TIME IS MONEY   作:遠人五円

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ミッションを説明しましょう。
依頼主は亡国機業、目的はイギリスの第三世代IS、サイレント・ゼフィルスの強奪になります。
敵の主戦力はイギリス軍及びイギリスのIS部隊が予測されますが、所詮は第二世代機、そちらの実力次第ですが対した問題にはならないでしょう。
作戦時間は五分。その間に敵部隊の制圧、並びにサイレント・ゼフィルスの強奪を済ませてください。
一応言っておきますとサイレント・ゼフィルスが収容されている施設は多くの監視カメラと衛生から常に監視されています。カメラに映るようなヘマをするとは思いませんが、その時は自己責任でお願いしますよ。
説明は以上です。
亡国機業との繋がりを強くする好機です。そちらにとっても悪い話ではないと思いますが?



第9話 鶏群の一鶴

  身体に感じる心地いいを通り越して痛いぐらいに鋭い風がハリの神経を研ぎ澄ませていく。秒針が時を刻むようにズキズキとした細い痛みがリズムよくハリの全身を流れ続け気持ちが悪い。だが気分は最高だ。なんでもできるような万能感が身を浸し。360度周りの世界が目で見るより鮮明に直接脳内に叩き込まれる。正に別世界にいるような感覚。このまま地球を覆う薄く偉大な青い膜を突き抜けて果てしない世界へと飛び出したい気持ちをぐっとハリは堪え、目前の右上側に表示され続けている忌々しいカウントダウンを見て大きく舌を打つ。

 

「ミッションを開始する」

 

  それに加えて聞き慣れたダリルの真面目ぶった声が鬱陶しい。真剣な声音を頑張って出しているが、最後に聞こえてくる含み笑いを隠そうともしていない。折角の日曜日。ISに乗るのは悪くないが、本当なら美味しいオムレツに苦めのコーヒーでブランチでも洒落こみたいとハリは思う。何が嬉しくて土曜日の夜からダリルの叔母に会いに行くと嘘をつきイギリスまで直行し、五分すごしてとんぼ返りしなければならないのか。しかもその間ダリルと常に一緒なのだ。世界中に潜んでいる亡国機業の工作員達は実はほとんどダミーで人員不足なのではないかとハリが疑うのはしょうがない。わざわざIS学園にいるハリとダリルを使うなど嫌がらせとしかハリは考えられなかった。更に悪いことにIS学園を出る際にしっかりとダリルを見送りに来たダリルの女と遂にハリは遭遇し。親の仇を見るような目で最後見送られた。「今度ゆっくり話をするっス」という影の差した笑顔はハリをして冷や汗が額を伝った。今頃一夏は久しぶりに弾と会うと言っていたので二人でゲームでもしている頃だ。ハリも誘われたが、丁寧にお断りをして弾に一夏を殴っておくようにメールを打った。

 

「目標はサイレント・ゼフィルスの強奪。残り4分30秒しかない。敵IS部隊が出る前に敵の防衛部隊を叩く。時間との勝負だ。イギリスに来たからといって紅茶を飲む時間はないぜ」

 

  海面すれすれをかっ飛ぶハリの目に目標の施設が映像をコマ送りしているように近づいてくる。ハリの纏うISの速度は、IS学園でいつもハリが使っているラファール・リヴァイブの比ではない。風によって巻き上げられた海水の雫が、ハリの目からは止まっているかのように目に映る。施設を守っている部隊の兵士達。未だハリの接近に気付いておらず、間抜けな顔でマネキンチャレンジをしている姿がハッキリと写った。

 

「さあパーティーの始まりだ。派手に行こうぜハリ!」

 

  ダリルはもう真面目に喋るのに飽きたらしい。口調はいつもの感じに戻り、これから起こる悲劇に楽しそうに声をくねらせる。それを合図にしたわけではなかったが、高ぶった意識を吐き出すように、ハリは両手に握ったライフルの引き金を引いた。

 

  銃声。それとともに打ち出された弾丸さえハリからすれば遅過ぎる。前に突っ込みながら引き金を引いたのでは下手をすれば自分に弾が当たってしまう。横にスラスターを吹き出しながら放つ弾丸は銃弾の壁を形成し、海岸沿いに控えている兵士と兵器を圧殺する。

