宇宙よりも遠い場所13話を見た感動収まらずに書きました。
「ははっ、キマリのやつ驚いたかな」
そう言って、私はスマホのメッセージアプリの既読通知を見ながらほくそ笑んだ。
キマリを驚かせるためにこの何ヶ月か、ずっと頑張ってきたのだ。
あいつにはベッドから転げ落ちるぐらい驚いてもらわねば。
キマリが驚いてる姿を想像したら、また笑いがこぼれる。
わたしの親友はリアクションがいちいちオーバーで面白いから、想像だけで笑ってしまう。
あぁ――、それにしても私はこんなとこまで来てしまったんだな。
頭上を見上げればこんなにも綺麗なオーロラが満点の空の中で踊っているようだ。
館林にいや、日本にいたままじゃ、絶対見られなかったこの光景。
私にこれを見るための一歩を歩かせてくれた、キマリには感謝してもいいかな。けど、わたしの中ではまだ絶交中だからな。感謝はちゃんと仲なおりしてからでいいか。
あいつは南極に行ったかもしれないけれど、わたしは北極に来たんだ。
ほんとうに我ながらだいそれたことをしたもんだ。
最初は、単純に南極ってどういう所なんだろうって思って調べるところから始まった。
そこからどんどん私もキマリみたいにこんな場所に行ってみたいと思うようになった。
いや、それに加えてキマリに対する見栄もまだ残ってたんだろう。
あいつが南極に行くなら、わたしは北極に行ってやろうじゃないかって、子供的にもほどがある。それでも、それをやり遂げた今はこんなにも充実した気持ちになっている。
キマリもこんな気持ちで南極の空を見ていたのだろうか。
あの時――キマリが旅立っていく日、もう友達としての関係は終わったと思った。旅に向かう友人に対して、わたしは最悪の見送りをしたのだ。
もう、あいつの足を引っ張るような自分ではいたくなかった。そして、足を引っ張るようなことをしておいて、それを黙ったまま上っ面だけの友達でもいたくなかった。
不器用で性格最悪。
自分はどうしてこう育ってしまったのだろうかと思わずにはいられないし、どうして、あんなことをしてしまったのか。後悔が尽きることはない。
それでも、またあいつと……「絶交無効」と言ってくれたキマリと会った時に少しは成長した自分でいたいから。だから、わたしも一歩を踏み出した。
いつの間にか、わたしよりずっと先を歩くあの親友に追いついて、今度こそ本当にわたしの方が彼女の手を引いてあげてやるんだ。
北極の空は果てがないように何処までも広がっている。
星は輝き、オーロラは神秘的な光で広大な空を埋めつくしている。
綺麗とか美しい、そんな言葉が頭の中を駆け巡るがどの言葉でもこの光景を言い表すには足りない。この感動は――この胸がいっぱいになる気持ちは言葉では言い表せない。
わたしの手に力がこもる。
目はこの夢のような風景を忘れまいとずっと空を見つめている。
この眺めはわたしが手に入れた、わたしだけの北極の空なのだ。
決して忘れるものか。
そう思って空を眺めているとポンッと気の抜ける音がスマホから鳴った。
こんな絶景の中で聞こえるメッセージアプリの着信音の生活感のギャップが少し可笑しい。
どれどれ、わたしの親友はどんな返事をしてきたのだろうか。
スマホの画面を見ると私は笑った。
日本から遠く離れた北極の地でこの盛大なサプライズは成功したようだ。
極光の空の下、こうしてわたしの旅は終わった。
帰ったら、そうだ。北極土産を南極帰りのわたしの親友に渡してやろう。
その光景を思い浮かべて私は帰りの一歩を踏み出した。