ノイズさんは優しく可愛い子供のようなカルマ・ノイズ。ある日胸に生まれた歌であったかい心を持ったノイズさんは、仲間や人間を守るために戦う事なく争いを止めるために頑張っています。
そんな中、ノイズさんはキャロルとエルフナインという友達を増やしましたが、結果的に弦十郎との約束を破ってしまったのでお説教をされてしまいました。
それでは本編をどうぞ。
「ノーイズさんっ! こんにちは~っ!」
「遊びに来たよ」
その日、シミュレータールームへ響と未来が顔を出しました。もうノイズさんの部屋と呼んでもいい程、ノイズさんはここを定位置としていました。
「おー」
「ネフィリムもこんにちは!」
「ふふっ、今日も元気そうだね」
手を振るノイズさんとニィと笑うネフィリムに二人は笑顔を浮かべます。正直ネフィリムの笑顔は口だけなので若干怖いですが、もう響と未来は見慣れているのでへいき、へっちゃらです。
そんな二人へノイズさんはボードを使って会話開始。何の用?とノイズさんは首を傾げます。
「えっと、ノイズさんって好きなとこへお出かけ出来るんだよね?」
「響がね、ノイズさんの友達と会ってみたいんだって。ほら、キャロルちゃんとエルフナインちゃんとこの前会ったでしょ? だから他のマリアさん達と直接会いたいって」
「ダメかな?」
その提案にノイズさんは腕を組みます。それには理由がありました。ノイズさんが知る限りマリアはあのアメリカの施設にいるはずでした。それが今は歌手として世界を飛び回っています。
だけどそこに切歌と調の姿はありません。なのでマリアに会いに行くとなるときっと問題になると思ったのです。
その事をノイズさんが説明すると響はどうしたものかと頭を抱えました。そんな響を見て未来は呆れるようにため息を吐きました。
「ノイズさん、出来ないなら出来ないって言ってくれていいからね。響はすぐに思いつきで色んな事言うんだから」
「あはは……面目ない」
未来の言葉に申し訳なさそうに響が項垂れます。そんな彼女を見てノイズさんがボードへカキカキ。
「え? 弦十郎さんに行き先を言ったらダメって言われそう?」
「あ~……たしかに」
つい最近ノイズさんの外出でお説教をしたばかりの弦十郎です。もし行き先がアメリカの装者達がいる施設となれば、苦い顔をするに違いありません。
これで完全に計画が砕かれた響は、がっくりと肩を落としてしまいました。そんな響を見て未来とノイズさんは顔を見合わせます。
「大分ショックみたい」
未来の言葉にノイズさんも頷きます。なのでどうにか響を元気づけようと考えます。と、そこで思いついたのは了子へ外出許可をもらう事でした。
元々ノイズさんがマリア達と知り合った施設は了子が務めていた場所です。だから了子は許可をくれるかもしれない。ノイズさんはそう考えてボードへその説明を書いて未来へ見せました。
「……成程。たしかに司令よりも許可は取れるかも。響、これ見て」
「何~? ……おおっ! さっすがノイズさん! じゃ、早速了子さんのとこへ行こうっ!」
こうして未来からノイズさんのアイディアを聞いた響は一瞬にして元気になり、三人揃って了子の研究室へと向かいます。
その頃研究室では了子が弦十郎と二人きりでお話をしていました。
「まったく、あいつにも困ったものだ」
「ふふっ、ネフィリムを一人と数えての外出だものね。でも、あれは弦十郎君も悪いのよ? ちゃんと誰と行くかを聞かないから」
「分かってる。だから話だけで済ませたんだ。それに、あいつの言い分も正しい。俺は一人でかと尋ねた。あいつは首を横に振った。あいつにとってはネフィリムでさえも友人で一人という換算だ。なら、俺があいつを叱る理由は、嘘を吐いたという事ではなく、こちらと連絡を取れる者を連れて行かなかった事だからな」
「ええ。あの子は嘘は吐いてないもの」
「ああ、真面目な奴だよ。そして、不思議な奴だ。キャロル君とエルフナイン君だったか。聞けば、キャロル君はパヴァリア光明結社の人間だそうだ」