 

「なんだ⁉︎ 何が起きたんだ⁉︎」

「衛生兵‼︎ 衛生兵‼︎」

「ISだ⁉︎」

「なんで分かる⁉︎」

「こんなのISにしか無理だろ!」

「でも姿が見えないじゃないか⁉︎」

「救援だ! IS部隊に救援を要請しろ‼︎」

「んっん〜〜、いい声だ」

 

  ISのハイパーセンサーが聞きたくもない阿鼻叫喚と化したイギリスの軍事施設の情報を余すことなくハリに伝える。ハイパーセンサーを切ることもできるが、それでは感度が落ちてしまう。聞いているだけのダリルは楽しんでいるようだが、ハリにその余裕はない。舞う血飛沫が機体を汚すのも気にせずにその場を蹂躙し尽くす。防衛部隊は既にその機能を果たす力を失い、銃弾の雨から身を守ることしかできない。

 

「クソッ! 被弾した‼︎ 被弾した‼︎」

「ISはまだなのか⁉︎ ISは⁉︎」

「兎に角撃て‼︎ まずはシールドエネルギーを減衰させるんだ‼︎」

「無駄なことだな。おいハリさっさと片付けちまえよ。時間が惜しいぜ」

 

  黙っていてください。といつもなら口に出すハリだがその余裕はない。この限られた時間を存分に味わう邪魔を自分自身でしたくはない。ハイパーセンサーが人の声を拾うことなく、弾ける炎の音と地面でガラクタとなった戦車のキャタピラの音だけになるまで30秒。その30秒だけで防衛部隊二百人がこの世を去った。それになんの感情も見せず、施設の壁を破壊して内部に入る。大きな通路の先へ進めば、目的のモノはすぐに見つかった。

 

「サイレント・ゼフィルスを確認。さっさと持って帰って折角だしイギリスを回ろうぜ。っと熱源反応多数。IS部隊のお出ましだ。どうやらアメリカの一件が効いてるみたいだな。到着が早え。わざわざ死にに来るなんて笑えるな」

 

  ハリのISが熱源を捉える。その数六。少なくない数だ。たった一機の侵入者に対して六機ものISを差し向けるのは異常と言える。ダリルの言う通りよほど懲りているらしい。アメリカに二の舞になるのは御免なのだろう。なにせ第三世代IS。イギリスの技術の結晶だ。ハリが時間を確認すればまだ3分も時間が残っている。たまに本気で遊ぶには十分な時間だ。六機のISの反応は施設を取り囲むように展開しており、逃がす気など微塵もない。その方がむしろありがたいと、待機状態のサイレント・ゼフィルスを手にして壁を打ち壊しハリは外へと飛び出した。

 

「敵IS出ます! そんな……やっぱり‼︎ 赤いIS‼︎ 例の赤いISです‼︎ 嘘……早過ぎる⁉︎ ハイパーセンサーで捉えきれない⁉︎」

「持ち堪えろ‼︎ 全機で叩く‼︎ ここでみすみす逃してはイギリスの恥だ‼︎」

「ハッキング完了。内緒話なんてつれないよなあ。敵の通信を傍受した。さあ楽しんで行こうぜ」

 

  余計なことをしてくれるオペレーターに悪態を吐く時間はなく、六機が一つの生き物のように動き始める。IS学園ではまだお目にかかれない本物の連携。凡庸機とはいえ、それが同時に無駄なく連動して動かれると面倒だ。その動きが形になる前に潰す。ヒーローが変身するのを待つ悪役など馬鹿だ。六機を一度に相手をする必要はない。一機ずつ確実に潰していく。目前の相手に狙いを定めハリはISのスラスターに火を入れる。瞬時加速(イグニッションブースト)。異次元の加速。赤い残光を残して敵の視界からハリの姿が消える。

 

