らせていただきます」

「そんな簡単に勝たせるわけないでしょ!」

 

  セシリアに群がろうとする二人の間を空気の弾丸が通過する。そう、二人の間。つまりセシリアに向けて放たれた衝撃砲はセシリアを弾き飛ばし箒の方へ。その隙に鈴音はハリの方へと肉薄する。

 

「ちょっ⁉︎」

「悪いわねセシリア、だいたいあんたとあたしで連携なんて無理よ。どっちもフィールドを広く使う機体なんだからね。だから一対一の形式でハリの時間を使い切らせて貰うわ!」

 

  衝撃砲を撃ちながらハリに突っ込む鈴音とハリが真っ向から戦うわけがない。が、逃がしてくれるほど鈴音も甘くはない。視線でハリが衝撃砲を避けようとしていることは鈴音も知っている。だからこそ狙いをつけずにやたらめったら衝撃砲を撃つことでそれがハリに対する牽制になった。

 

「ハリ! 中学の頃はよくもまあボコボコにしてくれたわね! 今その鬱憤を晴らすわ!」

「やれるものならやって見せてください、篠ノ之さん」

「ハリ! 一分くれ!」

「一分でなにが変わるのよ!」

「全部です」

 

  一分。ここまでの戦闘で30秒。ハリにとって使える時間の五分の一。あっという間の時間であるが、その一分が必要だ。ハリがその一分ですることは、鈴音を足止めすること。箒とセシリアの邪魔をしないことだ。箒がセシリアを倒せるわけではない。白式のような機動力のない打鉄では銃撃戦に移行したセシリアに肉薄するのは厳しい。よってこの一分間でやるべきことは慣れることだ。一分ハリが足止めに集中すればどんな相手でもラファール・リヴァイブで十分。

 

「ほらハリ一分経ったわよ。さあどうなるわけ?」

「こうなります」

「へ? ちょ、ちょっとセシリア⁉︎」

 

  青い閃光が甲龍の装甲を削る。セシリアが誤射をしたわけではない。セシリアの方へと鈴音は目をやり、驚愕の光景に固まってしまう。セシリアのBT兵器が放つ閃光を箒が刀で弾いている。それも鈴音に向けて。BT兵器が放つレーザーは早い。一分。箒がレーザーの速度に慣れるまでの時間。元々速度の相手はハリでしてきた箒だ。直線でしか飛んでこないレーザーを見切ることなど今の箒には容易い。

 

  驚いたのはセシリアと鈴音。まさか味方の武器を利用されるとは思っていなかった。セシリアに撃たれたと勘違いし、それに加えて箒の絶技。ダブルパンチで衝撃を受けた鈴音は固まり、大きな隙が出来てしまった。

 

「この瞬間が必要でした。僕は近接戦闘があまり得意ではないですからね。デュノアさんはいいことを教えてくれましたよ」

「デュノってあんたそれ⁉︎ いッ⁉︎」

 

  甲龍に押し付けられる鋭い杭。先程の一夏達とラウラ達の戦闘で使われたそれをハリのラファール・リヴァイブが構えている。鈴音が動くよりも早く打ち付けられる盾殺しに鈴音は大地へ向けて吹き飛んだ。そしてそれで終わらせるハリではない。やるのならば徹底的に。地面に軽くめり込んだ甲龍に盾殺しを打ち付ける。

 

「ちょ⁉︎ 鬼‼︎ 悪魔‼︎」

「喋ると舌を噛みますよ。ではさようなら」

 

  鈴音の悲鳴に合わせて鈍い音がアリーナに木霊する。盾殺しが打ち付けられる度に観客達の顔が引きつっていく。ミシミシと潰れていく鉄の音が相手の心までも潰していき、鈴音は衝撃と笑顔のハリへの恐怖で意識を手放した。

 

「な、ハリさん女性に優しくしようという気はありませんの⁉︎」

「そんなもの糞食らえです。あと一人、篠ノ之さん」

「ああ油断はせん! 速攻で決める!」

「くう⁉︎」

 

  セシリアの周りに弾丸の檻が迫る。それをBT兵器のレーザーの檻で拮抗させるセシリアだが、その網目を潜って箒が接近する。それに気を抜いた瞬間にハリが接近。ここまで来るとセシリアに勝ちの目はない。

 

「このセシリア・オルコット、ただでは負けませんわ!」

 

  しかしここまでくれば意地だ。少しでも爪痕を残そうと光の網で辺りを包み、箒とハリの行く手を阻むが、所詮は悪足搔き。イギリスのIS操縦者はどうしてこう諦めが悪いのかとハリは引き金を引き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決勝だ」

 

  アリーナでの最後の戦い。まさかの大番狂わせに会場は沸き、男性操縦者同士の戦いと、専用機が一機しかいない予想外の事態に熱狂した。全く気のいい連中だとハリはため息を吐きながらラファール・リヴァイブの調子を確かめる。

 

「いけそうか?」

「ええ、ただ思いの外オルコットさんに手間取りましたね。後二分も動けません」

「二分か……厳しいな」

「ゼロでないだけマシですよ。篠ノ之さん」

「なんだ」

「次の試合、連携は気にしなくていいですよ。本気でやります」

 

  別に一夏と約束したからというわけではない。ここまで来たら勝たなければ、いやらしい顔を浮かべてダリルとフォルテになにを命令されるか分かったものではない。そう、別に一夏と約束したからというわけではないのだ。箒や鈴音の想いは知っているハリだがそれとこれとは別。勝負ならば手は抜かない。本当の本気は出せないがそれでも負ける気は毛頭ない。

 

  アリーナにはもう白式が待っている。白い彫像が聳え立ち、ハリと箒が来るのを待っている。会話はもう必要ない。今だけは力だけが全てだ。

 

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