ノイズさんといっしょ   作:拙作製造機

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決起する理由がないなら出会う理由を作ればいい。と、言う事で了子経由でアメリカはナスターシャ及びウェル博士達との面会へ。その理由は、原作でセレナを死なせる原因となったアイツ絡みです。


ノイズさんの出会いと変化

「着いたわ。ここよ」

 

 了子の言葉にノイズさんは目の前の建物を見上げます。そこは、アメリカは某所にある聖遺物研究を進めている場所です。二課へ参加する前の了子が働いていた場所でもあります。どうしてここにノイズさんが来る事になったのか。それは了子からのお願いでした。

 

―――このままだと、いつかたくさんの人が困る事になる聖遺物があるの。それをアナタの力でどうにかしてくれない?

 

 良く分からないまでも、了子が本気で心配している事は伝わったノイズさんは、ならばと彼女の誘いに応じたのです。そして初めての飛行機に乗り、海を越えて遠くアメリカの地を訪れたという訳でした。

 

「ここには、いくつかの聖遺物やギアがあるの。頼んだ事以外に、出来ればそれらも回収出来ないかと思ってね」

 

 不思議そうに小首を傾げるノイズさん。それはそうです。ギアは装者がいなければ意味がありません。それに、誰でも適正があるとは限らないのです。それを了子も分かったのでしょう。小さく笑うとノイズさんへこう教えました。

 

「装者ならいるわ。ここに、ね」

 

 驚いたノイズさんは思わずボードを落としてしまいました。慌てて拾うノイズさんをどこか微笑ましく見つめ、了子は視線を前へと戻します。

 

「さ、行きましょうか。話はそれからよ」

 

 小さく頷いて歩き出すノイズさん。二人は研究所の人間に案内され、一路コントロールルームへ向かいます。そこには、車椅子の女性と眼鏡をかけた一人の男性が待っていました。

 

「お久しぶりですわ、ナスターシャ教授、ドクターウェル」

「どうも」

「お久しぶりですね、櫻井了子。それと……」

「ノイズ参型。我々はノイズさんと呼んでいます」

「これが新種のノイズ……」

 

 ウェルの発言に胸を張るノイズさん。その行動に思わず目を点にするナスターシャとウェルですが、更にノイズさんがボードへ文字をカキカキするやそれを二人へ見せました。

 

「……本当に意思疎通可能なのですね」

「ええ」

「はじめまして、僕、ノイズさん、か。いやぁ、これは凄い。日本語を見事に使いこなしているじゃないですかっ!」

 

 ウェルの言葉に照れくさそうに後頭部へ手を動かすノイズさん。それが本当に人間くさくてナスターシャは息を吐きました。響や弦十郎達が思う事を彼女も思ってしまったのです。全てのノイズがこうであればいいのにと。そうであれば恐ろしい存在を利用しようなど考えなくて済むのだから。そう彼女は思いました。

 

「それで、本当にそのノイズは」

「教授? ノイズではなくノイズさんですわ。本人もそう呼ばれる事を喜んでいますので」

 

 了子の言葉にノイズさんは大きく頷くも、またもやボードへ文字をカキカキ。

 

「……だけど好きに呼んで、ですか。本当に何というか……」

「ノイズという概念を超えていますね、これは」

 

 驚く二人に再び胸を張るノイズさんですが、そこへ三人の人物が姿を見せました。

 

「マム、訓練が終わったわ……って、ノイズっ?!」

「し、しかも黒いデスよ!?」

「新種……っ!」

 

 即座に臨戦態勢を取る三人の女性へノイズさんは振り向くや小首を傾げます。三人からギア装者特有の何かを感じ取ったのでしょうか。ノイズさんはそのままボードへ文字をカキカキ。その行動に三人も戦意を削がれたのか少しだけ緊張感が和らぎました。そこへ見せられたボードには「君達は装者なの? それと僕はノイズさん。よろしく」と書かれていました。

 

「「「ノイズさん?」」」

「丁度良かった。マリア、調、切歌。明日、ネフィリムの起動実験を行います。このノイズ、さんはそのための協力者です」

 