「なッ⁉︎ まだ早く⁉︎」

「ISのハイパーセンサーってのは優秀だ。だからこそいざという時それに頼っちまうが、それじゃあ泥沼に嵌るだけだぜ。ハリのISの武装は両手に持ったライフルだけ。残った分の空きスロットを全部スピードに回してんだ。それに加えてハリの体質に合わせて莫大なエネルギーを全て超短期決戦に使い切ってる。早えなんてもんじゃねえ、オレにだってハリのISは使えねえよ。目を回しちまって戦闘なんてまず無理だ。本当に嫌になるぜ天才ってのは、ほら一機」

 

  超高速戦闘をするハリに誰もついていくことができない。一人だけ住んでいる時間が違う。放つ弾丸よりも早く動き、狙った相手に上下左右前後ろ、同時に着弾するように銃弾を配置する。弾を撃つのではなく弾を置くとはそういうことだ。敵の動きを予測して銃弾を配置し続ければ、相手は動くこともできなくなる。実際ハリに狙われたイギリスのIS操縦者はこれまで見たこともない光景に固まってしまった。視界の中を赤い糸が揺らめいている。ISのハイパーセンサーが自分を取り囲んで球状に弾丸が迫っていることを常に警告している。鳴り止まぬアラーム音と赤い糸。その糸が密度を上げて収縮する様を最後に、ハイパーセンサーから齎される情報を処理しきれずに操縦者の脳がシャットダウンした。力なく落ちていくISにハリは興味をなくし、次の獲物を縊り殺そうと赤い尾を空に引く。

 

「二機目」

 

  ハリに狙われたISを外から眺めていた他の五機のIS操縦者も見た光景に目を疑った。味方のISが赤い糸玉に包まれてそれが縮まったと思えば味方のISがエネルギーも切れていないのに地面に向かって落ちていく。理解が追いつかない。今相手をしているモノは本当にISなのかという疑問すら出てくる。その赤い軌跡が新たな獲物に肉薄するのを見ていることしかできず、何も出来ぬまま同じように二機目が地に落ちた。

 

「三機目」

 

  ここまで来たら当たろうが当たるまいが関係ない。青空を駆ける赤い彗星に兎に角引き金を引く。ハイパーセンサーに引っかからず、ロックすることも出来ない。目視で敵を狙うしかないが、ISに浸かれば浸かるほどそういう技術が億劫になる。ISは素晴らしい兵器だ。優秀すぎる。才能のないものでも使えるが、その代わり才能がないとISに喰われてしまう。人がISを使うのではなく、ISに人が使われる。ISからの情報に振り回されるのがその証拠。焦りによってただ引き金を引くIS操縦者ほど惨めなものはない。ハリの零すため息に吹き消されるように三機目も落ちる。

 

「四機目」

「クソッ! クソッ! これがISの動きだって言うなら私達はいったいなんだ⁉︎」

「落ち着け! おそらく単一使用能力か何かだ! 相手だって人間なんだ、勝てないことはない!」

「おー冷静、こいつが隊長か? 優秀なら優秀なほどよく分かるだろうによ。自分がぜってー勝てねえって。こう見るとセシリアって奴の方がマシだな。あいつの方が見所あるぜ。笑えるな。これまで女しかISが使えないとか言って偉ぶってた癖に、いざ一人異端が出れば全部おじゃんだ。織斑 一夏も甘くねえしこりゃまた世界が変わるかよ。世界を変えるのはいつだって天才様だよなー」

「黙ってください」

 

  いい加減気が散ります。と言ってハリは五機目を落とす。もう少し歯応えがあるかと思えば雑草を抜くのと変わらない作業にハリもウンザリしているというのに、耳元でベラベラと口を滑らせ続けるダリルにハリの我慢の限界が来た。だがハリが口を開いて黙るはずもなく、より機嫌良さ気な声を出すダリルを止めることは誰にもできない。

 

「お前よーやっと喋ったな! お前が喋らねえとオレがずっと独り言言ってるみたいになるだろ!」

「実際独り言でしょう。僕は相手の通信と貴女の声を聞いているからいいですが、相手に貴女の声が聞こえているわけではない。なにしたり声で解説なんてしてるんですか。僕の解説よりも相手の情報をください」

