TIME IS MONEY   作:遠人五円

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第二話 下手の考え休むに似たり

「なあハリ、悪かったって」

「何がですか? 別に怒ってはいませんよ、ただあんな幼稚で安い挑発に乗るのはどうかと思いますがね」

 

  一日の授業はなんとか終わり、三時間目以降ISで戦うことになってしまったことをツラツラと一夏はハリに謝り続けているのだが、こんな感じで流されてばかり、寮の部屋に着いても全くハリの不機嫌は治らなかった。

 

「でもしょうがないだろ、あんな風に馬鹿にされたらさ。ハリだって自分の国が馬鹿にされたら嫌だろ? …………あれ? そう言えばハリってどこ出身だっけ?」

「どこだっていいでしょう、そんなことより問題は一週間後ですよ」

「そうだけどさあ、ハリは強いから大丈夫だろ」

 

  一夏がISを動かせるようになってから、同時期にISを動かすことが出来ると判明したハリとはそれから常に一緒であったため、ハリのISの腕前はよく分かっている。同じ頃にISを乗り始めたとは思えない程、ハリの腕前は凄まじい。それはISの素人である一夏にも分かる程だ。

 

「……分かっているとは思いますが、僕のIS適性はEですよ。Bのあなたにそう言われてもね」

「……あれは多分機械が壊れてたんだ」

「毎日毎日検査されてそれはないでしょう」

 

  そう言ってハリは小さく息を吐く。同じくISを動かせるといっても、そこにはやはり違いが出る。適性Eというのは最低レベルの適性だ。IS学園は、そのレベルの高さから適性Cが最低限のラインである。適性Eでもハリが学園にいられるのは、ひとえに男でISが動かせるおかげだ。これが女子ならば入試を受ける前に門前払いだ。

 

「まあ決まったことはしょうがありません、セシリア・オルコット、彼女に勝てますか?」

「さあ? セシリアがどんな戦い方をするのか知らないし」

「はあ、よくそれで勝負を受けましたね」

「まあやるからには勝つさ、油断はしない」

「当たり前です」

 

  普段飄々としている一夏だが、確固とした意志の籠った目を返されてハリは静かに小さく笑った。中学の入学式、初めて一夏を見た時と違い、中学二年の頃から今日まで随分とまあ変わったものだとハリは思う。

 

「そうと決まれば作戦会議だな!」

「まさか、今日はもう寝ましょう。まだ初日ですし明日からでも同じですよ。分からない相手のことを考えても分かるはずもなし、まずは情報収集です。そんなことを考えるより、貴方は竹刀で素振りでもしていた方がまだ建設的というものです」

「うーん、それもそうだな! ちょっと行ってくる!」

 

  竹刀を手に取り飛び出して行く一夏に、なんとも短絡的なことだとため息を吐くが、それを拾う者はおらず、一人になった寮のベットの上でハリは無造作に横になった。だが、ようやっとやってきた静かな時間も、すぐに終わる。一夏の出て行った入り口の扉が、弱々しくノックされた。

 

  面倒だとハリは無視を決め込んでいたのだが、来訪者は諦める気はないようで何度かノックされる音が次第に強くなっていく。これは出るまで終わらないなと小さく舌を打ち、扉を開けたところで来訪者の苛立たしげに鋭く尖った瞳と、大きなポニーテールが待ち構えていた。

 

「遅いぞ一夏! いったいなにを…………」

「あなたは篠ノ之さんですね。彼ならいませんよ」

 

  尋人は一夏の幼馴染であった。一時間目の終わりに一夏を連れて行った箒だが、そこで何かあったのか、彼に会いに来たらしい。部屋の中を箒は覗き込み、本当に一夏がいないことを確認すると、気まずそうに目をそらす。

 

「そ、そうか、ハリだったか? 一夏から友人だと聞いている。一夏と同部屋だったんだな」

「二人しかいない男ですからね。一人なら部屋割りを変えなければいけないから良かったと山田先生が言っていましたよ」

「そうか……」

 

