突如として第二アリーナの中央に落ちてきたモノは、地面を大きく抉り土煙を上げている。それがいったい何であるのか。その場にいる一夏に鈴音が理解せずとも、人の目よりも優れた触覚をもって白式と甲龍がソレの答えを弾き出す。いち早くそれに気が付いた鈴音が一夏に撤退を訴えるがもう遅い。恐るべきはソレが放つエネルギー量と、所属不明のISと告げる白式の声。更に悪いことに所属不明のISは一夏に狙いをつけている。
「あたしが時間を稼ぐからその間に逃げなさい一夏!」
「いや、これは無理だろ。なあハリ」
「そうですね。それより来ますよ」
一夏の呼び掛けに答えたハリの一言を合図に、所属不明のISから放たれた熱線が二人のいたところを塗りつぶす。ハリは小憎たらしいが無意味なことは言わない。ハリの忠告を微塵も疑わず、二人は悠々と熱線を避けた。しかし、再びISによって教えられる熱線の熱量の大きさに一夏達は顔を歪ませる。
「狙いはやっぱり俺か?」
「自意識過剰と言いたいところですが可能性は高いでしょうね。貴方の価値を考えればないことではない。このタイミングで、しかも堂々と。それは大いにありえます」
「ならどうすればいいのよハリ!」
「出来れば道場破りよろしく袋叩きにしたいところですが……、まあ無理でしょう。おそらくアリーナに繋がる扉がロックされていたりして、そこは密室状態になっているはずだ。救援は望めない。そうでなければ堂々と正面から突破などしてこないでしょう。ねえ織斑先生?」
「ああそのようだな、おまけにアリーナの遮断シールドのレベルが4になっている」
「だそうです。出来れば正体不明の敵なんて相手にするくらいなら逃げたいですが彼の言うように逃げるのは不可能。もし逃げたとしても表向きはスポーツだというのにそれには使えなさそうな熱線を所構わず撃たれでもすれば被害は甚大」
「現在三年の精鋭が既にシステムクラックを実行中だ。遮断シールドが解ければすぐに救援を突入させる。一夏、それまでもつか?」
「ああ千冬姉! 鈴もいるしハリも知恵を貸してくれる、千冬姉もだろ? なら怖いものはない! やってやるさ!」
土煙の晴れた先、姿を現した異形のISに一夏は向き直る。全身に付いたスラスター。通常ではありえないほどの長い腕。襲撃者の顔を見たくても、全身装甲がそれを阻む。通常ISにはエネルギーシールドがあることから装甲を部分的にしか形成しない。その点だけ見てもアリーナに降り立った所属不明のISが異常であるということが分かる。その異形に対して、不気味さを感じながらも鈴音と一夏は突っ込んだ。連携の素人ならば危なっかしくて見ていられないが、鈴音と一夏は共に中学の頃にその基礎はやっている。鈴音と一夏二人の場合、喧嘩になった時、鈴音はその身長から決め手にかけるだろうとハリに言われてから鈴音の役割はその小ささで相手の懐に潜り込み力を上手く使って相手の態勢を崩すこと。その通り青竜刀の回転によって相手の態勢を崩し、最短最速線の動きで一夏が刺す。だがそれは所詮対人間。ISを着ている状態を想定していない。鈴音の一撃までは良かったが、崩れた態勢を所属不明のISは全身に付いたスラスターで強引に変え、迫る一夏に向けて熱線を放った。
「ひやりとさせる。何とか避けたか」
「でも織斑君と凰さんがあんなに連携できるなんて驚きです。これなら時間稼ぎに回れば大丈夫ですよね?」
「かもしれんな。どうせお前が仕込んだんだろうハリ」
「織斑先生、確かにそうですが。残念ながら山田先生の言うようにはいかないかと」
「え? なんでですか?」
「あの二人がそんなこと考えるようなタイプじゃないからですよ」
「はあ、だろうな」