「だっていらねえだろー。はいはい、後残り時間二分。敵の隊長は満身そーいー」

「やる気がないなら通信を切ってください。その方が集中できる」

「酷い⁉︎ こんな美少女の相棒にそんなこと言うなんて⁉︎……って、ん? なにやってんだこいつ」

「チッ!」

 

  最後に残ったイギリスのISが装備を全てかなぐり捨ててハリのISの軌道上に無理矢理割り込んできた。ISの防御力に賭けての強引な組み付き。いつものハリなら捕まることなどなく蜂の巣にしておしまいだが、ダリルに気を割いたのが間違いだ。肩の部分に引っ付かれ、振り解こうと相手の出せる限界以上の速度で引き摺り回す。すぐに相手のISは引き剥がせたが、その一瞬が命取り。人には無理でも、ISならば情報を整理するだけの時間がある。ISが整理した情報を見て、唯一残ったイギリスのIS操縦者は目を剥いた。

 

「そんな……その機体、数年前に世界中の要人を招いての次世代を担う新型ISの批評会で一度見た……。そんな、そんな馬鹿な! それは世界で最も美しいと言われたIS! なぜそれが⁉︎」

「……おいハリ落とせ」

「クラースナヤ……」

 

  赤。それは情熱の色。生命を持った炎がこの世に存在するならば、それはクラースナヤを置いて他にはいない。均等の取れたボディ。無駄な要素を全てそぎ落とし、骨格に必要なものだけを詰め込んだ姿。異端なはずの全身装甲は、人の身では大き過ぎる空気抵抗を切り裂くため。空を走る大火がゆっくりとライフルの銃口を向ける姿は、名工の彫像。最高の名画。その姿に見惚れながら、夢を見ているかのように6機目も大地へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ機嫌直せよ」

 

  イギリス。ロンドン、ヒースロー空港そのカフェでハリとダリルは帰りの飛行機までの時間を潰していた。食事はさておき、ティータイムを大事にするイギリス人の紅茶愛は凄まじく、紅茶など好んで飲まないハリとダリルの口にもあった。サクサクとしたスコーンと香ばしい紅茶は素晴らしいが、ハリの機嫌が直るのには足りない。変装のためにダリルもハリもサングラスをかけているのだが、それでも表情が分かるくらいにハリから黒い空気が滲んでいる。修羅場と勘違いしている周りの旅行客からの視線が痛い。

 

「てかオレ悪くないよな。お前のせいだろ」

「……まあそうですね」

「いいじゃねえか、ミッションは成功。上からもそろそろバレると思ってたからってお咎めなし。全身装甲だから顔もバレてない。なんも問題ねえだろ」

「問題だらけですよ。最悪の休日です」

「そう言うなって、タダで海外旅行だぜ」

 

  亡国機業の層は浅くはない。至る所の主要機関に潜り込んでいる。その一つが空港だ。怪しい者が入国しないように審査する入国審査官。その役職にどの国でも最低でも一人は亡国機業の者がいる。亡国機業のエージェントが海外へ赴く際は、この役職の者が偽装をし、パスポートなどの記録を残さず、無償で外へとエージェントを飛ばすのだ。深く広く。積み重ねた黒い時間は伊達ではなく、ハリやダリルさえ亡国機業の底は知らない。

 

「それはいいですが、こんなところで時間を潰していていいんですか? 彼女さんにお土産の一つでも買っていったらどうです」

「フォルテはギリシャ代表だしなあ、ヨーロッパの土産なんてなにがいいか」

「僕は買いましたよ」

「フォルテに? なんでお前が……まさかお前オレからフォルテ取る気じゃねえだろうな!」

「それこそまさか、後が怖いからですよ。見ましたか、IS学園で貴女を見送った後に僕に見せたあの顔を」

「かわいかったな」

「死んでください」

 

  こんなダリルだがちゃんとフォルテのことを大切に思っている。フォルテは亡国機業とは関係ないが、だからこそダリルにとって大事なのだろう。自分が自分でいるための境界線。ハリもダリルもどっぷりと亡国企業に浸かっているが、亡国機業の色に染まる気はない。染まる気はないが、黒を塗り重ねたような亡国機業の色は濃く、何か目印がないとすぐに何もかもを見失ってしまう。それがダリルにとってはフォルテなのだ。ダリルがハリの幼馴染というのは嘘ではない。そんな幼馴染の彼女に気を使うくらいの甲斐性はハリにだってある。

