なんやかんや頑張るネギま逆行物語   作:ハイルミッテル

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 とある世界で一人の男が死んだ。その男は奇しくも神様と出会い、転生することと相成った。勿論、テンプレの如く特典をもらって。
 もらった特典は四つ。Fateに出てくる沖田総司の能力と経験。七夜の体術。直死の魔眼。
 しかし、現実とは兎角非常なものだ。死んだ男は元々ただの人間であり、その四つの力を扱う器など無かった。故にそれは必然。男は力に飲まれ、崩壊する。
 取り残された力は器を求め時空を彷徨う。

 そして、偶然男と同時刻に■■■一人の男を見つけた。

 ――――奇しくもその男は、それら全ての力を受け入れて尚余りあるほど大きな器を持っていた。


始まりの一日

 

 ――――何故、こんな結末になってしまった?

 

 光の差し込まない眼の前すら見えないくらい部屋で、彼は嘆くように、懺悔するかのように椅子に座りうつむいていた。

 脳裏に浮かぶのは仲間たちの■■。守れなかった人たち、仲間を■■た人間の顔。

 

 ――――分かりきっている。俺が弱かったからだ。

 

 その顔はまるで廃人のように一切の感情が見えない。目は光を失い、数日間寝ず、食わずで過ごしたせいで出来たクマと頬のコケが目立つ顔。

 最早何時死んでも可笑しくない状態で、彼は自問自答を繰り返していた。

 

 攻めるように。

 

 嘆くように。

 

 それでもその顔に感情が浮かぶことはない。そんなもの、とうの昔に忘れ去ってしまったから。唯一あるとすれば、自分自身に対する怒りだろうか。

 

 ――――もし、もしもやり直せるなら――――

 

 不意に彼の右手に力が籠もる。死にかけている人間とは思えない程力強く、握り込まれた()()は悲鳴をあげるようにギチギチと音を立てた。

 握る力をそのままに、彼は手を喉元に持っていく。そして――

 

 

 

 ――――()()()()()()は、この世から姿を消した。

 

 

◆◇◇◆

 

 

 その日、学校をサボってその場所を歩いていたのはただの気紛れだった。

 ただ家に居ても何もすることがないため暇潰しで歩いているだけ。だが、偶にはこんな日もいいなと思っていた。

 周りは木に囲まれ、澄んだ空気が心地良い。日差しも程よく遮られているからか、太陽を忌々しく思うこともない。それどころか普段煩わしいほどの太陽は木漏れ日に紛れ暖かく降り注いでいた。

 

「昼寝をするにはいい場所だな」

 

 独り言ちて丁度見つけた木の幹に座り込む。そして眠るために目を閉じようとした時、視界の端に何かの塊が映った。

 怪訝に思い顔を顰めながらその何かを見つめていると、小さく上下しているように見える。

 もしや狩り残した侵入者じゃないだろうな、と訝しみながら昼寝を邪魔された八つ当たりを込めつつ勢いよく立ち上がりそれに近づいた。

 

 近くで見るとそれがなんなのかがよく分かる。大事そうに日本刀を抱きかかえ、今にも死にそうに脂汗を流しながら浅く呼吸を繰り返している()()()()()()()()()()

 

「んなっ、なんでこんな所にガキが……!?」

 

 てっきり侵入者と想定していたがために倒れ伏しているそれに驚愕する。

 だが、瞬時に今は驚愕している場合ではないと思い直した。外傷は特にない。強いて言えば喉元にある既に塞がっている刀傷のようなものが目立つ程度。ならば何故、と考えながら少女の身体を抱き上げる。

 ここで触診をしても良いが、今自分は魔力を封じられている。それに魔法薬も持ってきていない。応急処置をするにも道具がなさすぎるからだ。

 抱きかかえて走ること数分。漸く目の前に見覚えのある家が見えてきた。玄関の所では洗濯物を持った茶々丸が驚いたように――無表情のまま――こちらを見つめている。いや、正確には抱きかかえられている少女を。

 

「マスター? そちらの方は……?」

「説明は後だ。茶々丸は取り敢えずタカミチとジジイを呼んでこい。今すぐだ」

「了解しました」

 

 言うやいなや茶々丸は持っていた洗濯物を玄関の隅に置き、飛んでいった。ソレを音で確認しながら家に入り、適当なソファーに少女を寝かして触診を初めた。

 