  そう言うと箒は黙ってしまい話が続かない。一夏と箒は幼馴染だが、ハリと箒は初対面だ。一夏から箒の話を聞いていたハリではあるが、どうしたものかと顔には出さないように内心で心を顰める。

 

「彼なら素振りに行きましたよ」

「ああ、そうか」

「……運動場とかじゃないですかね」

「ああ、そうか」

「…………聞こえていますか?」

「ああ」

 

  こいつ動かねえ。と目の前で難しい顔をして突っ立っているだけの箒に、ハリは聞こえないように舌を打った。まさか自分に用があるわけもあるまいと、扉を閉めたい気持ちになるが、友人の幼馴染にそんな態度を取るわけにもいかず、しばらく黙っていると、おずおずと箒は時間をたっぷり使ってハリに向き直る。

 

「あの、なんというか、お前は一夏と同じ中学だったのだろう?」

「はあ、まあそうですが」

「その、一夏は私のことを何か言っていたか?」

 

  恐る恐る聞いてくる箒を見て、ようやくハリは合点がいった。そして、またかと目尻を下げた。中学の頃も何度かあったことではあるが、天然ジゴロの友人には困ったものだと思う。一夏は人当たりのいい好青年だ。ハリと違い嫌味ったらしくなく、誰にでも手を差し伸べ、おかげで男女問わず人気がある。そのおかげで何人の女子が一夏に惚れたことか。そんな何人も見てきた女子と同じ顔を箒はしている。中学までならこういう相手は五反田 弾に押し付けるのだが、ここではそういうわけにはいかない。

 

「……貴女が剣道の大会で優勝したという時は、自分のことのように喜んでいましたよ」

「っ……、そうか」

「ええ」

「急に悪かったな、その、ありがとう」

「別に構いませんよ」

 

  それだけ言うと運動場の方には行かないのか、自分の部屋へと戻っていく箒に、なにも言わずハリは扉を閉めてようやく静かな時間を謳歌できた。

 

 

 

 

  次の日になり、ISの専門的な授業に一夏が四苦八苦している中、ハリは全く別のことを考えていた。今やっている授業の内容など、ハリはとっくに理解している。だからこそ別のことに思考を割いているのだが、その進行具合はよくなかった。

 

(流石に代表候補生、イギリスの守りは固いですね。ほとんど得られる情報はない。僕ひとりの力ではここらが限界ですか)

 

  あれから一夏に情報収集からと言った通り、出来る限りの力を使ってセシリアのISについての情報を集めようとハリは動いたのだが、一国家の守りは強固であった。一学生に破られてしまう程国というのはちょろくない。イギリスの公式に出したISについての論文など、いろいろと漁ってみたりはしたものの目星いものはなく、唯一知ることが出来たのは、ブルー・ティアーズというISの名前だけ。そこから先は更に情報規制が厳しく、ハリの力ではそこまでが限界であった。これでは一夏に言ったように、素振りでもしていた方がマシだったかと自嘲の笑みを浮かべて、ハリはちらりと後ろの席に座るセシリアを見る。

 

  華奢な少女だ。喧嘩ならば負ける気はしないが、ISという土俵ならば強者であるのだろう。昨日は癪に触る煩い女でしかなかったが、その自信は自分が強いと知っているからこそだ。相手が踏ん反り帰り油断しているからと言って、ハリも一夏もそれで油断してしまうことはない。そんなことをするのも無駄だとハリは思っているし、そんなことをすれば友人の皮肉を浴びることになる一夏は、中学の頃から少しずつそういうことを直してきた。

 

  さて、どうしたものかと思案するハリの意識は、授業開始のチャイムではなく、たったの二日で日常に溶け込んだ出席簿の衝突音が引き戻す。それを受けているのは当然一夏であり、真面目にセシリアについて頭を悩ませていることがバカらしくなってくる。

 

