ノイズさんといっしょ   作:拙作製造機

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久々の更新でまさかのお気に入りが大きく増えるという事に驚いています。
それと馴染みの方やそうでない方の感想に大変嬉しくなりました。本当にありがとうございます。
今後も細々と書いていけるよう頑張りますので、応援の程何卒よろしくお願いいたします。


ノイズさんのおでかけ

 その日、ノイズさんはボードを片手に一人ガッツポーズを取っていました。

 

「こんにちは、ぼく、ノイズさんっ!」

 

 と、そこでネフィリムが文字通り口を挟みます。自分もいるぞとノイズさんへ言っているのでしょう。

 その主張にノイズさんもごめんねとばかりにお腹を軽く撫でました。

 

 そしてノイズさんはシミュレータールームを出て発令所を目指します。何故なら今日了子はお休みなのです。

 

 発令所に入ったノイズさんは弦十郎の前へ移動すると手にしたボードを見せました。

 

「ん? 外出したい? 一人でか?」

 

 その問いかけにノイズさんは首を横に振ります。一人ではないと言う事です。なので弦十郎はならばと頷いて許可を出しました。

 ただ、この時弦十郎は一つだけミスをしました。ノイズさんが首を振ったのは自分以外にネフィリムもいるという意味だったからです。

 

 ともあれ許可を得たノイズさんは、喜び勇んで発令所を出るとシミュレータールームへと戻りました。

 そこで久しぶりとなる転移用のゲートを出現させ、ノイズさんはその中へと足を踏み入れました。

 

 ノイズさんは、言葉を出せるようになった事で約束を果たそうと思ったのです。それは、ノイズさんがノイズさんとなれた切っ掛けの女の子との再会です。

 

 ゲートを出たノイズさんは、そこが記憶にある光景と変わっていない事に安堵し、周囲をキョロキョロと見回しました。

 でも、そこにあの女の子は見当たりません。どこに行ったのだろうと首を傾げるノイズさんですが、ならばとそこから歩き出しました。

 

 人の感情を察知できるノイズさんは、微かに感じるそれを頼りに歩き出したのです。

 

 ですが、その行動は思いの外呆気なく終わりを迎えます。

 

「え? の、ノイズっ?!」

 

 ノイズさんが歩いていた方から一人の女の子が現れたのです。思いもよらない存在に驚く女の子を見たノイズさんは、ここで出会った相手に似ていると思って驚きました。

 

「こんにちは、ぼく、ノイズさんっ!」

 

 そんな時、ネフィリムが安心させる意味合いで挨拶をしました。その声と内容に女の子は大きく驚き、だけどどこか興味深そうな顔で首を傾げます。

 

「のいずさん? というか、喋れるんですか?」

 

 そこでノイズさんはボードへカキカキ。そんな様子を女の子は興味津々といった雰囲気で見つめます。

 

「……今のしか喋れないんですね」

 

 書かれていたのは”今はこれが精一杯”というものでした。その内容に女の子はどこか面白そうに笑みを浮かべました。

 ノイズさんの書いた文字が可愛らしいものだったからです。まるで子供が書いたような文字に女の子は微笑ましいものを覚えたのです。

 

 そしてノイズさんは再びボードへカキカキ。書き終えると女の子へそれを見せました。

 

「えっと、僕の名前ですか? エルフナインと言います。え? あっ、こ、こちらこそよろしくお願いします」

 

 エルフナインと名乗った女の子にノイズさんは頷いて頭を下げました。よろしくお願いしますという動きです。

 それを見たエルフナインは慌てて頭を下げました。その礼儀正しさにノイズさんはエルフナインはイイ子だと感じて嬉しくなりました。

 

 その気持ちのままボードへカキカキ。書き終わるともう一度それを見せました。

 

「僕に似た女の子? キャロルの事かな?」

 