 その瞬間、たしかに三人は息を呑みました。それだけ告げられた内容は重いものだったからです。ネフィリムとは、聖遺物を食べる生きた聖遺物。かつてその起動により、この施設で一つの幼く愛らしい命が危うく散る事になりそうでした。そこまでして封じた存在をナスターシャは再び解き放つと言ったからです。だからでしょうか。マリアの脳裏にはある記憶が鮮明に蘇っていました。

 

―――私が、私が何とかするから。だから、後はお願い……。

 

 その日、起動実験によって目覚めたネフィリムは暴れ出し、研究所を破壊し始めました。このままではみんな死んでしまう。そうなった時、唯一の装者であったマリアの妹であるセレナが立ち向かったのです。絶唱を使い、何とか起動前の状態へネフィリムを戻したセレナでしたが、絶唱による負荷は大きく、その場で崩れるように倒れてしまいました。更にそこへ崩壊した天井が崩れ落ちるのを見て、マリアは妹の最後を想像し目を背けてしまったのです。が、何故か聞こえるはずの衝撃音がない事に気付いて目を開けると、そこには倒れたままのセレナと炭のようになった瓦礫だった物があるだけでした。まるでノイズによる炭化現象が起こったかのように。

 

 そして、セレナは今もあの時のダメージが原因で植物状態のまま眠っているのです。まるで、もうギアを纏いたくない。戦いたくないと、そう心から周囲へ告げているみたいに。

 

「マム、どうして!?」

「私から提案したのよ。ネフィリムは人の手に負えるものじゃない。だけど、このままではいつか誰かがそれを解き放ってしまう。なら、それを消滅させられる存在に手を貸してもらおうとね」

 

 了子の言葉にノイズさんは全てが分かったように手を打ちました。そう、彼女はノイズさんにネフィリムをどうにかしてもらおうと考えていたのです。マリア達は万一の際のノイズさんの援護及び支援役。その構想を聞かされ、当然ですがマリア達は納得出来ません。ノイズは人類の敵であり、彼女達装者が倒すべき敵と教えられてきたからです。それを、突然仲間として扱えと言われても受け止める事が出来なかったのでしょう。

 

「マムっ! 本気で言ってるの!? これはノイズよ!?」

「では、どうして友好的にこちらへ接触していると?」

「そ、それは……私達を油断させて」

「悪いけど、それはないわ。ノイズさんは、我々の前に初めて出現した時、大量のノイズを誘導して周囲の人々の安全を図った。その後、二人の装者と向き合い、ギアを纏っていない二人に対して最後には土下座をしたのよ? しかも、その場の地面を使っての筆談までして」

「ノイズが文字を書いた、デスか?」

「土下座って……そんなのするの?」

 

 切歌と調の言葉にノイズさんは頷いた。更にボードへ文字を書き始め、それを彼女達へ見せる。そこには「痛いのも辛いのも嫌い」と書いてあった。そんなノイズさんに二人の少女は目を見開いた。目の前のノイズさんはそんな二人へ違う内容を書いてみせる。それは、クリスも響も見た事のある内容。

 

「友達になって欲しい?」

「アタシ達と、デスか?」

「バカな……ノイズが……」

 

 不思議そうに首を傾げる調とパチクリと目を瞬かせる切歌。そして、マリアは心底信じられないものをみるような表情をノイズさんへ向ける。三対の視線を向けられたノイズさんは、どこかそわそわするように三人を見ていた。そんなノイズさんを見て最初に動いたのは切歌だった。

 

「まだ正直信じられないデスけど、少なくても普通のノイズとは違うって分かったデス。ノイズさん、デスか。ならノイズさん。明日の起動実験でその力を見せてくださいデス。お友達になれるかはその後デス」

「……合点承知、だって」

「おーっ、何か変わった返事デスね」

 

 ニコニコと笑う切歌にノイズさんも嬉しそうに頷く。ならばと調もノイズさんへ声をかけた。

 