「やっぱりね。なのにここへ入れてあげたの?」
「あいつの友人だからな。それに、あいつの立場はここにいる時は公人ではなく私人だ。その友人関係が問題だと言いたいのなら、ここから出してやればいい」
「あらあら、中々物騒な物言いね。でも、そうねぇ。ノイズさんは別にここに置いてくれとは言ってないもの」
難しい話をする二人ですが、その距離はとても近いのです。椅子に座ってコーヒーを飲む了子の背中側に弦十郎は立っていますが、その背中はくっつきそうな程なのでした。
あのノイズさんが取り持った飲み会から、二人は周囲に気付かれない程度にデートを重ねていました。とはいえ、それは本当に大人の時間です。残念ながらノイズさんでは分かりません。
ただ二人の相手へのドキドキが強くなっている事ぐらいしか、子供なノイズさんには分からないのです。
「いっそ、君があいつと一緒に暮らしてみるか?」
「そっくりそのままお返しするわ」
「ふむ、それもいいかもしれんな。元々一人で暮らすには広すぎる家だ」
「そうね。あれなら五人家族ぐらいでちょうどいいわ」
そこで弦十郎がはてと首を傾げました。こういう時の例え話なら人数は出さず、ただ大家族と表現するからです。
「了子君、何故五人だ?」
「子供が三人いるぐらいで丁度いいでしょ? 男の子二人に女の子一人」
思わず弦十郎が振り向くと、そこには眼鏡を外して弦十郎を見つめる了子がいた。
何も言葉を出す事なく、二人はそのまま見つめ合う。ただ、その眼差しはとても熱が宿っていた。愛の熱、と呼ぶようなものが。
「……いいのか?」
「むしろ私が冗談でこういう事言うと思う?」
さらりと返した言葉には重たい意味が込められていた。それに気付いて弦十郎は申し訳なさそうに頭を掻いた。
「いかんな。こういうのは俺から言いたかったんだが」
「いいのよ。先手はそっちだったから王手はこっちがしてあげたかったの」
「ふっ、そこまで言われてしまっては仕方ないか。なら、詰みになる前に投了するべきかな?」
「ええ、そうして」
王手飛車取り。そう心の中で考えて笑う了子だが、そんな彼女へ弦十郎からの思わぬ一手が差しこまれる。
――後出しでは格好がつかないと思うが、受け取って欲しい。
まさかの指輪であった。弦十郎の手にしている小箱へ目を向けたまま、了子は言葉を失っていた。
「いや、思い切って買ったのはいいんだが、いつどうやって渡すべきかとな。俺もこの手の事は存外情けないらしい」
「……いつ、買ったの?」
「君を家に泊めた翌日だ。気が早いと思ったが、自分の覚悟を固めるためにもと」
それは了子と弦十郎がその関係を大きく進めた日の翌日だ。ちなみにノイズさんが了子の研究室を訪れなくなったのもその日以降である。
さて、大人二人が男と女の会話をしている頃、ノイズさんは了子の研究室前で響と未来を足止めしていました。
「ねぇノイズさん、どうして了子さんの研究室へ入っちゃダメなの?」
「そうだよ。折角ここまで来たんだし、後はノックしてどうぞって言ってもらうだけだよ?」
疑問符を浮かべて小首を傾げる二人へ、ノイズさんはボードへカキカキ。
「「……お取込み中?」」
コクコクと頷き、ノイズさんはボートを抱え込むと両手で×の字を作ったのです。それを見て響と未来は顔を見合わせます。
「えっと、ノイズさん、もしかして了子さんの研究室に誰かいる?」
その問いかけにノイズさんは大きく頷きます。
「じゃあ、それって司令?」
またノイズさんが大きく深く頷きます。もうそれだけで二人にも分かりました。
「うん、じゃあ仕方ないか。きっと難しい話だろうしね」
「だね。で、これからどうするの?」
「う~ん……ノイズさん、何か案はある?」
響に聞かれてノイズさんは考えます。すると、そんな時ノイズさん専用ギアの頭部がピカピカと光りました。
これはキャロルとエルフナインへ渡した携帯端末からの連絡を知らせるものです。了子さんがギアを改良した事で付いた追加装備です。