 エルフナインの出した名前にノイズさんはふんふんと頷きます。キャロルと言う名前を覚えたのでしょう。

 ノイズさんはエルフナインへキャロルと会わせて欲しいと頼みます。ただ、エルフナインはその頼みに困ってしまいました。

 というのも、今キャロルはここにいないからです。所属する錬金術師協会へお出かけ中でした。

 

 それを聞いたノイズさんはそこへ行ってみようと決意します。キャロルへの説明役をエルフナインに頼み、ノイズさんは彼女を連れてゲートを通過しました。

 

「こ、これは凄い……。転移だけど、直接位相空間を繋げている……」

 

 ノイズさんの機械の手を掴んでゲートの中を歩くエルフナインは、その目を何度もパチクリさせています。

 そんな彼女にノイズさんは小首を傾げていました。言っている事が分からないからでしょう。

 

 ゲートが繋いだのはどこかの研究室でした。フラスコや試験管などが置いてあります。

 

「ここは……」

「おい、どうしてここにお前がいる?」

 

 周囲をキョロキョロと見回すノイズさんとエルフナイン。そんな二人の後ろから声が聞こえました。

 振り返った二人が見たのは、大きな帽子をかぶったエルフナインによく似た女の子です。

 

「キャロルっ!」

「質問に答えろ、エルフナイン。それと、そいつは何だ?」

 

 キャロルの視線はやや鋭くノイズさんを見つめます。それにノイズさんは少しだけ驚きました。初めて出会った頃と同じだったからです。

 

「こんにちはっ! ぼく、ノイズさんっ!」

「……ノイズが喋る、だと? それにその纏っているものは……シンフォギア? いや、違うな。だが、近しい物か」

 

 ノイズさんの挨拶兼自己紹介を聞いて軽い驚きを見せるキャロルですが、すぐにその興味はノイズさん専用ギアへと向きました。

 それがちょっとだけ悲しくてノイズさんは落ち込んでしまいます。でも、すぐに気を取り直してボードへ文字を書き始めます。

 

「文字まで書けるのか、こいつは」

「あ、あの、キャロルはこのノイズと知り合いじゃないの?」

「俺にノイズの知り合いなどいない」

 

 その言葉にノイズさんの手が止まります。そして悲しそうに顔を上げました。

 

「な、何だ? 俺に何か言いたい事でもあるのか?」

「えっと、このノイズはキャロルに会いにシャトーに現れたみたいなんだ。だから、キャロルに会うためにここまで転移したんだよ」

 

 エルフナインの言葉に力なく頷くノイズさん。そしてボードに書きかけていた文字を最後まで書き上げて、それをキャロルへと見せました。

 

――僕の事、覚えてないの? またねって書いたんだけど。

 

 その文章を見たキャロルは、微かに表情を歪めました。だけど一向に返事がその口から出てくる事はありませんでした。

 ノイズさんはそれでも待ち続けました。覚えてないでも覚えているでもどっちでもいいから答えを聞きたいと、そう思っていたのです。

 

 エルフナインがノイズさんとキャロルを交互に見ていく中、ただただ時間だけが過ぎていきます。

 

「……悪いが思い出せない」

「そんな……」

 

 絞り出すような言葉にノイズさんがガックリと肩を落とします。エルフナインはそれを見て辛そうな顔をしました。

 実は、キャロルは思い出を燃やす事で凄い力を使う事が出来るのです。そのため、ノイズさんと出会った時の事をすっかり無くしてしまったのでしょう。

 エルフナインはその事を知っているからこそ辛そうな声を出したのです。ノイズさんとの思い出を犠牲にしてしまったのかと、そう思って。

 

「もういいだろ。おい、エルフナインを連れて帰れ。俺は色々忙しい」

「キャロル、そんな言い方は」

「煩い。言葉を使うノイズなど興味はあるが今はそんな事へ構っている暇はない。それはお前もよく知っているだろう」

「それは……そうかもしれないけど……」

 

 素っ気無いキャロルにノイズさんは悲しい気持ちになりました。でも、そこでノイズさんはボードへ願いを込めるように文字をカキカキ。

 

”またね”

 