 

「僻むな僻むな。お前も恋人の一人や二人できれば分かるって」

「必要ありません」

「つまんねー男だなお前」

「僕が女性を蝶よ花よと愛でてるところを見て楽しいんですか?」

「すっげえ楽しい」

「……ぁあそうですか」

 

  この手の話は昔から終わりがないのでハリは相手をしない。IS学園にダリルが行くまでは更に不毛な会話だったのだが、IS学園に通ってフォルテと恋人になって以降別ベクトルで不毛になった。恋話が好きなあたりダリルも外見に似合わずしっかりと女の子だ。しかし、そんなダリルの雰囲気が少し鋭くなったのを見て、ようやくかとハリはため息を吐いた。

 

「まあそれは置いとくとしただハリ。今度の学年別トーナメントお前はどうするんだ」

「出ますよ。織斑 千冬から直々に頼まれましたから」

「ブリュンヒルデから?」

「壁を教えてやれと」

「今年の一年は大変だな。折角だし一年はお前、二年はフォルテ、三年はオレでワンツースリーフィニッシュといこうぜ」

「僕は可能です。貴女も問題ないでしょう。ただ、フォルテさんは厳しいんじゃないんですか?」

 

  ハリはフォルテの実力を疑っているわけではない。ダリルが認めているのだから強いのは確かだ。しかし、IS学園2学年には一つ大きな壁がある。IS学園生徒会長、更識 楯無。自他共に認めるIS学園最強の操縦者。IS学園に入る前からハリもその名前はよく聞いた。亡国企業すらも警戒する相手。実際にハリはIS学園で注意が必要な人物の一人としてその名前を聞いている。

 

「んーフォルテとあいつとの相性は別に悪くはねえんだけどな。ただオレがお前と戦うみてえなもんだ」

「なら勝ち目がないじゃないですか」

「言うよなーお前。ならフォルテに力貸してやってくれよ。フォルテが強くなった方が生徒会長様の実力もよく分かるだろうし」

「なんで僕が、貴女がやればいいでしょう」

 

  一度会えば分かる。ハリの前ではフォルテは氷のように冷たく、溶ける気配は全くない。ただただ凍傷になるというのが分かっているのに、手を出す阿呆はいない。北風と太陽。北風がハリで太陽がダリル。どれだけハリが頑張ってもフォルテは服を着込むだけなのだ。無駄な努力はしないに限る。

 

「オレじゃあダメだ。お前だからいいのさ。お前はフォルテに嫌われてるから適任なんだ」

「意味が分かりません。ストレスしか溜まりませんよ」

「大丈夫だって、フォルテのストレスはオレが発散させるから」

「僕のストレスの話ですよ」

「それは知らねえ、織斑にでもアタれ」

 

  フォルテとハリが争うのがダリルには大変面白いらしい。自分を巡って争っているようで愉快とのこと。その通りなんとか授業に間に合うように二人ともIS学園に帰ることができたのだが、ハリが暴れたせいでイギリスの検問が少々厳しく帰れたのは月曜の早朝。朝帰りとなったハリにフォルテが突撃。梅雨の雨は雹となり、ハリの頭上に降り注いだ。ダリルも誤解を解く気はまるでなく、氷に塩を撒くだけで事態が悪化。IS学園の玄関口が三日間凍りついた。ハリが買ってきたお土産はそれだけ怒っていた癖にフォルテはちゃっかりいただき、更に放課後訓練の相手をすることになった。訓練と称してフォルテはハリを叩き潰す気満々だ。ダリルの思惑通りに進んでいることにハリは頭を痛め。先日の箒の宣言に尾ひれがつき、学年別トーナメントで優勝すればハリか一夏と付き合えるという理解不能な噂に頭を痛め。弾の妹がIS学園に入学を決めたという弾からの泣きメールで頭を痛め。クラスに転校生が二人来るという情報をトドメに、その日ハリの機嫌は地の底を抜け、転校生が現れる前に一組の教室はお通夜状態となった。




学園生活の方がハードモード
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