千冬とハリが揃ってため息を吐く先で、果敢に一夏と鈴音は敵ISに向かって突っ込んでいる。しかし、異常な動きを見せる敵ISには通常のセオリーが通じず見るからに苦戦。このままではジリ貧なのは目に見えている。あれだけ大出力の熱線を放っていながら敵ISの動きは精彩を欠ず、クラス対抗戦のこともあり白式と甲龍の方が先にエネルギーが尽きそうだ。
「おいハリどうすりゃいいんだ⁉︎」
「なぜ貴方はまず僕に聞くんですか。こちらからでは分かることの方が少ない。実際に戦っている貴方なら何か気づくことがあるんじゃないんですか?」
「何かって、なんか違和感があるっていうことぐらいしか」
「違和感?」
「なんか相手の動きが人間ぽくないっていうか……」
「分かりました。もういいので戦いに集中してください」
一夏に言われ改めてハリは画面の先の異形を見つめる。やたらめったら腕を振り回し、放つ数多の熱線も狙いをつけているものは少ない。およそ理性というものを感じさせない動き。懸糸傀儡めいている。糸の先の何かしらが薄っすら見えるようだ。ハリはそれに口端を僅かに上げ、バレないうちに表情を戻す。
「織斑先生。アレに人が入っているように見えますか?」
「……見えんな」
「……二人とも聞こえていますね。おそらく彼の言う通りアレは無人機です。遠慮はいりません」
「はあ⁉︎ 無人機⁉︎ そんなことあるわけ」
「分かった! アレを使ってもいいよなハリ!」
「ええ、アレのおかげで試合は中止。折角の勝利に水を差されましたからね。存分にどうぞ」
「ハリ、それとな」
「分かっています。オルコットさん、準備をしてください。貴女の出番だ」
「え……はいですわ!」
気付いているのかいないのか。一夏の勘には恐るべきものがある。織斑の血統なのかは分からないが、面白いとハリは口を歪めた。イギリスの第三世代ISを越えるエネルギー。世界各国の代表候補生を抱えることから世界最高峰のセキュリティを誇るIS学園へのハッキング。それだけで少し考える頭があれば裏で手を引く者のことなどすぐに分かる。その者ならば世界で誰も成し遂げていない無人機を作ることなど簡単だろう。
(言うなればドローンですね、どこから見ていることやら。織斑 千冬は気付いている。彼女達は気付いていますかね。ダリルが動いていないのを見るに気付いてはいませんか。しかし、今はその方がいい)
篠ノ之 束。どういうつもりかハリの知ったことではないが、この戦力の宝庫の中に正体不明とはいえ一機だけISを送るという行為がただの偵察なのかそれ以上なのかがハリには分からない。普段ならばため息をハリが零す場面だが、この時は違う。にやける口元が抑えられない。ハリは天才。いつも全力を出せずに遠慮をして暮らしている。天才の隣に立てるのは天才だけ。束の友人が千冬であるように、ハリが遠慮をしなくていい相手は天才だけだ。そういう意味ではIS学園にいる今をハリは感謝する。常に一人遠慮をしなくていい天才が教壇に立ち、もう一人の所在不明の天才も何もせずとも向こうの方からやって来る。自分の目的以外のハリの唯一の楽しみ。全力を出せる機会が自分の周りを回っている今が最高だと薄っすらハリの顔が蒸気する。
「おいハリ」
そんなハリの背に箒の声が掛かり、慌てて口をハリは真一文字に結んだ。振り返ったハリはいつものハリだ。眠そうな目を持ってつまらなそうに世の中を見る。ハリを待っていたのは明らかに不満を隠そうともしない箒の顔。これさえなければ最高なのにと、出なかったため息がここで出た。
「私は何をすればいい?」
「僕も貴女も今回はお休みです。今から訓練機を持って来たのでは時間がかかり過ぎで間に合いませんし、何より彼らだけで事足りる」
「だが!」
「そこは専用機を持っている者とそうでない者との差です。行ったとしても僕らが動かせる訓練機の打鉄やラファール・リヴァイブでは凡庸性ぐらいしか勝っている点がない。剣技では貴女が、操縦では僕が勝っていても総合力で相手の勝ちでしょう。声援でも送るぐらいしかやることがありません」