 

 

 

 ――――夢を見ていた。懐かしい夢、まだ何も知らない頃の夢。あの頃は魔法の秘匿なんて考えも付かず周りの人に迷惑をかけてばかりだったっけ。それで巻き込んで、最後は……。

 そう言えば、夢を見ていたということは、俺は(そこな)ったということだろうか? だとしたら……あぁ、なんてマヌケ。今頃俺の身体は捕らえられているのだろうか。もしそうなら……どうなっているのだろう。依代にされているか。それとも……。

 まあ、もういいや。全てが面倒臭い。何にもやる気が起きない。確か日本ではこういうのを無気力症候群、とか言うんだっけ。懐かしいなぁ。

 

 ……最後に、何を考えていたんだっけ? こんな昔の夢を見ているのだから昔のことを考えていたのだろうか。……少し、違う気がする。確か……そう、そうだ。やり直せるなら、なんて考えていたんだ。

 ……バカだなぁ、俺。あの時は必死に止めようとしたのに、いざ自分のこととなると必死にやり直したいって願って。今なら、あの人が言っていたこと、考えが明る気がする。……気がする、だけなんだけど。

 

「――――」

 

 ……ん? なんだろう、聞き覚えのある声がする。懐かしい声。コレは……この声は、誰の声だったっけ? 確か……ダメだ、記憶が混濁している? 懐かしいと、そう感じるのに名前も、顔も浮かんでこない。

 ――あれ? そう言えば、仲間の顔ってどんな顔だったっけ? いや、覚えているはずだ。覚えているだろう。忘れるわけがない……ッ! 忘れてはならない記憶のはずだろう……ッ!? 思い出せ、思い出せ思い出せ思い出せ――――ッ!!

 

「――――」

 

 また聞こえる声。凛として艷やかなこの声は……女性、だろうか。特にこの声は酷く自身に溢れているように聞こえる。それでいて苛立たしそうで……そう言えば、こんな声で叱られたこともあったっけ。

 記憶が曖昧だ……やっぱり、思い出せない……。

 

「……ぅ……」

「――――?」

 

 考えすぎていたせいか、小さく自分の口からうめき声が出る。ソレが聞こえたのか、頭上から尋ねるような声が聞こえた。

 ……ん? 頭上から? ……そう言えば、なにか暖かいものに身体を包まれている気がする。コレは一体何だ? どういうことだ?

 困惑しながらも、いまだ寝惚けている頭を叱咤し瞼を開ける。視界に飛び込んできたのは、見覚えのない/見覚えのある天井だった。

 

「漸く起きたか」

 

 目を開けて脳が覚醒したおかげか、漸く聞こえた声に首を動かし目を向ける。金髪の幼女……にしか見えない少女がふんぞり返って偉そうにこちらを向いていた。その数歩後ろには無表情の女性が侍るように立っている。さらに周りを見渡すと、どうやら自分はソファーで横になっているらしい。近くには髭の生えた後頭部の長いお爺さんと、スーツを着た髭の生えた男。

 ……警戒の念が見え隠れするけれど、どういう訳か強制的に排除しようという気配は感じない。それどころか、スーツの男は痛まし気にこちらを見ていた。……一体どういうことだろう……?

 

 身体を動かすたびにギシギシと悲鳴をあげる身体にムチを打って上半身を起こす。そうして、この中で一番偉そうな少女に目を向けてから口を開けた。

 

 ……開けた。

 

 …………開けた、のだが。

 

「…………」

 

 マヌケにも何度か開いたり閉じたりしながら声を出そうとしてみても、口から漏れるのは空気ばかり。喉に手を当てて触ってみても結果は変わらなかった。それに対して少女が訝しげに眉を顰める。

 

「貴様もしや、声が出ないのか?」

 

 問いかけに、小さく頷く。自分自身声が出ないことが信じられないが、事実出てないのだから頷くしかない。

 それにしても何故声が出なくなったのだろうと考えて、一つの可能性が頭に浮かんだ。

 この場所に来る前の最後の行動。アレのせいならば……納得できる。

 

 俺が頷いたことに少女は面倒臭そうに溜息を吐き、お爺さんとスーツの男は同情するような視線を更に深めた。……自業自得のことなのだが、なんとなく居心地が悪い。

 

