鈴音が一夏とハリの部屋を訪ねた翌日、ハリは二組の教室を訪れた。突然の噂の片割れの来訪に色めき立つ二組の女子達の黄色い声を聞き流し何事かとハリに顔を向ける鈴音に、「クラス対抗戦が終わるまではそれに集中するために彼との接触はできるだけ控えてください」と約束を取り付けた。発表されたクラス対抗戦の組み合わせが、第一試合で一夏と鈴音の試合ということ。幼馴染だから馴れ合いを避けるためや、二組のクラス代表が頻繁に一組のクラス代表に会いに来ては周りの心象が良くない。といった表立った理由はいくつもあったがそれで鈴音が首を縦に降ることはなく、最後にしっかり「彼は今貴女のことで頭がいっぱいなので」と言ってようやく首を縦に振った。ハリが言ったのは別に間違いではない。昨夜から一夏の頭の中は鈴音のことでいっぱいだ。初めて自覚した好意への戸惑いと、それに対してどんな答えを出すのか。そのことが巡り巡っている。しかし、だから負けましたなどとなってはつまらない。その結果。
「今度のクラス対抗戦、貴方と彼女の勝負、勝った方が負けた方の言うことをなんでも一つ聞くということで了承を得ました。よかったですね」
「「「はあ⁉︎」」」
三つの性質の異なる声が重なった。仲良きことは良きことかな。普段いがみ合っている箒とセシリアの意思まで統一されるとは素晴らしいことだと、なぜかいつの間にか一緒に話を聞いていた二人をハリは無視して話を続ける。
「何かを成すにはリスクはつきものです」
「いや意味わからん!」
「全くだ! ハリ! お前は一体なにを考えている!」
「そうですわ! それで一夏さんになにかあったらどうするんですか?」
うるせえ。ただでさえ反論はあるだろうとハリも覚悟していたが、それが想像の三倍。少なくとも箒よりもハリの方が多く物事を考えているし、セシリアが言うことには重大な間違いがある。漬け込むならばそこだ。飛び交う三人の文句にさっさと終止符を打たなければ、延々と聞きたくもない話を聞いた後に盲目と化している二人の恋する乙女から欲しくもない集中砲火を浴びてしまう。それも箒のこれまでをハリが見た限り物理的にだ。クラス対抗戦の結果が一夏が愛を気にする結果になれば、二人にも得になるのだから早急に黙って貰いたい。そう考え二人が言葉の機関銃を放つために息を吸い込むのを見計らってハリは言葉を滑りこませた。
「オルコットさん、それは彼が負けると思っているということですか?」
「そ、それは!」
「まさか、栄えある大英帝国の代表候補生の貴女が認めた彼だ。それに加えて剣道全中覇者が認めてもいる。こんな条件ないも同じなのでは?」
「ぐッ……」
吸い込んだ息は言葉に詰まるのに合わせて二人の口から情けなく抜け出ていく。膨らんだ風船を萎ませることなどハリには造作もない。造作もないが、こんなことのために自分の貴重な脳細胞を使っていることが悲しいとハリは息を吐いた。そんな三人の様子を見ていた一夏の目にも昨夜と違って鋭さが出てくる。負ける負けると勝手に騒がれることを負けず嫌いな一夏はよしとしない。男として、千冬の弟として、こだわりを持つ一夏のことなど手に取るように分かっているハリは少ない言葉でこの場の意思を統一した。
「分かった。でもそう言うってことはハリも協力してくれるんだろ?」
「……僕も一組、クラスメイトではありますからいいでしょう。ただし、それで今度負けたりしたら分かっていますね?」
「え……?」