「専用機か……くっ、一夏! 男なら勝て!」
マイクを掴んで声を張る箒を尻目に、ハリはもう他人事のように画面を見つめた。鈴音の実力も、一夏の実力も、セシリアの実力もハリにはよく分かっている。鈴音が相手の足を止め態勢を崩し、一夏が白式の単一使用能力を使い敵ISごとアリーナのシールドを破壊。そのために全力で動いた一夏と鈴音の隙はIS学園でトップクラスであろうスナイパーのセシリアが埋める。そんなハリの想像通りにディスプレイの先で事態は展開し、第二アリーナでの騒動は幕を閉じた。唯一のハリの誤算は、気を抜いた一夏が敵ISの鼬の最後っ屁を食らってしまったことだ。顔を青くする箒を他所に、何をやっているんだとハリが呆れ一夏の反省会二回目が開催決定したのは言うまでもない。
暖かな吐息を感じる。あれから保健室に運び込まれベットに横になっていた一夏の目に入って来たのは、顔を赤くさせ自分の顔を覗き込んでいる二人目の幼馴染の顔。鈴音の顔の両側から垂れた柔らかなツインテールの毛先が一夏の顔にかかり、くすぐったいとは思うものの、一夏の想像よりも綺麗になった幼馴染から目が離せない。
「一夏……」
「……鈴?」
一夏が鈴音の名前を呼べば、鈴音はみるみるうちに顔を赤くし、背後の保健室の壁を打ち砕く勢いで身体を仰け反らした。
「お、起きてるんだったら言いなさいよ馬鹿!」
「今起きたんだよ、それより何慌ててるんだ?」
「べ、別に慌ててなんかないし」
「ならいいんだけど……、試合無効になっちまったな」
「そうね残念。一夏にいろいろ命令するつもりだったのに」
「いやあの勝負は実質俺の勝ちだろ」
「なに言ってんのよ! ハリならいざ知らずあんたがあたしに勝とうなんて百年は早いわね!」
「ああそうですか」
鈴音といると一夏は嫌でも元気になってしまう。身体は痛いし、まだどっと疲れているのに気分はいいと一夏は笑顔を見せる。それを正面から受けて鈴音はまた顔を赤くする。大事な幼馴染だ。赤くなった鈴音の顔を見て、なんであろうと答えを出さなければいけないと一夏は覚悟を決める。
「なあ鈴」
「なによ」
「前にした約束。料理が上達したら毎日私の酢豚を食べてくれる? だったよな」
「え、あ、う……うん」
「嬉しいよ……、鈴が俺を好きでいてくれて」
「え、あ……」
嬉しい。その思いが爆発したように鈴音の中で膨れ上がる。口からはか細い呼吸だけしか出ずに、形を持った言葉が出ない。身体の芯が熱を持ち、それが広がるのを示すように肌に赤味が差し始め、水面張力のようにギリギリで張っていた想いが、限界を超えてキラリと目元から溢れた。夕陽を受けて済んだ薄紅色に染まった結晶は、秋の紅葉のように鮮やかで、冬の夜空のように澄み切っている。
「鈴⁉︎」
「あ、ごめん……嬉しくって。あたし……一夏のことだからてっきり本当は忘れてるんじゃないかって」
目尻を拭って弱々しく微笑む鈴音の純白の笑顔が一夏の心に突き刺さる。忘れてましたごめんなさい、という言葉が口から飛び出てしまわぬように、一夏は強くシーツを握り込みなんとか耐えた。それと同時に情けなさで自分に対する怒りが湧いてくる。女の子が涙を見せるほどに想っていた想いにこれまで気が付かなかったことに。
「鈴……今までごめんな。俺さ」
そこまで廊下から聞いてハリは保健室の入り口の前から足を遠ざけた。こんな甘ったるい空間には一秒だっていたくはない。綿あめのようなふわふわした空間に浸かるなどハリにとって拷問だ。ハリが聞きたくないのだから敢えて書くまい。この先は二人だけの物語だ。誰かと時間を分け合うことなどハリには想像もつかない。想像もつかないが、それを止めようとも思わない。