「しょうがない。茶々丸、書くものをここにもってこい」

「了解しました」

 

 侍るように立っていた女性が幼女に声をかけられると、迷いなく一礼してから何処かに向かっていった。

 俺が喋れないから、筆談でもさせるためだろう。

 

「茶々丸が来るまでにいくつか質問する。YESなら頷け。NOなら首を振れ。良いな?」

 

 やむを得まいと頷くことで返事をした。ソレを見て少女も一つ頷くと、お爺さんとスーツの男に目配せをする。数秒三人で見つめ合い……再度面倒臭そうに少女が溜息を吐いた。

 

「……はぁ、面倒だ。取り敢えずまず聞くぞ、貴様は侵入者か?」

 

 ……侵入、と言うことはここは結界か何かに依って守られている場所なのだろうか。そう考え、気付かれないよう眉を顰めた。

 最初から返答に困る質問だ。主観的に見れば俺は侵入者じゃないと断言できる。だが、客観的に見ればどうだろう。いつの間にか俺はここで寝かされていた。最後に居たのは廃墟の中で、守られているような場所からは遠く離れている。つまり突然ここに居たとしか言えないのだ。とすれば、侵入者としか見えないだろう。

 主観で伝えるか、客観で伝えるか……小さく悩み、結局俺は首を横に振った。侵入者かどうかは自信を持って言えないが、害意を持ってここに居るわけではないから。

 

 数秒、品定めするように俺の目を見つめてから、目の前の少女は次の質問を口にする。

 

「貴様の狙いは世界樹か?」

 

 世界樹……と言うことは、ここには神木・蟠桃があるのだろうか。だとしたら……いや、まさか。ありえない。

 取り敢えず首を振る。

 少し間があったことに訝しげに睨みつけてきたが、そのまますぐに次の質問に移った。

 

「貴様は関西呪術協会の者か?」

 

 コレには迷わず首を振る。一応、呪術が使えなくもないが本職には足元にも及ばないし、何より俺は魔法使いだ。どちらかと言えば関東魔法協会の方に縁がある。

 それに……俺の立場上、何処かに所属することは出来なかったから正直どこでもないのだ。

 

 他に質問することがないのか、目の前の少女はじっとこちらを見つめたまま沈黙する。周りの人も何も言わないため、酷く居心地が悪い。

 どうしようか、と考えた直後、「マスター、持ってきました」という声と共に目の前に白紙のメモ帳と万年筆が置かれた。声のした方に目を向けるとさっき居なくなった女性が音もなく佇んでいる。

 それを楽しそうに顔を歪めながら見届けた少女は口を開き――

 

「よし、良いタイミングだ。それに名前を書け」

 

 ――反射的に、身体が固まった。

 あぁ、そうだ。それを聞かれることぐらい想定できただろうと内心で自分を罵倒する。

 ……俺の名前は世界的に見ても史上最悪の犯罪者として知れ渡っている。恐らく知らないのは余程の田舎か、生まれたての言葉を介さない幼児ぐらいだと言える程に。ならば今ここで名前を明かしてしまえば……最悪な想像に血の気が引いた。

 恐らく名前を書いた瞬間、俺は周りの人らに一斉に襲いかかられるのは目に見えている。……例えこの身が悪に堕ちていようとも、関係のないと思われる人を好んで傷付けたくなどない。それに、今俺はかなり衰弱しているだろうことははっきりと分かっている。その状況で襲われたら、抵抗出来ないこともある。ならばどうするか。

 

 小刻みに震える手に力を入れて、万年筆を取り白紙の紙に文字を書く。震えたせいで見れたものではないその文字は、けれど辛うじて読める程度には形を保っていた。そこに書いた文字は――――

 

 

 

 

 シンと静まり返った部屋。誰もが微動だにせず声も発さないため、目の前で眠る少女の小さな寝息と静寂故の耳鳴りが聞こえるのみ。

 ふと横を見てみると、タカミチもジジイも難しそうな顔をしてたった一言書かれたメモ帳を睨みつけていた。

 

『わからない』

 

 白紙の紙には震えた文字でそう書かれている。大凡タカミチもジジイもコレが嘘か誠かを悩んでいるのだろう。

 だが……個人的な考えを言えば、嘘とは思えない。起きてからずっと感情のない表情で居たのに、名前を聞いた時だけは酷く焦燥したように、恐れるようにしていたのが印象的だったからだ。