一夏の顔がみるみる青ざめていく。それを見たセシリアと箒の顔も引き攣った。クラスの代表を決める戦い。ハリが策を授け自分が踏み台になってやったにも関わらず、一夏は跳ぶことなく地面に自らダイブした。その結果どうなったのかは一組の誰もが知るところ。その時は地獄への道先案内人が現れたが、もし次負けたらなにが出るのか。空亡でも出るかもしれない。輝かしい太陽を飲み込んで、一夏のこれからにもう太陽が昇ることはないだろう。微笑むハリの顔には薄ら暗いものが感じられない。それが何より恐ろしい。純白の皮肉を持って、悪いとは微塵も思わずに必中の槍が一夏に突き刺さることなど想像に難くない。
「あ、あのハリさん?」
「お、おいハリ?」
「どうしました? 勝つんでしょう? オルコットさんも篠ノ之さんもどうしました? 先ほどまでの勢いが死んでいますよ、お化けでも見ましたか?」
笑顔の圧力がそこにはあった。箒もセシリアも口を挟むことができない。笑顔とは人をここまで恐怖させるものだったか。ハリの皮肉がもし自分に向いたら……。その結果がどうなるか、前に白くなった一夏を見ている二人は一歩を踏み出せない。段々と千冬と似たような立場にハリは足を踏み入れている。これが天才のサガなのかもしれないが、ハリがそれを聞けばため息を零すだろう。
「だ、大丈夫だハリ! 俺は勝つぜ!」
「そうですか、では僕も全力で協力しましょう。凰さんの専用機がどんなものか分からない以上結局は前回と同様に自分を高めるしかない。ですから放課後の訓練にはこれから僕も参加します」
「「「え?」」」
「五分しかありません、その五分、死ぬ気で来なければ分かっていますね?」
放課後の訓練。箒とセシリアのつまらないかち合いなどあるはずもなかった。というよりできるはずもない。話を話す余地もない高速戦。自分の訓練にならないからとセシリアと箒まで巻き込んでの3対1。一夏は言わずもがな、残りの二人も高くもない鼻をへし折られ才能の恐怖を骨の髄まで叩き込まれる。甘いひと時を期待していただろう女子二人には悪いが、ハリに訓練とはいえ勝負で抜く手は存在しない。日々死屍累々となる訓練場は見学に来るIS学園の女子達が手を合わせる場所と化し、裏では墓場などと呼ばれるようになる。だが、その才能に引っ張られるように三人の実力は目に見えて上がっていった。
「……それにしてもハリは強いな」
そんな毎日を送っていたある日。五分の訓練の後に箒がハリにそんなことを言った。箒の使うISは訓練機の打鉄。一夏同様に装備は剣一本。「卑怯者!」と叫び突っ込んでくるだけの箒などハリにはカモでしかない。一定の距離を保ち箒を簡単に蜂の巣にする。そうして訓練を始めて一週間、すっかり箒は口から「卑怯者!」という元気もないようだった。
いかにも落ち込んでいますと体育座りで弱々しい姿の箒が鬱陶しいとハリはそっちに目もやらない。訓練場では一夏とセシリアの二人が模擬戦をしており、それを見ていた方がまだマシだ。専用機の二人の間には、機体性能もあってもう箒に付け入る隙はない。剣の腕で勝っていようとも、生身ならいざ知らず機体のパワー差で簡単に吹き飛ばされてしまう。最近ではすっかり見に来ている女子達と同様に観戦者だ。
「僕が強いのではなく貴女が弱いんです」
「……そうだな。その通りだ」
面倒くせえ。とISの稼働音に掻き消されてしまいそうな小さな箒の呟きも、ハリのできのいい耳は拾ってしまう。いつもの誰にでも噛み付く箒には近寄りたくないが、萎れた箒にも近寄りたくないとハリはため息を吐くが、ISの音に塗り潰されて箒には聞こえなかった。こういう者の相手こそ一夏がするべきだ。とハリは放り投げたい。その結果が一夏に惚れる女子を生み出す原因に多々なっているのだが、今回ばかりはハリが相手をするしかない。
「……言いたいことがあるなら言ってください。面倒は嫌いだ」