「私も明日の貴方の行動で見極めさせてもらう。ただのノイズじゃないとこ、見せて?」

「……うん、頑張る……だそうデス。何か可愛いデスね」

「ホント、子供みたい」

 

 二人の言葉に「僕、まだ生まれてから五年も経ってないんだ」と書いたボードをノイズさんが見せる。それに二人の少女は軽い驚きを見せてから頷いた。それなら子供で間違いないと。一方、マリアはそんなノイズさんにどう接していいかを分からなくなっていた。すると彼女へ了子が小さく微笑みかけてこう告げる。

 

「向こうにも今の貴女と同じような反応をしていた子がいたわ」

「私と?」

「ええ。その子はノイズに家族を殺された子でね。だからこそ凄い強い憎しみをノイズへ抱いていたのだけど……」

 

 了子はそこで言葉を区切り、調や切歌へ友達紹介として響やクリスの似顔絵を描いて見せているノイズさんを見た。つられるようにマリアも視線を動かす。

 

「どうやら、ノイズさんはその強い憎しみを嫌がったみたいでねぇ。初遭遇時、彼女から向けられたそれにいきなり土下座したのよ。その時は命乞いと思ったそうだけど、実際は謝罪だったのね。同胞が大切な人を奪ってごめんなさいって」

「……ノイズが……謝罪……?」

「ノイズさんが言うには、同胞達は帰り道が分からないからそれを探して動き回るだけだそうよ。で、彼は帰り道を出してあげられる。まぁ、それを制御出来るようになったのはとある出会いからだそうよ。それまでは自分でも上手く制御出来ず、あちこちへ現れては消えを繰り返してたみたい。で、今はそれで向こうのノイズ被害を平和的に解決してるわ」

 

 その内容にはマリアだけでなくその場の全員が絶句。実は、これを話している了子は多少胸が痛かった。何せ、奏の家族をノイズが殺した一番の原因は彼女自身である。いや、正確にはフィーネだろうか。

 

「帰り道が分からない……そっか。ノイズも、突然こっちに現れちゃうんだもんね」

「それは……確かに困っちゃうデスよ」

「異次元からの迷子、とでも言えばいいのですか? ノイズもまた被害者と? はっ、何を馬鹿な!」

「ですが、そう考えると彼がこちらへ手を貸してくれている理由が納得出来ます。彼は、同胞を守るために敢えて敵対する存在へ力を貸しているのでしょう。それが一番同胞を助けられると思って」

 

 ナスターシャの言葉にノイズさんは振り向き、ボードへ文字を書いていく。そして、それを見せた。

 

「…………そんな深い考えはない? ふふっ、ですがそうなっているのです。あなたは知らず一番最善の道を選んだのですよ?」

「あっ、ノイズさんが照れてるデス」

「可愛い……」

「貴女達……」

 

 既にノイズさんを受け入れ始めている切歌と調に軽く驚きつつ、マリアもどこかで似た気持ちになり始めていた。ノイズと人。両方を助けたいと動く不思議な存在へ。こうしてノイズさんとマリア達の出会いは終わる。そして次の日、ノイズさんはマリア達三人の装者と共に起動前のネフィリムと呼ばれる存在を見つめていた。

 

 だが、何故かノイズさんはその実験場で小首を傾げている。何か見覚えがある気がしていたのだ。だけど気のせいかもしれない。そんな風に思い、片手を顔の横に当てながら首を左右に動かして疑問符を浮かべ続けるノイズさんを余所に、マリア達は緊張の面持ちでネフィリムを見つめていた。

 

「これが……ネフィリム」

「ノイズさんなら倒せるデスか?」

「分からない。どうなの?」

 

 マリアの問いかけにノイズさんは意識を切り替え、ネフィリムをじっと見つめて腕を組んで考え込む。しばらくうんうんと唸るように動かなくなったノイズさんだったが、やがて何か思いついたのか両手をポンと打つように動かしたかと思うと、そのネフィリムを持ち上げた。何をするのかを見つめる周囲の前で、ノイズさんはあろう事かネフィリムを自分の体の中へ吸収したのだ。そのあまりの光景にマリア達だけでなくモニターしていた了子達も言葉を失う。