「あらハリさんも一夏さんのお見舞いですか?」
「ええ、ただ大事をとって今日はもう面会謝絶だそうですよ。本人はピンピンしてるそうなのですが、また明日ですね」
「そうですか、折角お見舞いに行こうと思いましたのに」
だからわざわざこんな梅雨払いをハリはしている。一夏がここで決めてくれるのならばこれぐらいの徒労は必要経費だ。心底残念そうに肩を落とすセシリアには少し悪いと思いながら、嘘がばれないようにハリはポーカーフェイスを貫く。
「では時間も余ってしまいましたしハリさん少し付き合って貰えません?」
「……いいでしょう。たまには」
「あら断ると思ってましたのに」
「たまにはですよ。今日が最後のチャンスと思って頂いて結構です」
「あなたね……」
不満顔のセシリアにハリが笑顔を向けてやれば、途端に呆れ顔に変わっていく。一夏や篠ノ之を含めた一ヶ月の特訓で、セシリアも大分ハリの性格を理解した。気怠そうな雰囲気を放ち、常に面倒臭そうに物事に取り組むハリであるが、皮肉を口ずさみながら人付き合いは悪くない。なんだかんだ言いながら誘いをかければ乗ってくる。そしてこれはチャンスだとセシリアは目を光らせた。
「ハリさんは一夏さんと同じ中学だったのですよね。是非その時のお話が聞きたいですわ」
「おや、そんな遠回りなことでいいんですか? イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばないと聞いていたのですが」
「な、なななな!」
「……貴女隠す気微塵もないでしょう」
これほど分かりやす過ぎるセシリアに一夏は何故気がつかないのか。一夏の黒目は穴なのか。それよりも代表候補生がこれほど駆け引きに弱くていいのかと、ハリは軽い眩暈を覚える。
「そ、そんなに分かりやすいですか?」
「ええ、空は青い。海はしょっぱいと同じくらいには」
「うぅ……、一夏さんがハリさんには隠し事が出来ないと言っていた意味が分かった気がしますわ」
「彼がそんなことを? というより僕でなくても普通に気が付きますよ。織斑先生とかね」
「織斑先生まで⁉︎ うぅ……不覚ですわ」
顔から湯気を出し縮こまるセシリアになんと言ったらいいものかと考えていたハリだったが、廊下の奥に流れる金色の川が目に入りその必要がなくなった。勝ち気そうな吊り目が弧を描いてハリを見つめており、何も言わず顔を軽く顰めるハリを見て、仕方がないと猟犬がひたひたと静かに近寄ってくる。
「ハリさんどうしましたの?」
「よーハリじゃねえか。憎いねえ美人はベラして」
「……これはダリル先輩お元気そうで」
「ん。ちょいと面貸せよ。悪いな嬢ちゃん、ハリの奴借りてくぜー」
「え、あの」
「すいませんねオルコットさん。この埋め合わせはいずれ」
「あ、はい。また明日」
ダリルに首に腕を回され強引に引き摺られていくハリをセシリアはなんとも言えない顔で見送った。このタイミングでダリルが来た。なんの話なのかはハリにも分かっている。それにしてももう少し人目を気にしないのかとハリはダリルを睨みつけるが効果はなく、結局食堂まで引き摺られてしまった。その際多くの学生に目撃され、イージスがいよいよ盾を振りかぶりに掛かっているのは言うまでもない。
「ほんで?」
「……口の中のものを飲み込んでから喋ってください」
「あいあい。それでアレはなんだったんだ?」
「おそらく篠ノ之博士制作の無人機でしょう。所属不明ということから世界に散らばっている467機とは別のコアを使われたね」
よっぽどのことがない限りISのコアは各政府にきちんと登録されている。例えば謎の組織に強奪されたとか、コアを盗まれたとかを別にしてだ。しかし、今回の襲撃者は、エネルギーが膨大にしては使われている技術がお粗末。片手間に作りましたというようなハリボテ感が半端ではない。コアやISをわざわざ奪ったのならこんな勿体無いことはしない。数が限られているのだ。ただそれを一から作れる者からすれば別である。