「え? キャロルちゃんが呼んでる?」
「じゃ、早く行かないと! 未来、何かあったら不味いからここで待ってて。で、司令か了子さんが出てきたら連絡を」
「うん、気を付けてね」
こうしてノイズさんはその場でゲートを展開、響と二人でキャロルの下へ向かいます。
着いた先はキャロルとエルフナインが暮らす場所、チフォージュ・シャトーでした。
「あっ、ノイズさん! 響さんも!」
「よく来たな。というか、何故お前まで」
「一緒にいたんだ。っと、いけないいけない。こんにちは、キャロルちゃん、エルフナインちゃん」
「こんにちは!」
「ああ」
元々明るく人懐っこい響は、エルフナインだけでなくキャロルとも既に友達となっていたのです。ノイズさんという共通の友人を持つからこそ、立場など関係なく仲良くなれるのでしょう。
「それで、一体何があったの?」
挨拶を終えて響が二人へ問いかけます。ノイズさんも響と同じように小首を傾げました。
「実は、俺とエルフナインは旅に出ようと思う」
「その準備が終わったので、ノイズさんには挨拶をって」
「そっかぁ」
世界を識るんだ。それがキャロルのパパの遺言です。そのため、キャロルは今まで準備をしていました。
エルフナインを置いていく事も考えたのですが、クリスと初めて会った時に言われた”妹”という表現がずっと頭に残り、更にたった一人でシャトーに残すのも心が痛くなったため、一緒に連れて行く事を決めたのです。
「じゃあ、ここは無人?」
「元々シャトーは協会の物だからな。俺達がいなくなった後はプレラーティが管理するはずだ」
「ぷれらーてぃ?」
「協会の幹部の方です。このシャトーを設計した人でもあります」
「へぇ」
エルフナインの簡単な説明に響は”よく分からないけど偉い人”という認識でプレラーティの事を覚えました。
一方、キャロルはノイズさんが自分をじっと見つめている事に気付いていました。
「……こうして会えたが、またしばらく会えなくなる」
あの時とは立場が逆だな。そんな事を思ってキャロルは笑います。初めて出会った時は、ノイズさんが見送られる側でキャロルが見送る側でした。
「まぁ、どうせあてもない旅だ。いつかは、お前達の暮らす国にも行くかもしれない」
どこまでキャロルは笑顔です。対するノイズさんは動きません。手にボードを持ったまま、じっとしていました。
それがキャロルにはどういう気持ちからか分かっています。何せ昔の自分がそうだったのです。
「こうしてみて、やっと俺にもお前の気持ちが分かった。あの時、行かないでくれと俺が思ったように、お前はそれでも自分の為すべき事を、したい事をやろうと足を踏み出したんだと」
そこで少しだけノイズさんの体が揺れました。キャロルの目に光るものが浮かび始めたからです。
「……だけど、お前は俺にこう言って約束してくれた。だから今度は俺の番だ」
一度だけ目元を拭って、キャロルは満面の笑顔をノイズさんへ向けました。
「またね」
今まで帽子で感情を隠してきたキャロルが、旅立ちの日に見せた初めての喜びです。それにノイズさんは胸の歌が大きく揺れ動くのを感じました。
――いって……らっしゃい……。
初めて聞こえたその幼く愛らしい声に、キャロルは目を見開くと涙をボロボロ零しながら頷きました。
そして、その様子を見守っていた響とエルフナインももらい泣きする事が起こります。
何と、ノイズさんがキャロルへ近寄ってそっと涙を拭ったのです。それだけではありません。そのままノイズさんがキャロルを見つめているとその顔に口が出現、こう告げたのです。
「まっ! たっ! ねっ!」
「っ!? うん、またね」
自由に喋れないノイズさんの心をネフィリムが何とか告げたのです。こうしてノイズさんと響に見送られてキャロルとエルフナインは旅に出ました。
二人がテレポートジェムでいなくなった後のシャトーは、静かでどこか物悲しい感じがします。だけど、ノイズさんはその場を動こうとしませんでした。