 

「……だ、大丈夫デスか?」

 

 恐る恐る問いかける切歌へノイズさんは振り返ると頷いた。そして、三人は見た。ノイズさんの顔に当たる部分に歯のない口が出現したのを。それがネフィリムの口である事を理解したのはマリアだった。

 

「もしかして、ネフィリムはアナタと共生しているの?」

「……おおっ、そうみたいデスよマリア」

「うん、頷いてる」

 

 更にノイズさんはボードへ文字を書いた。そこにはこう書かれた。

 

「……ネフィリムだって生きてるなら殺さないであげたい。僕とずっと一緒にいるなら誰にも危害は加えられない……だって」

「ノイズさんって優しいデスね。ネフィリムさえも友達にしちゃうデスか」

 

 切歌の表現にノイズさんは少し驚いたように反応を見せ、少し間を置いて嬉しそうに頷いた。彼もどうやらそこまでは考えてなかったらしい。そして、きっと彼の中にいるネフィリムへ問いかけたのだ。友達になってくれるかと。その結果、友達が増えて嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねるノイズさん。その光景を楽しげに見つめる調と切歌。マリアは複雑な心境でそれを見ていた。

 

(もし叶うなら、アナタにもっと早く会いたかった……)

 

 そうすれば妹は植物状態にならず、ナスターシャも車椅子とならずに済んだだろう。そして、セレナはノイズさんと仲良く友達にさえなったはずだ。その叶わなかった可能性を思い、マリアは目を閉じ顔を伏せた。すると、その感情を感じ取ったノイズさんがマリアへ顔を向ける。そこで彼女の方を見つめて文字を書き始めた。それを終えるとゆっくり近づき、彼女の肩を機械の手でそっと叩く。

 

「……何?」

 

 顔を上げたマリアが見たのは「悲しまないで。僕も悲しくなっちゃうから」と言う文字。そしてノイズさんは更にボードへ何かを描き、マリアへ見せる。そこには、笑顔のナスターシャ達とある言葉が描かれていた。

 

「そう……そうね。私が悲しんでいてはみんなも悲しむと、そういう事ね」

 

 書かれていたのは「一つの笑顔が誰かの笑顔を作る」というもの。小さく笑みを零すマリアにノイズさんは嬉しそうに頷く。すると、その体を優しく包むような温もりを感じた。マリアがノイズさんを抱き締めたのだ。

 

「ありがとうノイズさん。いつか私の妹にも会って頂戴。今は眠っているけど、きっといつか目を覚まして私と同じで友達になってくれるわ」

「ズルいマリア。私もノイズさんとお友達になる」

「アタシもデスよ。ノイズさん、仲良くしようデス」

 

 マリアの行動に照れる様な反応を返すノイズさんへ、調と切歌も近寄って微笑みかける。その三つの笑顔に知らずナスターシャと了子も笑みを浮かべ、ウェルでさえもノイズさんの行動にある種の英雄らしさを感じたのか微かに笑う。まぁ、その笑みはお世辞にも爽やかではなかったが。そんな周囲の感情を感じ取り、ノイズさんは満足そうに頷いた。

 

 こうしてノイズさんの初旅行は終わる。三人の友達と一人の理解者を得、そして今はまだ眠る一人の少女とも会う約束を交わし、一人の強烈な興味を引く形で。帰りの飛行機の中、ノイズさんは一つの絵を描く。それは、響達二課の面々とマリア達F.I.Sの者達が揃って笑っているものだった。

 

「……そうなれるといいわね」

 

 了子の言葉にノイズさんは大きく頷き窓から外を眺める。遠くなっていくアメリカの大地を名残惜しそうに見つめながら……。




察しの良い方は気付かれたでしょうが、セレナを助けたのは突発的に現れたノイズさんです。ただ、現れた瞬間瓦礫に接触した事で驚いて、慌ててまた別の場所へ移動していますが。
ですが、そうなるとノイズさんの言っている年数と計算が合わないんです。その理由についてはまたいずれ……。
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