 たった三文字のそれは、ノイズさんなりの諦めないという気持ちの表れです。更にノイズさんは片手を上げて振ったのです。あの時と同じように。

 

「っ!?」

 

 それを見てキャロルの頭の中に色褪せた記憶が甦ります。真っ黒な何かが自分へ手を振っているそれにノイズさんが重なります。

 そして次の瞬間、キャロルの目からは涙が流れました。それを見たエルフナインが息を呑み、ノイズさんは驚いて手を下げてキャロルへ駆け寄りました。

 

 ノイズさんには分かったのです。キャロルの心が大きな驚きと一緒に大きな喜びに溢れた事が。

 

「……本当に、会いに来たのか、お前」

「キャロル……?」

「俺が、忘れてしまっていた思い出に、燃やし尽くしたと思っていた思い出に、こうやって色を鮮やかに付けて見せるとは」

 

 言いながらキャロルはそっとノイズさんの機械の手を握ります。冷たいはずのそれは、何故だか少しだけあったかい感じがキャロルにはしました。

 

「キャロル? 今の、本当?」

「……ああ。思い出したんだ、一瞬にして。もしかしたら、焼却したと思っていたがどこかで燃やし尽くせず残っていたのかもしれない」

 

 ノイズさんはそれを聞いてボードを手にして、キャロルの手をそっと放して文字を書き始めました。

 

「……本当に大事なものは頭じゃなく心にあるからかも、か。本当に、そうかもしれないな。思い出は二ヶ所にあると、そういう事か」

 

 そう返してキャロルは目を閉じました。今、キャロルの頭の中には悲しい記憶が甦っていました。大好きなパパが火に包まれる光景です。

 でも、それが次第に薄れて浮かび上がる思い出があります。それはパパが笑顔を向けている光景です。

 

――キャロル、パパはね、いつでもキャロルに笑っていて欲しいんだ。

 

 もう聞けなくなった声。優しくてあったかいパパの声。それが心の底からキャロルの中に甦ります。

 

「……ああ、本当にそうだ。大事なものは、心にあった。パパの願いは、世界を識る事だけじゃなかった。俺に、私に笑顔でいて欲しいと、そんな願いもあったんだ」

「キャロル……」

 

 ほんの少し、ほんの少しだけキャロルから優しい空気が流れます。それを感じてエルフナインが目を大きく開きました。

 ノイズさんはそんなキャロルに嬉しそうに頷いて再びカキカキ。そしてそれを見守るキャロルには最初のような鋭い眼差しはありません。

 

”今のキャロルはとっても可愛い笑顔だよ”

 

 書かれた文字にキャロルの頬っぺたがリンゴのように赤くなり、帽子を押さえて顔を隠します。

 だけどノイズさんには分かります。キャロルの心は嫌がっていないのです。むしろ恥ずかしく思いながらも喜んでいるのが伝わって、ノイズさんは嬉しそうに大きく頷きました。

 

 その後、キャロルはエルフナインへ、ノイズさんと共に元いた場所へ戻るようにと告げました。

 

「俺は、少し片付けないといけない事が出来た」

 

 そう言ってキャロルは部屋を出て行きました。エルフナインはそれを見送ってノイズさんと帰ろうと思いましたが、何故かノイズさんはゲートを出そうとしません。

 

「あの、ノイズさん?」

 

 じっとキャロルが出て行ったドアを見つめ、ノイズさんは動きません。やがて何かに気付いたノイズさんはボードへ文字をカキカキ。

 

「えっと……キャロルが危ないかもしれない? それってどういうっ?! ノイズさんっ!?」

 

 文字を読み終えたエルフナインの手を掴み、ノイズさんはドアを開けて廊下を迷う事なく歩いていきます。

 その歩みはとても力強く、まるで今行かないと後悔すると言わんばかりです。エルフナインはノイズさんに引っ張られるまま、廊下を小走りで駆けて行きました。

 