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

「へ?」

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

  一夏の顔は千冬の話を聞いたまま固まり、動かない一夏の代わりに教室中の女子達がざわめきだす。ハリもこれには驚き、片眉を上げて興味を示す。

 

「本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間にしか与えられない。が、お前の場合は状況が状況だ。データ収集の目的と世情を考えて専用機が用意されることになった。理解できたか?」

「な、なんとなく……だけどハリは?」

「ハリは二人目ということもあるが、IS適正のこともある。専用機は流石にということになったが、訓練機のラファール・リヴァイブを優先的に貸すことになった。その代わり企業の試作武器を率先して使ってもらうことになる。まあ半専用機とでも言うか、ハリには悪いが」

「いえ、大丈夫です」

 

  寧ろIS適正Eのハリにそこまでしてくれるだけありがたいというものだ。だが一夏の方が気に入らないようで、露骨に眉に皺を寄せて不機嫌な空気を放ち始める。

 

「なんか気に入らねえ」

「なぜお前が不機嫌になる」

「全くですね、それより今は目下の問題があるでしょう」

「本当に、随分と余裕なことですわね」

 

  セシリアが割って入ってきた。なぜだ……と関わりたくない男二人は聞こえていないフリをして決して振り向かないのだが、セシリアは聞いていようが聞いていまいが関係ないらしい。見なくても自信たっぷりなドヤ顔を披露しているであろう姿が想像できる偉そうな言葉が続く。

 

「でも安心しましたわ、まさかただの訓練機などで相手しようとは思ってなかったでしょうけど」

 

  この人なんか急に喋ってますよと、一夏は千冬に抗議の目を送るのだが、出席簿を振り上げることもなく腕を組んだまま動かない。おい、先生。と言いたい言葉を一夏はなんとか飲み込む。

 

「まあ? 一応勝負はついていますけど? さすがにフェアではありませんものね」

「? なんで?」

「あら? ご存知ないのね。庶民の貴方に教えてあげましょう。このわたくし、セシリア・オルコットは代表候補生……つまり現時点で専用機を持っていますの」

「マジで? なあ千冬姉、やっぱり納得いかねえ。これじゃあハリが不利だろ!」

「織斑先生だ。だがまあお前の言うことにも一理ある。どうだハリ、何か要望はあるか?」

「別に。なんの問題もありません。ISは全世界で467機、その内の一つをわざわざ私に割くほどの理由はないでしょうし、半専用ということで優先的に一機使えるだけでも御の字、というやつです」

「あら、そっちの彼と違って謙虚ですのね。それともまさかそれでわたくしに勝つ自信がおありなのかしら?」

 

  小馬鹿にするようなセシリアにハリは何も言わず、振り返り「当たり前だろうが!」と今にも代わりに言いだしそうな一夏を黙らせるためにハリは鋭い視線を一夏に送るが、一足遅かった。

 

「当然! 俺もハリも負けねえよ! でもなあ、束さんとかに言えばどうにかならないのか、ちふ……織斑先生」

「ダメだな、もう一度連絡は取った」

「織斑君束さんってもしかして篠ノ之博士のこと? なんでそんなに親しそうに呼ぶの?」

 

  女子の中の一人が降って湧いた疑問を口にする。しまったと顔を情けなくしながら、「それは……」と言って箒の方へ目をやると、抜き身の日本刀のような冷たさを持った視線が一夏に刺さった。クラスの女子達は一夏と箒を見比べて、得心がいったと騒ぎ始める。

 

「ええええーーっ⁉︎ ひょっとして篠ノ之博士と篠ノ之さんって姉妹⁉︎」

「すごい! このクラス有名人の身内が二人もいる!」

「ねえねえ篠ノ之博士ってどんな人⁉︎ やっぱり天才なの⁉︎」

 