「お前は一夏とはまた別でデリカシーがないな」
「それで全て上手く行くならそうしましょう。ですがそれは貴女もですよ」
「なに?」
「繊細さが貴女にはない。落ち込んでいる姿を取ってなにになります。それは儚さではない。普段の貴女には大胆さしかないんですよ。照れ隠しで暴力を振るうのはやり過ぎです。力を制御できていない。弱い姿を彼に見せたくないんですか?」
「貴様!」
「……そういうところですよ」
手元にあった竹刀を握り立ち上がろうとする箒の肩を抑えて出を潰す。間抜けに尻餅をつく箒を見下ろし、ハリは口元を緩めた。
「ぐッ……!」
「貴女には欠けているものがある。それは素直さや貴女の言う繊細さ。丁度いい、貴女の剣道に対する執着もついでにへし折ってあげましょう。一週間竹刀を振らされた恨みもありますしね。どこからでもどうぞ」
馬鹿にされ続けては堪らないと、ただ突っ立っているハリに向けて箒は感情のまま竹刀を振るう。剣道全中覇者である箒の一振りは軽くはない。空を割き、ハリに迫る竹刀の鋭さに同い年の者の中では並ぶ者がないだろう。しかし、それが当たるかどうかはまた別の話だ。頭に血が上った少女と冷静な天才。目を瞑っていたとしてもハリに当たるわけがない。その場から動かずハリは上体を反らすだけで竹刀を避ける。それだけで突っ込んでいる箒のおかげで勝手に間合いが縮まり、ハリの目の前に箒が来たところでハリが無造作に箒の足を払った。ハリを通り過ぎ勝手に吹っ飛んだ箒の床に転がる音が心地いいと耳を澄ませる。
「くッ……、ひ」
「卑怯。とは言わないですよね、これは剣道ではない。ISもそうですが、それは手段の一つでしかない。貴女だって分かっているはずだ。 だから本当なら彼に聞いて欲しいだろうに僕なんかを頼っている。剣道だけで勝てるほど、世の中甘くはないですよ」
「だが……、私にはこれしかないんだ!」
「だったらもう少し本気を見せてください。これしかないと織斑 千冬が言うなら分かる。彼女は剣一本で世界を取った。貴女には何が掴めますか?」
「それは……」
「まあすぐに答えを出す必要はないでしょう。ただ折角ですから貴女のこれしかないをもう少し見せて貰いましょうか。生憎、僕にはISを動かす時間以外はたっぷりある」
試合当日、第二アリーナ第一試合。一夏と鈴音の勝負。どうせなら早いことに越したことはない。白式を纏う一夏を見送りにハリ、セシリア、箒の三人はピットにいた。一週間の身体中を言いようもない息が詰まるような緊張感が襲うが、三者三様の顔を浮かべる三人を見ると、自然と落ち着いてくると一夏は大きく息を吸った。
「一夏さん、訓練の通りやれば大丈夫ですわ!」
強敵だった相手の激励を受けて、少しだが一夏の心に余裕ができる。が、それでもクラス代表を決める戦いとは違う緊張は拭い去ることができない。初めて自覚した好意に一夏がどういった答えを出すか。訓練付けの一ヶ月。鈴音とほとんど顔を合わせなかったせいで逆に鈴音のことが気になってしょうがない。そうなるようにハリが仕向けたのであるが、これで負けましたなどということになったらハリに何を言われるか分からないため一夏は自分の頬を軽く叩き気合を入れ直す。ただ、今はそれと同じくらい気になることがあるので、今一つ一夏の身が入らない。
二週間前からどうも箒の様子がおかしい。具体的には毎日毎日過ごすごとに体に貼られた絆創膏の数が増えている。
「なあ箒、それ大丈夫なのか?」
「…………ああ、階段で転んだだけだ」
「え? 毎日?」
「ああ、なに軽傷だ。そんなことを気にする余裕があったら勝負に集中しろ」
「おう、それにしても箒って意外とおっちょこちょいなんだな」