 そしてノイズさんの足が一つのドアの前で止まります。そこは明らかに特別な雰囲気のあるドアでした。

 礼儀正しくノックをしてノイズさんはドアを開けて中へと足を踏み入れます。エルフナインもそれに着いていく形で中へと入りました。

 

「な、何? 黒い、ノイズっ?!」

 

 そこにはキャロルを囲むように三人の女性がいました。更にキャロルの視線の先には一人の白いスーツと帽子の男性が座っています。

 

「お前達、どうしてここに……」

「そ、その、ノイズさんがキャロルが危ないかもって」

 

 エルフナインの言葉に強く頷いてノイズさんは片手を高々と掲げます。それに三人の女性が身構えました。

 

「こんにちはっ! ぼくっ! ノイズさんっ!」

 

 ネフィリムが挨拶します。ただ、その声には仲良くなろうと言う気持ちではなく何かするなら黙ってないぞと言う気持ちが込められていました。

 だからかノイズさんが慌ててボードへカキカキ。その姿に毒気を抜かれたかのようにその場の全員が目をパチクリさせました。

 

 そんな事に気付かず、ノイズさんは文字を書き終えて確認をすると大きく頷いてキャロル達へ見せました。

 

”話せば分かる”

 

 まさかのノイズからの会話要求です。さすがの錬金術師達もこれには呆気に取られました。それこそノイズさんと初めて出会った時の奏と翼のように。

 

「は、話せば分かる? ノイズが、会話を?」

 

 思わず目を何度も瞬きさせるのは男装の女性です。それだけノイズさんの考えは彼女に大きな衝撃を与えたのでしょう。

 

「えっと、キャロル? あんたの知り合いなの、このノイズ」

「知り合いと言えば知り合いだ。いや、旧友と呼んでおく」

「旧友? ノイズが、友人だと言うワケダ。自分が何を言っているか分かっているのか?」

「ああ。下手な人間よりもこいつの方が話が分かるぞ」

「あ、あの、そこまで褒めてないと思います」

 

 キャロルの言葉に頭の後ろへ手をやるノイズさん。それにエルフナインが少しだけおどおどしながらツッコミました。

 直後にそうなの?と言うように小首を傾げたノイズさんへエルフナインが頷き、更にノイズさんはキャロル達へ向き直ります。

 

「ちょっとぉ、こっちにも意見求めてるわよ」

「何と言うか、人間くさいノイズなワケダ」

「いや、私はキャロルの意見に賛成だ。確かに下手な人間よりも話が通じるわね」

 

 この言葉にノイズさんが嬉しそうにより頭を下げて片手を後ろへやりました。

 

「あ~っ、サンジェルマンがそんな事言うからまた照れちゃったじゃない」

「……これは本当にノイズなのか? 私には中身が人間と言われた方が納得出来るワケダが?」

「そろそろいいかな、僕が喋っても」

 

 ノイズさんに場の流れと会話の主導権を握られていると感じて白いスーツの男性が口を開きました。それにノイズさんだけでなくその場の全員が意識を向けます。

 

「珍しいノイズだね。それに、人工物だね、着ているのは」

 

 男性の言葉に頷きノイズさんはボードへカキカキ。その様子を全員で見守ります。何だがおかしな光景だなと、そう思って誰もが苦笑します。

 

「ふむ……ノイズさん専用ギア、か」

「ギアと言うと、シンフォギアだろうか?」

「多分そうじゃない? てか、それ以外に考えられないわ」

「となると、こいつは日本かアメリカが隠しているワケダな」

「あっ、えっと……日本で保護されているそうです」

 

 ノイズさんが書いている文字を読んでエルフナインが教えます。背丈的に彼女はノイズさんよりも低いため、丁度文字が視界に入るのです。

 

「「「「「日本……」」」」」

「はい。あっ、これ以上は言ったら怒られるそうです」

 

 エルフナインの言葉にうんうんと頷くノイズさん。正直ここまできたらこの場の五人には答えが出ます。

 ただ、まるで子供のようなノイズさんに男性達は小さく笑みを浮かべました。

 