  クラスの興味はすっかり箒へと移ってしまい、授業中にも関わらずゴキブリホイホイのように箒の元へと女子達が集まる。ISを使う者ならば、篠ノ之束を避けることは絶対にできない。ISの生みの親、天才篠ノ之束。その話を聞きたいと群がる女子達の中心で、箒は立ち上がると「あの人は関係ない!」と大声をあげた。

 

  その姿に全員目を瞬き、教室の空気が一気に白けた。助かったのはハリだ。一度冷め切った空気が戻るのは難しい。セシリアも再度口を開くことはなく、箒と一夏の間ぐらいは少しだけ取り持ってやろうかと、どうだっていいと思いながらも心に決めた。

 

  そんなことがあった後の昼休み、一夏と箒、ハリの三人は食堂にいた。その後も一悶着あり、浮いてしまった二人の状況を緩和してやろうと食事に誘ってきた一夏の提案にハリも乗ったわけなのであるが、箒の素性もバレ、ISを動かせる数の少ない男二人。歩く広告塔であるかのように人目を引いてしまうのは当たり前で、食事時の食堂に来たのは間違いであった。くまなく回りから好奇の目が突き刺さり、大変居心地がよろしくない。

 

「にしても、ハリの専用機どうにかならないかな?」

「貴方はまだそんなことを言ってるんですか?」

 

  勝手に一夏が食券を取ってきたせいで、三人の前には三つの日替わり定食が並んでいる。鯖の塩焼き定食。小骨を箸で取り払いながら先程までのことを蒸し返す一夏に、ハリは溜め息をこぼしならがら、言いたいことは口には出すまいと出かかる皮肉を味噌汁によって喉の奥へと流し込む。

 

「だってなんか俺だけずるいっていうかさ」

「性別関係なくIS操縦者の価値で考えれば当然です。僕に専用機を貸し出して、アメリカみたいになっては困るんですよ」

「アメリカ? なんだよ急に」

 

  ニュースを見ろと言いたげなハリと箒の視線を受けて、一夏はたらりと汗を掻く。そんなこと言われても入学するまでバタバタしていたし、といった同情を引くための言い訳もハリがいるので口に出せない。零される溜め息がこの時ばかりは二つになり、箒の方が説明してくれる。

 

「ほら最近あっただろう。アメリカが所属不明のISに襲われて第二世代ISのアラクネが強奪されたと」

「そうなっては困るということですよ」

「え? そんなことあったの?」

「それも一度じゃない。世界中でちらほら見かけられているらしい。ただ、今回のアメリカのは大事で、アラクネを保管していた軍基地がたったの数十秒で制圧されたと」

「へー、すごいな」

「貴方はテロリストを褒めてどうするんですか……兎に角、珍しい男性操縦者。自衛でISを持たせるのはいいが、奪われては元も子もないということです」

 

  どれだけ素晴らしい機体を用意しても、それが使えなければどうしようもない。その苦肉の策が、各国で採用されている量産型を優先的に使えるようにするということだ。これならばもし奪われてもそこまで損害はない。

 

「でもやっぱりISって凄いんだな。数十秒って……アメリカさん可哀想に……いったいどんなISだったんだ?」

「さあな、速すぎてカメラなどには映らなかったらしいが、現場にいた者の話だと、美しい真っ赤なISだったとか」

「そんなことは今はいいでしょう。何か用があって僕と篠ノ之さんを食事に誘ったのではないですか?」

 

  遠い異国の地で起きている問題など今は気にしている余裕はない。イギリスの高飛車娘が一夏とハリを叩き潰そうと今か今かと待ち受けているのだ。一夏もハリもISの素人、何もせずに横になって待っているだけでは、勢いよく腹を蹴られるだけで何もできずに終わるだろう。それは一夏にも当然分かっている。

 

「そうだった、なあ箒、俺とハリにISのこと教えてくれないか? このままじゃ来週の勝負で負けそうだ」

「くだらない挑発に乗るからだ馬鹿」

「僕は巻き込まれただけですがね、誰かさんのせいで」

 