「あの、ノイズさん? 帰らないの?」
響が本部へ帰ろうと呼びかけても、ノイズさんはその場を動きません。すると、そこへいきなり人が現れたのです。
「なっ?! あ、あの時のノイズ!?」
「待ってサンジェルマン。誰か一緒にいるわ」
「少女? というか、何故ここにお前がいるワケダ?」
突然現れた三人組に響はおろおろするばかりです。そんな中、ノイズさんはボードへカキカキ。書き終えるとそれを三人へ見せました。
「キャロルとエルフナインの帰ってくる場所を守ってください、ねぇ」
「最初からそのつもりだが、まさかそれを言うために残っていたのか? 何とも不思議なノイズなワケダ」
「心配しないで。ここは私達パヴァリア光明結社にとっても大事なものだから。キャロルがいなくなっても、私達が定期的に見回りにくるわ」
「あ、あのぉ、プレラーティって人は皆さんの中にいますか?」
ノイズさんとは顔見知りな三人ですが、響はまったく知りません。そこで響がまず知りたかったのはキャロル達がここを託す事にした相手でした。
「プレラーティなら私なワケダが?」
「ええっ!? お、思ってたよりも可愛い人だぁ……」
「あら、ちょっと褒められてるわよプレラーティ」
「どうでもいいワケダが、まぁ一応反応はしておくワケダ。それ程でもないワケダ」
カリオストロに肘で突かれ、プレラーティは微妙な顔をしましたが、それでも響に顔を向けて言葉を返します。そのやり取りだけで響はプレラーティが癖の強い相手だと理解して苦笑しました。
「それで、一体貴方は?」
「あっ! 私、立花響と言います! ノイズさんやキャロルちゃんの友達です!」
その自己紹介だけで全ては事足りた。サンジェルマン達は響こそノイズさんが暮らす日本にいるシンフォギア装者だと分かったのですから。
「そう。じゃあ、キャロルは見送ったの?」
「はい。ノイズさんと一緒に見送りました。また、いつか会おうねってエルフナインちゃんとも約束しましたし」
「あらら、だからお目目が真っ赤なのね」
「あ、あはは……」
「とにかく、ここの心配はいらないワケダ。まぁ、時々来てもいいが、基本誰もいないと思って欲しいワケダ」
「あ、はい。ノイズさん、だって」
きっとノイズさんが聞きたかった事はこれだろう。そう思って響は笑顔を向けました。するとノイズさんはサンジェルマン達へ向かって深々と頭を下げました。
まるで、よろしくお願いしますと言うようにです。その姿を見てサンジェルマン達は目をパチクリさせましたが、響はすぐに我に返ると同じように頭を深く下げました。
「よろしくお願いしますっ!」
「……ええ、ここは私達が守るから。キャロル達の帰ってくる場所は、ちゃんと守っておくわ」
その言葉にノイズさんと響は頭を上げ、嬉しそうに頷きました。そしてゲートを出現させて二人は手を繋いで帰ります。
「気を付けて帰るのよ、お嬢ちゃんも黒いノイズちゃんも」
「響、とか言ったか。もし次来る事があれば、ここではなく協会にあるキャロルの研究室へくるといいワケダ」
「はいっ! ありがとうございます!」
手を振って三人へ別れを告げる響とノイズさん。その姿が見えなくなってゲートが消えると、サンジェルマン達はため息を吐きました。
「……局長に報告しないといけないわね」
「そう、ね。シャトーを本来の目的で使用する事は不可能だって」
「キャロルは好きにしろと言っていたが、あの様子ではノイズさんはこちらの考えを読んでいるかもしれないワケダ」
こうして万象黙示録の要であるチフォージュ・シャトーは静かに眠り続ける事となるのです。
ちなみにその報告を聞いたアダムは、どこか嬉しそうに笑ったとさ。めでたしめでたし。
終わりみたいな書き方をしましたがまだ畳むつもりはありません。
出会いと別れ。それを繰り返して人は子供から大人になるように、ノイズさんもそれを経験して成長していきます。
そしてその成長はネフィリムにも。