「分かったよ。しないでおこう、追求は。それで、何の用かな、君達は」

「あの、僕はこのノイズさんに連れてこられただけなので……」

「じゃ、そちらのノイズちゃんに聞こうかしら。目的はなぁに?」

 

 薄着の女性が前かがみになってノイズさんへ問いかけますが、ノイズさんはそれに動じる事なくボードへ文字を書き始めます。

 

「えっと、何々……キャロルを迎えに来た、ですって」

「俺を?」

「あ、うん。キャロルが危ないかもって」

「ああ、そういえばそんな事を言ってたな」

 

 思い出したかのようにキャロルが呟きます。それぐらいノイズさんの乱入とその後の行動は驚きの連続だったのです。

 

「つまり君は、感じ取ったんだね、危険な予感を」

 

 深く頷くノイズさんはその場から歩いてキャロルの隣へ立ちました。そして手を繋いでいたエルフナインを自分の隣へ立たせます。

 

「これは、何の真似だ?」

「た、多分一緒にいるよって事じゃないかな?」

「一緒に……」

 

 エルフナインの言葉にノイズさんが嬉しそうに頷きます。すると持っていたボードをキャロルに渡しました。

 受け取って欲しいという事かと思ってキャロルが左手でボードを持つと、残った右手へノイズさんが手を差し出しました。

 

「……繋げと?」

 

 うんうんと頷くノイズさんにキャロルは、自分の中にあったとある覚悟が鈍るのを感じました。

 

「お前と言う奴は……」

 

 機械の手へキャロルは呆れるような声を出しながら手を差し出します。繋がれる手と手。それにエルフナインは嬉しそうに微笑み、男性達は驚きを浮かべました。

 

「大分話を遮られたが、まぁいい。局長、俺の話はこれだけだ。俺はパパの願いを叶えるために計画を捨てる。世界を分解再構築して世界を識っても、俺が笑顔になれないならパパの望みはそれじゃない」

「「「なっ!?」」」

 

 キャロルの言葉にサンジェルマンと呼ばれた女性を含む三人が驚きました。何故ならキャロルにとって計画とは何が何でも叶えようとしていたものだったからです。

 なのに、それをあっさりと捨てた事。そこにキャロルの心境の変化を感じ取ったのでした。

 

「……それが君の望みかい?」

 

 男性の問いかけにキャロルは迷う事無く頷きます。もうキャロルの頭にもパパとの思い出が色鮮やかに甦っていたのです。

 その表情からキャロルの気持ちを感じ取り、男性はどこか嬉しそうに笑い、帽子で顔を隠しました。

 

「分かった。認めよう、君の決断を。それで、どうするんだい、これからの事は」

「世界を識る。そのためにここを出る。何しろ……」

 

 そこでキャロルはノイズさんを見ました。急に見られてノイズさんは不思議そうに首を傾げます。その反応にキャロルは無意識に笑みを浮かべました。

 

「こんなに理解出来ない相手を俺は識ろうとしなかった。きっとそれは、シャトーの力を使っても分からなかっただろう」

「キャロル……っ!」

 

 エルフナインはキャロルの言葉に嬉しそうに瞳を潤ませます。心なしか彼女の思い出の中のパパも笑顔で頷いてくれた気がしました。

 

「俺は、自分の目と耳と肌で世界を識る。例え全てを識る事が出来なくてもだ。パパが俺に願った事は、託した事はそれだったはずだから」

「いいだろう。旅するといいさ、好きなだけ。でも、忘れないでくれ、これだけは。ここは、君を受け入れるよ、いつだって。していいのさ、帰る場所に」

 

 男性の言葉にノイズさんは嬉しそうに飛び跳ねました。そしてボードへ文字を書き始めます。すると、それを後ろや横からキャロル達が覗き込みます。

 文字が少し書き上がると彼女達の頭に?が浮かび、次第に…となって、最後には!となりました。

 

「気になるね、地味に」

 

 目の前の全員が苦笑を浮かべているのを見て男性がやや拗ねています。と、そんな彼へノイズさんがボードを見せました。

 

”あなたも立派なOTONAです。カッコイイ!”