  親友と幼馴染の冷めた二つの目を受けて、なんも言えねえとダラダラ汗を掻く一夏だが、引き下がるわけにはいかない。カツオの一本釣りのように簡単に釣られてしまったとはいえ、跳ねるぐらいしなければ、そうすれば運よく海に帰れるかもしれない。

 

「それをなんとか、頼む!」

「虫のいい話ではありますが、僕からもお願いします。知識は教科書を読めばある程度はどうにかなりますが、実技となるとそうもいかない」

 

  やるからには勝つ。一夏もハリも負けず嫌いだ。巻き込まれたから、挑発に乗ってしまったからとはいえ、どんな相手であろうとも負けてやるなどごめんだ。打てる手は打つ。相手のことが分からないのであれば、自分を高める以外にやることはない。しかし、そんな想いは撞木で突く寺の鐘のようには全く響いていないようで、いそいそとほうれん草のおひたしを頬張り続ける箒は、恵方巻きでも食べているつもりなのか口を開いてくれない。だが、それでもちらちらと一夏の方へ送る視線は隠せておらず、恋する乙女の陥落は速そうだ。ハリが少し背を押してやろうかなどと考えていると、それよりも早く促進剤が勝手にやって来た。

 

「ねえ。君達って噂の子でしょ?」

 

  そう言って食事中の三人に割り込んでくるのは見慣れぬ女。99パーセント女子で構成される学園では珍しくもなく、もう一夏もハリも慣れてしまったが、その顔に貼り付けたにやけた目が嫌になる。着けたリボンの色からして三年生、上級生がいったい何の用があるというのか。面倒臭いことは確実だが、敢えてハリは何も言わない。こういう相手は慣れている一夏に押し付けるに限る。「はあ、たぶん」と絶妙に間抜けな返事をする一夏の隣に図々しくも三年生は腰を下ろし、箒の眉間に皺が寄った。

 

「代表候補生のコと勝負するって聞いたけどほんと?」

「はい、そうですけど?」

「でも、君達素人だよね? IS稼働時間はいくつくらい?」

「いくつって……俺は20分くらいだと思いますけど……ハリは?」

「10分ないくらいですね」

「それじゃあ無理よ。ISって稼働時間がものをいうの。その対戦相手、代表候補生なんでしょ? だったら軽く300時間はやってるわよ」

 

  よく分かっていない一夏はさて置き、三年生の言っていることは別に間違ってはいない。何かを修練しスペシャリストになるには、一万時間やらねばないないなんていう話があるほど、ISに関わらず積み上げて来た時間というのは大事だ。しかし、「私が教えてあげよっか?」と欲望丸出しの物珍しさ全開で迫る相手の案に乗るなど、ハリのプライドが許さない。人のいい一夏は了承の言葉を口に出そうとするが、ハリが周りからは見えないように肘で一夏の腹を打ってそれを止め、箒に向かって顎で合図を送る。箒は少し驚いた後に難しい顔になり、一度わざとらしく咳払いをしてから口を開いた。

 

「結構です。私が教えることになっていますので」

「あなたも一年生でしょ? 私の方が上手く教えられると思うなあ」

「……私は篠ノ之束の妹ですから」

 

  箒は最強のジョーカーを切った。三年生はもう引き下がるしかない。箒の取った手は、言わばロイヤルストレートフラッシュ、行け聞仲、それロン。これ以上打てる手は存在しない。これに対抗するとなれば、私モンド・グロッソ優勝者、行けヤン・ウェンリー、バレなきゃイカサマじゃあないんだぜ、ぐらいであろう。背中の煤けた三年生を見送り、一夏は箒に向き直る。

 

「なんだ?」

「なんだって……教えてくれるのか?」

「そう言っている。今日の放課後、剣道場に来い。一度腕が鈍っていないか見てやる」

「いや、俺はISのことを……」

「関係なくはありませんよ、ISを動かすのは頭だけでなく結局自分の身体ですからね」

「そうか、分かった。頼むぜ箒!」

「ふん」

 

 

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