「心配してくれてありがとう一夏、大丈夫、いずれその階段は踏み抜く」
「あ、ああ」
一夏の想像と違い素直にお礼を言われて一夏は少し面食らってしまう。お礼と共に向けられた笑顔を可愛かったと思ったのは一夏だけの秘密だ。しかし、その笑顔もすぐに引き絞られ、睨む箒の視線を追えば壁に寄りかかり腕を組むハリを睨んでおり、よく分からないと一夏は首を傾げた。
「ここまできたらもう後はやるだけです」
「おう、任せとけ。今度はちゃんと勝つぜ」
「はあ、何故貴方はこういう時だけ少し頼もしくなるんですかね。いつもそうなら僕の苦労もないのですが」
「ひでーな、まあ見ててくれよ!」
「織斑君、時間です」
アナウンスを受けて一夏はピットから飛び出す。それを見送り管制室まで三人が戻れば、千冬と麻耶が見つめる大きなディスプレイに、一夏と向かい合って鈴音の姿が確認できる。赤と黒に塗装されたIS『甲龍』。鈴音の性格を表すように攻撃的な肩の横に浮いた棘付き装甲が目を惹く。
「近接格闘型のパワータイプ……」
「願ったり叶ったりですね。この一ヶ月、彼には近距離だろうと遠距離だろうと相手に近付く訓練を主にやって貰いました。そのおかげである程度どの距離でも彼はもう対応できる。ただ相手が近距離を得意とする方がやりやすいでしょう」
「ほうハリ、お前が仕込んだのか?」
「ええ織斑先生。ただ近付いた後の剣技に関しては僕の専門外なので篠ノ之さん次第ですが」
「問題ない。今の一夏は前までの私よりも強い」
「だそうです」
箒の少し変わった雰囲気に千冬は嬉しそうに僅かに口の端を持ち上げる。それを合図にするように試合開始の合図であるブザーが鳴り響き、切れると同時に一夏と鈴音は前へと飛び出した。白式と甲龍の刃がぶつかり合う。耳に痛い金属音がアリーナに響き渡り、二機は鍔迫り合いのまま立ち止まった。出だしは引き分け。しかし、みるみるうちに白式の方へと刃が押し込まれていく。火花を散らして迫る刃を、一夏は刃の上で滑らせるとそのまま手に持つ刀を振り切り甲龍の装甲を削る。
「やるじゃないか。ハリに篠ノ之、お前たちコーチに向いているんじゃないか?」
「今のは凰さんが今の彼の実力を見誤ったからですよ。むしろ本番はここからです……ほら」
鈴音のことを考えて一夏の動きが鈍るかもしれないというハリの考えは杞憂に終わってくれたらしい。勝負の始まるまでの少しの間の会話で、一夏と鈴音の関係からしていつも通りに戻ったようだった。だが、それと勝負の結果は別だ。二撃目。一撃目と異なり、両側に刃のついた青竜刀を回しながらの鈴音の一撃は、その回転によって一夏に受け流す暇を与えずに弾き飛ばす。一夏もなんとか態勢を立て直すが、動画をリプレイするかのように三撃目、四撃目と同じ光景を繰り返す。
「彼女やりますわね。力の使い方が上手いですわ」
「彼女は昔から背が低いのを気にしながら性格は猪突猛進タイプ。彼女の背丈でも喧嘩の時に打ち合えるような戦い方を中学の頃に僕が教えましたから。その応用でしょう」
「ええ⁉︎ ハリさんなにやってますの⁉︎」
「しょうがないでしょう。こうなるとは思っていませんでしたし、それに僕はただ口を出しただけだ。彼女はいつもそれだけで自分の形にそれを落とし込む。一種の天才ですよ。見たところ近接戦闘の柔軟さでは彼女が上だ。今は彼の予想以上の動きに慣れていないだけでそのうち対応してくるでしょう。成長性、それが彼女の才能ですから、ただそれを打ち破るには」
「動きの違いを活かす他ないな」