「……褒められているのに、何だろうね、この微妙な気持ちは」

 

 どこか複雑そうな男性の反応に誰もが笑いました。その笑い声を聞きながらノイズさんは小さく頷きます。

 やがてノイズさんは部屋の奥へと移動し、キャロル達全員を見ながらボードへ何かを書き始めます。

 エルフナインが覗きたい気持ちになりますが、じっと我慢しています。キャロル達は何となく察したようで、小さく笑みを浮かべていました。

 

 そしてノイズさんが出来たとばかりにボードを両手で掲げ、その場の全員に見えるようにしました。

 

 そこには”新しく知り合えた人達(友達になれるといいな)”と銘打たれてキャロル達の笑顔が描かれていました。

 その拙いながらも優しい絵に誰もが笑みを浮かべたのです。そしてエルフナインが真っ先にノイズさんへ駆け寄りその手を差し出しました。

 

「僕は、貴方と友達になりたいです。よろしくお願いします」

「僕、ノイズさん」

 

 そこでネフィリムが名乗ってあげました。ノイズさんの気持ちを汲んであげたのです。

 

「ノイズさん。分かりました。じゃあ、よろしくお願いします、ノイズさん!」

 

 輝く笑顔のエルフナインへノイズさんも嬉しそうに手を差し出します。それを見てキャロルが少しだけ照れくさそうに足を前へ踏み出します。

 ゆっくりではありますが、キャロルもノイズさんの前へやってくると帽子で顔を隠しながら片手を差し出しました。その手を思わずノイズさんが見つめます。

 

「……こ、これで察しろ」

 

 小さな声ですが、その言葉にノイズさんは大きく頷いて手を差し出して優しく握ります。キャロルとエルフナインの小さな手がノイズさんギアのちょっとだけひんやりした手と繋がれます。

 

 それでも、二人は少しだけあったかさを感じました。そのあったかさに弾む心の動きをノイズさんも感じて大きく頷きます。

 

「……ノイズと、友人になるか。相互理解をしようとするノイズがいるなんて」

 

 サンジェルマンはそう呟きながら、一時も目を離す事なくノイズさん達を見つめました。その眼差しには、どこか複雑そうな何かが宿っています。

 

 この後、ノイズさんは男性達へ手を振り、キャロルとエルフナインを連れてその場からゲートを使っていなくなりました。

 それを見届け、四人は推し進めようと思っていた計画を考え直す事にします。それは、アルカ・ノイズと呼ばれる存在を作り出す事。

 

「……これを進めたらどうなるかしらね?」

「何となくだが、あのノイズさんとやらがどこからともなく勘付いて、邪魔をしてしまいそうな気がするワケダ」

「あら奇遇ね。あーしもそう考えたところよ」

「局長、どうしますか?」

「当面は、するしかないよ、見送りに。多分だけど、厄介だろうさ、彼は」

 

 こうして、誰も知らないところで世界中を混乱と恐怖に陥れるアルカ・ノイズ計画は消えてなくなりました。

 その立役者であるノイズさんは、そんな事も知らず二人の友達を響達へ紹介するべくゲートを通過していました。

 

「ど、どこへ行くのかな?」

「知らん。というか、シャトーじゃないのか?」

 

 二人の手を引いて歩くノイズさん。ですが、この後待ちうける事件をまだノイズさんは知らないのです。

 

「……あいつめ、帰ってきたら説教だな」

 

 響達が誰もノイズさんと一緒にいない事を知った弦十郎が、シミュレータールーム前で仁王立ちしている事を……。




という訳でGX並びにAXZもノイズさんによって終わりを迎えました。
まだアダム達とは友達になっていないノイズさんですが、それもきっと時間の問題でしょう。
それと、今回から前言った通り連載へ変更しておきます。
ただ、更新がどうなるかは未定ですが(汗
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