 あの怯えようは嘘とは到底思えない。

 

 だが、気になることもある。世界樹のことを聞いた時なぜか考え込んでいたこと。

 そして――まるで、何もかもに絶望したかのような、光を通さない不気味な瞳。絶望したものなどコレまでの人生で腐るほど見てきたが、けれどこれ程濁った瞳をした人間など見たことがない。一体どんな人生を歩めばあんな目になるというのか……。

 

「取り敢えず」

 

 思考を遮るようにタカミチの声が耳朶を打つ。気が付けばジジイも顔を上げて少女を見ていた。

 

「取り敢えず僕は、このまま経過観察で良いと思います。どうにも僕の目には嘘を吐いているようには見えないし、何より……彼女は起きてから一切僕達に敵意を見せなかった」

「そうじゃのう……それに、多少体調が戻ったとは言えかなり辛そうじゃからの、まだ不透明じゃがすぐに捕らえる程切羽も詰まっておらんしの」

 

 どうやら二人共このまま経過観察という結論に達したようだ。斯く言う私もそれに異論はないが。

 あぁ、いや。一つだけあった。

 

「じゃあコイツは私が預からせてもらう。異論はないな?」

「えっ?」「ほっ?」

「なんだ? 年を食って耳の方も遠くなったのか?」

 

 異口同音……とまではいかないが、似たように間抜けなツラをして驚いたようにこちらを見るジジイとタカミチに、青筋を立てながら頬を引き攣らせにらみつける。

 だが、余程さっき私がいった言葉が信じられないのか、睨みつけても微動だにせずこちらを凝視したまま。

 

「……なんだ、文句でもあるのか?」

「……ごほん。あぁー、いやそういうわけじゃないんじゃが……」

 

 我に返ったように慌てて咳払いをして、取り繕おうようにヒゲを撫でている。横では苦笑いしながら後頭部を掻いているタカミチがいた。

 自分自身、この提案がらしくない……というのは分かっている。普段の私なら適当に捨て置いただろう。だが、なんというべきか……眼の前で眠る少女の、その瞳に異様に惹かれている自分がいるのだ。

 

「えーと、理由を聞かせてくれないかい?」

 

 尚も苦笑いしながら問いかけるタカミチに、鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 ……そして口を開いた。

 

「理由はいくつかある。まず一つは、不透明なコイツを病院に連れて行く訳にはいかない事。逃げられでもしたら目も当てられないからな。同じ様な理由で、よく出張するタカミチにも預けられん。

 ジジイも同じ理由で却下だ。そうなると他の魔法教師だが……コイツの倒れていた原因、魔力枯渇を回復させている魔法薬は私の自作のものだ。監視は出来るだろうが、仮契約(パクティオー)でもしなければ魔力の回復には当てられないだろう。

 あとは…………少し、興味が湧いた」

「興味……?」

「あぁ。コイツの濁った瞳。喋れない理由。まあ色々とあるが……そうだな、いうなればコイツ自身に興味が湧いた。それだけだっ」

 

 言っている最中に、どういう訳か少し恥ずかしくなり最後は若干早口で言い終える。

 ちらりと二人を見てみると、苦笑いのままだがその目はなぜか孫を見守る祖父のように暖かいもので――――

 

 ぷちっ、と何かがキレる音が自分の中から聞こえた。

 

「――上等だ貴様らッ! 表にでろ、八つ裂きにしてくれるッ!!」

「ちょっ、待つんじゃエヴァ! 老人にはもう少し優しく――」

「お、落ち着くんだエヴァ、今騒いだら寝てるその子が」

「そんなモノ知るかっ! 二度とそんな目で私を見れないように潰してやるッ!!」

「「ちょ、ま、アァーッ!?」」

 

 

 空が夕焼けに染まった頃。喧しい声が森の中に木霊した。

 それを茶々丸は無表情でありながら楽しげに見つめ、良い夢でも見ているのか、小さく、本当に小さく少女の顔に笑みが浮かんでいた。

 




◆は視点変換
◇は時間経過
◆◇◇◆は時間経過&視点変更を意味してます。

……余り長々書くのは好きじゃないので。
ここまで呼んで頂きありがとうございます。もし面白かったと言って頂けるのならこれからも宜しくお願いします。
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