一夏が劣勢のため慌てているかと思いきや、意外と冷静にものを見ている箒にハリは少し驚く。そして箒の目は正しかった。鈴音は円の動き。対して一夏は線の動き。円に真正面からぶつかってはいなされるだけでまともにかち合えない。だが、円の中心を捉えることができれば話は別だ。そしてそれができるかが勝負の分かれ目となる。話を聞きながら思いの外優秀な教え子に千冬は笑みを浮かべて画面に向き直る。都合八撃目、同じように弾かれた一夏がこのままではいけないと距離をとった。その瞬間空気が震えた。甲龍からもたらされた光がそのままぶつかったかのように、目に映らない何かに一夏は大地に叩きつけられる。
「なんだあれは……?」
「『衝撃砲』ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して打ち出すブルー・ティアーズと同じ第三世代型兵器ですわ」
「これは困りましたね。あれは不味い。まさかあんなものを持ち出してくるとは流石は世界一の人口を誇る国だ」
「感心している場合か! いったいどうする、このままでは一夏が!」
「負け、はここまで僕がやったのに癪ですね。いつも通り口を出すことにしましょう。織斑先生」
「これはクラス対抗戦だ。かまわんだろう」
千冬の了承を得てハリはマイクへと口を寄せる。その間一夏は混乱の極みだった。甲龍が光ればどこからが空気の塊が飛んでくる。辛うじて避けられているがそれはやはり辛うじて。運がいいだけだ。巻き上げられた砂によって僅かに砲弾の軌跡が見えるのと、視界の悪さで鈴音の狙いが逸れているだけ。被弾覚悟で突っ込もうかと考えていた一夏の耳にハリの声が聞こえてきたのがそんな時だった。
「無様ですね。この一ヶ月なにをやっていたのです?」
「悪い、っておい! こんな時にまで第一声がそれかよ!だいたい見えない砲弾を避ける訓練なんてやってないだろ!」
「まあそうですが、貴方のことですからここは気合と根性で正面突破とか考えていそうですからね。それも悪くはありませんが、ここは僕が一つ知恵をプラスさせましょう」
「何か作戦があるのか?」
「作戦というよりちょっとした攻略法です。ですがそれだけで貴方の策が活きるでしょう」
「それは?」
「彼女の目を追ってください。砲弾が見えなかろうと狙いをつけるのは彼女自身。彼女の目の先が砲弾の走る道です。それが閉じている間は道も閉ざされる」
「……なるほどな、その一瞬があれば確かに十分だ」
「貴方は常にISを纏っていた方がいいんじゃないですか?」
「どういう意味だよそれ⁉︎ って切るな!」
言うだけ言ってハリは一方的に通信を切る。無愛想だが頼もしい友人の言葉を受けて一夏は笑顔を空に浮かぶ鈴音へと向けた。
「鈴」
「なによ?」
「本気でいくからな、それと、後でちゃんと答えを言うよ」
「な、なによそれ……あんたハリになんか言われたの?」
「ん、まあ」
「そ、普段面倒くさそうにしながら意外とお節介よねあいつ」
「ああ、そんな最高の親友だぜ」
「でもハリがついてるからって私は甘くないわよ! 格の違いってのを見せてあげる!」
鈴音は青竜刀を回して構え直す。降り注ぐ衝撃砲。それが大地へ着弾するよりも早く、一夏は剣を地面に滑り込ませるように打ち払い、砂を宙に巻き上げる。着弾した衝撃砲はそれを広げ、アリーナを薄く覆った。悪くなった視界が二人の姿を隠すが、相手を見失ったのは鈴音だけ。その理由は簡単だ。衝撃砲を撃つ時はなにもないわけではなく、その予備動作で光を放つ。そこが鈴音のいる位置。そしてそれが分かれば一夏には十分だった。一瞬で相手との距離を詰める技がある。そしてそれをお手軽に繰り出し続ける怪物が一夏の隣にはいた。それを一ヶ月で一夏に覚えさせるなど造作もない。