「ほー遂に動いたわけだ。なんでか知らねーけど。知りたくもねえ。オレはまだ学園生活を楽しみてえしもう一年で卒業だし」
「僕だって入学して一月で自主退学はゴメンですね」
「でもよー、上にはなんて報告するよ? まさかなんも言わねーわけにはいかねえだろ」
「襲撃のことは掴んでいるでしょうし、ある程度ありのままを伝える他ありません。現状が変わらない範疇で」
「おいおい、オレがいんのにそういうこと言っていいのかよ」
「どうせIS学園にいる主要な実動部隊は僕と貴女だけだ。外部の者はIS学園にいる限り強引な手は使えない。貴女が職務に忠実というなら僕はなにも言いませんがねダリル」
「ふくくっ、オレお前のそういうところ大好きだぜハリ。ただ残念なことにオレにはもう相手がいんだよなあこれが。あ、でもフォルテも交えて3ぴ」
「やめてください。本当に」
「あれ? 確かなんでも一つ言うこと聞くって」
「……、…………、なるほど、ここで糸が切れますか」
「冗談。冗談だって、約束は守るのは立派だけどお前結構真面目だよな」
どこまで本気か分からないダリルの相手をすると頭痛がしてくるとハリは顳顬を抑える。ハリにとっての数少ない弱点の一つがダリルだ。お互い幼い頃からの付き合いで相手のことがよく分かっているということもある。付き合いの長さで言えば一夏や鈴音よりもずっとずっと長い。それに加えて気分屋なダリルの性格がハリは苦手だった。なにを考えているのか分からない。楽しいと口にしながらすぐにやめ、つまらないと言いながら延々と続ける。天才以外で唯一ハリと真っ向から対峙できる存在。勿論ISの操縦技術のことではないが、それ故ハリはダリルのことを気に入ってもいる。フライドポテトを頬張りながら満足気な顔をしているダリルを見ていると、どうだっていいかとハリは柔らかな椅子に深く沈んだ。
「まあ冗談はこれぐらいにしてだ。本題に入るぞ」
「いつも言っていますがそれを一番初めに持ってきてください」
「やだよ。だってお前本題聞いたらそれで帰っちまうだろうが。会話の楽しみ方も分からないようじゃ女にもてないぜ」
「それで結構です」
「かわいくねー。……上から指令だ。イギリスの第三世代IS、サイレント・ゼフィルスを強奪する」
「時期は?」
「まだ少し先だ。それまではこの素晴らしい学園ライフを謳歌しようぜ」
「なるほど、では僕はこれで」
「ほらすぐに帰る。オレと一緒にいんのそんなに嫌かよ。傷つくわー」
「いろいろ問題が多いからですよ。明日の学園新聞の一面は僕と貴女で間違いない」
「アリーナのは? ……ああいい、学園側が止めるか」
「そういうことです」
とにかく疲れたとハリは自分に刺さる数多の視線をないものと考え食堂を離れて寮の自室に転がり込む。部屋にはすでに一夏が帰ってきており、晴れやかな表情を浮かべてハリを出迎えた。
「……その顔を見る限り上手くいったようですね」
「ああ、ありがとうなハリ」
「別にいいですよお礼なんて」
「おう! 鈴には待ってもらうことにしたよ」
「は?」
「今はISで大変だし、俺ももっと強くなりたい。それが落ち着いたらちゃんと答えるって……痛え⁉︎ なんで殴るんだよ⁉︎」
「いや、頭のアンテナがズレているのかと、は? 貴方死にたいんですか?」
「意味が分かんねえ⁉︎」
「一夏‼︎」
「ああもう今度はなんです」
「ら、来月の個人別学年トーナメントだが、わ、私が優勝したら、つ、付き合って貰う!」
「……はい?って痛った⁉︎ おいハリなんだよ急に⁉︎ 痛⁉︎ 痛いって⁉︎ ぶっふ⁉︎ 無言で殴んな⁉︎」